JP2004100131A - 縫製品のシームパッカリング防止方法およびその方法で加工処理された縫製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロース系繊維含有構造物からなる縫製品の縫目にセルロース繊維素反応型樹脂加工剤を塗布した後、熱プレス処理を行なうことを特徴とする縫製品のシームパッカリング防止方法、又は、セルロース繊維素反応型樹脂加工剤は触媒とともに、予めセルロース系繊維含有構造物に処理され、該構造物の縫製品の縫目には、触媒を単独で塗布した後、熱プレス処理を行なうことを特徴とする縫製品のシームパッカリング防止方法等、並びにそれらの方法で加工処理された縫製品にて提供。
【選択図】 図1
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、縫製品のシームパッカリング防止方法およびその方法で加工処理された縫製品に関し、更に詳しくは、洗濯収縮率の少ないミシン糸や、テープ状の接着剤ウェブ又は接着剤を塗布した芯地を用いることなく、また、樹脂加工剤を使用するポストキュア方式又はプレキュア方式によることなく、簡単な操作で縫製品の縫目のシームパッカリング(縫目の近辺に発生する縫いじわが規則的に続いたもの)、特に洗濯後のシームパッカリングの発生を防止することのできる方法、及びその方法で加工処理されたシームパッカリングの発生が防止された縫製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
衣類の縫い合せ部は、通常ミシンで縫製されるが、衣服を縫製した時、縫目に波打ち状の変形(凹凸)いわゆるシームパッカリングが発生し、衣服の外観を損ねている。
縫製時に発生したシームパッカリングは、プレス等で縫目の変形(凹凸)を伸ばして平滑にし、目立たなくすることができるが、その場合でも洗濯することにより、元の変形(凹凸)の状態に戻り、再びシームパッカリングが発生する。或いは、洗濯によってシームパッカリングが縫製直後の状態よりも更にひどくなる場合もある。このシームパッカリング、特に洗濯後のシームパッカリングが衣服の外観上大きな問題となっている。
【0003】
洗濯によるシームパッカリングは、大別して次の2つの場合に発生する。
▲1▼洗濯によってミシン糸が縮む。
▲2▼縫製後のシームパッカリングを目立たなくするためにプレスやアイロンを行なうと、縫目付近の生地が無理に伸ばされた状態となり、その結果、放置や洗濯によって生地が収縮し元の状態に戻ろうとする。
【0004】
洗濯後のシームパッカリングを防止する方法として、上記▲1▼による原因の対策としては、ポリエステルスパン糸やポリエステルフィラメント糸のような洗濯収縮率の少ないミシン糸を用いる方法がある。
しかしながら、この方法によれば、綿糸のような洗濯収縮率の大きいミシン糸よりもシームパッカリングの発生を低減させることができるが、生地の収縮によるシームパッカリングの発生は解消出来ていない。
【0005】
また、上記▲2▼による原因の対策としては、テープ状の接着剤ウェブ又は接着剤を塗布した芯地を、縫合部の生地と生地の間に装着、貼付する方法が開示されている。この方法によれば、テープ又は芯地により生地が固定され収縮しないので、洗濯によるシームパッカリングの発生を解消することができる。
しかしながら、この方法は、テープ又は芯地の貼付に非常に手間が掛かり、しかもアームホールなどの縫合部が曲線となっている部位には、曲線に沿ってきれいにテープ又は芯地を貼付するのが難しく、生産性と作業性が著しく劣るという欠点がある。
【0006】
その他、シームパッカリングを防止するのに有効な方法としては、加工段階では樹脂加工剤を生地に含浸後乾燥させるだけとし、縫製後に縫製品全体を熱処理し樹脂を反応させるいわゆるポストキュア方式がある。
しかしながら、この方法では、生地全体にあらかじめ樹脂加工剤を末反応の状態で付与しているため、生地の長期保存が出来ず、しかも加工や縫製段階で皺をつけると、皺が固定されて残り易いという欠点がある。
【0007】
これに対して、あらかじめ生地の加工段階で熱処理まで行ない、樹脂加工剤とセルロース繊維を反応させるいわゆるプレキュア樹脂加工法もあるが、この方法では、上記ポストキュア方式の欠点を解消することができるが、反面シームパッカリングが目立ち外観が著しく劣るという欠点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来技術の問題点に鑑み、洗濯収縮率の少ないミシン糸や、テープ状の接着剤ウェブ又は接着剤を塗布した芯地を用いることなく、また、樹脂加工剤を使用するポストキュア方式又はプレキュア方式によることなく、簡単な操作で縫製品の縫目のシームパッカリング、特に洗濯後のシームパッカリングの発生を防止することのできる方法、さらにはその方法で加工処理されたシームパッカリングの発生が防止された縫製品を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題に鑑み、樹脂加工剤の生地への適応、生地の縫製、及び縫製品の熱プレス等の順序及びタイミングにつき数多くの実験を行ったところ、特定の順序及びタイミングで行った場合に、縫製品の縫目のシームパッカリングの発生が顕著に防止されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1発明によれば、セルロース系繊維含有構造物からなる縫製品の縫目にセルロース繊維素反応型樹脂加工剤を塗布した後、熱プレス処理を行なうことを特徴とする縫製品のシームパッカリング防止方法が提供される。
【0011】
本発明の第2発明によれば、第1の発明において、セルロース繊維素反応型樹脂加工剤は、エポキシ基、カルボキシル基、又はメチロール基から選ばれるいずれかの官能基を分子内に少なくとも2個有する化合物であることを特徴とする縫製品のシームパッカリング防止方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第3発明によれば、第2の発明において、セルロース繊維素反応型樹脂加工剤は、N−メチロール尿素化合物であることを特徴とする縫製品のシームパッカリング防止方法が提供される。
さらに、本発明の第4発明によれば、第2の発明において、セルロース繊維素反応型樹脂加工剤は、触媒又はそれと助触媒を添加して使用することを特徴とする縫製品のシームパッカリング防止方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第5発明によれば、第1の発明において、セルロース系繊維含有構造物が予めセルロース繊維素反応型樹脂加工剤と触媒で処理されている場合には、縫製品の縫目に、触媒のみを単独で塗布することを特徴とする縫製品のシームパッカリング防止方法が提供される。
【0014】
本発明の第6発明によれば、第1の発明において、セルロース繊維素反応型樹脂加工剤には、さらに、染料、蛍光染料、顔料、蛍光顔料又は糊剤の少なくとも一種が添加されることを特徴とする縫製品のシームパッカリング防止方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第7発明によれば、第1の発明において、熱プレス処理は、熱プレス機械又はアイロン掛けにより行われることを特徴とする縫製品のシームパッカリング防止方法が提供される。
【0016】
さらに、本発明の第8発明によれば、第1〜7のいずれかの発明の縫製品のシームパッカリング防止方法により加工処理されたセルロース系繊維含有構造物からなる縫製品が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の縫製品のシームパッカリング防止方法、及びその方法で加工処理された縫製品について、各項目毎に詳細に説明する。
【0018】
1.セルロース系繊維
本発明において、セルロース系繊維とは、木綿、カポック等の種子毛繊維、亜麻、大麻、黄麻、苧麻、ケナフ、芭蕉布等の靱皮繊維、アバカ、サザイル、ヘニケン等の葉脈繊維、椰子などの果実繊維、パルプ等の天然セルロース繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニア法レーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維、テンセル等の精製セルロース等である。
【0019】
2.セルロース系繊維含有構造体
本発明において、セルロース系繊維含有構造体とは、セルロース系繊維単独またはセルロース系繊維と他の繊維とを混合して作った構造体であり、例えば、織物、編物又は不織布等であり、更に具体例としては、シャツ生地、スカート生地、洋服生地等である。
セルロース系繊維に混ぜる他の繊維としては、動物性繊維(例えば、羊毛、シルク等)や、合成繊維(例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル等)、無機繊維(例えば、ガラス、炭素、アルミナ等)、金属繊維(例えば、銅、アルミニウム、金等)等が挙げられる。
【0020】
3.縫製品
本発明において縫製品とは、シャツ生地、スカート生地、洋服生地等のセルロース系繊維含有構造体を、糸で縫製して作った製品であり、例えば、ワイシャツ、ニットシャツ、ジャンバー、コート、ジャケット、スカート、ズボン、ブラウス、セーター、カーディガン、洋服、作業着、ユニホーム、学生服、オフィスワークウェア、運動着等であり、これらの襟、袖、袖口、ポケット、ボタン口等も含有される。
【0021】
4.縫製品の縫目
本発明において、縫製品の縫目とは、セルロース系繊維含有構造体(シャツ生地、スカート生地、洋服生地等)同士を、縫製用の糸で縫った場所であり、縫製用の糸が生地を上下に交錯して位置しており、生地同士を固定している直線又は曲線状の場所である。
縫製用の糸としては、ポリエステルスパン糸やポリエステルフィラメント糸のような洗濯収縮率の少ないミシン糸を用いる方が好ましいが、綿糸のような洗濯収縮率の大きいミシン糸を用いても、本発明の方法によれば、シームパッカリングの発生を低減させることができる。
【0022】
5.セルロース繊維素反応型樹脂加工剤
本発明において、セルロース繊維素反応型樹脂加工剤とは、セルロース系繊維の表面に存在する少なくとも2個のヒドロキシル基と反応し、架橋結合を形成させることが可能な化合物が主成分であり、必要に応じて、触媒、染料(蛍光染料)や顔料(蛍光顔料)、糊剤、又は溶剤を配合してもよい。
したがって、それらの化合物は、エポキシ基、カルボキシル基、及びメチロール基からなる群から選ばれた1種類の官能基を分子内に少なくとも2個有する化合物であり、エポキシ基を2個以上有するポリグリシドキシ化合物、カルボキシル基を2個以上有するポリカルボン酸化合物、又はメチロール基を2個以上有するポリメチロール化合物等が挙げられる。かかる化合物としては、下記のものが挙げられる。
【0023】
5.1 ポリグリシドキシ化合物
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル。
【0024】
5.2 ポリカルボン酸化合物
シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、オキシジコハク酸(2,2−オキシビス(ブタンジオン酸))、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸等の飽和ジカルボン酸;
【0025】
1,2,3−プロパントリカルボン酸、トリカルバリン酸、アコニチン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、クエン酸(2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸)等の三塩基酸;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸とマレイン酸のエン付加物、タートレートモノコハク酸等の四塩基酸;タートレートジコハク酸等の六塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4−メチルイソフタル酸、5−メチルイソフタル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;
【0026】
1,1−シクロプロパンジカルボン酸、1,2−シクロプロパンジカルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、トルキシル酸、トルキシン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、1−シクロヘキセン−1,4−ジカルボン酸、2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、2−シクロヘキセン−1,4−ジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;スチレンと無水マレイン酸よりディールス・アルダー反応とエン反応によって生じたテトラカルボン酸、無水マレイン酸とアクリル酸との共重合体、エポキシ化コハク酸二量化物;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸(メチルマレイン酸)、メサコン酸、グルタコン酸、イタコン酸(メチレンコハク酸)、アリルマロン酸、テラコン酸、ムコン酸等の不飽和ジカルボン酸;トリカルバリン酸(1,2,3−プロパントリカルバリン酸)、トランスーアコニット酸(トランス−1−プロペン−1,2,3−トリカルボン酸)、全シス1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、メリト酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)。
【0027】
5.3 ポリメチロール化合物
ジメチロール尿素、ジメチロールプロピレン尿素、ジメチロール−5−ヒドロキシプロピレン尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、ジメチロールブチレン尿素、テトラメチロールアセチレンジ尿素等のN−メチロール尿素化合物;
【0028】
テトラメチロールエチレンビストリアゾン、ジメチロールトリアゾン、ジメチロールウロン、メチル化ジメチロールウロン、ジメチロールアルキルカーバメート、ジメチロールグリオキザールモノウレン、ジメチロールメチルトリアゾン、ジメチロールエチルトリアゾン、ジメチロールヒドロキシエチルトリアゾン、ジメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ジペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメラミン、メチル化トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、4−メトキシ−5−ジメチルプロピレン尿素ジメチロール化合物、ジメチロールメチルカーバメイト、ジメチロールエチルカーバメイト、ジメチロールヒドロキシイソプロピルエチルカーバメイト、ジメチロールジエトキシエチルカーバメイト。
【0029】
5.4 触媒
本発明の樹脂加工剤には、樹脂加工剤とセルロースの反応活性を高め、樹脂加工を迅速に行なうために、触媒あるいはそれと助触媒を添加することができる。
なお、セルロース系繊維含有構造体として、予めセルロース繊維素反応型樹脂加工剤と触媒で処理された生地を用いる場合には、縫製品の縫目に樹脂加工剤を使用しないで触媒のみを塗布しても同様のパッカリング防止効果が得られる。
この触媒としては、通常、樹脂加工に用いられる触媒であれば特に制限されず、例えば、ホウ弗化アンモニウム,ホウ弗化亜塩等のホウ弗化化合物、塩化マグネシウム,硫酸マグネシウム等の中性金属塩触媒、燐酸、塩酸、ホウ酸等の無機酸などが挙げられる。
これら触媒には、必要に応じて、助触媒としてクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸等の有機酸などを併用することもできる。また、樹脂加工剤には必要に応じて、風合調整用或いは引裂強力向上用の柔軟剤や遊離ホルマリン濃度低減の為のホルマリンキャッチャー等を添加することもできる。尚、引裂強力とは、布地に加わる外力が一方向の場合の抵抗を示し、引裂きによって生じる引張力と剪断力による切断荷重を意味する。
【0030】
5.5 染料、顔料
本発明に係る樹脂加工剤には、縫製品の縫目に樹脂加工剤を塗布した後の熱プレス処理による塗布部の白度低下や色相変化を防止するために、必要に応じて、染料、蛍光染料、顔料、蛍光顔料などを添加することができる。
これらの染料や蛍光染料としては、通常樹脂加工に用いられるもの、或いは繊維セルロース系繊維に用いられるものであれば、特に制限されず、例えば、直接染料、反応染料、ナフトール染料、バット染料等が挙げられ、所望とする色相に応じて、それらの中から適宜選定できる。
また、顔料や蛍光顔料としては、水分散体としたものであれば有機系顔料、無機系顔料のいずれでも使用することができる。有機系顔料としては、例えばアゾ系有機顔料、フタロシアニン系顔料等が挙げられ、無機系顔料としては、例えばカーボンブラック、二酸化チタン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。この場合、水分散性を良くするために顔料粒子の表面をアクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂等で処理してあるもの、又は比較的少量のノニオン系界面活性剤で処理してあるものを用いることが好ましい。
これらの染料、蛍光染料、顔料、蛍光顔料の樹脂加工剤への添加量は、必要に応じて、適宜設定され、通常、樹脂加工剤(薬剤)に水を加えた樹脂加工液(剤)100体積%当り、0.01〜0.5体積%程度である。
【0031】
5.6 糊剤
本発明に係る樹脂加工剤には、添加することにより樹脂加工剤の粘度を高めて、塗布の際に液のシミの広がりを防ぐために、必要に応じて、糊剤を添加することができる。
糊剤としては、通常染色・仕上加工等に用いられるものであれば、特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロオキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、グァーガム、ブリティッシュガム、トラガントガム、ローストビーンガム、クリスタルガム、澱粉、或いはこれらの混合物が挙げられる。
これらの糊剤の樹脂加工剤への添加量は、必要に応じて、適宜設定され、通常、樹脂加工剤(薬剤)に水を加えた樹脂加工液(剤)100体積%当り、実質(固形分として)0.01〜5.0体積%程度である。
【0032】
5.7 溶剤
本発明において溶剤は、セルロース繊維素反応型樹脂加工剤に必要に応じて配合し、セルロース繊維素反応型樹脂加工剤の粘度や濃度を低下させ、生地への塗布性を良くしたり、樹脂加工剤の生地への濡れ性、浸透性を良くし、また、樹脂加工剤を希釈し必要量だけ塗布するようにし、コストダウンに寄与させるために使用する。
溶剤としては、臭いや毒性がすくなく、蒸発速度が速く、生地を傷めなく、かつ低コストであるものが望ましい。
【0033】
かかる溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルエーテル、エーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、フルフラール、ジオキサン、メタンスルホン酸、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、無水酢酸、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられ、それらの1種又は2種以上から選択して用いる。
【0034】
6.セルロース繊維素反応型樹脂加工剤の塗布
本発明において、セルロース繊維素反応型樹脂加工剤の塗布は、該縫製品の縫目のシームパッカリングを防止することを目的とするので、上記縫製品の縫目の左右2mm〜10mm,更には3mm〜7mm,全巾で4mm〜20mm,更には6mm〜14mmの範囲に塗布することが好ましい。
上記縫製品の縫目の左右2mm未満では、主に該縫製品の縫目か、又は縫目の付近しか樹脂加工剤によって固定することができずシームパッカリングを抑制できず望ましくなく、また、上記縫製品の縫目の左右10mmを超えて塗布しても、10mmを超える部分まではシームパッカリングは波及していないので必要のない部分まで高価な樹脂加工剤を塗布することとなり、コストアップの要因となり望ましくない。
なお、全巾で4mm〜20mmの範囲に塗布するとは、縫目の左右2mm〜10mmに塗布すると、全巾は片巾の2倍であるから、同義語で表現したまてである。
また、シャツなどのポケットや剣ボロについては、パッカリングの目立つ内側のみ(例えば、ポケットの縫目の内側のみ)に樹脂加工剤を塗布しても、シームパッカリング防止効果を得ることができる。尚、剣ボロとは、剣先型の袖パーツで、袖をまくりやすいように切れ込みを入れてあるパーツである。独立パーツとして縫い付けてあることが殆どである。
【0035】
セルロース繊維素反応型樹脂加工剤の塗布方法としては、衣服の縫目に沿って樹脂加工剤(好ましくは、触媒或いは糊剤や染料などを混合した水溶液)を、ガス状にして付与する方法、パディング法、浸漬法、スプレー法、プリント法、コーティング法、グラビア法、泡加工法、又はハケ,ブラシ,ローラー、注射器等を用いて塗布する方法がある。
上記のスプレー法とは、トリガータイプの容器,エアゾールタイプの容器等を用いて、樹脂加工剤を噴霧する方法である。
また、縫製時に縫目部分だけに簡易的な樹脂加工を施す為、生地はいかなるものであっても良く、引張強力や引裂強力などの低い生地の場合は、適宣塗布する樹脂濃度を低めに調整して対応し、強力の高い生地の場合は、適宣塗布する樹脂濃度を高めに調整して対応する。尚、引張強力とは、一定幅の布地を引っ張ったときの切断荷重を意味し、布地の機械的強度特性を表す。
【0036】
樹脂加工剤の添加量は、上記のように特に限定されるものではなく縫製品を構成しているセルロース系繊維含有構造物の強力に応じて適宣選択すれば良いが、セルロース系繊維含有構造物の重量に対して、該構造物が樹脂加工されていない場合は固形分濃度で2〜10重量%、該構造物が樹脂加工されている場合は1〜5重量%の範囲が好ましい。
ところで、樹脂加工剤を塗布後、溶剤の量が多い場合は、乾燥工程を入れてもよい。
その際、樹脂加工剤付与後の乾燥は、自然乾燥や熱風乾燥を行なえば良いが、下記の様にプレス又はアイロンで乾燥と熱処理を同時に行なうこともできる。
【0037】
7.熱プレス
本発明において熱プレスとは、熱を加えることにより、セルロース系繊維含有構造物からなる縫製品の縫目に塗布されたセルロース繊維素反応型樹脂加工剤をセルロース系繊維の表面の水酸基との反応を促進し、またセルロース系繊維を可塑化させ、さらにプレスすなわち圧力を加えることにより可塑化させたセルロース系繊維含有構造物を熱とともに移動させ、縫製で生じた縫目の凹凸(シームパッカリング)を伸ばして平滑にすると同時に熱処理を行なってセルロースと樹脂加工剤を反応させて、伸ばした平滑な状態で生地の形態を安定化させシームパッカリングを消去し、その後常温に戻すことにより、平坦化されたセルロース系繊維含有構造物を固定化することにより、シームパッカリングが再発しないようにする工程である。
【0038】
熱処理はアイロン掛けでも可能であるが、アイロン掛けの場合は念入りに行なう必要があり、熱処理の方式としては、圧力をかけて縫製で生じたシームパッカリングを伸ばすことができる熱プレス機械方式が望ましい。
熱処理条件として、熱処理温度と時間は、使用する樹脂加工剤に応じて適切な温度と時間を選択すれば良いが、温度は150〜170℃の範囲が好ましく、時間は20秒以上が好ましい。
プレスの場合のプレス圧力は、1.0kgf/cm2以上が好ましい。
また、熱プレス工程は、溶剤の量が少ない場合は乾燥工程も兼ねることができる。
【0039】
8.シームパッカリングが防止された縫製品
本発明のシームパッカリングが防止された縫製品は、縫製後プレス又はアイロンにより伸ばされて平らになった縫目部分の生地は、樹脂反応によって形成されたセルロース分子間の架橋結合により、縫製後プレス又はアイロンにより伸ばされた状態で生地形状がセットされて収縮しなくなるので、洗濯によるシームパッカリングの発生を解決することができる。
本発明は特にプレキュア方式の樹脂加工品や樹脂加工を行なわない生地に対して顕著なパッカリング防止効果がある。
【0040】
【実施例】
以下、シャツのポケットの縫目についての具体的な実施例を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1]
生地として綿100%平織(経糸が50S,密度148本/インチ、緯糸が80S/2,密度70本/インチ)のプレキュア樹脂加工品を用いて、一般的なシャツの縫製工程に従ってポケット部を縫着した上前身頃のパーツを作成した(図1参照。)。
なお、上記の身頃とは、裁縫用語であり、体の前と後ろを覆う部分、すなわち胴部を包む衣服の部分の総称で、衿や袖とは区別される。
肩より裾までの前の部分を前身頃、肩より裾までの後ろの部分を後ろ身頃という。また前身頃の上部を上前身頃といい、前身頃の下部を下前身頃という。
市販の小型ハケを使って、図のポケット部の縫目に沿って縫目の左右5mm、合わせて1cmの巾で樹脂加工剤を塗布した。
樹脂加工剤は、表1の樹脂処方(2種類)に示した薬剤に水を加え、100mlに調整した。
【0042】
上記樹脂加工剤を塗布後自然乾燥させ、平板プレス(神戸プレス製)を用いて、温度160℃、時間30秒、プレス圧力2.0kgf/cm2の条件でプレスした。
プレス後の上前身頃を洗濯して、洗濯前後のポケット部のシームパッカリングを判定した。
比較試料として、ポケット部の縫目に樹脂加工剤を塗布せず同じ条件でプレスした上前身頃を作成した。結果は表2の通りである。
樹脂加工剤を塗布したものは、塗布なしのものよりもパッカリング等級値がかなり高くなり、シームパッカリングが発生し難く良好な結果となった。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
[実施例2]
綿100%平織(経糸が50S,密度148本/インチ、緯糸が80S/2,密度70本/インチ)を表1の樹脂加工剤(▲1▼及び▲2▼の2種類)にて処理し、乾燥後加熱キュアした生地を得た。
この生地を用いて、一般的なシャツの縫製工程に従ってポケット部を縫着した上前身頃のパーツを作成した(図1参照。)。
【0046】
市販の小型ハケを使って、図のポケット部の縫目に沿って縫目の左右5mm、合わせて1cmの巾で触媒(ホウ弗化亜鉛濃度45%の水溶液:森田化学製)5mlに水95mlを加えて計100mlとした触媒液を塗布した。
上記触媒液を塗布後自然乾燥させ、平板プレス(神戸プレス製)を用いて、温度160℃、時間30秒、プレス圧力2.0kgf/cm2の条件でプレスした。
プレス後の上前身頃を洗濯して、洗濯前後のポケット部のシームパッカリングを判定した。
比較試料として、ポケット部の縫目に触媒液を塗布せず同じ条件でプレスした上前身頃を作成した。結果は表3の通りである。
触媒液を塗布したものは、塗布なしのものよりもパッカリング等級値がかなり高くなり、シームパッカリングが発生し難く良好な結果となった。
【0047】
【表3】
【0048】
[実施例3]
生地として綿100%平織(経糸が50S,密度148本/インチ、緯糸が80S/2,密度70本/インチ)の樹脂加工品(白)を用いて、一般的なシャツの縫製工程に従ってポケット部を縫着した上前身頃のパーツを作成した。
市販のプラスチック製糊液塗布容器(不易糊工業製)に、樹脂加工剤を入れて、ポケットの縫目の内側のみ10mmの巾で樹脂加工剤を塗布した。
その樹脂加工剤は、表4の樹脂処方(2種類)に示した薬剤に水を加え、100mlに調整した。
【0049】
上記樹脂加工剤を塗布後自然乾燥させ、平板プレス(神戸プレス製)を用いて、温度160℃、時間30秒、プレス圧力2.0kgf/cm2の条件でプレスした。
プレス後の上前身頃を洗濯して、洗濯前後のポケット部のシームパッカリングを判定した。
比較試料として、ポケットの縫目の内側に樹脂加工剤を塗布せず同じ条件でプレスした上前身頃を作成した。結果は表5の通りである。
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
表5に示す結果から判るように、ポケットの場合は、縫目の内側だけの塗布でも、良好なパッカリング防止効果が得られた。
また、樹脂加工剤に蛍光染料(蛍光増白剤)と糊剤を添加することにより、塗布部分の白度低下と塗布液のシミ広がりを防ぐことができた。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂加工液を縫製品の縫目に塗布するという簡単な操作でシームパッカリング、特に洗濯後のシームパッカリングを著しく改善することができる。また、塗布作業なので縫合部の形状が曲線や複雑な形状であっても対応できる。
縫製は、通常の縫製と何ら変わりなく、縫合部の樹脂加工は、ドレスシャツ等の縫製工程における通常のプレス掛け、アイロン掛け工程での熱処理で十分なパッカリング防止効果が得られるため、作業性を低下させることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なシャツの縫製工程に従って、ポケット部を縫着したシャツの上前身頃を示す図。
【符号の説明】
1 シャツの上前身頃
2 シャツのポケット部
3 縫目(シーム)
Claims (8)
- セルロース系繊維含有構造物からなる縫製品の縫目にセルロース繊維素反応型樹脂加工剤を塗布した後、熱プレス処理を行なうことを特徴とする縫製品のシームパッカリング防止方法。
- セルロース繊維素反応型樹脂加工剤は、エポキシ基、カルボキシル基、又はメチロール基から選ばれるいずれかの官能基を分子内に少なくとも2個有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の縫製品のシームパッカリング防止方法。
- セルロース繊維素反応型樹脂加工剤は、N−メチロール尿素化合物であることを特徴とする請求項2に記載の縫製品のシームパッカリング防止方法。
- セルロース繊維素反応型樹脂加工剤は、触媒又はそれと助触媒を添加して使用することを特徴とする請求項2に記載の縫製品のシームパッカリング防止方法。
- セルロース系繊維含有構造物が予めセルロース繊維素反応型樹脂加工剤と触媒で処理されている場合には、縫製品の縫目に、触媒のみを単独で塗布することを特徴とする請求項1に記載の縫製品のシームパッカリング防止方法。
- セルロース繊維素反応型樹脂加工剤には、さらに、染料、蛍光染料、顔料、蛍光顔料又は糊剤の少なくとも一種が添加されることを特徴とする請求項1に記載の縫製品のシームパッカリング防止方法。
- 熱プレス処理は、熱プレス機械又はアイロン掛けにより行われることを特徴とする請求項1に記載の縫製品のシームパッカリング防止方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の縫製品のシームパッカリング防止方法により加工処理されたセルロース系繊維含有構造物からなる縫製品。
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