JP2004076332A - 外断熱建築物に於ける外壁下部の通気構造及び使用する腰水切金具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内部に通気層a1,a2を備えたセメント板Pa,Pa´と、断熱層Pbとを層着した断熱複合パネルP,P0、を備えたコンクリート造建物外壁Wの最下端のパネルP,P0のセメント板Pa,Pa´の下端面に取付部材10,11を止着し、腰水切2,2´を、取付部材10,11を介した立上り板2B,2´Bと底板2D,2´Dとの2点支持でセメント板Pa,Pa´下端面に強固に確保し、腰水切2,2´の底板の空気孔H2からセメント板Pa,Pa´の通気層a1,a2へと空気流fを貫流させる。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋コンクリート造や鉄骨コンクリート造の外断熱建築物に於いて外壁に通気層を形成するものであり、より詳しくは、乾式密着型でありながら通気層を内在する新規な断熱複合パネルを用いた外壁に、通気層を確保するための新規な腰水切手段を適用した、外壁の下部の通気構造に関するものであり、建築の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
〔従来例1〕
鉄筋コンクリート造や鉄骨コンクリート造の建築物にあっては、近年、省エネルギー面、及び耐久性面から有利な外断熱建築物が提案され、内断熱タイプよりコスト高である阻害要因はあるものの、これら建築物施工量の10%前後まで外断熱タイプが占めるようになってきた。
また、これら外断熱タイプにあって、外壁に通気層を形成し、結露を防止して住環境を向上させ、同時に外装材のヒートストレスによる劣化を抑制した建築物も提案、実施されている。
そして、鉄筋コンクリート造や鉄骨コンクリート造の外断熱建築物にあっては、コンクリート外壁を断熱層で均斉に被覆するため、外壁面は面一であり、通気層のない建築物では、腰水切は採用しないが、通気層を形成するタイプにあっては、外壁下端に腰水切を採用して通気を保証している。
【0003】
図7は、従来の鉄筋コンクリート造外断熱通気層型建築物の典型例を示すものである。
即ち、基礎部にあっては、コンクリート基礎の外周を、石綿スレート等の外装材と断熱層とを層着した複合パネルで被覆して基礎外周に断熱被覆を形成し、外壁部にあっては、コンクリート壁の外周を断熱層で被覆し、断面コ字状の固定金物を適宜間隔にコンクリート基礎にネジ固定し、腰水切の後端の立上り片及び腰水切の底板後端の垂直片を固定金物にネジ固定し、外壁の断熱層の外側に通気層を介在して配置した外装材(アルミパネル)の下端と腰水切の傾斜板上面との通気空隙から空気流fを通気層へ導入する構造である。
【0004】
〔従来例2〕
木造建築物にあっては、省エネルギー面、耐久面から外断熱、且つ通気層を形成するタイプが提案され、普及している。
また、木造建築物にあっては、外壁面に1m前後の段差を形成する場合もある。
図8は、従来の外断熱通気層型木造建築物の典型例であり、(A)は外壁下端の説明側面図であり、(B)は外壁段差部での腰水切配置形態の説明平面図である。
即ち、図8(A)に示す如く、外壁の断熱材の外面には縦胴縁を介在して外装材を縦胴縁に固定し、縦胴縁間に通気層を形成している。
そして、腰水切は、立上り片を縦胴縁に固定し、底板後端の支持片を基礎の外面のモルタル層上端に載置している。
また、外壁の段差には、図8(B)の如く、出隅部及び入隅部では、傾斜片と傾斜片下面から挿入間隙を有して突出するガイド片を有する出隅継手(L10:55mm)と、入隅継手(L20:40mm)と、両継手間の腰水切とを用いて腰水切を連結している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来例1にあっては、腰水切は、コンクリート基礎に取付けた固定金物に止着するため、腰水切の外方への突出形態はコンクリート基礎を基準としており、従って外壁面に構造上、又は意匠上等から若干段差を生じても、腰水切突出端は外壁面に追従出来ない。
即ち、鉄筋コンクリート造や鉄骨コンクリート造の外断熱で外壁内に通気層を備えた建物にあっては、腰水切は面一の平坦な外壁にしか対応出来ない。
また、腰水切の天端板である傾斜板の上面に通気空隙を形成するため、通気空隙からの雨水が風と共に傾斜板の上面で案内されて外壁の通気層内に入り込む。更に、腰水切止着用の固定金物の配置位置では、外壁の断熱層に取付作業に伴う欠損を生ずる。
【0006】
また、従来例2にあっては、腰水切は、立上り板を縦胴縁に打付けるため、通気層内に縦胴縁が必要であると共に、底板後端の支持片は、腰水切立上り板を縦胴縁に取付けた状態の下で基礎モルタルを支持片下面まで塗布し、固化モルタル上に載置の形態であるため、底板が強風に煽られれば上下動し、腰水切の姿勢に変形を生ずる恐れがある。
また、図8(B)に示す如く、外壁の段差に対応して腰水切を出隅継手及び入隅継手を用いて配置する手段は慣用されているが、木造建物での外壁段差は、出隅継手と入隅継手間に、段差長に対応する腰水切が配置出来る程度に大であり、出隅継手の寸法L10の標準は55mmで、入隅継手の寸法L20の標準は40mmである。
【0007】
従って、該標準の出隅継手と入隅継手で腰水切を接続出来る段差は、両継手間に介在させる継ぎ片を短片としても約80mm以上であり、腰水切を30〜40mm程度の小段差できれいに継ぐことは不可能である。
本発明は、上述の如き外壁下部の通気構造の問題点を解決、又は改善するものであり、鉄筋コンクリート造又は鉄骨コンクリート造建物に乾式密着型断熱複合パネルを適用した新規な外断熱通気層型外壁の下部に、新規な腰水切配置手段を適用し、且つ、外壁面の小段差にも対応して腰水切をきれいに接続可能とし、腰水切を強固に配設出来るようにするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、内部に通気層a1,a2を有するセメント板Pa,Pa´と断熱層Pbとを層着した断熱複合パネルP,P0、を備えたコンクリート造建物外壁Wの最下端の該パネルP,P0のセメント板Pa,Pa´の下端面に、取付部材10,11を止着し、立上り板2B,2´B、傾斜天板2U,2´U、立下り板2F,2´F、及び空気孔H2を備えた底板2D,2´Dを有する腰水切2,2´を、取付部材10,11を介した立上り板2B,2´Bと底板2D,2´Dとの2点支持で配設し、腰水切底板2D,2´Dの空気孔H2からの空気流fを、断熱複合パネルP,P0の通気層a1,a2を貫通して外壁Wの上端から放出する、外断熱建築物に於ける外壁下部の通気構造である(請求項1)。
【0009】
尚、取付部材10,11は、セメント板Pa,Pa´の下端面にネジ止め等で強固に固定出来、且つ,腰水切の立上り板2B,2´Bをネジ止め等で強固に保持し、同時に腰水切底板2D,2´Dを確保出来れば良く、従って、腰水切として幅寸法の異なる2種類を用いる際には、図4に示す如く、細幅腰水切2には取付板10のみで、広幅腰水切2´には、取付板10と別体の取付片11との併用で対応させても良く、また、取付板10は、細幅腰水切対応物(図4(A))と、広幅腰水切対応物(図4(A)の取付板10の水平上片10Uを延出した物)の2種を用意して対応させても良い。
また、外壁Wの断熱複合パネルとしては、図2に示すパネル厚T0の大な断熱複合パネルPのみを採用しても、パネル厚T0´の小なパネルP0のみを採用しても、厚手のパネルPと薄手のパネルP0を併用しても良い。
【0010】
本発明の外壁下部の通気構造にあっては、腰水切2,2´は、立上り板2B,2´Bと底板2D,2´Dの2点で確保出来、腰水切の強固、且つ、精度の高い配置が可能となる。
また、腰水切2,2´を確保する取付部材10,11は、複合パネルP,P0のセメント板Pa,Pa´の下面に止着するため、前後位置調整が可能となり、腰水切立上り板2B,2´Bの取付部材10,11への止着は上下位置調整可能となるため、腰水切2,2´は、前後、上下位置調整の下に配置出来る。
従って、鉄筋又は鉄骨コンクリート造建物の外壁でありながら、強固、且つ均斉配置の腰水切を備え、腰水切から外壁内を上方へと空気流fの貫流する、しかも、腰水切の傾斜天板上からも、底板下面からも外壁内に雨水の浸入しない通気構造が得られる。
【0011】
また、外壁W面が小段差DWを有し、該段差DW部では、断熱複合パネルP,P0の下端面に配置した段差継手6に、両側から腰水切2,2´の端部を嵌入配置するのが好ましい。
この場合、外壁は1種類の、例えば厚手の断熱複合パネルPのみで意匠上の見地から小段差配置することも、厚手のパネルPと薄手のパネルP0との混用で小段差配置することも可能である。
そして、断熱複合パネルP,P0の接続部に小段差DWが生じても、段差継手によって腰水切の傾斜天板2U,2´Uの外壁面からの突出寸法は均斉に、且つ、美観上も機能上も支障を生じないように配置出来る。
【0012】
また、外壁Wが、断熱複合パネルP,P0とコンクリート壁WCとの一体化した耐力壁W0部と、断熱複合パネルPのみの帳壁W1部から構成するのが特に好ましい。
この場合、帳壁W1部の断熱複合パネルPは、外壁としての強度が必要であるため、セメント板Paは厚手のパネルPを採用することとなるが、耐力壁W0部の断熱複合パネルは、コンクリート壁WCと一体化するため、パネル自体は外壁としての強度は必要なく、通気層a2と断熱層Pbを備え、セメント板Pa´は薄手とした安価な断熱複合パネルP0を採用するのが有利である。
そして、帳壁W1部では、帳壁複合パネルPのみでありコンクリートWCが存在しないため、帳壁部ではコンクリート壁型枠施工が省略出来、外壁Wの形成の大幅なコストダウンが可能となる。
【0013】
また、耐力壁W0部は、内面に条溝a2を有するセメント板Pa´と断熱層Pbとを層着した耐力壁複合パネルP0をコンクリート壁WCと一体化形成し、帳壁W1部は、内部に貫通孔a1を有するセメント板Paと断熱層Pbとを層着し、アングル鋼材の上枠10t及び下枠10bを備えた帳壁複合パネルPのみで形成するのが好ましい。
この場合、耐力壁W0部と帳壁W1部とは、外壁Wの前面(外面)を面一に配置しても、小段差DWを生ずる形態に配置しても良い。
耐力壁W0部(図1)は、図2(B)の如く、セメント板Pa´と断熱層Pbとを層着したパネルP0とコンクリート壁WC(図1)との一体化物であって、コンクリート壁WCが強度を有しているが、セメント板Pa´の条溝a2が通気機能を奏する。
【0014】
また、帳壁W1部(図1)は、典型的には図2(A)に示す特許第2999980号の外断熱複合パネルであり、アングル鋼材の上枠10t及び下枠10bを用いて、上下コンクリート床スラブの前端に取付金物(図示せず)を介して強固に張設可能であり、上下枠10t,10b、及び内部に貫通孔a1を備えたセメント板Paによって、外壁Wとしての必要機能を発揮し、貫通孔a1が外壁内の通気機能を発揮する。
そして、耐力壁W0部は、コストの比較的安い耐力壁複合パネルP0を、帳壁W1部は、コストの比較的高い帳壁複合パネルPを採用するため、資材コストが合理化出来、帳壁W1部でのコンクリート壁WC省略による壁型枠工の合理化、及び使用するコンクリートや鉄筋量の合理化と相俟って、外断熱通気層型のコンクリート建築物の建築費が大幅に合理化出来る。
【0015】
また、帳壁複合パネルPのセメント板厚T1は耐力壁複合パネルP0のセメント板厚T1´より大であり、帳壁複合パネルPと耐力壁複合パネルP0とは断熱層厚T2が同一であり、且つ、両複合パネルP,P0の断熱層Pbを面一形態に配置するのが好ましい。
この場合、外壁Wの前面(外面)は、図1の如く、帳壁W1部に於いてセメント板Paが寸法T1−T1´分だけ張出して、耐力壁W0部と帳壁W1部との境界では小段差(外壁段差)DWを形成することとなるが、腰水切は段差継手6によって外壁面に沿った形態に支障なく配置出来る。
【0016】
従って、断熱層Pbの面一配置により外断熱構造の断熱施工が容易となり、帳壁W1部と耐力壁W0部とで外壁を形成する建築費の合理化と相俟って、外断熱通気層型コンクリート建築物が合理的に提供可能となる。
しかも、外壁面での使用パネル厚による小段差DWの張出し壁Wは、外観上、耐力壁パネルP0と帳壁パネルPで構成した新規な建築物としての識別機能を奏し、機能美を現出することとなる。
【0017】
また、腰水切2,2´は、断熱複合パネルP,P0のセメント板Pa,Pa´下端前部に固定したアングル形態の取付部材10,11の垂直片10B,11Bに立上り板2B,2´Bを止着して配置するのが好ましい。
この場合、立上り板2B,2´Bは、図6(B)、(C)の如く、垂直片10B,11Bに当接してネジ又はスポット溶接固定となるが、立上り板2B,2´Bの固定時の上下位置調整は自在であり、且つ取付部材10,11の水平上片10U,11Uもセメント板下面に当接して前後位置調整の下にネジ固定可能であるため、腰水切2,2´が、所定位置で均斉、且つ強固に保持出来る。
【0018】
また、腰水切の配置は、耐力壁W0部及び帳壁W1部に亘って、腰水切2,2´の突出長d3が同一であり、立下り板2F,2´Fの高さh1が同一であるのが好ましい。
図1に示す如く、耐力壁W0部に薄手の耐力壁パネルP0を用い、帳壁W1部に厚手の帳壁パネルPを用いれば、帳壁W1部が小段差DWで張出した形態となり、基礎1は面一であるが、腰水切2,2´が外壁W全長に亘って同一形態で突出することにより、外観が優れているのみならず、小段差で配置した耐力壁W0部と帳壁W1部が同一の通気機能を奏する機能美も発揮し、帳壁パネルP及び耐力壁パネルP0を併用してトータルデザイン化した高性能な外断熱通気層型建築物としての識別機能を奏し、機能美を発揮する。
【0019】
また、腰水切の配置に関しては、耐力壁複合パネルP0の下端では、図6(B)の如く、アングル形態の取付板10の水平上片10Uをセメント板Pa´先端に止着し、取付板10の垂直片10Bの上部には腰水切2の立上り板2Bを止着し、垂直片10Bの下部には腰水切の底板2Dの後端を係止し、帳壁パネルPの下端では、図6(C)の如く、セメント板Paの前面板状部C1にアングル形態の取付片11を止着し、仕切部C4と引続く後面板状部C2に亘ってアングル形態の取付板10の水平上片10Uを止着し、腰水切の立上り板2´Bを取付片11の垂直片11Bに、底板2´Dの後端を取付板10の垂直片10Bの下部に係止するのが好ましい。
【0020】
この場合、耐力壁複合パネルP0の下端は、図6(B)に示す如く、細幅の腰水切2を1個の取付板10のみで止着し、帳壁複合パネルPの下端は、図6(C)に示す如く、広幅の腰水切2´を立上り板2´B止着用の取付片11と底板2´D後端係止用の取付板10の2部材で取付けることとなるが、取付板10は、細幅腰水切、即ち耐力壁パネルP0用腰水切2と、広幅腰水切、即ち帳壁パネルP用腰水切2´の共用物であるため、取付板10と、取付板10の略半数の取付片11とを準備しておけば良く、取付板10も取付片11も、共にセメント板下面に水平上片10U,11Uを当接して前後調整の下に固定可能であり、耐力壁パネルP0用腰水切(細幅腰水切)2も帳壁パネルP用腰水切(広幅腰水切)2´も、共に取付板10及び取付片11の前後位置調整と、立上り板2B及び2´Bの垂直片10B及び11Bの上下位置調整とによって均斉に配置可能である。
【0021】
また、取付板10は、水平上片10Uの長孔H10を介して複合パネルP,P0のセメント板Pa,Pa´下端にネジ固定すると共に、垂直片10B後面下部を基礎モルタル1a上の取付下地材1fに固定するのが好ましい。
この場合、取付下地材1fは、構造用木材片でも、プラスチック材でも良く、基礎コンクリート1の外周に貼り付けた基礎断熱材1bに内側面が接着固定出来、且つ、外側面が取付板垂直片10Bと接着又はネジ固定可能な下地材であれば良い。
そして、取付板10は、水平上片10Uが長孔H10を有することにより、取付板10の前後調整位置でセメント板Pa,Pa´の下面の板状部C2,C3へのネジ固定が可能となり、垂直片10B下端の取付下地材1fへの固定と相俟って、取付板10が所望位置で強固に保持出来、腰水切の所定位置での強固な保持が達成出来る。
【0022】
また、外壁Wの小段差DW部で腰水切2,2´を連結する段差継手6は、図5に示す如く、平面視段差形態に、突出側(SR側)傾斜片6U、入り込み側(SL側)傾斜片6U”及び継ぎ部傾斜片6U´から成る連設傾斜片と、前部立下り片6Fと、段差小口閉塞用の側部立下り片6F´とを備え、図6(A)に示す如く、外壁Wの突出側(SR側)からは、腰水切2´の傾斜天板2´Uを傾斜片6Uの下面に、立下り板2´Fを前部立下り片6Fの内面に挿入し、入り込み側(SL側)からは、腰水切2の傾斜天板2Uを傾斜片6U”の下面に、立下り板2Fを側部立下り片6F´の後端縁VEの内側に挿入する構造が好ましい。
【0023】
従って、段差継手6の継ぎ部傾斜片6U´及び側部立下り片6F´を所望段差DWに応じて寸法設定することにより、どのような小段差DWにも対処出来、しかも、両側からの腰水切2,2´の端部に、継手6の薄い板材(標準:2mm厚)が単に重なった形態に連結するため、薄手のセメント板Pa´を備えた耐力壁複合パネルP0と厚手のセメント板Paを備えた帳壁複合パネルPとを各断熱層Pbを面一に配置した外周W(図1)にあって、外壁下端の帳壁パネルP側の広幅の腰水切2´と耐力壁パネルP0側の細幅の腰水切2とは、あたかも1本の屈曲形態の腰水切を配置した如く、きれいに連結出来る。
【0024】
本発明に好適に採用出来る腰水切金具は、例えば図4に示す如く、腰水切2と、取付板10とを含み、腰水切2は、垂直の立上り板2Bと、立上り板下端から前方への傾斜天板2Uと、前端の垂直の立下り板2Fと、立下り板2Fの下部から後方へ、略立上り板2Bの下方位置まで延出した底板2Dとを備え、且つ、底板2D後端には起立するアンカー片2Aを有すると共に、底板2Dの適所に空気孔H2を穿孔したものであり、取付板10は、アングル形態であって、取付孔H10を備えた水平上片10Uと垂直片10Bとから成り、垂直片10Bの下端には前方への突片10Dを、突片10Dの上部には、前方へ屈曲突出する溝突片10Fを備え、突片10Dと溝突片10Fとで腰水切2のアンカー片2Aを係止する係合溝10Gを有するものである(請求項11)。
【0025】
従って、図6(B)に示す如く、取付板10の水平上片10Uを、断熱複合パネルP0のセメント板Pa´の下端面に当接し、セメント板Pa´の板状部C3(図2(B))へ取付孔(典型的には長孔)H10から前後位置調整の下にネジ固定(図示せず)することにより、取付板10はセメント板Pa´の下端面に適宜間隔(標準:60cm間隔)で強固に止着出来る。
また、取付板10の垂直片10B下部は、基礎モルタル1a上に載置した形態で基礎断熱材1bに固着した取付下地材1fに接着又はネジ止着により強固に止着出来る。
そして、長尺物の腰水切2は、底板2Dのアンカー片2Aを取付板10の係合溝10Gに嵌合係止して立上り板2Bを取付板10の垂直片10Bに当接し、微少な位置調整の下にネジ固定(図示せず)することにより、2点支持で外壁パネルP0に強固に支持された取付板10に対し、立上り板2Bと底板2Dとの2点支持により強固に保持出来る。
【0026】
また、広幅腰水切2´に好適な腰水切金具は、例えば図4に示す如く、腰水切2´と、取付板10と、取付片11とを含み、腰水切2´は、垂直の立上り板2´Bと、立上り板下端から前方への傾斜天板2´Uと、前端の垂直の立下り板2´Fと、立下り板2´Fの下部から後方へ、立上り板2´Bの下方位置を越えて後方に延出する底板2´Dとを備え、且つ、底板2´D後端には起立するアンカー片2´Aを有すると共に、底板2´Dの適所に空気孔H2を穿設したものであり、取付板10は、アングル形態であって、取付孔H10を備えた水平上片10Uと垂直片10Bとから成り、垂直片10Bの下端には前方への突片10Dを、突片10Dの上部には前方へ屈曲突出する溝突片10Fを備え、突片10Dと溝突片10Fとで腰水切2´のアンカー片2´Aを係止する係合溝10Gを有するものであり、取付片11は、アングル形態であって、取付孔H11を備えた水平上片11Uと垂直片11Bとを有するものである(請求項12)。
【0027】
尚、この場合、取付板10の水平上片の取付孔H10及び取付片11の水平上片の取付孔H11は、典型的には、図4に示す如き前後方向の長孔である。
従って、図6(C)に示す如く、取付片11は、水平上片11Uを断熱複合パネルPのセメント板Paの下端面適所に当接し、セメント板Paの前部板状部C1(図2(A))へ孔H11を介してネジ固定(図示せず)で強固に止着出来る。
また取付板10は、取付片11の止着位置に整合して水平上片10Uを、セメント板Paの仕切部C4から後部板状部C2に亘る下端面に当接して、長孔H10から前後位置調整の下に、後部板状部C2にネジ固定で強固に止着出来、垂直片10B下部を、基礎モルタル1a上に載置形体で基礎断熱材1bに接着した取付下地材1fに接着又はネジ固定により強固に止着出来る。
そして、長尺物の広幅腰水切2´は、底板2´Dのアンカー片2´Aを取付板10の係合溝10Gに嵌合係止して立上り板2´Bを取付片11の垂直片11Bにネジ固定(図示せず)することにより、取付片11による立上り板2´Bの止着と、取付板10による底板2´Dの係止による2点支持で強固に保持出来る。
【0028】
【発明の実施の形態】
〔断熱複合パネル(図2)〕
図2(A)は、帳壁複合パネルPの一部切欠斜視図である。
即ち、帳壁複合パネルPは、セメント板Pa、断熱層Pb、石膏ボードPcの積層一体化物であり、セメント板Paは、厚さT1が60mm、外側板状部C1及び内側板状部C2が13mm厚で、幅awが34mmの上下貫通孔a1を内部に並列配置した形態に、セメント、硅酸質原料及び繊維質原料を混合して押出成形し、オートクレーブ養生した押出成形セメント板である。
【0029】
また、断熱層Pbは、厚さT2が75mmの硬質発泡ウレタンフォームであり、内表面に12.5mm厚の石膏ボードPcを有している。
そして、上枠10t、下枠10b及び側枠10sを備え、セメント板PaをZクリップを介して上下枠10t,10bに係止したものであり、標準パネルPにあっては、600mm幅のセメント板Paの3枚を上枠10t及び下枠10bに係止したパネル幅が1800mmのものであり、典型的には、本出願人等の所有する特許第2999980号の外断熱複合パネルである。
【0030】
図2(B)は、耐力壁複合パネルP0の一部切欠斜視図である。
即ち、耐力壁複合パネルP0は、セメント板Pa´と断熱層Pbの一体化積層品であり、従来の乾式密着型の外断熱複合パネルのタイプであって、セメント板Pa´は板厚T1´が25mmで、内面に深さが13mmの多数の並設条溝a2を備えており、断熱層Pbは厚さT2が75mmで条溝a2をつぶさないように、セメント板Pa´内面に積層一体化したものである。
尚、複合パネルP0は、コンクリート壁WCの外型枠として用いるため、パネルP0の中央部には壁型枠組み用のセパレータ挿入孔を、両端部には皿ボルト挿入孔を穿設したものである。
【0031】
〔腰水切金具(図4)〕
耐力壁パネルP0用の細幅の腰水切2は、図4(A),(B)に示す如く、長尺物(標準:3600mm)であって、断面形状は、12mm高さ(h3)の立上り板2Bと、幅d1が36mmで勾配高さ5mmの傾斜天板2Uと、25mm高さ(h1)の立下り板2Fと、立下り板2F下部の水切片2Cとして5mmの残した上方位置からは後方に36mm(d1)の底板2Dが延出し、底板2D後端から5mm高さのアンカー片2Aを起立した形状であり、1.5mm厚のアルミ製押出成形品であり、底板2Dには50mm間隔で空気孔H2を穿孔する。
【0032】
また、帳壁パネルP用の広幅の腰水切2´も長尺物であり、細幅腰水切2同様に、1.5mm厚のアルミ製押出成形品であり、広幅腰水切2´は、図4(C),(D)に示す如く、立上り板2´B、傾斜天板2´U、立下り板2´F及び底板後端のアンカー片2´Aが細幅の腰水切2(耐力壁パネル用腰水切)と同一であって、底板2´Dの延出長2dが細幅腰水切のそれより大であり、底板2´Dの後方延出長d2は71mmであり、細幅腰水切2の底板2Dよりも2´L(35mm)だけ広幅となっている。
そして、底板2´Dには前後一対の空気孔H2を50mm間隔で穿孔する。
【0033】
取付板10は、図4(E)に示す如く、2mm厚のアルミ製押出成形品であり、長さX10が30mm、高さY10が42mmの垂直片10Bの上端に、幅d4が15mmの水平上片10Uを備え、水平上片10Uの中央には、幅4mm、長さ8mmの取付孔H10を穿孔する。
また、垂直片10Bの下方には、下端の突片10Dとその上部の溝突片10Fとで係合溝10Gを形成している。
また、取付片11は、長さX11が30mmで、1辺が15mmの等辺山形形状の2mm厚アルミ製品であり、水平上片11U中央に幅4mm、長さ8mmの取付孔H11を穿設する。
【0034】
〔段差継手(図5)〕
段差継手6は、図1に示す如く、帳壁W1部と耐力壁W0部との境界での外壁W面の小段差DWに対処する部材であるため、右側(SR側)突出型と左側(SL側)突出型の2種類が必要であるが、両タイプは左右対称物であるため、SR側突出型に就いて説明する。
図5はSR側(右側)突出型段差継手の図であって、(A)は斜視図、(B)は(A)の矢印(イ)視図(平面図)、(C)は(A)の矢印(ロ)視側面図、(D)は(A)の矢印(ハ)視側面図である。
段差継手6は、図5に示す如く、各板状部の一体化物であり、一般厚1mmの6ナイロン製である。
【0035】
即ち、広幅腰水切2´側(SR側)には、表面に傾斜片6Uと前部立下り片6Fとを配し、内面に挿入溝6Gを介して傾斜ガイド片6Mと立下りガイド片6M´とを配し、細幅腰水切2側(SL側)には、段差DWを保って、表面に傾斜片6U”を配し、内面に傾斜ガイド片6Mと立下りガイド片6M´とを配し、段差DWの継ぎ部分には傾斜片6Uと6U”を連結する中間傾斜片6U´を配し、傾斜片6U´先端から小口閉塞用の側部立下り片6F´を、且つ側部立下り片6F´の後端縁VEには、SL側立下りガイド片6M´表面との間に挿入溝6Gを配した形態である。
【0036】
また、図5(C),(D)で明らかな如く、SR側の立下りガイド片6M´にも、SL側の立下りガイド片6M´にも、下部にはスリット6G´があり、各腰水切2´,2端部をSR側及びSL側から挿入する際に各スリット6G´が各底板2´D及び2Dの挿通を可能とし、継手6内へ腰水切2´,2を挿入する際のストッパーの役割を果す垂直の補強仕切片6Pが各板材を一体化保持し、且つ、SR側後端及びSL側後端の立上り片6Bが立上りガイド片6B´と共に、各腰水切立上り板2´B,2Bを嵌入するための挿入溝6Gを構成している。
【0037】
そして、寸法関係は、SR側からの広幅腰水切2´の、立上り板2´Bは6B,6B´間の挿入孔6Gに、傾斜天板2´Uは傾斜片6Uと傾斜ガイド片6Mとの間の挿入溝6Gに、立上り板2´Bは前部立下り片6Fと立下りガイド片6M´との間の挿入溝6Gに、底板2´Dはガイド突片6F”と立下りガイド片6M´との間のスリット6G´で嵌入可能の寸法とする。
また、SL側からの細幅腰水切2の、立上り板2Bは6B,6B´間の挿入溝6Gに、傾斜天板2Uは傾斜片6U”と傾斜ガイド片6Mとの間のガイド溝6Gに、立下り板2Bは側部立下り片6F´の後端縁VEと立下りガイド片6M´との間の挿入溝6Gに、底板2Dはガイド突片6F”とガイド片6M´との間のスリット6G´で嵌入可能の寸法とする。
そして傾斜ガイド片6M及び立下りガイド片6M´は、それぞれガイド用に10mm突出させる。
【0038】
〔外壁Wの形成(図1、図2、図3)〕
図1に示す如く、鉄筋コンクリート造外断熱建築物を、本出願人が開発し、先に特願2001−188147号として提案した、鉄筋コンクリート造壁式構造の外断熱建築物に於ける外壁形成方法により構築する。
即ち、建築構造上の必要壁量をコンクリート壁WCと耐力壁用の断熱複合パネルP0の一体化した耐力壁W0部とし、窓5等の開口部が存在し、耐力壁に算入出来ない耐力壁W0間の広い領域(非耐力壁部)を断熱複合パネルPのみの帳壁W1とする。
【0039】
耐力壁W0部には、図2(B)に示す耐力壁複合パネルP0をコンクリート壁外型枠に採用し、図示しない慣用のセパレータ、KPコン、軸足、フォームタイ、リブ座金、ナット、Pコン、縦端太パイプ、横端太パイプを用いて壁型枠を床スラブ型枠と同時に型組みし、帳壁W1部には、図2(A)に示す帳壁複合パネルPを、帳壁パネルPの断熱層Pbが耐力壁パネルP0の断熱層Pbと面一形態となるように、下枠10bを下階の固化した床スラブに付設した取付金物(図示せず)に固定し、上枠10tを上階床スラブ型枠内に配設した取付金物(図示せず)に係合する。
【0040】
次いで、床スラブ型枠及び壁型枠内にコンクリート打設し、耐力壁W0部と帳壁W1部の混在する鉄筋コンクリート造外壁Wを構築する。
各階を遂次構築するに際し、パネルP,P0それぞれの上下連結は、条溝a2及び貫通孔a1が上下に連通形態に実施する。
得られる外壁Wは、図3に示す如く、耐力壁W0部のパネルP0と帳壁W1部のパネルPとは、断熱層Pbが同厚であって、且つ面一(直線)形態に揃うため、外壁表面では、帳壁W1部が耐力壁W0部よりセメント板厚の差35mm(セメント板Pa厚T1が60mmであり、セメント板Pa´厚T1´が25mm)だけ張出し、耐力壁W0部と帳壁W1部との境界では外壁W面に35mmの小段差DW(図3)を生じるが、耐力壁W0部も帳壁W1部も、共に、最下端から最上端まで、条溝a2及び貫通孔a1で通気する外壁Wとなる。
【0041】
〔腰水切の配置(図6)〕
図6(A),(B)に示す如く、外壁Wの基礎コンクリート1は面一であり、基礎コンクリート1の外周に貼設した基礎断熱材1bも面一形態であり、耐力壁複合パネルP0及び帳壁複合パネルP共、各断熱層Pbを基礎断熱材1b上に揃えて配置する。
そして、外壁表面では、耐力壁パネルP0のセメント板Pa´の厚さT1´(25mm)が小で、帳壁パネルPのセメント板Paの厚さT1(60mm)が大であるため、耐力壁W0部には細幅腰水切2を、帳壁W1部には広幅腰水切2´を配置する。
【0042】
即ち、図6(B)に示す如く、60cm程度の間隔で耐力壁パネルP0のセメント板Paの下端面に、図4(E)に示す取付板10の水平上片10Uを当接し、前後位置調整用の長孔H10を介して水平上片10Uを板状部C3(図2)にネジ固定し、取付板10の垂直片10B下部後面を、基礎断熱材1bに貼着固定した取付下地材(木板)1fに接着又はネジ止めする。
そして、腰水切2の底板2D後端のアンカー片2Aを取付板10の下端の係合溝10G(図4(E))に係合すると共に、腰水切2の立上り板2Bを取付板10の垂直片上部に上下位置調整してネジ固定(図示せず)する。
【0043】
また、図6(C)に示す如く、帳壁W1部にあっては、60cm程度の間隔で、帳壁パネルPのセメント板Paの下端面の前部板状部C1(図2)に取付片11(図4(F))の水平上片11Uを長孔H11を介してネジ固定し、取付片11の固定位置に対応して取付板10の水平上片10Uをセメント板Paの後部板状部C2と仕切部C4(図4)とに亘って当接し、長孔H10を介して前後位置調整の下にネジ固定すると共に、取付板10の垂直片10B下部後面を、基礎断熱材1bに貼着固定した取付下地材1fに接着又はネジ止めする。
そして、腰水切2´の底板2´D後端のアンカー片2´Aを取付板10の係合溝10G(図4(E))に係合すると共に、腰水切2´の立上り板2´Bを取付片11の垂直片11Bに当接して上下位置調整の下にネジ(図示せず)固定する。
【0044】
〔腰水切小段差の処理(図5、図6)〕
図6(A)は、SR側(右側)の帳壁複合パネルPとSL側(左側)の耐力壁複合パネルP0との接続部に生じた小段差DWでの帳壁側の広幅腰水切2´と耐力壁側の細幅腰水切2とをSR側突出型の段差継手6により接続した状態の斜視図である。
即ち、SR側突出型の段差継手6は、図5の如く、SR側(右側)の傾斜片6UがSL側(左側)の傾斜片6U”より小段差DWだけ前方に突出し、突出部の前面には前部立下り片6Fを、突出部のSL側には側部立下り片6F´を備えた形状である。
【0045】
該段差継手6は、小段差DW部に配置して、右側から広幅腰水切2´左端部を、立上り板2´Bが立上り片6Bと立上りガイド片6B´間の挿入溝6Gに、傾斜天板2´Uが傾斜片6Uと傾斜ガイド片6M間の挿入溝6Gに、立下り板2´Fが前部立下り片6Fと立下りガイド片6M´間の挿入溝6Gに、底板2´Dが立下りガイド片6M´下部のスリット6G´(図5(D))を通過して嵌合し、腰水切2´の挿入先端を仕切片6Pの停止面ERに当接する。
【0046】
また、同様にSL側からは、細幅腰水切2の右端部を、立上り板2Bが立上り片6Bと立上りガイド片6B´間の挿入溝6Gに、傾斜天板2Uが傾斜片6U”と傾斜ガイド片6M間の挿入溝6Gに、立下り板2Fが側部立下り片6F´後端縁VEと立下りガイド片6M´間の挿入溝6Gに、底板2Dが立下りガイド片6M´下部のスリット6G´を通過して嵌合し、腰水切2の挿入先端を仕切片6Pの停止面ELに当接し、SR側突出小段差の処理は完了する。
また、外壁WのSL側(左側)突出の小段差DWに対しては、用意したSL側突出の段差継手6(図示せず)を上記同様に用いて処理すれば良い。
この場合、段差継手6と少なくとも一方の腰水切挿入端部とを接着すれば、段差継手のガタツキが生じない。
【0047】
〔後処理(図6)〕
外壁W下端の断熱複合パネルP,P0下面の広幅腰水切2´、細幅腰水切2及び段差継手6の取付けが完了すれば、図6(B),(C)に示す如く、腰水切底板2D,2´D下面に木製で断面正方形の目地棒(図示せず)を当接配置し、基礎断熱材1b外面にモルタル1aを塗布し、次いで目地棒を脱型除去して出来たスペースにシーリング1cを充填する。
また、腰水切の傾斜天板2U,2´U、及び段差継手の傾斜片6U,6U´,6U”と、断熱複合パネルP,P0のセメント板Pa,Pa´下端面との空間にシーリング1dを充填し、図6(A)の如く、帳壁パネルのセメント板Pa及び耐力壁パネルのセメント板Pa´の延長形態で広幅腰水切2´、段差継手6及び細幅腰水切2上にシーリング1d層を形成する。
【0048】
〔効果〕
得られる鉄筋コンクリート造外断熱建物にあっては、外壁Wは、コンクリート造でありながら、耐力壁W0間に存在する建築構造上壁量に算入出来ない非耐力壁部を帳壁複合パネルPのみの帳壁W1部とするため、外壁Wに於ける非耐力壁部(帳壁W1部)での壁型枠施工及びコンクリート打設が不要となり、鉄筋コンクリート造外断熱建築物の建築費が大幅に合理化出来る。
【0049】
また、強度の要求されない耐力壁パネルP0として薄手の低コスト断熱複合パネルを用い、強度の必要な帳壁W1部に厚手の断熱複合パネルPを、断熱層Pbを揃えて面一に配置したため、外壁W全体を均斉な外断熱と出来、外壁全体に内部結露の防止、及び外装板(セメント板Pa,Pa´)のヒートストレス保護の通気層が形成出来、外壁Wの断熱複合パネルP,P0下端に強固、且つ均斉に配置した腰水切2,2´により通気層a1,a2の通気も保証出来、使用建築資材面からも合理化された、且つ、耐久性、及び衛生面(結露防止によるカビ発生抑制)からも優れた建物となる。
【0050】
しかも、耐力壁W0部と帳壁W1部との境界に出来る外壁Wの小段差DWにあっても、新規な段差継手6によって、腰水切2,2´が、外壁下端から外壁W面に沿って均斉に突出した形態に、且つ、隙間無く連続した形態に処理出来、腰水切2,2´の外観は、低建築費、且つ高耐久性の、衛生面からの住環境にも優れた高品質建築物としての品質感及び機能美を発揮する。
【0051】
更に、腰水切2,2´の配置に際しても、新規な構造の耐力壁パネルP0用の細幅腰水切2と、帳壁パネルP用の広幅腰水切2´とを、共に取付部材10,11によって、取付位置調整の下に配置するため、断熱複合パネルP,P0のセメント板Pa,Pa´への取付作業が、基礎の不陸も吸収する形態で精度良く実施出来、取付作業が容易となると共に、2点支持(立上り板2B,2´Bと底板2D,2´D支持)により、強固、且つ、均斉な広幅、細幅両腰水切の取付配置が可能となる。
従って、高性能、且つ高耐久性の鉄筋コンクリート造外断熱建築物に於ける品質感及び機能美に富む外壁下部の通気構造の提供が可能となる。
【0052】
〔その他〕
実施態様例(図4)では、細幅腰水切2は、取付板10のみで、広幅腰水切2´は、取付部材として、取付板10と別体の取付片11とを併用するタイプとしたが、取付板10として、耐力壁パネルP0の薄手のセメント板Pa´に対応させた細幅腰水切2用のもの(図2(E)のもの)と、取付板10の水平上片10Uを延長して帳壁パネルPの厚手のセメント板Paに対応させた(図6(C)に於いて水平上片10Uと取付片11の水平上片11Uとを一体化)広幅腰水切2´用のものとの2種類を併用することも可能である。
また、段差継手6には、垂直の各補強仕切片6Pを挿入腰水切2,2´の底板2D,2´Dと同一レベルの底板(図示せず)で一体化すれば、段差継手6の強度増大と共に、必要に応じて腰水切2,2´同様に外壁W下部への取付けも可能となり、しかも、段差継手6下面からの余計な雨水の浸入も抑制出来る。
【0053】
また、実施態様例(図1)では、厚さの異なる耐力壁パネルP0と帳壁パネルPを併用した外壁Wに2種の腰水切2,2´を適用したが、外壁Wを、耐力壁W0も、耐力壁と計算出来ない非耐力壁部も共に、1種の薄手の断熱複合パネルP0とコンクリート壁WCとからなる外壁Wとし、取付板10で外壁W下端のパネルセメント板Pa´に腰水切2を配置しても、腰水切2を基礎の不陸を吸収する形態で正確に、且つ、2点支持で強固に配置出来、外壁Wを通気層a2の通気を保証する外壁下部の通気構造が得られる。
勿論、この場合は、新規構造の段差継手6は不要となり、長尺腰水切2の配置は、従来の継手、出隅、入隅を腰水切2の形状に適合するように設計変更して採用すれば良い。
【0054】
【発明の効果】
本発明の外壁下部の通気構造にあっては、腰水切2,2´は、立上り板2B,2´Bと底板2D,2´Dの2点で確保するため、腰水切2,2´の強固、且つ、位置精度の高い配置が可能となる。
しかも、腰水切2,2´を確保する取付部材10,11は、複合パネルP,P0のセメント板Pa,Pa´の下面に固定するため、前後位置調整が容易であり、腰水切立上り板2B,2´Bの取付部材10,11への固定は、上下位置調整が容易であり、腰水切2,2´は、前後、上下位置調整の下に、適正位置に容易に、且つ、外観良く配置出来る。
【0055】
従って、鉄筋又は鉄骨コンクリート造外断熱建築物でありながら、強固、且つ、均斉配置の腰水切を備え、外壁内を腰水切から断熱複合パネルP,P0の通気層a1,a2を上方へと空気流fの貫通する、しかも、腰水切の傾斜天板2U,2´U上からも、底板2D,2´D下面からも外壁W内に雨水の浸入しない通気構造が得られ、外壁Wの内部結露と外装材(セメント板Pa,Pa´)のヒートストレスによる劣下を抑制した外断熱建築物を提供する。
【0056】
また、腰水切2,2´を段差継手6を用いて段差形態で接続することにより、外壁Wに採用する断熱複合パネルP,P0として厚さの異なる種類のパネルを採用する場合、或いは断熱複合パネルを小段差DWを有する形態に配置する場合にも、腰水切2,2´は、強固、且つ、均斉な外観の下に外壁Wの小段差がきれいに処理出来、高品質感に富む外壁外観を提供する。
【0057】
また、外壁Wは、断熱複合パネルP0とコンクリート壁WCとの一体化した耐力壁W0部と、断熱複合パネPのみの帳壁W1部で形成するため、鉄筋又は鉄骨コンクリート造外断熱建築物が、帳壁W1部での壁型枠工の省略合理化、及び使用コンクリート量の合理化により、建築費の大幅な合理化の下に提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した外壁Wの説明用斜視図である。
【図2】本発明に用いる断熱複合パネルの説明用斜視図であって、(A)は帳壁複合パネルPを、(B)は耐力壁複合パネルP0を表わす図である。
【図3】本発明の帳壁複合パネルPと耐力壁複合パネルP0との接続状態の斜視図である。
【図4】本発明に用いる腰水切金具の説明図であって、(A)は細幅腰水切2の斜視図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は広幅腰水切2´の斜視図、(D)は(C)のD−D線断面図、(E)は取付板10の斜視図、(F)は取付片11の斜視図である。
【図5】本発明に用いる段差継手の説明図であって、(A)は全体斜視図、(B)は(A)の矢印(イ)方向平面図、(C)は(A)の矢印(ロ)方向側面図、(D)は(A)の矢印(ハ)方向側面図である。
【図6】本発明の実施状態説明図であって、(A)は外壁小段差DW部での腰水切接続状態斜視図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(A)のC−C線断面図である。
【図7】従来例1の説明図であって、(A)は縦断側面図、(B)は(A)のB部拡大図である。
【図8】従来例2の説明図であって、(A)は縦断側面図、(B)は外壁段差部での腰水切接続状態を示す一部切欠平面図である。
【符号の説明】
1:基礎、 1a:モルタル(基礎モルタル)、
1b:断熱材(基礎断熱材)、 1c,1d:シーリング、
1f:取付下地材(木板)、
2:腰水切(細幅腰水切)、 2´:腰水切(広幅腰水切)、
2A,2´A:アンカー片、 2B,2´B:立上り板、
2D,2´D:底板、 2F,2´F:立下り板、
2U,2´U:傾斜天板、 3:笠木、
4:屋上、 5:窓、 6:段差継手、
6B:立上り片、 6B´:立上りガイド片、
6F:前部立下り片、 6F´:側部立下り片、
6G:挿入溝、 6G´:スリット、
6M:傾斜ガイド片、 6M´:立下りガイド片、
6P:補強仕切片、 6U,6U´,6U”:傾斜片、
10:取付板(取付部材)、 10B,11B:垂直片、
DW:外壁段差(段差、小段差)、
10D:突片、 10F:溝突片、
10G:係合溝、 10U,11U:水平上片、
11:取付片(取付部材)、
a1:貫通孔(通気層)、 a2:条溝(通気層)、
Be,Be´:パネル下端面、 Bt,Bt´:パネル上端面、
C1,C2,C3:板状部、 C4,C5:仕切部、
10t:上枠、 10b:下枠、 10s:側枠、
P:帳壁複合パネル(断熱複合パネル)、
P0:耐力壁複合パネル(断熱複合パネル)、
Pa,Pa´:セメント板、 Pb:断熱層、
Pc:石膏ボード、 VE:後端縁、
W:外壁、 W0:耐力壁、
W1:帳壁、 WC:コンクリート壁、
H2:空気孔、 H10,H11:取付孔
Claims (12)
- 内部に通気層(a1,a2)を有するセメント板(Pa,Pa´)と断熱層(Pb)とを層着した断熱複合パネル(P,P0)、を備えたコンクリート造建物外壁(W)の最下端の該パネル(P,P0)のセメント板(Pa,Pa´)の下端面に、取付部材(10,11)を止着し、立上り板(2B,2´B)、傾斜天板(2U,2´U)、立下り板(2F,2´F)、及び空気孔(H2)を備えた底板(2D,2´D)を有する腰水切(2,2´)を、取付部材(10,11)を介した立上り板(2B,2´B)と底板(2D,2´D)との2点支持で配設し、腰水切底板(2D,2´D)の空気孔(H2)からの空気流(f)を、断熱複合パネル(P,P0)の通気層(a1,a2)を貫通して外壁(W)の上端から放出する、外断熱建築物に於ける外壁下部の通気構造。
- 外壁(W)面が小段差(DW)を有し、該段差(DW)部では、断熱複合パネル(P,P0)の下端面に配置した段差継手(6)に、両側から腰水切(2,2´)の端部を嵌入配置した、請求項1の外壁下部の通気構造。
- 外壁(W)が、断熱複合パネル(P,P0)とコンクリート壁(WC)との一体化した耐力壁(W0)部と、断熱複合パネル(P)のみの帳壁(W1)部から構成されている、請求項1又は2の外壁下部の通気構造。
- 耐力壁(W0)部は、内面に条溝(a2)を有するセメント板(Pa´)と断熱層(Pb)とを層着した耐力壁複合パネル(P0)をコンクリート壁(WC)と一体化形成し、帳壁(W1)部は、内部に貫通孔(a1)を有するセメント板(Pa)と断熱層(Pb)とを層着し、アングル鋼材の上枠(10t)及び下枠(10b)を備えた帳壁複合パネル(P)のみで形成した、請求項3の外壁下部の通気構造。
- 帳壁複合パネル(P)のセメント板厚(T1)は耐力壁複合パネル(P0)のセメント板厚(T1´)より大であり、帳壁複合パネル(P)と耐力壁複合パネル(P0)とは断熱層厚(T2)が同一であり、且つ、両複合パネル(P,P0)の断熱層(Pb)を面一形態に配置した、請求項4の外壁下部の通気構造。
- 腰水切(2,2´)は、断熱複合パネル(P,P0)のセメント板(Pa,Pa´)下端前部に固定したアングル形態の取付部材(10,11)の垂直片(10B,11B)に立上り板(2B,2´B)を止着した、請求項1乃至5のいずれか1項の外壁下部の通気構造。
- 耐力壁(W0)部及び帳壁(W1)部に亘って、腰水切(2,2´)の突出長(d3)が同一であり、立下り板(2F,2´F)の高さ(h1)が同一である、請求項3乃至6のいずれか1項の外壁下部の通気構造。
- 耐力壁複合パネル(P0)の下端では、アングル形態の取付板(10)の水平上片(10U)をセメント板(Pa´)先端に止着し、取付板(10)の垂直片(10B)の上部には腰水切の立上り板(2B)を止着し、垂直片(10B)の下部には腰水切の底板(2D)の後端を係止し、帳壁パネル(P)の下端では、セメント板(Pa)の、前面板状部(C1)にアングル形態の取付片(11)を止着し、仕切部(C4)と引続く後面板状部(C2)に亘ってアングル形態の取付板(10)の水平上片(10U)を止着し、腰水切の立上り板(2´B)を取付片(11)の垂直片(11B)に、底板(2´D)の後端を取付板(10)の垂直片(10B)の下部に係止した、請求項6又は7の外壁下部の通気構造。
- 取付板(10)は、水平上片(10U)の長孔(H10)を介して複合パネル(P,P0)のセメント板(Pa,Pa´)下端にネジ固定すると共に、垂直片(10B)後面下部を基礎モルタル(1a)上の取付下地材(1f)に固定した請求項8の外壁下部の通気構造。
- 段差継手(6)が、平面視段差形態に、突出側(SR)傾斜片(6U)、入り込み側(SL)傾斜片(6U”)及び継ぎ部傾斜片(6U´)から成る連設傾斜片と、前部立下り片(6F)と段差小口閉塞用の側部立下り片(6F´)とを備え、外壁Wの突出側(SR)からは、腰水切(2´)の傾斜天板(2´U)を傾斜片(6U)の下面に、立下り板(2´F)を前部立下り片(6F)の内面に挿入し、入り込み側(SL)からは、腰水切(2)の傾斜天板(2U)を傾斜片(6U”)の下面に、立下り板(2F)を側部立下り片(6F´)の後端縁(VE)の内側に挿入する請求項2乃至9のいずれか1項の外壁下部の通気構造。
- 腰水切(2)と、取付板(10)とを含み、腰水切(2)は、垂直の立上り板(2B)と、立上り板下端から前方への傾斜天板(2U)と、前端の垂直の立下り板(2F)と、立下り板(2F)の下部から後方へ、略立上り板(2B)の下方位置まで延出した底板(2D)とを備え、且つ、底板(2D)後端には起立するアンカー片(2A)を有すると共に、底板(2D)の適所に空気孔(H2)を穿孔したものであり、取付板(10)は、アングル形態であって、取付孔(H10)を備えた水平上片(10U)と垂直片(10B)とから成り、垂直片(10B)の下端には前方への突片(10D)を、突片(10D)の上部には前方へ屈曲突出する溝突片(10F)を備え、突片(10D)と溝突片(10F)とで腰水切(2)のアンカー片(2A)を係止する係合溝(10G)を有するものである、腰水切金具。
- 腰水切(2´)と、取付板(10)と、取付片(11)とを含み、腰水切(2´)は、垂直の立上り板(2´B)と、立上り板下端から前方への傾斜天板(2´U)と、前端の垂直の立下り板(2´F)と、立下り板(2´F)の下部から後方へ、立上り板(2´B)の下方位置を越えて後方に延出する底板(2´D)とを備え、且つ、底板(2´D)後端には起立するアンカー片(2´A)を有すると共に、底板(2´D)の適所に空気孔(H2)を穿孔したものであり、取付板(10)は、アングル形態であって、取付孔(H10)を備えた水平上片(10U)と垂直片(10B)とから成り、垂直片(10B)の下端には前方への突片(10D)を、突片(10D)の上部には、前方へ屈曲突出する溝突片(10F)を備えて突片(10D)と溝突片(10F)とで腰水切(2´)のアンカー片(2´A)を係止する係合溝(10G)を有するものであり、取付片(11)は、アングル形態であって、取付孔(H11)を備えた水平上片(11U)と垂直片(11B)とを有するものである、腰水切金具。
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