JP2004122301A - 噴霧潤滑排気用濾過装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】排気の処理容器内に第1電極ユニット6と第2電極ユニット7とをシリーズに配設する。排気に残存する油の微粒子が第1電極ユニットを通過する間に負電極に帯電させ、続いて第2電極ユニットの正電極12,15に吸着させる。この正電極は導電部材を基材として多孔性を付与して枠体に作り基材表面には光触媒被膜が形成されている。正電極に吸着された油の微粒子13に向けて紫外線を放射する照射ユニットには一個以上のランプ16が含まれている。この照射ユニットと第1,第2の電極ユニットに給電する電源ユニット9とを含んで噴霧潤滑排気用濾過装置を構成する。
【選択図】 図2
Description
【産業上の利用分野】
本発明は産業機械の主要軸受部の潤滑に使用され、排出された使用済潤滑油の処理装置に関するものであり、詳しくは工作機械の主軸軸受部の噴霧潤滑に使用され排出される排気中に含まれる油の微粒子の処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械の高速化に伴い主要回転部分の潤滑に噴霧潤滑方式が多用されている。噴霧潤滑は低粘度潤滑油の油種、タンク油温及び空気圧を一定に管理することにより、供給空気源の圧力と噴霧発生器における油の滴下量に対応した一定量の油霧が発生する。
油霧は絞り弁付分配器を経由して配管され潤滑する軸受部へ運ばれる。その後、運ばれてきたそれぞれの給油個所で必要な給油量に応じたノズル径に絞られ油霧の大部分は粒子の大きい油霧となり軸受部に供給される。
【0003】
油霧の粒子径の増大は、ノズル径を絞ることにより流速が高まり、粒子の小さい油霧を軸受転動面に衝突させることにより行われる。工作機械の主軸回転部は、潤滑油供給量の変化による温度上昇を避けるため、専用の噴霧潤滑機器を配備することが多い。噴霧潤滑の場合は軸受部に供給された油霧の全量が潤滑油として供されるわけではない。また、噴霧発生器に供給する空気圧を高めると発生する油霧の粒子径は小さくなる。この状態の油霧は配管の内壁に付着することが少ないので長い配管で給油個所まで運ぶ場合に都合が良い。しかし、最終の給油位置で管径を絞っても径の大きい油霧を形成する効率は悪くなる。
【0004】
噴霧潤滑方式を採用して、高速回転軸受部を潤滑する従来技術にあっては、潤滑に使用された後の排気は、多くの場合そのまま室内に放出されているのが現状である。排気中には液化して潤滑に使用されなかった油霧が残存している。
室内に浮遊して作業環境を悪化させる油霧の回収は、専用のダクトを設けて吸引し特設した静電気式空気清浄機で処理し、油のドレンとして回収する方法が産業界で広く実施されている。
なお、工作機械の主軸軸受部に直結して使用する噴霧潤滑排気中の油霧を無害化処理する装置に関する先行技術文献は発見していなことを付記する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術で述べた噴霧潤滑を採用すると、高速回転軸の軸受部に軸受形態に応じ最適な油量を供給することが可能である。しかし、配管を経由して運搬した油霧の全量が粒の大きい油霧若しくは油滴となって軸受部に付着供給されるわけではない。油霧は軸受部へ気流で運ばれるので軸受に付着しなかった微粒子を含んだまま油霧を運んだ空気は軸受部に設けられた排気口から常時工場空間に排出されている。油の微粒子は噴霧発生器の空気圧が高いほど増加する。排出された油の微粒子は機械周辺で浮遊し作業環境も悪化させるという問題を生じている。
【0006】
また、機械周辺の環境悪化を防ぐため静電気式空気清浄機が導入され油の微粒子を静電気を多用して捕獲しドレンとして回収する方法が使用されているが作業環境の全域にその効果を及ぼすのは容易ではないという問題があった。
また、分離した油分を集め別の場所で廃棄物として焼却処理する場合はその処理費用が嵩み二次的な環境負荷が生ずるという問題があった。
【0007】
本発明は従来技術の有するこのような問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、従来技術で述べたように油のドレンとして回収する方法ではなく別の原理に基づき解決するものである。
本発明は、排気中に含まれる油霧を本機上の排気出口に接続した処理装置で第1電極ユニットと第2電極ユニットを直列に配し油霧を効率よく電極に吸着させ、吸着して形成された油膜に対する光触媒被膜と紫外線との効果的な作用により水と炭酸ガスに変換して無害なものにする噴霧潤滑排気用濾過装置の提供である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の噴霧潤滑排気用濾過装置は、工作機械の主軸軸受部を噴霧潤滑し回収した排気を処理する排気用濾過装置であって、前記排気を処理する容器内の入口側に設けられ流入し浮遊する油の微粒子に電荷を付与する第1電極ユニットと、表面に光触媒被膜を折出させた電極部材で形成した枠体を電極とし前記微粒子を異性の電極に吸着させる第2電極ユニットと、前記枠体に吸着された前記微粒子に向けて紫外線を放射する一個以上のランプが設けられた照射ユニットと、該照射ユニットと前記第1電極ユニット及び前記第2電極ユニットとに給電する電源ユニットとを含んでなり、電極ユニットへの給電で枠体に吸着された油微粒子に紫外線を照射して油を分解するものである。
【0009】
請求項1の発明によれば、回収した排気に含まれる油の微粒子に例えば第1電極ユニットの高圧電極間を通して電荷を帯電させ、この微粒子を光触媒被膜が被覆され、かつ異性の電位に荷電された電極を設けた第2電極ユニットで効率よく吸着させ、これに紫外線を照射して油膜を無害な水と炭酸ガスに分解させるものである。
【0010】
請求項2に記載の噴霧潤滑排気用濾過装置は、前記電極部材を不織布で形成した照射される紫外線の受光面積を拡大したものである。
請求項2の発明によれば、光触媒被膜に吸着される油霧の油膜を薄く形成するように、かつ照射する紫外線が集塵壁の内部に達して油の分解能力を高めることができるように電極部材を導電性の金属又はカーボンの繊維またはウイスカーを相互に絡むように係合させて不織布状に形成したものである。油霧が吸着された後の排気は電極部材の隙間を通過し作業環境を殆ど汚染しない程度の空気となって大気中に放出される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様を図面にもとづいて説明する。
図1は主軸ユニットの軸受部を潤滑する油霧が排出されるまでの流路説明図、図2は排気中に残存する油の微粒子を水と炭酸ガスに分解する噴霧潤滑排気用濾過装置の構成説明図、図3は図2のAA断面視図である。
【0012】
本発明に係る噴霧潤滑排気用濾過装置の説明に先立ち主軸ユニットについて説明する。
図1において、噴霧発生器1には給気口1aから高圧空気が供給され、給油口1bには潤滑油タンク2から潤滑油が供給される。噴霧発生器1で作られた油霧は主軸3を支承する軸受4へ送り込まれる。油霧の流路は分岐して配設され前後の軸受部にそれぞれ供給される。噴霧発生器1では油の粒子の大きさは不揃いであり、供給される空気圧が高いと油霧の粒子は細かく、管路の壁面に付着しないので搬送されやすい。給油個所でノズルを絞ったときは径のやや大きい油霧となり油滴化されやすい。
【0013】
主軸ユニットの軸受4を通過する油霧は衝突により油滴化され軸受面に油膜を形成するのに使用される。油滴化されなかった油霧は排気中に残り配管5を経て噴霧潤滑排気用濾過装置へ運ばれる。噴霧潤滑排気用濾過装置において、第1電極ユニット6は円筒又は方形等の容器10の入口側に、高圧(例えば50〜100kv)に荷電され、排気の流動方向に直交する電界が形成されるように例えば負電極11と正電極12が配置されている。両電極間に形成される電界11aの作用を受け油霧の微粒子13は負電位に帯電して第2電極ユニット7の方向に移動する。負電位に帯電した微粒子13は正電極12に達する前に排気流に乗って第1電極ユニットより高電位に荷電された第2電極ユニット7の方向に飛散する。なお、本実施例は負コロナ放電方式を採用した電極構成について説明している。
前記第1電極ユニット6の電極間では負コロナ放電させて油霧の微粒子13を負に帯電させているが電極の極性を逆にして正コロナ放電させることにより微粒子13を正に帯電させることも可能である。正コロナ放電の場合は第2電極ユニット7の極性を逆にする必要がある。
【0014】
照射ユニット8は第2電極ユニット7の正電極15に対して構成されている。中心部分には負の電極14が設けられ、円筒形容器10の内壁には多孔質電極部材で構成した正電極15が設けられており飛散する微粒子13をクーロン力で吸着させることができる。多孔質電極部材は例えばスポンジ状の金属チタン、カーボン等の導電性のある材料が使用される。更に、多孔質性を高めるために繊維状の金属チタンやカーボンを不織布状に形成して用いることができる。
【0015】
図3において、負電極14の外側の正電極15に向けて、紫外線を放射するランプ16が複数本設けられている。光源のランプ16は、波長が330〜370mmの紫外線を放射するドーナツ状若しくは棒状のいずれの形状のランプでも良い。要するに、多量の紫外線を照射可能にランプ16は配設されている。ランプ16にはキセノンランプ,ブラックランプ,高圧水銀灯等が使用される。紫外線を受光する正電極15は油の微粒子13を多く吸着可能なように多孔質若しくは不織布状に構成されている。このように正電極15を多孔質若しくは不織布構成とすることにより、紫外線の照射方向の多様化と相まって、影となる部分が少なくなり照射域の拡大が可能となる。また、リング状にランプ16を配置し反射板17をそれぞれのランプ16に付設することにより照射効果の向上が期待できる。
【0016】
円筒形状の正電極15の基底面15aも多孔質若しくは不織布で構成されているので通気は容易である。負に帯電した微粒子13が正電極15に光触媒物質18と共に吸着された後の空気は正電極15の基底面15aの隙間から外部に放出される。紫外線の照射により、油の分解で生成した水と炭酸ガスは空気と共に大気中に放出される。光触媒物質18は、例えばアナターゼ型の酸化チタンTiO2 が使用され、膜厚さは500nm以上に形成されている。
【0017】
電源ユニット8は、第1電極ユニット6と第2電極ユニットに電界を発生させるための高圧電源を供給するとともに、照射ユニット7の紫外線19を放射するランプ16に電力を供給する。なお、紫外線19の照射により光触媒物質18、例えば白金で活性化された酸化チタンが吸着した油の微粒子13を分解させる場合において、機械の稼働停止により軸受ユニットへの油霧の供給が停止され、新たに正電極15に油の微粒子13が吸着されなくなった後も、紫外線19の照射を続行して油の分解できるように、電源ユニットは継続して作動可能に設計されている。本機休止中も吸着した油の微粒子の分解をも続行させることができるからである。
【0018】
次に本発明の噴霧潤滑排気用濾過装置の作用について説明する。
主軸ユニットの軸受4を潤滑するために軸受の転送面に油膜を形成できる程度、換言すれば金属面を湿らせることができる程度に油霧を微粒子にしておく必要がある。そのため噴霧発生器1で発生させた油膜を軸受4に供給する際に、配管の直径より小さいノズルで油霧の流れを絞って粒状化する方法、若しくは配管の油霧を直接転送面に噴出させる方法がある。いずれの方法を採用する場合であっても、噴霧発生器で生じた油霧をすべて軸受に液化させて供給することはできない。即ち、軸受4を通過する間に油滴化されず金属面に付着しなかった油霧は主軸ユニットから排気中に残留し配管5に排出されてくる。
【0019】
本発明では、この排気を処理し排気中の油分を光触媒の酸化チタンと紫外線とで分解して水と炭酸ガスとして、また、油の微粒子を搬送していた空気は油類の異物を除去して清浄な空気として放出させるものである。軸受潤滑後の排気は、配管5を通り本発明に係る処理装置を内蔵する容器10へと導かれる。排気中に含まれる油の微粒子13は第1電極ユニットを通過する。負電極11と正電極12間は高電位に荷電されており、その間をつなぐ電界の影響を受け微粒子13は負電荷に帯電し排気の流れに沿い下流方向に移動する。
【0020】
第1電極ユニット6につづき直列に設けられた第2電極ユニット7は第1電極ユニットより高電位に荷電されている。第2電極ユニット7の正電極15は円筒型,方形型等の枠体に形成されているので容器10内で浮遊して下流方向に移動する負電荷を帯びた微粒子13は排気流に乗って正電極12に吸引されないでより強いクーロン力で正電極15に吸着される。枠体は多孔質状若しくは不織布状の導電部材で作られ吸着面が立体的に構成されるので油を吸着できる能力は大きい。
【0021】
吸着面には白金で活性化された酸化チタンが折出または被膜が形成されている。このように立体的に構成された吸着面に紫外線を照射することにより、吸着された油膜を分解する能力が向上する。光触媒を用いた酸化や還元の反応速度は遅いのが一般である。そのため光触媒に金属例えば白金等で酸化チタンを処理して活性化するとともに、反応面積を拡大して反応速度を高めるように工夫している。
更に、紫外線を多く照射することがてきるランプの選択も重要であり、ブラックライトより高圧水銀灯は優れた光源である。
【0022】
酸化チタンを光触媒とし紫外線を油膜に照射することにより徐々に油膜は水と炭酸ガスに分解される。光触媒面は油膜が消失し、絶えず新しい油霧を吸着して油膜を形成するように、油の微粒子を吸着するプロセスが繰り返されるので、光触媒面の更新,洗浄等の作業を付加する必要がなく分解機能が劣化することがない。
【0023】
主軸ユニットに油霧として供給される潤滑油量は1g/Hour程度である。この油霧の10〜30%が軸受の潤滑に使用され残りの油霧は排気中に含まれて容器10に送り込まれ分解処理される。本機の休止中も紫外線照射による分解処理を続行させることは可能であり、紫外線の照射能力の増大(ランプ数と照射面積)と照射時間を延長することにより油の分解処理能力を高水準に保持することが可能である。
【0024】
【発明の効果】
本発明の噴霧潤滑排気用濾過装置は上述のとおり構成したので次に記載する効果を奏する。
請求項1に記載の発明は、主軸軸受部から排出された潤滑油の微粒子を含む排気を本機の排気出口に設置された本発明に係る処理装置を通過することにより、浮遊する油の粒子状物質を無害な水と炭酸ガスに変換するので、作業環境を悪化させることがないという効果を有する。
また、回収したドレンを焼却する等の後の廃油処理が必要でないので環境負荷を小さくできる効果を有する。
また、副産物を生じることなく紫外線照射で水と炭酸ガスに分解できるので、本発明の処理装置の清浄等の保全を要せず維持管理は極めて容易であるという効果を有する。
また、専用のダクトや機器を設置することなく排気出口に本発明に係る機器を接続することにより機内で排気中の油霧の処理が可能という効果を有する。
【0025】
請求項2に記載の発明は、油の微粒子を吸着する枠体が、通気性・毛細管現象が期待できるよう、繊維状またはウイスカー状の伝導部材で形成されているので油の微粒子の吸着面積が大きくでき油膜状態で吸着される吸着容量が大きいという効果を有する。
また、紫外線を照射した場合、枠体の内部まで照射可能であり受光面積が大きいので光分解反応が進行させやすい。したがって油霧の分解能力が増大するという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】主軸ユニットの軸受部を潤滑する油霧が排出されるまでの流路説明図である。
【図2】排気中に残存する油の微粒子を分解して水と炭酸ガスに分解する噴霧潤滑排気用濾過装置の構成説明図である。
【図3】図2のAA断面視図である。
【符号の説明】
1 噴霧発生器 2 潤滑油タンク
2 主軸 4 軸受
5 配管 6 第1電極ユニット
7 第2電極ユニット 8 照射ユニット
9 電源ユニット 10 容器
11,14 負電極 12,15 正電極
13 微粒子 16 ランプ
17 反射板 18 光触媒物質
Claims (2)
- 工作機械の主軸軸受部を噴霧潤滑し回収した排気を処理する排気用濾過装置であって、前記排気を処理する容器内の入口側に設けられ流入し浮遊する油の微粒子に電荷を付与する第1電極ユニットと、表面に光触媒被膜を折出させた電極部材で形成した枠体を電極とし前記微粒子を異性の電極に吸着させる第2電極ユニットと、前記枠体に吸着された前記微粒子に向けて紫外線を放射する一個以上のランプが設けられた照射ユニットと、該照射ユニットと前記第1電極ユニット及び前記第2電極ユニットとに給電する電源ユニットとを含んでなり、電極ユニットへの給電で枠体に吸着された油微粒子に紫外線を照射して油を分解することを特徴とする噴霧潤滑排気用濾過装置。
- 前記電極部材を不織布で形成したことを特徴とする請求項1に記載の噴霧潤滑排気用濾過装置。
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