JP2004155751A - 生体侵襲時の経口免疫栄養療法に有用なペプチド - Google Patents
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Abstract
【解決手段】β−ラクトグロブリン(β−Lg)、α−ラクトアルブミン(α−La)およびウシラクトフェリン(Lf)のプロテアーゼ加水分解物の限外(UF)濾過の透過物が、LPS誘導性TNF−α産生あるいはIL−6産生を抑制する作用を有することを見出した。さらにその透過物から該活性を有するペプチドを同定し、単離・精製することができた。
【選択図】なし
Description
本発明は、生体侵襲時におけるTNFやIL−6などの炎症性サイトカイン産生に刺激を加えることなく抑制しかつ、免疫能を賦活化する作用を有する乳タンパク質の酵素加水分解物に関する。
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体侵襲時の経口免疫栄養療法に有用なペプチドに関する。すなわち、生体侵襲時の栄養療法において、TNFやIL−6などの炎症性サイトカイン産生に刺激を加えることなく、それを抑制しつつ、免疫能を賦活化する作用を有するペプチドに関する。
【0002】
【従来の技術】
全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)は、敗血症(sepsis)を定義するために提唱された概念で、侵襲(外傷、熱傷、急性炎症あるいは癌手術など)によって炎症性サイトカイン(IL−1、TNF、IL−6、GM−CSFなど)が過剰に誘導され、全身的な炎症反応が惹起された状態を指している。一方、炎症性サイトカインが誘導されると同時に、SIRSに対するホメオスタシス反応として抗炎症性サイトカイン(IL−10)が誘導されることが知られている。この抗炎症性サイトカインが過剰に誘導された病態をcompensatory anti−inflammatory response syndrome(CARS)とよんでいる。この2つの病態にかかわる背景因子としてのサイトカインについては、程度の差こそあれ相互に調節する関係にあり、潜在的につねに同時に存在する病態ともいえ、SIRS/CARSのバランスという考え方から侵襲時の生体反応の把握が試みられている。SIRS優位の状態では過度の炎症反応、CARS優位の状態では感染の遷延・重症化から臓器障害へと進展していくと考えられている。
【0003】
侵襲時の栄養管理はたんなる炎症反応の抑制だけではなく患者の免疫能を亢進させるような栄養管理法が推奨される。侵襲を受けた患者がその後の感染を伴うと、しばしば不幸な転帰をたどる症例が少なくなく、とくにCARS優位になっている病態では感染防止が最優先されるべき対応項目となる。そこで経腸栄養によるSIRS、CARSの制御は重要である。サイトカインによる侵襲時の代謝異常や臓器障害を防止するには、局所のサイトカインは正常に産生させるが、全身へのこの波及を防止する方法が合理的と考えられる。
【0004】
ラットを同一組成の輸液で経静脈栄養あるいは経腸栄養で管理後、腹腔滲出細胞をin vitroでLPS刺激下に培養すると、経腸栄養群は経静脈栄養群に比べTNF−αの産生能が高く、それに関連して腹腔内E. coli投与後の腹腔内細菌数は少なかった((例えば、非特許文献1参照)。また、細菌投与後の血中TNF−α濃度は経腸栄養群で経静脈栄養群に比べ優位に低かった。すなわち、経腸的な栄養投与は感染局所の生体防御に必要な腹腔滲出細胞の炎症性サイトカインTNF−α産生能を維持し局所の免疫能を保つ一方で、全身の過剰な炎症反応を抑制する。このような経腸栄養は、例えば、生体侵襲時(手術、外傷、熱傷、感染症、急性膵炎、肝不全、腹膜炎、または悪性腫瘍)のSIRS、CARSの発生の制御にも有用と考えられる。
【0005】
局所のサイトカインは正常に産生させるが、全身へのこの波及を防止する方法としては、経腸栄養、あるいはn−3系多価不飽和脂肪酸(N3PUFA)の投与が考えられる。N3PUFAの侵襲下投与による侵襲反応に対する効果について、ラット熱傷モデルを用いて基礎的に、また高度侵襲手術のひとつである食道癌手術症例により臨床的に検討された。その結果、N3PUFAを投与することで侵襲下の炎症反応の軽減化、細胞性免疫機能低下の防止作用が認められ、N3PUFA投与の有効性が示された(例えば、非特許文献2参照)。
さて、乳タンパクはその栄養的価値に加えて生物学的に活性のペプチドの源である。
乳タンパク質由来の生物活性ペプチドについては、吉川(例えば、非特許文献3参照)や大谷(例えば、非特許文献4参照)によって包括的にまとめられており、また免疫調節作用については大谷(例えば、非特許文献5,6参照)による報告がある。
【0006】
M. Zimeckiらは、ウシラクトフェリン(BLFT)含有カプセルを10日間健常人に経口摂取させ、いくつかの免疫パラメータをモニターした。その結果、血清中のTNF−αのレベルはモニター期間中低下傾向を示したが、IL−6は変化がなかった(例えば、非特許文献7参照)。また、ウシカゼイン由来のペプチド、LLY、PGPIPNおよびTTMPLWがLPS刺激ネズミマクロファージによるTNF−αおよびIL−6産生を増強したとの報告がある(例えば、非特許文献8参照)。栗岩はラクトフェリン由来のN末端領域から25アミノ酸残基からなるペプチドがエンドトキシン誘導性炎症を抑止することを開示している(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【非特許文献1】
Lin, MT et.al.「Route of nutritional supply influences local, systemic, and remote organ responses to intraperitoneal bacterial challenge.」Ann.
Surg、Vol 223、1996年、p.84−93
【0008】
【非特許文献2】
稲葉毅「経静脈栄養下における成長因子療法の可能性」医学のあゆみ、Vol 198、No. 13、2001年、p.1041
【0009】
【非特許文献3】
吉川正明など「ミルクの先端機能」弘学出版、吉川正明ら編、1998、p.188
【0010】
【非特許文献4】
大谷元など「ミルクの先端機能」弘学出版、吉川正明ら編、1998、p.97
【0011】
【非特許文献5】
大谷元「牛乳カゼイン由来ペプチドの栄養生理機能」Milk Science、Vol 47、No. 3、1998年、p.183−193
【0012】
【非特許文献6】
大谷元「牛乳カゼインの消化により生成するペプチドの免疫調節機能」Milk Science、Vol 50、No. 3、2001年、p.139−144
【0013】
【非特許文献7】
Zimecki, M et. al.「Immunoregulatory effects of a nutritional preparation containing bovine lactoferrin taken orally by healthy individuals」Arch. Immunol. Ther. Exp.、Vol 46、1998年、p.231−240
【0014】
【非特許文献8】
Ziao, C. et. al.「Bovine casein peptides co−stimulate naive macrophages with lipopolysaccharide for proinflammatory cytokine production and nitric oxide release」J. Sci. Food. Agric.、Vol 81、2000年、p.300−304
【0015】
【特許文献1】
特開平8−165248
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、TNFやIL−6などの炎症性サイトカイン産生に刺激を加えることなく、それを抑制しつつ、免疫能を賦活化する作用を有する、経口摂取可能なペプチドを提供することを課題とする。また本発明は、生体侵襲に伴うSIRSにおける炎症緩和および栄養治療に有用である。該ペプチドを提供する。さらにまた、本発明は、栄養補給や健康維持などに有用な保健機能食品(特定保健用食品および栄養機能食品)の製造に使用する該ペプチドを提供する。
【0017】
【課題を解決するための手段】
1979年、Brantlらにより、牛乳カゼインからオピオイドペプチド(β−casomorphin)が単離されて以来、数多くの生理活性ペプチドがカゼインおよびホエイタンパク質の酵素消化物から得られた。そこで、当初は、これらの生理活性ペプチドはすべて合目的性をもって存在することが期待された。しかし、同様な生理活性ペプチドが動物のみならず植物からも派生し、ある確率のもとに生理活性ペプチドが存在することが分かっている今日では、乳タンパク質から派生する生理活性ペプチドがすべて生物学的合目的性をもって存在するとは断定できない。いずれにせよ、他の起源のものに較べて、乳タンパク質から派生する生理活性ペプチドには生物学的合目的性が存在する確率ははるかに大きいことは事実である〔吉川正明: ミルクの先端機能、吉川正明ら編、p. 188、弘学出版(1998)〕。
一方、経腸栄養によって炎症局所や全身、あるいは遠隔臓器である肺のサイトカイン産生が修飾されること、またサイトカインの種類によってその修飾のされかたが異なることが明らかにされている(Fong, Y. et al.: Ann. Surg., 210: 449−457, 1989; Lin, M. L. et al.: Ann. Surg., 223: 84−93, 1996 )。
【0018】
そこで、本発明者らは侵襲時の炎症性サイトカイン過剰産生を抑制し、経口・経腸栄養剤に配合可能な食品素材を得るために、TNF−α産生抑制活性を指標に、乳タンパク質の加水分解物の活性ペプチドをスクリーニングした。
本発明者らは、ホエイタンパク質単離物(Whey Protein Isolate:WPI)、β−ラクトグロブリン(β−Lg)、α−ラクトアルブミン(α−La)およびウシラクトフェリン(Lf)のプロテアーゼ加水分解物の限外(UF)濾過の透過物(パーミエイト)が、LPS誘導性TNF−α産生あるいはIL−6産生を抑制する作用を有することを見出した。さらに、これらのパーミエイトを逆相HPLCで分画して、分子量約2,000ダルトン以下の画分に、TNF−α産生あるいはIL−6産生抑制活性を有するいくつかのピークが存在し、これらの活性ピークからペプチドを単離、精製しアミノ酸配列を決定した。そして、これらの配列を基に、対応するペプチドを合成し、TNF−α産生抑制活性を調べた結果、同じような活性を有することを確認することができた。さらに、β−Lg分子上で隣接する、あるいは数個のアミノ酸がオーバーラップする領域から新たなペプチドを合成し、TNF−α産生抑制活性を有するいくつかのペプチドを得ることができた。
【0019】
すなわち、本発明は、
(1) カゼイン、カゼイネート、ホエイタンパク質単離物(WPI)、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、ウシラクトフェリンおよびトータルミルクプロテイン(TMP)からなる群より選ばれる乳タンパク質の酵素加水分解物の、5,000〜100,000ダルトンのカットオフ値を有する限外濾過膜(UF)パーミエイトとして得られうるTNF−αおよび/またはIL−6抑制作用を有する加水分解物、
(2) β−ラクトグロブリンのトリプシン加水分解物で、カットオフ値が10,000である(1)の加水分解物、
(3) 溶出パターンが図4に示す逆相HPLCのクロマトグラムで示される(2)の加水分解物、
(4) ALPMH、ALPMHIRおよびFKIDALNEからなる群より選ばれる少なくとも1つ若しくは2つ以上のペプチドを含む(2)の加水分解物、
(5) α−ラクトアルブミンのトリプシン加水分解物で、カットオフ値が10,000である(1)の加水分解物、
(6) 溶出パターンが図6に示す逆相HPLCのクロマトグラムで示される(5)の加水分解物、
(7) WLAHK、LAHKALおよびLDQWLC(−CEVFR)EKからなる群より選ばれる少なくとも1つ若しくは2つ以上のペプチドを含む(5)の加水分解物、
(8) ウシラクトフェリンのトリプシン加水分解物で、カットオフ値が10,000である(1)の加水分解物、
(9) 溶出パターンが図11に示す逆相HPLCのクロマトグラムで示される(8)の加水分解物、
(10) WQWR、EDLIWK、ETAEEVKおよびLGAPSITC(−CR)VRからなる群より選ばれる少なくとも1つ若しくは2つ以上のペプチドを含む(8)の加水分解物、
(11)(1)〜(10)のいずれか1つの加水分解物の有効量を含有する、生体侵襲時の栄養管理のための経口・経腸栄養剤、
(12)(1)〜(10)のいずれか1つの加水分解物の有効量を含有する、全身性炎症反応症候群(SIRS)の症状を緩和する作用を有する、経口・経腸栄養剤、
(13)(1)〜(10)のいずれか1つの加水分解物の有効量を含有する、炎症反応を緩和する作用を有する保健機能食品、
(14) (1)〜(10)のいずれか1つの加水分解物の有効量を含有する、炎症反応を緩和する作用を有するサプリメント、
(15) (11)の経口・経腸栄養剤を製造するための(1)〜(8)のいずれか1項記載の加水分解物の使用、
(16)(12)の経口・経腸栄養剤を製造するための(1)〜(8)のいずれか1項記載の加水分解物の使用、
(17)(13)の保健機能食品を製造するための(1)〜(8)のいずれか1項記載の加水分解物の使用、
(18)(14)のサプリメントを製造するための(1)〜(8)のいずれか1項記載の加水分解物の使用、
からなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
出発物質として、乳タンパク質は後述する理由により最適である。トウモロコシや大豆タンパク質も候補であるが、乳タンパク質ほど有利ではない。乳タンパク質はウシ由来のカゼインおよびホエイタンパク質である。とくにタンパク質含量が90%以上のホエイタンパク質単離物(WPI)、カゼイネート、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミンおよびラクトフェリンなどの分画物は、活性物質の純度の観点から有利である。他に、タンパク質含量が80%以上のホエイタンパク質濃縮物(WPC)、カゼイン、トータルミルクプロテイン(TMP)、あるいは還元乳なども有利な原料の候補としてあげられる。またこの他に乳タンパク質を含む一般的原料として、脱脂粉乳、ホエイ粉、脱塩ホエイ粉、脱乳糖ホエイ粉、クリーム、バターミルク、バターゼラム、ミネラル濃縮ホエイなどがあげられる。
【0021】
WPIからβ−Lgやα−Laの分画する方法については多くの報告〔たとえば、桑田有:月刊フードケミカル, 2月号, 68 (1991); 米国特許 5,420,249等 〕がある。また市販品を利用することもできる。
トータルミルクプロテイン(TMP)は、脱脂粉乳から乳糖とミネラルを除いたもので、タンパク成分として、カゼインおよびホエイの両成分を含む。一般に製法には沈澱法と膜処理法がある。しかし、沈澱法で製造したもののみをTMP、または共沈殿物(co−precipitate)とよび、UF膜処理で製造したものをミルクプロテインコンセントレート(MPC)として区別する場合もある。
加水分解物のTNF−αおよび/またはIL−6産生抑制活性は、加水分解率(Degreeof hydrolysis:DH)に依存すると考えられる。以下に、タンパク質の加水分解に関するさまざまな公知技術(関連する文献、特許等)をあげる。当業者であれば、これらの公知技術単独であるいは組み合わせて用いることにより、乳タンパク質から本願発明のペプチドをスクリーニングすることができる。
【0022】
食品グレードのタンパク質加水分解酵素(プロテアーゼ)は、エンド型およびエキソ型プロテアーゼを含む。基本となる酵素はエンド型の活性が高いプロテアーゼから選択される場合が多い。エンド型プロテアーゼは、例えば、AlcalaseR(Bacillus licheniformis由来)、エスペラーゼ(B. lentus由来)、NeutraseR(B. subtilis由来)、プロタメックス(バクテリア由来)、PTN6.0S(ブタ膵臓トリプシン)など、エキソ型ペプチダーゼ/エンド型プロテアーゼ複合酵素としては、例えばフレーバーザイム(Aspergillus oryzae由来)などがあげられる(以上ノボ社)。他に、エンド型プロテアーゼとして、例えば、キモトリプシン(ノボ社、ベーリンガー社)、プロテアーゼNアマノ(Bacillus subtilis由来、天野製薬)、ビオプラーゼ(Bacillus subtilis由来、ナガセ産業)、パパインW−40(天野製薬)、エクソ型プロテアーゼとして、豚あるいはウシ内臓由来のカルボキシペプチダーゼなどがあげられる。これらの酵素は限定的なものを意味しない。
抗原性を低下させたアレルギー対応の乳タンパク質の酵素分解には、特異性が比較的高い動物由来のトリプシンやキモトリプシン、植物由来のパパインやブロメラインに加えて、乳タンパク質を非特異的に低分子化できる微生物由来のズブチリシン系の酵素などが用いられている。植物起源のパパイン、バクテリアや菌類由来のプロテアーゼを用いた研究報告(Food Technol., 48: 68−71, 1994;Trends Food Sci. Technol., 7: 120−125, 1996;Food Proteins and Their Applications: pp. 443−472, 1997)もある。加水分解は、これらの基本となる酵素を単独で、あるいは複数組み合わせて行われる。
ホエイタンパク質の加水分解についてのまとめた報告(Trends Food Sci. Technol., 7: 307−319, 1998)を以下にあげる。
【0023】
ホエイタンパク質を加水分解する酵素活性は大きく変動する。ペプシンはα−Laおよび変性したα−Laを分解するが、nativeなβ−Lgを分解しない(Neth. Milk dairy J., 47: 15−22, 1993)。トリプシンはα−Laをゆっくり加水分解するがβ−Lgはほとんど未分解のままである(Neth. Milk dairy J., 45: 225−240, 1991)。キモトリプシンはα−Laを速く分解するが、β−Lgはゆっくり分解される。パパインはウシ血清アルブミン(BSA)およびβ−Lgを加水分解したが、α−Laは抵抗性があった(Int. Dairy Journal 6: 13−31, 1996a)。しかしながら、Caを結合していないα−Laは酸性のpHでパパインにより完全に分解された(J. Dairy Sci., 76: 311−320, 1993)。乳タンパク質の酵素分解をコントロールして該タンパク質を修飾することにより、広範囲のpHおよびプロセッシング条件にわたって、該タンパク質の機能的特性を変更することができる(Enzyme and Chemical Modification of protein’s in Food proteins and their Applications pp. 393−423, 1997 Marcel Dekker, Inc., New York, 1997 ;Food Technol., 48: 68−71, 1994)。ペプチド結合の加水分解は、荷電基の数および疎水性の増加、低分子量化、および分子の立体配置の修飾をもたらす(J. Dairy Sci., 76: 311−320, 1993)。機能的特性の変化は大きく加水分解度に依存する。ホエイタンパク質の機能性に共通してみられる最も大きな変化は溶解性の増加と粘度の低下である。加水分解度が高い場合、しばしば、加水分解物は加熱しても沈澱せず、pH 3.5〜4.0で溶解性が高い。加水分解物は、また、intactなタンパク質よりもはるかに粘度が低い。この差異はとくにタンパク濃度が高い場合に顕著である。その他の影響は、ゲル特性の変化、熱安定性を高める、乳化および起泡性の増強、乳化および泡の安定性の低下である(Int. Dairy journal, 6: 13−31, 1996a;Dairy Chemistry 4,pp. 347−376, 1989;J. Dairy Sci., 79: 782−790, 1996)。
【0024】
in vitro活性の測定から推定される、アンギオテンシン変換酵素I(ACE)阻害活性の可能性のある数多くのペプチドに関する報告がある(例えば、J. Dairy Res., 67: 53−64, 2000;Br. J. Nutr., 84: S33−S37, 2000)。加水分解物から、さまざまなクロマトグラフィー技術を用いて、ACE阻害ペプチドを精製および同定する研究報告がなされている(例えば、Maruyama, S., & Suzuki, H.: Agricultural and Biological Chemistry, 46: 1393−1394, 1982;Miyoshi S. et al.: Agri. Biol. Chem., 55: 1313−1318, 1991;Food Science and Biotechnology, 8: 172−178, 1999;Biosci. Biotech. Biochem., 57: 922−925, 1993)。これらの報告から、ACE阻害活性は、さまざまな分離原理に基づくカラム操作で得られた数多くのフラクションに存在していると考えられ、これはACE阻害物質の分子特性がかなり多様であることを示している。ACE阻害が、さまざまなタンパク質、プロテアーゼおよび加水分解条件で産生される加水分解物中に見出されるという事実は、多様なアミノ酸配列をもったさまざまなペプチドもまた、ACE阻害活性を有する可能性を示唆している。このようなペプチドの化学的多様性のために、加水分解物のクロマトグラフィーによる精製は、部分的な活性ペプチドの損失を常に伴うこととなろう。加水分解中、ACE阻害活性は連続的に形成され一方で分解される。加水分解物の最大活性はこれら2つのプロセスの最適化の結果である。加水分解物の全体的なペプチド組成は、ACE阻害活性を決定し、それは加水分解酵素の特異性およびプロセス条件に依存する。
【0025】
そこで、必要とする加水分解を最小限にとどめ、ACE阻害活性を最大化すべく、response surface methodlogyを用いたホエイタンパク質加水分解の最適化についての報告(International Dairy Journal 12: 813−820, 2002)がなされている。
【0026】
ACE阻害活性を有するペプチドをに関する文献を参照すると、最も短い鎖長のペプチドはIPPおよびVPP〔吉川正明: ミルクの先端機能、吉川正明ら編、p. 188、弘学出版(1998)〕である。
また、α−Laおよびβ−Lgを、ペプシンまたはトリプシン単独で、あるいはペプシンとトリプシン、ペプシン、トリプシンおよびキモトリプシンとを組み合わせで得られた加水分解物(digests)、さらに、この加水分解物を2段階のUF濾過(カットオフ値30kDa→1 kDa)で処理した後のそれぞれの保持物(Retentate)および透過物(Permeate)のACE阻害活性を測定している(J. Dairy Res., 67: 53−64, 2000 )。それによると、α−Laおよびβ−LgのACE阻害活性(IC50)は、ともにトリプシン加水分解物(3 h)の<1 kDaのフラクションが最も高い値(α−La:IC50=109μg/mL、β−Lg=237μg/mL)を示している。このときα−LaのDHは6.2 %で、分子量分布は、>5 kDa:52 %、2−5kDa:15 %、1−2kDa:20 %、<1 kDa:13 %であり、β−LgのDHは6.7 %で、分子量の分布は、>5 kDa:23 %、2−5kDa:27 %、1−2kDa:28 %、<1 kDa:24 %である。
また、牛乳カゼイン由来のACE阻害ペプチドとして、アミノ酸残基5〜12からなるペプチドの報告がある(Agric Biol Chem., 49: 1405−1409, 1985 )。
一方、後述する実施例では、本発明のTNF−αおよび/またはIL−6産生抑制活性を有するペプチドは、鎖長(アミノ酸残基数)が5〜14であり、分子量は500〜1800の範囲内にある。
これらのことを勘案すると、本発明のTNF−αおよび/またはIL−6阻害活性を有するペプチドは、鎖長が3〜16、分子量分布が400〜2000kDa(1アミノ酸の分子量を130とした)と見積られる。
乳タンパクから派生するペプチドのサイトカイン産生に対する影響に関しては、ウシカゼイン由来のペプチドが、ネズミ骨髄マクロファージからのLPS誘導性TNF−αおよびIL−6産生を増加させるという報告(J. Sci. Food Agric., 81: 300−304, 2000)やprobiotic乳酸菌による発酵乳の上清中に、LPS刺激によるIL−6産生を誘導するペプチドが存在するという報告(Milchwissenschaft, 57(2): 66−70, 2002)がある。
【0027】
LPS誘導性TNF−αおよびIL−6産生を抑制する作用を有するペプチドについても、上記ACE阻害活性を有するペプチドのように、さまざまな分離原理に基づくカラム操作で得られた数多くのフラクションに存在している可能性を否定することはできない。
そこで、LPS誘導性TNF−α及び/又はIL−6産生の抑制効果を指標に乳タンパクの加水分解条件(変性温度、pH、温度、加水分解時間および酵素/基質の比)の最適化を上記文献(International Dairy Journal 12: 813−820, 2002)を参考に試みることができる。したがって、この結果得られた加水分解の最適化条件は本発明に包含される。
本願発明の実施例によって、ホエイタンパク質由来のペプチドがTNF−αおよび/またはIL−6産生抑制活性を有することが初めて見出された。そこで、さらに加水分解対象を広げ、また加水分解条件をさまざまに変更することによって、TNF−αおよび/またはIL−6産生抑制活性を指標に、該活性を有する新たなペプチドをスクリーニングする作業は、当業者にとって、なんら発明的努力を要しない、ルーチン的な作業となった。
【0028】
すなわち、TNF−αおよびIL−6量の測定方法は公知〔例えば、実験医学別冊、バイオマニュアルUP実験シリーズ、サイトカイン実験法、宮島 篤、山本 雅編、(株)羊土社、(1997)〕であること、当業者であれば、これら炎症性サイトカインの産生を抑制するペプチドをスクリーニングすべく、上記文献あるいは以下の関連文献を参照することによって、乳タンパク質のさまざまな加水分解条件を設定することが可能となった。
加水分解は、原理的には酸または塩基による加水分解も考えられるが、この方法は制御できないプロセスを含む。すなわち、タンパク質の分解が不規則に起こり、またアミノ酸のいくつかが分解される(例えばLeu、Valおよび/またはIleが破壊されうる)。したがって、通常は酵素加水分解が選択される。
酵素によるタンパク質加水分解物の機能性は、上記したようにDHに依存する。DHは、当業者公知の方法、例えば氷点降下から測定される浸透圧の上昇、OPAまたはTNBS法による遊離アミノ酸の測定、あるいはpHスタット法による遊離アミノ酸の測定、等によりモニターできる。DHは、原料、酵素の性質および反応条件(pH、温度および時間)によって制御することができる。
【0029】
また、カゼインを各種酵素で加水分解したときの典型的なDHの経時変化についての文献(食品と開発, vol. 31(2): 20−22)がある。すなわち、カゼインをAlcalaseRとフレーバーザイムの併用、フレーバーザイム、プロタメックス、NeutraseR、AlcalaseR、あるいはエスペラーゼを用いて加水分解したとき、AlcalaseRとNeutraseRはDHの経時変化が全く同様な形で推移し、加水分解1時間後までDEは急激に上昇(約14 %)し、それ以後は漸増している(4時間後にほぼ18 %)。プロタメックスのDEもほぼ同じ値で推移している。DEが最も高い値で推移するのはフレーバーザイム単独あるいはAlcalaseRとフレーバーザイムの併用であり、両者はほぼ同じ値で推移している。併用におけるDEは分解1時間後まで急激に上昇(約34 %)し、それ以後は漸増している(4時間後にほぼ53 %)。
【0030】
以上の文献から、分解時間6時間でほぼ最大のDE値が得られることが推定される。
特許3167723は、B. licheniformis由来のプロテアーゼとB. subtilis由来のプロテアーゼを用いてホエイタンパク質を非pHスタット法によりDE15〜35 %まで加水分解する方法を開示している。
特表平10−507641は、B. licheniformis由来の中性およびアルカリ性プロテアーゼと、A. oryzae由来のエンド/エクソプロテアーゼとの組み合わせによる乳タンパク質の加水分解方法を開示している。
一方、アレルギー患者の栄養管理、術前術後の患者の栄養管理に有用なオリゴペプチド混合物に関する特許3222638がある。オリゴペプチド混合物は、ホエイタンパク質を、バチルス属由来のプロテアーゼ〔ビオプラーゼ(ナガセ生化学工業)、アルカラーゼ(ノボ社)、プロテアーゼNアマノ(天野製薬)など〕と放線菌由来のプロテアーゼ〔アクチナーゼ(科研ファルマ社)、プロナーゼ(シグマ社)〕〕の2種類で加水分解した後、酵素と不溶性の加水分解物を除いたもので、平均鎖長3〜5、最大分子量1500以下、抗原性がβ−Lgの1/10,000以下で苦味や旨味が極めて少ないことを特徴としている。
【0031】
加水分解温度、pH、反応時間、および酵素添加量等は、酵素メーカーの使用説明書等を参考に決定することができるが、温度30〜65℃、pH 5〜9、反応時間20時間未満から上記文献を参照して選択されうる。
酵素失活は酵素の耐熱性に依存する。加水分解物は分画分子量5000〜20,000ダルトンのUF膜、好ましくは10000〜100,000ダルトンのUF膜で濾過する。この場合のカットオフ値は臨界的なものではない。カットオフ値の測定方法は膜メーカーによって異なり、標準化された方法はまだない。膜モジュールは、P & F(プレートアンドフレーム)型、TU(チューブラー)型、HF(ホローファイバー)型、SW(スパイラルワウンド)型、PL(プリーツ)型がある。UF濾過によって、パーミエイト中の2000ダルトンを大きく超える分子量を有する加水分解物は、大部分除かれる。
パーミエイトは、公知方法で濃縮・噴霧乾燥あるいは凍結乾燥することができる。
【0032】
α−Laのトリプシン加水分解物、β−Lgの加水分解物、あるいはLfの加水分解物のUFパーミエイトは、例えば、逆相HPLC(ODS Prep, 20×300 mm、Toso, Tokyo,Japan)で活性成分を分画することができる。0.1 % TFAを含むアセトニトリル(1 %/分)の直線勾配で溶出(10 mL/分)する。溶出は210 nmでモニターする。各フラクションを集めてTNF−α抑制活性あるいはIL−6抑制活性を測定する。活性画分は分子量<2 ,000ダルトンに存在する。
TNF−α抑制活性については、α−Laおよびβ−Lgにおいてそれぞれ3つのピーク、Lfにおいて4つのピークに該活性が認められる。これらのピークからペプチドを単離・精製し、分子量測定〔液体クロマトグラフ/質量分析計(LC−MSD:HP1100 series〕、およびアミノ酸配列を決定する。
【0033】
α−La、β−LgおよびウシLfの一次構造は公知(山内邦男, 横山健吉編, ミルク総合事典, (株)朝倉書店, 1997)である。
α−Laからは、WLAHK(アミノ酸残基104〜108位)、LAHKAL(アミノ酸残基105〜110位)、ならびにCEVFR(アミノ酸残基6〜10位)とLDQWLCEK(アミノ酸残基115〜122位)のC残基がS−S結合したペプチドLDQWLC(−CEVFR)EKが得られ、β−Lgからは、ALPMH(アミノ酸残基142〜146位)、ALPMHIR(アミノ酸残基142〜148位)およびFKIDALNE(アミノ酸残基83〜89位)が得られ、そしてLfからは、WQWR(アミノ酸残基41〜44位)、EDLIWK(アミノ酸残基283〜288位)、ETAEEVK(アミノ酸残基352〜358位)およびLGAPSITCVR(アミノ酸残基48〜57位)とCRのC残基がS−S結合したペプチドLGAPSITC(−CR)VRが得られうる。
したがって、α−La加水分解物のUFカットオフ値10,000のパーミエイトのTNF−α抑制活性活性成分はペプチドWLAHK、LAHKALおよびLDQWLC(−CEVFR)EKである。この3つのペプチドの少なくとも1つを含むα−La加水分解物は活性を有する。β−LgのそれはALPMH、ALPMHIRおよびFKIDALNEであり、この3つのペプチドの少なくとも1つを含むβ−Lg加水分解物は活性を有する。そしてLfからは、WQWR、EDLIWK、ETAEEVKおよびLGAPSITC(−CR)VRであり、この3つのペプチドの少なくとも1つを含むLf加水分解物は活性を有する。
α−La、β−LgおよびウシLfのトリプシン加水分解条件をさまざまに変更することにより活性ペプチドおよびその構成は変わりうる。したがって、本発明は上記活性ペプチドに限定されるものではない。トリプシン以外の他の酵素についても同様なことがいえる。
トリプシンはArg(R)、Lys(K)のカルボキシル側のペプチド結合を選択的に切断するエンドペプチダーゼとして作用する(生化学辞典第3版, (株)東京同人,1998 )。しかしながら、α−La由来のLAHKAL、ならびにβ−Lg由来のALPMHおよびFKIDALNEのC末端側は非特異的に切断されている。
そこで、いくつかの新たなトリプシン認識ペプチドを化学合成し、TNF−α抑制活性(以下、「活性」ともいう)を調べた。
FKIDALNE(アミノ酸残基82〜89位)のN末端の近傍に位置するトリプシン認識部位のK(アミノ酸残基77位)とFKIDALNEの間のIPAVの4残基とFKIDALNEのトリプシン認識部位のN末端のFK2残基とを繋いだペプチドIPAVFK(アミノ酸残基78〜83位)を合成した。このIPAVFKのTNF−α抑制活性を調べたところ活性が認められた(表1、ED50=7.1μM)。FKIDALNEのトリプシン認識部位のK以降のIDALNEと、FKIDALNEのC末端に隣接するNKを繋いだIDALNENK(アミノ酸残基84〜91位)も活性認められた(表1、ED50=3.2μM)。また、IPAVFKとIDALNENKとを繋いだペプチドIPAVFKIDALNENK(アミノ酸残基78〜91位)も活性が認められた(表1、ED50=0.8μM)。
IPAVFKIDALNENKのC末端のNKを除いたペプチドIPAVFKIDALNE(アミノ酸残基78〜89位)はC末端がトリプシンにより非特異的に切断されたペプチドであるが活性が認められた(表1、ED50=1.8μM)。
以上、新たに合成した4つのペプチドIDALNENK、IPAVFK、IPAVFKIDALNENKおよびIPAVFKIDALNEはトリプシンによる加水分解条件の条件設定により、得られうる。
ところで、IPAVFKを除く3つの上記ペプチドはいずれもIDALNE(アミノ酸残基84〜89位)を共有している。また、4つのペプチドのTNF−α抑制活性を比較すると、3つのペプチドのED50は0.8〜3.2μMである。一方、IPAVFKのED50は7.1μMと極めて弱いがIDALNEあるいはIDALNENKと繋いものは活性が3.9〜8.9倍と強くなる。これらのことを勘案すると、共通配列IDALNEはTNF−α抑制活性発現に必須であることが示唆される。そこでIDALNEのTNF−α抑制活性の測定、そして活性が認められた場合の、N末端あるいはC末端の逐次除去による活性発現に必須の最小アミノ酸配列(コア配列)を決定することができる。したがってこのようにして得られた活性を有するペプチドは本発明に包含される。
さらに、α−La、β−LgあるいはLfの一次構造上には上記ペプチド以外にトリプシン認識部位が存在する。そこで、トリプシンの加水分解条件をさまざまに変更することにより新たな活性ペプチドをスクリーニングすることができる。また、トリプシンで認識されるさまざま切断断片ペプチドを化学合成し、その活性を調べることができる。したがって、このようにして得られた活性を有するペプチドは本発明に包含される。
一方、α−La由来のLDQWLC(−CEVFR)EKのS−S結合を切断して得られたLDQWLCEKとCEVFRのTNF−α産生抑制活性を調べると、前者には活性が認められたが後者には認められなかった。また、ウシLf由来のLGAPSILC(−CR)VRのS−S結合を切断して得られたLGAPSITCVRとCRのTNF−α産生抑制活性を調べると前者には活性が認められたが後者には認められなかった。
以上の結果をまとめると、乳タンパク質のトリプシン特異的加水分解物あるいは非特異的加水分解物由来のTNF−α産生抑制活性を有するペプチドとして、α−LaからはWLAHK(配列番号1)、LAHKAL(配列番号2)およびLDQWLCEK(配列番号3)が、β−LgからはALPMH(配列番号4)、ALPMHIR(配列番号5)、FKIDALNE(配列番号6)、IDALNENK(配列番号7)、IPAVFK(配列番号8)、IPAVFKIDALNENK(配列番号9)、IPAVFKIDALNE(配列番号10)、そしてウシLFからはWQWR(配列番号11)、EDLIWK(配列番号12)、ETAEEVK(配列番号13)、LGAPSILCVR(配列番号14)が得られうる。これらペプチドの分子量あるいは乳タンパク質由来の生物学的活性を有するペプチドの分子量分布から、乳タンパク質のTNF−α産生抑制活性画分は分子量<2 ,000ダルトンに存在することが示唆される。
ここで、α−La由来のWLAHKとLAHKALはLAHKを共有している。そこでこれらのペプチド以外にLAHK、WLAHKA、WLAHKALおよびLAHKA の4ペプチドの存在が考えられ、TNF−α産生抑制活性の有無を確認することができる。したがって、活性が確認されたペプチドは本発明に包含される。
【0034】
また、上記ペプチドのいずれも、N末端あるいはC末端のアミノ酸残基を逐次欠失させ、それらの欠失ペプチドの活性を確認することができる。したがって、活性が確認された場合は本発明に包含される。
さらに、IPAVFKIDALNE、IPAVFKIDALNENKのペプチドにおいて、弱いながらIPAVFKは活性を有しており、したがってこの2つのペプチドのIPAVFK以降のアミノ酸残基を逐次欠失させたペプチドも活性を有する可能性が極めて高く、活性が確認されたそれぞれのペプチドは本発明に包含される。
さらに、活性が確認されたペプチドあるいはこれらのペプチドのアミノ酸残基を他のアミノ酸残基(D−アミノ酸を含む)に置換したペプチド誘導体も本願発明に包含される。D−amino acid decapeptide(PDP−58)がLPS刺激RAW264.7細胞およびネズミの大腸炎のTNF−α翻訳を阻害するがmRNAの合成には影響しなかったとする報告(Inflamm. res., 51: 479−482, 2002)はこれをサポートする。
また、α−La、β−LgあるいはウシLfの一次構造に基づき、全一次構造をカバーする、たがいに数残基(3〜5残基程度)オーバーラップペプチド(5〜10残基程度)を化学合成し、TNF−α産生抑制活性あるいはIL−6活性を指標に目的のペプチドをスクリーニングすることも可能である。ペプチドの化学合成法は公知である。Merrifield, R.B.によって開発された固相法(Biochemistry 1964, 3, pp. 1385; The Peptide 1979, 2, pp. 1−284, by ed E. Gross & J. Meienhofer)である。他に、同様の固相法で、フロー法を適用し、場合によって側鎖を酸に不安定な基で保護したFmoc−アミノ酸を用いて合成することもできる(Atherton, E. & Sheppard R. C. “Solid Phase peptide synthesis−a Practical approach”, IRL PRESS, Oxford, 1989 )。したがって活性が確認されたペプチドは全て本発明に包含される。
【0035】
しかしながら、食品としての利用を考えた場合、安全の面より、合成ペプチドよりも、食品タンパク質、とりわけ乳タンパク質を加水分解して得られるペプチドの方が望ましい。一方、経済的な面から、乳タンパク質加水分解物から、上記ペプチドを単離精製して用いることは、産業上実用的ではない。実施例で示すように、α−Laおよびβ−Lgの加水分解物の限外(UF)濾過のパーミエイトそのものがTNF−αあるいはIL−6産生を抑制する作用を有している。したがって、炎症緩和作用もつ経口・経腸栄養剤の添加物として、乳タンパク質加水分解物のUFパーミエイトそのものあるいはその乾燥物で十分と考えられる。
本発明のTNF−αあるいはIL−6産生を抑制する作用を有する乳タンパク加水分解物、該加水分解物から粗精製した該活性を有するペプチドあるいは精製ペプチドの1つもしくは2つ以上を含むものは、炭水化物、脂質、ビタミン類、ミネラル類等の適当な混合によって、SIRSにおける炎症緩和のための非経口および末梢非経口投与によく適する。
【0036】
すなわち、本発明の乳タンパク加水分解物、該加水分解物から粗精製したペプチドあるいは精製したペプチドは、侵襲による臓器不全予防のため、SIRS、CARSの制御に有用な経口・経腸栄養剤の製造のための使用に期待がもたれる。また、術前の栄養管理にも使用することができる。ペプチドの有効添加量の100 kcal中3 g(活性ペプチド換算)以上と推定されるが、有効量はヒトの実験により決定されるべきものである。具体的には、手術、外傷、熱傷、急性膵炎、感染症、腹膜炎、悪性腫瘍などのための経口・経腸栄養剤である。さらに新たに制定された保健機能食品の食品素材としてもその有用性が期待される。保健機能食品あるいはサプリメントに対する加水分解物のの配合量は、ペプチド換算で製品100 mL当たり0.9〜3 g好ましくは1.2〜2gと推定される。
【0037】
【実施例】
本発明を実施例および試験例により具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されて解釈されるものではない。
[実施例1] ホエイタンパク質加水分解物の調製
WPI(タンパク含量90%、ダビスコ社)、β−Lg(β−Lg含量90 %、ダビスコ社)、あるいはα−La(α−La含量90 %、ダビスコ社)をリン酸緩衝液に100mg/mlの濃度で溶解した。対照として、カゼインナトリウム(純度95%以上、和光純薬)を同濃度でリン酸緩衝液に溶解した。タンパク1 g当たりトリプシン(ブタ膵臓由来、活性:25 USPキモトリプシンUnits/mg以下、和光純薬)50 mgを添加し、37℃で6時間反応させた。反応後、20,000×g、10分で遠心して不溶性成分を沈殿除去した後、分画分子量10,000のUF膜処理(ミリポア社ウルトラフリー−MC)した。透過画分(パーミエイト)は0.22μmのMF膜(ミリポア社マイレックス−GV)処理後、実験に供した。
【0038】
[実施例2] WPI加水分解物の調製
WPI(タンパク含量90%、ダビスコ社)をリン酸緩衝液に100mg/mlの濃度で溶解し、以下の4つの反応区分に分けた。
(1)トリプシン(実施例1と同じ、以下同様)を添加し、50℃で5時間反応させた。
(2)プロテアーゼAアマノGを50 mg添加し、50℃で5時間反応させた。
(3)トリプシンを添加し、50℃で5時間反応させた後、さらに、プロテアーゼAアマノGを50 mg添加し、50℃で5時間反応させた。
(4)プロテアーゼAアマノGを50 mg添加し、50℃で5時間反応させた後、さらに、トリプシンを50 mg添加し、50℃で5時間反応させた。
反応終了後、15分間煮沸した。遠心処理(20,000×g、10分)後、分画分子量10,000のUF膜処理(ミリポア社ウルトラフリー−MC)した。パーミエイトは0.22μm MF膜処理後、実験に供した。
【0039】
[実施例3] β−Lg由来およびα−La由来のTNF−α産生抑活性を有するペプチドの同定
β−Lg(β−Lg含量90%、ダビスコ社)、あるいはα−La(α−La含量90%、シグマ社)のトリプシン加水分解物を、実施例1に準じて調製した。
これらのトリプシン加水分解物の活性成分を逆相HPLCで分画した。分析カラムはC18 SG120(資生堂)4.6 mmφx 250 mmを、移動相はアセトニトリル/0.1%TFAの溶媒による直線濃度勾配を用いた。分取カラムは、C18 SG120 (資生堂)15 mmφx 250 mmを用い、同様の溶媒で行った。β−Lg由来のペプチドの逆相HPLCのクロマトグラムを図4に、α−La由来のペプチドの逆相HPLCのクロマトグラムを図6に示す。
[試験例1] TNF−α産生抑制作用
実施例1における、分解前のWPI、β−Lg、α−Laおよびカゼイン、あるいはこれらの加水分解物について、TNF−α産生抑制作用を調べた。
THP−1細胞(急性単球性白血病患者由来、理化学研究所)を、10%ウシ胎児血清(FBS:三菱化学)、ホルボールエステル(TPA、和光純薬) 200 nMを含むRPMI 1640培地(Sigma)中、5%CO2の条件下で37℃、72時間培養し、単球・マクロファージに分化誘導させた。
分化誘導後、分解前のWPI、β−Lg、α−La、およびカゼインを0 mg/mL(対照)、0.1 mg/mL、1.0 mg/mL、あるいは加水分解物を0 mg/mL(対照)、0.02 mg/mL、0.2 mg/mL含むRPMI 1640培地に交換し、2時間培養した。次いでLPS(List Biol. Lab. Inc.)を 100 ng/mlの終濃度で培地に添加し、4時間培養した。培養上清中のTNF−α量を、市販のTNF−α測定用ELISAキット(アマシャムバイオサイエンス)で測定した。分解前のWPI、β−Lg、α−La、およびカゼインのTNF−α産生抑制作用を図1に、これらの加水分解物のTNF−α産生抑制作用を図2、8および9に示す。
各ホエイタンパク、各ホエイタンパク質のトリプシン分解物はいずれもTNF−α産生抑制効果を示した。カゼインは分解前も分解後もTNF−α産生抑制効果を示さなかった。ホエイタンパク質のトリプシン分解物は熱安定性が高く、加熱処理してもTNF−α産生抑制作用を有するので、炎症反応緩和のため、全身性炎症反応症候群(SIRS)患者用の経口・経腸栄養剤に添加することが可能である。
【0040】
[試験例2] プロテアーゼの組み合わせによる加水分解物のTNF−α産生抑制作用
実施例2で得られたWPIの各プロテアーゼ加水分解物について、試験例1の方法に準じて、培養上清中のTNF−α産生量を測定した。結果を図3に示す。
トリプシンによるWPIの加水分解物のTNF−α産生抑制作用は、AアマノGによる加水分解物のそれよりも強かった。
一方、WPIをトリプシンで分解後さらにAアマノGで分解(トリプシン→AアマノG)した場合、あるいは逆に、WPIをAアマノGで分解後トリプシンで分解(AアマノG→GPTN6.0S)した場合、いずれもTNF−α産生抑制作用はほぼ同程度で、トリプシン単独のそれよりもやや強い傾向を示した。このことは、2つの酵素の組み合わせにより、よりTNF−α産生抑制活性の高い分解物が得られることを示唆している。
[試験例3] TNF−α産生抑制活性を有するペプチドの単離・精製
実施例1と同様の方法で調製したβ−Lg、α−Laおよび同様に実施例1の方法で調製したウシLf(Wako社)のUFパーミエイトを逆相HPLCで分画した(図4、6および11)。各ピークを分取し、それらのTNF−α産生量(TNF−α産生抑制活性)を試験例1の方法に準じて測定した。その結果、β−Lgおよびα−Laについてそれぞれ3つのピーク、そしてLfは4つのピークにTNF−α産生抑制活性が認められた。そこで各ピークを精製し、分子量測定〔液体クロマトグラフ/質量分析計(LC−MSD:HP1100 series〕およびアミノ酸配列を決定した。β−LgからはALPMH、ALPMHIRおよびFKIDALNE、α−LaからはLAHKAL、WLAHK、ならびにCEVFRとLDQWLCEKのC残基がS−S結合したペプチド、そしてLfからはETAEEVK、LGAPSITCVRとCRのC残基がS−S結合したペプチド、WQWRおよびEDLIWKが得られた。β−Lgについては、その一次構造に基づき、FKIDALNEのN末端に隣接するIPAV4残基とN末端FKの2残基を結合したIPAVFK、FKIDALNEのN末端のFKを除き一方C末端にNKを付加したIDALNENK、FKIDALNEのN末端に隣接するIPAVの4残基をN末端に付加したIPAVFKIDALNE、さらにFKIDALNEのC末端に隣接するNKを付加したIPAVFKIDALNENKを化学合成した。また、α−Laについて、CEVFRとLDQWLCEKのS−S結合を切断して得られたCEVFRとLDQWLCEKのTNF−α産生抑制活性を調べた結果、CEVFRには活性が認められなかった。
また、ウシLfについて、LGAPSILCVRとCRのS−S結合を切断して得られたLGAPSITCVRとCRのTNF−α産生抑制活性を調べた結果、CRには活性が認められなかった。以上の結果をまとめると、乳タンパク質由来のTNF−α産生抑制活性を有するペプチドとして、α−LaからはWLAHK(配列番号1)、LAHKAL(配列番号2)およびLDQWLCEK(配列番号3)が、β−LgからはALPMH(配列番号4)、ALPMHIR(配列番号5)、FKIDALNE(配列番号6)、IDALNENK(配列番号7)、IPAVFK(配列番号8)、IPAVFKIDALNENK(配列番号9)、IPAVFKIDALNE(配列番号10)、そしてLFからはWQWR(配列番号11)、EDLIWK(配列番号12)、ETAEEVK(配列番号13)、LGAPSILCVR(配列番号14)が得られた。
ホモロジー検索の結果、配列番号3、6、7、8、9、10、13および14は新規物質であることが判明した。配列番号1、2、4および5は、アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する報告(Journal of Dairy Research, 67: 65−71, 2000; British Journal of Nutrition, 84: Suppl. 1: S33−37, 2000 )があるが、TNF−α産生抑制活性については報告がない。また、WQWRは抗疱疹作用、EDLIWKは抗ガン、抗アポトーシス、抗潰瘍剤、創傷治療剤、強心剤、抗heparin、抗ichemia、抗酸化剤としての用途がある。
これらのペプチドのアミノ酸配列に基づいて、それぞれの対応するペプチドを合成し、合成ペプチドのTNF−α産生抑制作用を試験例1の方法に準じて調べた。その結果、これらのペプチドは全て1〜10μg/mLで濃度依存的にTNF−α産生抑活性を示した(図5、7、10および11)。これらのペプチドのED50(50 % effective dose)を表1にまとめて示した。
【0041】
【表1】
【0042】
[試験例4] IL−6産生抑制作用
6週齢のICRマウス(雄)を購入し、1週間AIN−93M飼料および飲水を自由摂取させ馴化させた。1群7匹として、体重の平均値が等しくなるように、カゼイン分解物投与群(5mg/マウス)、β−Lgトリプシン分解物投与群(5mg/マウス)、α−Laトリプシン分解物投与群(5mg/マウス)、FKIDALNE(配列番号6)投与群(1mg/マウス)、FKIDALNE(配列番号6)投与群(5mg/マウス)、LDQWLCEK(配列番号3)投与群(1mg/マウス)、LDQWLCEK(配列番号3)投与群(5mg/マウス)の7群に分けた。試料は3日間連続(13:00)してゾンデを用いて経口投与した。最終投与から24時間後、LPSを50μg/マウスで腹腔内投与した。90分後に眼窩より採血し遠心操作により血清を得た。血清中のIL−6濃度をELISAにより測定した(図13)。Fisher PSLDによる統計学的処理により、カゼイン投与群に対する有意差を検定した。
β−Lgトリプシン分解物投与群、FKIDALNE(配列番号6)投与群およびLDQWLCEK(配列番号3)投与群のIL−6濃度は、カゼインに対して濃度依存的に有意に低下(**p<0.05)し、後者2群の低下は濃度依存的であった。
【0043】
【発明の効果】
本発明により、TNFやIL−6などの炎症性サイトカイン産生に刺激を加えることなく、それを抑制しつつ、免疫能を賦活化する作用を有する、経口摂取可能なペプチドを提供することができた。また、生体侵襲時の代謝異常や臓器障害を防止しかつ免疫能を亢進させる経口・経腸栄養剤の製造に使用する該ペプチドを提供することができた。さらにまた、栄養補給や健康維持などに有用な保健機能食品(特定保健用食品および栄養機能食品)の製造に使用する該ペプチドを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】THP−1細胞の単球・マクロファージへの分化誘導後における、未分解のWPI、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミンあるいはカゼインの、LPS誘導TNF−α産生抑制効果を示す。
【図2】WPI、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミンおよびカゼインのトリプシン加水分解物の、同上TNF−α産生抑制効果を示す。
【図3】WPIのトリプシン(ブタ膵臓由来、Wako社)加水分解物、WPIのAアマノG加水分解物、WPIのトリプシンとAアマノGの組み合わせによる加水分解物、およびAアマノGとトリプシンの加水分解物の、同上TNF−α産生抑制作用を示す。
【図4】β−ラクトグロブリンのトリプシン加水分解物のUFパーミエイトの逆相HPLCクロマトグラムを示す。
【図5】β−ラクトグロブリン由来のペプチドALPMH、ALPMHIRおよびFKIDALNEの同上TNF−α産生抑制作用を示す。
【図6】α−ラクトアルブミンのトリプシン加水分解物のUFパーミエイトの逆相HPLCクロマトグラムを示す。
【図7】α−ラクトアルブミン由来のペプチドWLAHK、LAHKAL、CEVFRおよびLDQWLCEKの同上TNF−α産生抑制作用を示す。
【図8】β−ラクトグロブリンのトリプシン加水分解物の各濃度における同上TNF−α産生抑制作用を示す。
【図9】α−ラクトアルブミンのトリプシン加水分解物の各濃度におけるTNF−α産生抑制作用を示す。
【図10】β−ラクトグロブリン由来のペプチドIDALNENK、IPAVFK、IPAVFKIDALNEおよびIPAVFKIDALNENKの、同上TNF−α産生抑制作用を示す。
【図11】ウシラクトフェリンのトリプシン加水分解物の逆相HPLCのクロマトグラムを示す。
【図12】ウシラクトフェリン由来のペプチドWQWR、EDLIWK、ETAEEVKおよびLGAPSILCVRの各濃度におけるTNF−α産生抑制作用を示す。
【図13】カゼイントリプシン加水分解物、β−Lgトリプシン分解物、α−Laトリプシン加水分解物、β−Lg由来のペプチドFKIDALNE、あるいはα−La由来のLDQWLCEKマウスにおける経口摂取後の血清中のLPS誘導IL−6の産生抑制作用を示す。
Claims (18)
- カゼイン、カゼイネート、ホエイタンパク質単離物(WPI)、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、ウシラクトフェリンおよびトータルミルクプロテイン(TMP)からなる群より選ばれる乳タンパク質の酵素加水分解物の、5,000〜100,000ダルトンのカットオフ値を有する限外濾過膜(UF)パーミエイトとして得られるTNF−αおよび/またはIL−6抑制作用を有する加水分解物。
- β−ラクトグロブリンのトリプシン加水分解物で、カットオフ値が10,000である請求項1記載の加水分解物。
- 溶出パターンが図4に示す逆相HPLCのクロマトグラムで示される請求項2記載の加水分解物。
- ALPMH、ALPMHIRおよびFKIDALNEからなる群より選ばれる少なくとも1つ若しくは2つ以上のペプチドを含む請求項2記載の加水分解物。
- α−ラクトアルブミンのトリプシン加水分解物で、カットオフ値が10,000である請求項1記載の加水分解物。
- 溶出パターンが図6に示す逆相HPLCのクロマトグラムで示される請求項5記載の加水分解物。
- WLAHK、LAHKALおよびLDQWLC(−CEVFR)EKからなる群より選ばれる少なくとも1つ若しくは2つ以上のペプチドを含む請求項5記載の加水分解物。
- ウシラクトフェリンのトリプシン加水分解物で、カットオフ値が10,000である請求項1記載の加水分解物。
- 溶出パターンが図11に示す逆相HPLCのクロマトグラムで示される請求項8記載の加水分解物。
- WQWR、EDLIWK、ETAEEVKおよびLGAPSITC(−CR)VRからなる群より選ばれる少なくとも1つ若しくは2つ以上のペプチドを含む請求項8記載の加水分解物。
- 請求項1〜10のいずれか1項記載の加水分解物の有効量を含有する、生体侵襲時の栄養管理のための経口・経腸栄養剤。
- 請求項1〜10のいずれか1項記載の加水分解物の有効量を含有する、全身性炎症反応症候群(SIRS)の症状を緩和する作用を有する、経口・経腸栄養剤。
- 請求項1〜10のいずれか1項記載の加水分解物の有効量を含有する、炎症反応を緩和する作用を有する保健機能食品。
- 請求項1〜10のいずれか1項記載の加水分解物の有効量を含有する、炎症反応を緩和する作用を有するサプリメント。
- 請求項11記載の経口・経腸栄養剤を製造するための請求項1〜8のいずれか1項記載の加水分解物の使用。
- 請求項12記載の経口・経腸栄養剤を製造するための請求項1〜8のいずれか1項記載の加水分解物の使用。
- 請求項13記載の保健機能食品を製造するための請求項1〜8のいずれか1項記載の加水分解物の使用。
- 請求項14記載のサプリメントを製造するための請求項1〜8のいずれか1項記載の加水分解物の使用。
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