JP2004100115A - 衣類、姿勢形成方法およびトレーニング指導方法 - Google Patents

衣類、姿勢形成方法およびトレーニング指導方法 Download PDF

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Takeshi Ogino
荻野 毅
Kenjiro Mori
森 健次朗
Tetsuhiro Yamashita
山下 哲弘
Yoshihiro Chijimatsu
千々松 芳弘
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Abstract

【課題】着用により身体のバランスや支持力が向上し、運動効果を最大に引き出せる衣類と、それに基づく姿勢形成方法とトレーニング指導方法とを提供する。
【解決手段】抗重力的作用下において、姿勢と利きを伴う神経伝達との差異による筋緊張の強弱で区分された筋群の中から選択される少なくとも1つの筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、刺激部材を設けて筋の神経伝達の即通を与えて所望の筋の筋意識を高めて理想の姿勢を形成する方法。上記刺激部材を設けて理想の運動を行わせるトレーニング指導方法。着用状態で、上記刺激部材を設ける位置に点刺激部21が形成されたタイツ2a。
【選択図】 図23

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、運動時の使用に好適な衣類と、姿勢形成方法と、トレーニング指導方法とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
そもそも人間の脳には、この世に誕生してから成長する過程で、まず、手足身体をどのように動かすかという基礎的な神経伝達回路が形成されていくが、その次の段階として、右利き左利きといった非対称的な不均等な動きに関する神経伝達回路も、すでに幼少期から形成され始める。これに加えて、人間は、地上にいる限り、重力を受けた状態で生活するため、上記したような左右不均等な利きの要素を持って重力を受けたまま成長することで、高いボディーバランスや左右前後・ねじれに対し均等な身体支持力を持った状態を保つということが難しくなっている。すなわち、人間は、普段あまり意識していない固有感覚というものによって身体各部位の相対位置を知覚しているが、この固有感覚自体は、上記したようなボディーバランスや身体支持力の不均等要素を持っているので、この固有感覚とともに発達する筋肉や骨格などは完全な均等ではなく、厳密には不均等である。
【0003】
これに相反し、運動を行う場合、優れたパフォーマンスを発揮するためには、高いボディーバランスや身体支持力が要求される。したがって、ある一定の強度や関節行動許容範囲を越えて運動を行ったり、固有感覚に任せて強度の高い運動をし続けると、一部の筋肉や関節に負担がかかり過ぎて怪我をしてしまうことがある。
【0004】
そこで、従来より、このような経過(身体バランスを崩したことに原因をおく)をたどり怪我をしてしまった場合、上記したような負担のかかる筋肉や関節に、テーピングを行ったり、サポーターを着用したりすることで、これらの筋肉や関節を援助してボディーバランスや身体支持力を維持することが行われている。また、怪我をする前であっても、経験的に負担のかかる筋肉や関節を理解しているような場合には、あからじめ上記したようなテーピングを行ったり、サポーターを着用したりすることが行われている。
【0005】
また、このような一部の筋肉を支持しながら関節の支持力を援助することによって、怪我(肉離れ、靱帯や腱の断裂や損傷)の予防を図るとともに、運動の際の筋肉の動きを妨げないようにするための衣料品として、特定の筋肉を弱圧接するとともに、これら筋肉の脇側縁近傍を強圧接するようになされたものや、肘や膝の関節の中央部を弱圧接するとともに、この周縁部を強圧接したりするようになされたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、従来より、上記したような衣料品を使用する以外にも、運動を行う人間が、怪我をせずに運動能力が向上するように、トレーナーによるトレーニング指導も行われている。このようなトレーナーによるトレーニング指導は、運動を行う人間の動きを見て悪い点を正すように指摘したり、上記したような負担のかかる筋肉を鍛えて活動に備えることが行われていた。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−117382号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、打撲時のように、人は、皮膚または筋肉に多大なる刺激を受けた場合、この痛みを早期軽減または抑制するために、手を当てその受傷部分を軽擦することによって痛みが軽減することを本能的に理解している。このことは、ルード(Margaret Rood )によっても、軽圧擦(ブラッシング)等の刺激により痛みが軽減することが、証明されている。他にも、実例として、軽圧擦(ブラッシング)の効果としては、過度の発汗の減少が認められる。これは、例えば、着物の着付けなどの作業をやられる方の間では、着物などの着付けの際、帯や紐の圧迫により汗を止める効果があることを経験上で知っており、実施されている。これらの事象から見られるように、皮膚の面状の圧迫や接触は、交感神経に対する抑制効果を持ち、副交感神経様興奮を起こすことが判っている。また、人は、血行の循環を促進するために、皮膚表面上を軽擦し、副交感神経を刺激することにより血管の拡張を図かり、筋肉に対する血流量を促進させうることも知っている。この現象は、筋肉にもよくあらわれる現象であり、肩凝りの際等に行う抑按調摩(リンパマッサージ等)によって筋への血流を図り、筋を緊張緩和させようとしていることによっても理解されるところである。これらの現象は、理論的に「関門の閉鎖」とルード(Margaret Rood )は紹介している。「関門の閉鎖」の理論では、筋や皮膚に対する軽圧擦(ブラッシング)の刺激は、非侵害性C線維伝導路により伝えられ、前シナプス抑制を行ったり、一次求心性線維の脱分極の低下を起こすと紹介されている。また、これらの現象により、疼痛の軽減や筋緊張の緩和が起きるとされている。また、これらの刺激は、皮膚分節や筋分節に相当した機能的皮膚領域(FUNCTIONAL SKIN AREA) に適応された時に最適な効果が得られることが判っている。
【0009】
したがって、上記従来の衣料品では、積極的に動かす筋肉を強圧接するようになされている構造であるため、上記理論から見ると、筋肉の緊張を緩和させてしまうこととなり、従来の衣料品の目的である関節の固定および筋肉に対する筋力の補助的な効果が認められないこととなる。
【0010】
また、上記従来の衣料品では、これらの現象により、過度の神経と筋緊張の緩和を適切ではない筋肉や皮膚などに施工しているので、関節に対する筋肉による支持力を低下させたり、筋肉の収縮により起こる円滑な関節運動をも阻害する結果となる。よって、本発明品での解決される課題としては、運動中における筋肉の緊張が高く、これにより円滑な運動を阻害し得る場所に筋肉および神経の促通を図る技術を施すことにより、体全体の運動時のバランス能力や運動行動能力を向上させることを目的としているので、上記従来の衣料品とは、その目的が大きく異なることとなる。
【0011】
また、上記従来の衣料品は、一部の筋肉の脇側縁部近傍を、強圧接によって支持することで、この筋肉による関節の支持力を援助するようになされているため、健常者がこの衣料品を着用して運動を行った場合、筋肉には、本来運動によって加わるべき負荷が完全に加わらず、充分な運動効果を得ることができないことになってしまう。すわなち、上記従来の衣料品によるサポート的力が、筋肉に加わるべき負荷を代わりに吸収してしまうため、正しい動きで運動を行っている時にも、この正しい動きによって筋肉に加わるべき負荷の一部を、衣料品のサポート的力が援助して干渉してしまうこととなる。
【0012】
また、上記従来の衣料品は、怪我の発症する部位の関節や筋肉を支持するようになされているため、この衣料品を着用した状態では、ある程度のボディーバランスや身体支持力が保てることになるかもしれないが、この衣料品を着用して運動を続けると、この衣料品によって支持される筋肉や関節に加わる負荷と、この衣料品によって支持されない筋肉や関節に加わる負荷とに差が生じるので、運動すればするほど、運動効果に差ができてしまい、ボディーバランスや身体支持力の乱れを助長することになってしまう。
【0013】
さらに、上記従来の衣料品は、肘や膝の関節の中央部を弱圧接するとともに、この周縁部を強圧接したりすることによって、関節の支持力を援助するようになされているが、本来のサポーターの能力としては、前後左右への関節の動揺性を止めることしかできない。確かに、関節部での動揺性を軽減することは、怪我の発生を減少させ得る。しかし、運動中に発生する垂直性の負荷(抗重力的作用)により発生する痛みなどに関しては、抑制・助長作用は、何の効果も認めることはできない。なぜならば、膝関節部における運動に対する抗力(抗重力的作用)の発生は、膝関節部での関節への内圧を高めるような方法(膝の屈伸運動不能な程の強圧迫)以外では困難なものであり、また、それを助長されるとする装具の場合、ある程度の効果しか見込めない。が、本来、運動により発生する障害は、持続的な垂直性負荷による関節軸への動揺との変位から誘発されているものであり、また、関節とは、柔と剛という矛盾する運動を表現しなければならない関係上、このような重度の関節固定をすることは、不可能な方法となる。つまり、垂直性負荷を他の関節に移動する方法か、関節そのものから取り除く方法以外、改善する手段は無い。よって、後述する足関節中心の運動(アンクルリフレクション)によって起きる過度の前傾姿勢から来る膝関節部への垂直性の過負荷を軽減させない限り、膝関節での障害を軽減することはできないし、また、膝関節に対する装具的補助だけでは、改善を見込めないこととなる。したがって、膝関節等における関節内軟部組織(関節円板等)にかかる負荷も軽減させることは、上記従来の衣料品などでは、ありえないことになる。
【0014】
さらに、上記従来の衣料品は、怪我の発症する部位の関節や筋肉を支持するようになされているが、これらの関節や筋肉は、怪我が実際に発生する関節や筋肉であって、怪我の発症原因となる関節や筋肉ではない。したがって、上記従来の衣料品を着用しても、怪我の発症を根本的に解決することができない。
【0015】
また、上記従来のトレーニング指導方法のように、運動を行う人間の動きを見て悪い点を正すように指摘しても、その指摘を受けた人間が、常に正しい動きを意識的(錘体路系)に心がけながら運動を行わなければ意味が無く、指摘された点を忘れてしまうと、固有感覚に任せた運動(錘体外路系)になってしまい、固有感覚による不均等要素が出てくることとなる。実際にスポーツを楽しんでいる人は、付きっ切りでトレーニング指導を受ける状況にないのが通常であるため、指摘された点を意識的(錘体路系)に心がけながら運動を行うことが困難になり、不均等要素を持った固有感覚に任せた運動(錘体外路系)から抜け出して運動を続けることができない。また、悪い点を正すように指摘されても、正しい動きを意識して作り出すまでに相当な時間(固有筋神経に対する促通動作が完成されるまでの時間・コントロールされた運動性を獲得するまでの時間)を要することとなる。正しい動きを意識して作り出せたととしても、その運動が普段あまり意識していない固有感覚に任せた運動(錘体外路系)に定着するまでには、さらに相当な時間(錘体路系の運動から反射活動である錘体外路系へと移行する時間)を要することとなる。
【0016】
また、上記従来のトレーニング指導方法のように、負担の係る筋肉を鍛えて活動に備える場合、鍛えられた筋肉によって怪我への耐久性が増すだけで、怪我をしないような動きのできる高いボディーバランスや身体支持力(しなやかな動き・コントロールされた運動性)を作り上げることができない。
【0017】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであって、着用することにより高いボディーバランスや身体支持力を得ることができ、運動効果を最大限に引き出すことができる衣類と、それに基づく姿勢形成方法とトレーニング指導方法とを提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の衣類は、抗重力的作用を伴う運動において、姿勢の差異および利きを伴う神経伝達の差異による筋緊張の強弱で区分された筋群の中から選択される少なくとも1つの筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、着用状態でその筋の神経伝達の促通を与える刺激部が形成されたものである。
【0019】
また、上記課題を解決するための本発明の姿勢形成方法は、抗重力的作用を伴う運動において、姿勢の差異および利きを伴う神経伝達の差異による筋緊張の強弱で区分される筋群の中から選択される少なくとも1つの筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、刺激部材を設け、この刺激部材を設けた筋の神経伝達の促通を促して所望の筋の筋意識を高めることで理想の姿勢を形成するものである。
【0020】
さらに、上記課題を解決するための本発明のトレーニング指導方法は、抗重力的作用を伴う運動において、姿勢の差異および利きを伴う神経伝達の差異による筋緊張の強弱で区分される筋群の中から選択される少なくとも1つの筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、刺激部材を設け、この刺激部材を設けた筋の神経伝達を促通して所望の筋の筋意識を高めて運動を行わせるものである。
[抗重力的作用を伴う運動に対する姿勢および利きを伴う神経伝達の差異]
人間の脳には、右利き左利きといった非対称的な不均等な動きに関する神経伝達回路が形成されている。人間の脳は、このような不均等要素を持ったまま、普段あまり意識していない固有感覚と言うものによって、身体各部位の相対位置を知覚している。したがって、この固有感覚とともに発達する筋肉や骨格などは、完全な均等ではなく、厳密には不均等であり、あらゆる部位に、この利きの影響があらわれている。
【0021】
この利きの影響下において、人間には、地球上で立位若しくは座位等の姿勢を維持しながら、運動・作業する上で常に働き、抵抗しておかなければ運動そのものが成立しない重力への力といったものが存在する。この抗重力状態において、優先的・反射的に選択して使用している筋肉群は、総称して抗重力筋と呼ばれ、その殆どが伸筋によって構成されている。この抗重力筋というのは、上記した利きの影響に加えて、人種、生活週間、遺伝などの要因の影響を受ける。
【0022】
例えば、閉眼状態で起立位をとった場合、運動姿勢が前傾位の人間(黄色人種や運動苦手者の典型的なパターン)は爪先側に体重が乗った前傾姿勢を採ることが多く、運動姿勢が後傾位の人間(中南米人や運動上達者の典型的なパターン)は踵側に体重が乗った後傾姿勢を採ることが多い。また、この閉眼状態から片足立ちとなった場合、上記した運動姿勢が前傾位の人間(黄色人種や運動苦手者の典型的なパターン)は、右利きでは右足足尖部小指側荷重と左足足尖部拇指側荷重となり、左利きでは左足足尖部小指側荷重と右足足尖部拇指側荷重となる姿勢を採ることが多く、運動姿勢が後傾位の人間(中南米人や運動上達者の典型的なパターン)は、右利きでは左足踵後部小指側荷重と右足踵後部拇指側荷重となり、左利きでは右足踵後部小指側荷重と左足踵後部拇指側荷重となる姿勢を採ることが多い。
【0023】
日本人や運動苦手者の場合、図1に示すように、右利きでの平均的な運動姿勢は、右足足尖部小指側荷重と左足足尖部拇指側荷重であり、この時のボディーバランスおよび身体支持力は、特に、左下腿部後面、左大腿部前面、左腹筋上部、右僧帽筋上部の筋肉により制御・支持されており、さらに、右下腿部後面、右大腿部前面、右腹筋上部、左僧帽筋上部の筋肉により、より強く制御・支持されている。これらの部位の筋肉群は、抗重力的作用を伴う運動において、筋緊張を強く生じ、左利きではこれと対称なものとなる。
【0024】
これに対して、中南米人や運動上達者の場合、図2に示すように、右利きでの平均的な運動姿勢は、左足踵後部小指側荷重と右足踵後部拇指側荷重であり、この時のボディーバランスおよび身体支持力は、特に、右下腿部前面、右大腿部後面、右臀部後面、右腹筋下部、右脊柱起立筋の筋肉により制御・支持されており、さらに、左下腿部前面、左大腿部後面、左臀部後面、左腹筋下部、左脊柱起立筋の筋肉により、より強く制御・支持されている。これらの部位の筋肉群は、抗重力的作用を伴う運動において、筋緊張を強く生じ、左利きではこれと対称なものとなる。
【0025】
このように、抗重力的作用を伴う運動において、利きを伴う神経伝達の強弱を考慮すると、筋緊張を強く生じる筋の配置バランスは、前傾位右利き、前傾位左利き、後傾位右利き、後傾位左利きのそれぞれで異なる。また、実際には、刺激で筋神経を促通する方向は、上記の制御・支持されている筋肉とは、相反的な活動を表現している部分となる。
【0026】
このような前傾位右利き、前傾位左利き、後傾位右利き、後傾位左利きは、普段あまり意識されていない固有感覚・固有の筋肉によって、身体の各部位の相対位置を知覚している(姿勢性の反射活動)。表1ないし表8は、前傾位右利き、前傾位左利き、後傾位右利き、後傾位左利きのそれぞれにおける抗重力的作用を伴う運動からみた筋緊張の強弱を「特に強い」、「強い」、「弱い」、「特に弱い」の四つに区分して示している。
【0027】
この表1ないし表8に示すように、筋の緊張の強弱を、「弱い」、「特に弱い」、「強い」、「特に強い」の四段階に分けて表記しているが、これは、左右利き腕以外にも一方側の四肢部を動かす上で、腕を例に挙げるとすると、その一本の腕の中にも橈側と尺側と言う二つの筋肉の流れの方向がある。この筋肉にもそれぞれの利きと言うものが存在するために、体を大まかに分ける右利き左利きという表現だけではこれには足りず、その強い中にも強弱(利き側)、弱い中にも強弱(非利き側)が存在するため、上記のような四つの表現方法を用いることとする。ここで言う特に強い筋肉は、利き側のより活動的な筋を示し、次に強い筋肉に関しては、同利き側の働きの弱い側の筋肉を表している。また、特に弱い筋肉とは、非利き側で活動が弱く、また、身体上の同位置の筋肉群で最も弱く働いている筋肉のことであり、弱い筋肉とは、非利き側ではあるが、特に弱い筋肉群よりも活動の高い筋肉を言う。
【0028】
また、表9および表10は、理想の運動姿勢における抗重力的作用を伴う運動からみた主軸となる筋肉および関節と、それに協調補助的に活動している筋肉および関節との二つに区分して示している。
【0029】
【表1】
Figure 2004100115
【0030】
【表2】
Figure 2004100115
【0031】
【表3】
Figure 2004100115
【0032】
【表4】
Figure 2004100115
【0033】
【表5】
Figure 2004100115
【0034】
【表6】
Figure 2004100115
【0035】
【表7】
Figure 2004100115
【0036】
【表8】
Figure 2004100115
【0037】
【表9】
Figure 2004100115
【0038】
【表10】
Figure 2004100115
【0039】
上記表1ないし表10において、伸筋とは、重力に抗する力を持ち、関節を伸展位へと導く、多関節筋および単関節筋を示す。また、屈筋とは、重力に対し、関節を屈曲位へと導く、多関節筋および単関節筋を示す。さらに、回旋筋とは、肩および股関節等の回転軸運動において、体幹に対して内向きまたは外向きに働く軸運動を形成する筋肉を示す。
[多関節筋と単関節筋]
同表1ないし表10は、それぞれの筋を、多関節筋と単関節筋とに分類している。
【0040】
関節には、関節運動の自由度と呼ばれるものがあり、特に能力の高い部分から順に自由度三度、二度、一度と分けて表現されている。関節自由度三度の関節の代表として肩関節と股関節とが挙げられる。これらの関節における運動の軸は、前後左右に止まらず斜め、回転といった運動形態をも含んでいる。これらの関節に対し、膝関節部は、運動自由度一度と呼ばれる関節で、前後の運動軸に対する制御・支持しか担当していない。このように、関節運動は、柔軟性の高さと支持力の強さとの矛盾・相反する条件をクリアーして成り立つことができるように、柔軟性の高い関節と、支持力の強い関節とで、それぞれ役割分担を持っている。また、これらの関節に作用し、ボディーバランスや身体支持力を形成しているのが筋肉(正しい抗重力筋活動)である。
【0041】
多関節筋は、上記した関節の二つ以上の関節に作用する筋である。
【0042】
単関節筋は、上記した関節の一つに作用する筋である。
[解剖学的姿位に対する三次元的主動・拮抗筋活動]
関節・筋肉活動の三次元的構造を解剖学的な姿位から説明するにあたって、理解しておかなければいけない三つの面が存在する。これらは、医学文献に準ずる解剖学的な姿位からみた矢状面、前額面、水平上下面である。これら三つの運動面から構築される三次元的な関節・筋肉活動によって、円滑な運動形態が作られている。
【0043】
これら三次元的な活動は、筋肉の促通方向である主動的活動部分と、抑制方向である拮抗的活動部分とに分ける以外にも、動的活動を主体とする筋肉と、支持的活動を主体とする筋肉も分類しておかなければならない。なぜならば、抑制的筋活動は、強く促通し、活動している筋肉に対し、一方は、コントロール方向へと働き、もう一方は、その主動拮抗的に起こっている筋活動を支持することをも三次元的に行っているためである。
【0044】
抗重力的作用を伴う運動において、右利き、左利きといった利きを伴う神経伝達の強弱や、前傾、後傾といった運動姿勢を考慮した場合、運動は、二次元的に簡単に述べるならば、図3に示すように、最も活動的な主動側の筋肉活動(以下、単に主動筋活動という)と、それに対して次に活動的な拮抗抑制側の筋肉活動(以下、単に拮抗筋活動という)、また、主動側に対し、前者二つの次に活動的な支持側の筋肉活動(以下、単に支持筋活動という)と、それに対し、主動筋活動に対して補助活動的な支持側の筋肉活動(以下、単に補助筋活動という)という四つの異なる働きを持つ筋肉の活動によって形成されることとなる。
【0045】
しかしこの関係は、単に二次元としてとらえられる運動ではなく、三次元的にとらえられ、昇華されることにより、初めて効率の良い運動形態が得られることとなる。例えば、股関節の屈曲時および伸展時における大腿部の筋肉活動を右大腿部を例にとって簡単に図式化すると、図4および図5に示すように表現される。この図のように、大腿部の筋肉活動は、直線的な活動(前方方向)を形成する筋肉群だけでも、大腿部の上下で、それぞれ四つの異なる筋肉活動(主動筋活動、拮抗筋活動、支持筋活動、補助筋活動)が起きることによる合計八つの筋肉活動によって構成されている。
【0046】
また、このような身体の一部分の筋肉活動を、関節を交えてもう少し巨視的に見てみれば、これら上記の四つの動きの表現は、その上下の関節での運動とも協調的に密接に関与しており、例えば、股関節の屈曲時および伸展時における臀部周辺の筋肉活動は、図6および図7に示すように表現される。この場合、筋肉活動は、上記した大腿部での八つに加えて、股関節上方でさらに四つの筋肉活動(主動筋活動、拮抗筋活動、支持筋活動、補助筋活動)が起きることとなる。ただし、それに加えて関節は、柔軟性と支持性といった矛盾・相反する二つの運動を表現しなければならないので、このような股関節を交えた関節・筋肉活動では、図8に示すように、四つの異なる筋肉活動(主動筋活動、拮抗筋活動、支持筋活動、補助筋活動)の組み合わせだけでなく、活動の有効性を高めるために、回旋性の支持力を持たせる巧緻筋活動も加えて構成されることとなる。
【0047】
さらに、上記したような身体の一部分の筋肉活動を、上記とは逆にもう少し微視的に見ると、一つの筋の中においても、これらのような細分化された筋活動は起こっている。例えば、股関節の伸展筋の一つである大腿二頭筋をとってみてもわかるように、長頭と短頭では、それぞれ多関節筋と単関節筋という二つの側面をもっており、長頭の股関節伸展機能およびその活動を協調的に補佐している膝関節屈曲運動と、大腿二頭筋短頭での単関節で支持的な作用を持つ主動と補佐的関係が存在することからもわかることと思う。また、大腿後面特に大腿二頭筋の場合、日本人または運動苦手者は、単関節作用筋である大腿二頭筋単頭の損傷(肉離れ等)が多いことなども挙げられる。これは、このあと説明する日本人や運動苦手者に代表されるアンクルリフレクションがすごく影響している。またさらに、大腿四頭筋上では、この内外側や多関節、単関節などの働きと筋力の強弱の違いによる事象によって発症していると言われているQアングル異常による膝蓋骨外方性亜脱臼症候群などに代表される症状などからも見て取れることと思われる。これは、股関節および膝関節部以下の関節活動の協調性の乱れと大腿四頭筋部における内側広筋および外側広筋との筋肉の強弱関係によって引き起こされることがわかっている。人の非対称的活動というものは、前述のような疾病に発展することが無いまでも、これらの筋肉および関節による非対称的な少ない動きの不具合性や不安定性でも運動中に起き得る怪我の発症起点となり得る可能性がある。
【0048】
このように、体全体は、複雑で非対称的な前後左右ねじれ等の動きを巧緻的にコントロールしながらスムーズで円滑な運動を表現しており、これら非対称的な筋活動を正しい運動軸へと導くような促通や抑制が必要となることは、容易に考察できるところである。
[理想的な運動姿勢]
理想的な運動姿位とは、椅子に座った姿勢での椅子に接した最下部座骨面から、頭頂部までを結ぶラインが運動基本的な関節と筋肉の軸となり、これに付随して肩および股関節とそれぞれの関節で起きる屈曲伸展、内旋外旋、内転外転運動が関節可動域上および筋肉の可動域上、限界ぎりぎりまで活動していることが大切である。また、膝より先の下腿部および肘より先の前腕部での関節活動に関しては、これは肩および股関節の関節および筋肉の可動域に対する補助的な活動により運動の効率を高め、最大限に使い切るものでなければならない。これらを主軸となる活動筋および関節、また、それをサポートする活動筋および関節とに分類したのが前述した表9および表10である。正しくかつ効率の高い活動を行わせる上では、この表9および表10に示すような活動となるよう関節および筋肉の働きを修正する必要がある。が、しかし、人間には、利き腕や利き脚に代表されるような”利き”と、前傾後傾とに分類される”姿勢”というものが存在しており、それぞれ特徴的な筋肉の活動と姿勢を採っている。(表1〜表8)大まかな基準として右利きや左利きなどの利き腕という表現をしているが、実際に分類している基準としては、促通がよくされている部分(利き)と促通が行われていない(非利き)、もくしは反射的に利用しやすくなっている(利き)か、反射的に使い切れていない(非利き)という表現の方がより正しい”利き”のとらえ方である。
【0049】
このため、この”利き”や”姿勢”を考慮して関節および筋肉の働きを、表9および表10に掲げる理想の姿勢表に近づくように修正しなければならない。
【0050】
ここで、理想的な運動姿勢を表現する上で必要な二つの運動形態を定義しておく。膝もしくは足首で運動の活動を表現しているタイプであるアンクルリフレクションと、股関節を中心としているタイプであるヒップリフレクションの二つである。例えて挙げるならば、前者のアンクルリフレクションは、高齢者等の歩行の際に見られる前かがみで前足重心的な運動活動であり、後者のヒップリフレクションの場合は、後傾で後足重心的な運動活動であり、運動上達者等によく見られる運動姿勢である。
【0051】
前傾位の場合、爪先に荷重がかかるため、足裏全体の面で身体を支持する必要性が高くなり、足関節自体での伸筋群(底屈筋群)での働きが促進され、よって、足首主体での運動であるアンクルリフレクションが運動の中心となってしまう。この場合の全身における体幹バランスの緊張表現は、僧帽筋、腹筋上部周辺、大腿部前面・下腿部後面の筋肉が中心となり、さらにこの部分の筋肉が強化されると、より前傾位を招き、アンクルリフレクションを中心とした運動形態に強化・固定してしまう。この場合、アンクルリフレクションの特徴として、運動基底面から受ける力を後発的に体幹が受けることとなる。すなわち、運動の支点が足関節へと移行し、この場合の力点は、下腿部後面筋群が主導筋となって作用点は、足底部となるため、運動のロスが多くなってしまう。これに伴い、股関節の伸展筋活動は、その機能を完全に発揮することはできなくなり、かつ、体幹の運動は二次的な質量バランスを中心としたものとなり、これらの部位での運動への補助・助長・強調的活動は、意味のないものとなってしまう。このために高齢者に見られる運動は、緩慢で鈍いものとなり、さらに、歩行時の足幅の現象も上記のような理由により発生している。また、運動下手者の場合では、体幹バランスの悪さをカバーするために、運動時の過度の緊張(無駄な力み)と運動能力の低下(運動音痴)としてとらえられることとなる。
【0052】
これに対して後傾位の場合、かかとに荷重がかかるため、足裏全体の面で身体を支持する必要性が無くなり、足関節周辺の筋群は刺激を受け無い。これにより、身体のバランス支持面は、足関節ではなくなり(底屈筋群の神経刺激および筋緊張が無くなるため、拮抗する足関節伸筋群の活動も起こすことができなくなるため)、他の関節へとその力の発現は、移行することとなる。この場合、自由下肢帯を形成している関節は、膝および股関節となってしまい、その力は、それらの関節へと移行することとなるが、関節自由度の低い膝関節では(関節自由度1度)、その多方向にわたる運動をその機能で完全にカバーすることはできないため(関節運動軸前後でのバランスしか制御できないため)、関節自由度三度の股関節へと力を移行することが必要となり、結果、ヒップリフレクションを中心とした運動形態へと変化を余儀なくされる。この場合、ヒップリフレクションの特徴として、体幹伸展機能(脊柱起立筋)との連動が促進されるため、重心を支点とした運動と体幹の安定および一体化、上下肢に対する均等な運動質量の振り分け、体幹で発生する筋力を正しく上下肢に伝える運動形態となり、これにより運動機能は著しく向上する。
【0053】
運動を円滑に行う上では、上肢および体幹部でつくり出した正しい軸上で起きる回旋の力を下肢へと伝えなければならない。また、運動が三つの点(力点、作用点、支点)というテコの原理上での活動を必要とするため、体幹部は、力点と支点という二つの活動を必要とされる。このため、体幹部は、回旋による支点の強化(濡れたタオル等を絞るとわかるように捩じることにより軸を支持する力は強化される)により、これら上記の二つの活動を円滑に表現している。よって、円滑な運動とは、体幹部全体を回旋の力を使って三つの異なる活動である固定・支持・運動面としながら、股関節部や肩関節部での回旋運動へとつなげ、四肢部へと力を伝えて行く伝達順番性をとらなければならないこととなる。また、投球動作等の複雑な回旋運動形態を表現する上では、上記のような伝達順番性を運動動作中に二回旋、三回旋と増やさなければ表現しきれないことになる。これらの回旋は、同一方向上に起きるのではなく、右から左へ左から右へというように、また体から見て内巻き(インスパイラルモーション)、外巻き(エクスターナルスパイラルモーション)というように活動が交互に起きることもわかっている。これら多岐にわたる回旋方向(トルネードモーション)が体幹運動軸という軸を要に起きることが最も理想的な運動活動といえる上、回旋系関節を除く各関節(関節自由度一度・二度の関節)には最も負担の少ない運動活動となる。
【0054】
骨盤が前傾傾向にある日本人や運動苦手者・高齢者の場合は、足関節主体の運動(アンクルリフレクション)が中心となり運動中に発生する筋力のロスが多くなる上に、上記までのような回旋系の力の発揮が行い難くなり、安定した活動を行うことができなくなる。一方、骨盤が立腰状態にある中南米人や運動上達者の場合には、その状態での股関節主体の運動(ヒップリフレクション)が中心となり、全身(特に上半身部)で発生する筋力のロスが極力抑えられることとなる(身体のほぼ中央部で支点が形成されるため)。また、上記のような回旋動作が円滑になり、可動方向性の低い関節にかかる負担も軽減する。
【0055】
したがって、平均的な運動姿勢が前傾位である場合には、後傾方向へと導き、正しくヒップリクレクションが起こる運動姿勢へと変える必要がある。逆に、平均的な運動姿勢が後傾位である場合には、前傾方向へと導き、より正しいヒップリフレクションがとれる様に変化させるべきである。これを活動の中心となるようにして運動を行えば、普段強く制御・支持・活動していなかった眠っていた筋肉を覚醒し強化できると同時に、普段強く制御・支持し、負担を強いられていた筋肉へのストレスを軽減して理想的な運動姿勢へと形成・変化できることとなる。
【0056】
また、上記のアンクルリフレクションおよびヒップリフレクションは、左右利き腕、利き脚等に多く影響を受けている。例えば、平均的な運動姿勢がアンクルリフレクションで右利き腕の場合、両下肢部では、右片側荷重前傾位が優位となり、より強く右爪先小指側に荷重がかかるため、右爪先小指側の面で身体を支持する必要性が高くなり、右足関節自体での伸筋群(底屈筋群)での働きが促進され、よって、右足首主体での運動である右変側アンクルリフレクションが運動の中心となってしまう。この場合、全身のバランスにおける筋肉の緊張表現は、左僧帽筋、右腹筋上部周辺、右大腿部前面・右下腿部後面の筋肉が中心となり、さらにこの部分の筋肉が強化されると、より右片側荷重前傾位を招き、右変側アンクルリフレクションを中心とした運動形態に強化・固定してしまう。この場合、右変側アンクルリフレクションの特徴として、運動基底面から受ける力を変側後発的に体幹が受けることとなる。すなわち、運動の支点が右足関節へと移行し、この場合の力点は、右下腿部後面筋群が主導筋となって作用点は、右足尖小指部となるため、左足および右側拇指側部の運動ロスが多くなってしまう。これに伴い、左右の股関節の伸展筋活動は、その機能を左右バランスよく完全に発揮することはできなくなり、かつ、体幹の運動は二次的な右変側質量バランスを中心としたものとなり、これらの部位での運動および左右バランスへの補助・助長・強調的活動は、意味のないものとなってしまう。
【0057】
これに対して平均的な運動姿勢がヒップレフレクションで右利き腕の場合、両下肢部では、左変側荷重後傾位が優位となり、より強く左踵後部小指側に荷重がかかるため、左踵後部小指側の面で身体を支持する必要性が高くなり、左かかとに荷重がかかるため、左足裏全体の面で身体を支持する必要性が無くなり、足関節周辺の筋群は刺激を受け無い。これにより、身体のバランス支持面は、左足関節ではなくなり(底屈筋群の神経刺激および筋緊張が無くなるため、拮抗する足関節伸筋群の活動も起こすことができなくなるため)、他の左側の関節へとその力の発現は、移行することとなる。この場合、自由下肢帯を形成している関節は、左膝および左股関節となってしまい、その力は、それらの左関節へと移行することとなるが、関節自由度の低い膝関節では(関節自由度1度)、その多方向にわたる左変側的な運動をその機能で完全にカバーすることはできないため(関節運動軸前後でのバランスしか制御できないため)、関節自由度三度で左股関節部へと力を移行することが必要となり、結果、左変側ヒップリフレクションを中心とした運動形態へと変化を余儀なくされる。この場合、左変側ヒップリフレクションの特徴として、体幹伸展機能(脊柱起立筋)との連動が促進されるため、左重心を支点とした運動と体幹の安定および一体化、上下肢に対する均等な運動質量の振り分け、上肢で発生する筋力を、変側的ではあるが正しく下肢に伝える運動形態となり、これにより運動機能は著しく向上する。が、しかし、この運動形態では、左片側方向のみの活動が著名となってしまうため、右下肢部で発生する筋力を無駄なく使い切ることは難しくなり、このため、右下肢部を促通し、活動させる必要性が発生する。つまり、左変側荷重を修正し、右側での筋肉活動が働き易くなる状態で、かつ、ヒップリフレクションを正しく形成できた場合に運動効率のロスが最も少なくなる。
【0058】
前記したように、日本人や運動苦手者の平均的な運動姿勢は、右利き腕の場合、前傾位右寄りであり、中南米人や運動上達者の平均的な運動姿勢は、右利き腕の場合、日本人や運動苦手者のそれに比べて後傾左寄り気味であり、それぞれ理想的な運動姿勢からは、前方および後方、左右片側寄りに重心がずれていることになる。
【0059】
したがって、そのまま運動を続けると、平均的な運動姿勢が前傾位の日本人や運動苦手者の場合は、ボディーバランスおよび身体支持力を強く制御・支持している筋肉、すなわち、僧帽筋、腹筋上部周辺、大腿部前面・下腿部後面の筋肉が強化されることとなるが、左右利き腕にも干渉を受ける。また、平均的な運動姿勢の中南米人や運動上達者の場合は、脊柱起立筋、腹筋下部周辺、各臀筋部(特に大臀筋)、大腿部後面、下腿部前面の筋肉が強化されることとなるが、これも左右利き腕に干渉を受けることとなる。
【0060】
例えば、図9(a)に示すように、右利き腕で平均的な運動姿勢が前傾位の日本人や運動苦手者の場合、上記までに説明したように、僧帽筋の発達が著明となるが、右腕が利き腕であるがために、上半身における身体の神経の促通状態は、右側が高くなり、よって、見かけ上、右の僧帽筋の発達が高く、それに比べると多少左の僧帽筋の発達は劣るが、平均的な前傾位の日本人や運動苦手者の場合は、もとより広背筋の発達が悪い上に右利きであるがために、左の広背筋の筋肉の発達が利き腕の右に比べると特に悪くなる。よって、見かけ上、僧帽筋より下部で背中を構成する筋肉の一つである広背筋は、同じ筋肉の左側に比べ、右側が発達するとともに、僧帽筋における場合でも同様で、同じ筋肉の左側に比べ、右側が発達する。が、しかし、これは、僧帽筋と広背筋という左右片側から見た上下に分けられる筋肉からのみの視点であって、脊柱を中心として左右のそれぞれの状態を比べた場合では、特に発達している筋肉は、右僧帽筋、次に発達した筋肉は、左僧帽筋、その次に発達したように見える筋肉は右広背筋、最も発達していない筋肉は左広背筋となり、前述したように、二次元的な筋肉の発達と神経促通状態の違いが発生していることとなる。また、これらの筋肉群以外にも、身体の前面部および横面部でも同様の筋肉発達の偏りが見受けられる。これを、背骨を回転の中心軸とした運動に例えるならば(野球のバッティングや投球動作など)、その構造はコマ状に例えられ、図9(b)に示すように、正しく同心円を構成するコマとはなり得ないので、その回転は不安定なものとなる上に、長い時間持続的な回転運動を続けることはできなくなる。
【0061】
ところで、運動時にとり得る姿勢が前傾位の場合を上記のようなコマとして例えるならば、図10(a)に示すように、コマの回転中心軸を前傾位の場合の運動重心軸がとることはなく円滑な回旋運動活動を起こすことは難しい。一方、理想とする運動形態の場合、図10(b)に示すように、コマの回転中心軸と運動重心軸が一致しているため、円滑な回旋運動活動を起こし易いこととなる。
【0062】
このように、コマの回転中心軸と運動重心軸とが不一致になる要因としては、図9に示したような体上に起きる左右非対称的な筋活動と筋肉そのものの重量バランスの違いによるもの(右利きの場合右の筋肉の発達が良くなる等の事象)や、図10に示したような運動時に取り得る姿勢が挙げられる。つまり、円滑な回旋運動活動を行うためには、前傾位をとる姿勢を中間位に修正するだけでは足りず、左右非対称的な体のバランスをも中間位(軸体を中心に同心円状に広がる体の均等対称状態)に修正する必要がある。走ったり、物を投げたりする状態を見てもわかるように、運動には、体でつくり出す回旋力が多く関わっている。この回旋を正しい体幹の軸のもとに表現することが最も効率がよく、円滑な活動になるといえる。また、この回旋を正しい体幹軸の元に表現するには、膝や足首を中心とした運動(アンクルリフレクション)では、関節そのものが回旋力を作る活動を行う上では関節可動性に乏しく、円滑な回旋活動を表現することができない。一方、股関節部を中心とした運動(ヒップリフレクション)では、股関節が回旋系関節であるため、容易にこの活動を表現することができる。このため、膝や足首で起きる運動は、股関節での回旋運動を二次的に補助増強するために必要とされることとなる。つまり、アンクルリフレクョンを中心とした運動活動では、理想の運動方法を表現することは難しいこととなる。
【0063】
これら上記二つの条件により、理想的な運動姿勢を表現する上では、左右を対称とした体のバランスと股関節からの活動であるヒップリフレクションの両立が最も運動効率がよく円滑な活動になるといえる。
[理想的な運動姿勢の形成]
上記したように前傾位を後傾方向へと導き、後傾位を前傾方向へと導いて具体的に理想的な運動姿勢を形成するとともに、左右のバランス異常を修正するためには、理想的な運動姿勢から離れ、崩れている関節や筋肉を選択し、前後面だけでなく、上下左右面、また、上下左右主動筋に対する拮抗的な活動を行っている筋肉をも強化しなければならない。
【0064】
強化する関節については、下肢の場合、前記した自由度三度、二度、一度の関節のうち、重心位置に近く、かつ、さまざまな運動形態が可能な股関節であり、また、自由上肢帯においては、重心軸に近く、かつ、さまざまな運動形態が可能な肩関節となる(ちなみに、両関節とも多方向へ運動可能な球状関節である。)。また、上記までのように、利き腕、利き脚も考慮しなければならないこととなる。
【0065】
また、強化する筋肉については、これら股関節や肩関節に作用する筋や、重心軸を形成する筋群が中心となり、かつ、非対称となる。これらの自由度三度の関節は、さまざまな運動方向への軸形成が可能であるため、非理想的な運動軸形態をとったままでもある程度の筋力を発揮することができる。しかし、これらの関節が理想的な運動形態をとった状態で支持されるように支持力の足りない筋肉を緊張させ、また、反対に支持力の強過ぎる筋肉を弛緩させれば、より理想的な運動姿勢を形成できることとなる。また、例えば、一方向の股関節だけでも多方向からの力を受けるため、その関節運動を構成する筋肉に関しても非対象性が認められることとなり、正しく修正し、より高い効率化を図る必要性がある。ただし、脊椎に固定された骨盤が支持面となって運動が行われる自由下肢帯である股関節とは異なり、自由上肢帯での運動の中心になる肩関節の場合、肩甲骨および肩関節の連動的な運動により、関節活動が形成されているため、前傾における僧帽筋の緊張は、肩甲骨を後上方に引き、それに伴って肩甲骨の固定を促進させることとなり、肩関節の円滑な運動を阻害する。
【0066】
したがって、肩甲骨の固定を促進させてしまう僧帽筋の緊張を取り除くことが円滑な運動を行う上では肝要であり、そのためには、立腰状態で活動を促進される筋肉(特に、大臀筋)の意識を高め、体幹と自由上肢帯がそれぞれ独立した運動を形成できうるようなボディバランスや身体支持力が必要となる。
【0067】
ここで僧帽筋について少し触れておくと、僧帽筋は、広背筋と縦方向での拮抗的役割を脊柱を中心の軸として行っており、簡単に言えば広背筋によって下後方へと修正され、また制御されていると言える。日本人や運動苦手者のように中心・支点となる起立筋・脊椎の働きも悪く、また、そのボディーバランスを僧帽筋に頼ってしまう者の場合、特に必要となる筋活動であるが、背中中央部より下側の筋肉と脊柱起立筋を発達させたり、意識的、または無意識・反射的に選択させその機能を充分に使うためには自由上肢帯の部分だけでの運動形態や過度の緊張状態を改善しなければならなくなり(肩甲骨の固定状態によって腕のみを使った上肢の運動となってしまうため)、前述したように姿勢そのものが前傾状態にあり、この運動に必要な筋肉群に意識を持たせ使いこなすことができない日本人や運動苦手者の場合には大変に困難を究める筋肉活動と言える。
【0068】
よって、上半身や自由上肢帯での運動を円滑に行うためには、全身から見た下半身の位置矯正と補正力が肝要となる。
【0069】
このように、脊柱の運動を補正・矯正・強化するためにも脊柱起立筋との連動運動活動を行う各臀筋部などの働きを重視したものでなければならない。
【0070】
理想的な運動姿勢を形成するにあたり、日本人を含めた黄色人種や運動苦手者が、なぜ前傾位をとるかについてもう少し考察する。
【0071】
前半部分で説明したように、黄色人種が運動・活動を行う場合、脊柱起立筋に対する運動および重力への感受性が、上肢の運動筋である僧帽筋に対して低くなることともう一点、臀筋部、(特にこの場合大臀筋を指しているのだが)脊柱起立筋を支え、補助している筋肉群の働きが悪いこととに起因して前傾しているものと思われる。なぜならば、バランスを採る上で脊柱起立筋の緊張なくしては、上肢の運動そのものが成り立たなくなるために前傾のポジションを採る事により背部全体の筋肉群への筋緊張を促そうとしているためと考えられる(運動が苦手な者の場合も同様で、その運動および筋肉活動は、そのほとんどが、重心固定のバランスと安定を図るために使われる。また、運動上達者や中南米人の場合には、大臀筋の持つ作用の一つである体幹の伸展を補助する力が発生しているので、脊柱起立筋の活動力が前者に比べ高い。)。
【0072】
また、運動が苦手な者の場合も同様で、その活動中、大きいモーションを採ることも少なく、したがって、体幹部分の筋肉も鍛えられ難いという特徴があらわれる。しかも、運動の大半を下肢伸筋群に頼ってしまう傾向が強くあらわれ(なぜならば、身体全体のバランスを採る上では、いつも、その行動を抑制し、かつ、減速出来得る状態にしておかなければ立っていられない、バランスを崩すことにより、運動を続けられない状態になるからである。)、これにより下肢部を構成している伸筋群を絶えず緊張させておかなければならなくなり、さらに強く前傾位を採らざるを得なくなる。
【0073】
この場合、膝部周辺の単関節筋群と足関節周辺の単関節筋群の手助けが最も必要となり(大腿の下側の筋肉である大腿四頭筋中の下部三広筋の活動がこれに当たります。)、しかも、元来、このような状態に陥っている人の場合、股関節を内旋、内転させることにより下肢部の一部である骨盤を使った方法で固定面を作り出し、安定を図るように移行しようとしてくるので、大腿三広筋の中でも特に内側広筋を主に主動筋として選択するようになる(アンクルリフレクション)。ちなみにこの状態は、お年寄りの運動時に見られる状態に酷似している。なぜならば、共に運動を行う上で、活動の程度の違いこそあれども、その活動に充分な筋力を保有していないからに他ならない。したがって、運動軸そのものを前傾位に保っておいた方がその移動方法および筋肉活動パターンを表現する上では、前記したように優位な状態となり、よって前傾位を選択せざるを得なくなる。
【0074】
したがって、この部分の筋肉を鍛えながら、かつ、この部分だけに運動の主力軸を任せ過ぎないことにより、体幹そのものを後傾気味に正しい軸へと導き、ヒップリフレクションを覚醒・促進させ、屈筋の活動を促すことにより、理想の運動姿勢を形成することができる。また、これにより、伸筋のみの活動に頼るために起こり得る膝部などでの障害を取り除き、かつ、安定した軸・筋活動を伴わせ、これによる副産物としてより得る、運動能力の向上を図ることができる。通常の人は、このように様々な運動阻害要因によって、前傾位をとることを余儀無くされ運動が苦手となっている。つまり、前傾位からの開放・矯正が理想の運動姿勢を形成して運動能力を向上させる上で、一番の要となる。
[筋活動力を高めた理想的な運動姿勢の形成および筋活動の巧緻性を高めた理想的な運動姿勢の形成]
まず、上記二つの筋活動(活動力向上と巧緻性向上)を説明する上で必要な運動活動上での要素が存在する。一つは、筋活動によって生じる力の方向性の違いによるものである。100メートル走やウェートリフティング等に代表される力の作用方向が一方方向だけで良いものもあれば、バスケットやサッカー等に見られる前後左右斜め等への素早い運動方向の変化や人に対するリアクションを必要とする運動による筋への刺激アプローチ方法の違いである。二つ目は、運動時間における筋活動時間の違いによるものである。例えば、100メートル走とマラソンにおける筋活動の違いが挙げられる。例えば、上記に挙げたマラソンの場合、下肢大腿部における筋活動は、前面部と後面部によって絶えず筋活動がオン状態とオフ状態とに切り替わっていることがわかっている。つまり、主動筋と拮抗筋は、それぞれオン状態とオフ状態とに切り替わることによって片側だけの筋活動が起こっている場合である。逆に100メートル走の場合、下肢大腿部における筋活動は、前面部と後面部双方の同時の筋収縮運動によってその運動状態が形成されていることがわかっている。このように筋肉の活動にそれぞれの時間差があるものと、時間差が無いものとによって促通し得る筋肉の方向と抑制し得る筋肉の方向には違いを生じることとなる。また、複雑なボディバランスを必要としない直線的な運動の場合は、その筋活動を力の発揮という形でのみ表現すれば良いという場合が多く、また、複雑なボディバランスを必要とする場合は、力の発揮という形のみにとらわれず、細かな筋肉のコントロールと巧緻性を必要とする筋の活動表現形成も必要である。上記二つの条件である時間と運動の方向性および人に対するリアクション的な運動の必要性の違いが存在しているので筋の力の発揮力を目的とする刺激方法と筋の活動の巧緻性を高めるために刺激する方法とに分けて刺激入力する必要性が生じてくる。
[刺激(筋肉へのアプローチ)]
ある筋肉の皮膚表面に相当する一部分を部分的に擦過すると、皮膚の浅部の神経刺激を起こすことになり、その内側の筋肉が刺激を受容し、緊張を起こし、かつ、ある筋肉の皮膚表面に相当する全体を面的に擦過すると、皮膚の浅部の神経刺激を起こすことになり、その内側の筋肉が刺激を受容し、筋緊張の緩和を起こすことは、ルード(Margaret Rood )によって証明されている。また、マーガレットルード等が提唱している(Stockmeyer SA:An Interpretation of the  Approach of Rood to the  Treatment  of Neuromuscular  Dysfunction , In Bouman HD(ed):An Exploratory  and  Analytical Survey of Therapeutic  Exercise:Northwestern University Special  Therapeutic  Exercise Project. Baltimore , The  Williams & Wilkins Co,1966,pp  900−956 )皮膚分節や筋分節に相当した機能的皮膚領域(functional skin area)や機能的皮膚領域が欠如している場合では促通したい筋肉の皮膚・筋腹上等に、軽擦や圧迫、バイブレーションや温寒熱刺激等を直接適用すると起こる” 痛みの軽減” や” 筋紡錘の感受性の増大” 、” 発汗の減少” 等などの事象(Stockmeyer SA:Procedures for  improvement  of  motor  control ,Unpublished  notes  from Boston University,PT710 ,1978)が起こる。また、これらを踏まえた上で、皮膚刺激を通して得られる効果である” 筋肉の緊張や緊張緩和” 、” 血行の促進” や” 反射の習得・強化” 等を利用し、また、この皮膚刺激を使ったアプローチと組み合わせによって、所望の筋肉を刺激することで、身体の各部位の相対位置を知覚している固有感覚を変え、理想の運動姿勢へ導くことは理論上可能である。
【0075】
この場合の刺激は、皮膚の受容器が認識できる程度の刺激であれば良い。このような刺激の種類としては、温熱的刺激、機械的刺激、電気的刺激、化学的刺激などが挙げられる。知覚受容器としては、マイスネル小体、マーケル触盤、パチニ小体、ルフィニ終末、クラウゼ終棍、自由神経終末、などが挙げられる。
【0076】
この刺激の範囲としては、約4cm2 程度の面積の点刺激的な範囲であればよいが、緊張を起こす筋肉によって異なるため、それに応じて適宜決定される。この刺激は、決められた一つの点刺激的な範囲の中であれば、一つの大きな点状の刺激であってもよいし、小さな複数の点状の刺激の集合体であってもよい。刺激を加える位置としては、緊張を起こそうとする筋肉の起始停止範囲内の皮膚表面の位置であれば、特に限定されるものではないが、その筋肉のモーターポイント近傍に相当する皮膚表面が最も好ましい。また、その刺激の数としては、所望の筋肉の起始停止範囲内の皮膚表面の位置であれば、一箇所であってもよいし、二箇所以上の複数箇所であってもよい。
【0077】
皮膚表面に刺激を加えると、最も簡単な反射弓である受容器、求心性ニューロン、遠心性ニューロン、効果器(この場合、筋肉)という興奮伝達が起こり、脊髄反射を利用した筋活動が起きる。この場合の反射活動は、伸張反射と、屈筋反射との二つに分類されるが、全身性の運動を見た場合、この反射活動だけでは、運動表現するには足りず、脳幹が加わる姿勢反射、小脳が関与する平衡反射などをも利用した反射活動が必要となる。そのため、本発明では、多方向からの皮膚受容器の刺激とその多岐にわたる刺激方法とにより、身体の所望の部位に反射を形成して理想の運動姿勢を作り上げる。この運動姿勢で運動を繰り返し行わせることにより、錘体外路系の運動活動を強調化させ、無意識のうちに理想の姿勢反射、平衡反射を覚醒させ、無意識的に少ない努力で、正確に速い運動ができるような性質の活動(たくみな運動)を引き出すことができる。
【0078】
浅部の筋肉を緊張させたり緊張緩和させたりする場合、その筋肉と皮膚表面との間には、他の筋肉が介在していないので、所望の筋肉だけに刺激を加えることができる。しかし、深部の筋肉を緊張させたり緊張緩和させたりする場合、その筋肉と皮膚表面との間には、他の筋肉が介在する。が、例えば、皮膚の表面上に任意の刺激を与えた場合、受け得る刺激は、浅部の筋肉にのみ影響を与えるとされるが、浅層部の筋肉のみによって運動が表現されていることは無く、その深層部の筋肉との連動によって運動コントロールされている以上、皮膚表面からによる浅部の筋肉への刺激でも深部の筋肉を協調的に刺激することは可能である。
[多関節筋および単関節筋に対する刺激による促通について]
表1ないし表8の何れかの状態において、筋緊張の弱い多関節筋および単関節筋に刺激を加えた場合、大半は、この刺激による促通的コントロールが行われ、表9および表10に示す理想の姿勢表に近づくように修正して筋活動力を向上させることができる。
【0079】
したがって、上記とは逆に、筋緊張の強い多関節筋および単関節筋に刺激を加えた場合、大半は、この刺激による促通的コントロールが強調され、表9および表10に示す理想の姿勢表からかけ離れてしまうこととなる。
【0080】
しかし、これらの場合には例外がある。本来、医学的身体計測によって表現されている関節の可動域は、正常な人であれば、その計測の結果通りになることは当然であるが、事実は、そうではなく、体の固いものもあれば、計測以上の結果が出る者もいる。また、体は、柔らかいのに実際の運動中に行う範囲では、関節のその本人が持ち得る最大可動範囲を表現しきれていない者も多く見受けられる。例えば、足を縦に開脚したり、横へ開脚することが完全にでき得るバレリーナ等の中にも実際の静的ストレッチング状態で表現している関節の可動範囲まで運動中で表現しきれているものは少なく、これは、重力やその重力に抗して働く筋力等が影響している。このため、実際の可動域は保有しているのに、真の可動域として表現することができない、または重力に抵抗する程の筋力を持ち得ていない筋群に点状の刺激を与えることによって促通を図り、筋の収縮力を高めこれにより筋肉の可動範囲を広げ、真の最大可動範囲へと近づけることができる。
[刺激による神経伝達の即通の具体例]
具体的な温熱的刺激としては、冷感、温感などが挙げられる。この温熱的刺激を加える方法としては、例えば、ブレスサーモ(ミズノ社製 吸放湿発熱性繊維)を皮膚に当接して温感により神経的興奮を高める方法、金属を皮膚に当接して冷感により神経的興奮を高める方法、刺激部分にメッシュ素材を用いて空冷による冷感により神経的興奮を高める方法、コールドスプレーや氷を皮膚に当接して直接冷却して冷感により神経的興奮を高める方法、使い捨てのカイロやお灸を皮膚に当接して温感により神経的興奮を高める方法、使い捨ての冷却シートや保冷材を皮膚に当接して冷感により神経的興奮を高める方法、などが挙げられる。ただし、この場合、一定の温度状況下におかれることが条件であり、外気温等によって干渉を受ける場合この限りではなく、例えば、寒冷地における冷的刺激よりも温刺激、また、温暖地での温刺激よりも冷刺激といった刺激入力の方が必要とされる場合もある。なぜならば、これら諸々の条件により、人の受容器が関知できる刺激範囲は変動を起こし、正しく刺激として認知されない場合もあるからである(中立点(tonus )の可変と呼ばれている現象)。
【0081】
また、温熱及び冷寒刺激を筋肉強化中に適用すると、筋力強化の効果が遅れてしまう(Chastain P:The effect of deep heat on isometric strength.Phys Ther 58:543−546,1978  Oliver RA,Jhonson DJ:The effect of cold water on post treatment leg strength.Phys Sports Med,November 1976   Oliver RA,Johnson DJ,Wheelhouse WW,et al:Isometric muscle contraction response during recovery from reduced intarmuscular temperature.Arch Phys Med Rehabilitation 60:126−129,1979)、ということもある。また、体温に近い不感温感では、筋肉へのリラクゼーション的効果があり、痛みなどに対して鎮静の効果が働く。また、温熱・冷寒に代表される熱による刺激は、筋肉のスパズムや痙攣を減少させ、痛みや腫脹の緩和に効果があることも解っている(Rood M :The  use  ofsensory  receptors  to activate,facilitate,and  inhibitmotor response,autonomic  and  somatic ,in developmental  sequence.In Sattely  C (ed):Approaches to the  Treatment of Patients with Neuromuscular  Dysfunction.DuBuque ,IA,WMC  Brown ,1962)。したがって、これらを使った皮膚への刺激入力方法では、それらの理由によって、リラクゼーションもしくは、筋肉の緊張緩和・鎮痛的効果を狙った種類の刺激にしか、適用することが出来ないことになるので、配慮が必要になる。
【0082】
具体的な物理・機械的刺激としては、摩擦、打撃、振動、圧擦、圧接などが挙げられる。この物理・機械的刺激を加える方法としては、バイブレーターを皮膚表面に当接して神経的興奮を高める方法、起毛や圧着したシリコン突起を皮膚表面に当接して神経興奮を高める方法、金属などで作り出した尖端突起を皮膚表面に当接して神経興奮を高める方法、絆創膏などの自着材を皮膚表面に当接して神経興奮を高める方法、粗性繊維を皮膚表面に当接して神経興奮を高める方法などが挙げられる。この場合にも、先に挙げた中立点(tonus )の可変が起き得る可能性がある。例えば、振動性刺激を受けるような運動(テニスなどの打撃的スポーツ等)における自由上肢体に対する振動性刺激入力もこれに当たる。
【0083】
具体的な電気的刺激としては、低周波、高周波、磁性性刺激などが挙げられる。この電気的刺激を加える方法としては、局所電極刺激法、磁性金属を皮膚に当接する方法などが挙げられる。
【0084】
具体的な化学的刺激としては、化学物質を触れた時に感じる刺激などが挙げられる。この化学的刺激を加える方法としては、アルコールやユーカリ油などの揮発性の化学物質を皮膚に塗った場合や、カプサイシンや柑橘系エキス(酸類)が配合されたいわゆるウォームアップ用クリームを皮膚に塗った場合などが挙げられる。ただし、化学的刺激を加える場合、皮膚を破壊するような痛覚にならないようにすることが好ましい。
【0085】
また、上記した刺激は、二種類以上を組み合わせるものであってもよい。例えば、図11(a)に示すように、直径2cm程度の円形状に剥がすことができるように構成された絆創膏などの自着材11の接着面に、化学的刺激を加えることができる有効成分12が塗布されたような刺激部材1によって、物理・機械的刺激と化学的刺激とを加えるようになされたものであってもよいし、図11(b)に示すように、このような自着材11の接着面に、磁性金属13が設けられたような刺激部材1によって、物理・機械的刺激と電気的刺激とを加えるようになされたものであってもよい。
【0086】
ただし、これらの刺激による作用力には、30秒間の潜伏期間があること、最も効果が大きくなるのは、刺激後30〜40分位まで行った場合であり、また、この刺激後30〜40分位は、最大効果を得るために必要とされる時間でもある(RoodM :The  use  of sensory  receptors  to active,facilitate,and inhibit  motor  response,autonomic  and  somatic ,in developmental  sequence.In  Sattely  C (ed):Approaches to the  Treatment of Patients with Neuromuscular  Dysfunction.DuBuque,IA ,WM C  Brown ,1962)としている為、持続的な刺激入力が必要となる。しかも、人間の反射的活動は、継続して起きる運動状態を16秒間以上継続して行わせなければ、習得には至らない(伊藤正男:ニューロンの生理学、岩波書店、東京、1976)。また、人間の皮膚等の感覚受容力は、これらの刺激にすぐに対応・適応してしまう。(Spicer SD,  Matyas TA:Facilitation of the TVR by cutaneous  stimulation. AMJ  Phys Med  59:223 −231,1980 Spicer SD,  Matyas TA:Facilitation of the TVR  by cutaneous  stimulation  in hemiplegics  AMJ Phys Med 59 :280 −287,1981)
したがって、この問題点を解決するためには、刺激入力位置は、目的とする筋肉の機能的皮膚領域、或は、筋腹上に適用すること(Rood M :The  use  ofsensory  receptors  to activate,facilitate,and  inhibitmotor response,autonomic  and  somatic ,in developmental  sequence.In Sattely  C (ed):Approaches to the  Treatment  of Patients with Neuromuscular  Dysfunction.DuBuque ,IA,WMC  Brown ,1962)が必要であり、その上で、
1.刺激入力点が、目的とする筋肉の中で絶えず位置変化すること。
2.刺激入力方法が、絶えず変化すること。
3.刺激入力情報(刺激強度の変化等)が、絶えず変化すること。
4.刺激入力時間が、絶えず断続的に変化し続けること。
等の上記4項目のうち、最低1項目の刺激入力方法を満たしているものが好ましい。
【0087】
上記したような要件を満たすものとしては、例えば、図12に示すように、内部が中空1aとなされ、その中空1aの部分に球体などの転跳物1bが設けられた振動体1cを、その外部に設けた粘着剤付の基材1dなどによって、皮膚3に貼着するように構成された刺激部材1であってもよい。この刺激部材1によると、皮膚3に貼着した状態で日常生活を行うと、人間の動きに応じて転跳物1bが中空1a部内の不特定の位置に不規則的に衝突して多種多様な振動を起こすこととなるので、人間の皮膚3の感覚受容力が作用し難い状況をつくり出すことができる。同様な刺激部材1としては、図13に示すように、皮膚3に貼着可能な粘着剤が設けられた基材1dの表面に毛状体1eが設けられたもの、図14に示すように、基材1dの表面にバネ体1fが設けられたもの、図15に示すように、基材1dの表面に突起物1gが設けられたもの、図16に示すように、基材1dの表面に風力抵抗物1hが設けられたもの、図17に示すように、基材1dの表面に紐体1iが設けられ、その先端に重り1jが設けられたもの、図18に示すように、基材1dの表面にウォーターバック状の流動体1kが設けられたもの、図19に示すように、基材1dの表面に、周波数が多種多様に変化する電気的刺激物1mが設けられたものなどが挙げられる。図13に示すように、毛状体1eを設けた刺激部材1の場合、毛状体1eは、人間の動きや風等で不規則的に揺れることとなり、皮膚3の表面を多種多様に擦過することとなる。図14に示すように、バネ体1fを設けた刺激部材1の場合、バネ体1fは、人間の動きに応じて不規則的に伸縮して多種多様に基材1dの接着面を引っ張ることとなる。図15に示すように、突起物1gを設けた刺激部材1の場合、突起物1gは、人間の着用している衣類2に不規則的に衝突し、皮膚3を直接刺激したり基材1dの接着面を引っ張ることとなる。図16に示すように、風力抵抗物1hが設けられた刺激部材1の場合、風力抵抗物1hは、風などで不規則的に揺れることとなり、多種多様に基材1dの接着面を引っ張ることとなる。図17に示すように、紐1iの先端に重り1jを設けた刺激部材1の場合、重り1jは、人間の動きに応じて基材1d周辺の不特定の位置に不規則的に衝突して皮膚3の表面に多種多様に刺激を与えることとなる。図18に示すように、流動体1kが設けられた刺激部材1の場合、人間の動きに応じて流動体1kが不規則的に流動することにより、多種多様に基材1dの接着面を引っ張ることとなる。図19に示すように、電気刺激物1mが設けられた刺激部材1の場合、電気刺激物1mは、周波数が多種多様に変化することで、皮膚3に多種多様の刺激を加えることができることとなる。
【0088】
上記したように人間の皮膚3に直接設けるようになされた刺激部材1以外に、このような刺激部材1は、衣類に設けるようにしてもよい。
[衣類]
上記刺激は、衣類の一部分に、着用状態で、上記刺激を人体に与えることができるような点状の刺激部として形成することができる。
【0089】
この場合、衣類としては、刺激部によって、皮膚の浅部の神経刺激を起こすことができるようになされたものであれば、特にその形態を限定されるものではなく、例えば、衣類が皮膚に密着するようになされた、スポーツインナー、タイツ、スパッツ、スイムウェア、スポーツブラ、ハイソックス、レッグウォーマー、ニーウォーマー、スイムキャップ、ストッキング、一般肌着、腹巻などが挙げられる。ただし、これらの衣類に縫合部分があるような場合、この縫合部分から、皮膚の浅部の神経刺激を起こさないように考慮することが好ましい。このような考慮がされた衣類としては、例えば、自動丸編機(例えば、イタリアのサントニ社製の成形丸編機 商品名:SM8)によって全体を身体形状に合致する筒状に編み上げて縫合部分をできるだけ少なくするようにしたものや、縫合を必要とする部分の生地と生地との間に、例えば、スラックスの裾上げ等に用いられる熱溶融性のポリウレタン系フィルム等を挟み、熱で溶かして融着させるホットメルト接着仕様の縫合部分にしたものや、高周波ミシンによる誘導加熱によって生地の端と端とを融着させる縫合部分にしたものや、縫合部分が肌面側に来ないように、例えば縫合部分を衣類の表面側に設けたものや、縫合部分を筋裂溝の位置に設けるようにしたものなどが挙げられる。また、このような縫合部分からの刺激を取り除いたとしても、刺激部による刺激を強調する上では、衣料品自体が皮膚に接した際の全体的な刺激を、できるだけ小さくすることが好ましい。
【0090】
さらに、衣類は、効果的に人体に上記刺激を加えるという意味からは、皮膚に密着するようになされたものであることが好ましいが、例えばTシャツなどのように、動作の中で皮膚に接し、その際、点状の刺激部が、皮膚の浅部の神経刺激を起こすようになされたものであってもよい。
【0091】
衣類を形成するベースとなる生地については、使用する糸としては、合成繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、ポリウレタンなど)や半合成繊維(ジアセテート、トリアセテートなど)および、再生繊維(レーヨン、ポリノジックなど)等からなる化学繊維であってもよく、動物繊維(ウール、絹など)や植物繊維(綿、麻など)等からなる天然繊維であってもよく、あるいは、これらの組み合わせであってもよい。
【0092】
特に、スポーツを意識した衣類の場合は、ポリエステル糸の断面を異型にして吸水性を持たせ、汗処理性を高めたものや、糸の芯部を中空にして軽量性を付与したものや、ポリウレタン糸との組み合わせでストレッチ性を持たせたものが好ましい。
【0093】
生地の作成方法については、ループを形成してなるニット緯編み(丸編み、横編み)や経編み(トリコット、ラッシェルなど)や、経糸と緯糸からなる織り、あるいは繊維を集合して形成する不織布などでも良い。
【0094】
このような衣類に形成する刺激部としては、衣類と同等の耐久性を備え、反復利用可能なものであることが好ましい。このような刺激部のうち、請求項10記載の突起物による刺激としては、例えば、衣類の皮膚に接する肌面側の刺激部の位置だけ、シリコンなどの樹脂による凸部を印刷形成したり、リベットのような金具を設けたりするといったものであってもよい。
【0095】
また、図20に示すように、ループテープとフックテープとによって構成される面テープのうちのフックテープによって両面が形成された4cm2 程度の刺激部材1を用意し、この刺激部材1の片面16を、衣類2を構成する布地20の皮膚3に接する肌面側の所望の位置に貼り付けることによって、衣類2に刺激部21を形成するものであってもよい。この場合、刺激部材1は、他面17で皮膚3の表面を刺激することができる。
【0096】
さらに、図21に示すように、ピンバッチと同様の着脱構造で構成されたピン本体18とピン受け19とからなる刺激部材1を用意し、この刺激部材1のピン本体18とピン受け19とで、衣類2を構成する布地20を挟んで固定することで、衣類2に刺激部21を形成するものであってもよい。この場合、この刺激部材1によって、皮膚3の表面を刺激することができる。
【0097】
このような衣類2に形成した刺激部21による刺激の場合、前記した皮膚3に直接貼着する刺激部材1の場合のように人間の動きに追従するようなことにならず、人間の動きに対して目的の刺激位置を守りながら適度にズレを起こすこととなる。これにより、目的位置で不規則的な刺激入力をし続ける事が可能で、刺激に対する順応や慣れと言ったものが起き難い状況を作り出すことができる。したがって、このような衣類2の場合、皮膚3に直接貼着する刺激部材1の場合のように、人間の皮膚3の感覚受容力が作用し難い工夫を積極的にする必要は無いが、そのような工夫を取り入れることは、より好ましい。例えば、図22は、このような工夫を取り入れた衣類2に形成した刺激部21を示している。この刺激部21を構成する刺激部材1は、中空1aの部分に球体などの転跳物1bが設けられたピン本体18とピン受け19とによって構成されており、衣類2を構成する布地20を挟んで固定することで、所望の位置に刺激部21を形成するようになされている。この衣類2によると、衣類2自体が活動の中で人間の動きに対して目的の刺激位置を守りながら適度にズレを起こして刺激に対する順応や慣れと言ったものが起き難い状況を作り出すとともに、刺激部21自体も、人間の動きに応じて転跳物1bが中空1a部内の不特定の位置に不規則的に衝突して多種多様な振動を起こすこととなる。したがって、この衣類2を着用した場合、人間の皮膚3の感覚受容力が、より一層作用し難い状況をつくり出すことができる。
【0098】
請求項11の後加工により生地内面を突起状に形成したものによる刺激としては、編み織り等により生地を形成後、例えば、凹状柄を彫り込んだロ−ルにより、熱と圧力で生地肌面に凸状の柄を形成させる所謂エンボス加工と言われる手法を用いる方法がある。また、生地組織形成後、その部位のみを起毛加工することでその部位を毛羽起たせ刺激を持たせる方法などもある。
【0099】
請求項12の温冷感による刺激としては、衣類の皮膚に接する肌面側の刺激部に、例えば、吸放湿発熱性アクリレ−ト系繊維を、衣服の生地組織の皮膚面に織り、あるいは編み込んだり、この繊維を用いた生地(ミズノ社製、商品名” ブレスサ−モ” 等)をこの刺激部に、縫合あるいは接着するなどして温感により神経的興奮を高める方法や、熱伝導性の高い繊維(エチレンビニ−ルアルコ− ル繊維など)を同様に、衣服の生地組織の皮膚面に織り或いは編み込んだり、この繊維を用いた生地(ミズノ社製、商品名” アイスタッチ” 等)をこの刺激部に、縫合あるいは接着するなどして冷感により神経的興奮を高める方法がある。また、保水しやすい繊維(天然繊維の” 綿繊維” や、高吸水性ポリマ−繊維など)を、この刺激部の皮膚に接する部分に用いることで、運動による汗を吸水し、この水分により冷感刺激を与えることが可能となる。さらに、刺激部分をメッシュ調の生地組織にすることで、皮膚を外気にさらすことで、空冷による冷刺激として有効である。
【0100】
請求項13の生地組織による刺激としては、生地刺激部の形状を凸状にし皮膚面へ当てるという方法として、刺激の必要な部位に生地組織がパイル調(擬似パイル、ボアなども含む)の生地を用いたり、ニット生地の丸編みによる浮き編みやボス糸の添え編みにより刺激部を形成したり、また、織物では、二重織り組織の生地を刺激部に用いる方法などが挙げられる。
【0101】
請求項14の異種繊維の組み合わせによる刺激としては、合成繊維の中では、同じ太さの糸でもフィラメント数の高い糸をベース部分に使用し、フィラメント数の低い糸を刺激部に使用した組み合わせや、同じ太さで同じフィラメント数でも弾性率の低い繊維をベース部分に使用し、弾性率の高い繊維を刺激部に使用した組み合わせ、フィラメント繊維を刺激部に使用し、それを短くカットしたステ−プル繊維をベース部分に使用した組み合わせ、紡糸したままの生糸をベース部分に使用し、それに仮より加工を施した繊維を刺激部に使用した組み合わせ、また、天然繊維でもウ−ルのように皮膚刺激の強い繊維と通常それよりは弱い繊維(綿など)との組み合わせ、風合いの異なる合成繊維と天然繊維との組み合わせなどが挙げられる。さらに糸に撚りを加えた意匠撚糸(ファンシ−ヤーン)など、皮膚への刺激性の高い糸を刺激したい部位に用いることも有効である。
【0102】
図23は、右利き腕用のタイツ2aであって、腹直筋下部中央、右内外腹斜筋部、右大臀筋部、左中小臀筋部、右半膜様筋半腱様筋部、左大腿二頭筋部、左大腿四頭筋外側広筋部、右大腿四頭筋内側広筋部、右縫工筋部、左前脛骨筋部、左腓腹筋内側部、右第三腓骨筋部、右ヒラメ筋外側部のそれぞれのモーターポイントに相当する位置に約3cm2 の面積の刺激部21が形成されている。このタイツ2aの本体生地は、ポリエステル糸56dtex/ 36f とポリウレタン弾性糸44dtexを使用し、ハーフトリコット編みにより編みたてし、ポリエステル糸80%、ポリウレタン糸20%の混率によって構成されている。また、刺激部21は、シリコン樹脂による複数の凸部を印刷形成することによって構成されている。なお、タイツ2aの縫合部分(図示省略)は、できるだけ筋裂溝に位置するようにして構成した。
【0103】
このタイツ2aは、腹直筋下部中央に設けた刺激部21によって骨盤の前傾状態を修正するとともに、これを受けて右大臀筋部に設けた刺激部21は、連動的作用を起こし(腹直筋下部中央が収縮を起こすと骨盤が立腰状態へと導かれるので、それにより大臀筋部の緊張が起きるという筋活動)、また、これを受け、脊柱起立筋は、緊張を起こすとともに(大臀筋部の緊張は、脊柱起立筋(体幹伸展筋)の緊張が起き、刺激後活性化するという筋活動)、体幹の伸展活動を行う。また、大臀筋部と拮抗する右腸腰筋部の拮抗的な股関節屈曲活動も刺激を受けることとなる。この刺激により、連動を起こし、より安定した体幹の伸展活動を起こす。また、左中小臀筋部に設けた刺激部21は、股関節部における左右への動揺性(内外転方向の)を抑制し、運動支持力を向上させる。これら、三点の刺激で体幹のバランス力および支持力が向上する。また、上記二点(腹直筋下部中央および左中小臀筋部)により形成された支持面(力点・支点として活動)の作用を受けて左大腿二頭筋部に設けた刺激部21は、股関節部での強い伸展力を生み出し、走状態では、強い推進力へと変換されることとなる。また、左大臀筋部の活動は、右のそれと比べると活動が著明ではあるが右中小臀筋部に比べると左のそれは活動が弱いため、股関節部で発生する強い伸展力を後方に直線的な推進力へと変化させるには支持起点が弱いため、左中小臀筋部に設けた刺激部21で上記のような股関節部における左右への動揺性を抑制することにより、より運動効率の高い状態で左大腿二頭筋部および左半腱様筋半膜様筋部の活動を補助推進することができることとなる。また、左大腿二頭筋部は、同じ側の左半腱様筋半膜様筋部と比べるとその活動は弱く、その力を内転方向へと逃がし易い傾向にあるため、左大腿二頭筋部に設けた刺激部21により、中間位へと導き、後方向への効率の良い股関節伸展活動へと修正する。また、右大臀筋部に設けた刺激部21は、右の臀筋活動の偏り(中小臀筋部に比べ大臀筋部の活動が弱いこと)を補助修正し、股関節部における伸展活動に強い影響(大臀筋部の筋収縮活動が著明となることで前方方向への強い推進力を発生させる)を及ぼす。また、右半腱様筋半膜様筋部に設けた刺激部21との協調的活動により、この働きはより効率を増す。また、上記の右半腱様筋半膜様筋部に設けた刺激部21は、右大腿部後面部での右大腿二頭筋部の過剰な筋活動を制御し、右股関節伸展の際における股関節部の外転方向へと逃げる力を内側方向へと変化させ、よりスムーズな股関節伸展活動とより強い前方方向への推進力を促すことができるようになる。しかし、右自由下肢体で創り出された前方方向への推進力は、強い推進作用力とともに強い反作用的な力(右骨盤部および腰椎前湾と仙骨角部で起きる回旋運動を含んだ前方への引き違い前方剪断力)が発生するので、右内外腹斜筋部に設けた刺激部21により、この反作用的な力を抑制し、また運動の支持基盤として働かせる(この作用力が低下もしくは欠如すると、発生した力を前方方向へと逃がすばかりか、その強過ぎる前方方向への作用力と回旋力により、腰椎下部と仙椎部の間の関節損傷を引き起こす要因となる。)。また、余談ではあるが、右仙腸関節部における不良な関節固定(カイロプラクティック等によって表現されているフィクセーション)は、右内外腹斜筋部の筋肉の低下および作用力の欠如により不安定となる体幹部を補佐するために起きているものと思われる。また、この不良な作用により、右下腿部における腓腹筋の著明な緊張が確認報告されており、この部分の不良な作用を改善することは、右下腿部における筋の損傷(腓腹筋の肉離れやアキレス腱断裂等)をも軽減・改善させることができることとなる。これら六点の刺激による強調的な筋肉活動によって、より効率の良い運動姿勢バランスが実現される。
【0104】
右大腿四頭筋内側広筋部および右縫工筋部に設けた刺激部21は、右股関節部での著明で過剰な運動方向(股関節屈曲外転内旋方向)の活動の軸を体の正しい重心軸方向へと変化させ、発生する力の流れを修正する。また、大腿四頭筋内側広筋部は、膝関節周囲では、特に大きな支持性を持つ筋肉であるが、右のそれは左に比べ、右利き腕の場合、発達が弱く、これにより、より外側方向へと運動の軸および支持の支持基底面も変移している。このため、右大腿四頭筋内側広筋部および右縫工筋部に設けた刺激部21で内側方向へと運動の軸および支持の支持基底面を修正する必要があることとなる。また、右股関節部では、股関節部内旋位での活動が優位であるため、前述のような大臀筋部への刺激促通を必要とするが、これだけでは膝部に現れる内方向へのねじれを修正することは難しい。このため、右縫工筋部に対する刺激部21は、膝関節上で発生するねじれを右大臀筋とともに協調的な活動を促通、向上させる働きがある。
【0105】
左大腿四頭筋外側広筋部に設けた刺激部21は、左股関節部で著明で過剰な運動方向(股関節伸展内転外旋方向)の活動の軸を体の中心軸方向へと変化させ、発生する力の流れを修正する。右利き腕の場合、左膝部の内側広筋の発達は、右のそれと比べ活動は良好であるが、同足左中小臀筋部の活動が弱いため、その力は、内転外旋方向へと無駄に働くことが多いため、左中小臀筋部の促通とともに左大腿外側広筋部への促通も必要となる。これにより、より効率の高い力の表現が左大腿二頭筋部に設けた刺激部21とともに、協調的で円滑に行われることとなる。
【0106】
左腓腹筋内側部に設けた刺激部21は、左足関節部における外反的な方向へと働く力を正しい運動軸である内反的な方向へと修正する。右利き腕の場合、左下腿後面部の筋肉は、外側部が内側部のそれと比べると活動が著明である。これは、上位関節部等で発生した外方向への力をむりに内側方向へと修正しようとする働きである。このため、これより上位の関節の修正を行った場合、その力は、より内側部へと発生することとなるため、これを左腓腹筋内側部に設けた刺激部21により、修正する必要があるということになる。また、正対する右下腿部の場合は、左とは全く反対の筋の活動が著明となっているため(内反的な方向へと力が働いている)、上記とは反対の刺激促通が必要となるため、右第三腓骨筋部と右ヒラメ筋外側部に設けた刺激部21により、これを修正するとともに、右足首で起きる内反性の動揺を軽減させる。
【0107】
また、左足関節部における外反作用をコントロールするためには、左腓腹筋内側方向への刺激による筋促通だけでは難しく、足関節を内反方向へと導く作用筋である左前脛骨筋部に対する刺激部21もまた必要とされる促通のポイントである。
【0108】
ここで補足しておくが、筋力の発生により生じる力は、作用力ばかりでなく、発生した力を与えた場所からも帰ってくる力である反作用力も同時に発生していることを考えなければならない。つまりそれぞれの股関節部での運動方向(左股関節部では伸展内転外旋、右股関節部では屈曲外転内旋)に対して三次元的なねじれを含む反作用力が発生していることとなる。これらねじれを伴う運動活動は、それぞれの関節部にかかる負担をより増大させるものとなり、怪我の一番の発生起点となりえるため、できる限り排除制御制限する必要があることとなる。よって、前述したような例えば、膝関節部では、それより上位の関節である股関節部との回旋的な運動活動をも考慮する必要性があることとなる。また、足関節部における運動活動も上位部の関節である膝と股関節に影響を受けるため、それより上位の関節の協調性を同じように考慮しなければならないため、上記したような左右非対称でかつ、その運動活動軸方向を考慮した支持補正が要求されることとなる。また、点状刺激による筋の促通状態は、ヒップリフレクションを中心とする運動形態を、その基とするものでなければならないため、例えば、大腿二頭筋等の単関節筋群を含む多関節筋の場合は、その多関節筋的作用の一部である股関節伸展機能を特に促通させる必要性があることとなる。なぜならば、大腿二頭筋部での単関節筋の働きを促通した場合、膝関節部の屈曲活動が著明となり、円滑な股関節の伸展活動を削ぐためである。
【0109】
図24は、陸上競技、水泳(バタフライ、平泳ぎ)、スケート競技、自転車競技、スキー競技などの上肢で左右対称的な動きを行うスポーツに使用可能な右利き腕用の全身フルスーツ2bであって、右胸鎖乳突筋部、右棘上筋部、右棘下筋部、左脊柱起立筋中央部および大菱形筋部、左広背筋部、右脊柱起立筋下部および右下後鋸筋部、左脊柱起立筋最下部および腰方形筋部、左中小臀筋部、右大臀筋部、左大腿二頭筋部、右半腱様筋半膜様筋部、左腓腹筋内側部、右ヒラメ筋外側部、右内外腹斜筋部、腹直筋下部中央、右縫工筋部、右大腿四頭筋内側広筋部、左大腿四頭筋外側広筋部、左前脛骨筋部、右第三脛骨筋部、両上腕三頭筋内外側頭部、両回外筋部、両長橈側手根伸筋部のそれぞれのモーターポイントに相当する位置に刺激部21が形成されている。このフルスーツ2bの生地は、太さ78dtex/ 48f のナイロン糸を引き揃えた糸と、太さ44dtexのポリウレタン弾性糸の周りに太さ56dtex/ 48f のナイロン糸をシングルカバーリングした糸を使用し、平編み(プレ−ン編み)により編まれている。また、刺激部21は、太さの78dtex/ 36f ポリエステル糸をボス糸として添え編みにより約3cm2 の面積の範囲に形成されている。なお、フルスーツ2bの縫合部分(図示省略)は、フラット縫いにし、皮膚に刺激を与えにくくし、かつ、できるだけ筋裂溝に位置するようにして構成した。
【0110】
このフルスーツ2bは、点状の刺激入力により、筋の活動力を高めることを目的としたウェアーである。腹直筋下部中央に設けた刺激部21によって骨盤の前傾状態を修正するとともに、これを受けて右大臀筋部に設けた刺激部21は、連動的作用を起こし(腹直筋下部が収縮を起こすと骨盤が立腰状態へと導かれるので、それにより大臀筋部の緊張が起きるという筋活動)、また、これを受け、右脊柱起立筋下部および右下後鋸筋部、左脊柱起立筋最下部および様方形筋部は、緊張を起こすとともに(大臀筋部の緊張は、脊柱起立筋(体幹伸展筋)の緊張が起き、刺激後活性化するという筋活動)、体幹の伸展活動を行う。また、右大臀筋部は、右腸腰筋部の拮抗的な股関節屈曲活動の刺激をも受けることとなる。この刺激により、連動を起こし、より安定した体幹の伸展活動を起こす。また、左中小臀筋部に設けた刺激部21は、股関節部における左右への動揺性(内外転方向の)を抑制し、運動支持力を向上させる。これら、六点の刺激で体幹のバランス力および支持力が向上する。また、上記二点(腹直筋下部および左中小臀筋部)により形成された支持面(力点・支点として活動)の作用を受けて左大腿二頭筋部に設けた刺激部21は、股関節部での強い伸展力を生み出し、走状態では、強い推進力へと変換されることとなる。また、左大臀筋部の活動は、右のそれと比べると活動が著明ではあるが右中小臀筋部に比べると左のそれは活動が弱いため、股関節部で発生する強い伸展力を後方に直線的な推進力へと変化させるには支持起点が弱いため、左中小臀筋部に設けた刺激部21で上記のような股関節部における左右への動揺性を抑制することにより、より運動効率の高い状態で左大腿二頭筋部および左半腱様筋半膜様筋部の活動を補助推進することができることとなる。また、左大腿二頭筋部は、同じ側の左半腱様筋半膜様筋部と比べるとその活動は弱く、その力を内転方向へと逃がし易い傾向にあるため、左大腿二頭筋部に設けた刺激部21により、中間位へと導き、後方向への効率の良い股関節伸展活動へと修正する。また、右大臀筋部に設けた刺激部21は、右の臀筋活動の偏り(中小臀筋部に比べ大臀筋部の活動が弱いこと)を補助修正し、股関節部における伸展活動に強い影響(大臀筋部の筋収縮活動が著明となることで前方方向への強い推進力を発生させる)を及ぼす。また、右半腱様筋半膜様筋部に設けた刺激部21との協調的活動により、この働きはより効率を増す。また、上記の右半腱様筋半膜様筋部に設けた刺激部21は、右大腿部後面部での大腿二頭筋部の過剰な筋活動を制御し、股関節伸展の際における股関節部の外転方向へと逃げる力を内側方向へと変化させ、よりスムーズな股関節伸展活動とより強い前方方向への推進力を促すことができるようになる。しかし、右自由下肢体で創り出された前方方向への推進力は、強い推進作用力とともに強い反作用的な力(右骨盤部および腰椎前湾と仙骨角部で起きる回旋運動を含んだ前方への引き違い前方剪断力)が発生するので、右内外腹斜筋部に設けた刺激部21により、この反作用的な力を抑制し、また運動の支持基盤として働かせる(この作用力が低下もしくは欠如すると、発生した力を前方方向へと逃がすばかりか、その強過ぎる前方方向への作用力と回旋力により、腰椎下部と仙椎部の間の関節損傷を引き起こす要因となる。)。これら九点の刺激による強調的な筋肉活動によって、より効率の良い運動姿勢バランスが実現される。
【0111】
右大腿四頭筋内側広筋部および右縫工筋部に設けた刺激部21は、右股関節部での著明で過剰な運動方向(股関節屈曲外転内旋方向)の活動の軸を体の正しい重心軸方向へと変化させ、発生する力の流れを修正する。また、大腿四頭筋内側広筋部は、膝関節周囲では、特に大きな支持性を持つ筋肉であるが、右のそれは左に比べ、右利き腕の場合、発達が弱く、これにより、より外側方向へと運動の軸および支持の支持基底面も変移している。このため、大腿四頭筋内側広筋部および右縫工筋部に設けた刺激部21で内側方向へと運動の軸および支持の支持基底面を修正する必要があることとなる。また、右股関節部では、股関節部内旋位での活動が優位であるため、前述のような大臀筋部への刺激促通を必要とするが、これだけでは膝部に現れる内方向へのねじれを修正することは難しい。このため、右縫工筋部に対する刺激部21は、膝関節上で発生するねじれを右大臀筋部とともに協調的な活動を促通、向上させる働きがある。
【0112】
左大腿四頭筋外側広筋部に設けた刺激部21は、左股関節部で著明で過剰な運動方向(股関節伸展内転外旋方向)の活動の軸を体の中心軸方向へと変化させ、発生する力の流れを修正する。右利き腕の場合、左膝部の内側広筋の発達は、右のそれと比べ活動は良好であるが、同足左中小臀筋部の活動が弱いため、その力は、内転外旋方向へと無駄に働くことが多いため、左中小臀筋部の促通とともに左大腿外側広筋部への促通も必要となる。これにより、より効率の高い力の表現が左大腿二頭筋部に設けた刺激部21とともに、協調的で円滑に行われることとなる。
【0113】
左腓腹筋内側部に設けた刺激部21は、左足関節部における外反的な方向へと働く力を正しい運動軸である内反的な方向へと修正する。右利き腕の場合、左下腿後面部の筋肉は、外側部が内側部のそれと比べると活動が著明である。これは、上位関節部等で発生した外方向への力をむりに内側方向へと修正しようとする働きである。このため、これより上位の関節の修正を行った場合、その力は、より内側部へと発生することとなるため、これを左腓腹筋内側部で設けた刺激部21により、修正する必要があるということになる。また、正対する右下腿部の場合は、左とは全く反対の筋の活動が著明となっているため(内反的な方向へと力が働いている)、上記とは反対の刺激促通が必要となるため、右第三腓骨筋部と右ヒラメ筋外側部に設けた刺激部21により、これを修正するとともに、右足首で起きる内反性の動揺を軽減させる。
【0114】
ここで補足しておくが、筋力の発生により生じる力は、作用力ばかりでなく、発生した力を与えた場所からも帰ってくる力である反作用力も同時に発生していることを考えなければならない。つまりそれぞれの股関節部での運動方向(左股関節部では伸展内転外旋、右股関節部では屈曲外転内旋)に対して三次元的なねじれを含む反作用力が発生していることとなる。これらねじれを伴う運動活動は、それぞれの関節部にかかる負担をより増大させるものとなり、怪我の一番の発生起点となりえるため、できる限り排除制御制限する必要があることとなる。よって、前述したような例えば、膝関節部では、それより上位の関節である股関節部との回旋的な運動活動をも考慮する必要性があることとなる。また、足関節部における運動活動も上位部の関節である膝と股関節に影響を受けるため、それより上位の関節の協調性を同じように考慮しなければならないため、上記したような左右非対称でかつ、その運動活動軸方向を考慮した支持補正が要求されることとなる。また、点状の刺激による筋の促通状態は、ヒップリフレクションを中心とする運動形態を、その基とするものでなければならないため、例えば、大腿二頭筋等の単関節筋群を含む多関節筋の場合は、その多関節筋的作用の一部である股関節伸展機能を特に促通させる必要性があることとなる。なぜならば、大腿二頭筋部での単関節筋の働きを促通した場合、膝関節部の屈曲活動が著明となり、円滑な股関節の伸展活動を削ぐためである。
【0115】
これまでの記述は、ヒップリフレクションを中心とした下半身部分の調整について述べた。しかし、運動を行う上でヒップリフレクションを体の運動基底面とする考え上、下半身と正対する上半身との協調的活動も調整する必要がある。この場合、特に、着目しないといけない点は、日本人や運動苦手者における腹筋上部および僧帽筋部の過度な筋緊張である。このため、上半身は、これらの筋緊張の緩和を中心としながら下半身との協調的活動を考慮した促通方法をとらなければならない。
【0116】
左側背部は、右利き腕者の場合、利き腕の反対側ということもあり、特に筋の発達と促通が悪い部位である。また、日本人および運動苦手者の場合、僧帽筋部の活動が著明なため、この筋を中心とした運動形態が形作られている。このため、左背側部を上背部(僧帽筋周辺)と下背部(広背筋周辺)とに分けた場合、上背部に比べ下背部は、有効に運動を表現することが難しくなっており、これを要因として左広背筋部の筋の成長を阻害している。
【0117】
このため、左広背筋部に設けた刺激部21は、働き過ぎる右広背筋部および左僧帽筋部を中心に動きの偏った左背部全体を修正する上で重要なポイントとなる。一つは、右広背筋部の活動が右利きの場合著明で発達が良いため、その筋の活動に引き下げされるように傾いてしまう右肩下がりの姿勢を骨盤を中心としたバランスの中で修正するように働くこととなる。また、左上背部(僧帽筋周辺部)の過度な運動活動をも修正することとなる。しかし、左広背筋部に設けた刺激部21だけでは、左背部全体を修正するには難しく、左脊柱起立筋部中央部および大菱形筋部に設けた刺激部21および左脊柱起立筋部最下部に設けた刺激部21との連動および補助が必要となる。これにより、腰部分を中心とした左右対称で、かつ、運動重心の安定したアライメントを創り出すことができることとなる。しかし、この偏った筋活動にも利点がある。それは、広背筋という強固な骨盤部から起きる支持筋の発達が弱いがために運動自由度三度という自由度の高い球関節である肩関節を保持するにはその能力が低く、これによって左肩関節内部におけるインナーマッスル(棘上筋、棘下筋、大円筋、小円筋、および肩甲下筋)の発達が良くなる点である。一方、右利き腕者の場合、右肩関節におけるインナーマッスルの発達は、その周りを形成する筋肉群の発達が著明なため、その働きと筋の促通は阻害を受けている。よって右棘上筋部および右棘下筋部に設けた刺激部21により肩関節そのものの支持性を高める必要性がある。また、これら右インナーマッスルの発達が弱いため、右肩関節における可動性は、著しい可動範囲制限を受けているため、これも上記二点の刺激により、肩関節における柔軟性が向上し、かつ、改善されることとなる。
【0118】
また、運動苦手者における上半身、とくに自由上肢帯における運動表現において、上腕部は、その不完全な運動習得能の影響によって屈筋である上腕二頭筋の働きが上腕三頭筋に比べ優位である。
【0119】
そもそも人間は、誕生時には身体や四肢を畳んだ状態で生まれてくる。簡単に例えて表現するならば各回旋動作や屈曲動作が可能な関節は、その殆んどが回内位であり、内転している。人は、これを身体の成長とともに習得する運動能によって外方向へと力の流れを変化させていくのである。
【0120】
しかし、運動苦手者や日本人の場合、成長過程における運動能力の発達が高度で便利な文明発達によって運動能の開発・発達が阻害されており、この成長過程を正しく辿っていないものと表現できる。つまり、各関節部における運動表現は、回外位よりも回内位、外転位よりも内転位により傾いているため内向きの閉じた運動表現を得意としている。一方運動上達者においては、各関節における可動域と運動表現力は大きく、且つ、外方向へと転じている。
【0121】
また、運動上達者は苦手者に比べ、多関節筋と単関節筋、伸筋と屈筋の役割がはっきりと区別され表現されている。一方運動苦手者の場合、その筋肉活動の大半は、姿勢の制御に費やされてしまう。このため、運動時における筋肉の無駄な緊張と力の表現が生じている。また、運動苦手者における運動表現は、上半身では、屈曲筋優位の活動であり、下半身においては伸展筋の活動が優位である。これは、運動中のボディーバランスについての習得が完全なものでないばかりか、関節そのものにも不完全な運動形態を作り出してしまている結果に起き得るものである。これらの理由や運動方向の違いに拠り、運動上達者の運動表現は、その他の者よりもダイナミックで安定性の高いものとなる。
【0122】
したがって、上腕三頭筋部に設けた刺激部21によって、この上腕三頭筋部の筋活動を上腕二頭筋部よりも優位に導く。
【0123】
また、前腕部においても同様の運動表現能の稚拙さが現れる。このため、前腕部では、屈曲、回内位を採ることが多く、これを前腕部の手根伸筋と回外性筋への点状の刺激による運動軸の矯正が必要となる。また、前述した様に前腕関節部における筋肉活動は、屈曲と回内が優位であるため、前者の様な点状の刺激を伸筋及び回外筋に対して施す。上記の理由によって状刺激21をそれぞれの活動筋に対して施す。
【0124】
また、下肢自由帯と違い、上肢自由上肢帯での筋肉活動は、脳の構造上左右対称な筋肉活動を行うため、その他の部位と違い左右対称性を必要としている。が、しかし、専門的に片側の肢部を使う運動(例えばテニスや野球等に代表されるもの)に関してはこの限りではない。また、付け加えるならは、下肢自由帯における筋肉活動は、上肢のそれとはまるで反対の相反的な筋肉活動表現を採るため、左右非対称な筋肉に対するアプローチは、特に有効であることも付け加えておく。
【0125】
図25は、右利き腕用の野球用アンダーシャツ2cであって、右胸鎖乳突筋部、右棘上筋部、右棘下筋部、左脊柱起立筋中央部および左大菱形筋部、左広背筋部、右脊柱起立筋下部および右下後鋸筋部、左脊柱起立筋最下部(胸最長筋部)および腰方形筋部、右大胸筋部、左前鋸筋部、右上腕三頭筋内外側頭部、右長短橈側手根伸筋部、右橈側手根屈筋部、右回外筋部、左上腕二頭筋部、左尺側手根屈筋部、左尺側手根伸筋部、のそれぞれのモーターポイントに相当する位置に約3cm2 の面積の刺激部21が形成されている。このアンダーシャツ2cは、太さ33dtex/ 48f のポリエステル糸と、太さ44dtexのポリウレタン弾性糸を使用し、ハーフトリコット編みにより編みたて、ポリエステル糸80%、ポリウレタン弾性糸20%の混率によって構成されている。また、刺激部21は、シリコン樹脂による複数の凸部を印刷形成することによって構成されている。なお、アンダーシャツ2cの縫合部分(図示省略)は、肌面側に位置せず表面側に位置し、かつ、できるだけ筋裂溝に位置するようにして構成した。
【0126】
野球用のアンダーシャツ2cを作る上で必要となる要素の一つとして各関節の回旋運動がスムーズにとり得ることが肝要となる。例えば、体幹における回旋運動とは、体幹軸周りでの回転運動( 腰を回す首を回す等) であるが、回旋の形態には大まかに分けると二つの異なった形態がある。一つ目は、一般のドアに見られるような左右どちらか片側の部分が固定されたように動くタイプであるどちらか変則の足を使った下半身中心の軸運動であり、もう一方は、回転ドアに代表される体の中の体幹部の中心である背骨を中心とした左右対称な回転運動である。後者の場合、股関節における荷重は、略左右対称にかかっており、前者のような片側だけでかつ、下半身に頼った軸を使った運動ではなく、軸(背骨)を中心とした体全体における左右部分を均等に使うため、動揺性が少なくかつ、最も小さい回転の軸を形成し得るとともに、より高いスピード性を表現することができるタイプである。上記二種類の運動形態は、日本人(運動苦手者)と中南米人および運動上達者に見られるバッティングの形態に特に著明に現れることとなる。前者であるタイプの打者は、自分のボールに向かって正面にくるほうの足、右バッターの場合、体の左側に運動の壁を作ることを目的として回転の軸がその部分の壁によって止まって表現される回転運動と言うよりは、平進運動のタイプであり、後者であるタイプの打者は、体の中心から回転を起こし、あたかも高速に回転するコマのように確立された支持軸を持ち、その諸動作により球をとらえようとする表現方法を持つタイプである。この二つのタイプの優劣は、現在の野球に見られるように、長距離でかつ安定したバッティングを続けて表現し得るタイプが後者に多く見られ、かつ、外国人(特に中南米人)における長距離ヒッターの飛距離を見ても、その優劣は、著明であると理解できるところである。が、しかし、この一件簡単そうに見える左右対称になる筋活動もその利き腕(右利き、左利きに代表される)等に多くの影響を受けることも簡単に推測されるところである。特に、日本人(黄色人種)であり、かつ、右利き腕者の場合における左側背部は、利き腕の反対側ということもあり、特に筋の発達と促通が悪い部位である。また、日本人および運動苦手者の場合、僧帽筋の活動が著明なため、この筋を中心とした運動形態が形作られている。このため、左背側部を上背部(僧帽筋周辺)と下背部(広背筋周辺)とに分けた場合、上背部に比べ下背部は、有効に運動を表現することが難しくなっており、これを要因として左広背筋部の筋の成長を阻害している。また、それら固有の背筋群の活動バランスが悪いため、腹部周辺の筋肉では、それら背筋群のバランスの異常を調整・修正するために、回旋活動の力が大きく削られており、より効率の良い体幹回旋活動が阻害されている結果となっている。また、その他にも反射反応の中の一つである頸反射の影響も大きく関わっていることも説明しなければならない。頸反射は、大きいくくりとして緊張性頸反射という四肢の筋を緊張を調整して姿勢を保つ活動を行っている。この中でも特に大きく分けると二つの頸反射活動がある。一つ目は、対称性緊張性頸反射と呼ばれるもので、頸部が屈曲するとその運動性反応として上肢では屈筋の緊張が増大し、また、下肢部では伸筋緊張の増大が現れ、また、頸部を伸展すると、その運動性反応としては、上肢では伸筋緊張の増大が起き、また、下肢部では屈筋緊張の増大が現れるといった反射活動である。これは、相撲やパワーリフティング等に見られる重量物を持ち立ち上がる際に顎を強く引き、頸部の屈曲活動を増大させ、下肢部での伸筋活動を増大させようとしている動きとしてよく見受けられる。また、野球等の守備でポジションについている選手に見受けられる頸部の伸展活動により下肢部の屈筋の活動を著明にし、低い体制でポジションを創り出そうとしている動きとしてもよく見受けられる働きである。もう一方は、野球やテニス等の運動に見られるような体幹に対し、垂直面方向で起きる回旋活動がその動きの中で大変大きなウェイトを占める働きに関係している非対称性緊張性頸反射である。この反射活動は、頭部を片側方向に回旋すると、顎側の上下肢の伸筋の筋緊張は増大し、頭側の筋緊張が増大すると言う働きである。これら上記二つの頸反射は、これまで記述してきた筋肉の体における左右非対称性に対しても大きな影響力を持っていることは、言うまでもないことである。また、これらの働きは、野球のバッティングや投球動作等にもその活動効率をよくするために行っている反射活動である。これら様々の反射活動により運動は、より完成の高いものとなっているが、この反射活動が利き腕や利き脚等の影響により、偏った筋発達が起き、歪曲させられていることもまた、事実である。
【0127】
このため、左広背筋部に設けた刺激部21は、働き過ぎる右広背筋部および左僧帽筋部を中心に動きの偏った左背部全体を修正する上で重要なポイントとなる。一つは、右広背筋部の活動が右利きの場合著明で発達が良いため、その筋の活動に引き下げされるように傾いてしまう右肩下がりの姿勢を骨盤を中心としたバランスの中で修正するように働くこととなる。また、左上背部(僧帽筋周辺部)の過度な運動活動をも修正することとなる。しかし、左広背筋部に設けた刺激部21だけでは、左背部全体を修正するには難しく、左脊柱起立筋部中央部および左大菱形筋部に設けた刺激部21および左脊柱起立筋部最下部に設けた刺激部21との連動および補助が必要となる。これにより、腰部分を中心とした左右対称で、かつ、運動重心の安定したアライメントを創り出すことができることとなる。しかし、この偏った筋活動にも利点がある。それは、広背筋という強固な骨盤部から起きる支持筋の発達が弱いがために運動自由度三度という自由度の高い球関節である肩関節を保持するにはその能力が低く、これによって左肩関節内部におけるインナーマッスル(棘上筋、棘下筋、大円筋、小円筋、および肩甲下筋)の発達が良くなる点である。一方、右利き腕者の場合、右肩関節におけるインナーマッスルの発達は、その周りを形成する筋肉群の発達が著明なため、その働きと筋の促通は阻害を受けている。よって右棘上筋部および右棘下筋部に設けた刺激部21により肩関節そのものの支持性を高める必要性がある。また、これら右インナーマッスルの発達が弱いため、右肩関節における可動性は、著しい可動範囲制限を受けているため、これも上記二点の刺激により、肩関節における柔軟性が向上し、かつ、改善されることとなる。
【0128】
また、右背部全体の筋活動が強いために起きる右肩を後方に引き気味な姿勢変移を右大胸筋の点状の刺激入力によってその大胸筋の働きの一つである肩を前方に引き出してくるという動作を利用して肩関節を体の前後対称で効率の良い位置へと導いてくる。さらに、左肩甲骨の場合、僧帽筋や小胸筋等の筋緊張による肩甲骨自体の上方での位置固定を下方外方向へと変移させる必要性がある。このため、左前鋸筋に設けた刺激部21により、その筋の作用である肩甲骨の外転を利用し、改善を図る。また、右利きの場合の頸部の活動は、顔が右を向き易く、左に向き難いという特性を持つため、右胸鎖乳突筋部に設けた刺激部21により改善を図る。これら上記の刺激入力方法により、体幹部を安定させ、かつ、回旋がスムーズに起きるように、改善する。
【0129】
また、運動苦手者における上半身、とくに自由上肢帯における運動表現において、上腕部は、その不完全な運動習得能の影響によって屈筋である上腕二頭筋の働きが上腕三頭筋に比べ優位である。
【0130】
そもそも人間は、誕生時には身体や四肢を畳んだ状態で生まれてくる。簡単に例えて表現するならば各回旋動作や屈曲動作が可能な関節は、その殆んどが回内位であり、内転している。人は、これを身体の成長とともに習得する運動能によって外方向へと力の流れを変化させていくのである。
【0131】
しかし、運動苦手者や日本人の場合、成長過程における運動能力の発達が高度で便利な文明発達によって運動能の開発・発達が阻害されており、この成長過程を正しくたどっていないものと表現できる。つまり、各関節部における運動表現は、回外位よりも回内位、外転位よりも内転位により傾いているため内向きの閉じた運動表現を得意としている。(過前捩状態)一方運動上達者においては、各関節における可動域と運動表現力は大きく、且つ、外方向へと転じている。(正常関節可動状態)
また、運動上達者は苦手者に比べ、多関節筋と単関節筋、伸筋と屈筋の役割がはっきりと区別され表現されている。一方運動苦手者の場合、その筋肉活動の大半は、姿勢の制御に費やされてしまう。このため、運動時における筋肉の無駄な緊張と力の表現が生じている。また、運動苦手者における運動表現は、上半身では、屈曲筋優位の活動であり、下半身においては伸展筋の活動が優位である。(頸反射等による影響等)これは、運動中のボディーバランスについての習得が完全なものでないばかりか、関節そのものにも不完全な運動形態を作り出してしまている結果に起き得るものである。これらの理由や運動方向の違いに拠り、運動上達者の運動表現は、その他の者よりもダイナミックで安定性の高いものとなる。
【0132】
したがって、点状の刺激によって上腕三頭筋の筋活動を優位に導く。また、前腕部においても同様の運動表現能の稚拙さが現れる。このため、前腕部では、屈曲、回内位を採ることが多く、これを前腕部の手根伸筋と回外性筋への点状の刺激による運動軸の矯正が必要となる。また、前述した様に前腕関節部における筋肉活動は、屈曲と回内が優位であるため、前者の様な点状刺激を伸筋および回外筋に対して施す。上記の理由によって状刺激21をそれぞれの活動筋に対して施す。
【0133】
また、上記までのことと同時にバッティングや投球動作に見られるより高度な運動表現の理解も必要となる。それは、角運動量の相殺である。この動作を簡単に説明するならば、歩く時に起き得る右足を出した場合に上半身がとり得る姿勢である左手を前に出すという動作である。また、その反対足である左足が後方に引かれることに対して右腕を後方向に引くという動作である。この上半身と下半身における回転を含むバランス運動こそ正しい体幹の回転運動を起こす上で最も重要な要素となる。このような動作は、特に投球時に多く見られる動作であり、右利きの場合における振りかぶった右手に対して降り下ろそうとするように働く左手の関係(力の引っ張り合いによる角運動量の相殺によるバランスの構築や回転スピードの加速)であるとか、右足で蹴りだしながら左足をブレーキがわりとして働かせ、その急激な運動方向の変化により下半身で回転の力を生み出し、それを上半身へとつなげ、より高いスピードパフォーマンスを表現していることから見てもわかられることと思う。これらの複合的な関節における回旋や屈曲伸展活動の調和により、人はより複雑でより高い運動技術を表現することができるとともに、それを必要としている。
【0134】
しかし、下肢自由帯と違い、上肢自由上肢帯での筋肉活動は、脳の構造上左右対称な筋肉活動を行うため、その他の部位と違い左右対称性を必要としている。が、しかし、上記のような専門的に片側の肢部を使う運動(例えばテニスや野球等に代表されるもの)に関してはこの限りではなく、それら片側の働きをより高効率化するために、右上腕三頭筋内外側頭部に対する刺激部21を施すことにより、よりスムーズな肘関節部の伸展能を創り出す。また、この運動をよりスムーズに行わせるためには、逆の上肢体である左上腕部の角運動量の相殺を必要する。このため、左上腕二頭筋部に設けた刺激部21により、肘部の屈曲能を高める必要がある。これら右上腕部との非対称的な角運動量と活動により、よりスムーズな体幹回旋能も行うことができることとなり、スピード向上とその運動動作に必要な筋力の発現を図ることができることとなる。また、両前腕部も前述までの上腕部および体幹部より影響を受ける。このため、右回外筋部に設けた刺激部21により右前腕部の回外力を高めるとともに、右上腕三頭筋の働きを補助し、高めるように活動する右長短橈側手根伸筋部への刺激部21を用いることとなる。また、右橈側手根屈筋部の働きを著明にすることにより、日本人や運動苦手者に見られる尺屈側に偏りがちな活動を橈屈側へと導き、スナップの弱いと言われている日本人および運動苦手者に対して力強い手首の屈伸運動と、前腕部における回旋活動を実現することができることとなる。この刺激入力アプローチにより、投球時やテニスなどにおけるストローク時におきる肘部の障害(野球肘やテニス肘)の改善を図ることができることとなる。また、左前腕部に関しても上記同様の改善を図る必要があり、これは、右前腕部の活動とは角運動量の相殺上逆の働きとなり、左尺側手根伸筋部と左尺側手根屈筋部とに設けた刺激部21により、上記右側の前腕部とは逆の改善を図る。この両上肢に対する左右非対称な刺激入力により、自由上肢体における角運動量の相殺を図り、目的とする体幹部の回旋能力の向上を図ることができることとなる。また、付け加えるならは、このような筋活動による体幹の安定は、下肢自由帯においては、より著明となる。これは、下肢部における筋肉活動は、上肢のそれとはまるで反対の相反的な筋肉活動表現を採るため、左右非対称な筋肉に対するアプローチは、特に有効であることによるものである。
【0135】
これらの衣類を着用して運動を行うことにより、高いボディーバランスや身体支持力を得ることができ、運動効果を最大限に引き出すことができる。
【0136】
したがって、競技選手の場合、怪我をすることなく、理想の姿勢で効率の良いトレーニングを行うことができ、しかも、競技では、運動力の無駄を無くして優れた成績を納めることができることとなる。また、体幹の伸展機能の向上に伴って緊張が緩和され、体幹の柔軟性や呼吸機能が向上するので、メンタル面での能力が向上し、競技本番で充分な能力を発揮できる身体にすることができる。
【0137】
また、一般に運動をしている人の場合、短期間で、怪我をしない運動に好適な理想の姿勢を作り上げることができ、運動能力の向上、日常生活における姿勢の矯正、身体プロポーションの向上などを図ることができる。特に、身体プロポーションに関しては、これらの衣類を着用して運動を行うことにより、猫背、出っ尻、太い太股、太いふくらはぎなどを、骨格および筋肉から根本的に作り替えることができることとなる。
【0138】
さらに、高齢者に対するリハビリ的運動へもこれらの機能の効果により、より安全でより効果的な運動形態へと昇華させる。例えば、膝関節変形症による膝部外反(がに股)、脊柱変形症より起こる前傾位(凸背)の抑制・脊柱の機能向上、また前傾姿勢による前足部への負担を軽減し、外反母指等の足への障害をも軽減させることができる。また、転倒等の事故は、体幹の筋力低下およびバランス能力の低下によって誘発されるものであり、怪我への確率が軽減されることとなる。
【0139】
まとめると、点による刺激入力によって、動きの鈍った筋群に対し、筋活動を促通促進し、コントロールさせることを目的とするウェアーの構築。上記の入力後に起きる現象を利用することによって理想の身体活動を実現するために、効率の良い状態(理想の姿勢)へと導く。この状態を実現するために、
(1) 各関節(四肢部)における角運動量からの影響による体幹バランスの効率化を図ること。
【0140】
(2) 緊張性頸反射活動等に影響される体幹バランスの効率化を図ること。
【0141】
(3) 左右利き腕利き脚等に影響される体幹バランスの効率化を図ること。
【0142】
と言う上記三つの条件を満たし、考慮したものでなければならない。それと平行して関節や体全体の硬さによって(筋や腱の活動可動域)が小さくなってしまった現象と非効率的な運動神経の促通状態を改善することを目的としている。
【0143】
【発明の実施の形態】
−実施例1、2−
図26および図27に示すように、刺激部21を有するタイツ2d、2eを二種類作成した。
【0144】
タイツ2d、2eの作成には、シリンダー径7インチ、26ゲージのイタリアのサントニ社製の成形丸編機(商品名 マテックHF70)を使用し、図28に示すように、身体へのフィット製を良くするために、周り方向の編み機の針数をA部、B部、C部の各部位によって、それぞれ572針(全針)、429針(全針×3/4)、286針(全針×1/2)の3段階に変えて作成した。編み組織は基本的にプレーン編みである。さらに、刺激部21の編み組織を図29に示している。図28(b)ないし(d)および図29において、左右にウェール方向、上下にコース方向とする。○はニット(ループを形成する)、×はミス(ループを形成しない)を示している。
【0145】
このタイツ2d、2eは、全体を、太さ78dtex/ 48f のナイロン糸を引き揃えた糸と、太さ44dtexのポリウレタン弾性糸の周りに太さ56dtex/ 48f のナイロン糸をシングルカバーリングした糸とで構成した。
【0146】
さらに、刺激部21は、太さ78dtex/ 36f のポリエステル糸をボス糸として添え編みして使用した。
【0147】
なお、タイツ2d、2eは、左右それぞれの下半身形状に合致する筒状に編み上げられた左半部および右半部を、身体中心線に沿ってなるべく皮膚に刺激を与えないようにフラット縫いで縫い合わせた。
【0148】
図26に示すように、一方のタイツ2dの刺激部21は、着用状態で、それぞれ、左中小臀筋部、右大臀筋部、左大腿二頭筋部、右半腱様筋半膜様筋部、左腓腹筋内側部、右ヒラメ筋外側部、右内外腹斜筋部、腹直筋下部中央、右縫工筋部、右大腿四頭筋内側広筋部、左大腿四頭筋外側広筋部、左前脛骨筋部、右第三脛骨筋部のそれぞれのモーターポイントに相当する位置の皮膚表面に位置するように、タイツ2dの皮膚と接する肌面に設けた。なお、腹直筋下部中央は、腸骨下腹神経と腸骨鼠径神経を最大に刺激しうる任意の点であり、臀筋(大臀筋)は、下臀神経を最大に刺激しうる任意の点である。
【0149】
図27に示すように、他方のタイツ2eの刺激部21は、着用状態で、それぞれ腹直筋下部中央、右大臀筋部、左中小臀筋部、右半膜様筋半腱様筋部、左大腿二頭筋部、右大腿四頭筋内側広筋部、右縫工筋部、左前脛骨筋部、左腓腹筋内側部、右ヒラメ筋外側部、右第三腓骨筋部のそれぞれのモーターポイントに相当する位置の皮膚表面に位置するように、タイツ2eの皮膚と接する肌面に設けた。なお、腹直筋下部中央は、腸骨下腹神経と腸骨鼠径神経を最大に刺激しうる任意の点であり、臀筋(大臀筋)は、下臀神経を最大に刺激しうる任意の点であり、大腿四頭筋内側広筋部は、大腿神経を最大に刺激しうる任意の点である。
−比較例1、2−
図30に示すように、図26に示すタイツ2dの刺激部21を左右対称に形成した以外は、上記実施例2と同様のタイツ2yを作成した。また、図31に示すように、この刺激部21を有しない以外は、上記実施例1と同様のタイツ2zを作成した。
−被験者の選定−
比較例2のタイツを着用した被験者に、閉眼状態で起立してもらい、爪先側に体重が乗った前傾姿勢で右利きの被験者を10人選別した。
−試験項目−
比較例1のタイツ2zを着用したまま、以下の試験項目についてそれぞれ試験を行った。また、試験時の被験者の動きを目視で確認した。
【0150】
(a)足裏の重心測定法
タイツ2zを着用した被験者に、フットプリントの測定面に起立してもらい、その時のインクの濃淡により、被験者の荷重位置を測定する。
【0151】
(b)垂直飛び試験
タイツ2zを着用した被験者に垂直飛びを行ってもらい、その時の高さを測定する。
【0152】
(c)連続性跳躍運動による全身動揺の測定
タイツ2zを着用した被験者にその場での跳躍運動を連続して行ってもらい、その時の着地地点の乱率を測定する。飛躍運動は、メトロノームで100bpmとした場合のリズムに合わせてそれぞれ行った。また、飛躍運動時の高さを目視により確認した。
【0153】
(d)片側肢立位における経時的変化の測定
タイツ2zを着用した被験者にその場で片足立ちになってもらい、バランスを崩して測定軸足の移動が起こるまでの時間を測定する。
その後、上記(a)ないし(d)と同様の試験を、それぞれ被験者に行った。また、試験時の被験者の動きを目視で確認した。
【0154】
実施例1および実施例2のタイツ2d、2eならびに比較例1のタイツ2yに着替えた場合についても、同様の試験を、それぞれ被験者に行った。また、試験時の被験者の動きを目視で確認した。
全ての結果を表11に示す。
【0155】
【表11】
Figure 2004100115
【0156】
表11から、本発明に係るタイツ2d、2eは、(a)の試験結果から、前傾姿勢で右に変移していた被験者を、中間姿勢またはやや後傾姿勢にできることが確認できた。また、(c)の試験結果により、身体の動揺性も減少することが確認できた。(d)の試験結果により、運動基底面の変化による動揺性の変化・減少をも確認できた。
【0157】
さらに、(b)の試験結果から、本発明にかかるタイツ2d、2eを着用した場合は、比較例1、比較例2のタイツ2y、2zを着用した場合に比べて優れた垂直飛びの成績が得られた。これは、前記(a)(b)の結果からも明らかなように、運動姿勢と、それから表現される力の積には密接な関係があることが証明された。
【0158】
また、(b)(c)の試験時の被験者の動きから、比較例1、比較例2のタイツ2zを着用した際にアンクルリフレクションを中心とした運動形態であった被験者の動きが、実施例1、実施例2のタイツ2d、2eを着用することによって体幹が安定し、ヒップリフレクションを中心とした運動形態に変化していることが確認できた。また、比較例2の試験時の結果により、膝を中心としたアンクルリフレクションでは、安定した運動表現を得ることが難しいことが証明された。さらに、体幹を固定した実施例1と、比較例2の試験結果により、上肢と下肢との連動的役割が運動に及ぼす影響が大きいことが証明された。また、これらの試験結果と、本発明と比較例2の試験結果により、実施例1および2により発生しうるヒップレフレクションを中心とした運動形態の方が、比較例2により発生しうるアンクルリフレクションより、高い運動能力の向上のあることが証明された。
【0159】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によると、高いボディーバランスや身体支持力を得ることができ、運動効果を最大限に引き出すことができる。
【0160】
また、高いボディーバランスや身体支持力を得ることにより、怪我防止、姿勢の矯正、身体プロポーションおよび運動能力の向上、などを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)ないし(c)は、右利きで、運動姿勢が前傾位の人間の抗重力的作用を伴う運動からみた筋緊張の強い筋群を示す人体の側面図、正面図、背面図である。
【図2】(a)ないし(c)は、右利きで、運動姿勢が後傾位の人間の抗重力的作用を伴う運動からみた筋緊張の強い筋群を示す人体の側面図、正面図、背面図である。
【図3】筋肉活動を二次元的に示すモデル図である。
【図4】股関節伸展時の大腿部の筋肉活動を示すモデル図である。
【図5】股関節屈曲時の大腿部の筋肉活動を示すモデル図である。
【図6】股関節伸展時の臀部周辺部の筋肉活動を示すモデル図である。
【図7】股関節屈曲時の臀部周辺部の筋肉活動を示すモデル図である。
【図8】筋肉活動の説明図である。
【図9】(a)および(b)は、左右非対称性から来る筋発達と重量バランスの違いを説明する概略図である。
【図10】(a)および(b)は、前傾位および後傾位による運動姿勢の違いを説明する概略図である。
【図11】(a)および(b)は本発明にかかる刺激を加えるための刺激部材を示す斜視図である。
【図12】本発明にかかる刺激を加えるための刺激部材の使用状態を示す断面図である。
【図13】(a)は本発明にかかる刺激を加えるための他の刺激部材を示す断面図、(b)および(c)は同刺激部材の使用状態を示す断面図である。
【図14】(a)は本発明にかかる刺激を加えるためのさらに他の刺激部材を示す断面図、(b)および(c)は同刺激部材の使用状態を示す断面図である。
【図15】(a)は本発明にかかる刺激を加えるためのさらに他の刺激部材を示す断面図、(b)および(c)は同刺激部材の使用状態を示す断面図である。
【図16】(a)は本発明にかかる刺激を加えるためのさらに他の刺激部材を示す断面図、(b)および(c)は同刺激部材の使用状態を示す断面図である。
【図17】(a)は本発明にかかる刺激を加えるためのさらに他の刺激部材を示す断面図、(b)および(c)は同刺激部材の使用状態を示す断面図である。
【図18】(a)は本発明にかかる刺激を加えるためのさらに他の刺激部材を示す断面図、(b)および(c)は同刺激部材の使用状態を示す断面図である。
【図19】本発明にかかる刺激を加えるためのさらに他の刺激部材の使用状態を示す断面図である。
【図20】(a)および(b)は、本発明に係る衣類の刺激部の一実施形態を説明する部分断面図である。
【図21】(a)および(b)は、本発明に係る衣類の刺激部のさらに他の実施形態を説明する部分断面図である。
【図22】本発明に係る衣類の刺激部の一実施形態であるさらに他の刺激部材を衣類に取り付けて着用した状態を説明する部分断面図である。
【図23】(a)ないし(d)は、本発明にかかる衣類の一実施形態であるタイツを示す右側面図、正面図、左側面図、背面図である。
【図24】(a)ないし(f)は、本発明にかかる衣類の一実施形態であるフルスーツを示す右側面図、正面図、左側面図、背面図、同図(b)のI−I 線断面図、同図(b)のII−II 線断面図である。
【図25】(a)ないし(f)は、本発明にかかる衣類の一実施形態であるアンダーシャツを示す右側面図、正面図、左側面図、背面図、同図(b)のIII−III 線断面図、同図(b)のIV−IV 線断面図である。
【図26】(a)ないし(f)は、本発明に係る実施例1のタイツを人体に着用した状態で示す右側面図、正面図、左側面図、背面図、同図(b)のV−V 線断面図、同図(b)のVI−VI 線断面図である。
【図27】(a)ないし(f)は、本発明に係る実施例2のタイツを人体に着用した状態で示す右側面図、正面図、左側面図、背面図、同図(b)のVII−VII 線断面図、同図(b)のVIII−VIII 線断面図である。
【図28】(a)は本発明に係る実施例1および実施例2のタイツの編み組織を説明する概略図、(b)ないし(d)は同タイツの編み組織を説明する組織図である。
【図29】本発明に係る実施例1および実施例2にのタイツの刺激部の編み組織を説明する組織図である。
【図30】(a)ないし(f)は、比較例1のタイツを人体に着用した状態で示す右側面図、正面図、左側面図、背面図、同図(b)のIX−IX 線断面図、同図(b)のX−X 線断面図である。
【図31】(a)ないし(f)は、比較例2のタイツを人体に着用した状態で示す右側面図、正面図、左側面図、背面図、同図(b)のXI−XI 線断面図、同図(b)のXII−XII 線断面図である。
【符号の説明】
1 刺激部材
2 衣類
21 刺激部
2a タイツ
2b フルスーツ
2c アンダーシャツ
2d タイツ
2e タイツ
3 皮膚

Claims (22)

  1. 抗重力的作用を伴う運動において、姿勢の差異および利きを伴う神経伝達の差異による筋緊張の強弱で区分された筋群の中から選択される少なくとも1つの筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、着用状態でその筋の神経伝達の促通を与える刺激部が形成されたことを特徴とする衣類。
  2. 筋緊張の強い多関節筋群の中から、理想の運動姿勢を形成するために選択される少なくとも1つの多関節筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、刺激部が形成された請求項1記載の衣類。
  3. 筋緊張の強い単関節筋群の中から、理想の運動姿勢を形成するために選択される少なくとも1つの単関節筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、刺激部が形成された請求項1記載の衣類。
  4. 筋緊張の弱い多関節筋群の中から、理想の運動姿勢を形成するために選択される少なくとも1つの多関節筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、刺激部が形成された請求項1記載の衣類。
  5. 筋緊張の弱い単関節筋群の中から、理想の運動姿勢を形成するために選択される少なくとも1つの単関節筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、刺激部が形成された請求項1記載の衣類。
  6. 刺激部は、矢状面、前額面、水平上下面、およびそれぞれを含む人体の解剖学的姿位において、筋活動力を高める非対称な位置に設けられた1ないし5の何れか一記載の衣類。
  7. 刺激部は、矢状面、前額面、水平上下面、およびそれぞれを含む人体の解剖学的姿位において、筋活動の巧緻性を高める非対称な位置に設けられた1ないし5の何れか一記載の衣類。
  8. 刺激部は、三次元的に拮抗して活動する筋肉に対して設けられた請求項6または7記載の衣類。
  9. 刺激部は、皮膚に存在する受容器が認識できる程度の刺激を発生するものであり、この刺激部により認識される刺激は、それ以外の部分から認識される刺激よりも大きくなされた請求項1ないし8の何れか一記載の衣類。
  10. 刺激部は、生地肌面に設けられた突起物による刺激である請求項9記載の衣類。
  11. 刺激部は、生地形成後の加工により、この刺激部に相当する部分の生地肌面を突起状にしたものである請求項9記載の衣類。
  12. 刺激部は、温冷感によるものである請求項9記載の衣類。
  13. 刺激部は、生地組織を利用して形成したものである請求項9記載の衣類。
  14. 刺激部は、この刺激部以外の生地組織を構成する繊維と異なった繊維を使用して形成したものである請求項9記載の衣類。
  15. 請求項1ないし14の何れか一記載の衣類を用いて、筋群の中から選択される少なくとも1つの筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、刺激部による神経伝達の促通を促して所望の筋の筋意識を高めることで理想の姿勢を形成することを特徴とする姿勢形成方法。
  16. 抗重力的作用を伴う運動において、姿勢の差異および利きを伴う神経伝達の差異による筋緊張の強弱で区分される筋群の中から選択される少なくとも1つの筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、刺激部材を設け、この刺激部材を設けた筋の神経伝達の促通を促して所望の筋の筋意識を高めることで理想の姿勢を形成することを特徴とする姿勢形成方法。
  17. 主動筋に刺激部材を設け、この主動筋の筋活動を促通し、これにより筋活動力を高めた理想の姿勢を形成する請求項16記載の姿勢形成方法。
  18. 主動筋に対して反対の作用を持つ拮抗筋に刺激部材を設け、この拮抗筋の筋活動を高め、これにより筋活動の巧緻性を高めた理想の姿勢を形成する請求項16記載の姿勢形成方法。
  19. 請求項1ないし14の何れか一記載の衣類を用いて、筋群の中から選択される少なくとも1つの筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、刺激部による神経伝達の促通を促して所望の筋の筋意識を高めて運動を行わせることを特徴とするトレーニング指導方法。
  20. 抗重力的作用を伴う運動において、姿勢の差異および利きを伴う神経伝達の差異による筋緊張の強弱で区分される筋群の中から選択される少なくとも1つの筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、刺激部材を設け、この刺激部材を設けた筋の神経伝達を促通して所望の筋の筋意識を高めて運動を行わせることを特徴とするトレーニング指導方法。
  21. 主動筋に刺激部材を設け、この主動筋の筋活動を促通し、これにより筋活動力を高めて運動を行わせる請求項20記載のトレーニング指導方法。
  22. 主動筋に対して反対の作用を持つ拮抗筋に刺激部材を設け、この拮抗筋の筋活動を高め、これにより筋活動の巧緻性を高めて運動を行わせる請求項20記載のトレーニング指導方法。
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