JP2004138192A - ロックアップクラッチの制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】不感帯による応答性の悪化を抑えるとともに係合ショックができるだけ生じないようなロックアップクラッチの制御方法を提供すること。
【解決手段】供給される流体圧のプリチャージによりピストン29の不感帯を消尽させ、プリチャージの後に更なる流体圧の供給によりピストン29の押付力を増大させてトルクコンバータ20内のポンプ羽根車21とタービン羽根車22とのスリップ回転数Nsを制御するロックアップクラッチの制御方法であって、自動変速機30の変速段がニュートラル状態で、且つ車速SPDが実質的にゼロのときに、プリチャージを行う時間TSETおよびロックアップ初期圧Paを設定するようにした。
【選択図】 図4
【解決手段】供給される流体圧のプリチャージによりピストン29の不感帯を消尽させ、プリチャージの後に更なる流体圧の供給によりピストン29の押付力を増大させてトルクコンバータ20内のポンプ羽根車21とタービン羽根車22とのスリップ回転数Nsを制御するロックアップクラッチの制御方法であって、自動変速機30の変速段がニュートラル状態で、且つ車速SPDが実質的にゼロのときに、プリチャージを行う時間TSETおよびロックアップ初期圧Paを設定するようにした。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンと自動変速機との間のトルクコンバータ内に配設され、ポンプ羽根車とタービン羽根車とのスリップ回転数を制御するロックアアップクラッチの制御方法に関するものであり、特に、プリチャージを行う時間及びロックアップ初期圧の大きさの設定に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に知られているトルクコンバータに設けられるロックアップクラッチでは、供給される流体圧を制御してピストンの押圧力を制御することでポンプ羽根車とタービン羽根車とのロックアップ制御或いはスリップ制御を行っている。ここで、ピストンの不感帯(ロスストローク)により、流体圧が供給されてから実際にロックアップクラッチの摩擦プレートが作動してポンプ羽根車とタービン羽根車とが係合し始めるまでには時間のずれが発生する。この時間のずれが長くなるとロックアップ制御或いはスリップ制御に至るまでの応答性が悪化してしまい、好ましくない。そこで、このような不感帯の影響を抑えるため、通常はプリチャージ中における流体圧の供給速度を増大させてピストンを素早く作動させている。しかしながら、ロックアップクラッチの摩耗や経時変化等によりピストンの不感帯の大きさが変化するので、設定されていたプリチャージの時間が適合しなくなって、ロックアップクラッチの係合時にショックが生じてしまう場合があり、これもまた好ましくない。
【0003】
このような問題を鑑みて、ロックアップクラッチの係合ショックを生じない範囲内でピストンのロスストローク時間を最大限短くするために、自動変速機の出力軸トルクを検出するトルクセンサをトルクコンバータ及びロックアップクラッチを並列配置した系に設置し、このトルクセンサの出力信号を用いて、プリチャージによるピストンの作動結果が所定の要求に一致するようにプリチャージの初期圧波形と後期圧波形の波形バランスを修正する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−296337号(第4−5頁、第1、3及び4図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の技術では、自動変速機の出力軸トルクを用いてプリチャージの波形バランスを修正しているので、波形バランスの修正時において、一度はロックアップクラッチが急激に係合される状況が発生してしまう。そして、このときにロックアップクラッチの係合ショックが生じてしまうことが考えられる。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくロックアップクラッチの不感帯による応答性の悪化を抑えるとともにロックアップクラッチの係合ショックができるだけ生じないようなロックアップクラッチの制御方法を提供することを技術的課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1は、供給されるロックアップ圧のプリチャージによりピストンの不感帯を消尽させるとともに前記プリチャージの後に前記ロックアップ圧をロックアップ初期圧から増大することにより、前記ロックアップ圧によるピストンの押付力を変化させてトルクコンバータ内のポンプ羽根車とタービン羽根車とのスリップ回転数を制御するロックアップクラッチの制御方法であって、前記プリチャージを行う時間および前記ロックアップ初期圧の大きさは、車両が停車状態であり且つ自動変速機の変速段がニュートラル状態のときに設定されるようにした。
【0008】
ここで、本発明におけるスリップ回転数とは、ポンプ羽根車の回転数とタービン羽根車の回転数との差で示される回転数のことである。また、ロックアップクラッチは、車両の運転状態に応じて非ロックアップ領域(非係合となる領域)、ロックアップオン領域(完全係合する領域)及びスリップ領域(ポンプ羽根車とタービン羽根車とが相対回転しながら係合する領域)の3つの領域に応じてスリップ回転数がそれぞれ設定される。ロックアップオン領域にあるときのスリップ回転数は略0 (ポンプ羽根車とタービン羽根車の回転速度が略同一、例えば、スリップ回転数が0〜5rpm)に設定される。ロックアップクラッチがスリップ領域にあるときのスリップ回転数は車両の燃費を向上させながらエンジンの振動を吸収する程度のスリップ回転数(例えば50rpm)に設定される。
【0009】
請求項1によると、プリチャージ時間の設定及びロックアップ初期圧の設定は車両の停止状態であり且つ自動変速機の変速段がニュートラル状態のときに行われるので、プリチャージ時間及びロックアップ初期圧の設定時にロックアップクラッチが急激に係合するような場合があったとしても、自動変速機の出力軸には係合ショックが伝達されず、車両にも係合ショックによる影響が伝達されない。
【0010】
請求項2から請求項5の発明は、請求項1のプリチャージ時間の設定を説明したものであり、請求項6から請求項8の発明は、請求項1のロックアップ初期圧の設定を説明したものである。
【0011】
請求項2は、請求項1において、前記プリチャージを開始してから前記スリップ回転数が減少し始めるまでの所要時間に基づいて、プリチャージを行う時間を設定するようにしたことである。
【0012】
請求項2によると、検出信号としてはポンプ羽根車とタービン羽根車の回転数のみであるので、ロックアップクラッチの制御に要する検出信号、検出のためのセンサが最小限に抑えられ、好適である。
【0013】
請求項3は、請求項2における所要時間を具体的に説明したものであり、前記プリチャージを開始してから、前記スリップ回転数と前記スリップ回転数に対して所定の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られるフィルタ後スリップ回転数との差が、第1所定時間内で第1所定量以上となったときの時間を、前記プリチャージを開始してから前記スリップ回転数が減少し始めるまでの所要時間とするようにしたことである。
【0014】
請求項4についても請求項3と同様に、請求項2における所要時間を具体的に説明したものであり、前記プリチャージを開始してから、前記スリップ回転数に対して第1の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第1フィルタ後スリップ回転数と前記スリップ回転数に対して第2の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第2フィルタ後スリップ回転数との差が、所定時間内で所定量以上となったときの時間を、前記プリチャージを開始してから前記スリップ回転数が減少し始めるまでの所要時間とするようにしたことである。
【0015】
ここで、ポンプ羽根車の回転数が変動しているような状況(エンジン自体の変動が発生したり、運転者によるアクセル操作による変動が発生したりする状況)では、ピストンの不感帯が消尽されない状態であってもスリップ回転数が変動してしまうため、プリチャージを行う時間を正確に設定できないことが考えられる。そこで、請求項3或いは請求項4の如くフィルタ後スリップ回転数を用いて所要時間を設定することで、スリップ回転数が変動するような状況であっても、プリチャージを開始してからスリップ回転数が減少し始めるまでの所要時間を正確に設定することができる。
【0016】
請求項5は、請求項2から請求項4において、前記所要時間から所定の微少時間を差し引いた時間を、プリチャージを行う時間として設定するようにしたことである。
【0017】
請求項5によると、ロックアップクラッチが係合し始めた時点を示す所要時間から所定の微少時間を差し引くことで、プリチャージによるロックアップクラッチの係合ショックを回避できる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5において、ロックアップ圧が供給されていない状態から徐々にロックアップ圧を増大させていき、前記スリップ回転数が減少し始めたときのロックアップ圧に基づいて、前記ロックアップ初期圧を設定するようにしたことである。
【0019】
請求項6によると、検出信号としてはポンプ羽根車とタービン羽根車の回転数のみであるので、ロックアップクラッチの制御に要する検出信号、検出のためのセンサが最小限に抑えられ、好適である。
【0020】
請求項7の発明は、請求項6において、ロックアップ圧が供給されていない状態から徐々にロックアップ圧を増大させていき、前記スリップ回転数に対して第3の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第3フィルタ後スリップ回転数が、第2所定時間内で第2所定量以上減少したときのロックアップ圧に基づいて、前記ロックアップ初期圧を設定するようにしたことである。
【0021】
ここで、ポンプ羽根車の回転数が変動しているような状況では、ロックアップクラッチが係合するよりも前の状態であってもスリップ回転数が変動してしまうため、ロックアップ初期圧を正確に設定できないことが考えられる。そこで、請求項7の如く第3フィルタ後スリップ回転数の変化に基づいてロックアップ初期圧を設定することで、スリップ回転数が変動するような状況であっても、ロックアップ初期圧を正確に設定することができる。
【0022】
請求項8の発明は、請求項7において、前記スリップ回転数に対して第3の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第3フィルタ後スリップ回転数が前記第2所定時間内で前記第2所定量以上減少したときのロックアップ圧を、前記ロックアップ初期圧として設定するようにしたことである。
【0023】
請求項8によると、スリップ回転数の変動の影響を受けることなくロックアップ初期圧を設定できるとともに、比較的簡単にロックアップ初期圧が設定されるので、好適である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は第1の実施形態におけるロックアップクラッチの制御方法を実行する自動変速機を車両に搭載したときの概略図である。この車両は、エンジン10と、ロックアップクラッチ付トルクコンバータ20と、複数組の遊星歯車ユニットなどから構成された自動変速機30と、自動変速機30に供給する油圧を制御する油圧制御回路40と、油圧制御回路40に制御指示信号を与える電気制御装置50とを備え、アクセルペダル11の踏込みによって増減されるエンジン10の動力をトルクコンバータ20、自動変速機30、及び図示しないディファレンシャルを介して駆動輪へ伝達するように構成されている。
【0025】
トルクコンバータ20は、図2に示したように、流体式動力伝達機構20Aと、流体式動力伝達機構20Aと並列に連結されたロックアップクラッチ20Bとから成る。流体式動力伝達機構20Aは、エンジン10のクランク軸12に対しトルクコンバータ20のフロントカバー等を含む連結部材13を介して連結されたポンプ羽根車21と、自動変速機30の入力軸31に固定されるとともにポンプ羽根車21からの油を受けて回転するタービン羽根車22と、一方向クラッチ23を介してハウジング24に固定されるステータ羽根車25とから構成されている。トルクコンバータ20側からみると、連結部材13はエンジン10の出力軸(即ちエンジンのクランク軸12)と一体的に回転するように連結されたポンプ羽根車21を、自動変速機30の入力軸31は車両の駆動輪と一体的に回転するように連結されたタービン羽根車22をそれぞれ構成している。
【0026】
ロックアップクラッチ20Bは、図2に示したように、軸方向に移動可能に保持され両面に摩擦材が設けられたリング状の摩擦プレート26と、摩擦プレート26の径方向内側に固定されたリング状のドライブプレート27と、摩擦プレート26に対向するように連結部材13と一体的に構成されたクラッチ対向部13aと、自動変速機30の入力軸31と一体的に回転するように入力軸31に固定された第1ドリブンプレート28aと、リベットRにより第1ドリブンプレート28aに固定されたリング状の第2ドリブンプレート28bと、軸方向に移動可能であって摩擦プレート26をクラッチ対向部13aに押圧するためのピストン29と、ドライブプレート27と両ドリブンプレート28a、28bとの間のトルク変動を緩衝する複数のコイルスプリングSとから構成される。
【0027】
コイルスプリングSは、振動を吸収するダンパ機構を構成するものであって、第1、第2ドリブンプレート28a、28bの適宜箇所に円周方向に沿って形成された長孔内に保持され、ドライブプレート27(摩擦プレート26)と第1ドリブンプレート28a(第2ドリブンプレート28b)との間に捩じれ角が発生したとき、ドライブプレート27と第1ドリブンプレート28aの間に弾発力が付与される。
【0028】
ピストン29は、同ピストン29と連結部材13とにより画定される係合側油室R1内の油圧(ロックアップ圧)が摩擦プレート26とクラッチ対向部13aと第1ドリブンプレート28a等とにより画定される解放側油室R2内の油圧(トルコン圧)よりも高められたとき、摩擦プレート26をクラッチ対向部13aに向けて押圧し、摩擦プレート26をクラッチ対向部13aに係合させるようになっている。これに対し、ピストン29は、係合側油室R1よりも解放側油室R2内の油圧が高められたとき、摩擦プレート26をクラッチ対向部13aから離間させ、摩擦プレート26とクラッチ対向部13aとを非係合とするようになっている。
【0029】
自動変速機30は、入力軸31と、車両の駆動輪とディファレンシャル等を介して駆動輪に連結された出力軸32とを備え、複数の油圧式摩擦係合装置の係合・非係合の組合せに応じて複数の前進ギア段及び後進ギア段の1つを選択的に成立させ、選択されたギア段を介して入力軸31と出力軸32とを回転させる周知の有段式遊星歯車装置として構成されている。
【0030】
油圧制御回路40は、電気制御装置50からの信号により駆動されるリニアソレノイド駆動型の複数の第1電磁弁群41と、電気制御装置50からの信号によりON−OFF駆動される複数の第2電磁弁群42とを備えており、これら電磁弁の作動の組合せにより遊星歯車装置の油圧式摩擦係合装置を選択的に作動させるように構成されている。
【0031】
また、油圧制御回路40は、摩擦プレート26の係合及び解放(非係合)を制御するために前述の係合側油室R1に供給されるロックアップ圧Pon及び解放側油室R2に供給されるトルコン圧Poffを調整するための第3電磁弁43を備えている。第3電磁弁43は、電気制御回路50からの信号により電流値が制御されるリニアソレノイド駆動型の電磁弁であり、切替弁(図示省略)に信号圧を与えることにより調圧弁(図示省略)によって調圧されたライン圧を制御し、この制御された油圧を係合側油室R1に供給するようになっている。更に、油圧制御回路40は、第3電磁弁43が制御されているとき解放側油室R2に一定油圧を供給し、第3電磁弁43が制御されていないときには解放側油室R2にドレン圧を供給するようになっている。なお、ロックアップ圧Ponがトルコン圧Pofより高圧の場合において、ロックアップ圧Ponからトルコン圧Poffを差し引いた差圧Pon−Poffが摩擦プレート26の係合圧となる。ただし、ロックアップ圧Ponがトルコン圧Poffよりも低圧になった場合には、係合圧は0となる。
【0032】
電子制御装置50は、CPU51、ROM52、RAM53及びインターフェース54、55等から成るマイクロコンピュータであって、アクセルペダル11の開度を検出するアクセル開度センサ61、エンジン10の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ62、自動変速機30の入力軸31の回転速度を検出する入力軸回転速度センサ63、及び自動変速機30の出力軸32の回転速度を検出する出力軸回転速度センサ64と接続されていて、これらのセンサからアクセル開度Apを表す信号、エンジン回転速度Ne(ポンプ羽根車21の回転速度に相当)を表す信号、入力軸回転速度Ni(タービン羽根車22の回転速度に相当)を表す信号、及び出力軸回転速度Noを表す信号がそれぞれ供給されるようになっている。
【0033】
電子制御装置50のCPU51は、RAM53の記憶機能を利用しつつROM52に記憶されたプログラムに従って各種入力信号を処理し、自動変速機30の変速制御、摩擦プレート26の係合制御、プリチャージ時間の設定の制御と、プリチャージ終了時のロックアップ圧であるロックアップ初期圧の設定の制御とを実行するものであり、インターフェース55を介して各電磁弁群41、42及び第3電磁弁43を駆動制御する。つまり、本発明の主旨であるプリチャージを行う時間の設定及びロックアップ初期圧の設定に係る制御は、電子制御装置50にて実行される。
【0034】
自動変速機30の変速制御について説明する。CPU51は予めROM52に記憶された複数の変速線図(図示せず)から実際の変速段に対応した変速線図を選択し、この選択した変速線図を用いて、出力軸回転速度Noから演算された車速SPDとアクセル開度Apとに基づいて変速段を決定する。そして、この変速段が得られるように第1及び第2電磁弁群41、42を駆動して、自動変速機30の変速制御が行なわれる。
【0035】
ロックアップクラッチ20Bの制御について説明する。CPU51は、アクセル開度Apと車速SPDから車両の運転状態が図3のロックアップオン領域にあるか否かを判定する。ロックアップオン領域は、摩擦プレート26がクラッチ対向部13aと完全係合して、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22の回転速度が等しくなる状態を成立する領域である。また、スリップ領域は、流体式動力伝達機構による動力伝達の損失をなくしながらエンジン10の低回転時における振動を吸収するために、完全係合より多少係合圧が小さい状態で摩擦プレート26をクラッチ対向部13aと係合して、タービン羽根車21がポンプ羽根車22の回転速度に対して多少のスリップ回転数(本実施の形態では50rpm)をもって回転する状態を成立する領域である。
【0036】
車両の運転状態がロックアップオン領域及びスリップ領域のいずれの領域でもない場合には、第3電磁弁43に駆動指令信号を出力して係合側油室R1内のロックアップ圧Ponをドレン圧にするとともに、解放側油室R2のトルコン圧Poffをライン圧に近い高圧に制御する。即ち、摩擦プレート26を係合するための係合圧を0とし、ロックアップクラッチ20Bを非係合状態とする。
【0037】
一方、車両の運転状態がロックアップオン領域にある場合には、エンジン回転速度Neと入力軸回転速度Niとが等しくなるように係合圧を制御する。車両の運転状態が図3のスリップ領域にある場合には、エンジン回転速度Ne と入力軸回転速度Niとの差の絶対値が50rpm未満となるように係合圧を制御する。
【0038】
これらの係合圧の制御に際して、ピストン29の不感帯の影響を抑えるため、プリチャージ中における流体圧を最高圧にしてピストン29を素早く作動させている。そして、プリチャージが終了して摩擦プレート26がクラッチ対向部13aと係合し始めると、摩擦プレート26がクラッチ対向部13aと係合し始める状態でトルコン圧Poffとロックアップ圧Ponとが釣り合うロックアップ初期圧となるようにロックアップ圧Ponを設定し、ロックアップ圧Ponをロックアップ初期圧から徐々に増大することでエンジン回転速度Neと入力軸回転速度Niとの差が所望の値となるように、第3電磁弁43に駆動指令信号を出力して係合側油室R1内のロックアップ圧Ponと解放側油室R2内のトルコン圧Poffとの差圧をフィードバック制御して、係合ショックを抑えながら徐々に係合圧を増大させていく。
【0039】
その後、上述した制御が繰り返し行なわれることにより、摩擦プレート26はロックアップ状態或いはスリップ状態となり、係合側油室R1及び解放側油室R2内のロックアップ圧Pon、トルコン圧Poffをその状態を維持することによって係合圧を保持する。
【0040】
次に、本発明の主旨であるプリチャージ時間の設定に係る制御について、図4のフローチャートおよび図5のタイムチャートを用いて説明する。図4のフローチャートは請求項4及び請求項5を具体的に説明したものである。本発明におけるプリチャージ時間とは、車両の状態が図3のロックアップオン領域或いはスリップ領域に移行してロックアップクラッチ圧Ponの最高圧の出力が開始されてから、ロックアップ圧Ponをロックアップ初期圧として上述したフィードバック制御による係合圧の制御を開始するまでの時間である。
【0041】
CPU51は図4のフローチャートにて示されたルーチンの処理を所定時間の経過毎にステップ100から開始する。そして、CPU51はステップ101にて車速がV1以下であるか否かを判断する。V1は0に近い小さな車速であり、車速がV1のときには車両が実質的に停止していると判定される程度の車速に設定されている。ステップ101で「No」と判定された場合は、車両の安全性等を考慮して、プリチャージ時間の設定を行わずに本ルーチンを一旦終了する。このとき、既にタイマがカウントされている場合にはステップ110にてタイマがリセットされて本ルーチンを一旦終了することとなる。
【0042】
ステップ101で「Yes」と判定されるとステップ102に進み、自動変速機30の変速段がニュートラル状態であるか否かを判断する。変速段がニュートラル状態でない、つまり変速段が前進段、後進段或いはパーキング状態のときには、タービン羽根車22に伝達される動力が出力軸32に伝わる状態である。この状態でロックアップクラッチ20Bを係合させると車両に係合ショックが伝達されてしまうため、ステップ102で「No」と判定されると、プリチャージ時間の設定を行わずに本ルーチンを一旦終了する。既にタイマがカウントされている場合にはステップ110にてタイマがリセットされて本ルーチンを一旦終了する。
【0043】
ステップ102で「Yes」と判断されるとステップ103に進み、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22とのスリップ回転数Nsが所定回転数N1(40rpm)以上であるか否かを判定する。ステップ103にて「No」と判定された場合には、プリチャージ時間の設定が正確に行えない可能性があるとして、プリチャージ時間の設定を行わずに本ルーチンを一旦終了する。既にタイマがカウントされている場合にはステップ110にてタイマがリセットされて本ルーチンを一旦終了する。
【0044】
ステップ103で「Yes」と判定されると、ステップ104に進んでロックアップ圧Ponの最高圧(プリチャージ圧)を係合側油室R1に供給する。このプリチャージ圧は、ピストン29が不感帯にある期間を短縮化するため、ライン圧に近い最高圧に設定される。次にステップ105にてプリチャージ圧の供給開始からの時間を計測すべくタイマのカウントをスタートする(図5の時間T0)。
【0045】
そして、ステップ106でタイマのカウントがスタートしてからのタイマ値T(図5の時間T0からの経過時間)が第1所定時間Δt1以上であるか否かを判定する。ステップ106で「Yes」と判定されると、ステップ107に進み、ピストン29の押圧力によってロックアップクラッチ20Bが係合し始めることによってスリップ回転数が減少し始めたか否かを判定する。
【0046】
ステップ107は具体的には、第1所定時間Δt1の範囲において、スリップ回転数Nsに対して第1の周波数成分fcを除去するフィルタ処理を施して得られる第1フィルタ後スリップ回転数β(図5の細線)と、スリップ回転数Nsに対して第2の周波数成分fbを除去するフィルタ処理を施して得られる第2フィルタ後スリップ回転数α(図5の太線)との差が、第1所定量ΔN1以上となったか否かを判定する。ここで、第2の周波数成分fbは第1の周波数成分fcよりも低い周波数であり、第2フィルタ後スリップ回転数αはスリップ回転数Nsの変動の影響を取り除いた平均的な値になる。この第2フィルタ後スリップ回転数αの大きさの変化を検出することで、スリップ回転数が減少したことを検出することも可能であるが、第2フィルタ後スリップ回転数αはスリップ回転数Nsに対して時間的な遅れが大きいため、第2フィルタ後スリップ回転数αの変化を検出するだけでは、正確なプリチャージ時間を設定することができない。
【0047】
そこで本実施形態では、第2フィルタ後スリップ回転数αに比べて、スリップ回転数Nsに素早く追従するような第1フィルタ後スリップ回転数βを用いて、第1フィルタ後スリップ回転数βの現時点での値βtと、現時点よりも第1所定時間Δt1だけ前の第2フィルタ後スリップ回転数αの値αt−1との差が第1所定量ΔN1以上か否かを判定することにより、スリップ回転数が減少し始めたか否かを判断するようにしている。これにより、ロックアップクラッチ20Bが係合し始めてスリップ回転数が減少し始めるタイミングを正確に検出することが可能になる。
【0048】
ステップ107で、「Yes」と判定されると、ステップ108に進んで、その時点でのタイマ値T、つまりステップ105でタイマのカウントをスタートさせてからステップ108に進むまでに要した時間(図5の時間T0からの経過時間T)をRAM53内に一旦記憶させる。なお、このタイマ値Tは請求項2の所要時間に相当するものである。そして、ステップ109で、ステップ108で記憶したタイマ値Tから所定の微少時間t(タイマ値Tに比べて非常に短い時間、例えば40〜50msec)を差し引いた時間を、プリチャージ時間TSETとしてRAM53内に記憶する。なお、ステップ107にて「No」と判定された場合には、プリチャージ時間の設定を行わずに本ルーチンを一旦終了する。
【0049】
仮に、ステップ108で記憶したタイマ値Tをそのままプリチャージ時間TSETに設定すると、プリチャージの終了時にロックアップクラッチ20Bの係合ショックが生じてしまう。そこで、ステップ109を実行することでタイマ値Tから微少時間tを差し引いて、係合ショックが生じる直前でプリチャージが終了するようにプリチャージ時間TSETを設定している。
【0050】
このようにして設定されたプリチャ−ジ時間TSETは、次回のロックアップクラッチ20Bのロックアップ制御或いはスリップ制御を行うときから採用される。なお、本実施の形態では、上述したプリチャージ時間TSETの設定に係る制御を実行するタイミングについては特に限定しておらず、所定時間の経過毎としているが、例えば、車両の工場出荷時や、エンジン10の始動直後、エンジン10の停止直後、或いは車両が一定距離を走行した時点等、どのようなタイミングで行っても良い。
【0051】
また、ステップ107における第1フィルタ後スリップ回転数βの代わりに、スリップ回転数Nsをそのまま用いてもよい。この場合は請求項3を具体的に説明したものであり、スリップ回転数の現時点での値と、現時点よりも第1所定時間Δt1だけ前の第2フィルタ後スリップ回転数αの値αt−1との差が第1所定量ΔN1以上か否かを判定することにより、スリップ回転数が減少し始めたか否かを判断することになる。
【0052】
次に、ロックアップ初期圧の設定について図6のフローチャートおよび図7のタイムチャートを用いて説明する。図6のフローチャートは請求項8を具体的に説明したものである。ロックアップ初期圧の設定は、上述したプリチャージ時間の設定の前後、或いはプリチャージ時間の設定と異なるタイミングに実行される。
【0053】
CPU51は図6のフローチャートにて示されたルーチンの処理を所定時間の経過毎にステップ200から開始され、本制御が開始する前に予め第3電磁弁43が駆動制御され、ロックアップ圧Ponをドレンするとともにトルコン圧Poffをライン圧に近い高圧としている。また、ステップ201からステップ203は、図4のフローチャートにおけるステップ101からステップ103と同じ処理を実行するステップであり、説明を省略する。
【0054】
ステップ203で「Yes」と判定されると、ステップ204に進み、ロックアップ圧Ponが0の状態から一定の時間Ts毎に段階的にロックアップ圧Ponを増大させる。ここで、一定の時間Tsにおいてロックアップ圧Ponが増大する大きさ(図7のP1)は、出力可能な最高圧に比べて非常に小さい値(最高圧の30分の1程度)となるように設定されている。そして、ステップ205にてロックアップ圧Ponの増大が開始してからの時間を計測すべくタイマのカウントをスタートする(図7の時間T0)。
【0055】
そして、ステップ206でタイマのカウントがスタートしてからのタイマ値T(図7の時間T0からの経過時間)が第2所定時間ΔT2以上であるか否かを判定する。ステップ206で「Yes」と判定されると、ステップ207に進み、ロックアップ圧Ponが供給されていない状態から徐々にロックアップ圧を増大させていくことで、スリップ回転数Nsが減少し始めたか否かを判定する。
【0056】
ステップ207は具体的には、第2所定時間Δt2の範囲において、スリップ回転数Nsに対して第3の周波数成分fdを除去するフィルタ処理を施して得られる第3フィルタ後スリップ回転数γ(図7の太線)の現時点での値γtと、現時点よりも第2所定時間だけ前の第3フィルタ後スリップ回転数γの値γt−1との差が、第2所定量ΔN2以上となったか否かを判定する。このように第3フィルタ後スリップ回転数γの時間的な変化を検出することによって、スリップ回転数が変動するような状況であっても、ロックアップ圧が徐々に増大してスリップ回転数Nsが減少し始めるタイミングを正確に設定することが可能になる。
【0057】
ステップ207で、「Yes」と判定されると、ステップ208に進んで、その時点におけるロックアップ圧Ponを、ロックアップ初期圧PaとしてRAM53内に記憶する。そして、ステップ208に進み、タイマをリセットして本ルーチンを終了する。なお、ステップ207で、「No」と判定された場合には、ロックアップ初期圧の設定を行わずに本ルーチンを一旦終了する。
【0058】
このようにして設定されたロックアップ初期圧Paがプリチャージの終了後に供給されることにより、ピストン29の不感帯が消尽してから係合圧のフィードバック制御に移行する瞬間ではロックアップ圧Ponとトルコン圧Poffとが釣り合うことになる。したがって、ロックアップクラッチ20Bの解放状態からロックアップクラッチ20Bを完全係合状態、或いはスリップ状態へと移行する際のロックアップ初期圧による係合ショックが低減される。
【0059】
以上、本発明の実施の形態によると、プリチャージ時間の設定およびロックアップ初期圧の設定を、自動変速機30の変速段がニュートラル状態のときに行うので、プリチャージ時間の設定時にロックアップクラッチ20Bが急激に係合するような場合があったとしても、自動変速機30の出力軸32には係合ショックが伝達されず、車両にも係合ショックによる影響が伝達されない。また、通常のロックアップ制御やスリップ制御時には、適切に設定されたプリチャージ時間およびロックアップ初期圧に基づいて、素早くプリチャージが行われるとともにロックアップクラッチ20Bの係合ショックも抑えられるので、運転者は係合ショックによる不快感を感じることがなく、好適である。
【0060】
【発明の効果】
本発明によると、プリチャージ時間の設定及びロックアップ初期圧の設定は車両の停止状態であり且つ自動変速機の変速段がニュートラル状態のときに行われるので、プリチャージ時間及びロックアップ初期圧の設定時にロックアップクラッチが急激に係合するような場合があったとしても、自動変速機の出力軸には係合ショックが伝達されず、車両にも係合ショックによる影響が伝達されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態におけるロックアップクラッチの制御方法を実行する自動変速機を車両に搭載したときの概略図である。
【図2】図1に示したロックアップクラッチ付トルクコンバータの断面図である。
【図3】車両の運転状態とロックアップクラッチの各領域を示す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるプリチャージ時間の設定に係る制御を示すフローチャートである。
【図5】プリチャージ時間の設定に係るタイムチャートである。
【図6】本発明の実施形態におけるロックアップ初期圧の設定に係る制御を示すフローチャートである。
【図7】ロックアップ初期圧の設定に係るタイムチャートである。
【符号の説明】
10・・・エンジン、20・・・トルクコンバータ、20A・・・流体式伝達機構、20B・・・ロックアップクラッチ、21・・・ポンプ羽根車、22・・・タービン羽根車、29・・・ピストン、30・・・自動変速機、40・・・油圧制御回路、50・・・電気制御回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンと自動変速機との間のトルクコンバータ内に配設され、ポンプ羽根車とタービン羽根車とのスリップ回転数を制御するロックアアップクラッチの制御方法に関するものであり、特に、プリチャージを行う時間及びロックアップ初期圧の大きさの設定に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に知られているトルクコンバータに設けられるロックアップクラッチでは、供給される流体圧を制御してピストンの押圧力を制御することでポンプ羽根車とタービン羽根車とのロックアップ制御或いはスリップ制御を行っている。ここで、ピストンの不感帯(ロスストローク)により、流体圧が供給されてから実際にロックアップクラッチの摩擦プレートが作動してポンプ羽根車とタービン羽根車とが係合し始めるまでには時間のずれが発生する。この時間のずれが長くなるとロックアップ制御或いはスリップ制御に至るまでの応答性が悪化してしまい、好ましくない。そこで、このような不感帯の影響を抑えるため、通常はプリチャージ中における流体圧の供給速度を増大させてピストンを素早く作動させている。しかしながら、ロックアップクラッチの摩耗や経時変化等によりピストンの不感帯の大きさが変化するので、設定されていたプリチャージの時間が適合しなくなって、ロックアップクラッチの係合時にショックが生じてしまう場合があり、これもまた好ましくない。
【0003】
このような問題を鑑みて、ロックアップクラッチの係合ショックを生じない範囲内でピストンのロスストローク時間を最大限短くするために、自動変速機の出力軸トルクを検出するトルクセンサをトルクコンバータ及びロックアップクラッチを並列配置した系に設置し、このトルクセンサの出力信号を用いて、プリチャージによるピストンの作動結果が所定の要求に一致するようにプリチャージの初期圧波形と後期圧波形の波形バランスを修正する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−296337号(第4−5頁、第1、3及び4図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の技術では、自動変速機の出力軸トルクを用いてプリチャージの波形バランスを修正しているので、波形バランスの修正時において、一度はロックアップクラッチが急激に係合される状況が発生してしまう。そして、このときにロックアップクラッチの係合ショックが生じてしまうことが考えられる。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくロックアップクラッチの不感帯による応答性の悪化を抑えるとともにロックアップクラッチの係合ショックができるだけ生じないようなロックアップクラッチの制御方法を提供することを技術的課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1は、供給されるロックアップ圧のプリチャージによりピストンの不感帯を消尽させるとともに前記プリチャージの後に前記ロックアップ圧をロックアップ初期圧から増大することにより、前記ロックアップ圧によるピストンの押付力を変化させてトルクコンバータ内のポンプ羽根車とタービン羽根車とのスリップ回転数を制御するロックアップクラッチの制御方法であって、前記プリチャージを行う時間および前記ロックアップ初期圧の大きさは、車両が停車状態であり且つ自動変速機の変速段がニュートラル状態のときに設定されるようにした。
【0008】
ここで、本発明におけるスリップ回転数とは、ポンプ羽根車の回転数とタービン羽根車の回転数との差で示される回転数のことである。また、ロックアップクラッチは、車両の運転状態に応じて非ロックアップ領域(非係合となる領域)、ロックアップオン領域(完全係合する領域)及びスリップ領域(ポンプ羽根車とタービン羽根車とが相対回転しながら係合する領域)の3つの領域に応じてスリップ回転数がそれぞれ設定される。ロックアップオン領域にあるときのスリップ回転数は略0 (ポンプ羽根車とタービン羽根車の回転速度が略同一、例えば、スリップ回転数が0〜5rpm)に設定される。ロックアップクラッチがスリップ領域にあるときのスリップ回転数は車両の燃費を向上させながらエンジンの振動を吸収する程度のスリップ回転数(例えば50rpm)に設定される。
【0009】
請求項1によると、プリチャージ時間の設定及びロックアップ初期圧の設定は車両の停止状態であり且つ自動変速機の変速段がニュートラル状態のときに行われるので、プリチャージ時間及びロックアップ初期圧の設定時にロックアップクラッチが急激に係合するような場合があったとしても、自動変速機の出力軸には係合ショックが伝達されず、車両にも係合ショックによる影響が伝達されない。
【0010】
請求項2から請求項5の発明は、請求項1のプリチャージ時間の設定を説明したものであり、請求項6から請求項8の発明は、請求項1のロックアップ初期圧の設定を説明したものである。
【0011】
請求項2は、請求項1において、前記プリチャージを開始してから前記スリップ回転数が減少し始めるまでの所要時間に基づいて、プリチャージを行う時間を設定するようにしたことである。
【0012】
請求項2によると、検出信号としてはポンプ羽根車とタービン羽根車の回転数のみであるので、ロックアップクラッチの制御に要する検出信号、検出のためのセンサが最小限に抑えられ、好適である。
【0013】
請求項3は、請求項2における所要時間を具体的に説明したものであり、前記プリチャージを開始してから、前記スリップ回転数と前記スリップ回転数に対して所定の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られるフィルタ後スリップ回転数との差が、第1所定時間内で第1所定量以上となったときの時間を、前記プリチャージを開始してから前記スリップ回転数が減少し始めるまでの所要時間とするようにしたことである。
【0014】
請求項4についても請求項3と同様に、請求項2における所要時間を具体的に説明したものであり、前記プリチャージを開始してから、前記スリップ回転数に対して第1の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第1フィルタ後スリップ回転数と前記スリップ回転数に対して第2の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第2フィルタ後スリップ回転数との差が、所定時間内で所定量以上となったときの時間を、前記プリチャージを開始してから前記スリップ回転数が減少し始めるまでの所要時間とするようにしたことである。
【0015】
ここで、ポンプ羽根車の回転数が変動しているような状況(エンジン自体の変動が発生したり、運転者によるアクセル操作による変動が発生したりする状況)では、ピストンの不感帯が消尽されない状態であってもスリップ回転数が変動してしまうため、プリチャージを行う時間を正確に設定できないことが考えられる。そこで、請求項3或いは請求項4の如くフィルタ後スリップ回転数を用いて所要時間を設定することで、スリップ回転数が変動するような状況であっても、プリチャージを開始してからスリップ回転数が減少し始めるまでの所要時間を正確に設定することができる。
【0016】
請求項5は、請求項2から請求項4において、前記所要時間から所定の微少時間を差し引いた時間を、プリチャージを行う時間として設定するようにしたことである。
【0017】
請求項5によると、ロックアップクラッチが係合し始めた時点を示す所要時間から所定の微少時間を差し引くことで、プリチャージによるロックアップクラッチの係合ショックを回避できる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5において、ロックアップ圧が供給されていない状態から徐々にロックアップ圧を増大させていき、前記スリップ回転数が減少し始めたときのロックアップ圧に基づいて、前記ロックアップ初期圧を設定するようにしたことである。
【0019】
請求項6によると、検出信号としてはポンプ羽根車とタービン羽根車の回転数のみであるので、ロックアップクラッチの制御に要する検出信号、検出のためのセンサが最小限に抑えられ、好適である。
【0020】
請求項7の発明は、請求項6において、ロックアップ圧が供給されていない状態から徐々にロックアップ圧を増大させていき、前記スリップ回転数に対して第3の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第3フィルタ後スリップ回転数が、第2所定時間内で第2所定量以上減少したときのロックアップ圧に基づいて、前記ロックアップ初期圧を設定するようにしたことである。
【0021】
ここで、ポンプ羽根車の回転数が変動しているような状況では、ロックアップクラッチが係合するよりも前の状態であってもスリップ回転数が変動してしまうため、ロックアップ初期圧を正確に設定できないことが考えられる。そこで、請求項7の如く第3フィルタ後スリップ回転数の変化に基づいてロックアップ初期圧を設定することで、スリップ回転数が変動するような状況であっても、ロックアップ初期圧を正確に設定することができる。
【0022】
請求項8の発明は、請求項7において、前記スリップ回転数に対して第3の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第3フィルタ後スリップ回転数が前記第2所定時間内で前記第2所定量以上減少したときのロックアップ圧を、前記ロックアップ初期圧として設定するようにしたことである。
【0023】
請求項8によると、スリップ回転数の変動の影響を受けることなくロックアップ初期圧を設定できるとともに、比較的簡単にロックアップ初期圧が設定されるので、好適である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は第1の実施形態におけるロックアップクラッチの制御方法を実行する自動変速機を車両に搭載したときの概略図である。この車両は、エンジン10と、ロックアップクラッチ付トルクコンバータ20と、複数組の遊星歯車ユニットなどから構成された自動変速機30と、自動変速機30に供給する油圧を制御する油圧制御回路40と、油圧制御回路40に制御指示信号を与える電気制御装置50とを備え、アクセルペダル11の踏込みによって増減されるエンジン10の動力をトルクコンバータ20、自動変速機30、及び図示しないディファレンシャルを介して駆動輪へ伝達するように構成されている。
【0025】
トルクコンバータ20は、図2に示したように、流体式動力伝達機構20Aと、流体式動力伝達機構20Aと並列に連結されたロックアップクラッチ20Bとから成る。流体式動力伝達機構20Aは、エンジン10のクランク軸12に対しトルクコンバータ20のフロントカバー等を含む連結部材13を介して連結されたポンプ羽根車21と、自動変速機30の入力軸31に固定されるとともにポンプ羽根車21からの油を受けて回転するタービン羽根車22と、一方向クラッチ23を介してハウジング24に固定されるステータ羽根車25とから構成されている。トルクコンバータ20側からみると、連結部材13はエンジン10の出力軸(即ちエンジンのクランク軸12)と一体的に回転するように連結されたポンプ羽根車21を、自動変速機30の入力軸31は車両の駆動輪と一体的に回転するように連結されたタービン羽根車22をそれぞれ構成している。
【0026】
ロックアップクラッチ20Bは、図2に示したように、軸方向に移動可能に保持され両面に摩擦材が設けられたリング状の摩擦プレート26と、摩擦プレート26の径方向内側に固定されたリング状のドライブプレート27と、摩擦プレート26に対向するように連結部材13と一体的に構成されたクラッチ対向部13aと、自動変速機30の入力軸31と一体的に回転するように入力軸31に固定された第1ドリブンプレート28aと、リベットRにより第1ドリブンプレート28aに固定されたリング状の第2ドリブンプレート28bと、軸方向に移動可能であって摩擦プレート26をクラッチ対向部13aに押圧するためのピストン29と、ドライブプレート27と両ドリブンプレート28a、28bとの間のトルク変動を緩衝する複数のコイルスプリングSとから構成される。
【0027】
コイルスプリングSは、振動を吸収するダンパ機構を構成するものであって、第1、第2ドリブンプレート28a、28bの適宜箇所に円周方向に沿って形成された長孔内に保持され、ドライブプレート27(摩擦プレート26)と第1ドリブンプレート28a(第2ドリブンプレート28b)との間に捩じれ角が発生したとき、ドライブプレート27と第1ドリブンプレート28aの間に弾発力が付与される。
【0028】
ピストン29は、同ピストン29と連結部材13とにより画定される係合側油室R1内の油圧(ロックアップ圧)が摩擦プレート26とクラッチ対向部13aと第1ドリブンプレート28a等とにより画定される解放側油室R2内の油圧(トルコン圧)よりも高められたとき、摩擦プレート26をクラッチ対向部13aに向けて押圧し、摩擦プレート26をクラッチ対向部13aに係合させるようになっている。これに対し、ピストン29は、係合側油室R1よりも解放側油室R2内の油圧が高められたとき、摩擦プレート26をクラッチ対向部13aから離間させ、摩擦プレート26とクラッチ対向部13aとを非係合とするようになっている。
【0029】
自動変速機30は、入力軸31と、車両の駆動輪とディファレンシャル等を介して駆動輪に連結された出力軸32とを備え、複数の油圧式摩擦係合装置の係合・非係合の組合せに応じて複数の前進ギア段及び後進ギア段の1つを選択的に成立させ、選択されたギア段を介して入力軸31と出力軸32とを回転させる周知の有段式遊星歯車装置として構成されている。
【0030】
油圧制御回路40は、電気制御装置50からの信号により駆動されるリニアソレノイド駆動型の複数の第1電磁弁群41と、電気制御装置50からの信号によりON−OFF駆動される複数の第2電磁弁群42とを備えており、これら電磁弁の作動の組合せにより遊星歯車装置の油圧式摩擦係合装置を選択的に作動させるように構成されている。
【0031】
また、油圧制御回路40は、摩擦プレート26の係合及び解放(非係合)を制御するために前述の係合側油室R1に供給されるロックアップ圧Pon及び解放側油室R2に供給されるトルコン圧Poffを調整するための第3電磁弁43を備えている。第3電磁弁43は、電気制御回路50からの信号により電流値が制御されるリニアソレノイド駆動型の電磁弁であり、切替弁(図示省略)に信号圧を与えることにより調圧弁(図示省略)によって調圧されたライン圧を制御し、この制御された油圧を係合側油室R1に供給するようになっている。更に、油圧制御回路40は、第3電磁弁43が制御されているとき解放側油室R2に一定油圧を供給し、第3電磁弁43が制御されていないときには解放側油室R2にドレン圧を供給するようになっている。なお、ロックアップ圧Ponがトルコン圧Pofより高圧の場合において、ロックアップ圧Ponからトルコン圧Poffを差し引いた差圧Pon−Poffが摩擦プレート26の係合圧となる。ただし、ロックアップ圧Ponがトルコン圧Poffよりも低圧になった場合には、係合圧は0となる。
【0032】
電子制御装置50は、CPU51、ROM52、RAM53及びインターフェース54、55等から成るマイクロコンピュータであって、アクセルペダル11の開度を検出するアクセル開度センサ61、エンジン10の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ62、自動変速機30の入力軸31の回転速度を検出する入力軸回転速度センサ63、及び自動変速機30の出力軸32の回転速度を検出する出力軸回転速度センサ64と接続されていて、これらのセンサからアクセル開度Apを表す信号、エンジン回転速度Ne(ポンプ羽根車21の回転速度に相当)を表す信号、入力軸回転速度Ni(タービン羽根車22の回転速度に相当)を表す信号、及び出力軸回転速度Noを表す信号がそれぞれ供給されるようになっている。
【0033】
電子制御装置50のCPU51は、RAM53の記憶機能を利用しつつROM52に記憶されたプログラムに従って各種入力信号を処理し、自動変速機30の変速制御、摩擦プレート26の係合制御、プリチャージ時間の設定の制御と、プリチャージ終了時のロックアップ圧であるロックアップ初期圧の設定の制御とを実行するものであり、インターフェース55を介して各電磁弁群41、42及び第3電磁弁43を駆動制御する。つまり、本発明の主旨であるプリチャージを行う時間の設定及びロックアップ初期圧の設定に係る制御は、電子制御装置50にて実行される。
【0034】
自動変速機30の変速制御について説明する。CPU51は予めROM52に記憶された複数の変速線図(図示せず)から実際の変速段に対応した変速線図を選択し、この選択した変速線図を用いて、出力軸回転速度Noから演算された車速SPDとアクセル開度Apとに基づいて変速段を決定する。そして、この変速段が得られるように第1及び第2電磁弁群41、42を駆動して、自動変速機30の変速制御が行なわれる。
【0035】
ロックアップクラッチ20Bの制御について説明する。CPU51は、アクセル開度Apと車速SPDから車両の運転状態が図3のロックアップオン領域にあるか否かを判定する。ロックアップオン領域は、摩擦プレート26がクラッチ対向部13aと完全係合して、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22の回転速度が等しくなる状態を成立する領域である。また、スリップ領域は、流体式動力伝達機構による動力伝達の損失をなくしながらエンジン10の低回転時における振動を吸収するために、完全係合より多少係合圧が小さい状態で摩擦プレート26をクラッチ対向部13aと係合して、タービン羽根車21がポンプ羽根車22の回転速度に対して多少のスリップ回転数(本実施の形態では50rpm)をもって回転する状態を成立する領域である。
【0036】
車両の運転状態がロックアップオン領域及びスリップ領域のいずれの領域でもない場合には、第3電磁弁43に駆動指令信号を出力して係合側油室R1内のロックアップ圧Ponをドレン圧にするとともに、解放側油室R2のトルコン圧Poffをライン圧に近い高圧に制御する。即ち、摩擦プレート26を係合するための係合圧を0とし、ロックアップクラッチ20Bを非係合状態とする。
【0037】
一方、車両の運転状態がロックアップオン領域にある場合には、エンジン回転速度Neと入力軸回転速度Niとが等しくなるように係合圧を制御する。車両の運転状態が図3のスリップ領域にある場合には、エンジン回転速度Ne と入力軸回転速度Niとの差の絶対値が50rpm未満となるように係合圧を制御する。
【0038】
これらの係合圧の制御に際して、ピストン29の不感帯の影響を抑えるため、プリチャージ中における流体圧を最高圧にしてピストン29を素早く作動させている。そして、プリチャージが終了して摩擦プレート26がクラッチ対向部13aと係合し始めると、摩擦プレート26がクラッチ対向部13aと係合し始める状態でトルコン圧Poffとロックアップ圧Ponとが釣り合うロックアップ初期圧となるようにロックアップ圧Ponを設定し、ロックアップ圧Ponをロックアップ初期圧から徐々に増大することでエンジン回転速度Neと入力軸回転速度Niとの差が所望の値となるように、第3電磁弁43に駆動指令信号を出力して係合側油室R1内のロックアップ圧Ponと解放側油室R2内のトルコン圧Poffとの差圧をフィードバック制御して、係合ショックを抑えながら徐々に係合圧を増大させていく。
【0039】
その後、上述した制御が繰り返し行なわれることにより、摩擦プレート26はロックアップ状態或いはスリップ状態となり、係合側油室R1及び解放側油室R2内のロックアップ圧Pon、トルコン圧Poffをその状態を維持することによって係合圧を保持する。
【0040】
次に、本発明の主旨であるプリチャージ時間の設定に係る制御について、図4のフローチャートおよび図5のタイムチャートを用いて説明する。図4のフローチャートは請求項4及び請求項5を具体的に説明したものである。本発明におけるプリチャージ時間とは、車両の状態が図3のロックアップオン領域或いはスリップ領域に移行してロックアップクラッチ圧Ponの最高圧の出力が開始されてから、ロックアップ圧Ponをロックアップ初期圧として上述したフィードバック制御による係合圧の制御を開始するまでの時間である。
【0041】
CPU51は図4のフローチャートにて示されたルーチンの処理を所定時間の経過毎にステップ100から開始する。そして、CPU51はステップ101にて車速がV1以下であるか否かを判断する。V1は0に近い小さな車速であり、車速がV1のときには車両が実質的に停止していると判定される程度の車速に設定されている。ステップ101で「No」と判定された場合は、車両の安全性等を考慮して、プリチャージ時間の設定を行わずに本ルーチンを一旦終了する。このとき、既にタイマがカウントされている場合にはステップ110にてタイマがリセットされて本ルーチンを一旦終了することとなる。
【0042】
ステップ101で「Yes」と判定されるとステップ102に進み、自動変速機30の変速段がニュートラル状態であるか否かを判断する。変速段がニュートラル状態でない、つまり変速段が前進段、後進段或いはパーキング状態のときには、タービン羽根車22に伝達される動力が出力軸32に伝わる状態である。この状態でロックアップクラッチ20Bを係合させると車両に係合ショックが伝達されてしまうため、ステップ102で「No」と判定されると、プリチャージ時間の設定を行わずに本ルーチンを一旦終了する。既にタイマがカウントされている場合にはステップ110にてタイマがリセットされて本ルーチンを一旦終了する。
【0043】
ステップ102で「Yes」と判断されるとステップ103に進み、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22とのスリップ回転数Nsが所定回転数N1(40rpm)以上であるか否かを判定する。ステップ103にて「No」と判定された場合には、プリチャージ時間の設定が正確に行えない可能性があるとして、プリチャージ時間の設定を行わずに本ルーチンを一旦終了する。既にタイマがカウントされている場合にはステップ110にてタイマがリセットされて本ルーチンを一旦終了する。
【0044】
ステップ103で「Yes」と判定されると、ステップ104に進んでロックアップ圧Ponの最高圧(プリチャージ圧)を係合側油室R1に供給する。このプリチャージ圧は、ピストン29が不感帯にある期間を短縮化するため、ライン圧に近い最高圧に設定される。次にステップ105にてプリチャージ圧の供給開始からの時間を計測すべくタイマのカウントをスタートする(図5の時間T0)。
【0045】
そして、ステップ106でタイマのカウントがスタートしてからのタイマ値T(図5の時間T0からの経過時間)が第1所定時間Δt1以上であるか否かを判定する。ステップ106で「Yes」と判定されると、ステップ107に進み、ピストン29の押圧力によってロックアップクラッチ20Bが係合し始めることによってスリップ回転数が減少し始めたか否かを判定する。
【0046】
ステップ107は具体的には、第1所定時間Δt1の範囲において、スリップ回転数Nsに対して第1の周波数成分fcを除去するフィルタ処理を施して得られる第1フィルタ後スリップ回転数β(図5の細線)と、スリップ回転数Nsに対して第2の周波数成分fbを除去するフィルタ処理を施して得られる第2フィルタ後スリップ回転数α(図5の太線)との差が、第1所定量ΔN1以上となったか否かを判定する。ここで、第2の周波数成分fbは第1の周波数成分fcよりも低い周波数であり、第2フィルタ後スリップ回転数αはスリップ回転数Nsの変動の影響を取り除いた平均的な値になる。この第2フィルタ後スリップ回転数αの大きさの変化を検出することで、スリップ回転数が減少したことを検出することも可能であるが、第2フィルタ後スリップ回転数αはスリップ回転数Nsに対して時間的な遅れが大きいため、第2フィルタ後スリップ回転数αの変化を検出するだけでは、正確なプリチャージ時間を設定することができない。
【0047】
そこで本実施形態では、第2フィルタ後スリップ回転数αに比べて、スリップ回転数Nsに素早く追従するような第1フィルタ後スリップ回転数βを用いて、第1フィルタ後スリップ回転数βの現時点での値βtと、現時点よりも第1所定時間Δt1だけ前の第2フィルタ後スリップ回転数αの値αt−1との差が第1所定量ΔN1以上か否かを判定することにより、スリップ回転数が減少し始めたか否かを判断するようにしている。これにより、ロックアップクラッチ20Bが係合し始めてスリップ回転数が減少し始めるタイミングを正確に検出することが可能になる。
【0048】
ステップ107で、「Yes」と判定されると、ステップ108に進んで、その時点でのタイマ値T、つまりステップ105でタイマのカウントをスタートさせてからステップ108に進むまでに要した時間(図5の時間T0からの経過時間T)をRAM53内に一旦記憶させる。なお、このタイマ値Tは請求項2の所要時間に相当するものである。そして、ステップ109で、ステップ108で記憶したタイマ値Tから所定の微少時間t(タイマ値Tに比べて非常に短い時間、例えば40〜50msec)を差し引いた時間を、プリチャージ時間TSETとしてRAM53内に記憶する。なお、ステップ107にて「No」と判定された場合には、プリチャージ時間の設定を行わずに本ルーチンを一旦終了する。
【0049】
仮に、ステップ108で記憶したタイマ値Tをそのままプリチャージ時間TSETに設定すると、プリチャージの終了時にロックアップクラッチ20Bの係合ショックが生じてしまう。そこで、ステップ109を実行することでタイマ値Tから微少時間tを差し引いて、係合ショックが生じる直前でプリチャージが終了するようにプリチャージ時間TSETを設定している。
【0050】
このようにして設定されたプリチャ−ジ時間TSETは、次回のロックアップクラッチ20Bのロックアップ制御或いはスリップ制御を行うときから採用される。なお、本実施の形態では、上述したプリチャージ時間TSETの設定に係る制御を実行するタイミングについては特に限定しておらず、所定時間の経過毎としているが、例えば、車両の工場出荷時や、エンジン10の始動直後、エンジン10の停止直後、或いは車両が一定距離を走行した時点等、どのようなタイミングで行っても良い。
【0051】
また、ステップ107における第1フィルタ後スリップ回転数βの代わりに、スリップ回転数Nsをそのまま用いてもよい。この場合は請求項3を具体的に説明したものであり、スリップ回転数の現時点での値と、現時点よりも第1所定時間Δt1だけ前の第2フィルタ後スリップ回転数αの値αt−1との差が第1所定量ΔN1以上か否かを判定することにより、スリップ回転数が減少し始めたか否かを判断することになる。
【0052】
次に、ロックアップ初期圧の設定について図6のフローチャートおよび図7のタイムチャートを用いて説明する。図6のフローチャートは請求項8を具体的に説明したものである。ロックアップ初期圧の設定は、上述したプリチャージ時間の設定の前後、或いはプリチャージ時間の設定と異なるタイミングに実行される。
【0053】
CPU51は図6のフローチャートにて示されたルーチンの処理を所定時間の経過毎にステップ200から開始され、本制御が開始する前に予め第3電磁弁43が駆動制御され、ロックアップ圧Ponをドレンするとともにトルコン圧Poffをライン圧に近い高圧としている。また、ステップ201からステップ203は、図4のフローチャートにおけるステップ101からステップ103と同じ処理を実行するステップであり、説明を省略する。
【0054】
ステップ203で「Yes」と判定されると、ステップ204に進み、ロックアップ圧Ponが0の状態から一定の時間Ts毎に段階的にロックアップ圧Ponを増大させる。ここで、一定の時間Tsにおいてロックアップ圧Ponが増大する大きさ(図7のP1)は、出力可能な最高圧に比べて非常に小さい値(最高圧の30分の1程度)となるように設定されている。そして、ステップ205にてロックアップ圧Ponの増大が開始してからの時間を計測すべくタイマのカウントをスタートする(図7の時間T0)。
【0055】
そして、ステップ206でタイマのカウントがスタートしてからのタイマ値T(図7の時間T0からの経過時間)が第2所定時間ΔT2以上であるか否かを判定する。ステップ206で「Yes」と判定されると、ステップ207に進み、ロックアップ圧Ponが供給されていない状態から徐々にロックアップ圧を増大させていくことで、スリップ回転数Nsが減少し始めたか否かを判定する。
【0056】
ステップ207は具体的には、第2所定時間Δt2の範囲において、スリップ回転数Nsに対して第3の周波数成分fdを除去するフィルタ処理を施して得られる第3フィルタ後スリップ回転数γ(図7の太線)の現時点での値γtと、現時点よりも第2所定時間だけ前の第3フィルタ後スリップ回転数γの値γt−1との差が、第2所定量ΔN2以上となったか否かを判定する。このように第3フィルタ後スリップ回転数γの時間的な変化を検出することによって、スリップ回転数が変動するような状況であっても、ロックアップ圧が徐々に増大してスリップ回転数Nsが減少し始めるタイミングを正確に設定することが可能になる。
【0057】
ステップ207で、「Yes」と判定されると、ステップ208に進んで、その時点におけるロックアップ圧Ponを、ロックアップ初期圧PaとしてRAM53内に記憶する。そして、ステップ208に進み、タイマをリセットして本ルーチンを終了する。なお、ステップ207で、「No」と判定された場合には、ロックアップ初期圧の設定を行わずに本ルーチンを一旦終了する。
【0058】
このようにして設定されたロックアップ初期圧Paがプリチャージの終了後に供給されることにより、ピストン29の不感帯が消尽してから係合圧のフィードバック制御に移行する瞬間ではロックアップ圧Ponとトルコン圧Poffとが釣り合うことになる。したがって、ロックアップクラッチ20Bの解放状態からロックアップクラッチ20Bを完全係合状態、或いはスリップ状態へと移行する際のロックアップ初期圧による係合ショックが低減される。
【0059】
以上、本発明の実施の形態によると、プリチャージ時間の設定およびロックアップ初期圧の設定を、自動変速機30の変速段がニュートラル状態のときに行うので、プリチャージ時間の設定時にロックアップクラッチ20Bが急激に係合するような場合があったとしても、自動変速機30の出力軸32には係合ショックが伝達されず、車両にも係合ショックによる影響が伝達されない。また、通常のロックアップ制御やスリップ制御時には、適切に設定されたプリチャージ時間およびロックアップ初期圧に基づいて、素早くプリチャージが行われるとともにロックアップクラッチ20Bの係合ショックも抑えられるので、運転者は係合ショックによる不快感を感じることがなく、好適である。
【0060】
【発明の効果】
本発明によると、プリチャージ時間の設定及びロックアップ初期圧の設定は車両の停止状態であり且つ自動変速機の変速段がニュートラル状態のときに行われるので、プリチャージ時間及びロックアップ初期圧の設定時にロックアップクラッチが急激に係合するような場合があったとしても、自動変速機の出力軸には係合ショックが伝達されず、車両にも係合ショックによる影響が伝達されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態におけるロックアップクラッチの制御方法を実行する自動変速機を車両に搭載したときの概略図である。
【図2】図1に示したロックアップクラッチ付トルクコンバータの断面図である。
【図3】車両の運転状態とロックアップクラッチの各領域を示す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるプリチャージ時間の設定に係る制御を示すフローチャートである。
【図5】プリチャージ時間の設定に係るタイムチャートである。
【図6】本発明の実施形態におけるロックアップ初期圧の設定に係る制御を示すフローチャートである。
【図7】ロックアップ初期圧の設定に係るタイムチャートである。
【符号の説明】
10・・・エンジン、20・・・トルクコンバータ、20A・・・流体式伝達機構、20B・・・ロックアップクラッチ、21・・・ポンプ羽根車、22・・・タービン羽根車、29・・・ピストン、30・・・自動変速機、40・・・油圧制御回路、50・・・電気制御回路
Claims (8)
- 供給されるロックアップ圧のプリチャージによりピストンの不感帯を消尽させるとともに前記プリチャージの後に前記ロックアップ圧をロックアップ初期圧から増大することにより、前記ロックアップ圧によるピストンの押付力を変化させてトルクコンバータ内のポンプ羽根車とタービン羽根車とのスリップ回転数を制御するロックアップクラッチの制御方法であって、
前記プリチャージを行う時間および前記ロックアップ初期圧の大きさは、車両が停車状態であり且つ自動変速機の変速段がニュートラル状態のときに設定されることを特徴とする、ロックアップクラッチの制御方法。 - 前記プリチャージを開始してから前記スリップ回転数が減少し始めるまでの所要時間に基づいて、プリチャージを行う時間を設定することを特徴とする、請求項1に記載のロックアップクラッチの制御方法。
- 前記プリチャージを開始してから、前記スリップ回転数と前記スリップ回転数に対して所定の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られるフィルタ後スリップ回転数との差が、第1所定時間内で第1所定量以上となったときの時間を、前記プリチャージを開始してから前記スリップ回転数が減少し始めるまでの所要時間とすることを特徴とする、請求項2に記載のロックアップクラッチの制御方法。
- 前記プリチャージを開始してから、前記スリップ回転数に対して第1の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第1フィルタ後スリップ回転数と前記スリップ回転数に対して第2の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第2フィルタ後スリップ回転数との差が、第1所定時間内で第1所定量以上となったときの時間を、前記プリチャージを開始してから前記スリップ回転数が減少し始めるまでの所要時間とすることを特徴とする、請求項2に記載のロックアップクラッチの制御方法。
- 前記所要時間から所定の微少時間を差し引いた時間を、プリチャージを行う時間として設定することを特徴とする、請求項2から請求項4に記載のロックアップクラッチの制御方法。
- ロックアップ圧が供給されていない状態から徐々にロックアップ圧を増大させていき、前記スリップ回転数が減少し始めたときのロックアップ圧に基づいて、前記ロックアップ初期圧を設定することを特徴とする、請求項1から請求項5に記載のロックアップクラッチの制御方法。
- ロックアップ圧が供給されていない状態から徐々にロックアップ圧を増大させていき、前記スリップ回転数に対して第3の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第3フィルタ後スリップ回転数が、第2所定時間内で第2所定量以上減少したときのロックアップ圧に基づいて、前記ロックアップ初期圧を設定することを特徴とする、請求項6に記載のロックアップクラッチの制御方法。
- 前記スリップ回転数に対して第3の周波数成分を除去するフィルタ処理を施して得られる第3フィルタ後スリップ回転数が前記第2所定時間内で前記第2所定量以上減少したときのロックアップ圧を、前記ロックアップ初期圧として設定することを特徴とする、請求項7に記載のロックアップクラッチの制御方法。
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