JP2003301326A - 緻密なメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法 - Google Patents

緻密なメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法

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JP2003301326A JP2002103513A JP2002103513A JP2003301326A JP 2003301326 A JP2003301326 A JP 2003301326A JP 2002103513 A JP2002103513 A JP 2002103513A JP 2002103513 A JP2002103513 A JP 2002103513A JP 2003301326 A JP2003301326 A JP 2003301326A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塩類を含まず、力学特性、熱的性質の良好な
メタアラミド繊維を良好な生産性で製造する方法を提供
すること。 【解決手段】 メタフェニレンイソフタルアミド骨格を
主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドをアミド系溶媒
に溶解してなる塩類を含まない重合体溶液を、アミド系
溶媒と水とからなり且つ塩類を含まない凝固浴中に吐出
して多孔質の線状体として凝固せしめ、続いて、これを
アミド系溶媒の水性溶液からなる可塑延伸浴中にて延伸
し、次いで繊維中の含水率および含アミド系用倍率を調
整した後、100〜250℃および270〜400℃で
熱処理して、塩類(無機イオン性物質)が実質的に含ま
れていない緻密かつ熱収縮安定性に優れたメタ型全芳香
族ポリアミド繊維を実質工業的な生産性・経済性で製造
する。このような無機イオン濃度が極限的に低いメタ型
全芳香族ポリアミド繊維は、電子用材料として用いる際
に電気特性を損なわない等の特性を有するので好まし
い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、湿式紡糸によっ
て、力学特性、耐熱性等の良好なメタフェニレンイソフ
タルアミド骨格を主たる成分とするメタ型全芳香族ポリ
アミド繊維を高い生産性で製造する方法およびその方法
によって得られる実質的に塩類を含まない全芳香族ポリ
アミド繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジ
クロリドとから製造される全芳香族ポリアミドが耐熱性
に優れかつ難燃性に優れることは従来周知であり、ま
た、これらの全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に可溶
であって、これらの重合体溶液から乾式紡糸、湿式紡
糸、半乾半湿式紡糸等の方法によって繊維となし得るこ
とも良く知られている。
【0003】かかる全芳香族ポリアミドのうち、ポリメ
タフェニレンイソフタルアミドで代表されるメタ型全芳
香族ポリアミド(以下「メタアラミド」と略称すること
がある)の繊維は、耐熱・難燃性繊維として特に有用な
ものであり、かかるメタアラミド繊維は、現在、主に次
の(イ)(ロ)の2つの方法によって工業的な生産が行
われていると言われており、さらに、これ以外にもメタ
アラミド繊維の製造法として、次の(ハ)〜(ヘ)のよ
うな方法が提案されている。
【0004】(イ)メタフェニレンジアミンとイソフタ
ル酸クロライドとをN,N−ジメチルアセトアミド中で
低温溶液重合させることによってポリメタフェニレンイ
ソフタルアミド溶液を調製し、しかる後、該溶液中に副
生した塩酸を水酸化カルシウムで中和して得た塩化カル
シウムを含む重合体溶液を、乾式紡糸することによりポ
リメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造する方法
(特公昭35−14399号公報、米国特許第3360
595号明細書参照)。
【0005】(ロ)メタフェニレンジアミン塩とイソフ
タル酸クロライドとを含む生成ポリアミドの良溶媒では
ない有機溶剤系(例えばテトラヒドロフラン)と無機の
酸受容剤ならびに可溶性中性塩を含む水溶液系とを接触
させることによってポリメタフェニレンイソフタラルア
ミド重合体の粉末を単離し(特公昭47−10863号
公報参照)、この重合体粉末をアミド系溶媒に再溶解し
た後、無機塩含有水性凝固浴中に湿式紡糸する方法(特
公昭48−17551号公報参照)。
【0006】(ハ)溶液重合法で合成・単離したメタア
ラミドをアミド系溶媒に溶解した、無機塩を含まないか
または僅かな量(2〜3%)の塩化リチウムを含むメタ
アラミド溶液から、湿式成形法によって繊維等の成形物
を製造する方法(特開昭50−52167号公報参
照)。
【0007】(ニ)アミド系溶媒中で溶液重合し、水酸
化カルシウム、酸化カルシウム等で中和して生成した塩
化カルシウムと水とを含むメタアラミド重合体溶液を、
オリフィスから気体中に押し出して、気体中を通過せし
めた後、水性凝固浴に導入し、次いで、塩化カルシウム
等の無機塩水溶液中を通過せしめて糸条物に成形する方
法(特開昭56−31009号公報参照)。
【0008】(ホ)アミド系溶媒中で溶液重合し、水酸
化カルシウム、酸化カルシウム等で中和して生成した塩
化カルシウムと水とを含むメタアラミド重合体溶液を、
オリフィスから、塩化カルシウムを高濃度に含む水性凝
固浴中に紡出せしめて糸条物に成形する方法(特開平8
−074121号公報、特開平10−88421号公報
等参照)。
【0009】(ヘ)メタアラミドの無機塩を含有するア
ミド系溶媒溶液を高温の紡糸筒に吐出し、紡糸筒から出
た直後に低温の水性溶液で冷却して膨潤させ、これを可
塑化塩を含有する水性延伸浴中で延伸することにより、
非常に微細な気孔を多数有する密度1.3g/cm3
満の易染性多孔質繊維を製造する方法(特公昭52−4
3930号公報参照)。
【0010】上記(イ)の方法は、重合体を単離せずに
紡糸用の重合体溶液(紡糸原液)を調製できる利点はあ
るが、沸点の高いアミド系溶媒を用いる乾式紡糸のた
め、製造上のエネルギーコストが高く、しかも紡糸口金
当たりの孔数を増大すると紡糸安定性が急速に低下す
る。また、この重合体溶液を水性凝固浴中に湿式紡糸し
ようとしても失透の多い弱い繊維しか得られないことが
多いため、未だに溶液重合によるメタアラミド重合体溶
液を水性凝固浴を用いて湿式紡糸する方法は、多くの困
難があると考えられており、工業的に実施されていな
い。一方、(ロ)(ハ)の方法は、上述した乾式紡糸の
問題は回避されるが、重合系と紡糸系とで溶媒が異なる
こと、一度単離された重合体を再溶解するための工程を
要すること、再溶解して安定な溶液を得るには特別の配
慮と細心の工程管理が要求されることが問題となる(特
公昭48−4661号公報参照)。また、(ニ)の方法
では、紡糸口金から空気中に紡糸する場合、口金当たり
の孔数を増大すると紡糸安定性が著しく低下するため、
生産性が低く効率的でない。さらに、(ホ)の方法は、
良好な物性の繊維を与えるものの、紡糸速度を上げるこ
とが困難であるため、生産性に問題がある。(ヘ)の方
法は密度が1.3g/cm3よりかなり小さい多孔質繊
維を製造する方法であるが、これは乾式紡糸法の応用的
な技術であり、乾式紡糸法と同様の問題点を有する。
【0011】また、メタアラミド繊維はその耐熱性、絶
縁性から電子材料として用いられているが、電子材料と
して用いるためにはイオン性物質等のコンタミネーショ
ンを極力減らすことが求められており、できれば無機イ
オン性物質を全く含まないことが好ましい。しかし、こ
れまでに知られている製造法では、紡糸過程において、
紡糸原液や凝固浴中に塩化カルシウム、塩化リチウム等
ポリマードープに対しても非常に親和性が高く、溶解し
やすい塩類をかなり高い濃度で含むことが必須であり、
そのために製造した繊維中に多量の塩類を含むことは避
けられない。そして繊維中に残存する塩類を取り除くに
は大規模な水洗工程を設ける必要があり、それでも繊維
の塩類を完全に取り除くことは不可能であった。
【0012】このような問題を改善する手段として、特
開2000−303365号公報には、(ロ)と同方法
で得たメタフェニレンイソフタルアミドを主成分とする
メタ型全芳香族ポリアミドをアミド系溶媒に溶解してな
る、塩類を実質的に含まない重合体溶液を、アミド系溶
媒と水とからなり、かつ塩類を実質的に含まない凝固浴
中に吐出して多孔質の線状体として凝固せしめ、続い
て、これをアミド系溶媒の水性溶液からなる可塑延伸浴
中にて延伸し、水洗後、熱処理して塩類(無機イオン性
物質)が実質的に含まれていない緻密なメタ型全芳香族
ポリアミド繊維を製造する方法が提案されている。
【0013】確かにこの方法は、塩類を実質的に含まな
いメタアラミド繊維を得る方法として優れてはいるもの
の、紡糸口金ホールが500ホールより多くなると十分
な繊維物性が得られず、特に熱収縮安定性に劣るものし
か得られず、工業的生産方法としては有用ではない。紡
糸口金ホールが多くなると十分な繊維物性が得られない
原因としては、紡糸口金ホールが多くなると、ドープ溶
媒であるアミド系溶媒の吐出部付近の濃度が上昇するた
めと考えられ、さらにはドープが凝固しきらずに糸切れ
が発生しやすくなるため工業的な生産も困難となる。
【0014】このような糸切れの問題は、凝固浴のアミ
ド系溶媒濃度(凝固液中のアミド化合物溶媒重量比)を
調整すれば、実質上工業的な生産は可能である。しか
し、この方法に規定されている凝固浴のアミド系溶媒濃
度はまだ低いため、凝固浴を出た繊維の性質はこの方法
が本来目指している性質とは異なり、同様に可塑延伸、
乾燥熱処理を施しても、得られる最終繊維は十分な物性
を備えていない。特に、十分な熱収縮安定性を備えてい
ない。これは、十分な配向および結晶化が行なわれてい
ないためと考えられる。
【0015】このように、繊維物性を満足し、しかも塩
類を全く含まないメタアラミド繊維を、実質工業的生産
レベルで製造し得る方法は、未だ提案されていないのが
実状である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明の主たる目的
は、力学特性、熱的性質の良好な塩類を含まないメタア
ラミド繊維を実質工業生産レベルにて有利に生産し得る
新規な方法を提供することにある。本発明の他の目的
は、実質的に塩類を含有しない緻密かつ熱収縮安定性に
優れるメタアラミド繊維を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記の本発明の主たる目
的は、メタフェニレンイソフタルアミド骨格を主成分と
するメタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解し
ているメタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液を湿式紡糸
することによりメタ型全芳香族ポリアミド繊維を製造す
る方法において、(1)紡糸原液として塩類を実質的に
含まない重合体溶液を用い、これをホール数500以上
の紡糸口金からアミド系溶媒と水とからなりかつ塩類を
実質的に含まない凝固浴中に吐出して、多孔質の線状体
として凝固せしめ、(2)アミド系溶媒の水性溶液から
なる可塑延伸浴中にて延伸し、(3)続いて、水あるい
はアミド系溶媒を含んだ水にて繊維中の含水率および含
アミド系溶媒率が下記式(a)および(b)を満足する
ように調整し、(4)これを温度100〜250℃で熱
処理した後さらに温度270〜400℃で熱処理するこ
とを特徴とする緻密なメタ型全芳香族ポリアミド繊維の
製造方法により達成できることが見いだされた。 (a)3≦N/(P+N)≦0.7 (b)0.4≦W/(P+W)≦0.7 但し、P、N、Wは、それぞれ繊維中の含ポリマー重量
率、含アミド系溶媒重量率、含水重量率を表す。
【0018】また、本発明の別の目的は、上記の方法で
製造された、300℃乾熱収縮率が5%以下であること
を特徴とするメタ型全芳香族ポリアミド繊維により達成
できることが見いだされた。
【0019】すなわち、本発明によれば、メタフェニレ
ンイソフタルアミド骨格を主成分とするメタ型全芳香族
ポリアミドがアミド系溶媒に溶解している重合体溶液を
湿式紡糸することによりメタ型全芳香族ポリアミド繊維
を製造する方法において、(1)紡糸工程では塩類を実
質的に含まない重合体溶液を用い、これをホール数50
0以上の紡糸口金から、アミド系溶媒と水からなり塩類
を実質的に含まない凝固浴中に湿式紡糸して、多孔質の
線状体として凝固せしめ、(2)続いて、これを延伸工
程で、アミド系溶媒の水性溶液からなる可塑延伸浴中に
て延伸し、(3)続いて、水あるいはアミド系溶媒を含
んだ水にて繊維中の含水率および含アミド系溶媒率を調
整するが、その際下記式(a)および(b)を満足する
ように調整することが肝要で、(4)引続いて、この水
およびアミド系溶媒の含有量が調整された繊維を温度1
00〜250℃で熱処理した後さらに温度270〜40
0℃で熱処理する。 (a)0.3≦N/(P+N)≦0.7 (b)0.4≦W/(P+W)≦0.7 但し、P、N、Wは、それぞれ繊維中の含ポリマー重量
率、含アミド系溶媒重量率、含水重量率を表す。
【0020】この際、上記紡糸工程(1)において、凝
固浴をアミド系溶媒と水との組成が重量比にして50/
50〜65/35でありかつ温度40〜70℃の水性凝
固浴となし、上記可塑延伸工程(2)において、アミド
系溶媒と水の組成が重量比で20/80〜70/30で
あり温度が20〜90℃である延伸浴を用い、該浴中で
1.5倍〜10倍の範囲で延伸し、さらに、熱処理工程
(4)において、一旦100〜250℃の温度範囲で
0.8〜3.0倍の延伸倍率において熱処理を施し、さ
らに270〜400℃の温度範囲で0.7倍〜4倍の延
伸倍率において熱処理することにより、特に良好な物性
を有し塩類を実質的に含まない緻密かつ熱収縮安定性に
優れるメタ系アラミド繊維を良好な生産性で製造するこ
とができる。
【0021】そして、このような方法により、300℃
乾熱収縮率が5%以下、繊維の密度が1.2g/cm3
より大(好ましくは1.3g/cm3以上)であり、か
つ繊維中の全無機イオン性物質の含有量が500ppm
以下、カルシウム濃度が100ppm以下、塩化物の濃
度が150ppm以下であるメタ型全芳香族ポリアミド
繊維を容易に製造することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明によれば、メタフェニレン
イソフタルアミド骨格を主成分とするメタ型全芳香族ポ
リアミドを含むアミド系溶媒からなる重合体溶液を湿式
紡糸することにより実質的に塩類を含まない緻密なメタ
型全芳香族ポリアミド繊維を製造する方法であって、以
下に詳述する特定の工程(1)、(2)、(3)および
(4)を順次行うことによって、実質的に塩類を含まな
い緻密かつ熱安定性に優れるメタ型全芳香族ポリアミド
繊維が製造される。
【0023】以下、順を追って、詳細に説明する。本発
明において使用されるメタ型全芳香族ポリアミドは、メ
タフェニレンイソフタルアミドを主骨格とするものであ
り、その製造方法は特に限定されず、例えば、メタ型芳
香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロライドとを原料
とした溶液重合や界面重合等により製造することができ
る。
【0024】かかる原料の一つであるメタ型芳香族ジア
ミンとしては、主として下記式で示されるジアミンが使
用される。
【0025】
【化1】
【0026】かかるメタ型芳香族ジアミンの具体例とし
ては、メタフェニレンジアミン、2,4−トリレンジア
ミン、2,6−トリレンジアミン、2,4−ジアミノク
ロルベンゼン、2,6−ジアミノクロルベンゼン等が挙
げられる。その他のメタ型芳香族ジアミンとしては、
3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジ
アミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0027】本発明では、なかでも、メタフェニレンジ
アミンまたはこれを主体とする混合ジアミンが好まし
い。メタフェニレンジアミンと併用する他の芳香族ジア
ミンとしては、上記のメタ型芳香族ジアミンのほかにパ
ラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノクロルベンゼ
ン、2,5−ジアミノブロムベンゼン、アミノアニシジ
ン等のようなベンゼン誘導体、1,5−ナフチレンジア
ミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,
4’−ジアミノジフェニケトン、ビス(アミノフェニ
ル)フェニルアミン、ビス(パラアミノフェニル)メタ
ン等が用いられる。
【0028】溶解性の良い重合体が望まれる場合には、
このような他の芳香族ジアミンは全体の20モル%程度
まで使用可能であるが、高結晶性の重合体が望まれる場
合には、メタフェニレンジアミンが90モル%以上、特
に95モル%以上含まれることが好ましい。
【0029】一方、本発明で使用する芳香族ジカルボン
酸クロライドは、イソフタル酸クロライドまたはこれを
主体とする芳香族ジカルボン酸クロライドである。イソ
フタル酸クロライドと併用し得る他の芳香族ジカルボン
酸クロライドとしては、テレフタル酸クロライド、1,
4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフ
タレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニル
ジカルボン酸クロライド、5−クロルイソフタル酸クロ
ライド、5−メトキシイソフタル酸クロライド、ビス
(クロロカルボニルフェニル)エーテル等が挙げられ
る。
【0030】本発明の実施に当たって、溶解性の良好な
重合体が望まれる場合は、これらの他の芳香族ジカルボ
ン酸の高率(20モル%程度まで)混合も可能である
が、高結晶性の重合体が望まれる場合は、イソフタル酸
クロライドが90モル%以上、特に95モル%以上含ま
れることが好ましい。
【0031】上記のメタ型全芳香族ポリアミドの中で
も、全ポリマー繰返し単位の90〜100モル%がメタ
フェニレンイソフタルアミド単位である重合体であっ
て、塩類を実質的に含まないものが好適に使用される。
【0032】本発明においては、上記メタ型全芳香族ポ
リアミドがアミド系溶媒に溶解しており、かつ塩類(無
機イオン性物質)を実質的に含まない重合体溶液を、後
述する工程に供給する。かかる重合体溶液は、上記溶液
重合等で得られたメタ型全芳香族ポリアミドを含むアミ
ド系溶媒溶液から塩類を除去したものを用いてもよい
し、上記溶液重合、界面重合等で得られたメタ型全芳香
族ポリアミドを含む溶液から該メタ型全芳香族ポリアミ
ドを単離し、これをアミド系溶媒に溶解したものを用い
てもよい。ここで「塩類を実質的に含まない」とは、重
合体溶液中の塩類の合計量が0.1重量%未満であるこ
とを意味し、ごく少量の塩類が含有することは許容され
るが、その量は少なければ少ない方がよく0〜0.01
重量%であることが好ましい。
【0033】ここで用いられるアミド系溶媒としては、
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセ
トアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミ
ダゾリジノン等を例示することができるが、特に、溶液
重合から湿式紡糸工程に至るまでの重合体溶液の安定性
等から、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0034】本発明において紡糸原液に用いる重合体溶
液は、水を含んでいてもよい。このような水は必要に応
じて添加することもあるが、溶液調製プロセスで必然的
に生成するものであってもかまわない。その濃度として
は、溶液が安定に存在する範囲であるならばいかなる濃
度でもかまわないが、例えばポリマー重量に対して0〜
60重量%の範囲で添加、含有されるのが通常好まし
く、特に15重量%以下であることが好ましい。これを
超える濃度では、ポリマー溶液の安定性が損なわれ、ポ
リマーの析出、ゲル化によって紡糸性が著しく損なわれ
ることがある。
【0035】本発明において、重合体溶液を凝固浴中に
吐出する場合、紡糸口金としては500ホール以上の多
ホールのものを用いる。実用上ホール数の上限は約50
000ホールであり、好ましくは1000〜30000
ホール、特に3000〜10000ホールの紡糸口金が
使用される。
【0036】本発明における凝固浴は、塩類を実質的に
含まず、アミド系溶媒と水(H2O)との2成分から実
質的になる水溶液で構成される。この凝固浴組成におい
て、アミド系溶媒としてはメタアラミドを溶解し、水と
良好に混和するものであれば好適に用いることができる
が、特に、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセ
トアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリ
ジノン等を好適に用いることができる。溶媒の回収等を
考慮すれば、紡糸原液中のアミド系溶媒と同じ種類のも
のを使用するのが好ましい。
【0037】アミド系溶媒と水との最適な混合比は、重
合体溶液の条件によっても若干変化するが、凝固浴液中
のアミド系溶媒の濃度が40〜70重量%、特に50〜
65重量%、さらには55〜62重量%の範囲であるこ
とが好ましい。アミド系溶媒の濃度がこの範囲を下回る
条件では、糸中に非常に大きなボイドが生じやすくな
り、その後の糸切れの原因となりやすい。一方、この範
囲を上回る条件では、凝固が進まず、糸条物同士の融着
が起こりやすくなる。
【0038】凝固浴の温度は凝固液組成と密接な関係が
あるが、一般的には高温である方が、生成糸条物中にフ
ィンガーとよばれる粗大な気泡上の空孔ができ難くなる
ので好ましい。しかし凝固液濃度が高い場合には、あま
り高温にすると糸条物同士の融着が激しくなるので、凝
固浴の好適な温度は40〜70℃であり、より好ましく
は45〜65℃の範囲である。
【0039】凝固液は、実質的にアミド系溶媒と水だけ
で構成されることが好ましいが、これ以外に塩類が少量
含まれていても差し支えない。特に、塩化カルシウム、
水酸化カルシウム等の塩類は、微量残存しているポリマ
ー溶液中から抽出されてくることがあるが、これは多孔
凝固に対して何らこれを阻害することはなく、例えば凝
固液に対し10重量%以下、特に1重量%以下の低濃度
であれば塩類が含まれていても問題はない。したがっ
て、塩類の好適濃度は凝固液に対し0〜10重量%の範
囲である。凝固浴中での糸条物の浸漬時間は0.1〜3
0秒が好ましい。浸漬時間が短かすぎると糸条物の形成
が不十分となり断糸が発生するおそれがある。
【0040】本発明における可塑延伸浴としてはアミド
系溶媒の水性溶液が用いられる。このアミド系溶媒とし
てはメタ型全芳香族ポリアミドを膨潤させ、水と良好に
混和するものであれば好適に用いることができるが、特
にN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミ
ド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン
等は好適に用いることができる。またさらに好適には、
凝固浴に用いたものと同じ溶媒を用いることが好まし
い。凝固浴と同種の溶媒を用いれば、回収工程が簡略化
され、経済的に有益である。
【0041】すなわち、重合体溶液、凝固浴および可塑
延伸浴中のアミド系溶媒はすべて同種のものを使用する
のが好ましく、かかる溶媒として、N−メチル−2−ピ
ロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミ
ドを単独で使用するかまたは2種以上を併用することが
好都合である。
【0042】可塑延伸浴の組成と温度とはそれぞれ密接
な関係にあるが、該水溶液中のアミド系溶媒の濃度20
〜70重量%、温度20〜90℃の範囲が好適に用いら
れる。この範囲より低い領域では可塑化が十分に進ま
ず、十分な延伸倍率をとることが困難であり、これを上
回る範囲では糸の表面が溶解して融着しやすく良好な紡
糸が困難になることが多い。
【0043】本発明の可塑延伸においては、通常1.5
〜10倍、好ましくは2〜10倍の倍率で延伸するが、
特に2.1〜6.0倍の倍率で延伸することがより好ま
しい。このように高倍率に延伸をかけることにより、メ
タアラミド繊維の強度、弾性率が向上し良好な物性を示
すようになると同時に、多孔構造の孔が引きつぶされ、
可塑延伸後に行われる熱処理による緻密化が良好に進行
するようになる。但し、極端に高倍率に延伸した場合に
は、工程の調子が悪化して良好な製糸が困難になる。
【0044】上記可塑延伸浴の工程を経た浴上がりの糸
条物は、次に、水あるいはアミド系溶媒を含んだ水に
て、繊維中の含水率および含アミド系溶媒率が下記式
(a)および(b)を満足するように調整することが肝
要である。 (a)0.3≦N/(P+N)≦0.7、好ましくは
0.35≦N/(P+N)≦0.65 (b)0.4≦W/(P+W)≦0.7、好ましくは
0.45≦W/(P+W)≦0.65 但し、P、N、Wは、それぞれ繊維中の含ポリマー重量
率、含アミド系溶媒重量率、含水重量率を表す。
【0045】含水率および含アミド系溶媒率を上記範囲
に調整することにより、引続いて施される100〜25
0℃の温度範囲での熱処理において、該熱処理時のポリ
マーの流動性が向上する。そして、引続きアミド系溶媒
が蒸発して繊維から脱却する際に、配向および結晶化が
促進されると考えられる。また、適量の水とアミド系溶
媒とが共存することにより、これらが共沸してアミド系
溶媒の蒸発を促進するものと考えられる。
【0046】なお、含水率および含アミド系溶媒率を上
記範囲に調整する方法としては、可塑延伸後に10〜7
0℃の水浴あるいは10〜40℃のアミド系溶媒/水の
混合浴等を通過させ、浸漬長を糸掛けターン数により調
整するなどして容易に行なうことができる。
【0047】このようにして、繊維中の含水率および含
アミド化合物溶媒率が調整された糸条は、加熱ローラ、
加熱板、熱風等によって一旦100〜250℃、好まし
くは100〜200℃の温度範囲にて熱処理、好ましく
は乾熱処理が施される。この100〜250℃の温度範
囲での熱処理工程は、多孔質の線状体のポリマーの配向
および結晶化を促進せしめて、繊維の熱収縮安定性を発
現させるために重要な工程である。熱処理温度が100
℃未満であると、水やアミド系溶媒の蒸発が著しく遅く
なるため、生産性が低下するばかりでなく、結晶化の促
進も妨げられるので好ましくない。一方250℃を超え
ると、アミド系溶媒の分解が一気に起こり結晶化促進の
効果が十分に現れない懸念があり好ましくない。また、
繊維の着色も起こり好ましくない。本熱処理において
は、0.8〜3.0倍、好ましくは1.0〜2.0倍の
延伸(1倍以下は収縮熱処理)下で、特に1.0〜1.
5倍の延伸下で熱処理することが好ましい。
【0048】なお、先述のN/(P+N)が0.3未満
であると、この熱処理時のポリマー流動性向上への効果
が発現しなく、良好な繊維物性が得られないので好まし
くない。一方0.7を超えると、アミド化合物溶媒の蒸
発に時間がかかり生産性およびエネルギー的に不利であ
り、また繊維の着色も起こり好ましくない。
【0049】また、W/(P+W)が0.4未満である
と、熱処理時に繊維同士が融着して繊維物性の低下を招
く懸念があるので好ましくない。一方0.7を超える
と、水の蒸発に時間がかかり生産性およびエネルギー的
に不利であり好ましくない。
【0050】続いて施される温度270〜400℃下の
熱処理は、その処理温度と繊維密度とには密接な関係が
あり、好ましくは300〜370℃の温度で処理する。
400℃を超える高温の処理では糸が激しく劣化し、着
色し、場合によっては断糸する場合がある。一方270
℃を下回る温度では十分に緻密化することができず、所
望の繊維物性を発現することが困難となる。なお、ここ
でいう処理温度は熱板、加熱ローラ等の加熱手段の設定
温度をいい、乾熱処理が特に好ましい。
【0051】このときの延伸倍率は、弾性率、強度の発
現に密接な関係を有し、必要に応じて任意の倍率をとる
ことができるが、通常、0.7〜4.0倍、特に1.0
〜3.0倍の範囲に設定することで、良好な熱延伸性
と、強度、弾性率の発現が得られる。なお、ここで延伸
倍率0.7倍とは糸条が熱処理によって処理前の原長の
30%収縮することを意味し、本発明の熱処理は処理時
に一定範囲内の制限収縮熱処理であっても差し支えない
ことを意味する。熱処理の延伸倍率は上述した可塑延伸
の倍率を考慮して選定するのが好ましく、糸条物の緻密
化と物性の発現、安定した製糸性の実現の観点から、可
塑延伸および熱延伸を含めた全延伸倍率が3.0〜12
倍となるようにすること、さらには2.5〜6倍となる
ように設定すること、がより好ましい。本発明によるメ
タアラミド繊維は、延伸性がよく、可塑延伸や熱延伸時
に断糸や毛羽の発生をともなうことなく円滑に高倍率ま
で延伸することができる。
【0052】さらに、このようにして製造された繊維
は、必要に応じて捲縮加工が施され、適当な繊維長に切
断され、紡績その他の次工程に提供される。
【0053】以上のごとき本発明によるメタ型全芳香族
ポリアミド(メタアラミド)繊維は、通常のメタアラミ
ド繊維と同様の緻密な構造を有し、300℃乾熱収縮率
が5%以下であり、かつ繊維の密度が1.2g/cm3
より大で、好ましくは1.3g/cm3以上で、良好な
繊維物性を備え、かつ繊維中の塩類の含有量が極めて小
さく、繊維中の塩類の量が無機イオン性物質の全含有量
にして500ppm以下、好ましくは300ppm以下
である。そして、好ましい態様では、繊維物性や耐熱
性、後加工性への悪影響が懸念される繊維中のカルシウ
ム濃度が0〜100ppmであり、また電気絶縁性等の
電気特性に悪影響を及ぼす繊維中の塩化物の濃度が0〜
150ppmであるという利点を有する。
【0054】以上のごとき本発明によるメタ型全芳香族
ポリアミド(メタアラミド)繊維は、その耐熱性、耐炎
性、力学特性を生かした各種の用途に応用することがで
き、特にイオン性物質の混入を嫌う用途には好適に用い
ることができる。例えば、単独あるいは他の繊維と組み
合わせ、織編物にして消防服、防護服等の耐熱耐炎衣
料、耐炎性の寝具、インテリア材料として有用であり、
特に不織布としてフィルター等各種工業材料、あるいは
合成紙、複合材料の原料として有効に使用することがで
きるほか、イオン性物質の含有量がきわめて少ないた
め、織編物、不織布、合成紙等として電気絶縁材料、電
子機器用部品、プリント配線基板等の分野で特に有効で
ある。
【0055】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに具体的
に説明する。なお、実施例及び比較例中、還元粘度
(I.V.)は、重合体溶液から芳香族ポリアミドポリ
マーを単離して乾燥した後、濃硫酸中、ポリマー濃度1
00mg/100ml硫酸で30℃において測定した値
である。また、「部」及び「%」は特に断らない限りす
べて重量に基づくものであり、量比は特に断らない限り
重量比を示す。さらに、紡糸に用いる重合体溶液(紡糸
原液)における重合体濃度(PN濃度)は、全重量部に
対する重合体の重量%、すなわち{重合体/(重合体+
溶媒+その他)}100(%)である。
【0056】また、凝固により得られた多孔質の線状体
の密度は、ASTM D2130にしたがって測定した
繊維径と繊度から算出した。
【0057】得られた繊維中の金属濃度は、アルカリ金
属については原子吸光法を用いて、その他の金属イオン
濃度はICPを用いて定量を行なった。また、塩化物の
濃度はドーマン微量電量滴定法により定量した。得られ
た繊維の300℃乾熱収縮率は、以下の方法により測定
した。すなわち、3300dtex(3000デニー
ル)のトウに98cN(100g)の荷重を吊るし、3
0cm離れた箇所に印をつける。荷重を除去後、トウを
300℃雰囲気下に15分間置いた後の印間長Lを測定
する。(30−L)/×100の値を300℃乾熱収縮
率(%)とした。
【0058】100〜250℃熱処理前の繊維中のポリ
マー重量率P、アミド系溶媒重量率N、水分重量率W
は、以下の方法により測定した。100〜250℃熱処
理前の繊維を遠心分離機(回転数5000rpm)に1
0分かけ、このときの繊維重量M1を測定する。この繊
維を重量M2gのメタノール中で4時間煮沸し、繊維中
のアミド化合物溶媒および水を抽出する。抽出後繊維を
105℃雰囲気下で乾燥させ、乾燥後の繊維重量を測定
し、これをP1とする。抽出液中のアミド化合物溶媒重
量濃度C(%)を、ガスクロマトグラフにより求める。
これらより、N1=C/100×(M1+M2−P
1)、W1=M1−P1−N1を算出し、ついで、次式
よりP、N、Wを算出する。 P=P1/(P1+N1+W1)×100 N=N1/(P1+N1+W1)×100 W=W1/(P1+N1+W1)×100
【0059】[実施例1]特公昭47−10863号公
報記載の方法に準じた界面重合法により製造したI.
V.=1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉
末21.5重量部を、−10℃に冷却したN−メチル−
2−ピロリドン78.5重量部中に懸濁させ、スラリー
状にした後、60℃まで昇温して溶解させ、透明なポリ
マー溶液Aを得た。なお、上記ポリマー粉末の無機イオ
ン濃度は、Na:730ppm、K:8.8ppm、C
a:5ppm、Fe:2.3ppmであった。また、上
記ポリマー溶液のポリマー濃度は21.5%であった。
【0060】ポリマー溶液Aを紡糸原液として、孔径
0.07mm、孔数5000の紡糸口金より浴温度50
℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴は、水/
NMP=40/60の組成の浴を用い、浸漬長(有効凝
固浴長)40cmにて糸速7m/分で通過させた後、い
ったん空気中に引き出した。
【0061】引続き、可塑延伸浴中にて3.6倍の延伸
倍率で延伸を行った。この時の可塑延伸浴は、水/NM
P=40/60の組成の浴を用い、温度20℃であっ
た。延伸後、20℃の水/NMP=70/30浴に通し
(浸漬長1.8m)、さらに20℃の水浴に通した(浸
漬長1.8m)。このときN/(P+N)=0.38、
W/(P+W)=0.59であった。その後、表面温度
120℃ローラーに巻き回して乾熱処理(定長)し、引
続き表面温度160℃ローラーに巻き回して乾熱処理
(定長)した。さらに表面温度330℃の熱板にて定長
で乾熱処理を施し、ポリメタフェニレンイソフタルアミ
ド繊維を得た。
【0062】得られた繊維の力学的特性は、繊度2.1
1dtex(1.9de)、密度1.35g/cm3
引張強度3.65cN/dtex(4.12g/d
e)、伸度31.5%、ヤング率74.9cN/dte
x(84.6g/de)であり、良好な数値を示した。
また、300℃乾熱収縮率は4.1%であり、優れた熱
収縮安定性を示した。さらに繊維中のイオン濃度は、表
1に示すとおりであり、きわめて低い含量を示した。
【0063】
【表1】
【0064】[比較例1]ポリマー溶液Aを紡糸原液と
して、孔径0.07mm、孔数5000の紡糸口金より
浴温度50℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固
浴は、水/NMP=40/60の組成の浴を用い、浸漬
長(有効凝固浴長)40cmにて糸速7m/分で通過さ
せた後、いったん空気中に引き出した。
【0065】引続き、可塑延伸浴中にて3.6倍の延伸
倍率で延伸を行った。この時の可塑延伸浴は、水/NM
P=40/60の組成の浴を用い、温度20℃であっ
た。延伸に続いて、水洗長を7.2mとして20℃水浴
にて水洗した。このときのN/(P+N)=0.25、
W/(P+W)=0.60であった。その後、表面温度
120℃ローラーに巻き回して乾熱処理(定長)し、引
続き表面温度160℃ローラーに巻き回して乾熱処理
(定長)した。さらに表面温度330℃の熱板にて定長
で乾熱処理を施し、ポリメタフェニレンイソフタルアミ
ド繊維を得た。
【0066】得られた繊維の力学的特性は、繊度2.2
8dtex(2.05de)、密度1.32g/c
3、引張強度3.38cN/dtex(3.82g/
de)、伸度33.2%、ヤング率57.3cN/dt
ex(64.8g/de)であった。しかし、300℃
乾熱収縮率は16.2%であり、熱収縮安定性に劣るも
のであった。
【0067】
【発明の効果】本発明方法によれば、力学特性、耐熱性
等の良好で実質的に塩類を含まない緻密なメタ型全芳香
族ポリアミド繊維(特にポリメタフェニレンイソフタル
アミド系繊維)を実質工業的な生産性で製造することが
できる。このような塩類を実質的に含まないすなわち無
機イオン性物質の濃度が極限的に低いメタ型全芳香族ポ
リアミド繊維は、耐熱性、難燃性、電気絶縁性等のメタ
型全芳香族ポリアミド繊維が本来もつ性質に加えて、電
気特性等に影響する実質的な量の無機イオンを含まない
ため、電子用材料として用いる際に電気特性を損なわな
い等の特性を有するので有効に使用することができる。
【0068】このように、本発明によるメタ型全芳香族
ポリアミド繊維は、その耐熱性、耐炎性、力学特性を生
かした各種の用途に応用することができ、特に無機イオ
ン性物質の混入を嫌う用途には特に好適に用いることが
できる。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メタフェニレンイソフタルアミド骨格を
    主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒
    に溶解しているメタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液を
    湿式紡糸することによりメタ型全芳香族ポリアミド繊維
    を製造する方法において、(1)紡糸原液として塩類を
    実質的に含まない重合体溶液を用い、これをホール数5
    00以上の紡糸口金からアミド系溶媒と水とからなりか
    つ塩類を実質的に含まない凝固浴中に吐出して、多孔質
    の線状体として凝固せしめ、(2)アミド系溶媒の水性
    溶液からなる可塑延伸浴中にて延伸し、(3)続いて、
    水あるいはアミド系溶媒を含んだ水にて繊維中の含水率
    および含アミド系溶媒率が下記式(a)および(b)を
    満足するように調整し、(4)これを温度100〜25
    0℃で熱処理した後さらに温度270〜400℃で熱処
    理することを特徴とする緻密なメタ型全芳香族ポリアミ
    ド繊維の製造方法。 (a)0.3≦N/(P+N)≦0.7 (b)0.4≦W/(P+W)≦0.7 但し、P、N、Wは、それぞれ繊維中の含ポリマー重量
    率、含アミド系溶媒重量率、含水重量率を表す。
  2. 【請求項2】 上記工程(1)において、凝固浴におけ
    るアミド系溶媒と水の組成が重量比で50/50〜65
    /35であり、凝固浴温度が40〜70℃である請求項
    1記載のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記工程(2)において、アミド系溶媒
    と水の組成が重量比で20/80〜70/30であり温
    度が20〜90℃である可塑延伸浴中で1.5倍〜10
    倍の延伸倍率で延伸する請求項1または請求項2記載の
    メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】 上記工程(4)において、温度100〜
    250℃の熱処理下で0.8〜3.0倍に延伸し、さら
    に温度270〜400℃の熱処理下で0.7〜4倍に延
    伸する請求項1〜請求項3のいずれかに記載のメタ型全
    芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】 重合体溶液、凝固浴および可塑延伸浴に
    含まれるアミド系溶媒がN−メチル−2−ピロリドン、
    ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドから
    なる群から選ばれる少なくとも1種で構成される請求項
    1〜請求項4のいずれかに記載のメタ型全芳香族ポリア
    ミド繊維の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の
    方法で製造されたメタ型全芳香族ポリアミド繊維であっ
    て、300℃乾熱収縮率が5%以下であることを特徴と
    するメタ型全芳香族ポリアミド繊維。
  7. 【請求項7】 繊維の密度が1.2g/cm3より大で
    あり、かつ繊維中の全無機イオン性物質の含有量が50
    0ppm以下である請求項6記載のメタ型全芳香族ポリ
    アミド繊維。
  8. 【請求項8】 繊維中のカルシウム濃度が100ppm
    以下である請求項6または請求項7記載のメタ型全芳香
    族ポリアミド繊維。
  9. 【請求項9】 繊維中の塩化物の濃度が150ppm以
    下である請求項6〜請求項8のいずれかに記載のメタ型
    全芳香族ポリアミド繊維。
  10. 【請求項10】 繊維の密度が1.3g/cm3以上で
    あり、かつ繊維中の全無機イオン性物質の含有量が50
    0ppm以下、カルシウム濃度が100ppm以下、塩
    化物の濃度が150ppm以下である請求項7記載のメ
    タ型全芳香族ポリアミド繊維。
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