JP2003279578A - 癌の診断支援方法及びそのキット - Google Patents

癌の診断支援方法及びそのキット

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JP2003279578A
JP2003279578A JP2002084873A JP2002084873A JP2003279578A JP 2003279578 A JP2003279578 A JP 2003279578A JP 2002084873 A JP2002084873 A JP 2002084873A JP 2002084873 A JP2002084873 A JP 2002084873A JP 2003279578 A JP2003279578 A JP 2003279578A
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cancer
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urine
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JP2002084873A
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English (en)
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Yuji Heike
勇司 平家
Narimitsu Takashima
成光 高嶋
Yoshimitsu Sumiyoshi
義光 住吉
Takashi Arikuni
尚 有國
Mieko Shiwa
美重子 志和
Rumi Wakatabe
るみ 若田部
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NATIONAL SHIKOKU CANCER CENTER
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NAT SHIKOKU CANCER CT
NATIONAL SHIKOKU CANCER CENTER
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 この発明は、膀胱癌を含む特定の癌の診断を
支援するために、尿中の特定の腫瘍マーカーを検索する
方法及びそのキットを提供することを目的とする。 【解決手段】 本発明は、プロテインチップを用いて尿
路系腫瘍患者の尿中に特異的に見られるたんぱく質(分
子量8030)の検出を行う方法であって、サンプル尿
中の分子量約8300の蛋白質のマーカーを検出するス
テップと、前記マーカー又は前記マーカーの量を可能性
のある癌と対応付けるステップと、を備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、癌(特に膀胱
癌)の診断を支援する方法であって尿中の腫瘍マーカー
を検索する方法及びそのキットに関する。
【0002】
【従来の技術】特定の腫瘍組織から血流などへ分泌され
る物質で,血清などで検出された場合,特定の腫瘍の存
在を示す腫瘍マーカーが知られている。腫瘍マーカーは
腫瘍組織ごとに固有の物質であることが多いので、腫瘍
マーカーを検出して癌の診断に役立てることが行われて
いる。
【0003】膀胱癌・腎臓癌など尿路系に関する腫瘍に
おいては、尿中に何らかの腫瘍関連物質が産生・分泌さ
れていることが期待される。今までも2次元電気泳動や
カラムクロマトグラフィーを用いて、尿中の腫瘍特異的
たんぱく質を検出する試みが行われているが、臨床的に
マーカーとして有用な物質を確定するには至っていな
い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、膀胱癌を
含む特定の癌の診断を支援するために、尿中の特定の腫
瘍マーカーを検索する方法及びそのキットを提供するこ
とを目的とする。具体的には、本発明は、プロテインチ
ップを用いて尿路系腫瘍患者の尿中に特異的に見られる
たんぱく質の検出を行うことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、癌の診断を支
援する方法であって、患者のサンプル尿を用意するステ
ップと、前記サンプル尿中の分子量約7500〜850
0の蛋白質のマーカーを検出するステップと、前記マー
カー又は前記マーカーの量を可能性のある癌と対応付け
るステップと、を備えるものである。
【0006】前記マーカーは、例えば、分子量8030
の尿中蛋白を含む。この8030という値は測定誤差
(分子量+/-0.2%)の関係で所定の幅をもつ。例えば、
8030とは8016+/−16(8000〜803
2)を意味する。本発明における分子量の数値(803
0以外の数値を含む)はこのような範囲をもつ。
【0007】前記マーカーは、例えば、ユビキチンを含
む。
【0008】前記マーカーは、例えば、SaposinBを含
む。
【0009】分子量8030の尿中蛋白が検出されたと
き、膀胱癌と対応付けるようにしてもよい。
【0010】分子量8030の尿中蛋白が検出されたと
き、腎癌と一部浸潤している前立腺がんを含む尿路系の
癌と対応付けるようにしてもよい。
【0011】前記マーカーを検出するために、例えばレ
ーザー脱着/イオン化質量分析法(Laser Desorption I
onization法)、好ましくは、SELDI TOF/MS(Surface
Enhanced Laser Desorption Ionization Time-of-fligh
t Mass Spectrometry)を用いる。
【0012】レーザー脱着/イオン化質量分析法(Lase
r Desorption Ionization法)は、吸着剤を含む基板を
用意するステップと、前記吸着剤にサンプルを接触させ
るステップと、前記基板からマーカーを脱離させイオン
化するとともに、質量分析計で脱離/イオン化されたマ
ーカーを検出するステップとを備える。SELDI TOF-MS
は、分析対象物に対して親和性のある表面を有する基板
を用意するステップと、前記親和性のある表面にサンプ
ルを添加するステップと、前記親和性のある表面に結合
していない物質を洗浄除去するステップと、前記親和性
のある表面にエネルギー吸収分子を添加するステップ
と、前記親和性のある表面に結合している物質にレーザ
ーを照射して脱離/イオン化して飛行時間を計測するこ
とにより分子量を測定するステップを含む。SELDI TOF
/MSの特徴は、チップ表面にタンパク質に対する親和性
を持たせておき、特定のタンパク質を吸着する点であ
る。吸着しなかったタンパク質やその他の不純物は洗浄
により取り除かれる。この後レーザーで脱離/イオン化
し飛行時間を測定して質量分析をすることで、タンパク
質の発現プロファイリング(どんな質量のタンパク質が
発現しているかを一度に見ること)ができる。これに対
してMALDIは表面に親和性がない。
【0013】本発明は、上記方法に用いるキットであっ
て、分子量約7500〜8500のいずれかの蛋白質に
対して親和性のある表面を含む基板と、サンプルを前記
基板に接触させ、前記基板により保持されたマーカーを
検出することによりマーカーを検出する指示書とを備え
るものである。
【0014】
【発明の実施の形態】CEAをはじめとする血清腫瘍マー
カーは、診断・治療後の腫瘍モニタリング等において臨
床的に有用である。一方、膀胱癌や腎癌は尿路系におい
て発生するため、尿中に腫瘍関連物質が排出され、それ
が腫瘍マーカーになる可能性があるため以前より精力的
に研究が行われてきた。しかし、臨床的な有用性が確立
されているものは現時点ではない。
【0015】本発明の実施の形態では、プロテインチッ
プシステムを用いて尿中腫瘍マーカーの検索・同定を行
う。プロテインチップシステムは、蛋白質の発現、相互
作用、翻訳後修飾などの機能解析や、目的蛋白質の精製
・同定などを効率的に行うことを目的とするシステムで
ある。プロテインチップシステムは、蛋白質解析に適し
た様々な化学的性質を表面に持たせたプロテインチップ
と、測定に用いられるプロテインチップリーダ(飛行時
間型質量分析計(Time-of-Flight Mass Spectrometry:
TOF-MS))及び、測定・解析に使用するソフトウエアを
インストールしたコンピュータから構成される。血清や
尿、培養液、細胞破砕液など多くの蛋白質を含むサンプ
ルの中から、プロテインチップに対するアフィニティー
を利用して目的蛋白質を捕捉し、その質量数を測定す
る。ラベルやタグを使わず、チップ上で簡便に蛋白質の
解析ができ、少量のサンプルから短時間に結果を得るこ
とができる。
【0016】プロテインチップの種類について説明す
る。プロテインチップには大きく分けて2つの種類があ
る。主に発現解析や精製に用いるケミカルチップと、特
異的な結合(相互作用)を見るためのバイオロジカルチ
ップである。ケミカルチップは、疎水性、陽イオン交
換、陰イオン交換、金属イオン、順相のものを含む。バ
イオロジカルチップは、活性化型チップ、抗体、レセプ
ター、DNAを含む。バイオロジカルチップには、カル
ボニルジイミダゾールまたはエポキシの活性基を表面に
持つ2つのタイプがあり、抗体やレセプターなどをチッ
プ上に簡単に固定化して研究目的にあわせたチップを作
製することができる。抗体やレセプターはアミド結合で
チップ上に固定化され、相互作用解析のための解析用プ
ローブとして利用することができる。
【0017】図1に飛行時間型質量分析計の動作原理の
説明図を示す。図1(a)は飛行時間型質量分析計の概
略構造を示し、図1(b)はセンサ6により得られる測
定結果を示す。図1(a)において、1はレーザー発振
器、2はレーザー光を特定のチップに照射するための光
学系(ミラー)、3は複数のプロテインチップを載せた
板、3aは特定のプロテインチップでレーザー照射の対
象となるもの、4は装置が収納される真空容器、5は高
圧電源、6はセンサである。a〜eはレーザー照射によ
りイオン化され、高圧電源5によりセンサ6に向かって
加速された、プロテインチップ3a上の複数種類の蛋白
質の飛行の様子を示す。蛋白質a〜eがレーザー照射に
より同時に飛行を開始するが、その質量の違いにより飛
行速度はそれぞれ異なる。図1(a)において質量の最
も小さな蛋白質eが最も遠く(センサ6に最も近く)、
質量の最も大きな蛋白質aが最も近くで飛行している。
【0018】次に、プロテインチップシステムを用いた
解析の流れに説明する。
【0019】手順1:サンプルの添加 サンプル中の蛋白・薬物をチップ表面に化学的或いは生
物学的に吸着させる。具体的には、1〜数百μlのサン
プルをプロテインチップ板3上の直径2mmのスポット
(プロテインチップ3a)に添加する。従来の蛋白質解
析に比べて非常に少量で解析を行うことができるため、
サンプルを大量に調製する必要はない。また、測定のた
めに蛋白質を前もって高純度に精製する必要もない。
【0020】手順2:洗浄 インキュベート後、水やバッファーでチップ表面を洗浄
し、チップ表面にアフィニティーの無い物質を除去す
る。これにより、チップ表面に結合していない蛋白質と
ともに、目的蛋白質の測定を妨げる塩や界面活性剤等を
取り除くことができる。非特異的な蛋白や薬剤の結合、
さらにはバッファー中の不純物を洗浄によって除き“no
ise”を低下させる。
【0021】手順3:エネルギー吸収分子(EAM)添
加 プロテインチップ3aに目的蛋白質の測定に必要なエネ
ルギー吸収分子(EAM)を加える。その後乾燥させ
る。
【0022】手順4:測定 手順1〜手順3で用意したプロテインチップ3aを図1
(a)の飛行時間型質量分析計にセットする。プロテイ
ンチップ3aにレーザー発振器1によりUVパルスレー
ザー光を照射する。このエネルギーを受けてプロテイン
チップ3a上の蛋白質はイオン化される。イオン化した
蛋白質(符号a〜e)は一定の電圧で加速され、真空容
器4の対極にあるイオン検知器6に向かって飛行する。
このとき、イオン検知器6に到達するまでの時間は軽い
分子ほど早く、重い分子ほど遅いので、飛行時間を計測
することによって、物質の質量数を求めることができ
る。その例を図1(b)に示す。1サンプルの測定に要
する時間は約1分であり、他の方法に比べて非常に短い
時間で測定を行うことができる。
【0023】手順5:蛋白質発現解析 図1のシステムによればプロテインチップ上に捕捉され
た多数の蛋白質を同時に測定することが可能なため、蛋
白質の発現解析を行うことができる。異なるサンプル間
の蛋白質発現を直接比較することにより、あるサンプル
で特異的に発現している蛋白質を知ることができる。測
定に必要な時間が非常に短いため、特に数多くのサンプ
ルの比較が必要な疾病マーカーの探索に適する。
【0024】本発明の実施の形態において上述のプロテ
インチップシステムを用いて、膀胱癌患者尿、膀胱癌以
外の尿路腫瘍患者尿、その多の癌患者尿、尿蛋白陽性者
尿及び健常者尿の、蛋白のプロファイリングを行った。
外来通院治療・入院中の泌尿生殖器系癌患者(膀胱癌1
7名、腎臓癌患者3名、尿管癌患者1名、前立腺癌患者
7名、ネフローゼ等他尿路系疾患患者6名)、ならびに
対象群として健常医療従事者5名、検診受診者8名、他
臓器がん患者20名を対象とした(全員の同意を得てい
る)。対象者について検尿カップを用いて採尿を行い、
そこより15mlを採取し、遠心にて尿中細胞を除いた
後、測定まで−130度にて保存した。なお、目的蛋白
の精製は、蛋白陽性尿を確認した後、別途プロトコール
にて再度同意を得た後に、1〜3Lの蓄尿を行いそれを
用いて行った。
【0025】実験条件(プロトコル)は次の通りであ
る。まず、サイファージェン・バイオシステムズ社のプ
ロテインチップシステムを用いて、膀胱癌患者の尿中蛋
白のスクリーニング、及び絞込みを行った。チップは2
価の金属陽イオンを固定する表面を有するIMAC3チップ
(サイファージェン・バイオシテムズ社)を使用し、仕
様書に従ってバイオプロセッサーを用いて銅イオンを固
定した。上述の方法で採取した膀胱癌患者の尿サンプル
各5μlをのPBS45μlで10倍に希釈し、チップの各
スポットに50μl添加して20分撹拌した。各スポッ
トをPBS200μlで3回洗浄した後、チップをバイオプ
ロセッサーから外し、純水でリンスしてから乾燥させ、
飽和シナピン酸0.5μlをマトリックスとして各スポ
ットに2回ずつ添加した。乾燥後、該チップを、プロテ
インチップリーダーにより測定した。
【0026】図2はその結果を示す。図2中の符号Aは
分子量0〜200000Daの範囲のグラフであり、この
グラフAに基づき0〜20000Daに絞込み、符号Bのグ
ラフを得た。グラフBで特徴的な部分に注目して範囲を
6000〜10000に絞込み、符号Cのグラフを得
た。同様の手順を繰り返し、7800〜8600の範囲
の符号Dのグラフを得た。グラフDで上から順に、No.3
において8288、No.5において7932と828
7、No.12において7934と8292、No.18にお
いて7932と8289、No.19において7930と
8287、No.20において8285と8395にピー
クがある。以上より、蛋白質のプロファイリングは分子
量7500Daから8500Da、好ましくは8000Daか
ら8500Daで行えば良いことがわかった。
【0027】次に、図2の結果に基づき、膀胱癌に係る
腫瘍マーカーを探索するために、サンプル尿中の分子量
約7500〜8500の範囲で蛋白質のプロファイリン
グを行った。
【0028】測定はプロテインチップシステムを用いて
行った。表面に弱陰イオンの官能基を有し、正電荷を持
つ分子の測定に適するWCXチップ(サイファージェン・
バイオシステムズ社)を使用し、仕様書に従ってバイオ
プロセッサーを用いて表面を活性化した。サンプルはIM
ACを用いた場合と同様に調製し、各スポットに添加して
から20分撹拌後、各スポットをbinding buffer(50
mM酢酸ナトリウム)で3回洗浄し、チップをバイオプ
ロセッサーから外した。各スポットを純水でリンスして
から乾燥させ、IMACチップの場合と同様にシナピン酸を
マトリックスとして添加し、プロテインチップリーダー
により測定した。
【0029】図11から図14に結果を示す。シグナル
を色の濃淡に変換して、電気泳動のゲルのイメージで表
わしてある。膀胱癌患者尿には分子量約8000〜85
00の小分子蛋白質が検出され、さらに共通して801
6のところにバンドが見られたが(図13)、尿路系以
外の癌患者尿(図11)及び健常者尿(図12)にはこ
れらのバンドは見られなかった。一方、ネフローゼ等の
蛋白陽性尿においても、膀胱癌患者と同一分子量の蛋白
が検出された(図14)。
【0030】次に、分子量8016の蛋白質を精製、同
定した。尿サンプルに10倍量のエタノールを加え、−
20℃で一晩放置し沈殿を生じさせた。沈殿物をpH7
で溶出してカルボキシメチルセファロースカラムで分離
した後、さらにポリアクリルアミド電気泳動により分離
して、目的のスポットを切り出し、エドマン分解により
アミノ酸配列を決定した。
【0031】図8及び図9に同定結果を示す。分子量8
016の蛋白質の少なくとも一部は、ユビキチンのN末
端から71アミノ酸の配列と同一のペプチドであること
が確認された(図8)。さらに分子量8016の蛋白質
の少なくとも一部は、Saposin Bの195番目のアミノ
酸から261番目のアミノ酸の配列と同一のペプチドで
あることが確認された(図9)。
【0032】以下、参考図面について簡単に説明する。
図3はグラフの振幅を色の濃淡に変換して、ゲルのイメ
ージで表したもの(バーチャル)である(図11〜14
と同じものである)。分子量8030の部分を四角で囲
ってある。膀胱癌患者に特異的であり、尿路系疾患患者
に共通に見られる尿中蛋白は分子量8030であること
がわかる。
【0033】図4は分子量8030の蛋白の生成条件
(chip、buffer)に関する検討のためのグラフである。
bufferがPBSでChipがIMAC3-Cu(Cuイオン固定化Chip)
のときと、bufferが50mMのアンモニウムアセテート又
は50mMのナトリウムアセテートでChipがWCX2(弱陽イ
オン交換Chip)のときピークが生じることがわかる。な
お、図4において8001、8013、8018にピー
クがある。
【0034】図5は所定のWCX2(弱陽イオン交換Chip)
におけるpH条件の検討のための図である。pH7と8
において分子量8030のピークが得られることがわか
る。
【0035】図6は尿素を用いた蛋白濃縮およびアルブ
ミンの除去の説明図である。上段から下段にかけて、そ
れぞれ尿(Urine)、アセトン(Aceton ptn.)、EtOH p
tn.、 Millipore YM3のグラフを示す。EtOH ptn.のとき
に最も大きな分子量8030のピークが得られることが
わかる。なお、図6において7958にピークがある。
【0036】分子量8030の蛋白質について検討す
る。そのためにサンプルを処理する。その精製法の概略
は次の通りである。尿のサンプルを、+10vol.EtOH、−
20℃、O/NでEtOH 沈殿(precipitation)し、pH4.5−
pH9で溶出してCM-sepharose columnを得て、SDS-PAGEに
よりアミノ酸配列(Amino acid sequence)得る。
【0037】図7はCM-sepharoseからのpH勾配による溶
出(NP1chip)を示す。CM-pH7.5とCM-pH8において80
30のピークが見られる。なお、図7において8022
と8023にピークがある。
【0038】以上のことから、図8あるいは図9の配列
をもつ蛋白質あるいはその断片を検出し、その有無に基
づいて特定の癌(例えば膀胱癌、腎癌と一部浸潤してい
る前立腺がんを含む尿路系の癌)の診断や診断支援に利
用することができることがわかる。
【0039】図10は抗ユビキチン抗体による吸収実験
結果を示す。膀胱癌患者における分子量8030の蛋白
は、抗ユビキチン抗体でも吸収されない。したがって、
当該蛋白はSaposinBと推定される。なお、図10におい
て、8017、8022、8020にピークがある。
【0040】以上の結果をまとめると次のとおりであ
る。 (1)プロテインチップシステムSELDI TOF/MS(Surfa
ce Enhanced Laser Desorption Ionization Time-of-fl
ight Mass Spectrometry)は尿中に含まれる蛋白のプロ
ファイリングに適した装置/方法である。 (2)膀胱癌患者とコントロール間でプロファイリング
の違いの概要を見た結果、分子量7500〜8500程
度に顕著な違いが見られることが確認された(図2)。
したがって、サンプル尿中から腫瘍マーカーを検出する
ためには、分子量約7500〜8500の範囲において
蛋白質のピークを調べるべきである。 (3)これらのピークが明確に見られるように、プロテ
インチップシステムの測定条件を最適化し(図4、
5)、その条件で測定したところ各疾患について図3の
ような結果が得られ、分子量8030程度のピークがマ
ーカーの候補とされた。 (4)このピークを精製する条件を最適化し(図6、
7)、その条件で精製、同定したところ、このピークは
ユビキチンの一部とおよびSaposin Bの一部とを含むこ
とが確認された(図8、9)。8030Daの蛋白は、ユ
ビキチンのN末端から71アミノ酸までと、SaposinBの
195番目のアミノ酸から261番目のアミノ酸の混合
物であった。 (5)膀胱癌患者のサンプルで抗ユビキチンを用いて解
析したところ、ユビキチンではなくSaposin Bであるこ
とが確認された(図10)。 (6)分子量8030の尿中蛋白が検出されたとき、膀
胱癌と対応付けることができる。
【0041】以上より結論として i)何らかの手法で、分子量8030程度のタンパク質
の有無または量を解析することにより、特定の疾患(例
えば膀胱癌、腎癌と一部浸潤している前立腺がんを含む
尿路系の癌を含む)の診断/診断支援ができる可能性が
ある。 ii)分子量8030程度のタンパク質は図8、9のよう
なアミノ酸配列を有するユビキチンまたはSaposin Bの
一部である。何らかの手法で、このタンパク質のフラグ
メントをマーカーとして検出し、特定の疾患(例えば膀
胱癌、腎癌と一部浸潤している前立腺がんを含む尿路系
の癌を含む)の診断/診断支援ができる可能性がある。
【0042】なお、以上の説明における8030という
値は測定装置の精度(分子量+/-0.2%のmass accuracy)
の関係で当然ながら所定の幅をもつ。さらに詳しい検討
の結果、以上の説明における8030と呼んでいたピー
クの分子量は、正確には8016.6であることがわか
った。すなわち、8030とは8016+/−16(8
000〜8032)を意味する。
【0043】分子量8016のピークを示したゲルイメ
ージ図(図3と同様のもの)を図11〜図14に示す。
これらの図のデータはIMAC3-Cuのデータに基づくもので
ある。
【0044】図11は尿路系以外のがん患者の尿による
結果である。No.50-No.58が乳がん、No.59,No.60が肺が
ん患者である。8016にバンドは見られない。
【0045】図12はコントロールを示す(No.10、No.
72はコントロール。No.25は検診を受けに来た人)。
【0046】図13は、膀胱がん患者尿による結果であ
る(No.3、No.12、No.19)。いずれも8016にバンド
が見られる。なお、尿の場合はアルブミンをはじめとす
る尿蛋白や、白血球、白血球由来の蛋白が出てくること
を考慮すれば、前蛋白の発現量から換算した特定の蛋白
のピークについて、同じ人の経時的変化を追うようにす
べきと思われる。もともとベースが違う人の蛋白量を比
較するのは難しいかもしれない。
【0047】図14は、他の尿路系疾患の結果である。
No.22は腎癌であるが尿蛋白陽性、No.23は尿蛋白陽性
(ネフローゼ)、No.24は前立腺がんで尿蛋白陽性、No.
26は前立腺がん、No.27は前立腺肥大症、No.30は前立腺
がん、No.31は検診、No.43は腎のう胞の患者の尿に基づ
く結果である。これらから分かるように、尿路系の癌
(腎癌と一部浸潤している前立腺がん等)も強いバンド
が見られる。尿蛋白陽性のときに見られるのは、どちら
かといえばユビキチンと思われる。
【0048】本発明は、以上の実施の形態に限定される
ことなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内
で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内
に包含されるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 発明の実施の形態に係る飛行時間型質量分析
計の動作原理の説明図である。
【図2】 発明の実施の形態に係る膀胱癌患者の尿中蛋
白の絞込みの様子を示す図である。
【図3】 発明の実施の形態に係るゲルイメージ図であ
る。
【図4】 発明の実施の形態に係る分子量8030の蛋
白の生成条件(chip、buffer)に関する検討のためのグ
ラフである(参考図)。
【図5】 発明の実施の形態に係るWCX2(弱陽イオン交
換Chip)におけるpH条件の検討のための図である(参
考図)。
【図6】 発明の実施の形態に係る尿素を用いた蛋白濃
縮およびアルブミンの除去の説明図である(参考図)。
【図7】 発明の実施の形態に係るCM-sepharoseからの
pH勾配による溶出(NP1chip)を示す(参考図)。
【図8】 発明の実施の形態に係る分子量8030の蛋
白の同定結果を示す。
【図9】 発明の実施の形態に係る分子量8030の蛋
白の同定結果を示す。
【図10】 発明の実施の形態に係る分子量8030の
蛋白の抗ユビキチン抗体による吸収実験結果を示す。
【図11】 発明の実施の形態に係る尿路系以外の癌患
者のゲルイメージ図である。
【図12】 発明の実施の形態に係るコントロールのゲ
ルイメージ図である。
【図13】 発明の実施の形態に係る膀胱癌患者のゲル
イメージ図である。
【図14】 発明の実施の形態に係るその他尿路系疾患
のゲルイメージ図である。
【符号の説明】
1 レーザー発振器 2 光学系 3 プロテインチップ板 3a プロテインチップ 4 真空容器 5 高圧電源 6 センサ(イオン検知器)
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 37/00 102 G01N 37/00 102 (72)発明者 住吉 義光 愛媛県松山市堀之内13 国立病院四国がん センター内 (72)発明者 有國 尚 神奈川県鎌倉市梶原200 住商バイオサイ エンス株式会社鎌倉研究所内 (72)発明者 志和 美重子 神奈川県鎌倉市梶原200 サイファージェ ン・バイオシステムズ株式会社鎌倉研究所 内 (72)発明者 若田部 るみ 神奈川県鎌倉市梶原200 サイファージェ ン・バイオシステムズ株式会社鎌倉研究所 内 Fターム(参考) 2G045 AA25 AA26 BA01 BA11 BB50 CB03 DA36 FB02 FB05 JA01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 癌の診断を支援する方法であって、 患者のサンプル尿を用意するステップと、 前記サンプル尿中の分子量約7500〜8500の蛋白
    質のマーカーを検出するステップと、 前記マーカー又は前記マーカーの量を可能性のある癌と
    対応付けるステップと、を備える癌の診断支援方法。
  2. 【請求項2】 前記マーカーは、分子量8030の尿中
    蛋白を含むことを特徴とする請求項1記載の癌の診断支
    援方法。
  3. 【請求項3】 前記マーカーは、少なくともユビキチン
    の一部を含むことを特徴とする請求項1記載の癌の診断
    支援方法。
  4. 【請求項4】 前記マーカーは、少なくともSaposinBの
    一部を含むことを特徴とする請求項1記載の癌の診断支
    援方法。
  5. 【請求項5】 分子量8030の尿中蛋白が検出された
    とき、膀胱癌と対応付けることを特徴とする請求項1乃
    至請求項4いずれかに記載の癌の診断支援方法。
  6. 【請求項6】 分子量8030の尿中蛋白が検出された
    とき、腎癌と一部浸潤している前立腺がんを含む尿路系
    の癌と対応付けることを特徴とする請求項1乃至請求項
    4いずれかに記載の癌の診断支援方法。
  7. 【請求項7】 前記マーカーを検出するためにレーザー
    脱着/イオン化質量分析法(Laser Desorption Ionizat
    ion法)が用いられることを特徴とする請求項1記載の
    癌の診断支援方法。
  8. 【請求項8】 レーザー脱着/イオン化質量分析法(La
    ser Desorption Ionization法)は、 分析対象物に対して親和性のある表面を有する基板を用
    意するステップと、前記親和性のある表面にサンプルを
    添加するステップと、 前記親和性のある表面に結合していない物質を洗浄除去
    するステップと、記親和性のある表面にエネルギー吸収
    分子を添加するステップと、 前記親和性のある表面に結合している物質にレーザーを
    照射して脱離/イオン化して飛行時間を計測することに
    より分子量を測定するステップとを備えることを特徴と
    する請求項7記載の癌の診断支援方法。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至請求項7いずれかに記載の
    方法に用いるキットであって、 分子量約7500〜8500のいずれかの蛋白質に対し
    て親和性のある表面を含む基板と、サンプルを前記基板
    に接触させ、前記基板により保持されたマーカーを検出
    することによりマーカーを検出する指示書とを備えるキ
    ット。
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