JP2003275097A - 断熱調理鍋 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 加熱終了後に沸騰した熱い鍋を移動する必要
がなく、保温効果の優れた断熱調理鍋を提供する。 【解決手段】 内側容器部４の底部６を電磁誘導で発熱
する材料で構成し、外側容器部５の底部８を電磁誘導で
発熱しない材料で構成した。内側容器部４と外側容器部
５とで囲まれた空間を真空に保持した。電磁誘導加熱器
21を用いることによって内側容器部４のみを加熱するこ
とができ、加熱された内側容器部４から外に熱が発散す
ることがなく断熱性に優れる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、煮炊きに用いられ
る断熱調理鍋に関するものである。

【０００２】

【発明が解決しようとする課題】従来、煮炊きにおい
て、加熱時よりも冷却時の方が食材に味がしみ込む度合
いが大きいことが知られている。しかし、一般の鍋を用
いた場合には、加熱終了後の冷却速度が速すぎるため、
十分に食材に味がしみ込まないという問題があった。

【０００３】加熱終了後の冷却速度を遅くすることがで
きる構造を有するものとしては、特開昭６２−１０２７
１３号公報に開示されている省エネルギー型調理用鍋が
知られている。これは、内鍋部と外壁部とを各々の上端
で連結し、外壁部の下端開口縁を内鍋部の底部より下方
に同一水平面上に構成したものであり、加熱終了後断熱
性の高い平板上に置くことで外壁部の開口端が塞がれ、
内鍋部と外壁部との間の空隙部分に蓄積されている熱エ
ネルギーにより鍋本体内が長時間に亘って高温に保たれ
るものである。

【０００４】また、加熱用の内鍋と保温用の真空断熱容
器とから構成され、加熱終了後の内鍋を真空断熱外鍋に
挿入することで保温することができるものが知られてい
る。

【０００５】しかしながら、これら従来の構造では、加
熱終了後、沸騰した熱い鍋を移動しなければならず、危
険が伴っていた。また、沸騰した時点で鍋を移動しなけ
ればならないので、調理開始時から移動終了時まで手が
離せず、気がかりで他の家事に専念できないなどの不具
合があった。

【０００６】また、内鍋を真空断熱外鍋に挿入する構造
では、内鍋を室温と同じ温度の真空断熱外鍋に挿入する
ため、挿入時に温度が降下してしまうという欠点があっ
た。さらに、１重構造の内鍋と２重構造の真空断熱外鍋
を必要とするので、製造コストが高くつき、また、鍋の
個数が多いので、掃除や保管など取扱いが面倒であっ
た。

【０００７】本発明は、このような問題点を解決しよう
とするもので、加熱終了後に沸騰した熱い鍋を移動する
必要がなく、保温効果の優れた断熱調理鍋を提供するこ
とを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】請求項１の発明の断熱調
理鍋では、内側容器部を電磁誘導で発熱する材料で構成
し、外側容器部を電磁誘導で発熱しない材料で構成した
ので、内側容器部のみを電磁誘導加熱することができ
る。そして、内側容器部と外側容器部とで囲まれた空間
が気密保持されるので、加熱された内側容器部から外に
熱が発散することがなく、断熱性に優れる。したがっ
て、加熱終了後に沸騰した熱い鍋を移動する必要がな
く、保温効果の優れた断熱調理鍋を提供することができ
る。

【０００９】また、請求項２の断熱調理鍋では、二重構
造の蓋体を備えたので、内側容器部の上方から外に熱が
発散することがなく、断熱性に優れる。

【００１０】さらに、請求項３の断熱調理鍋では、底部
の間隔を狭く構成するので、電磁誘導加熱器と内側容器
部の底部との距離を短くでき、電磁誘導加熱器に無理を
かけることなく効率よく加熱可能となる。また、外側容
器部を皿状とし、外側容器部を内側容器部と同じ高さ又
は内側容器部よりも高く構成したので、外側容器部の側
部が過熱されることがなく安全である。

【００１１】

【発明の実施形態】以下、本発明の断熱調理鍋の第１実
施例について図１を参照しながら説明する。

【００１２】１は断熱調理鍋であり、鍋本体２と蓋体３
から構成されている。さらに、鍋本体２は、内側容器部
４と外側容器部５とからなる。内側容器部４は、円盤状
の底部６の周縁に円柱状の側部７が垂直方向に一体に連
なった有底の容器状の形状をしており、底部６及び側部
７は電磁誘導で発熱する材料たるステンレス等の磁性体
材料から一体に構成されている。一方、外側容器部５
も、円盤状の底部８の周縁に円柱状の側部９が垂直方向
に一体に連なった有底の容器状の形状をしており、底部
８は電磁誘導で発熱しない材料たるセラミックス又は耐
熱ガラスなどの非磁性体材料で構成され、ステンレス等
で構成された側部９と気密を保持した状態で固着されて
いる。

【００１３】また、外側容器部５は内側容器部４の外側
に略一定の間隔をおいて内側容器部４と一体に形成され
ている。すなわち、外側容器部５の側部９は内側容器部
４の側部７の外側に位置するとともに、外側容器部５の
底部８は内側容器部４の底部６の下側に位置しており、
側部９と側部７との間及び底部８と底部６との間は略一
定の間隔がおかれている。また、内側容器部４の側部７
の上端と外側容器部５の側部９の上端は、気密を保持し
た状態で連結されている。さらに、内側容器部４と外側
容器部５とで囲まれた空間は空気が吸引されて真空とな
っている。

【００１４】また、内側容器部４の側部７の上端付近は
直径がやや大きくなっており、外側に向かって凹部10が
全周にわたって形成され、ここに蓋体３が載置されるよ
うになっている。また、外側容器部５の側部９の上部外
側には、とって11が２箇所に設けられている。

【００１５】蓋体３は、内部が中空の二重壁構造となっ
ている。また、中空の内部は略一定の厚みを有してお
り、空気が吸引されて真空になっている。そして、鍋本
体２に形成された凹部10に隙間なく載置されるように構
成されている。

【００１６】21は断熱調理鍋１を加熱するための電磁誘
導加熱器である。電磁誘導加熱器21の内部には誘導加熱
コイル22が設けられ、断熱調理鍋１が載置される部分に
は、耐熱ガラス等の耐熱性を有した材質で構成された天
板23が設けられている。

【００１７】つぎに、作用について説明する。鍋本体２
に食材，水，調味料等の被調理物を適宜入れ、蓋体３を
鍋本体２に載置した後、電磁誘導加熱器21上に載せる。
ここで、電磁誘導加熱器21には、メニューによって加熱
時間がセットされており一定時間経過後停止する構造と
なっているもの、沸騰を使用者が確認して運転を停止す
る構造のもの等があるが、どのような構造のものでもよ
い。

【００１８】電磁誘導加熱器21の運転スイッチ（図示せ
ず）を入れると、誘導加熱コイル22に通電されて誘導過
熱コイル22の周囲に磁力線が発生する。この磁力線は電
磁誘導加熱器21の上部に位置する天板23，外側容器部５
の底部８を通過して内側容器部４の底部６に到達し、内
側容器部４の底部６に渦電流を発生させて発熱させる。
このとき、天板23及び外側容器部５の底部８は非磁性体
材料で構成されているため発熱しない。

【００１９】内側容器部４の底部６で発生した熱は被調
理物に伝わり、やがて被調理物は沸騰する。このとき、
内側容器部４の底部６は加熱され、側部７は被調理物に
接しているので比較的温度が高いが、外側容器部５の底
部８及び側部９は、内側容器部４と外側容器部５とで囲
まれた空間が真空となっていることによる断熱効果によ
り、比較的温度が低くなっている。したがって、外側容
器部５が熱くならず、万一接触しても火傷の心配もなく
安全である。そして、電磁誘導加熱器21により加熱され
る部分が被調理物に接触する内側容器部４の底部６のみ
であり、外部に熱の放散が少ない。実際に放散される熱
量を調べたところ、従来の通常の鍋が放散する熱量の５
０％程度であり、非常に効率的であり省エネの効果があ
る。

【００２０】この被調理物が沸騰した状態で自動的又は
人為的に誘導加熱コイル22への通電を停止すると、内側
容器部４と外側容器部５とで囲まれた空間が真空となっ
ていることによる断熱効果、及び内部が真空に保持され
た二重壁構造の蓋体３による断熱効果により、被調理物
は断熱保存された状態で維持される。このため、被調理
物は比較的緩やかに温度低下を開始する。そして、ゆっ
くり温度低下する間に、被調理物中の食材に熱が通り味
が浸透する。実際に被調理物が沸騰状態となり、加熱を
停止してから３時間後の被調理物の温度を調べたとこ
ろ、従来の通常の鍋では３５℃であったのに対し、本実
施例の断熱調理鍋１では７０℃であった。したがって、
半日程度の間は再加熱する必要がなく、少々冷めても少
し再加熱するだけでよく省エネの効果がある。また、被
調理物が冷え切った状態、又は冷めた状態で食事をする
に適さない温度となったときは、再度電磁誘導加熱器21
の運転スイッチを入れることにより前記同様に加熱され
る。

【００２１】なお、被調理物が沸騰したところで加熱を
停止するため、被調理物が焦げ付くなどの調理の失敗が
ない上に、不要の電力を消費することもなく省エネの効
果がある。また、被調理物が沸騰した後に鍋を移動する
必要がないので、調理開始後は手放しでよく他の家事に
専念でき時間を有効に活用することができる。そして、
鍋を移動しないので温度低下の虞がなく、再加熱時には
電磁誘導加熱器21のスイッチを入れるだけでよい。さら
に、鍋の個数が１個であるので、掃除や保管など取扱い
が簡単である。

【００２２】前記実施例の構成によれば、内側容器部４
の底部６を電磁誘導で発熱する材料たるステンレス等の
磁性体材料で構成し、外側容器部５の底部８を電磁誘導
で発熱しない材料たるセラミックス又は耐熱ガラスなど
の非磁性体材料で構成したので、内側容器部４のみを電
磁誘導加熱することができる。そして、内側容器部４と
外側容器部５とで囲まれた空間が気密保持されるので、
加熱された内側容器部４から外に熱が発散することがな
く、断熱性に優れる。したがって、加熱終了後に沸騰し
た熱い鍋を移動する必要がなく、保温効果の優れた断熱
調理鍋を提供することができる。

【００２３】また、内部が気密保持された二重壁構造の
蓋体３を備えたので、内側容器部４の上方から外に熱が
発散することがなく、断熱性に優れる。

【００２４】つぎに、本発明の断熱調理鍋の第２実施例
について図２を参照しながら説明する。なお、第１実施
例と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明を
省略する。

【００２５】第２実施例は、外側容器部５は、薄い皿状
の底部８の上端に円柱状の側部９が垂直方向に一体に連
なった有底の容器状の形状をしており、底部８は電磁誘
導で発熱しない材料たるセラミックス又は耐熱ガラスな
どの非磁性体材料で構成され、ステンレス等で構成され
た側部９と気密を保持した状態で固着されているもので
ある。また、底部８と底部６との間隔は、側部９と側部
７との間隔よりも狭く構成されている。そして、外側容
器部５の側部９と固着される皿状の底部８の上端は、内
側容器部４の底部６の底面よりも高く構成されている。
その他の構成は第１実施例と同様である。

【００２６】この場合、加熱時に鍋本体２が誘導加熱コ
イル22の中心に位置せず端にかかっていた場合、内側容
器部４の底部６と同様に外側容器部５の側部９も誘導加
熱作用を受けるが、外側容器部５の側部９は誘導加熱コ
イル22から遠い位置にあるため、ほとんど加熱されな
い。

【００２７】前記実施例の構成によれば、内側容器部４
の底部６と外側容器部５の底部８との間隔を狭く構成す
るので、電磁誘導加熱器21と内側容器部４の底部６との
距離を短くでき、電磁誘導加熱器21に無理をかけること
なく効率よく加熱可能となる。また、外側容器部５の底
部８を薄い皿状とし、外側容器部５の底部８の上端を内
側容器部４の底面と同じ高さ又は内側容器部４の底面よ
りも高く構成したので、鍋本体２が誘導加熱コイル22の
中心にセットされていなくても、外側容器部５の側部９
が過熱されることがなく安全である。

【００２８】なお、本発明は、前記実施例に限定される
ものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、
前記実施例では、内側容器部４と外側容器部５とで囲ま
れた空間を真空としたが、これを大気圧より低い圧力と
してもよい。この場合、断熱効果は圧力に応じる。

【００２９】また、前記実施例では、内側容器部４はス
テンレス等の磁性体材料としたが、電磁誘導で発熱する
材料であればどのようなものでもよい。例えば、土鍋な
どの非磁性体材料の底面に銀，銅，アルミニウムなどの
導電性材料の薄膜を蒸着又は貼付したものでも電磁誘導
で発熱するので、このような材料で内側容器部４を構成
してもよい。また、非磁性材料で内側容器部４を構成
し、内側容器部４の底面に磁性体材料を設けるようにし
てもよい。

【００３０】

【発明の効果】請求項１の発明によれば、内側容器部の
みを電磁誘導加熱することができる。そして、加熱され
た内側容器部から外に熱が発散することがなく、断熱性
に優れる。したがって、加熱終了後に沸騰した熱い鍋を
移動する必要がなく、保温効果の優れた断熱調理鍋を提
供することができる。

【００３１】また、請求項２の発明によれば、内側容器
部の上方から外に熱が発散することがなく、断熱性に優
れる。

【００３２】さらに、請求項３の発明によれば、電磁誘
導加熱器と内側容器部の底部との距離を短くでき、電磁
誘導加熱器に無理をかけることなく効率よく加熱可能と
なる。また、外側容器部の側部が過熱されることがなく
安全である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の断熱調理鍋の実施例を示す断面図であ
る。

【図２】本発明の断熱調理鍋の別の実施例を示す断面図
である。

【符号の説明】

１ 断熱調理鍋 ３ 蓋体 ４ 内側容器部 ５ 外側容器部 ６ 底部 ８ 底部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内側容器部と、外側に形成された外側容
   器部とからなり、前記内側容器部と前記外側容器部とで
   囲まれた空間が気密保持されるとともに、前記内側容器
   部を電磁誘導で発熱する材料で構成し、前記外側容器部
   を電磁誘導で発熱しない材料で構成したことを特徴とす
   る断熱調理鍋。
2. 【請求項２】 二重構造の蓋体を備えたことを特徴とす
   る請求項１に記載の断熱調理鍋。
3. 【請求項３】 底部の間隔を狭く構成するとともに、前
   記外側容器部を皿状とし、前記外側容器部を前記内側容
   器部と同じ高さ又は前記内側容器部よりも高く構成した
   ことを特徴とする請求項１又は２に記載の断熱調理鍋。