JP2004092866A - 出力クラッチ付き無段変速装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】出力クラッチのクラッチシリンダに油圧を供給する油路の形成が容易で、出力クラッチに作用するスラスト荷重を受けるストッパの強度を必要以上に高く設定する必要が無く、構造の簡素化、及び部品コストの低減を図る。
【解決手段】出力クラッチ付き無段変速装置において、クラッチシリンダ41への油路が、変速機ケースであるクラッチカバー14aから少なくともクラッチカバー14aと対向するクラッチハブ36の外側面と、クラッチハブ36と変速機出力軸13とのスプライン係合部47と、クラッチハブ36の内側面とを通って形成され、外側面と内側面とが受ける油圧によるスラスト荷重がほぼ同じになるように外側面と内側面との受圧面を設定する。
【選択図】図2
【解決手段】出力クラッチ付き無段変速装置において、クラッチシリンダ41への油路が、変速機ケースであるクラッチカバー14aから少なくともクラッチカバー14aと対向するクラッチハブ36の外側面と、クラッチハブ36と変速機出力軸13とのスプライン係合部47と、クラッチハブ36の内側面とを通って形成され、外側面と内側面とが受ける油圧によるスラスト荷重がほぼ同じになるように外側面と内側面との受圧面を設定する。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セカンダリプーリ軸と駆動輪側の変速機出力軸との間に出力クラッチが介在されている出力クラッチ付き無段変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等の車両に搭載されている無段変速装置として、エンジン側のプライマリプーリ軸に設けられたプライマリプーリと、駆動輪側のセカンダリプーリ軸に設けられたセカンダリプーリとの間に駆動ベルトを巻装し、油圧によって両プーリのプーリ径を変化させることで、セカンダリプーリ軸の回転数を無段階に変化させるようにしたベルト駆動式無段変速装置が多く採用されている。
【0003】
又、この種の無段変速装置では、例えば特許第2687041号(特開平4−165149号)公報に開示されているように、セカンダリプーリ軸と減速ドライブギヤを有する変速機出力軸との間に、出力クラッチを介在させ、急減速時、或いは急停車時には、出力クラッチを開放動作させることで、駆動ベルトにかかる負荷を軽減して損耗を防止すると共に、停車中であってもダウンシフト等の変速制御を可能にする技術が知られている。
【0004】
尚、出力クラッチを有する無段変速装置には、エンジンと無段変速機との間にトルクコンバータ等の発進デバイスを介在させるタイプと発進デバイスを省略しているタイプとがあるが、本明細書で説明する出力クラッチには、発進デバイスの機能を有するものも含まれる。
【0005】
【特許文献1】
特許第2687041号(特開平4−165149号)公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した公報に記載されている無段変速装置は、セカンダリプーリ軸を変速機ケースに回動自在に支持し、その外周に変速機出力軸を挿通支持し、変速機ケースに形成した系統別の油路をセカンダリプーリ軸に形成した各油路に連通させ、この各油路を出力クラッチを断続動作させるクラッチシリンダ、セカンダリプーリを動作させるセカンダリシリンダに連通させて、各シリンダに作動圧を供給すると共に、潤滑油路を介して必要潤滑部へ潤滑油を供給するようにしているため、セカンダリプーリ軸に複数系統の油路を形成しなければ成らず、油路形成が複雑化してしまう問題がある。
【0007】
これに対処するに、出力クラッチのクラッチシリンダに対して供給するクラッチ油圧を、セカンダリプーリ軸を通すことなく、変速機ケースから出力クラッチのクラッチハブ或いはクラッチドラムと、これらを軸支する変速機出力軸或いはセカンダリプーリ軸との間のスプライン係合部を介して供給することが考えられる。
【0008】
しかし、スプライン係合部を油圧回路の一部として利用する場合、このスプライン係合部を構成するクラッチハブ或いはクラッチドラムの軸端部側に、クラッチ油圧によるスラスト荷重が印加されるため、このスラスト荷重に抗すべく、ある程度、強度が要求されるストッパ部材等が必要となるため、部品コストが高くなってしまう不都合がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、出力クラッチのクラッチシリンダに油圧を供給する油路の形成が容易で、出力クラッチに作用するスラスト荷重を受けるストッパの強度を必要以上に高く設定する必要が無く、構造の簡素化、及び部品コストの低減を実現することの可能な出力クラッチ付き無段変速装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、ベルト式無段変速機のセカンダリプーリを支持するセカンダリプーリ軸と、上記セカンダリプーリ軸に対して同軸上で相対回転自在に挿通された変速機出力軸と、上記セカンダリプーリ軸の外周にスプライン係合するクラッチドラムと、上記変速機出力軸の外周にスプライン係合するクラッチハブと、上記クラッチドラムと上記クラッチハブとを接離自在なクラッチ部材と、該クラッチ部材を動作させるクラッチシリンダとを有し、上記セカンダリプーリ軸と上記変速機出力軸との軸端に配設される出力クラッチと、上記出力クラッチの外側に近接して設けられる変速機ケースとを有する出力クラッチ付き無段変速装置において、上記シリンダへの油路が上記変速機ケースから少なくとも上記変速機ケースと対向する上記クラッチハブの外側面と、上記クラッチハブと上記変速機出力軸とのスプライン係合部と、上記クラッチハブの内側面とを通って形成され、上記外側面と上記内側面が受ける油圧によるスラスト荷重がほぼ同じになるように上記外側面と上記内側面との受圧面を設定することを特徴とする。
【0011】
このような構成では、出力クラッチのクラッチシリンダへの油圧を変速機ケースからクラッチハブと変速機出力軸とのスプライン部を介して供給するので、従来のように変速機出力軸又はセカンダリプーリ軸を介すことなく、簡素で且つ安価に油路を形成することができる。
【0012】
又、クラッチハブの外側面と内側面の油圧により受けるスラスト荷重がほぼ同じになるように外側面と内側面との受圧面を設定するので、クラッチハブが受ける油圧によるスラスト荷重(合力)をなくす、又は低減することができるのでスラスト方向への移動を規制するストッパ構造を廃止又は安価にすることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、上記外側面と上記内側面との受圧面は、その上記変速機出力軸に対する周方向の投影面積が略同一になるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。ここで、図1は出力クラッチ付き無段変速装置の動力伝達系を示す全体構成図、図2は出力クラッチとその周辺の拡大断面図、図3は出力クラッチの要部拡大断面図である。
【0015】
図1の符号1は駆動源としてのエンジンで、このエンジン1の出力軸2が、無段変速部3、終減速部4を介して、駆動輪5を支承する駆動軸6に連設されている。
【0016】
無段変速部3は、入力側からトルクコンバータ7、前後進切換装置8、ベルト式無段変速機9を主要に構成されており、エンジン出力軸2がトルクコンバータ7のインペラ7aに連設され、このトルクコンバータ7のタービン7bが前後進切換装置8のプラネタリ入力軸8aに連設されている。
【0017】
前後進切換装置8は、プラネタリギヤ10が内装されており、フォワードクラッチ11とリバースブレーキ12とが共に開放状態にあるとき、ニュートラル状態となる。又、フォワードクラッチ11のみを係合させると、プラネタリギヤ10が一体回転して、トルクコンバータ7のタービン7bからの動力をベルト式無段変速機9へそのまま伝達する。一方、フォワードクラッチ11を開放し、リバースブレーキ12を係合させると、プラネタリギヤ10を介してトルクコンバータ7のタービン7bからの動力を逆転させた状態でベルト式無段変速機9へ伝達する。
【0018】
ベルト式無段変速機9のプライマリプーリ軸9aには、プライマリプーリ9bが設けられており、プライマリプーリ軸9aと平行に配設されているセカンダリプーリ軸9cには、プライマリプーリ9bと対向してセカンダリプーリ9dが設けられ、両プーリ9b、9d間に駆動ベルト9eが巻装されている。
【0019】
更に、各プーリ9b、9dの可動シーブ(プライマリシーブ9f、セカンダリシーブ9g)側には、各々シリンダ(プライマリシリンダ9h、セカンダリシリンダ9i)が形成されており、これら各シリンダ9h、9iに供給されるプライマリ油圧、セカンダリ油圧により、両プーリ9b、9dの溝幅を可変して変速制御が行われる。
【0020】
セカンダリプーリ軸9cは中空状に形成されており、この中空状に形成されたセカンダリプーリ軸9cに変速機出力軸13が、同軸上で且つ相対回転自在に挿通支持されている。又、この変速機出力軸13の反エンジン側の端部とセカンダリプーリ軸9cの端部との間に、セカンダリプーリ軸9cと変速機出力軸13間の動力伝達を断続する出力クラッチ14が介在されている。
【0021】
尚、出力クラッチ14は、通常は接続状態にあり、急ブレーキ、急減速等、駆動ベルト9eに、駆動輪5側から大きな負荷が伝達される場合に開放動作させて駆動ベルト9eの損傷を防止すると共に、急停車の際に開放動作させることで停車時におけるベルト式無段変速機9のダウンシフト制御を可能とし、良好な再発進性を得ることができる。又、上述したように、この出力クラッチ14は、発進デバイスとしてのトルクコンバータ7が省略されている無段変速装置にも採用可能であり、この場合、出力クラッチ14に発進クラッチとしての機能が付加される。
【0022】
変速機ケース22は、メインケース22aと、このメインケース22aのエンジン1側を閉塞すると共にトルクコンバータ7を収容するコンバータケース22bと、メインケース22aの反エンジン1側を閉塞するサイドケース22cとの三分割で構成されている。
【0023】
セカンダリプーリ軸9cは、反エンジン側の端部がボールベアリング25を介してサイドケース22cに軸支されている。尚、出力クラッチ14は、サイドケース22cの外側に形成されたクラッチ室22dに配設されており、このクラッチ室22dがクラッチカバー14aで閉塞されている。尚、このクラッチカバー14aも変速機ケース22の一部を構成している。
【0024】
又、セカンダリプーリ軸9cのエンジン側の端部は、メインケース22aにニードルベアリング26を介して軸支されている。更に、セカンダリプーリ軸9cに相対回動自在に挿通されている変速機出力軸13のエンジン側端縁部が、コンバータケース22bにボールベアリング27を介して軸支されている。
【0025】
更に、変速機出力軸13のエンジン側の端部、すなわち出力クラッチ14が配設されている側と反対側の端部にリダクションドライブギヤ16が設けられており、このリダクションドライブギヤ16がドライブピニオン軸17に設けられていリダクションドリブンギヤ18、ドライブピニオン19を介して、ファイナルギヤ20に連設され、更に、このファイナルギヤ20が駆動軸6に軸着されているデファレンシャル装置21に連設されている。
【0026】
又、無段変速部3、終減速部4、デファレンシャル装置21を収容する変速機ケース22の底部に設けられているオイルパン(図示せず)には、無段変速部3の変速比制御や伝達トルク制御等に必要な作動圧を制御するコントロールバルブユニット(図示せず)が配設されており、このコントロールバルブユニットにオイルポンプが一体に組み込まれている。図1に示すように、オイルポンプは、トルクコンバータ7のインペラ7aと一体回転するスプロケット28にチェーン29を介して連設されているエンジン駆動式オイルポンプである。
【0027】
又、図2に示すように、変速機出力軸13の出力クラッチ14が取付けられている側の軸端部がクラッチカバー14aに対設されており、このクラッチカバー14aの内壁に、変速機出力軸13の軸心を中心とするインナボス31が形成されており、このインナボス31の内周に、ブッシュ32が圧入されており、このブッシュ32の内周に変速機出力軸13の軸端部が、シール部材33aを介して油密状態で摺接されている。
【0028】
出力クラッチ14は、クラッチハブ36と、クラッチドラム37と、このクラッチハブ36とクラッチドラム37との間を断続するクラッチ部材としてのクラッチプレート部38とを備えている。
【0029】
セカンダリプーリ軸9cの軸端部は、変速機出力軸13の軸端部から周方向に離間して形成されていると共に、このセカンダリプーリ軸9cの軸端部内周と変速機出力軸13の軸周との間に、空隙部39が形成され、この空隙部39にクラッチハブ36の中心軸側に形成されたスリーブ状の支持軸部36aが挿通される。
【0030】
この支持軸部36aの内周は変速機出力軸13の外周に対してスプライン係合されており、又、支持軸部36aの外周とセカンダリプーリ軸9cの内周との間にブッシュ35が介装されて、支持軸部36aとセカンダリプーリ軸9cとの相対回動が許容される。
【0031】
又、クラッチカバー14aと対向するクラッチハブ36の外側面に、軸心を中心とするアウタボス36bがクラッチカバー14cに向かって突設されており、このアウタボス36bの内周が、クラッチカバー14aの内壁に突設されているインナボス31の外周にシール部材33bを介して油密状態で摺接されている。
【0032】
又、クラッチドラム37の支持軸部37aが、セカンダリプーリ軸9cの外周にスプライン係合されている。更に、クラッチドラム37の内周面には、クラッチプレート部38を押圧するクラッチピストン40が配設されており、このクラッチピストン40とクラッチドラム37の内周面とでクラッチシリンダ41が形成されている。
【0033】
一方、クラッチカバー14aには、コントロールバルブユニット(図示せず)で生成したセカンダリ油圧と、このセカンダリ油圧を減圧して生成したクラッチ油圧とを流通する第1、第2の油路42,43が各々形成されている。尚、このクラッチカバー14aに形成されている第1、第2の油路42,43は、サイドケース22cに形成されている油路に各々連通されており、クラッチカバー14aに形成されている第1、第2の油路42,43とサイドケース22cに形成されている油路(図示せず)との接合部は、図示しないシール部材を介して油密性が保持されている。
【0034】
更に、第1の油路42が、インナボス31で囲われた凹部内に開口されている吐出ポート44を介して、変速機出力軸13に穿設されているセカンダリ油路9jに連通されている。更に、このセカンダリ油路9jが、セカンダリプーリ9dの溝幅を可変制御するセカンダリシリンダ9i(図1参照)に連通されている。
【0035】
又、第2の油路43が、インナボス31に穿設した吐出ポート45を介し、クラッチハブ36の外側面に突設されているアウタボス36bで囲まれた凹部から、支持軸部36aと変速機出力軸13の外周との間の軸間部であるスプライン係合部47を経て空隙部39の深部に連通されている。尚、スプライン係合部47には、油圧の流通性を良好にするためのスプライン欠歯部が所定に間隔毎に形成されている。
【0036】
更に、この空隙部39の深部がセカンダリプーリ軸9cに穿設されているオイルポート48、及びこのオイルポート48に連通すると共にセカンダリプーリ軸9cの軸周に形成されているオイル溝49と、クラッチドラム37の支持軸部37aに穿設されているオイルポート50とを介してクラッチシリンダ41に連通されている。尚、オイル溝49の軸方向両側は、シール部材(図示せず)で油密性が保持されている。
【0037】
ところで、図3に示すように、クラッチハブ36に設けられている支持軸部36aのアウタボス36bで囲まれた凹部の外側面と、空隙部39の深部側に臨まされている内側面は、クラッチ油圧を受ける受圧面である。そして、この両受圧面は、クラッチ油圧によりスラスト荷重をそれぞれ受けるが、本発明ではそれぞれ両受圧面が受けるスラスト荷重がほぼ同じになるように両受圧面を設定している。具体的には、両受圧面の変速機出力軸13の周方向に対する投影面積が等しくなるように設定する。図3で説明するに外側面52と内側面53の面積が等しく設定されている。従って、クラッチハブ36の支持軸部36aが受けるスラスト荷重(合力)が略0になるため、クラッチハブ36が、クラッチカバー14aに突設されているインナボス31の端面と、セカンダリプーリ軸9cの端面との何れにも接触することのない中立位置で回転される。よって、クラッチハブのストッパ部材を廃止、又はストッパの強度を抑えることができ、コスト低減を図ることができる。
【0038】
次に、このような構成による無段変速装置の動作について説明する。エンジン1を駆動させると、トルクコンバータ7のインペラ7aに連設するスプロケット28、チェーン29を介して、変速機ケース22の底部に設けたオイルパンに配設されているコントロールバルブユニット(図示せず)に設けられているオイルポンプが駆動し、オイルパンに貯留されているオイルが吸い上げられて、コントロールバルブユニットに供給される。
【0039】
コントロールバルブユニットでは、オイルポンプからの吐出圧を調圧して、変速比とエンジントルクとに応じたセカンダリ油圧を生成すると共に、このセカンダリ油圧を減圧して運転条件に応じて予め設定されている変速パターンに従いプライマリ油圧を生成し、更に、セカンダリ油圧を減圧して、出力クラッチ14を締結動作させる低圧のクラッチ油圧を生成する。
【0040】
セカンダリ油圧は、変速機ケース22に形成された油路を通り、クラッチカバー14aに形成されている第1の油路42を通り、吐出ポート44から変速機出力軸13に穿設されているセカンダリ油路9jを通り、セカンダリプーリ9dに設けられているセカンダリシリンダ9iに供給され、トルク伝達に必要なベルトクランプ力をセカンダリプーリ9dに付与する。
【0041】
又、プライマリ油圧は、図示しないプライマリ油路を経て、プライマリプーリ9bのプライマリシリンダ9hに供給することで、両プーリ9b,9d間のプーリ比(変速比)を設定し、ローからオーバドライブまでの連続的な変速比制御を行なう。
【0042】
一方、出力クラッチ14に供給されるクラッチ油圧は、変速機ケース22に形成されているクラッチ油路(図示せず)を経て、クラッチカバー14aに穿設されている第2の油路43を通り、このクラッチカバー14aの内壁に突設されているインナボス31に穿設されている吐出ポート45から、クラッチハブ36の外側面に突設されているアウタボス36bで囲まれた凹部に流入され、クラッチハブ36の支持軸部36aと変速機出力軸13との間に形成された、軸間油路を構成するスプライン係合部47を経て、セカンダリプーリ軸9cの軸端と変速機出力軸13との間に形成された空隙部39の深部に至る。
【0043】
そして、この空隙部39の深部からセカンダリプーリ軸9cに穿設されているオイルポート48を通り、更にクラッチドラム37の支持軸部37aに穿設されているオイルポート50を経てクラッチシリンダ41に供給される。クラッチシリンダ41にクラッチ油圧が供給されると、このクラッチ油圧により、クラッチピストン40を介してクラッチプレート部38が挟圧されて、クラッチドラム37とクラッチハブ36とが連結される。
【0044】
その結果、セカンダリプーリ9dの回転力が出力クラッチ14を介して変速機出力軸13に伝達され、変速機出力軸13から終減速部4で所定に減速された後、デファレンシャル装置21、駆動軸6を介して駆動輪5に回転力が伝達される。
【0045】
一方、急ブレーキ等の急停車の際には、クラッチ油圧をドレーンさせて、クラッチプレート部38を開放動作させる。すると、変速機出力軸13にスプライン係合されているクラッチハブ36と、セカンダリプーリ軸9cにスプライン係合されているクラッチドラム37との間の動力伝達が遮断され、駆動輪5側から駆動ベルト9eに対して逆負荷が印加されず、駆動ベルト9eの損傷が未然に防止される。更に、急停車の際に出力クラッチ14のクラッチプレート部38を開放動作させることで、ベルト式無段変速機9のダウンシフト制御が可能となり、良好な再発進性を得ることができる。
【0046】
以上のように本実施の形態では、クラッチシリンダ41への油路が変速機ケースとしてのクラッチカバー14aから少なくともクラッチカバー14aと対向するクラッチハブ36の外側面と、クラッチハブ36と変速機出力軸13とのスプライン係合部47と、クラッチハブ36の内側面とを通って形成され、外側面と内側面が受ける油圧によるスラスト荷重がほぼ同じになるように外側面と内側面との受圧面を設定する。より詳細には、外側面と内側面との受圧面は、その変速機出力軸13に対する周方向の投影面積が略同一になるように設定されているので、クラッチハブ36の支持軸部36aが受けるスラスト荷重(合力)が略0になり、よってクラッチハブ36のストッパ部材を廃止、又はストッパの強度を抑えることができ、コスト低減を図ることができる。
【0047】
更に、インナボス31とアウタボス36bとを摺接させるだけで、クラッチカバー14aに穿設されている第2の油路43に供給されるクラッチ油圧を、出力クラッチ14側へ取り込むようにしたので、予めアッセンブリ化されている出力クラッチ14を、変速機出力軸13とセカンダリプーリ軸9cとにスプライン係合させた後、クラッチカバー14aを、サイドケース22cに装着することで、第2の油路43からクラッチシリンダ41へ至る油圧回路が形成されるため、この油圧回路が簡素化され、製造が容易になると共に組立てが容易となり、その分、製品コストを低減することができる。
【0048】
又、このクラッチハブ36に形成されている支持軸部36aと変速機出力軸13との間のスプライン係合部47を経てクラッチシリンダ41にクラッチ油圧を供給するようにしたので、変速機出力軸13内にクラッチ油圧を供給する油路を形成する必要が無くなり、変速機出力軸13内に形成される油路を簡素化することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、出力クラッチのクラッチシリンダに油圧を供給する油路の形成が容易で、出力クラッチに作用するスラスト荷重を受けるストッパの強度を必要以上に高く設定する必要が無く、構造の簡素化、及び部品コストの低減を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】出力クラッチ付き無段変速装置の動力伝達系を示す全体構成図
【図2】出力クラッチとその周辺の拡大断面図
【図3】出力クラッチの要部拡大断面図
【符号の説明】
9 無段変速機
9c セカンダリプーリ軸
9d セカンダリプーリ
14 出力クラッチ
22 変速機ケース
31 インナボス
36 クラッチハブ
36a,37a 支持軸部
36b アウタボス
37 クラッチドラム
38 クラッチプレート部(クラッチ部材)
41 クラッチシリンダ
43 第2の油路(油路)
47 スプライン係合部(軸間油路)
【発明の属する技術分野】
本発明は、セカンダリプーリ軸と駆動輪側の変速機出力軸との間に出力クラッチが介在されている出力クラッチ付き無段変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等の車両に搭載されている無段変速装置として、エンジン側のプライマリプーリ軸に設けられたプライマリプーリと、駆動輪側のセカンダリプーリ軸に設けられたセカンダリプーリとの間に駆動ベルトを巻装し、油圧によって両プーリのプーリ径を変化させることで、セカンダリプーリ軸の回転数を無段階に変化させるようにしたベルト駆動式無段変速装置が多く採用されている。
【0003】
又、この種の無段変速装置では、例えば特許第2687041号(特開平4−165149号)公報に開示されているように、セカンダリプーリ軸と減速ドライブギヤを有する変速機出力軸との間に、出力クラッチを介在させ、急減速時、或いは急停車時には、出力クラッチを開放動作させることで、駆動ベルトにかかる負荷を軽減して損耗を防止すると共に、停車中であってもダウンシフト等の変速制御を可能にする技術が知られている。
【0004】
尚、出力クラッチを有する無段変速装置には、エンジンと無段変速機との間にトルクコンバータ等の発進デバイスを介在させるタイプと発進デバイスを省略しているタイプとがあるが、本明細書で説明する出力クラッチには、発進デバイスの機能を有するものも含まれる。
【0005】
【特許文献1】
特許第2687041号(特開平4−165149号)公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した公報に記載されている無段変速装置は、セカンダリプーリ軸を変速機ケースに回動自在に支持し、その外周に変速機出力軸を挿通支持し、変速機ケースに形成した系統別の油路をセカンダリプーリ軸に形成した各油路に連通させ、この各油路を出力クラッチを断続動作させるクラッチシリンダ、セカンダリプーリを動作させるセカンダリシリンダに連通させて、各シリンダに作動圧を供給すると共に、潤滑油路を介して必要潤滑部へ潤滑油を供給するようにしているため、セカンダリプーリ軸に複数系統の油路を形成しなければ成らず、油路形成が複雑化してしまう問題がある。
【0007】
これに対処するに、出力クラッチのクラッチシリンダに対して供給するクラッチ油圧を、セカンダリプーリ軸を通すことなく、変速機ケースから出力クラッチのクラッチハブ或いはクラッチドラムと、これらを軸支する変速機出力軸或いはセカンダリプーリ軸との間のスプライン係合部を介して供給することが考えられる。
【0008】
しかし、スプライン係合部を油圧回路の一部として利用する場合、このスプライン係合部を構成するクラッチハブ或いはクラッチドラムの軸端部側に、クラッチ油圧によるスラスト荷重が印加されるため、このスラスト荷重に抗すべく、ある程度、強度が要求されるストッパ部材等が必要となるため、部品コストが高くなってしまう不都合がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、出力クラッチのクラッチシリンダに油圧を供給する油路の形成が容易で、出力クラッチに作用するスラスト荷重を受けるストッパの強度を必要以上に高く設定する必要が無く、構造の簡素化、及び部品コストの低減を実現することの可能な出力クラッチ付き無段変速装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、ベルト式無段変速機のセカンダリプーリを支持するセカンダリプーリ軸と、上記セカンダリプーリ軸に対して同軸上で相対回転自在に挿通された変速機出力軸と、上記セカンダリプーリ軸の外周にスプライン係合するクラッチドラムと、上記変速機出力軸の外周にスプライン係合するクラッチハブと、上記クラッチドラムと上記クラッチハブとを接離自在なクラッチ部材と、該クラッチ部材を動作させるクラッチシリンダとを有し、上記セカンダリプーリ軸と上記変速機出力軸との軸端に配設される出力クラッチと、上記出力クラッチの外側に近接して設けられる変速機ケースとを有する出力クラッチ付き無段変速装置において、上記シリンダへの油路が上記変速機ケースから少なくとも上記変速機ケースと対向する上記クラッチハブの外側面と、上記クラッチハブと上記変速機出力軸とのスプライン係合部と、上記クラッチハブの内側面とを通って形成され、上記外側面と上記内側面が受ける油圧によるスラスト荷重がほぼ同じになるように上記外側面と上記内側面との受圧面を設定することを特徴とする。
【0011】
このような構成では、出力クラッチのクラッチシリンダへの油圧を変速機ケースからクラッチハブと変速機出力軸とのスプライン部を介して供給するので、従来のように変速機出力軸又はセカンダリプーリ軸を介すことなく、簡素で且つ安価に油路を形成することができる。
【0012】
又、クラッチハブの外側面と内側面の油圧により受けるスラスト荷重がほぼ同じになるように外側面と内側面との受圧面を設定するので、クラッチハブが受ける油圧によるスラスト荷重(合力)をなくす、又は低減することができるのでスラスト方向への移動を規制するストッパ構造を廃止又は安価にすることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、上記外側面と上記内側面との受圧面は、その上記変速機出力軸に対する周方向の投影面積が略同一になるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。ここで、図1は出力クラッチ付き無段変速装置の動力伝達系を示す全体構成図、図2は出力クラッチとその周辺の拡大断面図、図3は出力クラッチの要部拡大断面図である。
【0015】
図1の符号1は駆動源としてのエンジンで、このエンジン1の出力軸2が、無段変速部3、終減速部4を介して、駆動輪5を支承する駆動軸6に連設されている。
【0016】
無段変速部3は、入力側からトルクコンバータ7、前後進切換装置8、ベルト式無段変速機9を主要に構成されており、エンジン出力軸2がトルクコンバータ7のインペラ7aに連設され、このトルクコンバータ7のタービン7bが前後進切換装置8のプラネタリ入力軸8aに連設されている。
【0017】
前後進切換装置8は、プラネタリギヤ10が内装されており、フォワードクラッチ11とリバースブレーキ12とが共に開放状態にあるとき、ニュートラル状態となる。又、フォワードクラッチ11のみを係合させると、プラネタリギヤ10が一体回転して、トルクコンバータ7のタービン7bからの動力をベルト式無段変速機9へそのまま伝達する。一方、フォワードクラッチ11を開放し、リバースブレーキ12を係合させると、プラネタリギヤ10を介してトルクコンバータ7のタービン7bからの動力を逆転させた状態でベルト式無段変速機9へ伝達する。
【0018】
ベルト式無段変速機9のプライマリプーリ軸9aには、プライマリプーリ9bが設けられており、プライマリプーリ軸9aと平行に配設されているセカンダリプーリ軸9cには、プライマリプーリ9bと対向してセカンダリプーリ9dが設けられ、両プーリ9b、9d間に駆動ベルト9eが巻装されている。
【0019】
更に、各プーリ9b、9dの可動シーブ(プライマリシーブ9f、セカンダリシーブ9g)側には、各々シリンダ(プライマリシリンダ9h、セカンダリシリンダ9i)が形成されており、これら各シリンダ9h、9iに供給されるプライマリ油圧、セカンダリ油圧により、両プーリ9b、9dの溝幅を可変して変速制御が行われる。
【0020】
セカンダリプーリ軸9cは中空状に形成されており、この中空状に形成されたセカンダリプーリ軸9cに変速機出力軸13が、同軸上で且つ相対回転自在に挿通支持されている。又、この変速機出力軸13の反エンジン側の端部とセカンダリプーリ軸9cの端部との間に、セカンダリプーリ軸9cと変速機出力軸13間の動力伝達を断続する出力クラッチ14が介在されている。
【0021】
尚、出力クラッチ14は、通常は接続状態にあり、急ブレーキ、急減速等、駆動ベルト9eに、駆動輪5側から大きな負荷が伝達される場合に開放動作させて駆動ベルト9eの損傷を防止すると共に、急停車の際に開放動作させることで停車時におけるベルト式無段変速機9のダウンシフト制御を可能とし、良好な再発進性を得ることができる。又、上述したように、この出力クラッチ14は、発進デバイスとしてのトルクコンバータ7が省略されている無段変速装置にも採用可能であり、この場合、出力クラッチ14に発進クラッチとしての機能が付加される。
【0022】
変速機ケース22は、メインケース22aと、このメインケース22aのエンジン1側を閉塞すると共にトルクコンバータ7を収容するコンバータケース22bと、メインケース22aの反エンジン1側を閉塞するサイドケース22cとの三分割で構成されている。
【0023】
セカンダリプーリ軸9cは、反エンジン側の端部がボールベアリング25を介してサイドケース22cに軸支されている。尚、出力クラッチ14は、サイドケース22cの外側に形成されたクラッチ室22dに配設されており、このクラッチ室22dがクラッチカバー14aで閉塞されている。尚、このクラッチカバー14aも変速機ケース22の一部を構成している。
【0024】
又、セカンダリプーリ軸9cのエンジン側の端部は、メインケース22aにニードルベアリング26を介して軸支されている。更に、セカンダリプーリ軸9cに相対回動自在に挿通されている変速機出力軸13のエンジン側端縁部が、コンバータケース22bにボールベアリング27を介して軸支されている。
【0025】
更に、変速機出力軸13のエンジン側の端部、すなわち出力クラッチ14が配設されている側と反対側の端部にリダクションドライブギヤ16が設けられており、このリダクションドライブギヤ16がドライブピニオン軸17に設けられていリダクションドリブンギヤ18、ドライブピニオン19を介して、ファイナルギヤ20に連設され、更に、このファイナルギヤ20が駆動軸6に軸着されているデファレンシャル装置21に連設されている。
【0026】
又、無段変速部3、終減速部4、デファレンシャル装置21を収容する変速機ケース22の底部に設けられているオイルパン(図示せず)には、無段変速部3の変速比制御や伝達トルク制御等に必要な作動圧を制御するコントロールバルブユニット(図示せず)が配設されており、このコントロールバルブユニットにオイルポンプが一体に組み込まれている。図1に示すように、オイルポンプは、トルクコンバータ7のインペラ7aと一体回転するスプロケット28にチェーン29を介して連設されているエンジン駆動式オイルポンプである。
【0027】
又、図2に示すように、変速機出力軸13の出力クラッチ14が取付けられている側の軸端部がクラッチカバー14aに対設されており、このクラッチカバー14aの内壁に、変速機出力軸13の軸心を中心とするインナボス31が形成されており、このインナボス31の内周に、ブッシュ32が圧入されており、このブッシュ32の内周に変速機出力軸13の軸端部が、シール部材33aを介して油密状態で摺接されている。
【0028】
出力クラッチ14は、クラッチハブ36と、クラッチドラム37と、このクラッチハブ36とクラッチドラム37との間を断続するクラッチ部材としてのクラッチプレート部38とを備えている。
【0029】
セカンダリプーリ軸9cの軸端部は、変速機出力軸13の軸端部から周方向に離間して形成されていると共に、このセカンダリプーリ軸9cの軸端部内周と変速機出力軸13の軸周との間に、空隙部39が形成され、この空隙部39にクラッチハブ36の中心軸側に形成されたスリーブ状の支持軸部36aが挿通される。
【0030】
この支持軸部36aの内周は変速機出力軸13の外周に対してスプライン係合されており、又、支持軸部36aの外周とセカンダリプーリ軸9cの内周との間にブッシュ35が介装されて、支持軸部36aとセカンダリプーリ軸9cとの相対回動が許容される。
【0031】
又、クラッチカバー14aと対向するクラッチハブ36の外側面に、軸心を中心とするアウタボス36bがクラッチカバー14cに向かって突設されており、このアウタボス36bの内周が、クラッチカバー14aの内壁に突設されているインナボス31の外周にシール部材33bを介して油密状態で摺接されている。
【0032】
又、クラッチドラム37の支持軸部37aが、セカンダリプーリ軸9cの外周にスプライン係合されている。更に、クラッチドラム37の内周面には、クラッチプレート部38を押圧するクラッチピストン40が配設されており、このクラッチピストン40とクラッチドラム37の内周面とでクラッチシリンダ41が形成されている。
【0033】
一方、クラッチカバー14aには、コントロールバルブユニット(図示せず)で生成したセカンダリ油圧と、このセカンダリ油圧を減圧して生成したクラッチ油圧とを流通する第1、第2の油路42,43が各々形成されている。尚、このクラッチカバー14aに形成されている第1、第2の油路42,43は、サイドケース22cに形成されている油路に各々連通されており、クラッチカバー14aに形成されている第1、第2の油路42,43とサイドケース22cに形成されている油路(図示せず)との接合部は、図示しないシール部材を介して油密性が保持されている。
【0034】
更に、第1の油路42が、インナボス31で囲われた凹部内に開口されている吐出ポート44を介して、変速機出力軸13に穿設されているセカンダリ油路9jに連通されている。更に、このセカンダリ油路9jが、セカンダリプーリ9dの溝幅を可変制御するセカンダリシリンダ9i(図1参照)に連通されている。
【0035】
又、第2の油路43が、インナボス31に穿設した吐出ポート45を介し、クラッチハブ36の外側面に突設されているアウタボス36bで囲まれた凹部から、支持軸部36aと変速機出力軸13の外周との間の軸間部であるスプライン係合部47を経て空隙部39の深部に連通されている。尚、スプライン係合部47には、油圧の流通性を良好にするためのスプライン欠歯部が所定に間隔毎に形成されている。
【0036】
更に、この空隙部39の深部がセカンダリプーリ軸9cに穿設されているオイルポート48、及びこのオイルポート48に連通すると共にセカンダリプーリ軸9cの軸周に形成されているオイル溝49と、クラッチドラム37の支持軸部37aに穿設されているオイルポート50とを介してクラッチシリンダ41に連通されている。尚、オイル溝49の軸方向両側は、シール部材(図示せず)で油密性が保持されている。
【0037】
ところで、図3に示すように、クラッチハブ36に設けられている支持軸部36aのアウタボス36bで囲まれた凹部の外側面と、空隙部39の深部側に臨まされている内側面は、クラッチ油圧を受ける受圧面である。そして、この両受圧面は、クラッチ油圧によりスラスト荷重をそれぞれ受けるが、本発明ではそれぞれ両受圧面が受けるスラスト荷重がほぼ同じになるように両受圧面を設定している。具体的には、両受圧面の変速機出力軸13の周方向に対する投影面積が等しくなるように設定する。図3で説明するに外側面52と内側面53の面積が等しく設定されている。従って、クラッチハブ36の支持軸部36aが受けるスラスト荷重(合力)が略0になるため、クラッチハブ36が、クラッチカバー14aに突設されているインナボス31の端面と、セカンダリプーリ軸9cの端面との何れにも接触することのない中立位置で回転される。よって、クラッチハブのストッパ部材を廃止、又はストッパの強度を抑えることができ、コスト低減を図ることができる。
【0038】
次に、このような構成による無段変速装置の動作について説明する。エンジン1を駆動させると、トルクコンバータ7のインペラ7aに連設するスプロケット28、チェーン29を介して、変速機ケース22の底部に設けたオイルパンに配設されているコントロールバルブユニット(図示せず)に設けられているオイルポンプが駆動し、オイルパンに貯留されているオイルが吸い上げられて、コントロールバルブユニットに供給される。
【0039】
コントロールバルブユニットでは、オイルポンプからの吐出圧を調圧して、変速比とエンジントルクとに応じたセカンダリ油圧を生成すると共に、このセカンダリ油圧を減圧して運転条件に応じて予め設定されている変速パターンに従いプライマリ油圧を生成し、更に、セカンダリ油圧を減圧して、出力クラッチ14を締結動作させる低圧のクラッチ油圧を生成する。
【0040】
セカンダリ油圧は、変速機ケース22に形成された油路を通り、クラッチカバー14aに形成されている第1の油路42を通り、吐出ポート44から変速機出力軸13に穿設されているセカンダリ油路9jを通り、セカンダリプーリ9dに設けられているセカンダリシリンダ9iに供給され、トルク伝達に必要なベルトクランプ力をセカンダリプーリ9dに付与する。
【0041】
又、プライマリ油圧は、図示しないプライマリ油路を経て、プライマリプーリ9bのプライマリシリンダ9hに供給することで、両プーリ9b,9d間のプーリ比(変速比)を設定し、ローからオーバドライブまでの連続的な変速比制御を行なう。
【0042】
一方、出力クラッチ14に供給されるクラッチ油圧は、変速機ケース22に形成されているクラッチ油路(図示せず)を経て、クラッチカバー14aに穿設されている第2の油路43を通り、このクラッチカバー14aの内壁に突設されているインナボス31に穿設されている吐出ポート45から、クラッチハブ36の外側面に突設されているアウタボス36bで囲まれた凹部に流入され、クラッチハブ36の支持軸部36aと変速機出力軸13との間に形成された、軸間油路を構成するスプライン係合部47を経て、セカンダリプーリ軸9cの軸端と変速機出力軸13との間に形成された空隙部39の深部に至る。
【0043】
そして、この空隙部39の深部からセカンダリプーリ軸9cに穿設されているオイルポート48を通り、更にクラッチドラム37の支持軸部37aに穿設されているオイルポート50を経てクラッチシリンダ41に供給される。クラッチシリンダ41にクラッチ油圧が供給されると、このクラッチ油圧により、クラッチピストン40を介してクラッチプレート部38が挟圧されて、クラッチドラム37とクラッチハブ36とが連結される。
【0044】
その結果、セカンダリプーリ9dの回転力が出力クラッチ14を介して変速機出力軸13に伝達され、変速機出力軸13から終減速部4で所定に減速された後、デファレンシャル装置21、駆動軸6を介して駆動輪5に回転力が伝達される。
【0045】
一方、急ブレーキ等の急停車の際には、クラッチ油圧をドレーンさせて、クラッチプレート部38を開放動作させる。すると、変速機出力軸13にスプライン係合されているクラッチハブ36と、セカンダリプーリ軸9cにスプライン係合されているクラッチドラム37との間の動力伝達が遮断され、駆動輪5側から駆動ベルト9eに対して逆負荷が印加されず、駆動ベルト9eの損傷が未然に防止される。更に、急停車の際に出力クラッチ14のクラッチプレート部38を開放動作させることで、ベルト式無段変速機9のダウンシフト制御が可能となり、良好な再発進性を得ることができる。
【0046】
以上のように本実施の形態では、クラッチシリンダ41への油路が変速機ケースとしてのクラッチカバー14aから少なくともクラッチカバー14aと対向するクラッチハブ36の外側面と、クラッチハブ36と変速機出力軸13とのスプライン係合部47と、クラッチハブ36の内側面とを通って形成され、外側面と内側面が受ける油圧によるスラスト荷重がほぼ同じになるように外側面と内側面との受圧面を設定する。より詳細には、外側面と内側面との受圧面は、その変速機出力軸13に対する周方向の投影面積が略同一になるように設定されているので、クラッチハブ36の支持軸部36aが受けるスラスト荷重(合力)が略0になり、よってクラッチハブ36のストッパ部材を廃止、又はストッパの強度を抑えることができ、コスト低減を図ることができる。
【0047】
更に、インナボス31とアウタボス36bとを摺接させるだけで、クラッチカバー14aに穿設されている第2の油路43に供給されるクラッチ油圧を、出力クラッチ14側へ取り込むようにしたので、予めアッセンブリ化されている出力クラッチ14を、変速機出力軸13とセカンダリプーリ軸9cとにスプライン係合させた後、クラッチカバー14aを、サイドケース22cに装着することで、第2の油路43からクラッチシリンダ41へ至る油圧回路が形成されるため、この油圧回路が簡素化され、製造が容易になると共に組立てが容易となり、その分、製品コストを低減することができる。
【0048】
又、このクラッチハブ36に形成されている支持軸部36aと変速機出力軸13との間のスプライン係合部47を経てクラッチシリンダ41にクラッチ油圧を供給するようにしたので、変速機出力軸13内にクラッチ油圧を供給する油路を形成する必要が無くなり、変速機出力軸13内に形成される油路を簡素化することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、出力クラッチのクラッチシリンダに油圧を供給する油路の形成が容易で、出力クラッチに作用するスラスト荷重を受けるストッパの強度を必要以上に高く設定する必要が無く、構造の簡素化、及び部品コストの低減を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】出力クラッチ付き無段変速装置の動力伝達系を示す全体構成図
【図2】出力クラッチとその周辺の拡大断面図
【図3】出力クラッチの要部拡大断面図
【符号の説明】
9 無段変速機
9c セカンダリプーリ軸
9d セカンダリプーリ
14 出力クラッチ
22 変速機ケース
31 インナボス
36 クラッチハブ
36a,37a 支持軸部
36b アウタボス
37 クラッチドラム
38 クラッチプレート部(クラッチ部材)
41 クラッチシリンダ
43 第2の油路(油路)
47 スプライン係合部(軸間油路)
Claims (2)
- ベルト式無段変速機のセカンダリプーリを支持するセカンダリプーリ軸と、
上記セカンダリプーリ軸に対して同軸上で相対回転自在に挿通された変速機出力軸と、
上記セカンダリプーリ軸の外周にスプライン係合するクラッチドラムと、上記変速機出力軸の外周にスプライン係合するクラッチハブと、上記クラッチドラムと上記クラッチハブとを接離自在なクラッチ部材と、該クラッチ部材を動作させるクラッチシリンダとを有し、上記セカンダリプーリ軸と上記変速機出力軸との軸端に配設される出力クラッチと、
上記出力クラッチの外側に近接して設けられる変速機ケースとを有する出力クラッチ付き無段変速装置において、
上記シリンダへの油路が上記変速機ケースから少なくとも上記変速機ケースと対向する上記クラッチハブの外側面と、上記クラッチハブと上記変速機出力軸とのスプライン係合部と、上記クラッチハブの内側面とを通って形成され、
上記外側面と上記内側面が受ける油圧によるスラスト荷重がほぼ同じになるように上記外側面と上記内側面との受圧面を設定することを特徴とする出力クラッチ付き無段変速装置。 - 上記外側面と上記内側面との受圧面は、その上記変速機出力軸に対する周方向の投影面積が略同一になるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の出力クラッチ付き無段変速装置。
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