JP2004137728A - 振動軽減型アスファルト舗装体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】空隙率が17%以上の開粒度アスファルト混合物からなる基層の表面に、直接またはアスファルト混合物からなるレベリング層を介して、繊維または弾性樹脂製のシートを敷設し、その上にアスファルト混合物からなる表層を設ける。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、交通振動を軽減する舗装技術に関し、特に比較的短期間で施工を行うことができる表基層対応の振動軽減型舗装に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、舗装体の性状を改善することにより交通振動を軽減する方法として、既設舗装体の路面の平たん性を改善する方法、路床改良により路床支持力を向上させる方法、路盤を強化して舗装体の剛性を高める方法などが行われてきた。路面の平たん性を改善する方法としては、既設舗装体の表層を切削により撤去したのち新規のアスファルト混合物により新たに表層を構築する方法等が行われている。路床支持力を向上させる方法としては、路床面にセメント系または石灰系の安定材を散布したのちスタビライザなどの機械により前記安定材と路床土とを混合する方法、現状の路床土と良質土とを置き換える方法などが行われている。舗装体の剛性を高める方法としては、路盤面にセメント系または石灰系の安定材を散布したのちスタビライザなどの機械により前記安定材と路盤材とを混合する方法、上層路盤として瀝青安定処理路盤材からなる層を設ける方法などが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、路面の平たん性を改善して交通振動を軽減しようとする方法は、交通の供用に伴い舗装体が流動することなどにより路面の平たん性が徐々に損なわれるので、交通振動の軽減効果の持続性に問題がある。路床改良や路盤の強化により交通振動を軽減しようとする方法は、既設アスファルト混合物と路盤材を撤去したのち前述したような作業を行うことになるので、工事が大規模となり工期も長くなる。また、アスファルト廃材や路盤材あるいは路床土などの舗装発生材が大量に発生し、これらの運搬や処分に伴う渋滞、騒音、振動、粉塵などによる沿道環境の悪化などが問題となる。
本発明の目的は、このような問題を解決するために、工事を比較的短期間で完了できる表基層対応の振動軽減型舗装を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の振動軽減型アスファルト舗装体は、空隙率17%以上の開粒度アスファルト混合物からなる基層の表面に直接またはアスファルト混合物からなるレベリング層を介して繊維または弾性樹脂製のシートを敷設し、その上にアスファルト混合物からなる表層を設けたことを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のアスファルト舗装体は、基層として空隙率17%以上の開粒度アスファルト混合物を用いることと、その上層に直接又はレベリング層を介して繊維又は弾性樹脂製のシート(以下制振シートと称する)を敷設することの組合せにより、相乗的に交通振動の軽減を図ることができるものである。特に既設道路の補修において、基層を含む基層から表層までを本発明の舗装体の層構成にすることにより、短い工事期間に顕著な交通振動軽減効果を得ることが可能となる。
尚基層に接する下層は砕石等の粒状材料からなる路盤であることが好ましい。
【0006】
本発明に用いるシートを構成する繊維は、その使用環境条件から、優れた耐熱性と強度をもついわゆる高強度繊維が好ましく、具体例としては、ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維などが例示される。シートはグリッドと称される格子状(ネット状)の形状をもつものが好ましい。たとえば1〜5mmの太さの繊維糸を0.5〜3cm間隔で格子状に配してつくったシート等の十分な空隙をもつシートが好ましい。弾性樹脂はポリエステル系エラストマー、ポリエーテル系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどの(粘)弾性をもつ適宜の樹脂(ゴムも包含する)をいい、これも格子状等の空隙をもつ形状のシートとして用いることが好ましい。ジオテキスタイルと称されるシート、たとえばガラス繊維製シートやペルプレン成型シートと称されるシートもこれらの一例に入る。
【0007】
本発明では基層として空隙率17%以上の開粒度アスファルト混合物、特にバインダーとして高粘度改質アスファルトを使用したもので、骨材の最大粒径が13mmまたは20mm、空隙率が17%以上となる配合のものを使用することが好ましい。既設道路の多くは基層として粗粒度アスファルト混合物が用いられていることから、既設道路の補修においては基層から掘りおこして本発明の舗装体の層構成とする。
【0008】
開粒度アスファルト混合物からなる基層を舗設した後、前記したシートとの間にレベリング層を配する場合に適するレベリング層は砕石マスチック混合物などである。砕石マスチック混合物はバインダーとして高粘度改質アスファルトを使用したもので、骨材の最大粒径が5mmのものを使用することが好ましい。レベリング層として砕石マスチック混合物を設けることにより、前記シートを釘などで固定できるようになり、また表層に開粒度アスファルト混合物を使用した場合に不透水層として機能させて前記開粒度アスファルト混合物から浸透してくる雨水を基層より下に浸透させないようにすることができ、さらに交通振動に影響を与える表層の平たん性を良好に確保するためのレベリング層の役割を果たすこともできる。
【0009】
表層に用いられるアスファルト混合物は、平たん性が長期的に良好に維持されるような混合物がよい。このため、繰り返し交通荷重による塑性変形が少ない耐流動性の高い混合物が望ましく、密粒度アスファルト混合物と比較して振動減衰性能にも優れた砕石マスチック混合物や開粒度アスファルト混合物などが好適に用いられる。その場合、バインダーとしてはストレートアスファルトよりも良好な耐流動性と振動減衰性能が得られる高粘度改質アスファルトを使用するのがよい。また、骨材の最大粒径は5mmから13mmのものまで使用可能であるが、耐流動性を考慮すると骨材の最大粒径が13mmのものが望ましい。なお、開粒度アスファルト混合物の空隙率は、通常の排水性舗装に用いられる場合と同じく、骨材飛散抵抗性を考慮して20%程度が望ましい。
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の具体例を説明する。
図1は、舗装計画交通量が3000台/日・方向以上で設計CBRが3の場合における本発明のアスファルト舗装体の舗装断面例である。舗装の厚さは従来行われているTA法により定めることができる。制振シート1は格子の目合いが横25mm、縦20mmで引張強度が横方向で196kN/m以上、縦方向で98kN/m以上の強度を示すガラス繊維製シートである。このガラス繊維製シートについて材料の振動減衰性能の評価指標である損失係数を測定する振動減衰特性試験を行った結果、アスファルト混合物層の中にこのシートを敷設することにより、0.6dB程度の振動軽減効果があることが分かった。また、前記に例示した(粘)弾性樹脂からなる制振シートについて振動減衰特性試験を行った結果、上記と同等以上の制振効果を有していることが分かった。
基層4には開粒度アスファルト混合物を用いる。開粒度アスファルト混合物と密粒度アスファルト混合物について、振動減衰特性試験を行ったところ、表1に示す測定結果が得られた。
【0011】
【表1】
【0012】
また、開粒度アスファルト混合物の耐流動性をホイールトラッキング試験により測定したところ、表2に示す結果が得られた。
【0013】
【表2】
【0014】
以上の測定結果より、交通量の多い重交通道路に適用する場合には、振動軽減効果と耐流動性の両方において良好な特性を有する骨材の最大粒径が20mmで空隙率が20%の配合の開粒度アスファルト混合物を使用することが望ましいことが分かる。
レベリング層3には砕石マスチック混合物を用いる。砕石マスチック混合物は振動軽減効果が大きく、振動減衰特性試験により測定したところ密粒度アスファルト混合物と比較して約2.2dBの振動軽減効果が得られた。
【0015】
表層2にはバインダーに高粘度改質アスファルトを使用した骨材の最大粒径が13mmの砕石マスチック混合物を用いる。この混合物についてホイールトラッキング試験による動的安定度(DS)を測定したところその値は10000回/mmであり、バインダーにストレートアスファルトを使用した骨材の最大粒径が13mmの密粒度アスファルト混合物と比較して約1.5dBの振動軽減効果が得られた。上層路盤5、上層路盤6および下層路盤7には通常のアスファルト舗装で用いられている路盤材を使用する。
【0016】
【実施例】
図2は、本発明のアスファルト舗装体の振動軽減効果を確認するために施工した舗装体の断面図である。施工範囲は幅員5.5m、延長36mである。制振シート9にはジオテキスタイル製品であるガラス繊維製シートを使用し、基層12には骨材の最大粒径が20mmで空隙率が20%である高粘度改質アスファルトを使用した開粒度アスファルト混合物を、レベリング層11には骨材の最大粒径が5mmである高粘度改質アスファルトを使用した砕石マスチック混合物を、表層10には骨材の最大粒径が13mmである高粘度改質アスファルトを使用した砕石マスチック混合物をそれぞれ設けている。舗装各層の厚さは、基層7.5cm、レベリング層2.5cm、表層4cmである。本発明のアスファルト舗装体の施工は、以下の手順により行う。まず、表層10、レベリング層11、基層12の合計厚さに相当する既設アスファルト舗装体の上層路盤の一部および表基層の合計厚さ14cm分を路面切削機により切削し、上層路盤5の上面を不陸整正したのちアスファルト乳剤PK−3を1.0リットル/m2散布してプライムコートとした。次に、基層12として骨材の最大粒径が20mmで空隙率が20%である高粘度改質アスファルトを使用した開粒度アスファルト混合物を締固め後の厚さが所定の7.5cmとなるようにアスファルトフィニッシャにより敷きならし、マカダムローラおよびタイヤローラを用いて締め固めた。次に、レベリング層11として骨材の最大粒径が5mmである高粘度改質アスファルトを使用した砕石マスチック混合物を締固め後の厚さが所定の2.5cmとなるようにアスファルトフィニッシャにより敷きならし、マカダムローラおよびタイヤローラを用いて締め固めた。次に、荷姿が幅1.5mのロール状となっているガラス繊維製シートをレベリング層11の表面に敷き拡げ、お互いに重なる箇所はその重ね合わせ幅が10cm程度となるようにして施工区間全面に敷設した。ガラス繊維製シートの敷設終了後、ガラス繊維製シートの上に縦断方向で2m間隔、横断方向で4m間隔にアルミ製のワッシャを置き、その上からレベリング層11の表面にガス銃を用いて固定釘を打ち込みガラス繊維製シートをレベリング層11の表面に固定した。その後、タイヤローラを2往復程度走行させ、ガラス繊維製シートの裏面に塗布されている接着剤がレベリング層11の表面と十分に接着して、ガラス繊維製シートがレベリング層11の表面と十分密着されるようにした。次に、表層10として骨材の最大粒径が13mmで高粘度改質アスファルトを使用した砕石マスチック混合物を締固め後の厚さが所定の4cmとなるようにアスファルトフィニッシャにより敷きならし、マカダムローラおよびタイヤローラを用いて締め固めた。
【0017】
[比較例1]
比較対象区間として、同じ既設アスファルト舗装区間に図3に示すような断面構成の舗装体を同じ面積だけ施工した。表層16は骨材の最大粒径が13mmでストレートアスファルトを使用した密粒度アスファルト混合物、基層17は骨材の最大粒径が20mmでストレートアスファルトを使用した粗粒度アスファルト混合物である。舗装各層の厚さは、表層4cm、基層10cmである。
施工は、図2の舗装断面の場合と同じように以下の手順で行った。表層16と基層17の合計厚さに相当する既設アスファルト舗装の上層路盤の一部および表基層の合計厚さ14cm分を路面切削機により切削し、上層路盤18の上面を不陸整正したのちアスファルト乳剤PK−3を1.0リットル/m2散布してプライムコートとした。次に、表層16と基層17をアスファルトフィニッシャとタイヤローラ、マカダムローラを用いてそれぞれ所定の厚さと締固め度となるように舗設した。
【0018】
[比較例2]
比較例2として次のような舗装体を施工した。舗装体の断面構成は、粗粒度アスファルト混合物からなる既設アスファルト舗装の基層上にレベリング層を介してガラス繊維製シートを配置し、その上に密粒度アスファルト混合物からなる表層を設けたものである。舗装各層の厚さは、表層4cm、レベリング層2.5cm、基層10cmである。
施工は以下の手順で行った。既設アスファルト舗装の表層を路面切削機により切削し、既設アスファルト舗装の基層面(切削面)を清掃したのち、アスファルト乳剤PK−4を0.4リットル/m2散布してタックコートとした。次に、レベリング層として骨材の最大粒径が5mmである高粘度改質アスファルトを使用した砕石マスチック混合物を締固め後の厚さが所定の2.5cmとなるようにアスファルトフィニッシャにより敷きならし、マカダムローラおよびタイヤローラを用いて締め固めた。次に、ガラス繊維製シートをレベリング層の上に敷き拡げ、施工区間全面に敷設した。次に、表層として骨材の最大粒径が13mmでストレートアスファルトを使用した密粒度アスファルト混合物を締固め後の厚さが所定の4cmとなるようにアスファルトフィニッシャにより敷きならし、マカダムローラおよびタイヤローラを用いて締め固めた。
【0019】
表3は、施工直後に実施例1の本発明のアスファルト舗装体の区間、比較例1の通常のアスファルト舗装体の区間および比較例2のアスファルト舗装体の区間で12tの荷重車を走行速度50km/hで走行させ、それぞれの施工区間36mの中央部で舗装幅員の中心から2m、2.7m、5mの位置で振動レベルを測定した結果である。本発明のアスファルト舗装体は通常のアスファルト舗装体と比べ、舗装幅員の中心から2.7mの舗装端部で3.1dB振動レベルが軽減されていることが分かる。この結果より、本発明のアスファルト舗装体は、通常のアスファルト舗装体に比べ約3dB程度の振動軽減効果を有していることが分かる。
【0020】
【表3】
【0021】
【発明の効果】
本発明により、表層と基層の間に振動減衰性能を示す繊維又は弾性樹脂製のシートを敷設して、基層に空隙率が17%以上の開粒度アスファルト混合物を舗設することにより、これら材料の振動減衰性能により通常のアスファルト舗装体に比べ3dB程度交通による振動レベルを軽減することが可能である。このため、既設アスファルト舗装の交通振動レベルを改善する場合には、従来のように路床・路盤を打換えることなく短期間の施工で道路交通振動を軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアスファルト舗装体の断面例。
【図2】本発明のアスファルト舗装体の実施断面例。
【図3】本発明のアスファルト舗装体と比較した舗装断面。
【符号の説明】
1 制振シート
2 表層
3 レベリング層
4 基層
5 上層路盤
6 上層路盤
7 下層路盤
8 路床
9 制振シート(ガラス繊維製シート)
10 表層(骨材最大粒径13mmの砕石マスチック混合物)
11 レベリング層(骨材最大粒径5mmの砕石マスチック混合物)
12 基層(骨材最大粒径20mmの開粒度アスファルト混合物)
13 上層路盤(粒状材料)
14 下層路盤(粒状材料)
15 路床(土)
16 表層(骨材最大粒径13mmの密粒度アスファルト混合物)
17 基層(骨材最大粒径20mmの粗粒度アスファルト混合物)
18 上層路盤(粒状材料)
19 下層路盤(粒状材料)
20 路床(土)
Claims (4)
- 空隙率が17%以上の開粒度アスファルト混合物からなる基層の表面に、直接またはアスファルト混合物からなるレベリング層を介して、繊維または弾性樹脂製のシートを敷設し、その上にアスファルト混合物からなる表層を設けたことを特徴とする振動軽減型アスファルト舗装体。
- 前記レベリング層が存在し且つレベリング層を構成するアスファルト混合物が砕石マスチック混合物である請求項1に記載の振動軽減型アスファルト舗装体。
- 前記シートがガラス繊維からなる格子状シートである請求項1又は2に記載の振動軽減型アスファルト舗装体。
- 前記基層が接している下層が粒状材料からなる路盤によって構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動軽減型アスファルト舗装体。
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JP2006249674A (ja) * | 2005-03-08 | 2006-09-21 | Nippo Corporation:Kk | アスファルト舗装体用振動軽減シート及びその製造方法 |
KR101104054B1 (ko) * | 2009-04-01 | 2012-01-06 | 한국도로공사 | 골재 입도를 개선한 저소음 포장 혼합물 |
JP2013015017A (ja) * | 2012-10-26 | 2013-01-24 | Maeda Road Constr Co Ltd | 振動軽減舗装及び振動軽減舗装への補修方法 |
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2002
- 2002-10-17 JP JP2002302477A patent/JP3824988B2/ja not_active Expired - Lifetime
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