JP2004121169A - 多孔質硫黄、その製造方法及びそれからなる微生物担体 - Google Patents
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Abstract
【課題】その内部を流体が流通することが可能であり、しかも気孔内部の表面積も大きい多孔質硫黄とその製造方法を提供する。
【解決手段】硫黄と溶解性化合物との混合物を加熱溶融してから冷却し、得られた固化物を溶剤に浸漬して溶解性化合物を溶解除去することによって連通孔を形成する方法により、三次元状に不規則に連通した連通孔を有する多孔質硫黄が製造される。該多孔質硫黄は微生物、特に脱窒性硫黄酸化細菌の担体として、各種排水処理施設で好適に使用することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】硫黄と溶解性化合物との混合物を加熱溶融してから冷却し、得られた固化物を溶剤に浸漬して溶解性化合物を溶解除去することによって連通孔を形成する方法により、三次元状に不規則に連通した連通孔を有する多孔質硫黄が製造される。該多孔質硫黄は微生物、特に脱窒性硫黄酸化細菌の担体として、各種排水処理施設で好適に使用することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質硫黄及びその製造方法に関する。また当該多孔質硫黄からなる微生物担体、特に硫黄酸化細菌固定担体に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水や農業排水などを処理して水質浄化する際に、硝酸性窒素を除去する方法として、有機炭素源を水素供与体として微生物によって脱窒する方法が知られている。しかしながら、この場合には処理施設から有機炭素源が流出するのを防止する必要があり、その管理が必ずしも容易ではない。これに対し、硫黄を栄養源とする硫黄酸化細菌を用いて硝酸性窒素を還元して脱窒する方法が提案されている。この方法は脱窒効率が良好であり、前述のような有機炭素源流出の問題も少ない。脱窒にともなって硫酸が生成するが、これは中和すれば放流が可能なものである。
【0003】
以下に示すように、このような硫黄酸化細菌を担持するための、硫黄からなる微生物担体が提案されている。特開2002−119278号公報(特許文献1)には、単体硫黄からなり、表面に短径100μm以下の人工的に形成された担持孔を有する脱窒性硫黄酸化細菌固定担体が記載されている。具体的には、レーザー光を照射して照射部の硫黄を昇華させて担持孔を形成する方法や、鋳型内で溶融した硫黄を徐冷して粗な構造を有する中心部の外露出面に担持孔を形成する方法が記載されている。このような構成にすることによって、硫黄酸化細菌の増殖性と固定性(被処理液と接触し洗い流されてしまうことがない)に優れるとしている。
【0004】
特開平11−285377号公報(特許文献2)には、炭酸カルシウムと硫黄との混合物を加熱溶融してから急冷固化した、微生物活性能付与組成物が記載されている。栄養源としての硫黄に加えて、炭酸カルシウムを含有することで、脱窒にともなって生成する硫酸が中和され、アルカリ、酸のいずれにも傾かず、水域への影響が小さいとしている。
【0005】
また、特開2002−66592号公報(特許文献3)には、炭酸カルシウム粉体と硫黄粉体とのドライコンパウンドを常温下でプレス成形して造粒する硝酸態窒素除去用活性化材の製造方法が記載されている。このとき、脱窒素細菌を多孔質体に担持させて上記ドライコンパウンドに混合する方法も記載されている。
このような方法で製造することにより、脱窒素菌体やその他の微量栄養素を共存させることができ、単位時間あたりの製造量も向上するとされている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−119278号公報
(特許請求の範囲、0025欄)
【特許文献2】
特開平11−285377号公報
(特許請求の範囲、0021欄)
【特許文献3】
特開2002−66592号公報
(特許請求の範囲、0012欄、0013欄)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2002−119278号公報に記載されているような100μm以下の細孔を表面に有する微生物担体では、その細孔内を処理水が流通することが困難であり、結局微生物による処理効率は高くなりにくい。また、レーザー光線で穿孔するにしても、鋳型内で徐冷するにしても、微生物担体の生産効率が低かった。
【0008】
特開平11−285377号公報に記載された微生物担体は、炭酸カルシウムと硫黄との混合物を加熱溶融してから固化したものであるが、炭酸カルシウムは難溶性の塩であるので、水中でそれが溶け出して連通孔を形成するわけではなく、表面に凹凸を形成するに過ぎない。したがって、上記特開2002−119278号公報に記載された発明同様、担体の内部を処理水が流通することは困難である。
【0009】
また、特開2002−66592号公報に記載された方法は、微粉末に高圧をかけてプレス成形するものであり、積極的に連通孔を形成するものではない。しかも単に圧力で固めているだけなので、強度が低く、長期間使用する場合の形態保持性には問題があると考えられる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その内部を流体が通過することが可能な多孔質硫黄及びその製造方法を提供するものである。また、当該多孔質硫黄からなる、微生物担体、特に硫黄酸化細菌を固定するための微生物担体を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、三次元状に不規則に連通した連通孔を有する多孔質硫黄を提供することによって解決される。このとき、見掛気孔率が20%以上であることが好適である。このような多孔質硫黄の好適な実施態様は微生物担体である。
【0012】
また、硫黄と溶解性化合物との混合物を加熱溶融してから冷却し、得られた固化物を溶剤に浸漬して溶解性化合物を溶解除去することによって連通孔を形成する、多孔質硫黄の製造方法を提供することによっても解決される。このとき、前記溶解性化合物が水溶性化合物であって、前記溶剤が水であることが好適である。前記溶解性化合物が、硫黄の融点よりも高い融点を有する粒子からなることも好適である。また、硫黄100重量部に対して前記溶解性化合物を10〜500重量部混合することも好適である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は三次元状に不規則に連通した連通孔を有する多孔質硫黄である。当該多孔質硫黄は、連通孔を有することによって、その内部を流体が通過することが可能である。また、本発明の多孔質硫黄に形成された連通孔は、三次元状に不規則に連通しているものである。三次元上に不規則に連通することによって連通孔内部の流体との接触面積が大きくなる。また、直線的でなく不規則な形状の表面に担持された物質は剥離しにくいので、担持性能にも優れている。
【0014】
このとき、見掛気孔率が20%以上であることが好適である。ここで、見掛気孔率はJIS R2205−74「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・及び比重の測定方法」に準じて測定した値である。多孔質の固体に含まれる気孔には2種類あって外部と連通している「開口気孔」と、内部に封じられていて外部とは連通していない「密封気孔」である。これら2種類の気孔の占める体積に、固体物質の占める体積である「実質部分」の体積を加えたものが、「多孔質全体」の体積を示すことになる。
【0015】
見掛気孔率とは、「開口気孔」の体積が、「多孔質全体」の体積に占める割合を百分率で示した値である。すなわち、外部と連通している気孔の割合を示す指標である。これが20%以上であることによって、多数の連通孔を有し、連通孔内部を流体が通過しやすくなる。また気孔内部の表面積も大きくなる。見掛気孔率は、好適には30%以上、より好適には40%以上である。逆に見掛気孔率が大きくなりすぎると全体の構造を支える硫黄の割合が低下して強度が低下するおそれがあり、その点からは見掛気孔率は80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
【0016】
気孔の寸法は特に限定されるものではなく、その内部を流体が通過することの可能な連通孔が形成されていれば良い。後述の製法で製造した場合には、不規則な連通孔が形成される。連通孔内の広いところで100μm以上の直径を有することが好ましく、より好適には200μm以上の直径を有することが好ましい。
この直径は通常3mm以下である。直径が小さすぎると、内部を流体が通過することが困難な場合があり、逆に直径が大きすぎると気孔内部の表面積が小さくなる。
【0017】
上記構造を有する本発明の多孔質硫黄の用途は特に限定されず、気孔内部を流体が通過でき、しかも気孔内部の表面積が大きい硫黄が有用に使用される用途であれば構わない。なかでも気孔内部に物質を担持させるような用途に適しており、微生物担体として特に適している。対象となる微生物は特に限定されないが、硫黄を栄養源とする硫黄酸化細菌が、担持体そのものを栄養源とすることができて好適である。このような硫黄酸化細菌としては、チオバシルス(Thiobacillus)属、スルフォロバス(Sulfolobus)属、チオバクテリウム(Thiobacterium)属、マクロモナス(Macromonas)属、チオブラム(Thiovulum)属、チオスピラ(Thiospira)属に属する細菌が例示される。
【0018】
中でも、同時に硝酸塩の還元による脱窒の可能な脱窒性硫黄酸化細菌が、その有用性から、最も好適な細菌である。脱窒性硫黄酸化細菌は、硫黄を栄養源として、下水や農業排水中の硝酸イオンを除去できるものであり、排水処理用途において有用なものである。このような脱窒性硫黄酸化細菌としては、チオバシルス・デニトリフィカンス(Thiobacillus denitrificans)が挙げられる。
【0019】
本発明の多孔質硫黄を微生物担体、特に排水処理用の微生物担体として使用する場合には、処理水が内部を流通することができて、微生物が担持された表面と接触する面積が大きくなり、処理効率が向上する。特に、多孔質硫黄中の気孔が三次元上に不規則に連通することによって、連通孔の内表面と処理水との接触面積が大きくなり、微生物担体として使用したときの微生物を担持することの可能な面積が大きくなるとともに、直線的でなく不規則な形状の表面に担持された微生物は剥離しにくいので、担持性能にも優れているものである。微生物が担体表面に付着する場合には、担体表面が粘液などで覆われる場合が多いことから、気孔の直径が小さすぎる場合には、閉塞して、気孔内部を処理液が流通できない場合がある。
【0020】
以下、本発明の多孔質硫黄の製造方法について説明する。本製造方法は、上記形態の多孔質硫黄を製造するのに好適な製造方法であり、硫黄と溶解性化合物との混合物を加熱溶融してから冷却し、得られた固化物を溶剤に浸漬して溶解性化合物を溶解除去することによって連通孔を形成する多孔質硫黄の製造方法である。
【0021】
まず、硫黄と溶解性化合物との混合物を加熱溶融する。原料の硫黄の形態は特に限定されず、粉末状、粒状、塊状あるいはゴム状のものを使用できる。溶解性化合物との均一な混合と言う点からは、粉末状又は粒状の硫黄を用いることが好ましい。加熱によって硫黄は溶融するが、溶解性化合物は溶融していても溶融していなくても構わない。
【0022】
硫黄と混合する溶解性化合物は、溶剤に溶解するものであれば特に限定されず、各種の有機化合物や無機化合物を使用できる。有機化合物としては、低分子化合物を使用しても良いし、高分子化合物を使用しても良い。有機化合物が水溶性の場合には、溶剤として水を使用することができるが、多くの場合、それを溶解することのできる有機溶剤が使用される。これらの有機化合物は、粉末状、粒状で混合されることが好ましい。
【0023】
なかでも、前記溶解性化合物が水溶性化合物であって、前記溶剤が水であることが好ましい。水は扱いやすく、周辺環境に悪影響を与えにくい溶剤だからである。水溶性化合物としては、各種の無機塩や、水溶性有機化合物が挙げられる。
前記水溶性化合物は、室温において100mlの水に1g以上溶解するものであることが好ましく、10g以上溶解するものであることがより好ましい。
【0024】
また、前記溶解性化合物が、硫黄の融点よりも高い融点を有する粒子からなることも好ましい。硫黄が溶融しながら、溶解性化合物が溶融しない温度で加熱することによって、溶解性化合物の粒子の形状に対応した寸法の気孔を形成することができ、気孔寸法の制御が容易になるからである。しかも、溶融硫黄中で溶解性化合物の粒子が相互に接触する点で気孔を連通させることができ、三次元状に不規則に連通した連通孔が容易に形成されるからである。
【0025】
前記溶解性化合物の粒子径は、特に限定されないが、この粒子径によって形成される気孔の寸法が決定される場合が多く、0.1〜3mmであることが好ましい。好適には0.15mm以上であり、より好適には0.2mm以上である。一方、2mm以下であることが好適であり、1mm以下であることがより好適である。ここでいう粒子径は、重量平均値で捉えた場合の平均直径である。
【0026】
溶解性化合物として好適なものは、水溶性の塩である。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫酸塩、アルカリ金属の炭酸塩などが好適なものとして例示される。これらの金属塩は比較的安価であり、しかも周辺環境に排出されても悪影響を及ぼしにくいものだからである。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが例示される。
【0027】
これらの中でも最適なものは塩化ナトリウムである。塩化ナトリウムは安全性が高く、低コストでしかも周辺環境に与える影響がほとんどない。また、粒径100〜1000μm程度の、比較的粒径の揃った粒子を容易に入手できる。さらに、融点が高いので硫黄を溶解させる温度においても結晶の形態を保っているし、立方体の形状をしているので、連通孔の形状が凹凸を有するものになりやすく、担持性能の良好な担体、特に微生物担体を提供することができる。
【0028】
硫黄と前記溶解性化合物を混合する際の配合比は、硫黄100重量部に対して前記溶解性化合物が10〜500重量部であることが好ましい。溶解性化合物の配合量が少なすぎる場合には、連通孔が形成されない場合がある。より好適には硫黄100重量部に対して20重量部以上であり、さらに好適には50重量部以上である。逆に溶解性化合物の配合量が多すぎる場合には、多孔質硫黄の強度が低下することになる。より好適には硫黄100重量部に対して400重量部以下であり、さらに好適には300重量部以下である。
【0029】
硫黄と前記溶解性化合物以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を混合してから加熱溶融することも可能である。例えば、硫黄酸化細菌によって産生される硫酸イオンを中和するためのアルカリ成分を混合しても良い。そのような成分としては水に難溶性のアルカリ性の塩である炭酸カルシウムなどが例示される。また、繊維などからなる補強材を混合することもできる。
【0030】
加熱溶融する方法は特に限定されない。硫黄と溶解性化合物とを予め混合してから硫黄を溶融させても良いし、溶融させた硫黄の中に溶解性化合物を投入して混練しても良い。溶融状態で混練しても良いし、硫黄と溶解性化合物とを予め十分に混合しておいて、溶融時には混練しなくても良い。押出機などで連続的に混練しても良いし、バッチ式で加熱溶融しても良い。
【0031】
加熱温度は、硫黄の融点以上であれば良く、具体的には120℃以上で加熱することが好ましい。より好適には130℃以上で加熱する。一方、加熱温度が高すぎると硫黄が酸化したりするなどの副反応が進行するおそれがあるので、200℃以下で加熱することが好ましく、170℃以下で加熱することがより好ましい。加熱時間は、溶融方法によっても異なり、連続式であれば1〜30分程度、バッチ式であれば10〜120分程度の加熱時間を採用することができる。
【0032】
加熱溶融後に冷却して固化させるが、固化させる方法は限定されない。空気中で放冷しても良いし、水などの冷却材中に投入しても良い。冷却固化後、得られた固化物を溶剤に浸漬して溶解性化合物を溶解除去する。例えば、溶解性化合物が水溶性の塩であれば、水中に浸漬して固化物中の塩を溶出させて除去する。このとき、溶出を促進させるために適宜加熱したり、超音波振動を加えたりすることもできる。また、成形物を溶剤に浸漬する前に、固化物の表面を削り落として、内部の溶解性化合物を積極的に露出させておくことが好ましい。
【0033】
溶解性化合物を溶解除去した後で、溶剤から取り出し、必要に応じて乾燥させることによって、本発明の多孔質硫黄が得られる。得られた多孔質硫黄は、そのまま、あるいは適宜寸法や形状を整えて、各種の用途に使用される。
【0034】
【実施例】
以下、実施例を使用して本発明をさらに詳細に説明する。
【0035】
実施例1
硫黄粉末(ナカライテスク製、試薬1級、200メッシュ)200gと食塩(塩化ナトリウム)200gとを十分に混合し、直径20cm深さ3cmのポリテロラフロロエチレン(「テフロン(登録商標)」)製トレーに均一に充填した。
ここで使用した食塩は、略立方体形状の結晶からなり、その径(この場合は立方体の一辺の長さ)が、150〜600μmのものが全体の重量の約80%を占めるものであった。これを140℃の恒温槽に投入し、40分間恒温槽中に静置した。その後、恒温槽から取り出し、室温の空気中で放冷し固化させた。硫黄が固化したら、水中に投入して固化物の表面をワイヤーブラシで削った。その後水中に3日間放置して、塩化ナトリウムを水中に溶出させた。水中から引き上げて乾燥することで、連通孔を有する多孔質硫黄が得られた。
【0036】
得られた多孔質硫黄は塩化ナトリウム結晶の溶出した跡が相互に連通し、三次元上に連通孔が形成されており、表面から裏面まで容易に空気が通過できるものであった。得られた多孔質硫黄について、JIS R2205−74「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・及び比重の測定方法」に準じて測定し、見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた。その結果を表1にまとめて示す。
【0037】
実施例2
使用した食塩の量を400gにした以外は、実施例1と同様にして多孔質硫黄を作製した。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0038】
実施例3
使用した食塩の量を300gにした以外は、実施例1と同様にして多孔質硫黄を作製した。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0039】
実施例4
使用した食塩の量を120gにした以外は、実施例1と同様にして多孔質硫黄を作製した。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0040】
実施例5
実施例1において、食塩200gを使用する代わりに、硫酸ナトリウム(ナカライテスク製、試薬1級、無水塩)320gを使用する以外は実施例1と同様にして多孔質硫黄を作製した。ここで使用した硫酸ナトリウムは、略球形の粒子からなり、その大半が10〜150メッシュ(0.104〜1.651mm径)のものであった。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0041】
実施例6
実施例1において、食塩200gを使用する代わりに、グラニュー糖(ショ糖)200gを使用する以外は実施例1と同様にして多孔質硫黄を作製した。ここで使用したグラニュー糖は、略直方体形状の結晶からなり、その径が250〜710μmのものが全体の重量の75%以上を占めるものであった。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0042】
実施例7
硫黄粉末(ナカライテスク製、試薬1級、200メッシュ)200gと発泡ポリスチレン(内山化成製、1mm径)20gとを十分に混合し、直径20cm深さ3cmのポリテロラフロロエチレン(「テフロン(登録商標)」)製トレーに均一に充填した。これを145℃の恒温槽に投入し、50分間恒温槽中に静置した。その後、恒温槽から取り出し、室温の空気中で放冷し固化させた。硫黄が固化したら、固化物をジエチルエーテル中に投入し、2日間放置して、ポリスチレンをジエチルエーテル中に溶出させた。ジエチルエーテルから引き上げて乾燥することで、連通孔を有する多孔質硫黄が得られた。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0043】
実施例8
実施例7において、発泡ポリスチレン20gを使用する代わりに、球状ポリウレタン(三洋化成株式会社製、平均粒径0.15mm)20gを使用し、ジエチルエーテルの代わりにジメチルホルムアミドを使用する以外は実施例7と同様にして多孔質硫黄を作製した。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0044】
【表1】
【0045】
以上の結果から示されるように、いずれの実施例においても見掛気孔率が20%以上の多孔質硫黄が得られており、相互に連通した気孔構造を有していることがわかった。このとき、実施例1〜4の結果からわかるように、溶解性化合物の量を増加させることによって見掛気孔率を向上させることができ、用途によって見掛気孔率を調整することが可能である。実施例5で使用した硫酸ナトリウムの見掛気孔率が、塩化ナトリウムを使用した実施例1〜4に比べて低くなっている理由は必ずしも明らかでないが、室温付近での両者の水への溶解度の差が大きくないことを考慮すると、形状の影響によるものと考えられる。すなわち、粒子形状が球形であるよりも立方体形状である方が、隣接する粒子同士が相互に接触しやすく、相互に連通した気孔を形成しやすいと考えられる。また、実施例6〜8に示すように、溶解性化合物として有機化合物を使用することも可能であるし、実施例7及び8に示すように、溶剤として有機溶剤を使用することも可能である。
【0046】
【発明の効果】
本発明の多孔質硫黄は、その内部を流体が通過することが可能であり、しかも気孔内部の表面積が大きいので、各種担持体、特に微生物の担持体として好適に使用される。なかでも、脱窒性硫黄酸化細菌の担体として、各種排水処理施設で使用することが最適である。また、本発明の多孔質硫黄の製造方法によれば、上記多孔質硫黄を容易に製造できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質硫黄及びその製造方法に関する。また当該多孔質硫黄からなる微生物担体、特に硫黄酸化細菌固定担体に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水や農業排水などを処理して水質浄化する際に、硝酸性窒素を除去する方法として、有機炭素源を水素供与体として微生物によって脱窒する方法が知られている。しかしながら、この場合には処理施設から有機炭素源が流出するのを防止する必要があり、その管理が必ずしも容易ではない。これに対し、硫黄を栄養源とする硫黄酸化細菌を用いて硝酸性窒素を還元して脱窒する方法が提案されている。この方法は脱窒効率が良好であり、前述のような有機炭素源流出の問題も少ない。脱窒にともなって硫酸が生成するが、これは中和すれば放流が可能なものである。
【0003】
以下に示すように、このような硫黄酸化細菌を担持するための、硫黄からなる微生物担体が提案されている。特開2002−119278号公報(特許文献1)には、単体硫黄からなり、表面に短径100μm以下の人工的に形成された担持孔を有する脱窒性硫黄酸化細菌固定担体が記載されている。具体的には、レーザー光を照射して照射部の硫黄を昇華させて担持孔を形成する方法や、鋳型内で溶融した硫黄を徐冷して粗な構造を有する中心部の外露出面に担持孔を形成する方法が記載されている。このような構成にすることによって、硫黄酸化細菌の増殖性と固定性(被処理液と接触し洗い流されてしまうことがない)に優れるとしている。
【0004】
特開平11−285377号公報(特許文献2)には、炭酸カルシウムと硫黄との混合物を加熱溶融してから急冷固化した、微生物活性能付与組成物が記載されている。栄養源としての硫黄に加えて、炭酸カルシウムを含有することで、脱窒にともなって生成する硫酸が中和され、アルカリ、酸のいずれにも傾かず、水域への影響が小さいとしている。
【0005】
また、特開2002−66592号公報(特許文献3)には、炭酸カルシウム粉体と硫黄粉体とのドライコンパウンドを常温下でプレス成形して造粒する硝酸態窒素除去用活性化材の製造方法が記載されている。このとき、脱窒素細菌を多孔質体に担持させて上記ドライコンパウンドに混合する方法も記載されている。
このような方法で製造することにより、脱窒素菌体やその他の微量栄養素を共存させることができ、単位時間あたりの製造量も向上するとされている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−119278号公報
(特許請求の範囲、0025欄)
【特許文献2】
特開平11−285377号公報
(特許請求の範囲、0021欄)
【特許文献3】
特開2002−66592号公報
(特許請求の範囲、0012欄、0013欄)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2002−119278号公報に記載されているような100μm以下の細孔を表面に有する微生物担体では、その細孔内を処理水が流通することが困難であり、結局微生物による処理効率は高くなりにくい。また、レーザー光線で穿孔するにしても、鋳型内で徐冷するにしても、微生物担体の生産効率が低かった。
【0008】
特開平11−285377号公報に記載された微生物担体は、炭酸カルシウムと硫黄との混合物を加熱溶融してから固化したものであるが、炭酸カルシウムは難溶性の塩であるので、水中でそれが溶け出して連通孔を形成するわけではなく、表面に凹凸を形成するに過ぎない。したがって、上記特開2002−119278号公報に記載された発明同様、担体の内部を処理水が流通することは困難である。
【0009】
また、特開2002−66592号公報に記載された方法は、微粉末に高圧をかけてプレス成形するものであり、積極的に連通孔を形成するものではない。しかも単に圧力で固めているだけなので、強度が低く、長期間使用する場合の形態保持性には問題があると考えられる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その内部を流体が通過することが可能な多孔質硫黄及びその製造方法を提供するものである。また、当該多孔質硫黄からなる、微生物担体、特に硫黄酸化細菌を固定するための微生物担体を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、三次元状に不規則に連通した連通孔を有する多孔質硫黄を提供することによって解決される。このとき、見掛気孔率が20%以上であることが好適である。このような多孔質硫黄の好適な実施態様は微生物担体である。
【0012】
また、硫黄と溶解性化合物との混合物を加熱溶融してから冷却し、得られた固化物を溶剤に浸漬して溶解性化合物を溶解除去することによって連通孔を形成する、多孔質硫黄の製造方法を提供することによっても解決される。このとき、前記溶解性化合物が水溶性化合物であって、前記溶剤が水であることが好適である。前記溶解性化合物が、硫黄の融点よりも高い融点を有する粒子からなることも好適である。また、硫黄100重量部に対して前記溶解性化合物を10〜500重量部混合することも好適である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は三次元状に不規則に連通した連通孔を有する多孔質硫黄である。当該多孔質硫黄は、連通孔を有することによって、その内部を流体が通過することが可能である。また、本発明の多孔質硫黄に形成された連通孔は、三次元状に不規則に連通しているものである。三次元上に不規則に連通することによって連通孔内部の流体との接触面積が大きくなる。また、直線的でなく不規則な形状の表面に担持された物質は剥離しにくいので、担持性能にも優れている。
【0014】
このとき、見掛気孔率が20%以上であることが好適である。ここで、見掛気孔率はJIS R2205−74「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・及び比重の測定方法」に準じて測定した値である。多孔質の固体に含まれる気孔には2種類あって外部と連通している「開口気孔」と、内部に封じられていて外部とは連通していない「密封気孔」である。これら2種類の気孔の占める体積に、固体物質の占める体積である「実質部分」の体積を加えたものが、「多孔質全体」の体積を示すことになる。
【0015】
見掛気孔率とは、「開口気孔」の体積が、「多孔質全体」の体積に占める割合を百分率で示した値である。すなわち、外部と連通している気孔の割合を示す指標である。これが20%以上であることによって、多数の連通孔を有し、連通孔内部を流体が通過しやすくなる。また気孔内部の表面積も大きくなる。見掛気孔率は、好適には30%以上、より好適には40%以上である。逆に見掛気孔率が大きくなりすぎると全体の構造を支える硫黄の割合が低下して強度が低下するおそれがあり、その点からは見掛気孔率は80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
【0016】
気孔の寸法は特に限定されるものではなく、その内部を流体が通過することの可能な連通孔が形成されていれば良い。後述の製法で製造した場合には、不規則な連通孔が形成される。連通孔内の広いところで100μm以上の直径を有することが好ましく、より好適には200μm以上の直径を有することが好ましい。
この直径は通常3mm以下である。直径が小さすぎると、内部を流体が通過することが困難な場合があり、逆に直径が大きすぎると気孔内部の表面積が小さくなる。
【0017】
上記構造を有する本発明の多孔質硫黄の用途は特に限定されず、気孔内部を流体が通過でき、しかも気孔内部の表面積が大きい硫黄が有用に使用される用途であれば構わない。なかでも気孔内部に物質を担持させるような用途に適しており、微生物担体として特に適している。対象となる微生物は特に限定されないが、硫黄を栄養源とする硫黄酸化細菌が、担持体そのものを栄養源とすることができて好適である。このような硫黄酸化細菌としては、チオバシルス(Thiobacillus)属、スルフォロバス(Sulfolobus)属、チオバクテリウム(Thiobacterium)属、マクロモナス(Macromonas)属、チオブラム(Thiovulum)属、チオスピラ(Thiospira)属に属する細菌が例示される。
【0018】
中でも、同時に硝酸塩の還元による脱窒の可能な脱窒性硫黄酸化細菌が、その有用性から、最も好適な細菌である。脱窒性硫黄酸化細菌は、硫黄を栄養源として、下水や農業排水中の硝酸イオンを除去できるものであり、排水処理用途において有用なものである。このような脱窒性硫黄酸化細菌としては、チオバシルス・デニトリフィカンス(Thiobacillus denitrificans)が挙げられる。
【0019】
本発明の多孔質硫黄を微生物担体、特に排水処理用の微生物担体として使用する場合には、処理水が内部を流通することができて、微生物が担持された表面と接触する面積が大きくなり、処理効率が向上する。特に、多孔質硫黄中の気孔が三次元上に不規則に連通することによって、連通孔の内表面と処理水との接触面積が大きくなり、微生物担体として使用したときの微生物を担持することの可能な面積が大きくなるとともに、直線的でなく不規則な形状の表面に担持された微生物は剥離しにくいので、担持性能にも優れているものである。微生物が担体表面に付着する場合には、担体表面が粘液などで覆われる場合が多いことから、気孔の直径が小さすぎる場合には、閉塞して、気孔内部を処理液が流通できない場合がある。
【0020】
以下、本発明の多孔質硫黄の製造方法について説明する。本製造方法は、上記形態の多孔質硫黄を製造するのに好適な製造方法であり、硫黄と溶解性化合物との混合物を加熱溶融してから冷却し、得られた固化物を溶剤に浸漬して溶解性化合物を溶解除去することによって連通孔を形成する多孔質硫黄の製造方法である。
【0021】
まず、硫黄と溶解性化合物との混合物を加熱溶融する。原料の硫黄の形態は特に限定されず、粉末状、粒状、塊状あるいはゴム状のものを使用できる。溶解性化合物との均一な混合と言う点からは、粉末状又は粒状の硫黄を用いることが好ましい。加熱によって硫黄は溶融するが、溶解性化合物は溶融していても溶融していなくても構わない。
【0022】
硫黄と混合する溶解性化合物は、溶剤に溶解するものであれば特に限定されず、各種の有機化合物や無機化合物を使用できる。有機化合物としては、低分子化合物を使用しても良いし、高分子化合物を使用しても良い。有機化合物が水溶性の場合には、溶剤として水を使用することができるが、多くの場合、それを溶解することのできる有機溶剤が使用される。これらの有機化合物は、粉末状、粒状で混合されることが好ましい。
【0023】
なかでも、前記溶解性化合物が水溶性化合物であって、前記溶剤が水であることが好ましい。水は扱いやすく、周辺環境に悪影響を与えにくい溶剤だからである。水溶性化合物としては、各種の無機塩や、水溶性有機化合物が挙げられる。
前記水溶性化合物は、室温において100mlの水に1g以上溶解するものであることが好ましく、10g以上溶解するものであることがより好ましい。
【0024】
また、前記溶解性化合物が、硫黄の融点よりも高い融点を有する粒子からなることも好ましい。硫黄が溶融しながら、溶解性化合物が溶融しない温度で加熱することによって、溶解性化合物の粒子の形状に対応した寸法の気孔を形成することができ、気孔寸法の制御が容易になるからである。しかも、溶融硫黄中で溶解性化合物の粒子が相互に接触する点で気孔を連通させることができ、三次元状に不規則に連通した連通孔が容易に形成されるからである。
【0025】
前記溶解性化合物の粒子径は、特に限定されないが、この粒子径によって形成される気孔の寸法が決定される場合が多く、0.1〜3mmであることが好ましい。好適には0.15mm以上であり、より好適には0.2mm以上である。一方、2mm以下であることが好適であり、1mm以下であることがより好適である。ここでいう粒子径は、重量平均値で捉えた場合の平均直径である。
【0026】
溶解性化合物として好適なものは、水溶性の塩である。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫酸塩、アルカリ金属の炭酸塩などが好適なものとして例示される。これらの金属塩は比較的安価であり、しかも周辺環境に排出されても悪影響を及ぼしにくいものだからである。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが例示される。
【0027】
これらの中でも最適なものは塩化ナトリウムである。塩化ナトリウムは安全性が高く、低コストでしかも周辺環境に与える影響がほとんどない。また、粒径100〜1000μm程度の、比較的粒径の揃った粒子を容易に入手できる。さらに、融点が高いので硫黄を溶解させる温度においても結晶の形態を保っているし、立方体の形状をしているので、連通孔の形状が凹凸を有するものになりやすく、担持性能の良好な担体、特に微生物担体を提供することができる。
【0028】
硫黄と前記溶解性化合物を混合する際の配合比は、硫黄100重量部に対して前記溶解性化合物が10〜500重量部であることが好ましい。溶解性化合物の配合量が少なすぎる場合には、連通孔が形成されない場合がある。より好適には硫黄100重量部に対して20重量部以上であり、さらに好適には50重量部以上である。逆に溶解性化合物の配合量が多すぎる場合には、多孔質硫黄の強度が低下することになる。より好適には硫黄100重量部に対して400重量部以下であり、さらに好適には300重量部以下である。
【0029】
硫黄と前記溶解性化合物以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を混合してから加熱溶融することも可能である。例えば、硫黄酸化細菌によって産生される硫酸イオンを中和するためのアルカリ成分を混合しても良い。そのような成分としては水に難溶性のアルカリ性の塩である炭酸カルシウムなどが例示される。また、繊維などからなる補強材を混合することもできる。
【0030】
加熱溶融する方法は特に限定されない。硫黄と溶解性化合物とを予め混合してから硫黄を溶融させても良いし、溶融させた硫黄の中に溶解性化合物を投入して混練しても良い。溶融状態で混練しても良いし、硫黄と溶解性化合物とを予め十分に混合しておいて、溶融時には混練しなくても良い。押出機などで連続的に混練しても良いし、バッチ式で加熱溶融しても良い。
【0031】
加熱温度は、硫黄の融点以上であれば良く、具体的には120℃以上で加熱することが好ましい。より好適には130℃以上で加熱する。一方、加熱温度が高すぎると硫黄が酸化したりするなどの副反応が進行するおそれがあるので、200℃以下で加熱することが好ましく、170℃以下で加熱することがより好ましい。加熱時間は、溶融方法によっても異なり、連続式であれば1〜30分程度、バッチ式であれば10〜120分程度の加熱時間を採用することができる。
【0032】
加熱溶融後に冷却して固化させるが、固化させる方法は限定されない。空気中で放冷しても良いし、水などの冷却材中に投入しても良い。冷却固化後、得られた固化物を溶剤に浸漬して溶解性化合物を溶解除去する。例えば、溶解性化合物が水溶性の塩であれば、水中に浸漬して固化物中の塩を溶出させて除去する。このとき、溶出を促進させるために適宜加熱したり、超音波振動を加えたりすることもできる。また、成形物を溶剤に浸漬する前に、固化物の表面を削り落として、内部の溶解性化合物を積極的に露出させておくことが好ましい。
【0033】
溶解性化合物を溶解除去した後で、溶剤から取り出し、必要に応じて乾燥させることによって、本発明の多孔質硫黄が得られる。得られた多孔質硫黄は、そのまま、あるいは適宜寸法や形状を整えて、各種の用途に使用される。
【0034】
【実施例】
以下、実施例を使用して本発明をさらに詳細に説明する。
【0035】
実施例1
硫黄粉末(ナカライテスク製、試薬1級、200メッシュ)200gと食塩(塩化ナトリウム)200gとを十分に混合し、直径20cm深さ3cmのポリテロラフロロエチレン(「テフロン(登録商標)」)製トレーに均一に充填した。
ここで使用した食塩は、略立方体形状の結晶からなり、その径(この場合は立方体の一辺の長さ)が、150〜600μmのものが全体の重量の約80%を占めるものであった。これを140℃の恒温槽に投入し、40分間恒温槽中に静置した。その後、恒温槽から取り出し、室温の空気中で放冷し固化させた。硫黄が固化したら、水中に投入して固化物の表面をワイヤーブラシで削った。その後水中に3日間放置して、塩化ナトリウムを水中に溶出させた。水中から引き上げて乾燥することで、連通孔を有する多孔質硫黄が得られた。
【0036】
得られた多孔質硫黄は塩化ナトリウム結晶の溶出した跡が相互に連通し、三次元上に連通孔が形成されており、表面から裏面まで容易に空気が通過できるものであった。得られた多孔質硫黄について、JIS R2205−74「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・及び比重の測定方法」に準じて測定し、見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた。その結果を表1にまとめて示す。
【0037】
実施例2
使用した食塩の量を400gにした以外は、実施例1と同様にして多孔質硫黄を作製した。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0038】
実施例3
使用した食塩の量を300gにした以外は、実施例1と同様にして多孔質硫黄を作製した。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0039】
実施例4
使用した食塩の量を120gにした以外は、実施例1と同様にして多孔質硫黄を作製した。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0040】
実施例5
実施例1において、食塩200gを使用する代わりに、硫酸ナトリウム(ナカライテスク製、試薬1級、無水塩)320gを使用する以外は実施例1と同様にして多孔質硫黄を作製した。ここで使用した硫酸ナトリウムは、略球形の粒子からなり、その大半が10〜150メッシュ(0.104〜1.651mm径)のものであった。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0041】
実施例6
実施例1において、食塩200gを使用する代わりに、グラニュー糖(ショ糖)200gを使用する以外は実施例1と同様にして多孔質硫黄を作製した。ここで使用したグラニュー糖は、略直方体形状の結晶からなり、その径が250〜710μmのものが全体の重量の75%以上を占めるものであった。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0042】
実施例7
硫黄粉末(ナカライテスク製、試薬1級、200メッシュ)200gと発泡ポリスチレン(内山化成製、1mm径)20gとを十分に混合し、直径20cm深さ3cmのポリテロラフロロエチレン(「テフロン(登録商標)」)製トレーに均一に充填した。これを145℃の恒温槽に投入し、50分間恒温槽中に静置した。その後、恒温槽から取り出し、室温の空気中で放冷し固化させた。硫黄が固化したら、固化物をジエチルエーテル中に投入し、2日間放置して、ポリスチレンをジエチルエーテル中に溶出させた。ジエチルエーテルから引き上げて乾燥することで、連通孔を有する多孔質硫黄が得られた。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0043】
実施例8
実施例7において、発泡ポリスチレン20gを使用する代わりに、球状ポリウレタン(三洋化成株式会社製、平均粒径0.15mm)20gを使用し、ジエチルエーテルの代わりにジメチルホルムアミドを使用する以外は実施例7と同様にして多孔質硫黄を作製した。得られた多孔質硫黄について、実施例1と同様にして見掛気孔率、吸水率、見掛比重及びかさ比重をそれぞれ求めた結果を表1にまとめて示す。
【0044】
【表1】
【0045】
以上の結果から示されるように、いずれの実施例においても見掛気孔率が20%以上の多孔質硫黄が得られており、相互に連通した気孔構造を有していることがわかった。このとき、実施例1〜4の結果からわかるように、溶解性化合物の量を増加させることによって見掛気孔率を向上させることができ、用途によって見掛気孔率を調整することが可能である。実施例5で使用した硫酸ナトリウムの見掛気孔率が、塩化ナトリウムを使用した実施例1〜4に比べて低くなっている理由は必ずしも明らかでないが、室温付近での両者の水への溶解度の差が大きくないことを考慮すると、形状の影響によるものと考えられる。すなわち、粒子形状が球形であるよりも立方体形状である方が、隣接する粒子同士が相互に接触しやすく、相互に連通した気孔を形成しやすいと考えられる。また、実施例6〜8に示すように、溶解性化合物として有機化合物を使用することも可能であるし、実施例7及び8に示すように、溶剤として有機溶剤を使用することも可能である。
【0046】
【発明の効果】
本発明の多孔質硫黄は、その内部を流体が通過することが可能であり、しかも気孔内部の表面積が大きいので、各種担持体、特に微生物の担持体として好適に使用される。なかでも、脱窒性硫黄酸化細菌の担体として、各種排水処理施設で使用することが最適である。また、本発明の多孔質硫黄の製造方法によれば、上記多孔質硫黄を容易に製造できる。
Claims (7)
- 三次元状に不規則に連通した連通孔を有する多孔質硫黄。
- 見掛気孔率が20%以上である請求項1記載の多孔質硫黄。
- 請求項1又は2記載の多孔質硫黄からなる微生物担体。
- 硫黄と溶解性化合物との混合物を加熱溶融してから冷却し、得られた固化物を溶剤に浸漬して溶解性化合物を溶解除去することによって連通孔を形成する多孔質硫黄の製造方法。
- 前記溶解性化合物が水溶性化合物であって、前記溶剤が水である請求項4記載の多孔質硫黄の製造方法。
- 前記溶解性化合物が、硫黄の融点よりも高い融点を有する粒子からなる請求項4又は5記載の多孔質硫黄の製造方法。
- 硫黄100重量部に対して前記溶解性化合物を10〜500重量部混合する請求項4〜6のいずれか記載の多孔質硫黄の製造方法。
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JP2014000493A (ja) * | 2012-06-15 | 2014-01-09 | Maruka:Kk | 硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置 |
JP2016221524A (ja) * | 2016-10-06 | 2016-12-28 | 株式会社 Maruka | 硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置および製造方法 |
CN107324491A (zh) * | 2017-07-06 | 2017-11-07 | 华东理工大学 | 一种多孔材料及其制备方法和应用 |
-
2002
- 2002-10-07 JP JP2002293572A patent/JP2004121169A/ja active Pending
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