JP2004053559A - マイクロ化学システム用チップ部材の製造方法及びその製造方法により製造されたマイクロ化学システム用チップ部材 - Google Patents
マイクロ化学システム用チップ部材の製造方法及びその製造方法により製造されたマイクロ化学システム用チップ部材 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】接合後の表面の粗さが光学表面を維持することができるマイクロ化学システム用チップ部材を提供する。
【解決手段】マイクロ化学システム用チップ部材100は、両端が夫々Y字形に分岐しているスリット6等が形成されたガラス基板1と、ガラス基板1の接合面7に接合されたガラス基板2と、ガラス基板1の接合面8に接合されたガラス基板3を備える。ガラス基板1は、スリット6の各分岐端に貫通孔5があけられており、ガラス基板2は、貫通孔5に対応する位置に溶液試料を注入排出する貫通孔4を4つ有する。スリット6は、マイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’を構成し、貫通孔5は、マイクロ化学システム用チップ部材のバッファ部5’を構成する。ガラス基板1の接合面7,8のナトリウムイオンをリチウムイオンに交換するイオン交換処理により低粘度層を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】マイクロ化学システム用チップ部材100は、両端が夫々Y字形に分岐しているスリット6等が形成されたガラス基板1と、ガラス基板1の接合面7に接合されたガラス基板2と、ガラス基板1の接合面8に接合されたガラス基板3を備える。ガラス基板1は、スリット6の各分岐端に貫通孔5があけられており、ガラス基板2は、貫通孔5に対応する位置に溶液試料を注入排出する貫通孔4を4つ有する。スリット6は、マイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’を構成し、貫通孔5は、マイクロ化学システム用チップ部材のバッファ部5’を構成する。ガラス基板1の接合面7,8のナトリウムイオンをリチウムイオンに交換するイオン交換処理により低粘度層を形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ化学システム用チップ部材の製造方法及びその製造方法により製造されたマイクロ化学システム用チップ部材に関し、特に、光熱変換分光分析用のマイクロ化学システムに用いられるマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法及びその製造方法により製造されたマイクロ化学システム用チップ部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、化学反応を微小空間で行うための集積化技術が、反応の高速性や微小量での反応、オンサイト分析等の観点から注目され、世界的に精力的に研究が進められている。
【0003】
化学反応の集積化技術の1つとしてのマイクロ化学システムは、マイクロ化学システム用チップ部材の内部に形成された微細な分析用流路の中で溶液試料の混合、反応、分離、抽出、検出などを行うことを目的としたものである。マイクロ化学システムで行う反応の例には、ジアゾ化反応、ニトロ化反応、抗原抗体反応があり、抽出や分離の例には、溶媒抽出、電気泳動分離、カラム分離などがある。「分離」のみを目的としたものとして、極微量のタンパクや核酸等を分析する電気泳動装置が提案されており、この装置に用いられているマイクロ化学システム用チップ部材は、互いに接合された2枚のガラス基板で構成され、一方のガラス基板の接合面に分析用流路が形成されたものである(例えば、特開平8−178897号公報)。このマイクロ化学システム用チップ部材は板状であるので、断面が円形又は角形のガラスキャピラリチューブに比べて破損しにくく、取扱いが容易である。
【0004】
マイクロ化学システムにおいては、溶液試料の量が微量であるので、高度な検出方法が必須であるが、分析用流路の溶液試料の光吸収により発生する熱レンズ効果を利用した光熱変換分光分析法が確立されることにより、実用化への道が開かれている。
【0005】
図7は、従来のマイクロ化学システム用チップ部材の概略構成を示す分解斜視図である。
【0006】
マイクロ化学システム用チップ部材70は、ガラス基板71と、ガラス基板71の一の表面に一体に接合されたガラス基板72とを備える。ガラス基板71は、その一の表面に両端が夫々Y字形に分岐している分析用流路73と、分析用流路73の各分岐端に設けられた4つのバッファ部74とを有し、ガラス基板72は、ガラス基板71の各バッファ部74の対向位置において4つの貫通孔75を有する。
【0007】
また、2枚のガラス基板71,72の接合方法としては、フッ酸水溶液又は無水ケイ酸を片方のガラス基板に滴下し、もう一方のガラス基板を張り合わせて長時間荷重を印加して接合するものや、アルカリ(NaOH等)で両方のガラス基板表面を洗浄し、軽い圧を加えることで接合するものや、高真空下で両方のガラス基板表面をエネルギービームで照射することで活性化させて接合するものなどが知られており、いずれの方法でもガラス転移点Tg付近まで加熱する必要がある。
【0008】
このようなガラス基板71,72が接合されたマイクロ化学システム用チップ部材70では、貫通孔75の少なくとも1つを介して分析用流路73に溶液試料が注入され、そこで光熱変換分光分析法を用いて溶液試料の分析が行われる。
【0009】
上記光熱変換分光分析法は、溶液試料に光を集光照射したときに溶液試料中の溶質の光吸収に起因してその後放出される熱エネルギーにより溶液試料が局所的に温度上昇して屈折率が変化し、その結果熱レンズが形成されるという光熱変換効果を利用するものである。
【0010】
上記光熱変換効果を利用して微量の溶液試料の検出を行うマイクロ化学システムとしては、例えば特開平60−232260号公報に記載されたものが提案されている。
【0011】
このマイクロ化学システムにおいては、マイクロ化学システム用チップ部材70は、顕微鏡の対物レンズの下方に配置され、励起光光源から出力された所定波長の励起光は、顕微鏡に入射し、この顕微鏡の対物レンズによりマイクロ化学システム用チップ部材70の分析用流路73内の溶液試料に集光照射される。その集光照射された励起光は、溶液試料の焦点位置で吸収されて、その集光照射位置を中心として熱レンズが形成される。
【0012】
一方、検出光光源から出力された波長が励起光と異なる検出光は、顕微鏡に入射し、顕微鏡から出射される。この検出光は、励起光により溶液試料に形成された熱レンズに集光照射され、溶液試料を透過して発散又は集光する。この溶液試料から発散又は集光して出射された光は信号光となり、その信号光は、集光レンズ及びフィルタ又はフィルタのみを経て光電変換器により電気信号とされ、この電気信号は検出器により検出される。この検出器により検出された信号光の強度は、溶液試料において形成された熱レンズに応じて変化する。なお、検出光は励起光と同じ波長のものでもよく、また、励起光が検出光を兼ねることもできる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のマイクロ化学システムによりマイクロ化学システム用チップ部材70の分析用流路73内の溶液試料の検出を行うには、マイクロ化学システム用チップ部材70を構成する2枚のガラス基板71,72が接合されている接合面と、この接合面と反対側の表面であって、励起光及び検出光が入射・透過する面とで、励起光及び検出光が散乱・反射しないようにする必要がある。従来のいずれの接合方法においても、マイクロ化学システム用チップ部材70を構成するガラス基板71,72の各接合面とも光学平面となるように研磨する必要があった。
【0014】
本発明の目的は、マイクロ化学システム用チップ部材を構成するガラス基板の接合において接合後の表面の粗さが光学表面を維持することができるマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法及びその製造方法により製造された高精度且つ測定バラツキの小さい光熱変換分光分析をすることができるマイクロ化学システム用チップ部材を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の製造方法は、一の表面に分析用流路が形成された透明基板と、一の表面が前記透明基板の一の表面に接合された他の透明基板とを備え、前記分析用流路に注入された溶液試料に前記透明基板の一の表面側から光熱変換分光分析のための励起光及び検出光が照射されるマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法において、前記透明基板の一の表面及び前記他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面にイオン交換処理により低粘度層を形成し、これら透明基板を前記低粘度層を接合面にして熱融着により接合することを特徴とする。
【0016】
請求項1記載の製造方法によれば、分析用流路が形成された透明基板の一の表面又は透明基板の一の表面に接合された他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面にイオン交換処理により低粘度層を形成し、これら透明基板を低粘度層を接合面にして熱融着により接合するので、マイクロ化学システム用チップ部材を構成するガラス基板として用いられる透明基板及び他の透明基板の表面に大きなうねりがあっても、接合により、透明基板の一の表面及び他の透明基板の一の表面が夫々接合面となった時に低粘度層がそのうねりに追随するため泡残りが生じない結果、マイクロ化学システム用チップ部材を構成するガラス基板の接合において接合後の表面の粗さが光学表面を維持することができる。また、低粘度層においては接合可能な粘度となる温度を低くすることができる結果、低粘度層が形成された表面以外の表面については、接合時においても比較的高い粘性が維持され、加熱台の表面形状が転写されることなく初期の面荒さを維持することができる。
【0017】
請求項2記載の製造方法は、請求項1記載の製造方法において、前記イオン交換処理は、前記低粘度層の形成を、前記少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を当該一のイオンと同一の組成比になるように他のイオンに交換することにより行うことを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、低粘度層の形成を、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を一のイオンと同一の組成比になるように他のイオンに交換することにより行うので、混合アルカリ効果より低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。
【0019】
請求項3記載の製造方法は、請求項1又は2記載の製造方法において、前記イオン交換処理は、前記低粘度層の形成を、前記少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を当該一のイオンよりイオン半径が小さい他のイオンに交換することにより行うことを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、低粘度層の形成を、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を一のイオンよりイオン半径が小さい他のイオンに交換することにより行うので、低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。
【0021】
請求項4記載の製造方法は、請求項2記載の製造方法において、前記イオン交換処理でイオン半径の大きいイオンとイオン交換するときは、イオン交換後に徐冷点以上で徐歪処理することを特徴とする。
【0022】
請求項4記載の製造方法によれば、イオン交換処理でイオン半径の大きいイオンとイオン交換するときは、イオン交換後に徐冷点以上で徐歪処理するので、イオン交換直後に表面に生じる圧縮応力が緩和される結果、低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。例えば、フロートガラス中のナトリウムイオンをカリウムイオンにイオン交換処理し、その後徐歪処理をしたときは、徐歪処理をしない場合の加熱温度である580℃より20℃低い560℃でも接合することができる。また、この時、低粘度層が形成された表面以外の表面については、比較的高い粘性が維持され、加熱台の表面形状が転写されることなく初期の面荒さを維持することができる。
【0023】
請求項5記載の製造方法は、請求項3又は4記載の製造方法において、前記イオン交換処理は、前記少なくとも一方の一の表面のイオン交換を、当該少なくとも一方の一の表面に係る前記透明基板又は前記他の透明基板の徐冷点より高温の溶融塩中において行うことを特徴とする。
【0024】
請求項5記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面のイオン交換を、この少なくとも一方の一の表面に係る透明基板又は他の透明基板の徐冷点より高温の溶融塩中において行うので、いわゆる高温型イオン交換処理(化学強化処理)によりイオン半径の小さいイオンとイオン交換すると圧縮応力を形成することができ、一方、イオン半径の大きいイオンとイオン交換するとイオン交換直後に表面に生じる圧縮応力に起因するところの粘度低下の抑制が起こらなくなる結果、低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。
【0025】
請求項6記載の製造方法は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の製造方法において、前記透明基板の両面及び前記他の透明基板の両面に前記低粘度層を形成し、前記形成された低粘度層のうち、前記透明基板の他の表面及び前記他の透明基板の他の表面に形成されたものを除去することを特徴とする。
【0026】
請求項6記載の製造方法によれば、透明基板の両面及び他の透明基板の両面に形成された低粘度層のうち、透明基板の他の表面及び他の透明基板の他の表面に形成されたものを除去するので、接合時にこれらの表面にインプレッションが発生することを防止することができる。
【0027】
請求項7記載の製造方法は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の製造方法において、前記透明基板及び前記他の透明基板は同一の材質から成ることを特徴とする。
【0028】
請求項7記載の製造方法によれば、透明基板及び他の透明基板は同一の材質から成るので、接合時に熱膨張率の違いによりマイクロ化学システム用チップ部材に反りやクラックが生じることを確実に防ぐことができる。
【0029】
請求項8記載のマイクロ化学システム用チップ部材は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法により製造されることを特徴とする。
【0030】
請求項8記載のマイクロ化学システム用チップ部材によれば、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法により製造されるので、高精度且つ測定バラツキの小さい光熱変換分光分析をすることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係るマイクロ化学システム用チップ部材を図面を参照して詳述する。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態に係るマイクロ化学システム用チップ部材の概略構成を示す図であり、(a)は、マイクロ化学システム用チップ部材の分解斜視図であり、(b)は、マイクロ化学システム用チップ部材の平面図であり、(c)は、(b)の線A−A’についての断面図であり、(d)は、(b)の線B−B’についての断面図である。
【0033】
図1において、マイクロ化学システム用チップ部材100は、両端が夫々Y字形に分岐しているスリット6等が形成された透明なガラス基板1と、ガラス基板1の接合面7に接合された透明なガラス基板2と、ガラス基板1の接合面8に接合された透明なガラス基板3とを備える。ガラス基板1は、スリット6の各分岐端に貫通孔5があけられており、ガラス基板2は、貫通孔5に対応する位置に溶液試料を注入排出する貫通孔4を4つ有する(図1(d))。スリット6は、マイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’を構成し、貫通孔5は、マイクロ化学システム用チップ部材100のバッファ部5’を構成する。
【0034】
分析用流路6’は、幅及び深さが夫々0.3±0.2mmであり、その流路断面積が非常に小さいため、分析用流路6’中を流れる溶液試料は層流を維持できる。また、分析用流路6’の直線部において、溶液試料が2種以上存在する場合、これらの溶液試料の体積に比してこれらの溶液試料が互いに接触する界面の面積(比界面積)が十分に大きいため、夫々の溶液試料を互いに入り交じることがなく分析用流路6’内に流すことができる。
【0035】
貫通孔4,5は、夫々、溶液試料の注入口又は排出口の機能を果たすだけの十分な大きさを有し、直径が数100μm〜数mmである。
【0036】
また、ガラス基板1,2,3は、夫々、厚さが1mm程度、長辺が50mm程度、短辺が20mm程度のほぼ同一の外形のガラス基板であり、これらの材料は、ナトリウムイオンを含むガラス、具体的にはソーダライムガラス等が好ましい。
【0037】
図2は、図1のマイクロ化学システム用チップ部材100を用いた光熱変換分光分析用のマイクロ化学システムの概略構成を示す図である。図2において、マイクロ化学システム用チップ部材100は、図1(b)の線A−A’についての断面図として示している。
【0038】
図2のマイクロ化学システムは、マイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’内の溶液試料に励起光45及び検出光45’を照射する照射部101と、マイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’を通過した励起光45及び検出光45’を受光する受光部102とから成る。
【0039】
照射部101は、溶液試料を励起させる励起光45を出力する励起光用光源105と、励起光用光源105が出力する励起光45を変調する音響光学変調器107と、音響光学変調器107によるブラック回折によって回折された励起光45を0次光と1次光に分離するプリズム111と、検出光45’を出力する検出光用光源106と、対物レンズ130と、プリズム111からの1次光及び検出光用光源106からの検出光45’を同軸的に対物レンズ130を介してマイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’に照射させるダイクロミックミラー108とから成る。
【0040】
受光部102は、マイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’を通過した励起光45及び検出光45’を受光すると共に、検出光45’のみを選択的に濾波する波長フィルタ403と、濾波された検出光45’を検出する光電変換器401と、光電変換器401からの信号を音響光学変調器107と同期させるロックインアンプ404と、この信号をデータ解析するコンピュータ405とから成る。
【0041】
尚、検出光45の一部のみを選択的に透過させるため、マイクロ化学システム用チップ部材100と光電変換器401の間にピンホールを配置してもよい。
【0042】
励起光用光源105から出射された励起光45は、音響光学変調器107、プリズム111、ダイクロイックミラー108を介して対物レンズ130に入射する。一方、検出光用光源106から出射された検出光45’は、ダイクロイックミラー108を介して対物レンズ130に入射する。
【0043】
この対物レンズ130に入射した励起光45及び検出光45’は、マイクロ化学システム用チップ部材100内部の分析用流路6’を流れる溶液試料に集光するようにマイクロ化学システム用チップ部材100に垂直に入射する。
【0044】
溶液試料中に照射された励起光45及び励起光45により励起され熱レンズ効果が生じた溶液試料中に照射された検出光45’のうち検出光のみが、波長フィルタ403で選択的に濾波された後、光電変換器401で電気信号に変換される。この電気信号に変換された検出光45’は、ロックインアンプ404で音響光学変調器107と同期し、コンピュータ405で解析されることで光熱変換吸光分析が行われる。
【0045】
従って、マイクロ化学システム用チップ部材100の励起光45及び検出光45’が通過する面、具体的には、これらの光を受光する側のガラス基板2の測定面9及びその反対側のガラス基板1と接合する接合面11と、ガラス基板1の接合面7,8と、ガラス基板3のガラス基板1と接合する接合面12及びその反対側の測定面10とのヘイズ率、散乱率等の光学特性は、励起光45及び検出光45’の散乱・反射等を防止し、光熱変換吸光分析を正確に行うことができる程度の特性が要求される。
【0046】
図3は、図1のマイクロ化学システム用チップ部材100の製造工程を示す図である。
【0047】
図3で示されるガラス基板1,2,3は、夫々図1(b)のB−B’面に沿った断面である。
【0048】
図3において、まず、ガラス基板2の形成が行われる(図3(a))。ガラス基板2は、厚さが1mm程度、長辺が50mm程度、短辺が20mm程度のガラス基板を成形し、所定位置にCO2レーザを照射し、貫通孔4を形成することにより作製される。
【0049】
次に、ガラス基板1の形成が行われる(図3(b))。ガラス基板1は、ガラス基板2と同一形状のガラス基板を成形し、所定位置にCO2レーザを照射し、スリット6及び貫通孔5を形成した後、後述する図4のイオン交換処理により表面全体に低粘度層を形成することにより作製される。
【0050】
その後、ガラス基板3の形成が行われる(図3(c))。ガラス基板3は、ガラス基板2と同一形状のガラス基板を成形することにより作製される。
【0051】
最後に、ガラス基板1,2,3の接合が行われる(図3(d))。ガラス基板2に形成された貫通孔4とガラス基板1に形成された貫通孔5の位置が一致するようにガラス基板1の接合面7の上にガラス基板2を載せると共に、ガラス基板1の接合面8を覆うようにガラス基板3の接合面12の上にガラス基板1を載せる。その後、重ね合わされた3枚のガラス基板1,2,3を表面が平滑に研磨されたアルミナ製の板にて挟み、各ガラス基板の材質に応じた温度、例えば、ソーダライムシリカガラスの場合は560℃に加熱して接合する。
【0052】
次に、図3(b)で行われるガラス基板1のイオン交換処理について説明する。
【0053】
図4は、図1のマイクロ化学システム用チップ部材100を構成するガラス基板1のイオン交換処理方法のフローチャートである。
【0054】
図4において、ガラス基板1を予備加熱炉で250〜300℃に予備加熱した後(ステップS41)、LiNO3からなる溶融塩に30分〜3時間浸漬する(ステップS42)。これにより、ガラス基板1の表面に存在するナトリウムイオンをリチウムイオンに交換するイオン交換処理を行うことができる。リチウムイオンは、ナトリウムイオンよりイオン半径が小さいため、このイオン交換処理によりガラス基板1の表面に低粘度層を形成することができる。また、イオン交換処理により形成された低粘度層のナトリウムイオンとリチウムイオンの組成比を1:1とすると、混合アルカリ効果より粘性を確実に低くすることができる。
【0055】
また、ガラス基板1の材料であるガラスの徐冷点より高い温度域でガラス基板1の表面のナトリウムイオンをリチウムイオンと交換すると、いわゆる高温型イオン交換処理(化学強化処理)によりガラス基板1の表面に圧縮応力を形成することができる(図5(a))。従って、溶融塩の温度は500℃前後とすることが好ましい。
【0056】
次に、ガラス基板1を冷却した後(ステップS43)、洗浄して(ステップS44)、本処理を終了する。
【0057】
ガラス基板1,2,3はすべて同じ材質からなるため、接合時にガラス基板1,2,3の熱膨張率の違いによりマイクロ化学システム用チップ部材100に反りやクラックが生じることを確実に防ぐことができる。
【0058】
本実施の形態に係るマイクロ化学システム用チップ部材は、3枚のガラス基板1,2,3から成るが、これに限定されるものでなく、例えば、ガラス基板3の表面に分析用流路6’用の溝を形成したものにガラス基板2を接合した2枚の基板から成ってもよい。この場合、ガラス基板2,3について、図4のイオン交換処理を行う必要があり、また、接合時に測定面9,10にインプレッションが生じるのを防止するため、図4のイオン交換処理により測定面9,10に形成された低粘度層を表面研磨により除去するのが好ましい。
【0059】
図4のイオン交換処理では、ガラス基板1の表面のナトリウムイオンをリチウムイオンと交換しているが、ガラス基板1の表面に低粘度層を形成するイオン交換処理であればこれに限定されるものでない。例えば、図4のステップS42において、ガラス基板1をLiNO3からなる溶融塩ではなく、KNO3からなる溶融塩に浸漬してイオン交換処理を行うとしても、イオン交換処理により形成された低粘度層のナトリウムイオンとリチウムイオンの組成比を1:1とすると、混合アルカリ効果より図6に示すようにガラス基板1の表面の粘性をlogη=10とするための温度を理論上50℃程度下げることができるが、カリウムイオンのイオン半径はナトリウムイオンのイオン半径より大きい分その効果が相殺される。このため、カリウムイオン等、ナトリウムイオンよりイオン半径の大きいイオンにイオン交換処理する場合は、イオン交換直後のガラス基板の温度を徐冷点以上の温度まで加熱することにより、徐歪処理を施すと混合アルカリ効果が発現する。また、イオン交換後にガラス基板の温度を徐冷点より低い温度(例えば、KNO3からなる溶融塩にフロートガラスを浸漬する場合は450℃付近)とし、その後冷却したガラス基板1を徐冷点付近にまで再度加熱する事でも同様の効果が発現する。
【0060】
例えば、表1より、硼珪酸ガラス同士の接合は、例えば、コーニング社製の#7740については630℃まで通常加熱する必要があるが、LiNO3でイオン交換処理をした表面については620℃まで加熱すれば足り、ショット社製の#263については580℃まで通常加熱する必要があるが、LiNO3でイオン交換処理をした表面については560℃まで加熱すれば足りる。また、さらに、フロートガラス同士の接合は、580℃まで通常加熱する必要があるが、KNO3でイオン交換処理及び徐歪処理をした表面については560℃まで加熱すれば足りる。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1記載の製造方法によれば、分析用流路が形成された透明基板の一の表面又は透明基板の一の表面に接合された他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面にイオン交換処理により低粘度層を形成し、これら透明基板を低粘度層を接合面にして熱融着により接合するので、マイクロ化学システム用チップ部材を構成するガラス基板として用いられる透明基板及び他の透明基板の表面に大きなうねりがあっても、接合により、透明基板の一の表面及び他の透明基板の一の表面が夫々接合面となった時に低粘度層がそのうねりに追随するため泡残りが生じない結果、マイクロ化学システム用チップ部材を構成するガラス基板の接合において接合後の表面の粗さが光学表面を維持することができる。また、低粘度層においては接合可能な粘度となる温度を低くすることができる結果、低粘度層が形成された表面以外の表面については、接合時においても比較的高い粘性が維持されて加熱台の表面形状が転写されることなく初期の面荒さを維持することができる。
【0063】
請求項2記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、低粘度層の形成を、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を一のイオンと同一の組成比になるように他のイオンに交換することにより行うので、混合アルカリ効果より低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。
【0064】
請求項3記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、低粘度層の形成を、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を一のイオンよりイオン半径が小さい他のイオンに交換することにより行うので、低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。
【0065】
請求項4記載の製造方法によれば、イオン交換処理でイオン半径の大きいイオンとイオン交換するときは、イオン交換後に徐冷点以上で徐歪処理するので、イオン交換直後に表面に生じる圧縮応力が緩和される結果、低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。例えば、フロートガラス中のナトリウムイオンをカリウムイオンにイオン交換処理し、その後徐歪処理をしたときは、徐歪処理をしない場合の加熱温度である580℃より20℃低い560℃でも接合することができる。また、この時、低粘度層が形成された表面以外の表面については、比較的高い粘性が維持され、加熱台の表面形状が転写されることなく初期の面荒さを維持することができる。
【0066】
請求項5記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面のイオン交換を、この少なくとも一方の一の表面に係る透明基板又は他の透明基板の徐冷点より高温の溶融塩中において行うので、いわゆる高温型イオン交換処理(化学強化処理)により透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面に圧縮応力を形成することができる。
【0067】
請求項6記載の製造方法によれば、透明基板の両面及び他の透明基板の両面に形成された低粘度層のうち、透明基板の他の表面及び他の透明基板の他の表面に形成されたものを除去するので、接合時にこれらの表面にインプレッションが発生することを防止することができる。
【0068】
請求項7記載の製造方法によれば、透明基板及び他の透明基板は同一の材質から成るので、接合時に熱膨張率の違いによりマイクロ化学システム用チップ部材に反りやクラックが生じることを確実に防ぐことができる。
【0069】
請求項8記載のマイクロ化学システム用チップ部材によれば、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法により製造されるので、高精度且つ測定バラツキの小さい光熱変換分光分析をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るマイクロ化学システム用チップ部材の概略構成を示す図であり、(a)は、マイクロ化学システム用チップ部材の分解斜視図であり、(b)は、マイクロ化学システム用チップ部材の平面図であり、(c)は、(b)の線A−A’についての断面図であり、(d)は、(b)の線B−B’についての断面図である。
【図2】図1のマイクロ化学システム用チップ部材100を用いた光熱変換分光分析用のマイクロ化学システムの概略構成を示す図である。
【図3】図1のマイクロ化学システム用チップ部材100の製造工程を示す図である。
【図4】図1のマイクロ化学システム用チップ部材100を構成するガラス基板1のイオン交換処理方法のフローチャートである。
【図5】溶融塩の温度とイオン交換処理後に表面に形成される応力との関係を示すグラフであり、(a)はソーダライムガラスをLiNO3の溶融塩に浸漬した場合、(b)はソーダライムガラスをKNO3の溶融塩に浸漬した場合を示す。
【図6】Na2O−K2O−SiO2系(Na2O+K2O=13mol%)の等粘度−組成関係を示すグラフである。
【図7】従来のマイクロ化学システム用チップ部材の概略構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
100 マイクロ化学システム用チップ部材
1,2,3 ガラス基板
4,5 貫通孔
6 スリット
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ化学システム用チップ部材の製造方法及びその製造方法により製造されたマイクロ化学システム用チップ部材に関し、特に、光熱変換分光分析用のマイクロ化学システムに用いられるマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法及びその製造方法により製造されたマイクロ化学システム用チップ部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、化学反応を微小空間で行うための集積化技術が、反応の高速性や微小量での反応、オンサイト分析等の観点から注目され、世界的に精力的に研究が進められている。
【0003】
化学反応の集積化技術の1つとしてのマイクロ化学システムは、マイクロ化学システム用チップ部材の内部に形成された微細な分析用流路の中で溶液試料の混合、反応、分離、抽出、検出などを行うことを目的としたものである。マイクロ化学システムで行う反応の例には、ジアゾ化反応、ニトロ化反応、抗原抗体反応があり、抽出や分離の例には、溶媒抽出、電気泳動分離、カラム分離などがある。「分離」のみを目的としたものとして、極微量のタンパクや核酸等を分析する電気泳動装置が提案されており、この装置に用いられているマイクロ化学システム用チップ部材は、互いに接合された2枚のガラス基板で構成され、一方のガラス基板の接合面に分析用流路が形成されたものである(例えば、特開平8−178897号公報)。このマイクロ化学システム用チップ部材は板状であるので、断面が円形又は角形のガラスキャピラリチューブに比べて破損しにくく、取扱いが容易である。
【0004】
マイクロ化学システムにおいては、溶液試料の量が微量であるので、高度な検出方法が必須であるが、分析用流路の溶液試料の光吸収により発生する熱レンズ効果を利用した光熱変換分光分析法が確立されることにより、実用化への道が開かれている。
【0005】
図7は、従来のマイクロ化学システム用チップ部材の概略構成を示す分解斜視図である。
【0006】
マイクロ化学システム用チップ部材70は、ガラス基板71と、ガラス基板71の一の表面に一体に接合されたガラス基板72とを備える。ガラス基板71は、その一の表面に両端が夫々Y字形に分岐している分析用流路73と、分析用流路73の各分岐端に設けられた4つのバッファ部74とを有し、ガラス基板72は、ガラス基板71の各バッファ部74の対向位置において4つの貫通孔75を有する。
【0007】
また、2枚のガラス基板71,72の接合方法としては、フッ酸水溶液又は無水ケイ酸を片方のガラス基板に滴下し、もう一方のガラス基板を張り合わせて長時間荷重を印加して接合するものや、アルカリ(NaOH等)で両方のガラス基板表面を洗浄し、軽い圧を加えることで接合するものや、高真空下で両方のガラス基板表面をエネルギービームで照射することで活性化させて接合するものなどが知られており、いずれの方法でもガラス転移点Tg付近まで加熱する必要がある。
【0008】
このようなガラス基板71,72が接合されたマイクロ化学システム用チップ部材70では、貫通孔75の少なくとも1つを介して分析用流路73に溶液試料が注入され、そこで光熱変換分光分析法を用いて溶液試料の分析が行われる。
【0009】
上記光熱変換分光分析法は、溶液試料に光を集光照射したときに溶液試料中の溶質の光吸収に起因してその後放出される熱エネルギーにより溶液試料が局所的に温度上昇して屈折率が変化し、その結果熱レンズが形成されるという光熱変換効果を利用するものである。
【0010】
上記光熱変換効果を利用して微量の溶液試料の検出を行うマイクロ化学システムとしては、例えば特開平60−232260号公報に記載されたものが提案されている。
【0011】
このマイクロ化学システムにおいては、マイクロ化学システム用チップ部材70は、顕微鏡の対物レンズの下方に配置され、励起光光源から出力された所定波長の励起光は、顕微鏡に入射し、この顕微鏡の対物レンズによりマイクロ化学システム用チップ部材70の分析用流路73内の溶液試料に集光照射される。その集光照射された励起光は、溶液試料の焦点位置で吸収されて、その集光照射位置を中心として熱レンズが形成される。
【0012】
一方、検出光光源から出力された波長が励起光と異なる検出光は、顕微鏡に入射し、顕微鏡から出射される。この検出光は、励起光により溶液試料に形成された熱レンズに集光照射され、溶液試料を透過して発散又は集光する。この溶液試料から発散又は集光して出射された光は信号光となり、その信号光は、集光レンズ及びフィルタ又はフィルタのみを経て光電変換器により電気信号とされ、この電気信号は検出器により検出される。この検出器により検出された信号光の強度は、溶液試料において形成された熱レンズに応じて変化する。なお、検出光は励起光と同じ波長のものでもよく、また、励起光が検出光を兼ねることもできる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のマイクロ化学システムによりマイクロ化学システム用チップ部材70の分析用流路73内の溶液試料の検出を行うには、マイクロ化学システム用チップ部材70を構成する2枚のガラス基板71,72が接合されている接合面と、この接合面と反対側の表面であって、励起光及び検出光が入射・透過する面とで、励起光及び検出光が散乱・反射しないようにする必要がある。従来のいずれの接合方法においても、マイクロ化学システム用チップ部材70を構成するガラス基板71,72の各接合面とも光学平面となるように研磨する必要があった。
【0014】
本発明の目的は、マイクロ化学システム用チップ部材を構成するガラス基板の接合において接合後の表面の粗さが光学表面を維持することができるマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法及びその製造方法により製造された高精度且つ測定バラツキの小さい光熱変換分光分析をすることができるマイクロ化学システム用チップ部材を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の製造方法は、一の表面に分析用流路が形成された透明基板と、一の表面が前記透明基板の一の表面に接合された他の透明基板とを備え、前記分析用流路に注入された溶液試料に前記透明基板の一の表面側から光熱変換分光分析のための励起光及び検出光が照射されるマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法において、前記透明基板の一の表面及び前記他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面にイオン交換処理により低粘度層を形成し、これら透明基板を前記低粘度層を接合面にして熱融着により接合することを特徴とする。
【0016】
請求項1記載の製造方法によれば、分析用流路が形成された透明基板の一の表面又は透明基板の一の表面に接合された他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面にイオン交換処理により低粘度層を形成し、これら透明基板を低粘度層を接合面にして熱融着により接合するので、マイクロ化学システム用チップ部材を構成するガラス基板として用いられる透明基板及び他の透明基板の表面に大きなうねりがあっても、接合により、透明基板の一の表面及び他の透明基板の一の表面が夫々接合面となった時に低粘度層がそのうねりに追随するため泡残りが生じない結果、マイクロ化学システム用チップ部材を構成するガラス基板の接合において接合後の表面の粗さが光学表面を維持することができる。また、低粘度層においては接合可能な粘度となる温度を低くすることができる結果、低粘度層が形成された表面以外の表面については、接合時においても比較的高い粘性が維持され、加熱台の表面形状が転写されることなく初期の面荒さを維持することができる。
【0017】
請求項2記載の製造方法は、請求項1記載の製造方法において、前記イオン交換処理は、前記低粘度層の形成を、前記少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を当該一のイオンと同一の組成比になるように他のイオンに交換することにより行うことを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、低粘度層の形成を、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を一のイオンと同一の組成比になるように他のイオンに交換することにより行うので、混合アルカリ効果より低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。
【0019】
請求項3記載の製造方法は、請求項1又は2記載の製造方法において、前記イオン交換処理は、前記低粘度層の形成を、前記少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を当該一のイオンよりイオン半径が小さい他のイオンに交換することにより行うことを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、低粘度層の形成を、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を一のイオンよりイオン半径が小さい他のイオンに交換することにより行うので、低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。
【0021】
請求項4記載の製造方法は、請求項2記載の製造方法において、前記イオン交換処理でイオン半径の大きいイオンとイオン交換するときは、イオン交換後に徐冷点以上で徐歪処理することを特徴とする。
【0022】
請求項4記載の製造方法によれば、イオン交換処理でイオン半径の大きいイオンとイオン交換するときは、イオン交換後に徐冷点以上で徐歪処理するので、イオン交換直後に表面に生じる圧縮応力が緩和される結果、低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。例えば、フロートガラス中のナトリウムイオンをカリウムイオンにイオン交換処理し、その後徐歪処理をしたときは、徐歪処理をしない場合の加熱温度である580℃より20℃低い560℃でも接合することができる。また、この時、低粘度層が形成された表面以外の表面については、比較的高い粘性が維持され、加熱台の表面形状が転写されることなく初期の面荒さを維持することができる。
【0023】
請求項5記載の製造方法は、請求項3又は4記載の製造方法において、前記イオン交換処理は、前記少なくとも一方の一の表面のイオン交換を、当該少なくとも一方の一の表面に係る前記透明基板又は前記他の透明基板の徐冷点より高温の溶融塩中において行うことを特徴とする。
【0024】
請求項5記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面のイオン交換を、この少なくとも一方の一の表面に係る透明基板又は他の透明基板の徐冷点より高温の溶融塩中において行うので、いわゆる高温型イオン交換処理(化学強化処理)によりイオン半径の小さいイオンとイオン交換すると圧縮応力を形成することができ、一方、イオン半径の大きいイオンとイオン交換するとイオン交換直後に表面に生じる圧縮応力に起因するところの粘度低下の抑制が起こらなくなる結果、低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。
【0025】
請求項6記載の製造方法は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の製造方法において、前記透明基板の両面及び前記他の透明基板の両面に前記低粘度層を形成し、前記形成された低粘度層のうち、前記透明基板の他の表面及び前記他の透明基板の他の表面に形成されたものを除去することを特徴とする。
【0026】
請求項6記載の製造方法によれば、透明基板の両面及び他の透明基板の両面に形成された低粘度層のうち、透明基板の他の表面及び他の透明基板の他の表面に形成されたものを除去するので、接合時にこれらの表面にインプレッションが発生することを防止することができる。
【0027】
請求項7記載の製造方法は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の製造方法において、前記透明基板及び前記他の透明基板は同一の材質から成ることを特徴とする。
【0028】
請求項7記載の製造方法によれば、透明基板及び他の透明基板は同一の材質から成るので、接合時に熱膨張率の違いによりマイクロ化学システム用チップ部材に反りやクラックが生じることを確実に防ぐことができる。
【0029】
請求項8記載のマイクロ化学システム用チップ部材は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法により製造されることを特徴とする。
【0030】
請求項8記載のマイクロ化学システム用チップ部材によれば、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法により製造されるので、高精度且つ測定バラツキの小さい光熱変換分光分析をすることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係るマイクロ化学システム用チップ部材を図面を参照して詳述する。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態に係るマイクロ化学システム用チップ部材の概略構成を示す図であり、(a)は、マイクロ化学システム用チップ部材の分解斜視図であり、(b)は、マイクロ化学システム用チップ部材の平面図であり、(c)は、(b)の線A−A’についての断面図であり、(d)は、(b)の線B−B’についての断面図である。
【0033】
図1において、マイクロ化学システム用チップ部材100は、両端が夫々Y字形に分岐しているスリット6等が形成された透明なガラス基板1と、ガラス基板1の接合面7に接合された透明なガラス基板2と、ガラス基板1の接合面8に接合された透明なガラス基板3とを備える。ガラス基板1は、スリット6の各分岐端に貫通孔5があけられており、ガラス基板2は、貫通孔5に対応する位置に溶液試料を注入排出する貫通孔4を4つ有する(図1(d))。スリット6は、マイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’を構成し、貫通孔5は、マイクロ化学システム用チップ部材100のバッファ部5’を構成する。
【0034】
分析用流路6’は、幅及び深さが夫々0.3±0.2mmであり、その流路断面積が非常に小さいため、分析用流路6’中を流れる溶液試料は層流を維持できる。また、分析用流路6’の直線部において、溶液試料が2種以上存在する場合、これらの溶液試料の体積に比してこれらの溶液試料が互いに接触する界面の面積(比界面積)が十分に大きいため、夫々の溶液試料を互いに入り交じることがなく分析用流路6’内に流すことができる。
【0035】
貫通孔4,5は、夫々、溶液試料の注入口又は排出口の機能を果たすだけの十分な大きさを有し、直径が数100μm〜数mmである。
【0036】
また、ガラス基板1,2,3は、夫々、厚さが1mm程度、長辺が50mm程度、短辺が20mm程度のほぼ同一の外形のガラス基板であり、これらの材料は、ナトリウムイオンを含むガラス、具体的にはソーダライムガラス等が好ましい。
【0037】
図2は、図1のマイクロ化学システム用チップ部材100を用いた光熱変換分光分析用のマイクロ化学システムの概略構成を示す図である。図2において、マイクロ化学システム用チップ部材100は、図1(b)の線A−A’についての断面図として示している。
【0038】
図2のマイクロ化学システムは、マイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’内の溶液試料に励起光45及び検出光45’を照射する照射部101と、マイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’を通過した励起光45及び検出光45’を受光する受光部102とから成る。
【0039】
照射部101は、溶液試料を励起させる励起光45を出力する励起光用光源105と、励起光用光源105が出力する励起光45を変調する音響光学変調器107と、音響光学変調器107によるブラック回折によって回折された励起光45を0次光と1次光に分離するプリズム111と、検出光45’を出力する検出光用光源106と、対物レンズ130と、プリズム111からの1次光及び検出光用光源106からの検出光45’を同軸的に対物レンズ130を介してマイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’に照射させるダイクロミックミラー108とから成る。
【0040】
受光部102は、マイクロ化学システム用チップ部材100の分析用流路6’を通過した励起光45及び検出光45’を受光すると共に、検出光45’のみを選択的に濾波する波長フィルタ403と、濾波された検出光45’を検出する光電変換器401と、光電変換器401からの信号を音響光学変調器107と同期させるロックインアンプ404と、この信号をデータ解析するコンピュータ405とから成る。
【0041】
尚、検出光45の一部のみを選択的に透過させるため、マイクロ化学システム用チップ部材100と光電変換器401の間にピンホールを配置してもよい。
【0042】
励起光用光源105から出射された励起光45は、音響光学変調器107、プリズム111、ダイクロイックミラー108を介して対物レンズ130に入射する。一方、検出光用光源106から出射された検出光45’は、ダイクロイックミラー108を介して対物レンズ130に入射する。
【0043】
この対物レンズ130に入射した励起光45及び検出光45’は、マイクロ化学システム用チップ部材100内部の分析用流路6’を流れる溶液試料に集光するようにマイクロ化学システム用チップ部材100に垂直に入射する。
【0044】
溶液試料中に照射された励起光45及び励起光45により励起され熱レンズ効果が生じた溶液試料中に照射された検出光45’のうち検出光のみが、波長フィルタ403で選択的に濾波された後、光電変換器401で電気信号に変換される。この電気信号に変換された検出光45’は、ロックインアンプ404で音響光学変調器107と同期し、コンピュータ405で解析されることで光熱変換吸光分析が行われる。
【0045】
従って、マイクロ化学システム用チップ部材100の励起光45及び検出光45’が通過する面、具体的には、これらの光を受光する側のガラス基板2の測定面9及びその反対側のガラス基板1と接合する接合面11と、ガラス基板1の接合面7,8と、ガラス基板3のガラス基板1と接合する接合面12及びその反対側の測定面10とのヘイズ率、散乱率等の光学特性は、励起光45及び検出光45’の散乱・反射等を防止し、光熱変換吸光分析を正確に行うことができる程度の特性が要求される。
【0046】
図3は、図1のマイクロ化学システム用チップ部材100の製造工程を示す図である。
【0047】
図3で示されるガラス基板1,2,3は、夫々図1(b)のB−B’面に沿った断面である。
【0048】
図3において、まず、ガラス基板2の形成が行われる(図3(a))。ガラス基板2は、厚さが1mm程度、長辺が50mm程度、短辺が20mm程度のガラス基板を成形し、所定位置にCO2レーザを照射し、貫通孔4を形成することにより作製される。
【0049】
次に、ガラス基板1の形成が行われる(図3(b))。ガラス基板1は、ガラス基板2と同一形状のガラス基板を成形し、所定位置にCO2レーザを照射し、スリット6及び貫通孔5を形成した後、後述する図4のイオン交換処理により表面全体に低粘度層を形成することにより作製される。
【0050】
その後、ガラス基板3の形成が行われる(図3(c))。ガラス基板3は、ガラス基板2と同一形状のガラス基板を成形することにより作製される。
【0051】
最後に、ガラス基板1,2,3の接合が行われる(図3(d))。ガラス基板2に形成された貫通孔4とガラス基板1に形成された貫通孔5の位置が一致するようにガラス基板1の接合面7の上にガラス基板2を載せると共に、ガラス基板1の接合面8を覆うようにガラス基板3の接合面12の上にガラス基板1を載せる。その後、重ね合わされた3枚のガラス基板1,2,3を表面が平滑に研磨されたアルミナ製の板にて挟み、各ガラス基板の材質に応じた温度、例えば、ソーダライムシリカガラスの場合は560℃に加熱して接合する。
【0052】
次に、図3(b)で行われるガラス基板1のイオン交換処理について説明する。
【0053】
図4は、図1のマイクロ化学システム用チップ部材100を構成するガラス基板1のイオン交換処理方法のフローチャートである。
【0054】
図4において、ガラス基板1を予備加熱炉で250〜300℃に予備加熱した後(ステップS41)、LiNO3からなる溶融塩に30分〜3時間浸漬する(ステップS42)。これにより、ガラス基板1の表面に存在するナトリウムイオンをリチウムイオンに交換するイオン交換処理を行うことができる。リチウムイオンは、ナトリウムイオンよりイオン半径が小さいため、このイオン交換処理によりガラス基板1の表面に低粘度層を形成することができる。また、イオン交換処理により形成された低粘度層のナトリウムイオンとリチウムイオンの組成比を1:1とすると、混合アルカリ効果より粘性を確実に低くすることができる。
【0055】
また、ガラス基板1の材料であるガラスの徐冷点より高い温度域でガラス基板1の表面のナトリウムイオンをリチウムイオンと交換すると、いわゆる高温型イオン交換処理(化学強化処理)によりガラス基板1の表面に圧縮応力を形成することができる(図5(a))。従って、溶融塩の温度は500℃前後とすることが好ましい。
【0056】
次に、ガラス基板1を冷却した後(ステップS43)、洗浄して(ステップS44)、本処理を終了する。
【0057】
ガラス基板1,2,3はすべて同じ材質からなるため、接合時にガラス基板1,2,3の熱膨張率の違いによりマイクロ化学システム用チップ部材100に反りやクラックが生じることを確実に防ぐことができる。
【0058】
本実施の形態に係るマイクロ化学システム用チップ部材は、3枚のガラス基板1,2,3から成るが、これに限定されるものでなく、例えば、ガラス基板3の表面に分析用流路6’用の溝を形成したものにガラス基板2を接合した2枚の基板から成ってもよい。この場合、ガラス基板2,3について、図4のイオン交換処理を行う必要があり、また、接合時に測定面9,10にインプレッションが生じるのを防止するため、図4のイオン交換処理により測定面9,10に形成された低粘度層を表面研磨により除去するのが好ましい。
【0059】
図4のイオン交換処理では、ガラス基板1の表面のナトリウムイオンをリチウムイオンと交換しているが、ガラス基板1の表面に低粘度層を形成するイオン交換処理であればこれに限定されるものでない。例えば、図4のステップS42において、ガラス基板1をLiNO3からなる溶融塩ではなく、KNO3からなる溶融塩に浸漬してイオン交換処理を行うとしても、イオン交換処理により形成された低粘度層のナトリウムイオンとリチウムイオンの組成比を1:1とすると、混合アルカリ効果より図6に示すようにガラス基板1の表面の粘性をlogη=10とするための温度を理論上50℃程度下げることができるが、カリウムイオンのイオン半径はナトリウムイオンのイオン半径より大きい分その効果が相殺される。このため、カリウムイオン等、ナトリウムイオンよりイオン半径の大きいイオンにイオン交換処理する場合は、イオン交換直後のガラス基板の温度を徐冷点以上の温度まで加熱することにより、徐歪処理を施すと混合アルカリ効果が発現する。また、イオン交換後にガラス基板の温度を徐冷点より低い温度(例えば、KNO3からなる溶融塩にフロートガラスを浸漬する場合は450℃付近)とし、その後冷却したガラス基板1を徐冷点付近にまで再度加熱する事でも同様の効果が発現する。
【0060】
例えば、表1より、硼珪酸ガラス同士の接合は、例えば、コーニング社製の#7740については630℃まで通常加熱する必要があるが、LiNO3でイオン交換処理をした表面については620℃まで加熱すれば足り、ショット社製の#263については580℃まで通常加熱する必要があるが、LiNO3でイオン交換処理をした表面については560℃まで加熱すれば足りる。また、さらに、フロートガラス同士の接合は、580℃まで通常加熱する必要があるが、KNO3でイオン交換処理及び徐歪処理をした表面については560℃まで加熱すれば足りる。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1記載の製造方法によれば、分析用流路が形成された透明基板の一の表面又は透明基板の一の表面に接合された他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面にイオン交換処理により低粘度層を形成し、これら透明基板を低粘度層を接合面にして熱融着により接合するので、マイクロ化学システム用チップ部材を構成するガラス基板として用いられる透明基板及び他の透明基板の表面に大きなうねりがあっても、接合により、透明基板の一の表面及び他の透明基板の一の表面が夫々接合面となった時に低粘度層がそのうねりに追随するため泡残りが生じない結果、マイクロ化学システム用チップ部材を構成するガラス基板の接合において接合後の表面の粗さが光学表面を維持することができる。また、低粘度層においては接合可能な粘度となる温度を低くすることができる結果、低粘度層が形成された表面以外の表面については、接合時においても比較的高い粘性が維持されて加熱台の表面形状が転写されることなく初期の面荒さを維持することができる。
【0063】
請求項2記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、低粘度層の形成を、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を一のイオンと同一の組成比になるように他のイオンに交換することにより行うので、混合アルカリ効果より低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。
【0064】
請求項3記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、低粘度層の形成を、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を一のイオンよりイオン半径が小さい他のイオンに交換することにより行うので、低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。
【0065】
請求項4記載の製造方法によれば、イオン交換処理でイオン半径の大きいイオンとイオン交換するときは、イオン交換後に徐冷点以上で徐歪処理するので、イオン交換直後に表面に生じる圧縮応力が緩和される結果、低粘度層の粘性を確実に低くすることができる。例えば、フロートガラス中のナトリウムイオンをカリウムイオンにイオン交換処理し、その後徐歪処理をしたときは、徐歪処理をしない場合の加熱温度である580℃より20℃低い560℃でも接合することができる。また、この時、低粘度層が形成された表面以外の表面については、比較的高い粘性が維持され、加熱台の表面形状が転写されることなく初期の面荒さを維持することができる。
【0066】
請求項5記載の製造方法によれば、イオン交換処理は、透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面のイオン交換を、この少なくとも一方の一の表面に係る透明基板又は他の透明基板の徐冷点より高温の溶融塩中において行うので、いわゆる高温型イオン交換処理(化学強化処理)により透明基板の一の表面又は他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面に圧縮応力を形成することができる。
【0067】
請求項6記載の製造方法によれば、透明基板の両面及び他の透明基板の両面に形成された低粘度層のうち、透明基板の他の表面及び他の透明基板の他の表面に形成されたものを除去するので、接合時にこれらの表面にインプレッションが発生することを防止することができる。
【0068】
請求項7記載の製造方法によれば、透明基板及び他の透明基板は同一の材質から成るので、接合時に熱膨張率の違いによりマイクロ化学システム用チップ部材に反りやクラックが生じることを確実に防ぐことができる。
【0069】
請求項8記載のマイクロ化学システム用チップ部材によれば、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法により製造されるので、高精度且つ測定バラツキの小さい光熱変換分光分析をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るマイクロ化学システム用チップ部材の概略構成を示す図であり、(a)は、マイクロ化学システム用チップ部材の分解斜視図であり、(b)は、マイクロ化学システム用チップ部材の平面図であり、(c)は、(b)の線A−A’についての断面図であり、(d)は、(b)の線B−B’についての断面図である。
【図2】図1のマイクロ化学システム用チップ部材100を用いた光熱変換分光分析用のマイクロ化学システムの概略構成を示す図である。
【図3】図1のマイクロ化学システム用チップ部材100の製造工程を示す図である。
【図4】図1のマイクロ化学システム用チップ部材100を構成するガラス基板1のイオン交換処理方法のフローチャートである。
【図5】溶融塩の温度とイオン交換処理後に表面に形成される応力との関係を示すグラフであり、(a)はソーダライムガラスをLiNO3の溶融塩に浸漬した場合、(b)はソーダライムガラスをKNO3の溶融塩に浸漬した場合を示す。
【図6】Na2O−K2O−SiO2系(Na2O+K2O=13mol%)の等粘度−組成関係を示すグラフである。
【図7】従来のマイクロ化学システム用チップ部材の概略構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
100 マイクロ化学システム用チップ部材
1,2,3 ガラス基板
4,5 貫通孔
6 スリット
Claims (8)
- 一の表面に分析用流路が形成された透明基板と、一の表面が前記透明基板の一の表面に接合された他の透明基板とを備え、前記分析用流路に注入された溶液試料に前記透明基板の一の表面側から光熱変換分光分析のための励起光及び検出光が照射されるマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法において、
前記透明基板の一の表面及び前記他の透明基板の一の表面の少なくとも一方の一の表面にイオン交換処理により低粘度層を形成し、これら透明基板を前記低粘度層を接合面にして熱融着により接合することを特徴とするマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法。 - 前記イオン交換処理は、前記低粘度層の形成を、前記少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を当該一のイオンとほぼ同一の組成比になるように他のイオンに交換することにより行うことを特徴とする請求項1記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法。
- 前記イオン交換処理は、前記低粘度層の形成を、前記少なくとも一方の一の表面に含まれる一のイオンの一部を当該一のイオンよりイオン半径が小さい他のイオンに交換することにより行うことを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法。
- 前記イオン交換処理でイオン半径の大きいイオンとイオン交換するときは、イオン交換後に徐冷点以上で徐歪処理することを特徴とする請求項2記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法。
- 前記イオン交換処理は、前記少なくとも一方の一の表面のイオン交換を、当該少なくとも一方の一の表面に係る前記透明基板又は前記他の透明基板の徐冷点より高温の溶融塩中において行うことを特徴とする請求項3又は4記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法。
- 前記透明基板の両面及び前記他の透明基板の両面に前記低粘度層を形成し、
前記形成された低粘度層のうち、前記透明基板の他の表面及び前記他の透明基板の他方の表面に形成されたものを除去することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法。 - 前記透明基板及び前記他の透明基板は同一の材質から成ることを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法。
- 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のマイクロ化学システム用チップ部材の製造方法により製造されたことを特徴とするマイクロ化学システム用チップ部材。
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2002
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