JP2004143009A - 溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製における有機溶媒の再生方法 - Google Patents
溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製における有機溶媒の再生方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製工程において、同様の溶媒抽出法に好適に再利用することのできる再生有機溶媒、およびタンタル精製液および/またはニオブ精製液を極めて経済的かつ簡便に得る、有機溶媒の再生方法を提供する。
【解決手段】タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させる工程(再生工程)を複数回実施して、タンタルまたはニオブの一方および不純物が低減された再生有機溶媒を得るとともに、少なくとも初回の再生工程(第一の再生工程)においてタンタルまたはニオブの一方の精製液を得ることを含んでなる。また、好ましくは以上を前記タンタルまたはニオブの一方がタンタルの場合とニオブの場合と両方実施することを含んでなる。
【選択図】 図1
【解決手段】タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させる工程(再生工程)を複数回実施して、タンタルまたはニオブの一方および不純物が低減された再生有機溶媒を得るとともに、少なくとも初回の再生工程(第一の再生工程)においてタンタルまたはニオブの一方の精製液を得ることを含んでなる。また、好ましくは以上を前記タンタルまたはニオブの一方がタンタルの場合とニオブの場合と両方実施することを含んでなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製における有機溶媒の再生方法、さらには該方法を適用したタンタル精製液および/またはニオブ精製液ならびに酸化タンタルおよび/または酸化ニオブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶媒抽出法を用いるタンタルおよびニオブの分離精製方法は、例えば以下の方法で行われる。すなわち、(1)タンタルおよびニオブを含有する水溶液中に含まれるタンタルのほぼ全量を有機溶媒に抽出して、ニオブの大部分を水溶液に残存させる。(2)上記(1)で得られたタンタルのほぼ全量を抽出した有機溶媒を希硫酸で洗浄して、ニオブおよびその他の不純物が低減されたタンタル含有有機溶媒を得る。(3)上記(2)で得たニオブおよびその他の不純物が低減されたタンタル含有有機溶媒を水または水溶液で逆抽出してタンタル精製液を得る。
(4)上記(1)で得られたニオブの大部分が残存した水溶液に含まれるニオブのほぼ全量を有機溶媒に抽出して、その他の不純物の大部分を水溶液に残存させる。(5)上記(4)で得られたニオブのほぼ全量を抽出した有機溶媒を希硫酸で洗浄して、不純物が低減されたニオブ含有有機溶媒を得る。(6)上記(5)で得られたニオブのほぼ全量を抽出した有機溶媒を水または水溶液で逆抽出してニオブ精製液を得る。そして、上記(3)で産出した逆抽出された有機溶媒は通常(1)の工程で、また、上記(6)で産出した逆抽出された有機溶媒は通常(4)の工程で再利用される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記(1)工程で得られて(4)工程に供用するニオブの大部分が残存する水溶液にタンタルが微量でも含まれると、(4)〜(6)工程で有機溶媒を再利用を繰り返すにつれて有機溶媒中にタンタルが蓄積されることとなる。その結果、上記(6)工程において得られるニオブ精製液中に、タンタルが無視し得ない量含有されてしまう。
一方、上記(3)工程で産出した逆抽出された有機溶媒中にタンタルが多く残留している、あるいは、上記(6)工程で産出した逆抽出された有機溶媒中にニオブが多く残留していると、上記(1)または(4)で有機溶媒を再利用したとき、タンタルまたはニオブの抽出が不十分となる場合があり、タンタルまたはニオブの損失といった結果を招く。
上記(1)工程でタンタルを損失するということは、先に説明したようにニオブ精製液中にタンタルが無視し得ない量含有されてしまう結果となるのである。
【0004】
これらの問題を回避するために、上記(3)、(6)で逆抽出に使用する水または水溶液の使用量を例えば2倍以上に増やすことが考えられる。この場合には、上記(6)工程で産出する逆抽出された有機溶媒中に残留するニオブの量をある程度低減することができると考えられる。しかしながら、上記(3)工程で産出する逆抽出された有機溶媒中および上記(6)工程で産出する逆抽出された有機溶媒中に残留するタンタルについては、逆抽出に使用する水または水溶液の量を増やしても低減効果が低いため、現実的な解決策とは言えない。
【0005】
また、溶媒抽出法を用いるタンタルおよびニオブの分離精製方法の別の形態として、i)タンタルおよびニオブを含有する水溶液中に含まれるタンタルおよびニオブを有機溶媒に抽出して不純物を水溶液中に残す。ii)上記i)で得られたタンタルおよびニオブを抽出した有機溶媒を希硫酸で逆抽出してニオブをほぼ完全に逆抽出してニオブ液およびタンタル含有有機溶媒を得る。iii)上記ii)で産出したタンタル含有有機溶媒を水で逆抽出してタンタル精製液を得る。iv)上記ii)で得られたニオブ液に含まれるタンタルを有機溶媒に抽出してニオブ精製液および少量のタンタルおよびニオブを抽出した有機溶媒を得る。そして、上記iii)で産出した逆抽出された有機溶媒は上記i)工程で、また、上記iv)工程で産出した少量のタンタルおよびニオブを含有する有機溶媒は上記ii)工程で再利用される(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この場合も、上記iii)工程で産出した逆抽出された有機溶媒中にタンタルが多く残留していると、上記i)工程に再利用したときニオブの抽出が不十分となり、ニオブの損失という結果を招く。これを防ぐために、有機溶媒の量および/またはタンタルを逆抽出するのに使用する水の量を増やすことが考えられるが、得られる効果が不十分になりやすい。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−193622号公報
【0008】
【発明の概要】
本発明者らは、今般、溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製工程において、タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させる工程(一般には、逆抽出あるいは剥離と呼ばれている)を1回だけではなく複数回実施することにより、同様の溶媒抽出に好適に再利用することのできる再生有機溶媒、およびタンタル精製液またはニオブ精製液の一方を極めて経済的かつ簡便に得られるとの知見を得た。
【0009】
したがって、本発明は、溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製工程において、同様の溶媒抽出に好適に再利用することのできる再生有機溶媒、およびタンタル精製液またはニオブ精製液を極めて経済的かつ簡便に得ることを目的としている。
【0010】
そして、本発明の有機溶媒を再生して少なくともその一部を再利用する溶媒抽出法を用いるタンタルおよび/またはニオブの分離精製における有機溶媒の再生方法は、
タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させる工程(再生工程)を複数回実施して、タンタルまたはニオブの一方および不純物が低減された再生有機溶媒を得るとともに、少なくとも初回の接触(第一の再生工程)によりタンタルまたはニオブの一方の精製液を得ることを含んでなる。
【0011】
そして、本発明のタンタル精製液および/またはニオブ精製液の製造方法は、タンタルおよび/またはニオブならびに不純物を含有する水系原料液を用意し、
溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製を行う際に上記有機溶媒の再生方法を行うことを含んでなる。
【0012】
本発明の酸化タンタルおよび/または酸化ニオブの製造方法は、
上記のタンタル精製液および/またはニオブ精製液の製造方法により製造されたタンタル精製液および/またはニオブ精製液とアンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種の沈澱剤とを混合して、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを沈殿させ、
固液分離により水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを得て、
水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを、所望により乾燥した後、焼成して酸化タンタルおよび/または酸化ニオブを得ることを含んでなる。
【0013】
【発明の具体的説明】
有機溶媒の再生方法
本発明の有機溶媒の再生方法は、有機溶媒を再生して少なくともその一部を再利用する溶媒抽出法を用いるタンタルおよび/またはニオブの分離精製に適用されるものである。そして、本発明の有機溶媒の再生方法の処理対象は、溶媒抽出法によりタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒である。
本明細書において、「不純物」とは、タンタルまたはニオブの一方以外であって、水酸化物として沈殿させて焼成してもほとんど揮発しない成分をいう。したがって、「不純物」には、タンタルまたはニオブの一方がタンタルの場合のニオブ、タンタルまたはニオブの一方がニオブの場合のタンタル、タンタルおよびニオブ以外の金属、SiおよびP等が包含されるが、フッ素やアンモニウムイオンは包含されない。ただし、有機溶媒がP含有有機溶媒の場合は、有機溶媒由来のPは包含されない。また、「その他の不純物」とは、タンタル、ニオブ以外の不純物をいう。したがって、「タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒」とは、言い換えれば、タンタルまたはニオブの一方を含有し、タンタルまたはニオブの他方およびその他の不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒のことである。そして、「不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒」とは、有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方に対する不純物の量が合計で2質量%以下である有機溶媒を意味する。
そして、この処理対象としての精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させる工程(再生工程)を複数回実施して、タンタルまたはニオブの一方および不純物が低減された再生有機溶媒を得るとともに、少なくとも初回の再生工程(第一の再生工程)においてタンタルまたはニオブの一方の精製液を得ることを含んでなる。
【0014】
処理対象
本発明の有機溶媒の再生方法の処理対象は、溶媒抽出法によりタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒である。
このようなタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒は以下のようにして得ることができる。
まず、タンタルおよび/またはニオブを含有する原料を、必要に応じて、粉砕、アルカリ水溶液による疎解、フッ化水素酸以外の鉱酸による洗浄等の処理を行った後、少なくともフッ化水素酸を含有する酸により溶解して水系原料液(以下、単に原料液という)を得る。この原料液を、必要に応じて、タンタルおよび/またはニオブ濃度の調整、フッ化水素酸濃度の調整、フッ化水素酸以外の鉱酸(例えば硫酸)の濃度の調整等の液調整を実施した後、溶媒抽出法による分離精製を行い、タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得る。
以下に、タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得るための溶媒抽出法について詳細に説明する。
【0015】
最初に、原料液がニオブを含み、タンタルを実質的に含まないか少量しか含まない場合について説明する。まず、有機溶媒を原料液または原料液を液調整した液と接触させて、ニオブのほぼ全量とその他の不純物の一部を有機溶媒に抽出して、その他の不純物の大部分を抽出残液に残す(ニオブ全抽出)。そして、ニオブのほぼ全量とその他の不純物の一部を抽出した有機溶媒を鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等の水溶液で洗浄してその他の不純物を低減して、ニオブを含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得る。ただし、原料液が含有するその他の不純物があまり多くなければ、洗浄は実施しない場合もある。また、原料液が少量のタンタルを含有しているとほぼ全量が有機溶媒に抽出され、洗浄してもほとんど低減されない。したがって、原料液が少量のタンタルを含有している場合は前処理として少量の有機溶媒と接触させてタンタルを抽出して原料液中のタンタルを低減しておくことが望ましい。
【0016】
次に、原料液がタンタルを含み、ニオブを実質的に含まないか少量しか含まない場合について説明する。まず、有機溶媒を原料液または原料液を液調整した液と接触させて、タンタルのほぼ全量と不純物の一部を有機溶媒に抽出して、不純物の大部分を抽出残液に残す(タンタル全抽出)。そして、タンタルのほぼ全量と不純物の一部を抽出した有機溶媒を鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等の水溶液で洗浄して不純物を低減して、タンタルを含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得る。ただし、原料液が含有する不純物があまり多くなければ、洗浄は実施しない場合もある。原料液が不純物としてニオブを含有していても、抽出および洗浄で低減することが可能である。
【0017】
さらに、原料液がタンタルおよびニオブを含有する場合について説明する。
主な方法として二種類の方法がある。
第1の方法は、(1)有機溶媒を原料液または原料液を液調整した液と接触させてタンタルのほぼ全量、ニオブおよびその他の不純物の一部を有機溶媒に抽出して、抽出残液にニオブおよびその他の不純物の大部分を残す(タンタル優先抽出)。(2)上記(1)で得られた有機溶媒を鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等の水溶液で洗浄して不純物を低減して、タンタルを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒を得る。
また、(4)有機溶媒を上記(1)で得られたニオブおよびその他の不純物を含有する抽出残液(必要に応じて液調整を行ったもの)と接触させて抽出残液中のニオブのほぼ全量とその他の不純物の一部を有機溶媒に抽出して、その他の不純物の大部分を抽出残液に残す(ニオブ全抽出)。(5)上記(4)で得られた有機溶媒を鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等で洗浄してその他の不純物を低減してニオブを含有して不純物を少量しか含有しない有機溶媒を得る。
原料液がその他の不純物を少量しか含有していない場合は、上記(5)の洗浄は実施しない場合がある。
この形態の場合、タンタルを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒およびニオブを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒の両方が産出する。もちろん、両方に本発明の有機溶媒の再生方法を適用するのが好ましいが、片方だけに本発明の有機溶媒の再生方法を適用する構成としてもよい。
【0018】
また、原料液がニオブよりもタンタルを多く含有する場合は、上記(1)にて得られる抽出残液に含まれるタンタルの量が多くなってしまうことがある。
このような場合には、(1)にて得られた抽出残液を、(4)に供給する前に少量の有機溶媒と接触させて、タンタルを有機溶媒に抽出して抽出残液に含まれるタンタルを低減しておくとよい。
あるいは、(1)の前に原料液を有機溶媒と接触させてタンタルの一部を有機溶媒に抽出し、タンタルよりニオブを多く含有する抽出残液を得て、該抽出残液を(1)に原料液の代わりとして供給してもよい。
これらの方法は、いずれも(1)のタンタル優先抽出を2段階にて行いタンタルの抽出をほぼ完全に行う方法と考えることができる。
これらの方法では、いずれも2種類の少なくともタンタルを含有した有機溶媒を産出するが、2種類の有機溶媒は合わせて(2)に供給してもよいし、別々に(2)に供給することもできる。
別々に供給する場合は、(2)は2系列となる。この場合、(2)の後の再生工程は2系列のまま行ってもよいが、1系列に戻して行ってもよい。
【0019】
原料液がタンタルおよびニオブを含有する場合の第2の方法について説明する。
i)有機溶媒を原料液と接触させてタンタルおよびニオブのほぼ全量を有機溶媒に抽出し、その他の不純物を抽出残液に残す(タンタルニオブ全抽出)。
iia)上記i)で得られた有機溶媒を鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等で洗浄して有機溶媒中の他の不純物を低減する。なお、原料液がその他の不純物を少量しか含有していない場合は、上記iia)の洗浄は実施しない場合がある。iib)上記iia)で得られたその他の不純物が低減された有機溶媒を水またはiia)で使用したものより低濃度の鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等の水溶液と接触させ有機溶媒中のニオブのほぼ全量とタンタルの一部を水溶液に(逆)抽出し、タンタル含有ニオブ液とタンタルを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒を得る。iv)上記iib)で得られたタンタル含有ニオブ液は有機溶媒と接触させてタンタルのほぼ全量とニオブの一部を有機溶媒に抽出して、ニオブ精製液を得る。そして、上記iv)で産出した有機溶媒は、上記i)で得られた有機溶媒と合せて上記iia)に供給される、あるいは、上記iia)で得られた有機溶媒と合せて上記iib)に供給される。したがって、この形態では処理対象としてタンタルを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒だけが産出する。ただし、上記iv)工程を上記iib)で得られたタンタル含有ニオブ液を有機溶媒と接触させてニオブおよび不純物として少量含まれるタンタルのほぼ全量を有機溶媒に抽出する構成とすればニオブを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒も産出する。この有機溶媒は本発明の有機溶媒の再生方法を適用した後にiv)で再利用される。
【0020】
以上説明したいずれの形態においても有機溶媒は特に限定されるものではない。好ましい有機溶媒として、4−メチル−2−ペンタノン(別名:メチルイソブチルケトン、略称:MIBK)、トリブチルホスフェート(略称:TBP)が挙げることができる。4−メチル−2−ペンタノンは、通常希釈しないでそのまま使用する。トリブチルホスフェートは、同一質量当たりの価格は4−メチル−2−ペンタノンより高いが、4−メチル−2−ペンタノンと比較して分離精製能力が同等もしくはそれ以上であり、しかも水溶液への溶解度が4−メチル−2−ペンタノンに比べてかなり低いため損失が少なく補充量も少なくて済む。トリブチルホスフェートは、通常、石油系炭化水素希釈剤にて希釈して使用される。トリブチルホスフェート単独で使用すると、特に金属を多量に抽出させる場合に、水相との比重差が非常に小さくなってしまい、分相しにくくなるという不都合があるためである。石油系炭化水素希釈剤としては、特に限定されず種々の有機溶媒が使用可能である。この石油系炭化水素希釈剤の例としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ベンゼン、ケロシン、ジエチルベンゼン、IPソルベント(出光石油化学社製)、シェルゾールA(シェル化学社製)、イプゾール150(出光石油化学社製)が挙げられる。
【0021】
本発明の有機溶媒の再生方法の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得るための溶媒抽出方法の主なものは上記説明した方法であるが、これらに限定されず、公知の方法を単独であるいは適宜組み合わせて適用可能である。
【0022】
また、本発明の処理対象である有機溶媒が含有する不純物の合計量はタンタルまたはニオブの一方に対して2%以下であり、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。2%を超えると本発明の再生工程で得られるタンタルまたはニオブの一方の精製液中の不純物が多くなり通常用途には使用できない場合が多くなるためである。
ただし、これは本発明の再生方法を実施していることが前提であり、本発明の再生方法を実施しないで通常の再生方法(再生工程は1回のみ)を実施すると、タンタルまたはニオブの一方がニオブの場合、有機溶媒を循環使用するとタンタルが有機溶媒中に蓄積して、洗浄によりその他の不純物を低減した後の有機溶媒が含有するタンタルがニオブに対して2%を超えてしまう場合もある。
【0023】
再生工程
再生工程は、処理対象である溶媒抽出法によりタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させて、有機溶媒中のタンタルまたはニオブの一方および不純物を低減する工程で、一般には逆抽出あるいは剥離等と呼ばれている。
本発明は、タンタルおよび/またはニオブの溶媒抽出による分離精製においては従来1回であった再生工程を複数回行うことにより、再利用することのできる再生有機溶媒およびタンタル精製液またはニオブ精製液を極めて経済的かつ簡便に得ることができるようにしたものである。
本発明において、再生工程の回数は、新たな水または水溶液を使用する場合1回とする。そして、再生工程を例えばミキサーセトラーによる向流接触により行う場合、途中の段に新たな水または水溶液を供用しない限り、多段であっても1回の再生工程である。したがって、本発明は例えば第二の再生工程から産出した水溶液の全量を系外に抜出すのではなく、その一部を新たな水または水溶液とともに第一の再生工程に供用する等の形態を排除するものではない。しかしながら、このような形態は再生の効率を低下させる恐れがあるため、後述する実施例のように、各再生工程から産出した水溶液は全量系外に抜出すことが好ましい。すなわち、再生工程(例えば第二の再生工程)から産出した水溶液の一部をその前の再生工程に(例えば第一の再生工程)戻すことはしないことが好ましい。
以下、再生工程を第一の再生工程と第二の再生工程以降に分けて説明する。
【0024】
第一の再生工程
本発明の再生方法においては、第一の再生工程で、処理対象である溶媒抽出法によりタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させて、有機溶媒中のタンタルまたはニオブの一方を低減するとともに、タンタル精製液およびニオブ精製液の一方を得る。
【0025】
水としては、特に、純水、超純水が好ましい。
水溶液の好ましい例としては、鉱酸水溶液、アンモニア性窒素含有水溶液が挙げられる。
鉱酸水溶液は鉱酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、フッ化水素酸が好ましい。なかでも、塩酸のように鉄を有機溶媒に抽出しやすくすることがなく、しかも安価である硫酸が最も好ましい。鉱酸水溶液は、タンタルおよびニオブの抽出能力(逆抽出能力)は水よりも劣るが、有機溶媒との分相性は水よりも優れている。しかし、鉱酸水溶液の酸濃度が一塩基酸換算で4mol/Lを超えると(逆)抽出能力が低くなりすぎるため、一塩基酸換算で4mol/L以下であるのが好ましい。これは、例えば硫酸の場合、硫酸は二塩基酸であるため、一塩基酸に換算した濃度が4mol/L以下であるとは、換算しない濃度で2mol/L以下であることを意味する。
アンモニア性窒素含有水溶液は、アンモニウムイオンおよび/またはアンモニアを含有する水溶液であって、好ましい例としては、アンモニア水、フッ化アンモニウム水溶液、フッ化水素アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液が挙げられる。また、タンタル精製液および/またはニオブ精製液とアンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種の沈澱剤とを混合して、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを沈殿する工程、あるいは該沈殿を希薄アンモニア水または水で洗浄する工程から産出する濾液または上澄み液を必要に応じて希釈、さらにはpH調整した液も使用可能である。アンモニア性窒素含有水溶液のタンタルおよびニオブを(逆)抽出する能力は水よりも高い。アンモニア性窒素含有水溶液の好ましい濃度は経済性の点で窒素元素換算で10mol/L以下である。
水、鉱酸水溶液、アンモニア性窒素含有水溶液等の水溶液は、有機溶媒の種類、タンタルまたはニオブの一方がタンタルであるかニオブであるか、あるいは有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方のうち第一の再生工程において水または水溶液に(逆)抽出する割合等により適宜選択することができるが、一般的には、(逆)抽出能力の点で、水またはアンモニア性窒素含有水溶液を用いると使用量を少なくできるため好ましい。
【0026】
有機溶媒が4−メチル−2−ペンタノンまたはトリブチルホスフェートの場合も、(逆)抽出能力の点で水またはアンモニア性窒素含有水溶液を用いるのが好ましい。
有機溶媒がトリブチルホスフェートの場合、タンタルまたはニオブの一方がタンタルである場合はアンモニア性窒素含有水溶液を、タンタルまたはニオブの一方がニオブの場合は水を使用するのが特に好ましい。タンタルまたはニオブの一方がタンタルの場合、水では(逆)抽出能力が若干不足するため多量に使用する必要がある。
有機溶媒が4−メチル−2−ペンタノンの場合、タンタルまたはニオブの一方がタンタルであるかニオブであるかにかかわらず、水を用いるのが特に好ましい。トリブチルホスフェートの場合とは異なり、タンタルまたはニオブの一方がタンタルの場合でも水のタンタルを(逆)抽出する能力は十分ある。この点が、4−メチル−2−ペンタノンの大きな利点である。
また、タンタルまたはニオブの一方がニオブの場合、有機溶媒が4−メチル−2−ペンタノンであってもトリブチルホスフェートであっても、水を用いるのが特に好ましいが、これは、第一の再生工程に供給される有機溶媒が少量のタンタルを含有していたとしても、水を使用すれば第一の再生工程で得られるニオブ精製液にタンタルはほとんど混入しないが、アンモニア性窒素含有水溶液を使用するとニオブ精製液にタンタルが混入しやすいからである。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、前記水または水溶液に(逆)抽出されるタンタルまたはニオブの一方の量を、第一の再生工程に供される有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方の量の20質量%以上とするのが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。この割合が下限値未満であると、第二の再生工程以降におけるタンタルまたはニオブの一方の低減における負荷が大きくなりすぎて、第二の再生工程以降におけるタンタルまたはニオブの一方の低減が不十分になりやすい。
また、この割合が95%を超えると、第一の再生工程に使用する水または水溶液の量を非常に多くする必要があるため95%以下にするのが好ましい。さらに、有機溶媒が4−メチル−2−ペンタノンまたはトリブチルホスフェートであり、タンタルまたはニオブの一方がニオブである場合、水を使用してタンタルの混入の少ないニオブ精製液を得られることを説明したが、この場合も、この割合が95%を超えるとニオブ精製液へタンタルが混入しやすくなる。
また、この割合は、使用する水または水溶液の種類、水または水溶液の流量もしくは液量に対する有機溶媒の流量もしくは液量の比(O/A比)、例えば溶媒抽出装置がミキサーセトラーの場合の段数等を適宜定めることにより調整可能である。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒は、バッチ処理の溶媒抽出により得られることは不可能ではないが、通常ミキサーセトラーやカラム等を用いた連続溶媒抽出処理によって得られるため、第一の再生工程もミキサーセトラーやカラム等を用いた連続処理により行うのが好ましい。
【0029】
第二の再生工程以降
本発明の再生方法においては、第一の再生工程で得られたタンタルまたはニオブの一方を低減された有機溶媒を水または水溶液と接触させて、有機溶媒中のタンタルまたはニオブの一方をさらに低減する。必要があれば、第二の再生工程で得られた有機溶媒を同様に処理する等処理回数を重ねることができるが、第三の再生工程以降は実施しないのが経済的である。ただし、バッチ式で行う場合は少なくとも第三の再生工程を実施しないと再生が不十分になることが多い。そして、最後の再生工程からタンタルまたはニオブの一方および不純物が低減された再生有機溶媒を得る。また、第二の再生工程以降においてもタンタル精製液またはニオブ精製液の一方を得る構成としてもよい。
【0030】
水としては、特に、純水、超純水が好ましい。
水溶液の好ましい例としては、鉱酸水溶液、アンモニア性窒素含有水溶液が挙げられる。
鉱酸水溶液は鉱酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、フッ化水素酸が好ましい。なかでも、塩酸のように鉄を有機溶媒に抽出しやすくすることがなく、しかも安価である硫酸が最も好ましい。鉱酸水溶液は、タンタルおよびニオブの抽出能力(逆抽出能力)は水よりも劣るが、有機溶媒との分相性は水よりも優れている。しかし、鉱酸水溶液の酸濃度が一塩基酸換算で4mol/Lを超えると(逆)抽出能力が低くなりすぎるため、一塩基酸換算で4mol/L以下であるのが好ましい。これは、例えば硫酸の場合、硫酸は二塩基酸であるため、一塩基酸に換算した濃度が4mol/L以下であるとは、換算しない濃度で2mol/L以下であることを意味する。
アンモニア性窒素含有水溶液は、アンモニウムイオンおよび/またはアンモニアを含有する水溶液であって、好ましい例としては、アンモニア水、フッ化アンモニウム水溶液、フッ化水素アンモニウム、塩化アンモニウム水溶液が挙げられる。また、タンタル精製液および/またはニオブ精製液にアンモニア水を添加して水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを沈殿する工程、あるいは該沈殿を希薄アンモニア水または水で洗浄する工程から産出する濾液または上澄み液を必要に応じて希釈、さらにはpH調整した液も使用可能である。アンモニア性窒素含有水溶液のタンタルおよびニオブを(逆)抽出する能力は水よりも高い。アンモニア性窒素含有水溶液の好ましい濃度は経済性の点で窒素元素換算で10mol/L以下である。
水、鉱酸水溶液、アンモニア性窒素含有水溶液等の水溶液は、有機溶媒の種類、タンタルまたはニオブの一方がタンタルであるかニオブであるか、あるいは有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方のうち第一の再生工程において水または水溶液に(逆)抽出されずに有機溶媒中に残留している割合等により適宜選択することができるが、一般的には、(逆)抽出能力の点で、水またはアンモニア性窒素含有水溶液を用いると使用量を少なくできるため好ましい。
また、錯化剤含有水溶液を使用することも考えられる。錯化剤の好ましい例としては、乳酸、クエン酸、酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、エチレンジアミン四酢酸、およびこれらの塩が挙げられる。錯化剤水溶液に鉱酸あるいはアルカリを添加してpHを調製して(逆)抽出能力を調整することも考えられる。
【0031】
第二の再生工程以降で使用する水または水溶液は、第一の再生工程で使用するものと同じものを使用してもよいが、第一の再生工程で使用した水または水溶液より有機溶媒からタンタルまたはニオブを(逆)抽出する能力が高い水または水溶液を使用するのが好ましい。これは、再生有機溶媒中に残留するタンタルまたはニオブの一方および不純物の量を容易に低減できるからである。
【0032】
水または水溶液が有機溶媒からタンタルまたはニオブを(逆)抽出する能力は、鉱酸水溶液(低濃度であるほど(逆)抽出能力が大きい)<水<アンモニア性窒素含有水溶液(高濃度であるほど(逆)抽出能力が高い)の順番である。
また、錯化剤水溶液は錯化剤の種類およびpH等によって(逆)抽出能力が大きく異なる。したがって、以下に示す方法で、例えば水を基準として、(逆)抽出能力を測定してから使用するのが好ましい。
また、有機溶媒からタンタルまたはニオブを(逆)抽出する能力の比較は、タンタルまたはニオブを含有する有機溶媒を少量準備して、分液ロートに水溶液とともに入れ、振り混ぜた後分相させ、水溶液相および/または有機溶媒等のタンタルまたはニオブを測定することを、2種類の水または水溶液について行うことで容易に判定できるため、上記説明した以外の水溶液を使用する場合等少なくとも一方の(逆)抽出能力が不明の場合であっても容易に対応可能である。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、有機溶媒からタンタルまたはニオブを低減するための水または水溶液として、第一の再生工程で水またはアンモニア性窒素含有水溶液を用い、第二の再生工程アンモニア性窒素含有水溶液(ただし、第一の再生工程でアンモニア性窒素含有水溶液を用いた場合はそれより高濃度であることを要する)を用いるのが抽出能力が高く少量の使用で済むため好ましい。有機溶媒が4−メチル−2−ペンタノンの場合、第一の再生工程では水を用いるのが特に好ましいことは先に説明した通りである。
【0034】
本発明の好ましい態様によれば、再生工程に供用される有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方がニオブである場合、再生有機溶媒中に残留するタンタルの濃度が1g/L以下であるのが好ましく、より好ましくは0.2g/L以下、さらに好ましくは0.05g/L以下である。上記上限値を超えると、有機溶媒を再利用した場合、ニオブ精製液中に無視しえない濃度でタンタルが混入してくることがある。この点からはタンタル濃度は低いほど好ましいと言えるが、タンタル濃度の低減に要する負担を考慮すれば0.001g/L以上とするのが経済的に好ましい。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、再生工程に供用される有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方がタンタルである場合は再生有機溶媒中に残留するタンタルの濃度が、あるいは、再生工程に供用される有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方がニオブである場合は再生有機溶媒中に残留するニオブの濃度が、5g/L以下であるのが好ましく、より好ましくは2g/L以下である。
上記上限値を超えると残留するタンタルまたはニオブが多いため有機溶媒の抽出能力が低下して、タンタルおよび/またはニオブを全抽出する工程に再利用した場合抽出残液中にタンタルまたはニオブが残留する量が増えて損失となる。また、タンタル優先抽出の場合はニオブおよびその他の不純物を含有する抽出残液中にタンタルが混入してしまい、該抽出残液をニオブ精製前に、有機溶媒と再接触させてタンタルを抽出しないと該抽出残液を処理して得られるニオブ精製液中のタンタル濃度が高くなってしまうことが多い。この点からはタンタル濃度あるいはニオブ濃度は低いほど好ましいと言えるが、タンタル濃度あるいはニオブ濃度の低減に要する負担を考慮すれば0.001g/L以上とするのが経済的に好ましい。
【0036】
再生有機溶媒中に残留するタンタルまたはニオブの濃度を好適範囲にすることは、有機溶媒の種類、第一の再生工程から産出した有機溶媒が含有しているタンタルまたはニオブの一方および不純物の量に応じて、用いる水または水溶液の種類、O/A比、例えば溶媒抽出装置がミキサーセトラーの場合の段数等を適宜定めることにより可能である。
【0037】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒は、バッチ処理の溶媒抽出により得ることは不可能ではないが、通常ミキサーセトラーやカラム等を用いた連続溶媒抽出処理によって得られるため、第二の再生工程もミキサーセトラーやカラム等を用いた連続処理により行うのが好ましい。
また、タンタルまたはニオブの一方がニオブの場合で、第一の再生工程に供用されたニオブと少量の不純物を含有する有機溶媒の含有するニオブの大部分を第一の再生工程にて水または水溶液にて(逆)抽出する場合は、第一の再生工程にて産出する有機溶媒中のタンタル濃度が再生有機溶媒中について定めたタンタル濃度の好適範囲の上限近くになるまでは第二の再生工程を運転せずにニオブを全抽出する工程に再利用し、第一の再生工程にて産出する有機溶媒中のタンタル濃度が再生有機溶媒中について定めたタンタル濃度の上限近くになったときに第二の再生工程を運転するという構成、すなわち間欠運転としてもよい。このような間欠運転で少なくとも第一の再生工程から得られるニオブ精製液中のタンタル濃度は十分低く保たれる。
しかしながら、間欠運転の場合は第二の再生工程から産出する液をニオブ精製液として回収する場合、第二の再生工程から産出するニオブ精製液が含有するタンタル濃度は連続運転の場合に比べて高くなるので、連続運転のほうが好ましい。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、第二の再生工程における(有機溶媒の流量または液量)/(水または水溶液)の比率であるO/A比を0.5〜50とするのが好ましく、より好ましくは1〜30、さらに好ましくは2〜20とする。ただし、O/A値の最適値は、タンタルまたはニオブの一方がタンタルであるかニオブであるか、および水または水溶液の抽出能力により異なる。O/A比が上記下限値未満であると残留するタンタルおよび/またはニオブ濃度を十分低減できるものの、経済的に不利となる。O/A比が上記上限値を超えると、残留するタンタルおよび/またはニオブ濃度が高くなる場合がある。なお、上記O/A値の定義において、「流量」とはミキサーセトラー、カラム等による連続処理で有機溶媒の再生処理を行う場合を想定しており、「液量」はバッチ式で有機溶媒の再生処理を行う場合を想定したものである。
【0039】
本発明の好ましい態様によれば、第二の再生工程をミキサーセトラーで行う場合、そのミキサーセトラーの段数は2〜30段とするのが好ましく、より好ましくは2〜10段である。段数を多くすればO/A比を大きくすることができるが、上記上限値を超えて大きくしてもO/A比をさらに大きくすることは困難であり、経済的に不利となる。また、段数が1段では、残留する金属濃度を十分に低減するためにはO/A比を非常に小さくしなければならなくなる。
【0040】
以上再生工程についてはタンタル、ニオブの低減を中心に説明してきたが、ここではその他の不純物について説明する。有機溶媒への抽出のされやすさは大部分のその他の不純物については、タンタルおよびニオブより有機溶媒に抽出されにくい。このため、本発明の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒はその他の不純物を少量しか含有せず、その他の不純物の大部分は第一の再生工程で水または水溶液に(逆)抽出されてタンタルまたはニオブの一方の精製液中に分布する。したがって、第一の再生工程にて産出するタンタルまたはニオブの一方の精製液のその他の不純物を低減するためには、あらかじめ本発明の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得る段階で鉱酸水溶液による洗浄などで不純物を低減しておく必要がある。また、アンチモンは有機溶媒への抽出のされやすさが、ニオブとタンタルの中間であるため、再生有機溶媒中に残留するアンチモンを低減するのはタンタルの場合よりも容易であるものの、溶媒抽出にて、タンタル、ニオブから分離精製するのが困難なため、原料液の段階で卑金属による還元などの方法によって低減しておくことが望ましい。ただし、アンチモンはタンタル精製液またはニオブ精製液から水酸化タンタルまたは水酸化ニオブさらには酸化タンタルまたは酸化ニオブを得る場合には問題となるが、タンタル精製液またはニオブ精製液からフッ化タンタル酸カリウム結晶、フッ化ニオブ酸カリウム結晶、オキシフッ化ニオブ酸カリウム結晶を得る場合にはアンチモンはこれらの結晶中にはほとんど分布しないためアンチモンを含有する原料液をそのまま溶媒抽出に供用してもよい。
【0041】
タンタル精製液および/またはニオブ精製液の製造
本発明の再生方法が適用された、タンタル精製液および/またはニオブ精製液の製造方法を以下に説明する。
【0042】
まず、タンタルおよびニオブの少なくとも一方を含有する原料を用意する。この原料を少なくともフッ化水素酸を用いて溶解することにより、タンタルおよびニオブの少なくとも一方を含有する水系原料液を得る。タンタルおよび/またはニオブを含有する原料の好ましい例としては、タンタライト、コロンバイト、パイロクロア、ストロベライト等の鉱石;フェロニオブ、フェロタンタル、フェロタンタルニオブ等の合金;LT、LN製造工程、Ta、Nb粉製造工程、超硬合金、超硬工具製造工程等から産出する各種スクラップを挙げることができる。
【0043】
本発明の好ましい態様によれば、フッ化水素酸による溶解のための前処理として、原料を粉砕したり、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で処理(アルカリ疎解)したり、フッ化水素酸以外の鉱酸にて洗浄したりした後、フッ化水素酸単独で、またはフッ化水素酸およびそれ以外の鉱酸により処理して濾過することにより原料液を得ることにより得てもよい。例えば、(a)タンタルおよびニオブの少なくとも1種を含有する原料をフッ化水素酸単独で、またはフッ化水素酸およびそれ以外の鉱酸の組合せにより溶解させる;または(b)タンタルおよびニオブの少なくとも1種を含有する原料を水酸化ナトリウム水溶液により疎解した後、必要に応じてフッ化水素酸以外の鉱酸にて洗浄し、フッ化水素酸単独で、またはフッ化水素酸およびそれ以外の鉱酸の組合せにより溶解させることにより原料液を得ることができる。
【0044】
上記のように得られた原料液から溶媒抽出によって、有機溶媒の再生方法の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得る。その方法は、有機溶媒の再生方法の処理対象のところで説明した通りである。
それ以降の工程は本発明の再生方法に基づいて行われる。
【0045】
具体的には、公知の方法により産出されるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を、水または水溶液と接触させてタンタルまたはニオブの一方を水または水溶液に(逆)抽出することにより、有機溶媒中のタンタルまたはニオブの一方を低減するとともに、タンタル精製液またはニオブ精製液の一方を得る(第一の再生工程)。更に、タンタルまたはニオブの一方が低減された有機溶媒を水または水溶液と接触させて残留するタンタルおよびニオブの一方を水または水溶液に(逆)抽出することにより、タンタルまたはニオブの一方および不純物が低減された再生有機溶媒、ならびに所望によりタンタル精製液またはニオブ精製液の一方を得る(第二の再生工程)。場合によっては、第二の再生工程で産出した有機溶媒は再生有機溶媒とはしないで、さらなる再生工程を行い再生有機溶媒を得るようにしてもよい。以上の再生工程は、タンタルまたはニオブの一方が、タンタルの場合またはニオブの場合のどちらか一方だけを行いタンタル精製液またはニオブ精製液の一方を得るようにしてもよいが、原料液がタンタルおよびニオブの両方を含有する場合には、タンタルまたはニオブの一方が、タンタルの場合およびニオブの場合とも実施してタンタル精製液およびニオブ精製液を得る構成とするのが好ましい。しかしながら、原料液がタンタルおよびニオブの両方を含有しており、最初にタンタル優先抽出を行う場合は、どちらか一方の再生工程だけを実施した場合であっても全く実施しない場合に比べれば、タンタル精製液およびニオブ精製液とも高純度のものを得ることができる。こうして得られたタンタル精製液および/またはニオブ含有精製液は、酸化タンタル、酸化ニオブ、炭化タンタル、炭化ニオブ、フッ化タンタル酸カリウム、フッ化ニオブ酸カリウム、タンタル、ニオブ、窒化タンタル、および窒化ニオブを始めとする、各種のタンタル/ニオブ製品の製造に好適に用いられる。そして、第一の再生工程から得られるタンタル精製液および/またはニオブ精製液を利用すれば、極めて高品位のタンタル/ニオブ製品を製造することができる。また、第二の再生工程以降の再生工程にてタンタル精製液またはニオブ精製液を得た場合には、それを利用しても、ある程度良好な品位のタンタル/ニオブ製品を製造することができる。特にタンタル精製液の場合には、第二の再生工程以降で得られたタンタル精製液の方が第一の精製工程で得られた精製液よりも不純物(特にニオブ、アンチモン)含有量の少ない場合が多い。
【0046】
本発明においては、上記得られた再生有機溶媒の少なくとも一部、好ましくは半量以上、最も好ましくは全量を、タンタルおよび/またはニオブの抽出に用いる有機溶媒の一部または全部として再循環させることにより再利用を行う。これにより高い品位のタンタル精製液および/またはニオブ精製液を長時間にわたり経済的かつ効率的に製造することができる。
【0047】
水酸化タンタル/水酸化ニオブの製造
水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブの製造においては、まず、タンタル精製液またはニオブ精製液とアンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種の沈澱剤とを混合して、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブ沈殿を析出させる。沈澱剤としては、発泡の問題のないアンモニアが好ましい。アンモニアは、アンモニアガスまたは液体アンモニアとして使用することも可能であるが、取扱いやすいアンモニア水溶液(アンモニア水)として使用するのが好ましい。アンモニア水の濃度は特に限定されないが、2mol/Lより低いと排水量が増えるため好ましくなく、工業用として販売されているもの(通常13〜16mol/L)をそのまま使用することができる。炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムは、固体のまま使用する、水でスラリー化して使用する、水溶液として使用する等が考えられるが、得られる沈澱の均一性の点で水溶液として使用するのが好ましい。炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムの水溶液は、あまりにも低濃度であると排水量が増えるため、10g/L以上が好ましい。この沈殿生成は、(1)タンタル精製液/ニオブ精製液を攪拌しながら沈澱剤を添加する;(2)沈澱剤を攪拌しながらタンタル精製液/ニオブ精製液を添加する;(3)タンタル精製液/ニオブ精製液と沈澱剤を同時添加する(連続沈澱)のいずれによっても好ましく行うことができる。タンタル精製液またはニオブ精製液と沈澱剤との混合終了時の溶液のpHは、8〜11とするのが好ましく、より好ましくは9〜10である。
沈澱剤が炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、特に炭酸水素アンモニウムの場合、中和計算量よりも多く使用しても、pHが低く溶液中にタンタルまたはニオブが多く残留することがあるため、アンモニアを併用してpHを好適範囲にすることが好ましい。
【0048】
得られた水酸化タンタル/水酸化ニオブ沈殿は、アンモニアまたはアンモニウムイオンを含有する溶液および/または純水を用いて洗浄するのが、フッ素含有量を低減できる点で好ましい。
このようにして得られた沈殿含有溶液を濾過して、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブからなる沈殿物を濾別する。また、得られた水酸化タンタル/水酸化ニオブは必要に応じて乾燥するのが好ましい。
【0049】
酸化タンタル/酸化ニオブの製造
酸化タンタルおよび/または酸化ニオブは、上記製造方法により得られた水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを好ましくは450〜1200℃、より好ましくは550〜1100℃の温度で焼成し、必要に応じて焼成後に解砕することにより製造することができる。焼成温度が450℃未満では酸化タンタルおよび/または酸化ニオブへの転換が不十分になりやすい。1100℃を超えるとエネルギーの無駄となる。また、ボール等を粉砕媒体として使用する場合、媒体としてナイロンボールまたはナイロンコーティングボール等を用いるのが媒体からの汚染を防止できる点で好ましい。
このようにして得られた酸化ニオブおよび/または酸化ニオブは、LT/LN単結晶用、電子セラミックス用、光学用等に好適に使用可能である。
【0050】
【実施例】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、「%」は質量%を、「ppm」は質量ppmを意味する。
【0051】
例1
(1)原料液の調製
まず、タンタル含有フェロニオブ5000kgを用意した。このタンタル含有フェロニオブの組成分析をICP発光分光法により行ったところ、Ta:5.3%、Nb:44%、Fe:32%、Sb:0.002%であった。タンタル含有フェロニオブをジョークラシャーにより粗粉砕した後、湿式ボールミルにより微粉砕して粉砕スラリーを得た。この粉砕スラリーを48%水酸化ナトリウム水溶液8800kgを用いて処理してアルカリ疎解スラリーを得た。このスラリーを濾過して、疎解ケーキを得た。この疎解ケーキをpH1.3になるまで1mol/L硫酸を添加混合して酸洗浄した後、濾過して酸洗浄ケーキを得た。この酸洗浄ケーキを80%フッ化水素酸3200Lで溶解して濾過し、原料液を得た。上記一連の操作を4回実施して、合計量40000Lの原料液を調製した。原料液の全量を均一に混合して、ICP発光分光法により組成分析を行った。その結果、原料液の組成は、Ta:26.2g/L、Nb:218g/L、Sb:0.001g/L、SO4:0.32mol/L(31g/L))であった。また、原料液中の過剰フッ化水素酸濃度をイオン交換分離−フッ素イオン電極法により測定したところ、2.6mol/Lであった。
【0052】
(2)タンタル精製液の製造
原料液30000Lに96%硫酸1200Lを添加し混合することにより、液調整を行った。液調整された液の組成分析をICP発光分光法により行ったところ、Ta:25.2g/L、Nb:210g/L、Sb:0.001g/L、SO4:1.0mol/L(96g/L)であった。また、液調整された液中の過剰フッ化水素酸濃度をイオン交換分離−フッ素イオン電極法により測定したところ、2.5mol/Lであった。液調整液のうち23000Lを溶媒抽出によるタンタルの分離精製に付した。図1に示されるように、このタンタル分離精製処理はT−1〜T−4工程からなる系を用いて約770時間運転することにより行った。なお、T−2工程から産出した有機溶媒が本発明の処理対象であるタンタルを含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒であり、T−3工程が本発明の再生方法における第一の再生工程に対応し、T−4工程が第二の再生工程に対応する。これらの各工程は向流多段方式のミキサーセトラーを有してなり、各ミキサーセトラーにおいて第一段に有機溶媒として4−メチル−2−ペンタノン(以下、別名メチルイソブチルケトンの略記である「MIBK」と表記する)を0.25L/分の流速で供給し、最終段には水または水溶液を供給することにより混合接触を行った。
【0053】
具体的には、T−1工程では上記液調整液とMIBKとを混合接触させて、Nb含有抽出残液とTa含有MIBKとを得た。T−1工程において、ミキサーセトラーの段数は10段とし、液調整液の流速は0.5L/分とした。T−2工程ではT−1工程で産出したMIBKと1.5mol/L(一塩基酸換算3mol/L)の硫酸とを混合接触させて、MIBK中に残留するNbおよびその他の不純物を低減した。T−2工程において、ミキサーセトラーの段数は10段とし、硫酸の流速は0.075L/分とした。T−3工程ではT−2工程で産出したMIBKと純水とを混合接触させて、Ta精製液1を得た。T−3工程において、ミキサーセトラーの段数は5段とし、純水の流速は0.15L/分とした。T−4工程ではT−3工程で産出したMIBKと4mol/Lのフッ化アンモニウム水溶液とを混合接触させて、再生有機溶媒(MIBK)およびTa精製液2を得た。T−4工程において、ミキサーセトラーの段数は5段とし、フッ化アンモニウム水溶液の流速は0.075L/分とした。T−4工程で産出したMIBKは有機溶媒貯漕に送られ、T−1工程に用いるMIBKとして系内を循環させた。
T−1工程においては、ミキサーセトラーでの結晶の析出は全く起こらなかった。T−1工程で産出したNb含有抽出残液の組成をICP発光分光法により分析したところTa:0.0025g/L、Nb:205g/L、Sb:0.0008g/Lであった。また、T−1工程で産出したNb含有抽出残液中の過剰フッ化水素酸濃度をイオン交換分離−フッ素イオン電極法により測定したところ、1.1mol/Lであった。T−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Nb、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Taを100質量%として、0.01質量%以下であった。
【0054】
タンタルの分離精製運転開始後、50、100、150および200時間経過時において、ICP発光分光法により、以下の測定を行った:
− T−4工程において産出した再生有機溶媒中の残留Ta濃度(g/L)
− T−3工程における純水へのTa抽出率(%)
− T−3工程で産出したTa精製液1におけるTa分布率(%)
− T−4工程で産出したTa精製液2におけるTa分布率(%)
なお、Ta抽出率は下記式に基づいて算出した。
Ta抽出率(%)=[{液調整液Ta濃度(g/L)×液調整液流量(L/分)×Ta精製液1へのTa分布率(%)}/100]/[液調整液Ta濃度(g/L)×液調整液流量(L/分)×{Ta精製液1へのTa分布率(%)+Ta精製液2へのTa分布率(%)}/100+再生有機溶媒残留Ta濃度(g/L)×有機溶媒流量(L/分)]×100
また、Ta分布率は下記式に基づいて算出した。
Ta分布率(%)=[Ta精製液Ta濃度(g/L)× Ta精製液流量(L/分)]/[液調整液Ta濃度(g/L)× 液調整液流量(L/分)] × 100
なお、Ta抽出率は再生有機溶媒中に残留したTaも考慮しているが、Ta分布率は再生有機溶媒に残留したTaは考慮していない。
結果は表1に示される通り、再生有機溶媒中の残留Ta濃度およびT−1抽出残液Ta濃度とも非常に低く良好であった。
【0055】
タンタルの分離精製運転開始後200時間経過時において得られたTa精製液1および2を使用して酸化タンタルをそれぞれ製造した。具体的には、まず、Ta精製液1を攪拌しながら、13.5mol/Lアンモニア水をpHが9強になるまで添加した。こうして得られた液を静置して沈殿を沈降させて、上澄み液を抜き出した後、洗浄液(1回目および2回目は2%アンモニア水、3回目は純水)を加えてリパルプを行った。この一連の洗浄手順を3回繰り返した後、濾過して水酸化タンタルを得た。水酸化タンタルを150℃にて24時間乾燥させた後、900℃にて12時間焼成して酸化タンタル1を得た。Ta精製液2についてもTa精製液1と同様にして、酸化タンタル2を得た。得られた酸化タンタル1および2について、不純物含有量をICP発光分光法により分析した。その結果をそれぞれ表2に示す。
Ta精製液1から製造した酸化タンタル1も十分高純度であるが、Ta精製液2から製造した酸化タンタル2はさらに高純度であり、本発明の有機溶媒の再生方法を適用した効果が得られている。
【0056】
(3)T−1抽出残液の処理
T−1工程で産出したNb含有抽出残液を5000L用意した。この抽出残液に硫酸ナトリウム85kgを添加した後、96%硫酸1500Lを添加して結晶を析出させた。混合液を25℃まで冷却した後、濾過により結晶を除去した。得られた混合液に80%のフッ化水素酸を575L添加して、液調整液を得た。得られた液調整液の組成をICP発光分光法により分析したところTa:0.0017g/L、Nb:142g/L、Sb:0.0006g/Lであった。
【0057】
(4)ニオブ精製液の製造
次に、得られた液調整液を溶媒抽出によるニオブの分離精製に付した。図1に示されるように、このニオブ分離精製処理はN−1〜N−4工程からなる系を用いて、約500時間運転することにより行った。なお、N−2工程から産出した有機溶媒が本発明の処理対象であるニオブを含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒であり、N−3工程が本発明の再生方法における第一の再生工程に対応し、N−4工程が第二の再生工程に対応する。これらの各工程は向流多段方式のミキサーセトラーを有してなり、各ミキサーセトラーにおいて第一段に有機溶媒としてMIBKを0.3L/分の流速で供給し、最終段には水または水溶液を供給することにより混合接触を行った。
【0058】
具体的には、N−1工程ではタンタル分離精製工程とは別個に供給されるMIBKと液調整液とを混合接触させて、抽出残液とNb含有MIBKとを得た。N−1工程において、ミキサーセトラーの段数は7段とし、液調整液の流速は0.1L/分とした。N−2工程ではN−1工程で産出したMIBKと5mol/L(一塩基酸換算10mol/L)の硫酸とを混合接触させて、残留するその他の不純物を低減した。N−2工程において、ミキサーセトラーの段数は12段とし、硫酸の流速は0.04L/分とした。N−3工程ではN−2工程で産出したMIBKと純水とを混合接触させて、Nb精製液1を得た。N−3工程において、ミキサーセトラーの段数は5段とし、純水の流量は0.05/Lとした。N−4工程ではN−3工程で産出したMIBKと2mol/Lフッ化アンモニウム水溶液とを混合接触させて、再生有機溶媒(MIBK)およびNb精製液2を得た。
N−4工程において、ミキサーセトラーの段数は5段とし、フッ化アンモニウム水溶液の流速は0.02L/分とした。また、N−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Ta、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Nbを100質量%として、0.05質量%であった。
【0059】
ニオブの分離精製運転開始後、100、200、300、400および500時間経過時において、ICP発光分光法により、以下の測定を行った:
− N−4工程において産出した再生有機溶媒中の残留Ta濃度およびNb濃度(g/L)
− N−1工程において産出した抽出残液中のNb濃度(g/L)
− N−3工程における純水へのNb抽出率(%)
なお、Nb抽出率は下記式に基づいて算出した。
Nb抽出率(%)=[{液調整液Nb濃度(g/L)×液調整液流量(L/分)×Nb精製液1へのNb分布率(%)}/100]/[液調整液Nb濃度(g/L)×液調整液流量(L/分)×{Nb精製液1へのNb分布率(%)+Nb精製液2へのNb分布率(%)}/100+再生有機溶媒残留Nb濃度(g/L)×有機溶媒流量(L/分)]×100
また、Nb分布率は下記式に基づいて算出した。
Nb分布率(%)=[Nb精製液Nb濃度(g/L)× Nb精製液流量(L/分)]/[液調整液 Nb濃度(g/L)× 液調整液流量(L/分)] × 100
なお、Nb抽出率は再生有機溶媒中に残留したNbも考慮しているが、Nb分布率は再生有機溶媒に残留したNbは考慮していない。
結果は表3に示される通り、再生有機溶媒中の残留Ta濃度、残留Nb濃度およびT−1抽出残液Nb濃度とも非常に低く良好であった。
【0060】
ニオブの分離精製運転開始後、100、200、300、400および500時間経過時においてそれぞれ得られたNb精製液1および2を使用して酸化ニオブをそれぞれ製造した。具体的には、まず、Nb精製液1を攪拌しながら、13.5mol/Lアンモニア水をpHが9強になるまで添加した。こうして得られた液を静置して沈殿を沈降させて、上澄み液を抜き出した後、洗浄液(1回目および2回目は2%アンモニア水、3回目は純水)を加えてリパルプを行った。この一連の洗浄手順を3回繰り返した後、濾過して水酸化ニオブを得た。水酸化ニオブを150℃にて24時間乾燥させた後、900℃にて12時間焼成して酸化ニオブ1を得た。Nb精製液2についてもNb精製液1と同様にして、酸化ニオブ2を得た。得られた酸化ニオブ1および2について、不純物含有量をICP発光分光法により分析した。その結果をそれぞれ表4および5に示す。
特にNb精製液1から製造された酸化ニオブ1については非常に高純度であった。
【0061】
例2
ニオブ精製工程においてN−4工程を行わなかったこと、およびN−1〜N−3の各工程における流速を表3に示される値としたことを除いて、例1と同様にして処理および測定を行った。その結果は表1〜4に示される通りであった。
なお、N−3純水へのNb抽出率の算出において、Nb精製液2へのNb分布率は0とした。
T−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Nb、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Taを100質量%として、0.01質量%以下であった。N−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Ta、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Nbを100質量%として、0.8質量%であった。
ニオブ精製工程の有機溶媒(4−メチル−2−ペンタノン)の流量を例1および例3に比べて多くしたのはN−3工程で産出した有機溶媒中には例1および例3のN−4工程で産出した有機溶媒中よりもNbが多く残留することが予想され、例1および例2と同じ流量でN−1工程に循環使用した場合N−1工程におけるNbの抽出が不十分になることが予想されたためである。これは例4についても同様である。
表3から、例2ではN−4工程を実施した例1と比べて、Nb精製工程における再生有機溶媒中の残留Nb濃度が高いためN−1抽出残液のNb濃度が高くNbの損失が大きい。さらに、再生有機溶媒中のTa濃度が時間とともに増大してきた。また、表4より得られる酸化ニオブはかなり高純度ではあるが、例1のNb精製液1から製造した酸化ニオブ1よりは劣り、時間とともにTa2O5含有量が高くなってきた。
【0062】
例3
タンタル精製工程においてT−4工程を行わなかったこと、およびT−1〜T−4の各工程において、流速を表1に示される値とし、液調整液の使用量を7000Lとし、運転時間を約230時間としたことを除いて、例1と同様にして処理および測定を行った。その結果は表1〜5に示される通りであった。
なお、T−3純水へのTa抽出率の算出において、Ta精製液2へのTa分布率は0とした。
T−1工程で産出したNb含有抽出残液の組成をICP発光分光法により分析したところTa:0.135g/L、Nb:202g/L、Sb:0.0008g/Lであった。また、得られた液調整液の組成をICP発光分光法により分析したところTa:0.093g/L、Nb:140g/L、Sb:0.0006g/Lであった。また、T−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Nb、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Taを100質量%として、0.01質量%以下であった。N−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Ta、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Nbを100質量%として、0.2質量%であった。
タンタル精製工程の有機溶媒(4−メチル−2−ペンタノン)の流量を例1に比べて多くしたのはT−3工程で産出した有機溶媒中には例1のT−4工程で産出した有機溶媒中よりもTaが多く残留することが予想され、例1と同じ流量でT−1工程に循環使用した場合T−1工程におけるTaの抽出が不十分になることが予想されたためである。例3と例4のタンタル精製工程は同一のためこれは例4についても同じである。
表1から、例3ではT−4工程を実施した例1と比べて、Ta精製工程における再生有機溶媒中のTa濃度が高いためT−1抽出残液のTa濃度が高くなった。また、表2から、Ta精製液1から製造した酸化タンタル1については、例1の場合と同等だが、例1のTa精製液2から製造された酸化タンタル2のような非常に高純度な酸化タンタルは得られなかった。
そして、表3から例3ではN−4工程を実施しているため、Nb精製工程における再生有機溶媒中およびN−1抽出残液中のNb濃度は例1とほぼ同じであるが、T−4工程を実施しておらずT−1抽出残液のTa濃度が高いため、N−4工程を実施していても、再生有機溶媒中のNb濃度は例1よりも若干高い。また、表4および表5から、Nb精製液1から製造した酸化ニオブ1の純度は例1よりわずかに劣るだけだが、Nb精製液2は例1よりTa2O5含有量が格段に高く、原料戻しする等の再処理が必要である。しかし、T−4工程を実施していなくても、N−4工程を実施しているため大部分の酸化ニオブ(Nb精製液1から製造した酸化ニオブ)は高純度である。
【0063】
例4(比較例)
ニオブ精製工程においてN−4工程を行わなかったこと、およびN−1〜N−3の各工程における流速を表2に示される値としたことを除いて、例3と同様にして処理および測定を行った。その結果は表1〜4に示される通りであった。
なお、T−3純水へのTa抽出率の算出において、Ta精製液2へのTa分布率は0とし、N−3純水へのNb抽出率の算出において、Nb精製液2へのNb分布率は0とした。
T−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Nb、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Taを100質量%として、0.01質量%以下であった。N−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Ta、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Nbを100質量%として、4質量%であった。
表3から、例4ではN−4工程を実施した例1および例3と比べて、Nb精製工程における再生有機溶媒中の残留Nb濃度が高いためN−1抽出残液のNb濃度が高くNbの損失が大きい。さらに、T−4工程も実施しておらずNb精製工程に供用した液調製液中のTa濃度が高いため再生有機溶媒中のTa濃度が非常に高くしかも時間とともに増大した。また、表4からNb精製液1から得られる酸化ニオブはTa2O5含有量が高く時間とともに増大した。
【0064】
なお、例1においては、200時間以降についても測定を行ったが、上記各数値はほとんど変化は無かった。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
タンタル精製工程においては、表1から本発明の有機溶媒の製造方法を実施している場合のT−3に供用した純水とT−4に供用した4mol/Lフッ化アンモニウム水溶液の合計流量は、本発明を実施していない場合のT−3に供用した純水の流量の約半分であるにもかかわらず、有機溶媒中の残留するTa濃度は低く、T−1抽出残液中のTa濃度も低かった。
また、ニオブ精製工程においても、表3から本発明の有機溶媒の製造方法を実施している場合のN−3に供用した純水とN−4に供用した2mol/Lフッ化アンモニウム水溶液の合計流量は、本発明を実施していない場合のT−3に供用した純水の流量の約半分であるにもかかわらず、有機溶媒中に残留するTaおよびNb濃度は低く、N−1抽出残液中のNb濃度も低かった。
いずれの場合も、本発明の有機溶媒の再生方法を適用することによりきわめて効率的に有機溶媒の再生ができ、再生有機溶媒を再利用したとき水溶液が不純物で汚染されるあるいはニオブの損失となる等の悪影響を及ぼさなかった。
【0070】
表2、4および5の結果から分かるように、T−4およびN−4工程を行わない例4(比較例)を除いて、少なくともT−4およびN−4工程のいずれか一方を行うことにより、比較的良好な品位の酸化タンタル/ニオブが得られた。特に、T−4およびN−4工程の両方を行った例1においては、極めて高品位の酸化タンタルおよび酸化ニオブが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】例1〜4で使用したタンタル/ニオブ溶媒抽出系の工程図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製における有機溶媒の再生方法、さらには該方法を適用したタンタル精製液および/またはニオブ精製液ならびに酸化タンタルおよび/または酸化ニオブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶媒抽出法を用いるタンタルおよびニオブの分離精製方法は、例えば以下の方法で行われる。すなわち、(1)タンタルおよびニオブを含有する水溶液中に含まれるタンタルのほぼ全量を有機溶媒に抽出して、ニオブの大部分を水溶液に残存させる。(2)上記(1)で得られたタンタルのほぼ全量を抽出した有機溶媒を希硫酸で洗浄して、ニオブおよびその他の不純物が低減されたタンタル含有有機溶媒を得る。(3)上記(2)で得たニオブおよびその他の不純物が低減されたタンタル含有有機溶媒を水または水溶液で逆抽出してタンタル精製液を得る。
(4)上記(1)で得られたニオブの大部分が残存した水溶液に含まれるニオブのほぼ全量を有機溶媒に抽出して、その他の不純物の大部分を水溶液に残存させる。(5)上記(4)で得られたニオブのほぼ全量を抽出した有機溶媒を希硫酸で洗浄して、不純物が低減されたニオブ含有有機溶媒を得る。(6)上記(5)で得られたニオブのほぼ全量を抽出した有機溶媒を水または水溶液で逆抽出してニオブ精製液を得る。そして、上記(3)で産出した逆抽出された有機溶媒は通常(1)の工程で、また、上記(6)で産出した逆抽出された有機溶媒は通常(4)の工程で再利用される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記(1)工程で得られて(4)工程に供用するニオブの大部分が残存する水溶液にタンタルが微量でも含まれると、(4)〜(6)工程で有機溶媒を再利用を繰り返すにつれて有機溶媒中にタンタルが蓄積されることとなる。その結果、上記(6)工程において得られるニオブ精製液中に、タンタルが無視し得ない量含有されてしまう。
一方、上記(3)工程で産出した逆抽出された有機溶媒中にタンタルが多く残留している、あるいは、上記(6)工程で産出した逆抽出された有機溶媒中にニオブが多く残留していると、上記(1)または(4)で有機溶媒を再利用したとき、タンタルまたはニオブの抽出が不十分となる場合があり、タンタルまたはニオブの損失といった結果を招く。
上記(1)工程でタンタルを損失するということは、先に説明したようにニオブ精製液中にタンタルが無視し得ない量含有されてしまう結果となるのである。
【0004】
これらの問題を回避するために、上記(3)、(6)で逆抽出に使用する水または水溶液の使用量を例えば2倍以上に増やすことが考えられる。この場合には、上記(6)工程で産出する逆抽出された有機溶媒中に残留するニオブの量をある程度低減することができると考えられる。しかしながら、上記(3)工程で産出する逆抽出された有機溶媒中および上記(6)工程で産出する逆抽出された有機溶媒中に残留するタンタルについては、逆抽出に使用する水または水溶液の量を増やしても低減効果が低いため、現実的な解決策とは言えない。
【0005】
また、溶媒抽出法を用いるタンタルおよびニオブの分離精製方法の別の形態として、i)タンタルおよびニオブを含有する水溶液中に含まれるタンタルおよびニオブを有機溶媒に抽出して不純物を水溶液中に残す。ii)上記i)で得られたタンタルおよびニオブを抽出した有機溶媒を希硫酸で逆抽出してニオブをほぼ完全に逆抽出してニオブ液およびタンタル含有有機溶媒を得る。iii)上記ii)で産出したタンタル含有有機溶媒を水で逆抽出してタンタル精製液を得る。iv)上記ii)で得られたニオブ液に含まれるタンタルを有機溶媒に抽出してニオブ精製液および少量のタンタルおよびニオブを抽出した有機溶媒を得る。そして、上記iii)で産出した逆抽出された有機溶媒は上記i)工程で、また、上記iv)工程で産出した少量のタンタルおよびニオブを含有する有機溶媒は上記ii)工程で再利用される(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この場合も、上記iii)工程で産出した逆抽出された有機溶媒中にタンタルが多く残留していると、上記i)工程に再利用したときニオブの抽出が不十分となり、ニオブの損失という結果を招く。これを防ぐために、有機溶媒の量および/またはタンタルを逆抽出するのに使用する水の量を増やすことが考えられるが、得られる効果が不十分になりやすい。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−193622号公報
【0008】
【発明の概要】
本発明者らは、今般、溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製工程において、タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させる工程(一般には、逆抽出あるいは剥離と呼ばれている)を1回だけではなく複数回実施することにより、同様の溶媒抽出に好適に再利用することのできる再生有機溶媒、およびタンタル精製液またはニオブ精製液の一方を極めて経済的かつ簡便に得られるとの知見を得た。
【0009】
したがって、本発明は、溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製工程において、同様の溶媒抽出に好適に再利用することのできる再生有機溶媒、およびタンタル精製液またはニオブ精製液を極めて経済的かつ簡便に得ることを目的としている。
【0010】
そして、本発明の有機溶媒を再生して少なくともその一部を再利用する溶媒抽出法を用いるタンタルおよび/またはニオブの分離精製における有機溶媒の再生方法は、
タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させる工程(再生工程)を複数回実施して、タンタルまたはニオブの一方および不純物が低減された再生有機溶媒を得るとともに、少なくとも初回の接触(第一の再生工程)によりタンタルまたはニオブの一方の精製液を得ることを含んでなる。
【0011】
そして、本発明のタンタル精製液および/またはニオブ精製液の製造方法は、タンタルおよび/またはニオブならびに不純物を含有する水系原料液を用意し、
溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製を行う際に上記有機溶媒の再生方法を行うことを含んでなる。
【0012】
本発明の酸化タンタルおよび/または酸化ニオブの製造方法は、
上記のタンタル精製液および/またはニオブ精製液の製造方法により製造されたタンタル精製液および/またはニオブ精製液とアンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種の沈澱剤とを混合して、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを沈殿させ、
固液分離により水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを得て、
水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを、所望により乾燥した後、焼成して酸化タンタルおよび/または酸化ニオブを得ることを含んでなる。
【0013】
【発明の具体的説明】
有機溶媒の再生方法
本発明の有機溶媒の再生方法は、有機溶媒を再生して少なくともその一部を再利用する溶媒抽出法を用いるタンタルおよび/またはニオブの分離精製に適用されるものである。そして、本発明の有機溶媒の再生方法の処理対象は、溶媒抽出法によりタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒である。
本明細書において、「不純物」とは、タンタルまたはニオブの一方以外であって、水酸化物として沈殿させて焼成してもほとんど揮発しない成分をいう。したがって、「不純物」には、タンタルまたはニオブの一方がタンタルの場合のニオブ、タンタルまたはニオブの一方がニオブの場合のタンタル、タンタルおよびニオブ以外の金属、SiおよびP等が包含されるが、フッ素やアンモニウムイオンは包含されない。ただし、有機溶媒がP含有有機溶媒の場合は、有機溶媒由来のPは包含されない。また、「その他の不純物」とは、タンタル、ニオブ以外の不純物をいう。したがって、「タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒」とは、言い換えれば、タンタルまたはニオブの一方を含有し、タンタルまたはニオブの他方およびその他の不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒のことである。そして、「不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒」とは、有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方に対する不純物の量が合計で2質量%以下である有機溶媒を意味する。
そして、この処理対象としての精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させる工程(再生工程)を複数回実施して、タンタルまたはニオブの一方および不純物が低減された再生有機溶媒を得るとともに、少なくとも初回の再生工程(第一の再生工程)においてタンタルまたはニオブの一方の精製液を得ることを含んでなる。
【0014】
処理対象
本発明の有機溶媒の再生方法の処理対象は、溶媒抽出法によりタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒である。
このようなタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒は以下のようにして得ることができる。
まず、タンタルおよび/またはニオブを含有する原料を、必要に応じて、粉砕、アルカリ水溶液による疎解、フッ化水素酸以外の鉱酸による洗浄等の処理を行った後、少なくともフッ化水素酸を含有する酸により溶解して水系原料液(以下、単に原料液という)を得る。この原料液を、必要に応じて、タンタルおよび/またはニオブ濃度の調整、フッ化水素酸濃度の調整、フッ化水素酸以外の鉱酸(例えば硫酸)の濃度の調整等の液調整を実施した後、溶媒抽出法による分離精製を行い、タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得る。
以下に、タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得るための溶媒抽出法について詳細に説明する。
【0015】
最初に、原料液がニオブを含み、タンタルを実質的に含まないか少量しか含まない場合について説明する。まず、有機溶媒を原料液または原料液を液調整した液と接触させて、ニオブのほぼ全量とその他の不純物の一部を有機溶媒に抽出して、その他の不純物の大部分を抽出残液に残す(ニオブ全抽出)。そして、ニオブのほぼ全量とその他の不純物の一部を抽出した有機溶媒を鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等の水溶液で洗浄してその他の不純物を低減して、ニオブを含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得る。ただし、原料液が含有するその他の不純物があまり多くなければ、洗浄は実施しない場合もある。また、原料液が少量のタンタルを含有しているとほぼ全量が有機溶媒に抽出され、洗浄してもほとんど低減されない。したがって、原料液が少量のタンタルを含有している場合は前処理として少量の有機溶媒と接触させてタンタルを抽出して原料液中のタンタルを低減しておくことが望ましい。
【0016】
次に、原料液がタンタルを含み、ニオブを実質的に含まないか少量しか含まない場合について説明する。まず、有機溶媒を原料液または原料液を液調整した液と接触させて、タンタルのほぼ全量と不純物の一部を有機溶媒に抽出して、不純物の大部分を抽出残液に残す(タンタル全抽出)。そして、タンタルのほぼ全量と不純物の一部を抽出した有機溶媒を鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等の水溶液で洗浄して不純物を低減して、タンタルを含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得る。ただし、原料液が含有する不純物があまり多くなければ、洗浄は実施しない場合もある。原料液が不純物としてニオブを含有していても、抽出および洗浄で低減することが可能である。
【0017】
さらに、原料液がタンタルおよびニオブを含有する場合について説明する。
主な方法として二種類の方法がある。
第1の方法は、(1)有機溶媒を原料液または原料液を液調整した液と接触させてタンタルのほぼ全量、ニオブおよびその他の不純物の一部を有機溶媒に抽出して、抽出残液にニオブおよびその他の不純物の大部分を残す(タンタル優先抽出)。(2)上記(1)で得られた有機溶媒を鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等の水溶液で洗浄して不純物を低減して、タンタルを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒を得る。
また、(4)有機溶媒を上記(1)で得られたニオブおよびその他の不純物を含有する抽出残液(必要に応じて液調整を行ったもの)と接触させて抽出残液中のニオブのほぼ全量とその他の不純物の一部を有機溶媒に抽出して、その他の不純物の大部分を抽出残液に残す(ニオブ全抽出)。(5)上記(4)で得られた有機溶媒を鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等で洗浄してその他の不純物を低減してニオブを含有して不純物を少量しか含有しない有機溶媒を得る。
原料液がその他の不純物を少量しか含有していない場合は、上記(5)の洗浄は実施しない場合がある。
この形態の場合、タンタルを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒およびニオブを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒の両方が産出する。もちろん、両方に本発明の有機溶媒の再生方法を適用するのが好ましいが、片方だけに本発明の有機溶媒の再生方法を適用する構成としてもよい。
【0018】
また、原料液がニオブよりもタンタルを多く含有する場合は、上記(1)にて得られる抽出残液に含まれるタンタルの量が多くなってしまうことがある。
このような場合には、(1)にて得られた抽出残液を、(4)に供給する前に少量の有機溶媒と接触させて、タンタルを有機溶媒に抽出して抽出残液に含まれるタンタルを低減しておくとよい。
あるいは、(1)の前に原料液を有機溶媒と接触させてタンタルの一部を有機溶媒に抽出し、タンタルよりニオブを多く含有する抽出残液を得て、該抽出残液を(1)に原料液の代わりとして供給してもよい。
これらの方法は、いずれも(1)のタンタル優先抽出を2段階にて行いタンタルの抽出をほぼ完全に行う方法と考えることができる。
これらの方法では、いずれも2種類の少なくともタンタルを含有した有機溶媒を産出するが、2種類の有機溶媒は合わせて(2)に供給してもよいし、別々に(2)に供給することもできる。
別々に供給する場合は、(2)は2系列となる。この場合、(2)の後の再生工程は2系列のまま行ってもよいが、1系列に戻して行ってもよい。
【0019】
原料液がタンタルおよびニオブを含有する場合の第2の方法について説明する。
i)有機溶媒を原料液と接触させてタンタルおよびニオブのほぼ全量を有機溶媒に抽出し、その他の不純物を抽出残液に残す(タンタルニオブ全抽出)。
iia)上記i)で得られた有機溶媒を鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等で洗浄して有機溶媒中の他の不純物を低減する。なお、原料液がその他の不純物を少量しか含有していない場合は、上記iia)の洗浄は実施しない場合がある。iib)上記iia)で得られたその他の不純物が低減された有機溶媒を水またはiia)で使用したものより低濃度の鉱酸水溶液(例えば硫酸水溶液)等の水溶液と接触させ有機溶媒中のニオブのほぼ全量とタンタルの一部を水溶液に(逆)抽出し、タンタル含有ニオブ液とタンタルを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒を得る。iv)上記iib)で得られたタンタル含有ニオブ液は有機溶媒と接触させてタンタルのほぼ全量とニオブの一部を有機溶媒に抽出して、ニオブ精製液を得る。そして、上記iv)で産出した有機溶媒は、上記i)で得られた有機溶媒と合せて上記iia)に供給される、あるいは、上記iia)で得られた有機溶媒と合せて上記iib)に供給される。したがって、この形態では処理対象としてタンタルを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒だけが産出する。ただし、上記iv)工程を上記iib)で得られたタンタル含有ニオブ液を有機溶媒と接触させてニオブおよび不純物として少量含まれるタンタルのほぼ全量を有機溶媒に抽出する構成とすればニオブを含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒も産出する。この有機溶媒は本発明の有機溶媒の再生方法を適用した後にiv)で再利用される。
【0020】
以上説明したいずれの形態においても有機溶媒は特に限定されるものではない。好ましい有機溶媒として、4−メチル−2−ペンタノン(別名:メチルイソブチルケトン、略称:MIBK)、トリブチルホスフェート(略称:TBP)が挙げることができる。4−メチル−2−ペンタノンは、通常希釈しないでそのまま使用する。トリブチルホスフェートは、同一質量当たりの価格は4−メチル−2−ペンタノンより高いが、4−メチル−2−ペンタノンと比較して分離精製能力が同等もしくはそれ以上であり、しかも水溶液への溶解度が4−メチル−2−ペンタノンに比べてかなり低いため損失が少なく補充量も少なくて済む。トリブチルホスフェートは、通常、石油系炭化水素希釈剤にて希釈して使用される。トリブチルホスフェート単独で使用すると、特に金属を多量に抽出させる場合に、水相との比重差が非常に小さくなってしまい、分相しにくくなるという不都合があるためである。石油系炭化水素希釈剤としては、特に限定されず種々の有機溶媒が使用可能である。この石油系炭化水素希釈剤の例としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ベンゼン、ケロシン、ジエチルベンゼン、IPソルベント(出光石油化学社製)、シェルゾールA(シェル化学社製)、イプゾール150(出光石油化学社製)が挙げられる。
【0021】
本発明の有機溶媒の再生方法の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得るための溶媒抽出方法の主なものは上記説明した方法であるが、これらに限定されず、公知の方法を単独であるいは適宜組み合わせて適用可能である。
【0022】
また、本発明の処理対象である有機溶媒が含有する不純物の合計量はタンタルまたはニオブの一方に対して2%以下であり、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。2%を超えると本発明の再生工程で得られるタンタルまたはニオブの一方の精製液中の不純物が多くなり通常用途には使用できない場合が多くなるためである。
ただし、これは本発明の再生方法を実施していることが前提であり、本発明の再生方法を実施しないで通常の再生方法(再生工程は1回のみ)を実施すると、タンタルまたはニオブの一方がニオブの場合、有機溶媒を循環使用するとタンタルが有機溶媒中に蓄積して、洗浄によりその他の不純物を低減した後の有機溶媒が含有するタンタルがニオブに対して2%を超えてしまう場合もある。
【0023】
再生工程
再生工程は、処理対象である溶媒抽出法によりタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させて、有機溶媒中のタンタルまたはニオブの一方および不純物を低減する工程で、一般には逆抽出あるいは剥離等と呼ばれている。
本発明は、タンタルおよび/またはニオブの溶媒抽出による分離精製においては従来1回であった再生工程を複数回行うことにより、再利用することのできる再生有機溶媒およびタンタル精製液またはニオブ精製液を極めて経済的かつ簡便に得ることができるようにしたものである。
本発明において、再生工程の回数は、新たな水または水溶液を使用する場合1回とする。そして、再生工程を例えばミキサーセトラーによる向流接触により行う場合、途中の段に新たな水または水溶液を供用しない限り、多段であっても1回の再生工程である。したがって、本発明は例えば第二の再生工程から産出した水溶液の全量を系外に抜出すのではなく、その一部を新たな水または水溶液とともに第一の再生工程に供用する等の形態を排除するものではない。しかしながら、このような形態は再生の効率を低下させる恐れがあるため、後述する実施例のように、各再生工程から産出した水溶液は全量系外に抜出すことが好ましい。すなわち、再生工程(例えば第二の再生工程)から産出した水溶液の一部をその前の再生工程に(例えば第一の再生工程)戻すことはしないことが好ましい。
以下、再生工程を第一の再生工程と第二の再生工程以降に分けて説明する。
【0024】
第一の再生工程
本発明の再生方法においては、第一の再生工程で、処理対象である溶媒抽出法によりタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させて、有機溶媒中のタンタルまたはニオブの一方を低減するとともに、タンタル精製液およびニオブ精製液の一方を得る。
【0025】
水としては、特に、純水、超純水が好ましい。
水溶液の好ましい例としては、鉱酸水溶液、アンモニア性窒素含有水溶液が挙げられる。
鉱酸水溶液は鉱酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、フッ化水素酸が好ましい。なかでも、塩酸のように鉄を有機溶媒に抽出しやすくすることがなく、しかも安価である硫酸が最も好ましい。鉱酸水溶液は、タンタルおよびニオブの抽出能力(逆抽出能力)は水よりも劣るが、有機溶媒との分相性は水よりも優れている。しかし、鉱酸水溶液の酸濃度が一塩基酸換算で4mol/Lを超えると(逆)抽出能力が低くなりすぎるため、一塩基酸換算で4mol/L以下であるのが好ましい。これは、例えば硫酸の場合、硫酸は二塩基酸であるため、一塩基酸に換算した濃度が4mol/L以下であるとは、換算しない濃度で2mol/L以下であることを意味する。
アンモニア性窒素含有水溶液は、アンモニウムイオンおよび/またはアンモニアを含有する水溶液であって、好ましい例としては、アンモニア水、フッ化アンモニウム水溶液、フッ化水素アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液が挙げられる。また、タンタル精製液および/またはニオブ精製液とアンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種の沈澱剤とを混合して、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを沈殿する工程、あるいは該沈殿を希薄アンモニア水または水で洗浄する工程から産出する濾液または上澄み液を必要に応じて希釈、さらにはpH調整した液も使用可能である。アンモニア性窒素含有水溶液のタンタルおよびニオブを(逆)抽出する能力は水よりも高い。アンモニア性窒素含有水溶液の好ましい濃度は経済性の点で窒素元素換算で10mol/L以下である。
水、鉱酸水溶液、アンモニア性窒素含有水溶液等の水溶液は、有機溶媒の種類、タンタルまたはニオブの一方がタンタルであるかニオブであるか、あるいは有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方のうち第一の再生工程において水または水溶液に(逆)抽出する割合等により適宜選択することができるが、一般的には、(逆)抽出能力の点で、水またはアンモニア性窒素含有水溶液を用いると使用量を少なくできるため好ましい。
【0026】
有機溶媒が4−メチル−2−ペンタノンまたはトリブチルホスフェートの場合も、(逆)抽出能力の点で水またはアンモニア性窒素含有水溶液を用いるのが好ましい。
有機溶媒がトリブチルホスフェートの場合、タンタルまたはニオブの一方がタンタルである場合はアンモニア性窒素含有水溶液を、タンタルまたはニオブの一方がニオブの場合は水を使用するのが特に好ましい。タンタルまたはニオブの一方がタンタルの場合、水では(逆)抽出能力が若干不足するため多量に使用する必要がある。
有機溶媒が4−メチル−2−ペンタノンの場合、タンタルまたはニオブの一方がタンタルであるかニオブであるかにかかわらず、水を用いるのが特に好ましい。トリブチルホスフェートの場合とは異なり、タンタルまたはニオブの一方がタンタルの場合でも水のタンタルを(逆)抽出する能力は十分ある。この点が、4−メチル−2−ペンタノンの大きな利点である。
また、タンタルまたはニオブの一方がニオブの場合、有機溶媒が4−メチル−2−ペンタノンであってもトリブチルホスフェートであっても、水を用いるのが特に好ましいが、これは、第一の再生工程に供給される有機溶媒が少量のタンタルを含有していたとしても、水を使用すれば第一の再生工程で得られるニオブ精製液にタンタルはほとんど混入しないが、アンモニア性窒素含有水溶液を使用するとニオブ精製液にタンタルが混入しやすいからである。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、前記水または水溶液に(逆)抽出されるタンタルまたはニオブの一方の量を、第一の再生工程に供される有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方の量の20質量%以上とするのが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。この割合が下限値未満であると、第二の再生工程以降におけるタンタルまたはニオブの一方の低減における負荷が大きくなりすぎて、第二の再生工程以降におけるタンタルまたはニオブの一方の低減が不十分になりやすい。
また、この割合が95%を超えると、第一の再生工程に使用する水または水溶液の量を非常に多くする必要があるため95%以下にするのが好ましい。さらに、有機溶媒が4−メチル−2−ペンタノンまたはトリブチルホスフェートであり、タンタルまたはニオブの一方がニオブである場合、水を使用してタンタルの混入の少ないニオブ精製液を得られることを説明したが、この場合も、この割合が95%を超えるとニオブ精製液へタンタルが混入しやすくなる。
また、この割合は、使用する水または水溶液の種類、水または水溶液の流量もしくは液量に対する有機溶媒の流量もしくは液量の比(O/A比)、例えば溶媒抽出装置がミキサーセトラーの場合の段数等を適宜定めることにより調整可能である。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒は、バッチ処理の溶媒抽出により得られることは不可能ではないが、通常ミキサーセトラーやカラム等を用いた連続溶媒抽出処理によって得られるため、第一の再生工程もミキサーセトラーやカラム等を用いた連続処理により行うのが好ましい。
【0029】
第二の再生工程以降
本発明の再生方法においては、第一の再生工程で得られたタンタルまたはニオブの一方を低減された有機溶媒を水または水溶液と接触させて、有機溶媒中のタンタルまたはニオブの一方をさらに低減する。必要があれば、第二の再生工程で得られた有機溶媒を同様に処理する等処理回数を重ねることができるが、第三の再生工程以降は実施しないのが経済的である。ただし、バッチ式で行う場合は少なくとも第三の再生工程を実施しないと再生が不十分になることが多い。そして、最後の再生工程からタンタルまたはニオブの一方および不純物が低減された再生有機溶媒を得る。また、第二の再生工程以降においてもタンタル精製液またはニオブ精製液の一方を得る構成としてもよい。
【0030】
水としては、特に、純水、超純水が好ましい。
水溶液の好ましい例としては、鉱酸水溶液、アンモニア性窒素含有水溶液が挙げられる。
鉱酸水溶液は鉱酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、フッ化水素酸が好ましい。なかでも、塩酸のように鉄を有機溶媒に抽出しやすくすることがなく、しかも安価である硫酸が最も好ましい。鉱酸水溶液は、タンタルおよびニオブの抽出能力(逆抽出能力)は水よりも劣るが、有機溶媒との分相性は水よりも優れている。しかし、鉱酸水溶液の酸濃度が一塩基酸換算で4mol/Lを超えると(逆)抽出能力が低くなりすぎるため、一塩基酸換算で4mol/L以下であるのが好ましい。これは、例えば硫酸の場合、硫酸は二塩基酸であるため、一塩基酸に換算した濃度が4mol/L以下であるとは、換算しない濃度で2mol/L以下であることを意味する。
アンモニア性窒素含有水溶液は、アンモニウムイオンおよび/またはアンモニアを含有する水溶液であって、好ましい例としては、アンモニア水、フッ化アンモニウム水溶液、フッ化水素アンモニウム、塩化アンモニウム水溶液が挙げられる。また、タンタル精製液および/またはニオブ精製液にアンモニア水を添加して水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを沈殿する工程、あるいは該沈殿を希薄アンモニア水または水で洗浄する工程から産出する濾液または上澄み液を必要に応じて希釈、さらにはpH調整した液も使用可能である。アンモニア性窒素含有水溶液のタンタルおよびニオブを(逆)抽出する能力は水よりも高い。アンモニア性窒素含有水溶液の好ましい濃度は経済性の点で窒素元素換算で10mol/L以下である。
水、鉱酸水溶液、アンモニア性窒素含有水溶液等の水溶液は、有機溶媒の種類、タンタルまたはニオブの一方がタンタルであるかニオブであるか、あるいは有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方のうち第一の再生工程において水または水溶液に(逆)抽出されずに有機溶媒中に残留している割合等により適宜選択することができるが、一般的には、(逆)抽出能力の点で、水またはアンモニア性窒素含有水溶液を用いると使用量を少なくできるため好ましい。
また、錯化剤含有水溶液を使用することも考えられる。錯化剤の好ましい例としては、乳酸、クエン酸、酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、エチレンジアミン四酢酸、およびこれらの塩が挙げられる。錯化剤水溶液に鉱酸あるいはアルカリを添加してpHを調製して(逆)抽出能力を調整することも考えられる。
【0031】
第二の再生工程以降で使用する水または水溶液は、第一の再生工程で使用するものと同じものを使用してもよいが、第一の再生工程で使用した水または水溶液より有機溶媒からタンタルまたはニオブを(逆)抽出する能力が高い水または水溶液を使用するのが好ましい。これは、再生有機溶媒中に残留するタンタルまたはニオブの一方および不純物の量を容易に低減できるからである。
【0032】
水または水溶液が有機溶媒からタンタルまたはニオブを(逆)抽出する能力は、鉱酸水溶液(低濃度であるほど(逆)抽出能力が大きい)<水<アンモニア性窒素含有水溶液(高濃度であるほど(逆)抽出能力が高い)の順番である。
また、錯化剤水溶液は錯化剤の種類およびpH等によって(逆)抽出能力が大きく異なる。したがって、以下に示す方法で、例えば水を基準として、(逆)抽出能力を測定してから使用するのが好ましい。
また、有機溶媒からタンタルまたはニオブを(逆)抽出する能力の比較は、タンタルまたはニオブを含有する有機溶媒を少量準備して、分液ロートに水溶液とともに入れ、振り混ぜた後分相させ、水溶液相および/または有機溶媒等のタンタルまたはニオブを測定することを、2種類の水または水溶液について行うことで容易に判定できるため、上記説明した以外の水溶液を使用する場合等少なくとも一方の(逆)抽出能力が不明の場合であっても容易に対応可能である。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、有機溶媒からタンタルまたはニオブを低減するための水または水溶液として、第一の再生工程で水またはアンモニア性窒素含有水溶液を用い、第二の再生工程アンモニア性窒素含有水溶液(ただし、第一の再生工程でアンモニア性窒素含有水溶液を用いた場合はそれより高濃度であることを要する)を用いるのが抽出能力が高く少量の使用で済むため好ましい。有機溶媒が4−メチル−2−ペンタノンの場合、第一の再生工程では水を用いるのが特に好ましいことは先に説明した通りである。
【0034】
本発明の好ましい態様によれば、再生工程に供用される有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方がニオブである場合、再生有機溶媒中に残留するタンタルの濃度が1g/L以下であるのが好ましく、より好ましくは0.2g/L以下、さらに好ましくは0.05g/L以下である。上記上限値を超えると、有機溶媒を再利用した場合、ニオブ精製液中に無視しえない濃度でタンタルが混入してくることがある。この点からはタンタル濃度は低いほど好ましいと言えるが、タンタル濃度の低減に要する負担を考慮すれば0.001g/L以上とするのが経済的に好ましい。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、再生工程に供用される有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方がタンタルである場合は再生有機溶媒中に残留するタンタルの濃度が、あるいは、再生工程に供用される有機溶媒が含有するタンタルまたはニオブの一方がニオブである場合は再生有機溶媒中に残留するニオブの濃度が、5g/L以下であるのが好ましく、より好ましくは2g/L以下である。
上記上限値を超えると残留するタンタルまたはニオブが多いため有機溶媒の抽出能力が低下して、タンタルおよび/またはニオブを全抽出する工程に再利用した場合抽出残液中にタンタルまたはニオブが残留する量が増えて損失となる。また、タンタル優先抽出の場合はニオブおよびその他の不純物を含有する抽出残液中にタンタルが混入してしまい、該抽出残液をニオブ精製前に、有機溶媒と再接触させてタンタルを抽出しないと該抽出残液を処理して得られるニオブ精製液中のタンタル濃度が高くなってしまうことが多い。この点からはタンタル濃度あるいはニオブ濃度は低いほど好ましいと言えるが、タンタル濃度あるいはニオブ濃度の低減に要する負担を考慮すれば0.001g/L以上とするのが経済的に好ましい。
【0036】
再生有機溶媒中に残留するタンタルまたはニオブの濃度を好適範囲にすることは、有機溶媒の種類、第一の再生工程から産出した有機溶媒が含有しているタンタルまたはニオブの一方および不純物の量に応じて、用いる水または水溶液の種類、O/A比、例えば溶媒抽出装置がミキサーセトラーの場合の段数等を適宜定めることにより可能である。
【0037】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しない有機溶媒は、バッチ処理の溶媒抽出により得ることは不可能ではないが、通常ミキサーセトラーやカラム等を用いた連続溶媒抽出処理によって得られるため、第二の再生工程もミキサーセトラーやカラム等を用いた連続処理により行うのが好ましい。
また、タンタルまたはニオブの一方がニオブの場合で、第一の再生工程に供用されたニオブと少量の不純物を含有する有機溶媒の含有するニオブの大部分を第一の再生工程にて水または水溶液にて(逆)抽出する場合は、第一の再生工程にて産出する有機溶媒中のタンタル濃度が再生有機溶媒中について定めたタンタル濃度の好適範囲の上限近くになるまでは第二の再生工程を運転せずにニオブを全抽出する工程に再利用し、第一の再生工程にて産出する有機溶媒中のタンタル濃度が再生有機溶媒中について定めたタンタル濃度の上限近くになったときに第二の再生工程を運転するという構成、すなわち間欠運転としてもよい。このような間欠運転で少なくとも第一の再生工程から得られるニオブ精製液中のタンタル濃度は十分低く保たれる。
しかしながら、間欠運転の場合は第二の再生工程から産出する液をニオブ精製液として回収する場合、第二の再生工程から産出するニオブ精製液が含有するタンタル濃度は連続運転の場合に比べて高くなるので、連続運転のほうが好ましい。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、第二の再生工程における(有機溶媒の流量または液量)/(水または水溶液)の比率であるO/A比を0.5〜50とするのが好ましく、より好ましくは1〜30、さらに好ましくは2〜20とする。ただし、O/A値の最適値は、タンタルまたはニオブの一方がタンタルであるかニオブであるか、および水または水溶液の抽出能力により異なる。O/A比が上記下限値未満であると残留するタンタルおよび/またはニオブ濃度を十分低減できるものの、経済的に不利となる。O/A比が上記上限値を超えると、残留するタンタルおよび/またはニオブ濃度が高くなる場合がある。なお、上記O/A値の定義において、「流量」とはミキサーセトラー、カラム等による連続処理で有機溶媒の再生処理を行う場合を想定しており、「液量」はバッチ式で有機溶媒の再生処理を行う場合を想定したものである。
【0039】
本発明の好ましい態様によれば、第二の再生工程をミキサーセトラーで行う場合、そのミキサーセトラーの段数は2〜30段とするのが好ましく、より好ましくは2〜10段である。段数を多くすればO/A比を大きくすることができるが、上記上限値を超えて大きくしてもO/A比をさらに大きくすることは困難であり、経済的に不利となる。また、段数が1段では、残留する金属濃度を十分に低減するためにはO/A比を非常に小さくしなければならなくなる。
【0040】
以上再生工程についてはタンタル、ニオブの低減を中心に説明してきたが、ここではその他の不純物について説明する。有機溶媒への抽出のされやすさは大部分のその他の不純物については、タンタルおよびニオブより有機溶媒に抽出されにくい。このため、本発明の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒はその他の不純物を少量しか含有せず、その他の不純物の大部分は第一の再生工程で水または水溶液に(逆)抽出されてタンタルまたはニオブの一方の精製液中に分布する。したがって、第一の再生工程にて産出するタンタルまたはニオブの一方の精製液のその他の不純物を低減するためには、あらかじめ本発明の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得る段階で鉱酸水溶液による洗浄などで不純物を低減しておく必要がある。また、アンチモンは有機溶媒への抽出のされやすさが、ニオブとタンタルの中間であるため、再生有機溶媒中に残留するアンチモンを低減するのはタンタルの場合よりも容易であるものの、溶媒抽出にて、タンタル、ニオブから分離精製するのが困難なため、原料液の段階で卑金属による還元などの方法によって低減しておくことが望ましい。ただし、アンチモンはタンタル精製液またはニオブ精製液から水酸化タンタルまたは水酸化ニオブさらには酸化タンタルまたは酸化ニオブを得る場合には問題となるが、タンタル精製液またはニオブ精製液からフッ化タンタル酸カリウム結晶、フッ化ニオブ酸カリウム結晶、オキシフッ化ニオブ酸カリウム結晶を得る場合にはアンチモンはこれらの結晶中にはほとんど分布しないためアンチモンを含有する原料液をそのまま溶媒抽出に供用してもよい。
【0041】
タンタル精製液および/またはニオブ精製液の製造
本発明の再生方法が適用された、タンタル精製液および/またはニオブ精製液の製造方法を以下に説明する。
【0042】
まず、タンタルおよびニオブの少なくとも一方を含有する原料を用意する。この原料を少なくともフッ化水素酸を用いて溶解することにより、タンタルおよびニオブの少なくとも一方を含有する水系原料液を得る。タンタルおよび/またはニオブを含有する原料の好ましい例としては、タンタライト、コロンバイト、パイロクロア、ストロベライト等の鉱石;フェロニオブ、フェロタンタル、フェロタンタルニオブ等の合金;LT、LN製造工程、Ta、Nb粉製造工程、超硬合金、超硬工具製造工程等から産出する各種スクラップを挙げることができる。
【0043】
本発明の好ましい態様によれば、フッ化水素酸による溶解のための前処理として、原料を粉砕したり、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で処理(アルカリ疎解)したり、フッ化水素酸以外の鉱酸にて洗浄したりした後、フッ化水素酸単独で、またはフッ化水素酸およびそれ以外の鉱酸により処理して濾過することにより原料液を得ることにより得てもよい。例えば、(a)タンタルおよびニオブの少なくとも1種を含有する原料をフッ化水素酸単独で、またはフッ化水素酸およびそれ以外の鉱酸の組合せにより溶解させる;または(b)タンタルおよびニオブの少なくとも1種を含有する原料を水酸化ナトリウム水溶液により疎解した後、必要に応じてフッ化水素酸以外の鉱酸にて洗浄し、フッ化水素酸単独で、またはフッ化水素酸およびそれ以外の鉱酸の組合せにより溶解させることにより原料液を得ることができる。
【0044】
上記のように得られた原料液から溶媒抽出によって、有機溶媒の再生方法の処理対象であるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を得る。その方法は、有機溶媒の再生方法の処理対象のところで説明した通りである。
それ以降の工程は本発明の再生方法に基づいて行われる。
【0045】
具体的には、公知の方法により産出されるタンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を、水または水溶液と接触させてタンタルまたはニオブの一方を水または水溶液に(逆)抽出することにより、有機溶媒中のタンタルまたはニオブの一方を低減するとともに、タンタル精製液またはニオブ精製液の一方を得る(第一の再生工程)。更に、タンタルまたはニオブの一方が低減された有機溶媒を水または水溶液と接触させて残留するタンタルおよびニオブの一方を水または水溶液に(逆)抽出することにより、タンタルまたはニオブの一方および不純物が低減された再生有機溶媒、ならびに所望によりタンタル精製液またはニオブ精製液の一方を得る(第二の再生工程)。場合によっては、第二の再生工程で産出した有機溶媒は再生有機溶媒とはしないで、さらなる再生工程を行い再生有機溶媒を得るようにしてもよい。以上の再生工程は、タンタルまたはニオブの一方が、タンタルの場合またはニオブの場合のどちらか一方だけを行いタンタル精製液またはニオブ精製液の一方を得るようにしてもよいが、原料液がタンタルおよびニオブの両方を含有する場合には、タンタルまたはニオブの一方が、タンタルの場合およびニオブの場合とも実施してタンタル精製液およびニオブ精製液を得る構成とするのが好ましい。しかしながら、原料液がタンタルおよびニオブの両方を含有しており、最初にタンタル優先抽出を行う場合は、どちらか一方の再生工程だけを実施した場合であっても全く実施しない場合に比べれば、タンタル精製液およびニオブ精製液とも高純度のものを得ることができる。こうして得られたタンタル精製液および/またはニオブ含有精製液は、酸化タンタル、酸化ニオブ、炭化タンタル、炭化ニオブ、フッ化タンタル酸カリウム、フッ化ニオブ酸カリウム、タンタル、ニオブ、窒化タンタル、および窒化ニオブを始めとする、各種のタンタル/ニオブ製品の製造に好適に用いられる。そして、第一の再生工程から得られるタンタル精製液および/またはニオブ精製液を利用すれば、極めて高品位のタンタル/ニオブ製品を製造することができる。また、第二の再生工程以降の再生工程にてタンタル精製液またはニオブ精製液を得た場合には、それを利用しても、ある程度良好な品位のタンタル/ニオブ製品を製造することができる。特にタンタル精製液の場合には、第二の再生工程以降で得られたタンタル精製液の方が第一の精製工程で得られた精製液よりも不純物(特にニオブ、アンチモン)含有量の少ない場合が多い。
【0046】
本発明においては、上記得られた再生有機溶媒の少なくとも一部、好ましくは半量以上、最も好ましくは全量を、タンタルおよび/またはニオブの抽出に用いる有機溶媒の一部または全部として再循環させることにより再利用を行う。これにより高い品位のタンタル精製液および/またはニオブ精製液を長時間にわたり経済的かつ効率的に製造することができる。
【0047】
水酸化タンタル/水酸化ニオブの製造
水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブの製造においては、まず、タンタル精製液またはニオブ精製液とアンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種の沈澱剤とを混合して、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブ沈殿を析出させる。沈澱剤としては、発泡の問題のないアンモニアが好ましい。アンモニアは、アンモニアガスまたは液体アンモニアとして使用することも可能であるが、取扱いやすいアンモニア水溶液(アンモニア水)として使用するのが好ましい。アンモニア水の濃度は特に限定されないが、2mol/Lより低いと排水量が増えるため好ましくなく、工業用として販売されているもの(通常13〜16mol/L)をそのまま使用することができる。炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムは、固体のまま使用する、水でスラリー化して使用する、水溶液として使用する等が考えられるが、得られる沈澱の均一性の点で水溶液として使用するのが好ましい。炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムの水溶液は、あまりにも低濃度であると排水量が増えるため、10g/L以上が好ましい。この沈殿生成は、(1)タンタル精製液/ニオブ精製液を攪拌しながら沈澱剤を添加する;(2)沈澱剤を攪拌しながらタンタル精製液/ニオブ精製液を添加する;(3)タンタル精製液/ニオブ精製液と沈澱剤を同時添加する(連続沈澱)のいずれによっても好ましく行うことができる。タンタル精製液またはニオブ精製液と沈澱剤との混合終了時の溶液のpHは、8〜11とするのが好ましく、より好ましくは9〜10である。
沈澱剤が炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、特に炭酸水素アンモニウムの場合、中和計算量よりも多く使用しても、pHが低く溶液中にタンタルまたはニオブが多く残留することがあるため、アンモニアを併用してpHを好適範囲にすることが好ましい。
【0048】
得られた水酸化タンタル/水酸化ニオブ沈殿は、アンモニアまたはアンモニウムイオンを含有する溶液および/または純水を用いて洗浄するのが、フッ素含有量を低減できる点で好ましい。
このようにして得られた沈殿含有溶液を濾過して、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブからなる沈殿物を濾別する。また、得られた水酸化タンタル/水酸化ニオブは必要に応じて乾燥するのが好ましい。
【0049】
酸化タンタル/酸化ニオブの製造
酸化タンタルおよび/または酸化ニオブは、上記製造方法により得られた水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを好ましくは450〜1200℃、より好ましくは550〜1100℃の温度で焼成し、必要に応じて焼成後に解砕することにより製造することができる。焼成温度が450℃未満では酸化タンタルおよび/または酸化ニオブへの転換が不十分になりやすい。1100℃を超えるとエネルギーの無駄となる。また、ボール等を粉砕媒体として使用する場合、媒体としてナイロンボールまたはナイロンコーティングボール等を用いるのが媒体からの汚染を防止できる点で好ましい。
このようにして得られた酸化ニオブおよび/または酸化ニオブは、LT/LN単結晶用、電子セラミックス用、光学用等に好適に使用可能である。
【0050】
【実施例】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、「%」は質量%を、「ppm」は質量ppmを意味する。
【0051】
例1
(1)原料液の調製
まず、タンタル含有フェロニオブ5000kgを用意した。このタンタル含有フェロニオブの組成分析をICP発光分光法により行ったところ、Ta:5.3%、Nb:44%、Fe:32%、Sb:0.002%であった。タンタル含有フェロニオブをジョークラシャーにより粗粉砕した後、湿式ボールミルにより微粉砕して粉砕スラリーを得た。この粉砕スラリーを48%水酸化ナトリウム水溶液8800kgを用いて処理してアルカリ疎解スラリーを得た。このスラリーを濾過して、疎解ケーキを得た。この疎解ケーキをpH1.3になるまで1mol/L硫酸を添加混合して酸洗浄した後、濾過して酸洗浄ケーキを得た。この酸洗浄ケーキを80%フッ化水素酸3200Lで溶解して濾過し、原料液を得た。上記一連の操作を4回実施して、合計量40000Lの原料液を調製した。原料液の全量を均一に混合して、ICP発光分光法により組成分析を行った。その結果、原料液の組成は、Ta:26.2g/L、Nb:218g/L、Sb:0.001g/L、SO4:0.32mol/L(31g/L))であった。また、原料液中の過剰フッ化水素酸濃度をイオン交換分離−フッ素イオン電極法により測定したところ、2.6mol/Lであった。
【0052】
(2)タンタル精製液の製造
原料液30000Lに96%硫酸1200Lを添加し混合することにより、液調整を行った。液調整された液の組成分析をICP発光分光法により行ったところ、Ta:25.2g/L、Nb:210g/L、Sb:0.001g/L、SO4:1.0mol/L(96g/L)であった。また、液調整された液中の過剰フッ化水素酸濃度をイオン交換分離−フッ素イオン電極法により測定したところ、2.5mol/Lであった。液調整液のうち23000Lを溶媒抽出によるタンタルの分離精製に付した。図1に示されるように、このタンタル分離精製処理はT−1〜T−4工程からなる系を用いて約770時間運転することにより行った。なお、T−2工程から産出した有機溶媒が本発明の処理対象であるタンタルを含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒であり、T−3工程が本発明の再生方法における第一の再生工程に対応し、T−4工程が第二の再生工程に対応する。これらの各工程は向流多段方式のミキサーセトラーを有してなり、各ミキサーセトラーにおいて第一段に有機溶媒として4−メチル−2−ペンタノン(以下、別名メチルイソブチルケトンの略記である「MIBK」と表記する)を0.25L/分の流速で供給し、最終段には水または水溶液を供給することにより混合接触を行った。
【0053】
具体的には、T−1工程では上記液調整液とMIBKとを混合接触させて、Nb含有抽出残液とTa含有MIBKとを得た。T−1工程において、ミキサーセトラーの段数は10段とし、液調整液の流速は0.5L/分とした。T−2工程ではT−1工程で産出したMIBKと1.5mol/L(一塩基酸換算3mol/L)の硫酸とを混合接触させて、MIBK中に残留するNbおよびその他の不純物を低減した。T−2工程において、ミキサーセトラーの段数は10段とし、硫酸の流速は0.075L/分とした。T−3工程ではT−2工程で産出したMIBKと純水とを混合接触させて、Ta精製液1を得た。T−3工程において、ミキサーセトラーの段数は5段とし、純水の流速は0.15L/分とした。T−4工程ではT−3工程で産出したMIBKと4mol/Lのフッ化アンモニウム水溶液とを混合接触させて、再生有機溶媒(MIBK)およびTa精製液2を得た。T−4工程において、ミキサーセトラーの段数は5段とし、フッ化アンモニウム水溶液の流速は0.075L/分とした。T−4工程で産出したMIBKは有機溶媒貯漕に送られ、T−1工程に用いるMIBKとして系内を循環させた。
T−1工程においては、ミキサーセトラーでの結晶の析出は全く起こらなかった。T−1工程で産出したNb含有抽出残液の組成をICP発光分光法により分析したところTa:0.0025g/L、Nb:205g/L、Sb:0.0008g/Lであった。また、T−1工程で産出したNb含有抽出残液中の過剰フッ化水素酸濃度をイオン交換分離−フッ素イオン電極法により測定したところ、1.1mol/Lであった。T−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Nb、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Taを100質量%として、0.01質量%以下であった。
【0054】
タンタルの分離精製運転開始後、50、100、150および200時間経過時において、ICP発光分光法により、以下の測定を行った:
− T−4工程において産出した再生有機溶媒中の残留Ta濃度(g/L)
− T−3工程における純水へのTa抽出率(%)
− T−3工程で産出したTa精製液1におけるTa分布率(%)
− T−4工程で産出したTa精製液2におけるTa分布率(%)
なお、Ta抽出率は下記式に基づいて算出した。
Ta抽出率(%)=[{液調整液Ta濃度(g/L)×液調整液流量(L/分)×Ta精製液1へのTa分布率(%)}/100]/[液調整液Ta濃度(g/L)×液調整液流量(L/分)×{Ta精製液1へのTa分布率(%)+Ta精製液2へのTa分布率(%)}/100+再生有機溶媒残留Ta濃度(g/L)×有機溶媒流量(L/分)]×100
また、Ta分布率は下記式に基づいて算出した。
Ta分布率(%)=[Ta精製液Ta濃度(g/L)× Ta精製液流量(L/分)]/[液調整液Ta濃度(g/L)× 液調整液流量(L/分)] × 100
なお、Ta抽出率は再生有機溶媒中に残留したTaも考慮しているが、Ta分布率は再生有機溶媒に残留したTaは考慮していない。
結果は表1に示される通り、再生有機溶媒中の残留Ta濃度およびT−1抽出残液Ta濃度とも非常に低く良好であった。
【0055】
タンタルの分離精製運転開始後200時間経過時において得られたTa精製液1および2を使用して酸化タンタルをそれぞれ製造した。具体的には、まず、Ta精製液1を攪拌しながら、13.5mol/Lアンモニア水をpHが9強になるまで添加した。こうして得られた液を静置して沈殿を沈降させて、上澄み液を抜き出した後、洗浄液(1回目および2回目は2%アンモニア水、3回目は純水)を加えてリパルプを行った。この一連の洗浄手順を3回繰り返した後、濾過して水酸化タンタルを得た。水酸化タンタルを150℃にて24時間乾燥させた後、900℃にて12時間焼成して酸化タンタル1を得た。Ta精製液2についてもTa精製液1と同様にして、酸化タンタル2を得た。得られた酸化タンタル1および2について、不純物含有量をICP発光分光法により分析した。その結果をそれぞれ表2に示す。
Ta精製液1から製造した酸化タンタル1も十分高純度であるが、Ta精製液2から製造した酸化タンタル2はさらに高純度であり、本発明の有機溶媒の再生方法を適用した効果が得られている。
【0056】
(3)T−1抽出残液の処理
T−1工程で産出したNb含有抽出残液を5000L用意した。この抽出残液に硫酸ナトリウム85kgを添加した後、96%硫酸1500Lを添加して結晶を析出させた。混合液を25℃まで冷却した後、濾過により結晶を除去した。得られた混合液に80%のフッ化水素酸を575L添加して、液調整液を得た。得られた液調整液の組成をICP発光分光法により分析したところTa:0.0017g/L、Nb:142g/L、Sb:0.0006g/Lであった。
【0057】
(4)ニオブ精製液の製造
次に、得られた液調整液を溶媒抽出によるニオブの分離精製に付した。図1に示されるように、このニオブ分離精製処理はN−1〜N−4工程からなる系を用いて、約500時間運転することにより行った。なお、N−2工程から産出した有機溶媒が本発明の処理対象であるニオブを含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒であり、N−3工程が本発明の再生方法における第一の再生工程に対応し、N−4工程が第二の再生工程に対応する。これらの各工程は向流多段方式のミキサーセトラーを有してなり、各ミキサーセトラーにおいて第一段に有機溶媒としてMIBKを0.3L/分の流速で供給し、最終段には水または水溶液を供給することにより混合接触を行った。
【0058】
具体的には、N−1工程ではタンタル分離精製工程とは別個に供給されるMIBKと液調整液とを混合接触させて、抽出残液とNb含有MIBKとを得た。N−1工程において、ミキサーセトラーの段数は7段とし、液調整液の流速は0.1L/分とした。N−2工程ではN−1工程で産出したMIBKと5mol/L(一塩基酸換算10mol/L)の硫酸とを混合接触させて、残留するその他の不純物を低減した。N−2工程において、ミキサーセトラーの段数は12段とし、硫酸の流速は0.04L/分とした。N−3工程ではN−2工程で産出したMIBKと純水とを混合接触させて、Nb精製液1を得た。N−3工程において、ミキサーセトラーの段数は5段とし、純水の流量は0.05/Lとした。N−4工程ではN−3工程で産出したMIBKと2mol/Lフッ化アンモニウム水溶液とを混合接触させて、再生有機溶媒(MIBK)およびNb精製液2を得た。
N−4工程において、ミキサーセトラーの段数は5段とし、フッ化アンモニウム水溶液の流速は0.02L/分とした。また、N−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Ta、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Nbを100質量%として、0.05質量%であった。
【0059】
ニオブの分離精製運転開始後、100、200、300、400および500時間経過時において、ICP発光分光法により、以下の測定を行った:
− N−4工程において産出した再生有機溶媒中の残留Ta濃度およびNb濃度(g/L)
− N−1工程において産出した抽出残液中のNb濃度(g/L)
− N−3工程における純水へのNb抽出率(%)
なお、Nb抽出率は下記式に基づいて算出した。
Nb抽出率(%)=[{液調整液Nb濃度(g/L)×液調整液流量(L/分)×Nb精製液1へのNb分布率(%)}/100]/[液調整液Nb濃度(g/L)×液調整液流量(L/分)×{Nb精製液1へのNb分布率(%)+Nb精製液2へのNb分布率(%)}/100+再生有機溶媒残留Nb濃度(g/L)×有機溶媒流量(L/分)]×100
また、Nb分布率は下記式に基づいて算出した。
Nb分布率(%)=[Nb精製液Nb濃度(g/L)× Nb精製液流量(L/分)]/[液調整液 Nb濃度(g/L)× 液調整液流量(L/分)] × 100
なお、Nb抽出率は再生有機溶媒中に残留したNbも考慮しているが、Nb分布率は再生有機溶媒に残留したNbは考慮していない。
結果は表3に示される通り、再生有機溶媒中の残留Ta濃度、残留Nb濃度およびT−1抽出残液Nb濃度とも非常に低く良好であった。
【0060】
ニオブの分離精製運転開始後、100、200、300、400および500時間経過時においてそれぞれ得られたNb精製液1および2を使用して酸化ニオブをそれぞれ製造した。具体的には、まず、Nb精製液1を攪拌しながら、13.5mol/Lアンモニア水をpHが9強になるまで添加した。こうして得られた液を静置して沈殿を沈降させて、上澄み液を抜き出した後、洗浄液(1回目および2回目は2%アンモニア水、3回目は純水)を加えてリパルプを行った。この一連の洗浄手順を3回繰り返した後、濾過して水酸化ニオブを得た。水酸化ニオブを150℃にて24時間乾燥させた後、900℃にて12時間焼成して酸化ニオブ1を得た。Nb精製液2についてもNb精製液1と同様にして、酸化ニオブ2を得た。得られた酸化ニオブ1および2について、不純物含有量をICP発光分光法により分析した。その結果をそれぞれ表4および5に示す。
特にNb精製液1から製造された酸化ニオブ1については非常に高純度であった。
【0061】
例2
ニオブ精製工程においてN−4工程を行わなかったこと、およびN−1〜N−3の各工程における流速を表3に示される値としたことを除いて、例1と同様にして処理および測定を行った。その結果は表1〜4に示される通りであった。
なお、N−3純水へのNb抽出率の算出において、Nb精製液2へのNb分布率は0とした。
T−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Nb、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Taを100質量%として、0.01質量%以下であった。N−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Ta、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Nbを100質量%として、0.8質量%であった。
ニオブ精製工程の有機溶媒(4−メチル−2−ペンタノン)の流量を例1および例3に比べて多くしたのはN−3工程で産出した有機溶媒中には例1および例3のN−4工程で産出した有機溶媒中よりもNbが多く残留することが予想され、例1および例2と同じ流量でN−1工程に循環使用した場合N−1工程におけるNbの抽出が不十分になることが予想されたためである。これは例4についても同様である。
表3から、例2ではN−4工程を実施した例1と比べて、Nb精製工程における再生有機溶媒中の残留Nb濃度が高いためN−1抽出残液のNb濃度が高くNbの損失が大きい。さらに、再生有機溶媒中のTa濃度が時間とともに増大してきた。また、表4より得られる酸化ニオブはかなり高純度ではあるが、例1のNb精製液1から製造した酸化ニオブ1よりは劣り、時間とともにTa2O5含有量が高くなってきた。
【0062】
例3
タンタル精製工程においてT−4工程を行わなかったこと、およびT−1〜T−4の各工程において、流速を表1に示される値とし、液調整液の使用量を7000Lとし、運転時間を約230時間としたことを除いて、例1と同様にして処理および測定を行った。その結果は表1〜5に示される通りであった。
なお、T−3純水へのTa抽出率の算出において、Ta精製液2へのTa分布率は0とした。
T−1工程で産出したNb含有抽出残液の組成をICP発光分光法により分析したところTa:0.135g/L、Nb:202g/L、Sb:0.0008g/Lであった。また、得られた液調整液の組成をICP発光分光法により分析したところTa:0.093g/L、Nb:140g/L、Sb:0.0006g/Lであった。また、T−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Nb、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Taを100質量%として、0.01質量%以下であった。N−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Ta、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Nbを100質量%として、0.2質量%であった。
タンタル精製工程の有機溶媒(4−メチル−2−ペンタノン)の流量を例1に比べて多くしたのはT−3工程で産出した有機溶媒中には例1のT−4工程で産出した有機溶媒中よりもTaが多く残留することが予想され、例1と同じ流量でT−1工程に循環使用した場合T−1工程におけるTaの抽出が不十分になることが予想されたためである。例3と例4のタンタル精製工程は同一のためこれは例4についても同じである。
表1から、例3ではT−4工程を実施した例1と比べて、Ta精製工程における再生有機溶媒中のTa濃度が高いためT−1抽出残液のTa濃度が高くなった。また、表2から、Ta精製液1から製造した酸化タンタル1については、例1の場合と同等だが、例1のTa精製液2から製造された酸化タンタル2のような非常に高純度な酸化タンタルは得られなかった。
そして、表3から例3ではN−4工程を実施しているため、Nb精製工程における再生有機溶媒中およびN−1抽出残液中のNb濃度は例1とほぼ同じであるが、T−4工程を実施しておらずT−1抽出残液のTa濃度が高いため、N−4工程を実施していても、再生有機溶媒中のNb濃度は例1よりも若干高い。また、表4および表5から、Nb精製液1から製造した酸化ニオブ1の純度は例1よりわずかに劣るだけだが、Nb精製液2は例1よりTa2O5含有量が格段に高く、原料戻しする等の再処理が必要である。しかし、T−4工程を実施していなくても、N−4工程を実施しているため大部分の酸化ニオブ(Nb精製液1から製造した酸化ニオブ)は高純度である。
【0063】
例4(比較例)
ニオブ精製工程においてN−4工程を行わなかったこと、およびN−1〜N−3の各工程における流速を表2に示される値としたことを除いて、例3と同様にして処理および測定を行った。その結果は表1〜4に示される通りであった。
なお、T−3純水へのTa抽出率の算出において、Ta精製液2へのTa分布率は0とし、N−3純水へのNb抽出率の算出において、Nb精製液2へのNb分布率は0とした。
T−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Nb、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Taを100質量%として、0.01質量%以下であった。N−2工程で産出した有機溶媒中の不純物Ta、Ca、Fe、Mn、Na、Ni、Sb、Si、Wの合計量は、Nbを100質量%として、4質量%であった。
表3から、例4ではN−4工程を実施した例1および例3と比べて、Nb精製工程における再生有機溶媒中の残留Nb濃度が高いためN−1抽出残液のNb濃度が高くNbの損失が大きい。さらに、T−4工程も実施しておらずNb精製工程に供用した液調製液中のTa濃度が高いため再生有機溶媒中のTa濃度が非常に高くしかも時間とともに増大した。また、表4からNb精製液1から得られる酸化ニオブはTa2O5含有量が高く時間とともに増大した。
【0064】
なお、例1においては、200時間以降についても測定を行ったが、上記各数値はほとんど変化は無かった。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
タンタル精製工程においては、表1から本発明の有機溶媒の製造方法を実施している場合のT−3に供用した純水とT−4に供用した4mol/Lフッ化アンモニウム水溶液の合計流量は、本発明を実施していない場合のT−3に供用した純水の流量の約半分であるにもかかわらず、有機溶媒中の残留するTa濃度は低く、T−1抽出残液中のTa濃度も低かった。
また、ニオブ精製工程においても、表3から本発明の有機溶媒の製造方法を実施している場合のN−3に供用した純水とN−4に供用した2mol/Lフッ化アンモニウム水溶液の合計流量は、本発明を実施していない場合のT−3に供用した純水の流量の約半分であるにもかかわらず、有機溶媒中に残留するTaおよびNb濃度は低く、N−1抽出残液中のNb濃度も低かった。
いずれの場合も、本発明の有機溶媒の再生方法を適用することによりきわめて効率的に有機溶媒の再生ができ、再生有機溶媒を再利用したとき水溶液が不純物で汚染されるあるいはニオブの損失となる等の悪影響を及ぼさなかった。
【0070】
表2、4および5の結果から分かるように、T−4およびN−4工程を行わない例4(比較例)を除いて、少なくともT−4およびN−4工程のいずれか一方を行うことにより、比較的良好な品位の酸化タンタル/ニオブが得られた。特に、T−4およびN−4工程の両方を行った例1においては、極めて高品位の酸化タンタルおよび酸化ニオブが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】例1〜4で使用したタンタル/ニオブ溶媒抽出系の工程図である。
Claims (10)
- 有機溶媒を再生して少なくともその一部を再利用する溶媒抽出法を用いるタンタルおよび/またはニオブの分離精製における有機溶媒の再生方法であって、
タンタルまたはニオブの一方を含有し不純物を少量しか含有しないように精製された有機溶媒を水または水溶液と接触させる工程(再生工程)を複数回実施して、タンタルまたはニオブの一方および不純物が低減された再生有機溶媒を得るとともに、少なくとも初回の再生工程(第一の再生工程)においてタンタルまたはニオブの一方の精製液を得ることを含んでなる、有機溶媒の再生方法。 - 前記複数回が2回である、請求項1に記載の有機溶媒の再生方法。
- 前記タンタルまたはニオブの一方がタンタルである場合および前記タンタルまたはニオブの一方がニオブである場合の両方を含んでなる、請求項1または2に記載の有機溶媒の再生方法。
- 複数回の再生工程のうち第2回(第二の再生工程)以降に用いる水または水溶液が、有機溶媒からタンタルまたはニオブを抽出(逆抽出)する能力が第一の再生工程に用いるものの能力より大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機溶媒の再生方法。
- 前記水または水溶液として、第一の再生工程に用いるものが水であり、第二の再生工程以降に用いるものがアンモニア性窒素含有水溶液であるか、あるいは、第一の再生工程に用いるものがアンモニア性窒素含有水溶液であり、かつ、第二の再生工程以降に用いるものが第一再生工程に用いるものより高濃度のアンモニア性窒素含有水溶液である、請求項4に記載の有機溶媒の再生方法。
- 前記タンタルまたはニオブの一方がニオブであり、再生有機溶媒中に残留するタンタルが1g/L以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機溶媒の再生方法。
- 前記タンタルまたはニオブの一方がニオブであり、再生有機溶媒中に残留するニオブが5g/L以下であるか、
あるいは、前記タンタルまたはニオブの一方がタンタルであり、再生有機溶媒中に残留するタンタルが5g/Lである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機溶媒の再生方法。 - 有機溶媒が4−メチル−2−ペンタノン(MIBK)またはトリブチルホスフェート(TBP)である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機溶媒の再生方法。
- タンタル精製液および/またはニオブ精製液の製造方法であって、
タンタルおよび/またはニオブならびに不純物を含有する水系原料液を用意し、
溶媒抽出法によるタンタルおよび/またはニオブの分離精製を行う際に請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機溶媒の再生方法を行うことを含んでなる、タンタル精製液および/またはニオブ精製液の製造方法。 - 酸化タンタルおよび/または酸化ニオブの製造方法であって、
請求項9に記載のタンタル精製液および/またはニオブ精製液の製造方法により製造されたタンタル精製液および/またはニオブ精製液とアンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種の沈澱剤とを混合して、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを沈殿させ、
固液分離により水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを得て、
水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを、所望により乾燥した後、焼成して酸化タンタルおよび/または酸化ニオブを得ることを含んでなる、酸化タンタルおよび/または酸化ニオブの製造方法。
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CN101565207B (zh) * | 2009-06-01 | 2010-12-01 | 肇庆多罗山蓝宝石稀有金属有限公司 | 低氟高纯五氧化二钽的制取方法 |
-
2002
- 2002-10-25 JP JP2002311724A patent/JP2004143009A/ja not_active Withdrawn
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