JP2004108493A - 変速機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】入力軸23と、該入力軸と連動回転する主軸25と、該主軸より主変速操作で選択した歯車を介して駆動される主変速軸24と、該主軸よりPTO変速操作で選択された歯車を介して駆動されるPTOクラッチ軸29とを備える変速機において、前記主軸25とPTOクラッチ軸29にそれぞれ逆転用の歯車43・63を設け、前記主変速軸24上に前記逆転用の歯車43・63と噛合するカウンター歯車33を設けた。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラクタ等の変速機の技術に関する。
詳細には、トラクタ等の変速機に設けられ、PTO軸への駆動力の伝達・遮断および変速・正逆転切替を行うPTOクラッチ軸の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、トラクタ等の作業車に設けられるPTO軸へ動力を伝達するために、ミッションケース内に配置したPTO変速軸上にPTO変速機を設けた技術は公知となっている。例えば、特開2002−127766号に記載の如くである。
また、図7および図8に示す如く、変速機のミッションケース内にアイドラー軸154およびアイドラー歯車153a・153bを設け、PTO軸を逆転駆動するために、変速機入力軸123、主軸125、アイドラー軸154、PTOクラッチ軸129の順に駆動力を伝達してPTOクラッチ軸129を逆転させる技術も公知となっている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−127766号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、PTO逆転機構であるアイドラー軸154およびアイドラー歯車153a・153bを設けてPTOクラッチ軸129の逆転を行う場合、PTO逆転機構を備えない場合に比べて部品点数が増加し、コスト増大の要因となるとともに、変速機の小型化を行う上での制約となっていた。
本発明は以上の状況に鑑み、部品点数を増加させず、かつ外形寸法に影響しない形でPTO逆転機構を備えた変速機を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、入力軸と、該入力軸と連動回転する主軸と、該主軸より主変速操作で選択した歯車を介して駆動される主変速軸と、該主軸よりPTO変速操作で選択された歯車を介して駆動されるPTOクラッチ軸とを備える変速機であって、
前記主軸とPTOクラッチ軸にそれぞれ逆転用の歯車を設け、前記主変速軸上に前記逆転用の歯車と噛合するカウンター歯車を設けたものである。
【0007】
請求項2においては、前記カウンター歯車を主変速軸上に設ける主変速一速歯車と兼用したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図、図2は本発明の実施例における変速機の断面展開図、図3は本発明の実施例における変速機上部の断面展開図、図4は本発明の実施例における変速機下部の断面展開図、図5はフォーク軸の配置を示す平面図、図6はフォーク軸の配置を示す正面図、図7は従来の変速機の断面展開図、図8は従来の変速機上部の断面展開図、図9はフォーク軸操作機構の別実施例を示す側面図、図10はフォーク軸操作機構の別実施例を示す正面断面図、図11はフォーク軸操作機構の別実施例の要部正面断面図、図12はクラッチハウジング下部の燃料タンクを示す側面断面図、図13はクラッチハウジング下部の燃料タンクを示す後面断面図である。
【0009】
まず、図1を用いて本発明の変速機を備えた走行車両の実施の一形態であるトラクタの全体構成について説明する。なお、以後の説明では、図1および図2に示す矢印Aの方向を「前方」とする。
トラクタ本機の前後に前輪1・1及び後輪2・2が支承され、前部のボンネット6内部にはエンジン5が配置され、該ボンネット6の後方にはステアリングハンドル10が配設されている。前記ステアリングハンドル10の後方には座席11が配設され、該座席11の側部には主変速レバー、副変速レバー、PTO操作レバー等の操作レバーが配設されている。これらステアリングハンドル10や座席11やレバー類等はキャビン12内の運転部に配置されている。
【0010】
また、エンジン5の後部にクラッチハウジング7が配置され、該クラッチハウジング7の後部にミッションケース9が配設され、エンジン5からの動力を後輪2に伝達して駆動し、前輪増速切換機構79(図2に図示)を介して前輪1への駆動力の伝達・遮断を可能としている。
【0011】
また、前記エンジン5の駆動力はミッションケース9後端から突出したPTO軸15に伝達されて、該PTO軸15から図示しないユニバーサルジョイント等を介して車両後端に作業機装着装置を介して装着した作業機等(図示せず)を駆動するように構成している。そして、前記座席11前下方のステップ上にはクラッチを断接操作するためのクラッチペダルとブレーキペダル等が配設されている。
【0012】
次に、動力伝動系の構成について図2、図3および図4を用いて説明する。なお、本実施例においては後述する変速機入力軸23、PTOクラッチ軸29、主軸25、主変速軸24、伝達軸48、副変速軸35、前輪駆動出力軸30などの回転軸群はその長手方向が互いに略平行であり、かつ長手方向がトラクタの前後方向と略一致している。
【0013】
前記クラッチハウジング7(図1に図示)内には多板式の主クラッチ21(図12に図示)が収納され、前記クラッチペダルに連係されている。そして、エンジン5の出力軸(クランク軸)は主クラッチの入力軸と連結されるとともに、主クラッチ21の出力軸21aは車両後方に延出され、変速機入力軸23と連結されるとともに、その後方にPTOクラッチ軸29と同一軸心に配設されている。
【0014】
図2から図6に示す本発明の変速機の実施例は、ミッションケース9内に軸支された回転軸群、および歯車群および歯車の噛合の切り替え手段などで構成されている。
変速機入力軸23はミッションケース9の前部に回転可能に軸支され、変速機入力軸23の後部には伝動歯車64が設けられる。伝動歯車64の後端部は伝動歯車PTO三速歯64aが形成されており、PTOクラッチスライダ93の内周歯と噛合可能に構成される。また、変速機入力軸23の後端面には支持穴64bが穿設され、PTOクラッチ軸29の前端嵌入部29aが支持穴64bにニードルベアリング等を介して遊嵌・支持される。
【0015】
PTOクラッチ軸29には、前方から後方にかけて順に前端嵌入部29a、スプライン部29b、胴体部29c、後端連結部29dが形成されている。
【0016】
前端嵌入部29aは前述した如く変速機入力軸23の後端に遊嵌される。
スプライン部29bの外周面にはスプライン溝が形成される。PTOクラッチスライダ93はスプラインボスとして内周面にスプライン溝(歯)が形成された略円筒形状の部材であり、スプライン部29bに軸方向に摺動可能に遊嵌される。
胴体部29cには前方から順にPTO逆転歯車63、PTO二速歯車62が遊嵌され、続いてPTO軸歯65が外嵌固定される。さらにPTO軸歯65の後方にPTO一速歯車61が遊嵌される。
後端連結部29dの外周面、PTO入力軸66の前端部外周面、および連結部材67の内周面にはスプライン溝が形成され、スプライン嵌合されており、該連結部材67は後端連結部29dおよびPTO入力軸66に噛合する。従って、PTOクラッチ軸29とPTO入力軸66とは一体的に回転可能である。
【0017】
PTO入力軸66は後方に延出されて、その後端部はミッションケース9後部に回転可能に軸支される。また、PTO入力軸66の後部には歯車66aが設けられている。
PTO軸15はミッションケース9後部に回転可能に軸支される。PTO軸15の中途部には前記歯車66aと噛合する歯車68が外嵌固定され、PTO軸15の後端はミッションケース9より突出している。PTO軸15のミッションケース9より突出している部位の外周面にはスプライン溝が形成され、トラクタ後方に連結される作業機に駆動力を伝達可能に構成される。
【0018】
PTO逆転歯車63の前端にはPTO逆転歯63aが形成され、PTOクラッチスライダ93の内周面に形成されたスプライン溝と噛合可能に構成される。PTO二速歯車62の後端にはPTO二速歯62aが形成され、PTOクラッチスライダ94の内周面に形成されたスプライン溝と噛合可能に構成される。PTO軸歯65はその外周面にスプライン溝が形成される。PTOクラッチスライダ94は内周面にスプライン溝が形成された略円筒形状の部材であり、PTO軸歯65に軸方向に摺動可能に遊嵌される。PTO一速歯車61の前端にはPTO一速歯61aが形成され、PTOクラッチスライダ94の内周面に形成されたスプライン溝と噛合可能に構成される。
【0019】
主軸25には、前方から後方にかけて順に前端部25a、伝達歯車43、伝達歯車42、伝達歯車41、後端部25bが形成される。なお、伝達歯車41・42・43は主軸25と一体的に構成しても、別体として外嵌固定してもよい。
【0020】
前端部25aおよび後端部25bは、主軸25をミッションケース9にベアリングを介して回転自在に軸支するための部位である。
伝達歯車44は前記前端部25aと伝達歯車43との間において主軸25に外嵌固定される歯車である。伝達歯車44は前記変速機入力軸23後部の伝動歯車64、および主変速四速歯車34と噛合している。
伝達歯車43は主変速一速歯車33と噛合する。なお、伝達歯車43は逆転歯車も兼ねている。伝達歯車42はPTO二速歯車62および主変速三速歯車32と噛合する。伝達歯車41はPTO一速歯車61および主変速二速歯車31と噛合する。
【0021】
主変速軸24には、前方から後方にかけて順に前端部24a、前胴体部24b、スプライン部24c、後胴体部24d、後端部24eが形成される。
【0022】
前端部24aおよび後端部24eは、主変速軸24をミッションケース9にベアリングを介して回転自在に軸支するための部位である。なお、主変速軸24は前後中途部においてもベアリングを介して壁部に回転自在に支持されている。
【0023】
続いて、前胴体部24bに外嵌固定または遊嵌される部材について、前方から後方に向かって順に説明する。
逆転側歯車27は前胴体部24bの最も前方側に遊嵌される。続いて前後進切換装置57が前胴体部24bに外嵌固定され、正転側歯車26が前胴体部24bに遊嵌される。
逆転側歯車27の後部には逆転側歯車歯27aが形成され、後述する前後進切換装置57のスライド部57aの内周面に形成されたスプラインと噛合可能に構成される。同様に、正転側歯車26の前部には正転側歯車歯26aが形成され、後述する前後進切換装置57のスライド部57aの内周面に形成されたスプラインと噛合可能に構成される。
【0024】
前後進切換装置57は、スライド部57a、基部57bおよびバネ57c等で構成される。基部57bは前胴体部24bに外嵌固定される略円盤形状の部材であり、その外周面にはスプライン加工が施され、同じく内周面にスプライン加工が施されたスライド部57aは基部57bに対して前後方向(軸方向)に摺動可能に噛合している。また、スライド部57aはバネ57cにより前後方向ともに付勢されており、外力が加わらない時は図3に示す如く、逆転側歯車歯27aおよび正転側歯車歯26aのいずれとも噛合しない位置(中立位置)にあるように構成されている。なお、逆転側歯車歯27aおよび正転側歯車歯26aとスライド部57aの間にはそれぞれシンクロナイザリングが介装されてシンクロメッシュ式の切換装置としている。
【0025】
本実施例のトラクタにおいては、キャビン12内のステアリングハンドル10近傍に設けられたリバーサレバー(前後進切換レバー、図示せず)を操作することにより前後進切換装置57のスライド部57aが前方または後方に摺動した位置および中立位置の三つのポジジョンを取ることが可能に構成されている。
【0026】
スライド部57aが前方に摺動した位置では、前後進切換装置57の基部57bと逆転側歯車27の逆転側歯車歯27aとが同時にスライド部57aに噛合し、逆転側歯車27に駆動力が伝達される。
スライド部57aが後方に摺動した位置では、前後進切換装置57の基部57bと正転側歯車26の正転側歯車歯26aとが同時にスライド部57aに噛合し、正転側歯車26に駆動力が伝達される。
スライド部57aが中立位置では、前後進切換装置57のスライド部57aは逆転側歯車歯27aおよび正転側歯車歯26aのいずれとも噛合せず、主変速軸24から伝達軸48へ駆動力は伝達されない。
【0027】
前胴体部24bに遊嵌された正転側歯車26の後方には、主変速軸24をミッションケース9に軸支するための軸受けが外嵌され、さらにその後方に主変速四速歯車34が遊嵌される。主変速四速歯車34の後部には主変速四速歯34aが形成され、主変速クラッチスライダ52の内周面に形成されたスプライン溝と噛合可能に構成される。
【0028】
スプライン部24cの外周面にはスプライン溝が形成される。主変速クラッチスライダ52は内周面にスプライン溝が形成された略円筒形状の部材であり、スプライン部24cに軸方向に摺動可能に遊嵌される。
【0029】
後胴体部24dには、前方から後方にかけて順に主変速一速歯車33、主変速三速歯車32が遊嵌され、続いて主変速軸歯69が外嵌固定される。主変速軸歯69の後方ではさらに主変速二速歯車31が後胴体部24dに遊嵌される。
【0030】
主変速一速歯車33の前端には主変速一速歯33aが形成され、主変速クラッチスライダ52の内周面に形成されたスプラインと噛合可能に構成される。主変速三速歯車32の後端には主変速三速歯32aが形成され、主変速クラッチスライダ51の内周面に形成されたスプラインと噛合可能に構成される。主変速軸歯69はその外周面にスプライン溝が形成される。主変速クラッチスライダ51は内周面にスプライン溝が形成された略円筒形状の部材であり、主変速軸歯69に軸方向に摺動可能に遊嵌される。主変速二速歯車31の前端には主変速二速歯31aが形成され、主変速クラッチスライダ51の内周面に形成されたスプラインと噛合可能に構成される。
【0031】
主変速四速歯車34は伝達歯車44と噛合する。主変速一速歯車33はカウンター歯車を兼ねており伝達歯車43およびPTO逆転歯車63と噛合する。主変速三速歯車32は伝達歯車42と噛合する。主変速二速歯車31は伝達歯車41と噛合する。
【0032】
続いて、伝達軸48よりも下流側の動力伝動系の構成について、図2、図3および図4を用いて説明する。
【0033】
伝達軸48には、前方から後方にかけて順に前端部48a、胴体部48b、後端部48cが形成される。
前端部48aおよび後端部48bは、伝達軸48をミッションケース9にベアリングを介して回転自在に軸支するための部位である。
胴体部48bには前方から後方にかけて順に歯車47、歯車45が外嵌固定され、続いて歯車46が形成される。
【0034】
歯車47はカウンタ軸38に遊嵌されたカウンタ歯車39に噛合する。カウンタ歯車39は前述の逆転側歯車27とも噛合している。一方、歯車45は正転側歯車26と噛合している。
【0035】
従って、前述の前後進切換装置57を操作して、前後進切換装置57と逆転側歯車27とが駆動力伝達可能となると、主変速軸24と伝達軸48とは軸方向から見て同方向に回転する。
一方、前後進切換装置57を操作して、前後進切換装置57と正転側歯車26とが駆動力伝達可能となると、主変速軸24と伝達軸48とは軸方向から見て互いに逆方向に回転する。
すなわち、前後進切換装置57を操作することにより、伝達軸48より下流側の駆動力伝達経路の回転方向を正逆切替可能である。
【0036】
副変速軸35は前後端にてミッションケースにベアリングを介して回転自在に軸支される。また副変速軸35には前方から後方にかけて順に、歯車59、副変速シフタ92、歯車49、歯車19、傘歯車20が配置される。
【0037】
歯車59は副変速軸35に遊嵌され、歯車45と噛合している。また歯車59の後端部には噛合歯59aが設けられ、後述の副変速シフタ92の前端部である副変速二速歯92aと噛合可能に構成される。
【0038】
副変速シフタ92はその外周面には副変速一速歯92bが設けられるとともに、前端部には副変速二速歯92aが形成される。また、副変速シフタ92は副変速軸35にスプライン嵌合し、軸方向(前後方向)に摺動可能である。
【0039】
副変速シフタ92は副変速レバー(図示せず)によって操作され、▲1▼副変速シフタ92の前部に形成された副変速二速歯92aと、前記歯車59の後部に形成された噛合歯59aとが噛合する状態(副変速二速)と、▲2▼副変速シフタ92に設けられた副変速一速歯92bと、伝達軸48に形成された歯車46とが噛合する状態(副変速一速)と、▲3▼副変速シフタ92が歯車59および歯車46のいずれとも噛合せず、回転駆動力が伝達されない状態(副変速中立)と、▲4▼副変速シフタ92の副変速一速歯92bと後述する歯車87bとが噛合する状態(クリープ速)、の計四種類の状態に切換可能である。そして、副変速シフタ92の摺動に基づく選択により、伝達軸48の回転駆動力が三段(副変速一速、副変速二速、クリープ速)の変速を経て出力され、副変速軸35に入力される。
【0040】
歯車49は副変速軸35に外嵌固定され、増速駆動入力歯車60と噛合している。歯車19は同じく副変速軸35に外嵌固定され、標準駆動入力歯車50と噛合している。
【0041】
傘歯車20は副変速軸35の最後端に形設され、ミッションケース9後部に配置される後輪デフ装置(図示せず)に前記副変速軸35の回転駆動力を伝達し、リアアクスルケース内の車軸、伝達歯車等を経由して後輪2・2を駆動する。
【0042】
前輪駆動出力軸30はミッションケース9の前下部に、変速機入力軸23や主変速軸24やPTO軸15等と平行に前後方向にベアリングを介して回転自在に支持され、前輪駆動出力軸30の前端はミッションケース9より前方に突出される。
【0043】
また、前輪駆動出力軸30上には標準駆動入力歯車50および増速駆動入力歯車60がそれぞれベアリングを介して遊嵌され、該標準駆動入力歯車50および増速駆動入力歯車60と、前輪駆動出力軸30との間にはそれぞれ爪式クラッチ97と摩擦式クラッチ95が配置され、該爪式クラッチ97と摩擦式クラッチ95はそれぞれ油圧アクチュエータにより断接されるように構成されている。
【0044】
すなわち、これらの標準駆動入力歯車50と増速駆動入力歯車60との間にクラッチケースとなるシリンダ80が前輪駆動出力軸30に外嵌固定され、該シリンダ80には、標準駆動入力歯車50側には四駆クラッチピストン81が摺動可能に内挿され、増速駆動入力歯車60側には増速クラッチピストン82が摺動可能に内挿されて油圧アクチュエータが形成されている。これらの部材から前輪増速切換機構79が構成される。
【0045】
前輪増速切換機構79を作動させない標準時においては、標準駆動入力歯車50とシリンダ80との間に介装された爪式クラッチ97が繋がった状態となり、副変速軸35の回転駆動力は前輪駆動出力軸30に伝達され、前輪駆動出力軸30の前端に連結する前輪伝達軸、ユニバーサルジョイント、前輪側のデフ装置、フロントアクスルケース内の車軸、伝達歯車等を介して前輪1・1が回転駆動される。
【0046】
また、ステアリングハンドル10を設定角度以上回転させたときに、前輪増速とする場合には、前輪増速切換機構79の四駆クラッチピストン81と増速クラッチピストン82が同時に摺動されて、増速駆動入力歯車60とシリンダ80との間に介装された摩擦式クラッチ95が繋がり、標準駆動入力歯車50と爪式クラッチ97の咬合が外れて、副変速軸35の回転駆動力は前輪駆動出力軸30に伝達され、前輪駆動出力軸30の前端に連結する前輪伝達軸、ユニバーサルジョイント、前輪側のデフ装置、フロントアクスルケース内の車軸、伝達歯車等を介して前輪1・1が増速回転駆動される。
つまり、増速駆動入力歯車60の歯数は標準駆動入力歯車50の歯数よりも小さく、歯車49の歯数は歯車19の歯数よりも大きいので、副変速軸35の回転数が同じである場合、前輪1・1の回転速度を大きくすることが可能である。
【0047】
また、ミッションケース9に回転可能に軸支されたクリープ第一軸84には二枚の歯車である歯車84・85がそれぞれ外嵌固定および形設されており、該歯車84は前記歯車46と噛合している。同様に、ミッションケース9にその両端が軸支されたクリープ第二軸86には大小二枚の歯車である大歯車87a・小歯車87bを盤面で重ね合わせた形状の歯車87が遊嵌されている。大歯車87aは歯車85と噛合し、小歯車87bは前記副変速シフタ92が最も後方に摺動したときに副変速シフタ92の副変速一速歯92bと噛合するよう構成される。
【0048】
続いて、本実施例の動力伝動系におけるPTO軸15への駆動力の伝達・遮断方法および回転駆動方向の切り替え方法について図3、図5および図6を用いて説明する。
【0049】
PTOクラッチスライダ93・94は、PTO軸15への駆動力の伝達・遮断および変速・正逆回転の切り替えを行うためのものである。該PTOクラッチスライダ93・94はいずれも略筒形状の部材であり、その内周面にはスプラインが施され、PTOクラッチ軸29の軸方向(前後方法)に摺動可能であるとともに、その外周面にはリング状の溝が形成される。
【0050】
図5および図6に示すように、PTOフォーク軸70はミッションケース9の前後方向に摺動可能に軸支される。PTOフォーク軸70はPTOクラッチスライダ93・94を前後方向に摺動させるための部材である。
【0051】
PTOフォーク軸70の中途部には、正面視略C型のフォーク70a・70bが外嵌固定される。フォーク70aはPTOクラッチスライダ93の外周面に設けられたリング状の溝に嵌合し、フォーク70bはPTOクラッチスライダ94の外周面に設けられたリング状の溝に嵌合する。また、PTOフォーク軸70はその中途部に切り欠き70cが穿設される。
一方、ミッションケース9の側面よりミッションケース9内に回動軸74が貫装され、回動可能に軸支される。回動軸74のミッションケース9内側の端部にはアーム74aが突設され、該アーム74aの先端部が前記切り欠き70cに嵌合する。回動軸74のミッションケース9外側の端部にはアーム74bが突設され、該アーム74bは種々のリンク機構を介してトラクタのキャビン12内に設けられたPTO操作レバー(図示せず)に連結される。
【0052】
前記PTO操作レバーを操作すると回動軸74が回動し、アーム74aの先端部が切り欠き70cに当接し、PTOフォーク軸70は前後に摺動する。
そして、PTOフォーク軸70が前後に摺動すると、これに連動してPTOクラッチスライダ93・94も前後に摺動するのである。なお、PTOクラッチスライダ93・94は、PTOフォーク軸70に固設されたフォーク70a・70bに嵌合していることから、略等しい間隔を保って摺動する。
【0053】
PTOクラッチスライダ93・94は前後に摺動することにより、前方から後方にかけて順に「PTO三速正転」、「PTO二速正転」、「PTO中立」、「PTO一速正転」、「PTO逆転」、の計五つのポジションをとる。
【0054】
「PTO三速正転」のとき、PTOクラッチスライダ93は、伝動歯車64のPTO三速歯64aと、PTOクラッチ軸29のスプライン部29bの両方に噛合する。PTOクラッチスライダ94は、PTO二速歯車62のPTO二速歯62aと噛合する。
【0055】
従って、「PTO三速正転」のとき、変速機入力軸23の回転駆動力は変速機入力軸23→PTOクラッチスライダ93→PTOクラッチ軸29の順にPTOクラッチ軸29に伝達される。このときの変速機入力軸23とPTOクラッチ軸29の回転方向は同方向であり、回転速度は等しい。
【0056】
「PTO二速正転」のとき、PTOクラッチスライダ93は、伝動歯車64のPTO三速歯64aと噛合せず、PTOクラッチ軸29のスプライン部29bと噛合する。PTOクラッチスライダ94は、PTO二速歯車62のPTO二速歯62aと、PTO軸歯65の両方と噛合する。
【0057】
従って、「PTO二速正転」のとき、変速機入力軸23の回転駆動力は変速機入力軸23→伝動歯車64→伝達歯車44→主軸25→伝達歯車42→PTO二速歯車62→PTOクラッチスライダ94→PTO軸歯65→PTOクラッチ軸29の順にPTOクラッチ軸29に伝達される。このときの変速機入力軸23とPTOクラッチ軸29の回転方向は同方向であり、PTOクラッチ軸29の回転速度は変速機入力軸23に対して減速される。
【0058】
「PTO中立」のとき、PTOクラッチスライダ93は、PTOクラッチ軸29のスプライン部29bと噛合する。PTOクラッチスライダ94は、PTO軸歯65と噛合する。
【0059】
従って、「PTO中立」のとき、変速機入力軸23の回転駆動力は変速機入力軸23→伝動歯車64→伝達歯車44→主軸25の順に主軸25まで伝達されるが、PTOクラッチ軸29には回転駆動力が伝達されない。すなわち、PTO軸15には駆動力が伝達されず、中立の状態である。
【0060】
「PTO一速正転」のとき、PTOクラッチスライダ93は、伝動歯車64のPTO三速歯64aと噛合せず、PTOクラッチ軸29のスプライン部29bと噛合する。PTOクラッチスライダ94は、PTO一速歯車61のPTO一速歯61aと、PTO軸歯65の両方と噛合する。
【0061】
従って、「PTO一速正転」のとき、変速機入力軸23の回転駆動力は変速機入力軸23→伝動歯車64→伝達歯車44→主軸25→伝達歯車41→PTO一速歯車61→PTOクラッチスライダ94→PTO軸歯65→PTOクラッチ軸29の順にPTOクラッチ軸29に伝達される。このときの変速機入力軸23とPTOクラッチ軸29の回転方向は同方向であり、PTOクラッチ軸29の回転速度は変速機入力軸23に対して「PTO二速正転」の時よりもさらに減速される。
【0062】
「PTO逆転」のとき、PTOクラッチスライダ93は、PTO逆転歯車63のPTO逆転歯63aと、PTOクラッチ軸29のスプライン部29bの両方に噛合する。PTOクラッチスライダ94は、PTO一速歯車61のPTO一速歯61aと噛合する。
【0063】
従って、「PTO逆転」のとき、変速機入力軸23の回転駆動力は変速機入力軸23→伝動歯車64→伝達歯車44→主軸25→伝達歯車43→主変速一速歯車33→PTO逆転歯車63→PTOクラッチスライダ93→PTOクラッチ軸29の順にPTOクラッチ軸29に伝達される。このときの変速機入力軸23とPTOクラッチ軸29の回転方向は逆方向であり、PTOクラッチ軸29の回転速度は変速機入力軸23に対して「PTO一速正転」のときよりもさらに減速される。
【0064】
以上の如く構成することにより、本発明の変速機は以下の如き利点を有する。第一に、図7および図8に示す従来の変速機においてはアイドラー軸154が軸受け154a・154bを介してミッションケース109に軸支されていた。主軸125に外嵌固定された伝達歯車144と噛合するアイドラー歯車153a、および伝動歯車164に回転可能に遊嵌されたPTO逆転歯車163と噛合するアイドラー歯車153bとがアイドラー軸154に外嵌固定されていた。また、PTOクラッチ軸129の後端部129dの外周面、PTO入力軸166の前端部外周面、中継軸169の前後端外周面、および連結部材167a・167bの内周面にはスプラインが形成されており、連結部材167aは後端部29dと中継軸169の前端部とに噛合し、連結部材167aは中継軸169後端部とPTO入力軸166前端部とに噛合する。従って、PTOクラッチ軸129・中継軸169・PTO入力軸166は一体的に回転可能である。
【0065】
PTO入力軸166は後方に延出されて、その後端部はミッションケース109後部に回転可能に軸支される。また、PTO入力軸166の後部には歯車166aが設けられている。
PTO軸115はミッションケース109後部に回転可能に軸支される。PTO軸115の中途部には前記歯車166aと噛合する歯車168が外嵌固定され、PTO軸115の後端はミッションケース109より突出している。PTO軸115のミッションケース109より突出している部位の外周面にはスプラインが形成され、トラクタ後方に連結される作業機に駆動力を伝達可能である。
【0066】
そして、従来の変速機においては、「PTO逆転」のとき、PTOクラッチスライダ193は、PTO逆転歯車163のPTO逆転歯163aと、PTOクラッチ軸129のスプライン部129bの両方に噛合する。
【0067】
よって、「PTO逆転」のとき、変速機入力軸123の回転駆動力は変速機入力軸123→伝動歯車164→伝達歯車144→アイドラー歯車153a→アイドラー軸154→アイドラー歯車153b→PTO逆転歯車163→PTOクラッチスライダ193→PTOクラッチ軸129の順にPTOクラッチ軸129に伝達される。このときの変速機入力軸123とPTOクラッチ軸129の回転方向は逆方向である。
【0068】
一方、図2から図6に示す本発明の変速機では「PTO逆転」のとき、変速機入力軸23の回転駆動力は変速機入力軸23→伝動歯車64→伝達歯車44→主軸25→伝達歯車43→主変速一速歯車43→PTO逆転歯車63→PTOクラッチスライダ93→PTOクラッチ軸29の順にPTOクラッチ軸29に伝達される。
【0069】
すなわち、主変速軸24に遊嵌され、主変速クラッチスライダ52により主変速軸24と一体的に回転、または主変速軸24に対して相対的に回転可能に構成された主変速一速歯車33は、主変速軸24を一速で回転させる機能と、変速機入力軸23の回転方向と逆向きの回転駆動力をPTOクラッチ軸29へ伝達する機能とを兼ねているのである。
また、主変速軸24は本来の主変速軸24の機能(変速機入力軸23からの駆動力を複数の異なる変速比で伝達軸48に伝達する機能)と、変速機入力軸23の回転方向と逆向きの回転駆動力をPTOクラッチ軸29へ伝達するためのアイドラー歯車を支持するアイドラー軸の機能を兼ねているのである。
【0070】
従って、本発明の変速機では、図7および図8に示す従来の変速機において変速機入力軸123の回転方向と逆向きの回転駆動力をPTOクラッチ軸129へ伝達するために必要であったアイドラー歯車153a・153b、アイドラー軸154、および軸受け154a・154bを省略し、部品点数を削減することが可能である。
【0071】
なお、図2から図6に示す本発明の変速機では、PTOクラッチ軸29を逆転させる主要な歯車である主変速一速歯車43およびPTO逆転歯車63は、それぞれ主変速軸24およびPTOクラッチ軸29に遊嵌され、PTOクラッチスライダ93および主変速クラッチスライダ52によりそれぞれ主変速軸24およびPTOクラッチ軸29と一体的に回転、または主変速軸24およびPTOクラッチ軸29とは独立して回転可能に構成されている。しかし、前述の如き構成には限定されず、主変速一速歯車43に代えてPTO逆転専用の歯車を主変速軸24上に固設し、該歯車とPTO逆転歯車63とを噛合させ、主変速一速歯車43は走行変速専用の歯車としてもよい。
【0072】
第二に、本発明の変速機は主変速軸24を従来の変速機におけるアイドラー軸154としても使用することから、図6に示す如く、入力軸23(PTOクラッチ軸29)、主軸25、主変速軸24のそれぞれの軸中心23a(29e)・25c・24fの位置関係は、軸方向から見て正三角形の各頂点に位置する。
【0073】
従って、入力軸23(PTOクラッチ軸29)、主軸25、主変速軸24の間で動力伝達を行う歯車群の軸方向における取付位置などを設計変更する際にも、前記軸中心23a(29e)・25c・24fの位置関係を保持すれば該歯車群の設計変更を行う必要がなく、設計変更に伴うコストを削減することが可能である。
【0074】
続いて、本実施例の動力伝動系における主変速軸24での駆動力の変速方法を図3、図5および図6を用いて説明する。
【0075】
主変速クラッチスライダ51・52は、主軸25から主変速軸24へ駆動力を伝達するときの歯車の組み合わせを切り替えることにより、主変速軸24の回転を変速するためのものである。該主変速クラッチスライダ51・52もPTOクラッチスライダ93・94と同様に略筒形状の部材であり、その内周面にはスプライン溝が施され、主変速軸24の軸方向(前後方法)に摺動可能であるとともに、その外周面にはリング状の溝が形成される。
【0076】
図5および図6に示すように、主変速フォーク軸71はミッションケース9の前後方向に摺動可能に軸支される。主変速フォーク軸71は主変速クラッチスライダ51・52を前後方向に摺動させるための部材である。
【0077】
主変速フォーク軸71の中途部には、正面視略C型のフォーク71a・71bが外嵌固定される。フォーク71aは主変速クラッチスライダ52の外周面に設けられたリング状の溝に嵌合し、フォーク71bは主変速クラッチスライダ51の外周面に設けられたリング状の溝に嵌合する。また、主変速フォーク軸71はその中途部に切り欠き71cが穿設される。
一方、ミッションケース9の側面よりミッションケース9内に回動軸75が貫装され、回動可能に軸支される。回動軸75のミッションケース9内側の端部にはアーム75aが突設され、該アーム75aの先端部が前記切り欠き71cに嵌合する。回動軸75のミッションケース9外側の端部にはアーム75bが突設され、該アーム75bは種々のリンク機構を介してトラクタのキャビン12内に設けられた主変速レバー(図示せず)に連結される。
【0078】
前記主変速レバーを操作すると回動軸75が回動し、アーム75aの先端部が切り欠き71cに当接し、主変速フォーク軸71は前後に摺動する。
そして、主変速フォーク軸71が前後に摺動すると、これに連動して主変速クラッチスライダ51・52も前後に摺動するのである。なお、主変速クラッチスライダ51・52は、主変速フォーク軸71に固設されたフォーク71a・71に嵌合していることから、略等しい間隔を保って摺動する。
【0079】
主変速クラッチスライダ51・52は前後に摺動することにより、前方から後方にかけて順に「四速回転」、「三速回転」、「二速回転」、「一速回転」、の計四つのポジションをとる。
【0080】
「四速回転」のとき、主変速クラッチスライダ52は、主変速四速歯車34の主変速四速歯34aと、主変速軸24のスプライン部24cの両方に噛合する。主変速クラッチスライダ51は、主変速三速歯車32の主変速三速歯32aと噛合する。
【0081】
従って、「四速回転」のとき、変速機入力軸23の回転駆動力は変速機入力軸23→伝動歯車64→伝達歯車44→主変速四速歯車34→主変速クラッチスライダ52→主変速軸24の順に主変速軸24に伝達される。このときの変速機入力軸23と主変速軸24の回転方向は同方向である。
【0082】
「三速回転」のとき、主変速クラッチスライダ52は、主変速四速歯車34の主変速四速歯34aと噛合せず、主変速軸24のスプライン部24cと噛合する。主変速クラッチスライダ51は、主変速三速歯車32の主変速三速歯32aと、主変速歯69の両方と噛合する。
【0083】
従って、「三速回転」のとき、変速機入力軸23の回転駆動力は変速機入力軸23→伝動歯車64→伝達歯車44→主軸25→伝達歯車42→主変速三速歯車32→主変速歯69→主変速軸24の順に主変速軸24に伝達される。このときの変速機入力軸23と主変速軸24の回転方向は同方向であり、変速機入力軸23が同回転速度の場合、主変速軸24の回転速度は「四速回転」と比較して減速される。
【0084】
「二速回転」のとき、主変速クラッチスライダ52は主変速四速歯車34の主変速四速歯34aと噛合せず、主変速軸24のスプライン部24cと噛合する。主変速クラッチスライダ51は、主変速二速歯車31の主変速二速歯31aと、主変速歯69の両方と噛合する。
【0085】
従って、「二速回転」のとき、変速機入力軸23の回転駆動力は変速機入力軸23→伝動歯車64→伝達歯車44→主軸25→伝達歯車41→主変速二速歯車31→主変速クラッチスライダ51→主変速歯69→主変速軸24の順に主変速軸24に伝達される。このときの変速機入力軸23と主変速軸24の回転方向は同方向であり、変速機入力軸23が同回転速度の場合、主変速軸24の回転速度は「三速回転」と比較して減速される。
【0086】
「一速回転」のとき、主変速クラッチスライダ52は主変速一速歯車33の主変速一速歯33aと、主変速軸24のスプライン部24cの両方と噛合する。主変速クラッチスライダ51は、主変速二速歯車31の主変速二速歯31aと噛合する。
【0087】
従って、「一速回転」のとき、変速機入力軸23の回転駆動力は変速機入力軸23→伝動歯車64→伝達歯車44→主軸25→伝達歯車43→主変速一速歯車33→主変速クラッチスライダ52→主変速軸24の順に主変速軸24に伝達される。このときの変速機入力軸23と主変速軸24の回転方向は同方向であり、変速機入力軸23が同回転速度の場合、主変速軸24の回転速度は「二速回転」と比較して減速される。
【0088】
続いて、本実施例の動力伝動系における主変速軸24での回転駆動力の正逆切り替え方法を図3、図5および図6を用いて説明する。
【0089】
前後進切換装置57のスライド部57aは、主変速軸24から伝達軸48へ回転駆動力を伝達する際に、回転の正逆方向の切り替えを行うためのものである。該スライド部57aは略円筒形状の部材であり、内周面にはスプライン溝が施され、基部57bとスプライン嵌合しており、主変速軸24の軸方向(前後方法)に摺動可能であるとともに、その外周面にはリング状の溝が形成される。
【0090】
図5および図6に示すように、リバーサフォーク軸72はミッションケース9の前後方向に摺動可能に軸支される。リバーサフォーク軸72は前後進切換装置57のスライド部57aを前後方向に摺動させるための部材である。
【0091】
リバーサフォーク軸72の中途部には、正面視略C型のフォーク72aが外嵌固定される。フォーク72aは前後進切換装置57のスライド部57aの外周面に設けられたリング状の溝に嵌合する。また、リバーサフォーク軸72はその中途部に切り欠き72bが穿設される。
一方、ミッションケース9の側面よりミッションケース9内に回動軸76が貫装され、回動可能に軸支される。回動軸76のミッションケース9内側の端部にはアーム76aが突設され、該アーム76aの先端部が前記切り欠き72bに嵌合する。回動軸76のミッションケース9外側の端部にはアーム76bが突設され、該アーム76bは種々のリンク機構を介してトラクタのキャビン12内に設けられたリバーサレバー(図示せず)に連結される。
【0092】
前記リバーサレバーを操作すると回動軸76が回動し、アーム76aの先端部が切り欠き72bに当接し、リバーサフォーク軸72は前後に摺動する。
そして、リバーサフォーク軸72が前後に摺動すると、これに連動してフォーク72aに嵌合しているスライド部57aも前後に摺動するのである。
【0093】
前後進切換装置57のスライド部57aは前後に摺動することにより、前方から後方にかけて順に「逆転」、「走行中立」、「正転」、の計三つのポジションをとる。
【0094】
「逆転」のとき、スライド部57aは、逆転側歯車27の逆転側歯27aと、基部57bの両方に噛合する。
【0095】
従って、「逆転」のとき、主変速軸24の回転駆動力は主変速軸24→クラッチスライダ57→逆転側歯車27→カウンタ歯車39→歯車47→伝達軸48の順に伝達軸48に伝達される。このときの主変速軸24と伝達軸48の回転方向は同方向である。
【0096】
「走行中立」のとき、スライド部57aは、逆転側歯車27の逆転側歯27aとも、正転側歯車26の正転側歯26aとも噛合しない。
【0097】
従って、「走行中立」のとき、主変速軸24の回転駆動力は伝達軸48に伝達されない。
【0098】
「正転」のとき、スライド部57aは、正転側歯車26の正転側歯26aと、基部57bの両方に噛合する。
【0099】
従って、「正転」のとき、主変速軸24の回転駆動力は主変速軸24→クラッチスライダ57→正転側歯車26→歯車45→伝達軸48の順に伝達軸48に伝達される。このときの主変速軸24と伝達軸48の回転方向は逆方向である。
【0100】
続いて、本実施例の動力伝動系における副変速軸35での駆動力の変速方法を図3、図4、図5および図6を用いて説明する。
【0101】
副変速シフタ92は、伝達軸48から副変速軸35への駆動力伝達・遮断、および駆動力伝達時の歯車の組み合わせを切り替えることによる変速を行うためのものである。副変速シフタ92の外周面には副変速一速歯92bが設けられるとともに、前端部には副変速二速歯92aが形成される。また、副変速シフタ92は副変速軸35にスプライン嵌合し、軸方向(前後方向)に摺動可能であるとともに、後部外周面にはリング状の溝が形成される。
【0102】
図5および図6に示すように、副変速フォーク軸73はミッションケース9の前後方向に摺動可能に軸支される。副変速フォーク軸73は副変速シフタ92を前後方向に摺動させるための部材である。
【0103】
副変速フォーク軸73の中途部には、正面視略C型のフォーク73aが外嵌固定される。フォーク73aは副変速シフタ92の外周面に設けられたリング状の溝に嵌合する。また、副変速フォーク軸73はその中途部に切り欠き73bが穿設される。
一方、ミッションケース9の側面よりミッションケース9内に回動軸77が貫装され、回動可能に軸支される。回動軸77のミッションケース9内側の端部にはアーム77aが突設され、該アーム77aの先端部が前記切り欠き73bに嵌合する。回動軸77のミッションケース9外側の端部にはアーム77bが突設され、該アーム77bは種々のリンク機構を介してトラクタのキャビン12内に設けられた副変速レバー(図示せず)に連結される。
【0104】
前記副変速レバーを操作すると回動軸77が回動し、アーム77aの先端部が切り欠き73bに当接し、副変速フォーク軸73は前後に摺動する。
そして、副変速フォーク軸73が前後に摺動すると、これに連動してフォーク73aに嵌合している副変速シフタ92も前後に摺動するのである。
【0105】
副変速シフタ92は前後に摺動することにより、前方から後方にかけて順に「副変速二速」、「副変速一速」、「副変速中立」、「クリープ速」の計四つのポジションをとる。
【0106】
「副変速二速」のとき、副変速シフタ92は、副変速二速歯92aが歯車59の噛合歯59aと噛合し、かつ副変速一速歯92bが歯車46・小歯車87bのいずれとも噛合しない状態で副変速軸35にスプライン嵌合している。
【0107】
従って、「副変速二速」のとき、伝達軸48の回転駆動力は伝達軸48→歯車45→歯車59→副変速シフタ92→副変速軸35の順に副変速軸35に伝達される。このときの伝達軸48と副変速軸35の回転方向は互いに逆方向である。
【0108】
「副変速一速」のとき、副変速シフタ92は、副変速二速歯92aが歯車59の噛合歯59aと噛合せず、かつ副変速一速歯92bが歯車46と噛合し、小歯車87bと噛合しない状態で副変速軸35にスプライン嵌合している。
【0109】
従って、「副変速一速」のとき、伝達軸48の回転駆動力は伝達軸48→歯車46→副変速シフタ92→副変速軸35の順に副変速軸35に伝達される。このときの伝達軸48と副変速軸35の回転方向は互いに逆方向であり、「副変速二速」と比較すると、伝達軸48の回転速度が同じであるとき副変速軸35の回転速度は小さい。
【0110】
「副変速中立」のとき、副変速シフタ92は、副変速二速歯92aが歯車59の噛合歯59aと噛合せず、かつ副変速一速歯92bが歯車46・小歯車87bのいずれとも噛合しない状態で副変速軸35にスプライン嵌合している。
【0111】
従って、「副変速中立」のとき、伝達軸48の回転駆動力は副変速軸35に伝達されない。
【0112】
「クリープ速」のとき、副変速シフタ92は、副変速二速歯92aが歯車59の噛合歯59aと噛合せず、かつ副変速一速歯92bが歯車46と噛合せず、小歯車87bと噛合する状態で副変速軸35にスプライン嵌合している。
【0113】
従って、「クリープ速」のとき、伝達軸48の回転駆動力は伝達軸48→歯車84→クリープ第一軸83→歯車85→歯車87→副変速シフタ92→副変速軸35の順に副変速軸35に伝達される。このときの伝達軸48と副変速軸35の回転方向は互いに逆方向であり、「副変速一速」と比較すると、伝達軸48の回転速度が同じであるとき副変速軸35の回転速度は小さい。「クリープ速」は大重量の作業機を牽引するといった作業時に用いられる。
【0114】
続いて、フォーク軸操作機構の別実施例について図9から図11を用いて説明する。
【0115】
図2から図6に示すように、本発明の実施例である変速機ではミッションケース9に設けられた四本のフォーク軸であるPTOフォーク軸70・主変速フォーク軸71・リバーサフォーク軸72・副変速フォーク軸73は、それぞれミッションケース9に回動可能に軸支された回動軸74・75・76・77により前後方向に摺動される。このとき、回動軸74・75・76・77とミッションケース9との当接部位、あるいは回動軸74・75・76・77を操作するためのカム構造等の当接部位にはグリスなどの潤滑剤を塗布される。しかし、グリスなどの潤滑剤は経時劣化、あるいは飛散するなどして潤滑が不足し、当接部位において摩耗したり、操作が重くなる場合がある。よって、定期的にグリスアップする必要がある。
【0116】
これに対して、図9から図11に示す別実施例では、フォーク軸170・171を前後に摺動させるための回動軸174・175がミッションケース9の下部側面に配置され、ミッションケース9に回動可能に軸支される。以後回動軸174をキャビンから操作するためのリンク機構について説明する。なお、回動軸175のリンク機構は回動軸174のリンク機構と略同じ構成であるため、説明を省略する。
【0117】
回動軸174のミッションケース9内側端には、フォーク軸170に当接する部材であるアーム174aが突設され、回動軸174のミッションケース9外側端にはアーム174bが突設される。アーム174bの先端部には補強プレート178がネジ179・179・179により固設されるとともに、該補強プレート178よりカムピン180が回動軸174と略平行に突設される。カムピン180には略円筒形状の部材である当接部材181が回転可能に遊嵌される。当接部材181はカム182に穿設されたカム孔182aに嵌合している。
【0118】
カム182は略半月形状の板部材であり、カム回動軸183に外嵌固定される。カム回動軸183はその一端がカムケース184に軸受け184a・184bを介して回転可能に軸支され、他端側はカムケース蓋185を貫通して外側に突出している。カムケース184は、カムケース蓋185と併せて、回動軸174のミッションケース9から突出している部位からカム回動軸183の中途部までの部材を密封するための部材である。
【0119】
カム回動軸183とカムケース蓋185とが当接している部位にはOリング188が外嵌され、オイルが外部に漏れないように構成されるとともに、カム回動軸183のカムケース蓋185から突出している部位には、カムアーム189の一端が固設される。カムアーム189の他端にはロッド190の下端が回動可能に枢着される。ロッド190の上端はアーム191の一端に回動可能に枢着される。アーム191の他端はレバー回動軸192に遊嵌された筒状部材194に固設される。筒状部材194にはレバー195の下端が固設されるとともに、該レバー195はトラクタのキャビン12内に配置される。
【0120】
レバー195を前後に回動させることにより、カム182はカム回動軸183を中心に前後方向に回動し、カム孔182aの端面に当接した当接部材181が該カム孔182aに追従することにより、回動軸174が回動する。結果として、フォーク軸170が前後に摺動する。また、カム孔182aとカム孔182bは形状が異なり、同様にレバー195の別の回動位置において、カム孔182bの端面に当接した当接部材181がカム孔182bに追従して回動軸175が回動するようにして、フォーク軸171を前後に摺動して、レバー195の前後回動により数段の変速をする構成としている。
【0121】
カムケース184とミッションケース9とが当接する部位において、回動軸174にはシール部材186が外嵌され、さらに該シール部材186にOリング187が外嵌されて、オイルが漏れないように構成される。
またミッションケース9内部の空間と、カムケース184・カムケース蓋185により密封された空間とは、ミッションケース9側において回動軸174・175を軸支する孔の下部に一部穿設された切り欠き9a、シール部材186下部に一部穿設された切り欠き186a、カムケース184側において回動軸174・175を軸支する孔の下部に一部穿設された切り欠き184aにより連通しており、ミッションケース9内に貯溜されたミッションオイルがカムケース184・カムケース蓋185により密封された空間に流入し、その油面(オイルレベル、図10および図11中の直線B−Bに相当)はミッションケース9と略同じとなる。またその油面(オイルレベル)は回動軸174のミッションケース9から突出している部位からカム回動軸183の中途部までの部材がミッションオイルに浸漬された状態となるよう構成されている。
【0122】
このように構成することにより、回動軸174・175およびこれらを操作するためのリンク機構のうち、カム回動軸カム183の中途部まではミッションオイルに浸漬されており、グリス等の潤滑剤を補充する必要がないのでメンテナンス性に優れる。また当接部位における摩耗が防止され、操作性も維持される。
【0123】
なお、図9から図11に示す別実施例では、フォーク軸170・171を操作するための回動軸174・175は同一のカム182を介して、同一のレバー195により操作する構成としたが、これに限定されず、三本以上の回動軸について同一のカム、同一のレバーで操作する構成としてもよい。また、各回動軸に対して別個のカムを設けてもよい。
また、回動軸174・175は図2から図6に示す本実施例における回動軸74・75・76・77のいずれに対しても適用可能であって、限定されない。
さらに、ミッションケース9内部の空間と、カムケース184・カムケース蓋185により密封された空間とを連通する手段として、図9から図11に示す別実施例では回動軸174・175を軸支する孔の下部に切り欠きを設けたが、これに限定されず、別箇所に貫通孔を設けたり、回動軸174・175を中空の筒状部材として、該回動軸174・175の中空部分を介して連通させてもよい。
【0124】
続いて、クラッチハウジング下部に設けられた燃料タンクについて図12および図13を用いて説明する。
【0125】
従来のトラクタにおいては板金または樹脂製の燃料タンクが搭載されていたが、特に小型のコンパクトトラクタでは燃料タンクを搭載するスペースの確保が困難であり、十分な燃料の容量を確保するのが容易ではなかった。よって、従来はエンジン前方にサブタンクを追加して容量を確保していた。しかし、エンジン前方にサブタンクを配設すると、エンジンまでの配管が長く複雑であり、またタンク取付部材も必要となるためコスト高かつ組み立て工数が増加するといった問題があった。
【0126】
図12および図13に示す如く、本実施例の燃料タンク196は、クラッチハウジング7の下部に設けられている。該燃料タンク196の配設位置は、従来は利用されていない空きスペースであった。クラッチハウジング7の型抜き方向である後方にシールプレート197を取り付けるための取付面7aを形成する。そして、該取付面7aにシール部材を介装してシールプレート197をボルト198・198・・・で締結することにより、クラッチハウジング7下部に密封された空間を形成して燃料タンク196とする。また燃料タンク196上部はメイン燃料タンク(図示せず)と連通する上部給油口196a、下部はエンジン5と連通する下部排出口196bが設けられる。
【0127】
このように構成することにより、燃料タンク196はトラクタのサブタンクとして使用することが可能であり、メイン燃料タンクを小型化することが可能である。
また、型抜き成型されたクラッチハウジング7の型抜き方向にのみシールプレート197の取付面7aを形成するだけで高いシール効果が得られ、密閉空間である燃料タンク196を容易に形成可能である。
さらに、クラッチハウジング7内に液体である燃料を貯溜することにより、トランスミッション系統の騒音を低減する効果も得られる。
【0128】
なお、本実施例ではクラッチハウジング7の型抜き方向を後方とし、シールプレート197の取付面7aを後方に形成したが、例えばクラッチハウジングの型抜き方向を左右方向とし、左右両面にシールプレートを設けても良いので限定されない。
【0129】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0130】
即ち、請求項1に示す如く、入力軸と、該入力軸と連動回転する主軸と、該主軸より主変速操作で選択した歯車を介して駆動される主変速軸と、該主軸よりPTO変速操作で選択された歯車を介して駆動されるPTOクラッチ軸とを備える変速機であって、
前記主軸とPTOクラッチ軸にそれぞれ逆転用の歯車を設け、前記主変速軸上に前記逆転用の歯車と噛合するカウンター歯車を設けたので、従来の変速機において変速機の入力軸の回転方向と逆向きの回転駆動力をPTOクラッチ軸へ伝達するために必要であったアイドラー歯車やアイドラー軸および軸受け等を省略し、部品点数を削減することが可能であるとともに、変速機をコンパクトに構成することが可能である。
【0131】
請求項2に示す如く、前記カウンター歯車を主変速軸上に設ける主変速一速歯車と兼用したので、従来の変速機において変速機の入力軸の回転方向と逆向きの回転駆動力をPTOクラッチ軸へ伝達するために必要であったアイドラー歯車やアイドラー軸および軸受け等を省略し、部品点数を削減することが可能であるとともに、変速機をコンパクトに構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図。
【図2】本発明の実施例における変速機の断面展開図。
【図3】本発明の実施例における変速機上部の断面展開図。
【図4】本発明の実施例における変速機下部の断面展開図。
【図5】フォーク軸の配置を示す平面図。
【図6】フォーク軸の配置を示す正面図。
【図7】従来の変速機の断面展開図。
【図8】従来の変速機上部の断面展開図。
【図9】フォーク軸操作機構の別実施例を示す側面図。
【図10】フォーク軸操作機構の別実施例を示す正面断面図。
【図11】フォーク軸操作機構の別実施例の要部正面断面図。
【図12】クラッチハウジング下部の燃料タンクを示す側面断面図。
【図13】クラッチハウジング下部の燃料タンクを示す後面断面図。
【符号の説明】
23 変速機入力軸
24 主変速軸
25 主軸
29 PTOクラッチ軸
33 主変速一速歯車
63 PTO逆転歯車
Claims (2)
- 入力軸と、該入力軸と連動回転する主軸と、該主軸より主変速操作で選択した歯車を介して駆動される主変速軸と、該主軸よりPTO変速操作で選択された歯車を介して駆動されるPTOクラッチ軸とを備える変速機であって、
前記主軸とPTOクラッチ軸にそれぞれ逆転用の歯車を設け、前記主変速軸上に前記逆転用の歯車と噛合するカウンター歯車を設けたことを特徴とする変速機。 - 前記カウンター歯車を主変速軸上に設ける主変速一速歯車と兼用したことを特徴とする請求項1に記載の変速機。
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