JP2004131764A - 精密加工性に優れた快削ステンレス鋼 - Google Patents
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Abstract
【課題】大きく被削性を改善した精密加工性に優れた快削ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.1%以下、Si:0.2〜0.6%、Mn:1%超〜3%、Cr:16〜25%、Mo:1%超〜3%、S:0.2〜0.5%、Se:0.05〜0.2%、Te:0.01〜0.1%、O:0.005%超〜0.02%を含有し、かつ、Mn/(S+0.4Se+0.25Te)比:4超、Se/S比:0.2〜0.8、残部Feおよび不可避的不純物からなる精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。
【選択図】 なし
【解決手段】質量%で、C:0.1%以下、Si:0.2〜0.6%、Mn:1%超〜3%、Cr:16〜25%、Mo:1%超〜3%、S:0.2〜0.5%、Se:0.05〜0.2%、Te:0.01〜0.1%、O:0.005%超〜0.02%を含有し、かつ、Mn/(S+0.4Se+0.25Te)比:4超、Se/S比:0.2〜0.8、残部Feおよび不可避的不純物からなる精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、精密加工性に優れた快削ステンレス鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、精密機械部品やOA機器等の小型高性能化に伴い、その構成部品に要求される品質も厳しくなっている。一方、ステンレス鋼は、耐食性と強度に優れており好適な材料であるが、厳しい寸法精度を満足する加工が難しい。そこで種々の快削元素を添加した快削ステンレス鋼が商品化されている。例えば特許文献1に開示されいるように、質量%で、C:0.50%以下、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜1.00%、S:0.05〜0.50%、Se:0.02〜0.20%、Te:0.01〜0.10%、Cr:10.00〜30.00%、かつ、Mn/S比:2以下、Se/S比:0.2以上、Te/S比:0.04以上の成分比を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる快削ステンレス鋼や特許文献2に開示されているような、快削フェライト系ステンレス鋼が知られている。
【0003】
【引用文献】
(1)特許文献1(特開2002−38241号公報)
(2)特許文献2(特開平9−31603号公報)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特許文献1や特許文献2の場合は、快削性に優れた快削鋼として、一定の効果を挙げている。しかしながら、近年ではより高精密な寸法精度や切削加工表面仕上性が要求されてきており、一層の優れた快削性を有する快削ステンレス鋼が求められている。本発明では、快削元素であるS、SeおよびTeの量的な効果を明らかにし、かつMnを必要十分量添加することで、被削性の一層の改善を目指した。すなわち、S、SeおよびTeの添加量の調整とMn量の確保により、介在物をMn(S,Se,Te)組成とし、低硬さと球状化を実現して、大きく被削性を改善した精密加工性に優れた快削ステンレス鋼を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
その発明の要旨とするところは、
(1)質量%で、C:0.1%以下、Si:0.2〜0.6%、Mn:1%超〜3%、Cr:16〜25%、Mo:1%超〜3%、S:0.2〜0.5%、Se:0.05〜0.2%、Te:0.01〜0.1%、O:0.005%超〜0.02%を含有し、かつ、Mn/(S+0.4Se+0.25Te)比:4超、Se/S比:0.2〜0.8、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。
【0006】
(2)前記(1)に加えて、Pb:0.005〜0.3%、Bi:0.005〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%、Ca:0.001〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。
(3)前記(1)または(2)に加えて、Al:0.0001〜0.02%、Mg:0.0001〜0.01%、B:0.0001〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。
【0007】
(4)前記(1)〜(3)に加えて、Ni:0.01〜2%、Cu:0.01〜2%、N:0.005〜0.1%の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。
(5)前記(1)〜(4)に加えて、Ti:0.02〜1%、Nb:0.02〜1%、V:0.02〜1%、W:0.02〜1%の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る成分組成の限定理由を述べる。
C:0.1%以下
Cは、強度を上げるに必要な元素である。しかし、0.1%を超えると耐食性および靱性を劣化させるので、その上限を0.1%とした。
Si:0.2〜0.6%
Siは、溶製時の脱酸剤として使用する元素であるが、しかし、0.2%未満であると、その効果は不十分である。また、多いと焼なまし硬さが上昇するので、その上限を0.6%とした。
【0009】
Mn:1%超〜3%
Mnは、Siと同様に脱酸元素であり、硫化物系介在物の組成制御に有効である。特にMn添加量を高めてMn介在物を生成させる。しかし、1%以下ではその効果が十分でなく、3%を超えるとその効果は飽和することから、その上限を3%とした。
Cr:16〜25%
Crは、耐食性を向上させる基本とする元素である。しかし、16%未満ではその効果が十分でなく、25%を超えると被削性が悪くなり、かつ脆化しやすくなるので、その範囲を16〜25%とした。
【0010】
Mo:1%超〜3%
Moは、Crと同様に耐食性を向上させる元素である。しかし、1%以下ではその効果が十分でなく、3%を超えると脆化しやすくなるので、その範囲を1%超〜3%とした。
S:0.2〜0.5%
Sは、介在物MnSを生成する快削元素である。しかし、0.2%未満ではその効果は十分でなく、0.5%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.2〜0.5%とした。
【0011】
Se:0.05〜0.2%
Seは、Sと同様に快削元素であり、MnS中に固溶して、介在物を球状化すると共に、軟化させて快削性を改善する効果がある。しかし、0.05%未満ではその効果は十分でなく、0.2%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.05〜0.2%とした。
Te:0.01〜0.1%
Teは、Sと同様に快削元素であり、介在物の球状化に極めて大きな効果を有する。しかし、0.01%未満ではその効果は十分でなく、0.1%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.01〜0.1%とした。
【0012】
O:0.005%超〜0.02%
Oは、硫化物系介在物の熱間変形能を下げ球状化に寄与し被削性を改善させる。しかし、0.005%以下ではその効果が十分でなく、0.02%を超えると不要な酸化物が増加するので、その範囲を0.005%超〜0.02%とした。
Pb:0.005〜0.3%
Pbは、低融点金属であり、切削加工中に溶融して潤滑効果を発揮する快削元素である。しかし、0.005%未満ではその効果は十分でなく、0.3%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.005〜0.3%とした。
【0013】
Bi:0.005〜0.3%
Biは、Pbと同様の効果を有する快削元素である。しかし、0.005%未満ではその効果は十分でなく、0.3%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.005〜0.3%とした。
Sn:0.005〜0.3%
Snは、Pbと同様の低融点金属での快削元素である。しかし、0.005%未満ではその効果は十分でなく、0.3%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.005〜0.3%とした。
【0014】
Ca:0.001〜0.01%
Caは、酸化物を低融点化させて被削性を改善する快削元素である。しかし、0.001%未満ではその効果は十分でなく、0.01%を超えると効果が飽和することから、その範囲を0.001〜0.01%とした。
Al:0.0001〜0.02%
Alは、強力な脱酸元素であり、O量の適正コントロールに有用である。しかし、0.0001%未満ではその効果は十分でなく、0.02%を超えると硬質酸化物が被削性を悪化させることから、その範囲を0.0001〜0.02%とした。
【0015】
Mg:0.0001〜0.01%
Mgは、強力な脱酸元素である。しかし、0.0001%未満ではその効果は十分でなく、0.01%を超えると硬質酸化物が被削性を悪化させることから、その範囲を0.0001〜0.01%とした。
B:0.0001〜0.01%
Bは、熱間加工性を向上させる元素である。しかし、0.0001%未満ではその効果は十分でなく、また、0.01%を超えると逆に熱間加工性が悪化することから、その範囲を0.0001〜0.01%とした。
【0016】
Ni:0.01〜2%
Niは、耐食性を向上させる元素である。しかし、0.01%未満ではその効果が十分でなく、2%を超すと被削性を悪化させることから、その範囲を0.01〜2%とした。
Cu:0.01〜2%
Cuは、耐食性や冷間加工性を改善する元素である。しかし、0.01%未満ではその効果が十分でなく、2%を超すと熱間加工性を悪化させることから、その範囲を0.01〜2%とした。
【0017】
N:0.005〜0.1%
Nは、強度上昇に役立つ元素である。しかし、0.005%未満ではその効果が十分でなく、0.1%を超すと靱性を悪化させることから、その範囲を0.005〜0.1%とした。
Ti:0.02〜1%
Tiは、炭窒化物生成により耐食性を向上させる。しかし、0.02%未満ではその効果が十分でなく、1%を超すとその効果が飽和することから、その範囲を0.02〜1%とした。
【0018】
Nb:0.02〜1%
Nbは、Tiと同様に、炭窒化物生成により耐食性を向上させる。しかし、0.02%未満ではその効果が十分でなく、1%を超すとその効果が飽和することから、その範囲を0.02〜1%とした。
V:0.02〜1%
Vは、Tiと同様に、炭窒化物生成により耐食性を向上させる。しかし、0.02%未満ではその効果が十分でなく、1%を超すとその効果が飽和することから、その範囲を0.02〜1%とした。
W:0.02〜1%
Wは、Tiと同様に、炭窒化物生成により耐食性を向上させる。しかし、0.02%未満ではその効果が十分でなく、1%を超すとその効果が飽和することから、その範囲を0.02〜1%とした。
【0019】
次に、本発明の特徴とするS,Se,Teを一定の割合で複合添加したときの効果について説明する。S,Se,Teは、鋼中への溶解度が小さく、MnとMn(S,Se,Te)の介在物を生成する。通常SUS430Fなどの快削鋼で利用される介在物はMnSだが、Seの添加により、介在物が軟らかくなると共に介在物の球状化効果が高まり、細径材でも優れた被削性を保つ。さらに、Teを添加することで、介在物の球状化による被削性改善効果が大幅に上昇する。また、Mn/(S+Se+Te)>4の条件を満たすことによって、介在物がMn(S,Se,Te)組成になり、介在物を硬化させるCrの含有を抑制させることが出来る。
【0020】
Mn/(S+0.4Se+0.25Te)比:4超
Mn/(S+0.4Se+0.25Te)比を4超としたのは、介在物が、Mn(S,Se,Te)組成になり、介在物を硬化させるCrを含有させるのを抑制するためである。しかし、4以下ではその効果が十分でないことから、その下限を4超とした。
Se/S比:0.2〜0.8
Seは、介在物の軟化および球状化に効果がある。Se/S比が0.2以上で有効である。しかし、0.8を超えてもその効果は飽和することから、その範囲を0.2〜0.8とした。
【0021】
【実施例】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
真空誘導溶解炉で100kg鋼塊を溶製し、表1に示す化学成分を有する鋼を所定の寸法の棒鋼に鍛伸し、焼なまし後各種試験に供した。その結果を表2に示す。表2に示す(1)硫化物系介在物形状は、φ20mm棒鋼の鍛伸方向に平行な面の硫化物系介在物の形状を画像解析装置にて測定した。解析項目は介在物アスペクト比(長/短径)とした。(2)硫化物硬さについては、φ60mm焼なまし材の介在物に荷重5gで四角錐圧痕を打ち、その対角線径を測定した。(3)被削性(超硬工具摩耗)については、φ60mm棒鋼の長手方向に超硬工具を用い旋削し(周速200m/min、切込み1.0mm、送り0.2mm/rev、切削油なし)、10min旋削後の逃げ面の工具摩耗を測定した。
【0022】
(4)被削性(精密加工性)については、焼なまし後φ24×L150に加工し、サーメット工具を用いて繰り返し切削プログラムにより長手方向に階段状に旋削加工し、一定切削距離切削時(1600mおよび3400m)の外径寸法を測定した。測定した外径寸法から、次の式で寸法変化率を求めた。すなわち、この値が小さいほど寸法変化が小さく、切削加工時の負荷が少なくなることを示している。
寸法変化率=(NCプログラム上の刃先移動量−被削材の寸法変化)mm/切削距離m
工具:サーメット、0.1R、切込:0.1mm、送り:0.05mm/rev、周速:150m/min、クーラント:水溶性(エマルジョンタイプ)
さらに、(5)耐食性については、φ12mm×L21mmの棒状試験片について、90%RHで(20←→70)℃×20回のサイクル中に放置し、表面の発錆状態を調査した。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
表2に示すように、No.1〜12は本発明であり、No.13〜19は比較例である。比較例No.13はS添加量が少ないために、被削性が劣る。比較例No.14はMn量が低く、αが低いために、硫化物硬さが大きく、被削性に劣る。比較例No.15はSeが添加されていないために、被削性が劣る。比較例No.16はSeの添加量が少ないために、被削性が劣る。比較例No.17はTeが添加されていないために、被削性が劣る。比較例No.18はO含有量が少ないために、被削性がやや劣る。比較例No.19はSUS430Fであり、Mo添加量が低く、かつSe、Teが添加されていないために、耐食性が十分でなく、かつ被削性がやや劣る。これに対し、本発明であるNo.1〜12はいずれの特性にも優れていることが判る。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、S、Se、Teを適度なバランスで同時に添加し、かつMnをMn/(S+Se+Te)比を4超に制御することにより、介在物がMn(S,Se,Te)組成になり、低硬さで球状となり、極めて被削性に優れ、精密加工に好適な快削ステンレス鋼を得ることが出来た。
【発明の属する技術分野】
本発明は、精密加工性に優れた快削ステンレス鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、精密機械部品やOA機器等の小型高性能化に伴い、その構成部品に要求される品質も厳しくなっている。一方、ステンレス鋼は、耐食性と強度に優れており好適な材料であるが、厳しい寸法精度を満足する加工が難しい。そこで種々の快削元素を添加した快削ステンレス鋼が商品化されている。例えば特許文献1に開示されいるように、質量%で、C:0.50%以下、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜1.00%、S:0.05〜0.50%、Se:0.02〜0.20%、Te:0.01〜0.10%、Cr:10.00〜30.00%、かつ、Mn/S比:2以下、Se/S比:0.2以上、Te/S比:0.04以上の成分比を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる快削ステンレス鋼や特許文献2に開示されているような、快削フェライト系ステンレス鋼が知られている。
【0003】
【引用文献】
(1)特許文献1(特開2002−38241号公報)
(2)特許文献2(特開平9−31603号公報)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特許文献1や特許文献2の場合は、快削性に優れた快削鋼として、一定の効果を挙げている。しかしながら、近年ではより高精密な寸法精度や切削加工表面仕上性が要求されてきており、一層の優れた快削性を有する快削ステンレス鋼が求められている。本発明では、快削元素であるS、SeおよびTeの量的な効果を明らかにし、かつMnを必要十分量添加することで、被削性の一層の改善を目指した。すなわち、S、SeおよびTeの添加量の調整とMn量の確保により、介在物をMn(S,Se,Te)組成とし、低硬さと球状化を実現して、大きく被削性を改善した精密加工性に優れた快削ステンレス鋼を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
その発明の要旨とするところは、
(1)質量%で、C:0.1%以下、Si:0.2〜0.6%、Mn:1%超〜3%、Cr:16〜25%、Mo:1%超〜3%、S:0.2〜0.5%、Se:0.05〜0.2%、Te:0.01〜0.1%、O:0.005%超〜0.02%を含有し、かつ、Mn/(S+0.4Se+0.25Te)比:4超、Se/S比:0.2〜0.8、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。
【0006】
(2)前記(1)に加えて、Pb:0.005〜0.3%、Bi:0.005〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%、Ca:0.001〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。
(3)前記(1)または(2)に加えて、Al:0.0001〜0.02%、Mg:0.0001〜0.01%、B:0.0001〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。
【0007】
(4)前記(1)〜(3)に加えて、Ni:0.01〜2%、Cu:0.01〜2%、N:0.005〜0.1%の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。
(5)前記(1)〜(4)に加えて、Ti:0.02〜1%、Nb:0.02〜1%、V:0.02〜1%、W:0.02〜1%の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る成分組成の限定理由を述べる。
C:0.1%以下
Cは、強度を上げるに必要な元素である。しかし、0.1%を超えると耐食性および靱性を劣化させるので、その上限を0.1%とした。
Si:0.2〜0.6%
Siは、溶製時の脱酸剤として使用する元素であるが、しかし、0.2%未満であると、その効果は不十分である。また、多いと焼なまし硬さが上昇するので、その上限を0.6%とした。
【0009】
Mn:1%超〜3%
Mnは、Siと同様に脱酸元素であり、硫化物系介在物の組成制御に有効である。特にMn添加量を高めてMn介在物を生成させる。しかし、1%以下ではその効果が十分でなく、3%を超えるとその効果は飽和することから、その上限を3%とした。
Cr:16〜25%
Crは、耐食性を向上させる基本とする元素である。しかし、16%未満ではその効果が十分でなく、25%を超えると被削性が悪くなり、かつ脆化しやすくなるので、その範囲を16〜25%とした。
【0010】
Mo:1%超〜3%
Moは、Crと同様に耐食性を向上させる元素である。しかし、1%以下ではその効果が十分でなく、3%を超えると脆化しやすくなるので、その範囲を1%超〜3%とした。
S:0.2〜0.5%
Sは、介在物MnSを生成する快削元素である。しかし、0.2%未満ではその効果は十分でなく、0.5%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.2〜0.5%とした。
【0011】
Se:0.05〜0.2%
Seは、Sと同様に快削元素であり、MnS中に固溶して、介在物を球状化すると共に、軟化させて快削性を改善する効果がある。しかし、0.05%未満ではその効果は十分でなく、0.2%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.05〜0.2%とした。
Te:0.01〜0.1%
Teは、Sと同様に快削元素であり、介在物の球状化に極めて大きな効果を有する。しかし、0.01%未満ではその効果は十分でなく、0.1%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.01〜0.1%とした。
【0012】
O:0.005%超〜0.02%
Oは、硫化物系介在物の熱間変形能を下げ球状化に寄与し被削性を改善させる。しかし、0.005%以下ではその効果が十分でなく、0.02%を超えると不要な酸化物が増加するので、その範囲を0.005%超〜0.02%とした。
Pb:0.005〜0.3%
Pbは、低融点金属であり、切削加工中に溶融して潤滑効果を発揮する快削元素である。しかし、0.005%未満ではその効果は十分でなく、0.3%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.005〜0.3%とした。
【0013】
Bi:0.005〜0.3%
Biは、Pbと同様の効果を有する快削元素である。しかし、0.005%未満ではその効果は十分でなく、0.3%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.005〜0.3%とした。
Sn:0.005〜0.3%
Snは、Pbと同様の低融点金属での快削元素である。しかし、0.005%未満ではその効果は十分でなく、0.3%を超えると熱間加工性を劣化させるので、その範囲を0.005〜0.3%とした。
【0014】
Ca:0.001〜0.01%
Caは、酸化物を低融点化させて被削性を改善する快削元素である。しかし、0.001%未満ではその効果は十分でなく、0.01%を超えると効果が飽和することから、その範囲を0.001〜0.01%とした。
Al:0.0001〜0.02%
Alは、強力な脱酸元素であり、O量の適正コントロールに有用である。しかし、0.0001%未満ではその効果は十分でなく、0.02%を超えると硬質酸化物が被削性を悪化させることから、その範囲を0.0001〜0.02%とした。
【0015】
Mg:0.0001〜0.01%
Mgは、強力な脱酸元素である。しかし、0.0001%未満ではその効果は十分でなく、0.01%を超えると硬質酸化物が被削性を悪化させることから、その範囲を0.0001〜0.01%とした。
B:0.0001〜0.01%
Bは、熱間加工性を向上させる元素である。しかし、0.0001%未満ではその効果は十分でなく、また、0.01%を超えると逆に熱間加工性が悪化することから、その範囲を0.0001〜0.01%とした。
【0016】
Ni:0.01〜2%
Niは、耐食性を向上させる元素である。しかし、0.01%未満ではその効果が十分でなく、2%を超すと被削性を悪化させることから、その範囲を0.01〜2%とした。
Cu:0.01〜2%
Cuは、耐食性や冷間加工性を改善する元素である。しかし、0.01%未満ではその効果が十分でなく、2%を超すと熱間加工性を悪化させることから、その範囲を0.01〜2%とした。
【0017】
N:0.005〜0.1%
Nは、強度上昇に役立つ元素である。しかし、0.005%未満ではその効果が十分でなく、0.1%を超すと靱性を悪化させることから、その範囲を0.005〜0.1%とした。
Ti:0.02〜1%
Tiは、炭窒化物生成により耐食性を向上させる。しかし、0.02%未満ではその効果が十分でなく、1%を超すとその効果が飽和することから、その範囲を0.02〜1%とした。
【0018】
Nb:0.02〜1%
Nbは、Tiと同様に、炭窒化物生成により耐食性を向上させる。しかし、0.02%未満ではその効果が十分でなく、1%を超すとその効果が飽和することから、その範囲を0.02〜1%とした。
V:0.02〜1%
Vは、Tiと同様に、炭窒化物生成により耐食性を向上させる。しかし、0.02%未満ではその効果が十分でなく、1%を超すとその効果が飽和することから、その範囲を0.02〜1%とした。
W:0.02〜1%
Wは、Tiと同様に、炭窒化物生成により耐食性を向上させる。しかし、0.02%未満ではその効果が十分でなく、1%を超すとその効果が飽和することから、その範囲を0.02〜1%とした。
【0019】
次に、本発明の特徴とするS,Se,Teを一定の割合で複合添加したときの効果について説明する。S,Se,Teは、鋼中への溶解度が小さく、MnとMn(S,Se,Te)の介在物を生成する。通常SUS430Fなどの快削鋼で利用される介在物はMnSだが、Seの添加により、介在物が軟らかくなると共に介在物の球状化効果が高まり、細径材でも優れた被削性を保つ。さらに、Teを添加することで、介在物の球状化による被削性改善効果が大幅に上昇する。また、Mn/(S+Se+Te)>4の条件を満たすことによって、介在物がMn(S,Se,Te)組成になり、介在物を硬化させるCrの含有を抑制させることが出来る。
【0020】
Mn/(S+0.4Se+0.25Te)比:4超
Mn/(S+0.4Se+0.25Te)比を4超としたのは、介在物が、Mn(S,Se,Te)組成になり、介在物を硬化させるCrを含有させるのを抑制するためである。しかし、4以下ではその効果が十分でないことから、その下限を4超とした。
Se/S比:0.2〜0.8
Seは、介在物の軟化および球状化に効果がある。Se/S比が0.2以上で有効である。しかし、0.8を超えてもその効果は飽和することから、その範囲を0.2〜0.8とした。
【0021】
【実施例】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
真空誘導溶解炉で100kg鋼塊を溶製し、表1に示す化学成分を有する鋼を所定の寸法の棒鋼に鍛伸し、焼なまし後各種試験に供した。その結果を表2に示す。表2に示す(1)硫化物系介在物形状は、φ20mm棒鋼の鍛伸方向に平行な面の硫化物系介在物の形状を画像解析装置にて測定した。解析項目は介在物アスペクト比(長/短径)とした。(2)硫化物硬さについては、φ60mm焼なまし材の介在物に荷重5gで四角錐圧痕を打ち、その対角線径を測定した。(3)被削性(超硬工具摩耗)については、φ60mm棒鋼の長手方向に超硬工具を用い旋削し(周速200m/min、切込み1.0mm、送り0.2mm/rev、切削油なし)、10min旋削後の逃げ面の工具摩耗を測定した。
【0022】
(4)被削性(精密加工性)については、焼なまし後φ24×L150に加工し、サーメット工具を用いて繰り返し切削プログラムにより長手方向に階段状に旋削加工し、一定切削距離切削時(1600mおよび3400m)の外径寸法を測定した。測定した外径寸法から、次の式で寸法変化率を求めた。すなわち、この値が小さいほど寸法変化が小さく、切削加工時の負荷が少なくなることを示している。
寸法変化率=(NCプログラム上の刃先移動量−被削材の寸法変化)mm/切削距離m
工具:サーメット、0.1R、切込:0.1mm、送り:0.05mm/rev、周速:150m/min、クーラント:水溶性(エマルジョンタイプ)
さらに、(5)耐食性については、φ12mm×L21mmの棒状試験片について、90%RHで(20←→70)℃×20回のサイクル中に放置し、表面の発錆状態を調査した。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
表2に示すように、No.1〜12は本発明であり、No.13〜19は比較例である。比較例No.13はS添加量が少ないために、被削性が劣る。比較例No.14はMn量が低く、αが低いために、硫化物硬さが大きく、被削性に劣る。比較例No.15はSeが添加されていないために、被削性が劣る。比較例No.16はSeの添加量が少ないために、被削性が劣る。比較例No.17はTeが添加されていないために、被削性が劣る。比較例No.18はO含有量が少ないために、被削性がやや劣る。比較例No.19はSUS430Fであり、Mo添加量が低く、かつSe、Teが添加されていないために、耐食性が十分でなく、かつ被削性がやや劣る。これに対し、本発明であるNo.1〜12はいずれの特性にも優れていることが判る。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、S、Se、Teを適度なバランスで同時に添加し、かつMnをMn/(S+Se+Te)比を4超に制御することにより、介在物がMn(S,Se,Te)組成になり、低硬さで球状となり、極めて被削性に優れ、精密加工に好適な快削ステンレス鋼を得ることが出来た。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.1%以下、
Si:0.2〜0.6%、
Mn:1%超〜3%、
Cr:16〜25%、
Mo:1%超〜3%、
S:0.2〜0.5%、
Se:0.05〜0.2%、
Te:0.01〜0.1%、
O:0.005%超〜0.02%
を含有し、かつ、
Mn/(S+0.4Se+0.25Te)比:4超、
Se/S比:0.2〜0.8、
残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。 - 請求項1に加えて、
Pb:0.005〜0.3%、
Bi:0.005〜0.3%、
Sn:0.005〜0.3%、
Ca:0.001〜0.01%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。 - 請求項1または2に加えて、
Al:0.0001〜0.02%、
Mg:0.0001〜0.01%、
B:0.0001〜0.01%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。 - 請求項1〜3に加えて、
Ni:0.01〜2%、
Cu:0.01〜2%、
N:0.005〜0.1%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。 - 請求項1〜4に加えて、
Ti:0.02〜1%、
Nb:0.02〜1%、
V:0.02〜1%、
W:0.02〜1%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする精密加工性に優れた快削ステンレス鋼。
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