JP2003522837A - 衝撃振動掘削用の長尺部材および鋼 - Google Patents

衝撃振動掘削用の長尺部材および鋼

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、耐腐食疲労性を備えた掘削用マルテンサイト耐食鋼に関する。特に、少なくともネジ部およびフラッシング路を備えた衝撃振動掘削用長尺部材に、ほぼマルテンサイト組織から成る耐食鋼を用いた。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】 発明の背景 本発明は、諸特性、特に耐腐食疲労性を高めた新規な削岩機用マルテンサイト
系耐食鋼に関する。
【０００２】 従来の技術 衝撃振動掘削（percussive rock drilling）の際には、衝撃波が掘削機本体か
ら単一または複数のロッドあるいはチューブを経由して、超硬合金を備えたドリ
ルビットまで伝達される。掘削用鋼すなわちビット、ロッド、チューブ、スリー
ブ、シャンクアダプタの材料は、掘削実行中に腐食環境に曝される。特に、地中
掘削の場合には、フラッシング媒体として水が用いられているし、一般に多湿環
境である。腐食条件が特に厳しいのは、最も応力の高い部位すなわちネジ底およ
びネジ間隙である。曲げと上記の衝撃波による脈動応力の下で、いわゆる腐食疲
労が発生する（図１）。一般にこれが掘削用鋼の破断する原因になる。
【０００３】 通常、掘削用材料としては、低合金肌焼き鋼が用いられている。それは、ネジ
部品の摩耗が寿命を決めるからである。しかし、この問題は掘削機および掘削工
具が高効率化するのに伴って解消し、腐食疲労が寿命を決めるファクターになっ
ってきた。肌焼きすなわち表面硬化を施すと表面に圧縮応力が生成して、それに
よって疲労の進行がある程度遅れる。
【０００４】 米国特許第５,４９６,４２１号に、高強度マルテンサイト・ステンレス鋼が開
示されている。この鋼は、組成が、Ｃ：０．０６mass％以下、Ｃｒ：１２〜１６
mass％、Ｓｉ：１mass％以下、Ｍｎ：２mass％以下、Ｎｉ：０．５〜８mass％、
Ｍｏ：０．１〜２．５mass％、Ｃｕ：０．３〜４mass％、Ｎ：０．０５mass％以
下、残部Ｆｅおよび不可避不純物であり、デルタフェライト相の面積率が１０％
以下である。この鋼は、酸性環境による応力腐食の問題を解決することを意図し
ている。 本発明の目的 本発明の目的の１つは、現在の採鉱を更に高効率化する衝撃振動掘削用の長尺
部材を提供することである。
【０００５】 本発明のもう１つの目的は、長寿命化した衝撃振動掘削用の長尺部材を提供す
ることである。
【０００６】 本発明の更にもう１つの目的は、腐食速度を低減した掘削用鋼を提供すること
である。
【０００７】 本発明の更にもう１つの目的は、腐食疲労感受性を低減した掘削用鋼を提供す
ることである。
【０００８】 上記およびその他の目的は、特許請求の範囲に規定し、添付図面を参照して以
下に説明する長尺部材および掘削用鋼によって達成される。 発明の詳細 本発明の掘削用鋼は、マルテンサイト・マトリックスを備えた耐食合金であり
、Ｃｒの他にＭｏ、Ｗ、Ｃｕおよび／またはＮの添加により耐食性を確保してい
る。マルテンサイト組織（図２）により、掘削用として必要な強度および芯部硬
さが確保される。マルテンサイト量は、＞５０mass％かつ＜１００mass％、望ま
しくは＞７５mass％である。極限引張強さは＞８００ＭＰａ、望ましくは１３０
０〜３０００ＭＰａとする。
【０００９】 Ｃｒ添加により掘削用鋼を耐食合金とすることによって、表面に不働態層が形
成され、腐食を防止するか腐食速度を低減し、それにより、腐食疲労、特に図１
に示したようなネジ底の腐食疲労を防止もしくは低減する。本発明の掘削用鋼の
耐食性を十分に確保するには、Ｃｒ含有量を１１mass％以上とする必要がある。
炭素含有量またはＣ＋Ｎ合計含有量を＞０．０５mass％、望ましくは０．１〜０
．８mass％としなくてはならない。
【００１０】 別の態様としては、Ｃｒ含有量を１１mass％未満、５mass％まで低減し、これ
を補うために望ましくはモリブデン（５mass％以下、望ましくは０．５〜２mass
％）、タングステン（５mass％以下、望ましくは０．５〜２mass％）および／ま
たは銅（２mass％以下、望ましくは０．１〜１mass％）を添加し、その場合、Ｍ
ｏ＋Ｗ＋Ｃｕの合計含有量は＞０．５mass％、望ましくは＞１mass％とする。
【００１１】 更に別の態様としては、合金の組成のＰＲＥ数が＞１０、望ましくは１２〜１
７とする。ここでＰＲＥ数とは、耐孔食性当量（Pitting Resistance Equivalen
t）の意であり、合金の耐孔食性を表す。ＰＲＥは下記の式で定義される。
【００１２】 ＰＲＥ＝Ｃｒ＋３．３（Ｍｏ＋Ｗ）＋１６Ｎ ここで、Ｃｒ、Ｍｏ、Ｗ、Ｎは各成分の含有量（mass％）である。
【００１３】 更に、本発明の鋼は、表面硬さがビッカース硬さＨＶ４００より大、望ましく
はＨＶ５００〜８００であり、これにより、ネジ継手の運動、掘削、周囲（掘削
孔）の岩石との接触等に対する耐摩耗性を更に高める。鋼の表面硬化層の厚さは
０．５〜２．０ｍｍとすることが望ましい。
【００１４】 本発明の掘削用鋼は従来の鋼ロッドの製造および機械加工により製造される。
所望のマルテンサイト組織を得るために、鋼を焼入れまたは加工硬化する。耐摩
耗性を更に高めるために、表面の高周波焼入れあるいは浸炭や窒化等の表面処理
を施すことができる。
【００１５】 本発明は更に、本発明鋼の掘削用鋼としての使用にも関する。
【００１６】 部材全体を本発明鋼で作製する代わりに、一方または両方のネジ端部を本発明
鋼で作製し、他の材料で作製したロッドまたはチューブに溶接あるいは締結する
こともできる。 実施例 いわゆるドリフター掘削に、約４ｍ長さのロッドを用いた。このロッドの重要
部分は図１に示したような雄ネジの底部であり、この部分はフラッシング水と脈
動応力とによって腐食疲労が発生し、しばしば破壊に至る。ドリフターロッドは
下記の３種類の合金で作製した。 試験 C％ Cr％ Ni％ Mo％ W％ Cu％ N％ Fe％ マルテン 番号 サイト量 1〜4 0.18 13.4 0.3 0.02 0.01 0.12 0.012 残部 98％ 5〜8 0.50 14.3 0.15 0.02 0.01 0.06 0.011 残部 89％ 9〜12 0.35 11.9 0.22 1.05 0.01 0.06 0.013 残部 95％ 地下ドリフター掘削用リグで掘削を行い、破壊または摩耗の発生まで掘削を継
続した。寿命を掘削距離（ｍ）により下記に示す。 試験番号 １ ２ ３ ４ ５ ６ 掘削距離(m) 3299 2904 3030 2876 2893 3121 試験番号 ７ ８ ９ １０ １１ １２ 掘削距離(m) 2976 2656 2628 2189 3222 2929 岩石の主成分がグラナイトである同じ掘削現場において、従来の低合金肌焼き
鋼を用いたドリフターロッドの通常の寿命は約２０００ｍであったので、本発明
の掘削用鋼を用いたことにより顕著な寿命向上が認められた。
【００１７】 すなわち、本発明の鋼はいずれもＣ＋Ｎが０．１mass％以上であり、下記組成
から選択した望ましい鋼である。
【００１８】 ● Ｃ＋Ｎ≧０．１mass％であって、Ｃｒ≧１１mass％、または ● Ｃ＋Ｎ≧０．１mass％であって、Ｃｒ≧５mass％、Ｍｏ≦５mass％、Ｗ≦
５mass％、Ｃｕ≦２mass％、Ｍｏ＋Ｗ＋Ｃｕ＞０．５mass％、または ● Ｃ＋Ｎ≧０．１mass％であって、Ｃｒ＋３．３（Ｍｏ＋Ｗ）＋１６Ｎ＞１
０mass％である。
【図面の簡単な説明】
【図１】 図１は、低合金のネジ底に発生した亀裂を倍率２５倍で示す金属組織写真であ
る。
【図２】 図２は、本発明の掘削用鋼のミクロ組織を倍率５００倍で示す金属組織写真で
ある。
【手続補正書】特許協力条約第３４条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成１３年９月１１日（２００１．９．１１）
【手続補正１】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 少なくともネジ部とフラッシング路を備えた衝撃振動掘削用
    長尺部材用鋼において、少なくともネジ部が、耐食性を備え且つほぼマルテンサ
    イト組織から成ることを特徴とする衝撃振動掘削用長尺部材用鋼。
  2. 【請求項２】 請求項１記載の鋼において、マルテンサイト量が＞５０mass
    ％かつ＜１００mass％であり、下記： Ｃ＋Ｎ≧０．１mass％であって、Ｃｒ≧１１mass％、または Ｃ＋Ｎ≧０．１mass％であって、Ｃｒ≧５mass％、Ｍｏ≦５mass％、Ｗ≦５ma
    ss％、Ｃｕ≦２mass％、Ｍｏ＋Ｗ＋Ｃｕ＞０．５mass％、または Ｃ＋Ｎ≧０．１mass％であって、Ｃｒ＋３．３（Ｍｏ＋Ｗ）＋１６Ｎ＞１０ma
    ss％であることを特徴とする鋼。
  3. 【請求項３】 請求項２記載の鋼において、マルテンサイト量が＞７５mass
    ％であることを特徴とする鋼。
  4. 【請求項４】 先行する請求項のいずれかに記載の鋼において、Ｃｒ含有量
    が＞５mass％である。
  5. 【請求項５】 請求項４記載の鋼において、更に、＜５mass％のＭｏ、＜５
    mass％のＷ、および／または、＜２mass％のＣｕを含有することを特徴とする鋼
    。
  6. 【請求項６】 先行する請求項のいずれかに記載の鋼において、鋼組成のＰ
    ＲＥ数が＞１０であり、ＰＲＥは式：ＰＲＥ＝Ｃｒ＋３．３（Ｍｏ＋Ｗ）＋１６
    Ｎで定義され、ここでＣｒ、Ｍｏ、ＷおよびＮは各成分の含有量をmass％で表し
    たものであることを特徴とする鋼。
  7. 【請求項７】 衝撃振動掘削用長尺部材において、少なくともネジ部が、ほ
    ぼマルテンサイト組織から成る耐食鋼で作られていることを特徴とする部材。
  8. 【請求項８】 請求項７記載の部材において、マルテンサイト量が＞５０ma
    ss％かつ＜１００mass％であり、鋼の成分が： Ｃ＋Ｎ≧０．１mass％であって、Ｃｒ≧１１mass％、または Ｃ＋Ｎ≧０．１mass％であって、Ｃｒ≧５mass％、Ｍｏ≦５mass％、Ｗ≦５ma
    ss％、Ｃｕ≦２mass％、Ｍｏ＋Ｗ＋Ｃｕ＞０．５mass％、または Ｃ＋Ｎ≧０．１mass％であって、Ｃｒ＋３．３（Ｍｏ＋Ｗ）＋１６Ｎ＞１０ma
    ss％であることを特徴とする部材。
  9. 【請求項９】 請求項８記載の部材において、マルテンサイト量が＞７５ma
    ss％であることを特徴とする部材。
  10. 【請求項１０】 少なくともネジ部とフラッシング路を備えた衝撃振動掘削
    用長尺部材用鋼の使用において、少なくともネジ部の鋼が、耐食性を備え且つほ
    ぼマルテンサイト組織から成ることを特徴とする衝撃振動掘削用長尺部材用鋼の
    使用。
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