JP2003147493A - 耐摩耗性及び耐食性に優れた筬羽又はヘルド用ステンレス鋼材 - Google Patents
耐摩耗性及び耐食性に優れた筬羽又はヘルド用ステンレス鋼材Info
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Abstract
用ステンレス鋼材を提供する。 【解決手段】 成分組成(以下%は重量ベースである)
が、C:0.03〜0.30%、Si:3.0%以下、
Mn:3.0%以下、Ni:5.0〜20.0%、C
r:15.0超え〜30.0%、N:0.30%以下を
含有し、かつ残部がFe及び不可避的不純物からなる耐
摩耗性及び耐食性に優れた筬羽又はヘルド用ステンレス
鋼材であって、前記ステンレス鋼材の金属組織中に析出
した炭化物および炭窒化物の占める面積率が3〜30%
の範囲である。前記ステンレス鋼材は、成分組成とし
て、さらにMoを4.0%以下含有する。また、前記ス
テンレス鋼材は、成分組成として、さらにV:1.0%
以下、Ti:1.0%以下、Nb:1.0%以下、Z
r:1.0%以下のうちから選ばれる少なくとも1種以
上を含有する。
Description
性が要求されるステンレス鋼材に関する。詳細には、耐
摩耗性及び耐食性を要求される材料、例えば、筬羽、ヘ
ルド等のような機料品用途に適した高強度ステンレス鋼
材に関する。
動作について説明する。図7中の筬羽、ヘルドは、それ
ぞれ経糸、緯糸をガイドするために用いられるものであ
る。緯糸は、ヘルドによって支えられて交互に上下運動
し、等間隔に配列された筬羽の間を通過する。一方、経
糸は、緯糸が交互に上下運動する毎に、例えばエアージ
ェットやウオータージェットの動力により駆動され、緯
糸の間を通過する。次に、経糸の通過後に筬羽が前後に
動いて、緯糸、経糸が織物へと織られる。
ので、上記のように緯糸、経糸と接触している筬羽、ヘ
ルドは一定期間使用すると摩耗してくる。筬羽、ヘルド
が摩耗すると、摩耗部が糸切れや毛羽立ちの原因となる
ため、その都度交換が必要となる。そのため、筬羽、ヘ
ルドの糸に対する耐摩耗性は、筬羽、ヘルドの寿命を決
定する最も重要な品質の一つと言える。
ェット方式の織機では常時湿潤環境にある。また、エア
ージェット方式の織機の場合でも、染料などにより腐食
環境にさらされる場合が多い。そのため、筬羽、ヘルド
に錆が発生した場合には、摩耗を受けた場合と同様、錆
発生箇所が糸切れや毛羽立ちの原因となる。従って、筬
羽、ヘルドについては、耐食性も要求される。
れる機料品(筬羽、ヘルド)には、従来より、SUS3
01ハード材に代表される高強度オーステナイト系ステ
ンレス鋼が用いられてきた。
301オーステナイト系ステンレス鋼は、耐摩耗性及び
耐食性が要求される機料品(筬羽、ヘルド)用には耐摩
耗性が不十分である。そのため、マトリックスの硬質
化、摩耗を受ける表層部の硬質化等により耐摩耗性を向
上する対応策がとられてきた。
を冷間圧延して加工硬化する方法、例えば高圧延率で冷
間圧延を行う等の方法が用いられてきた。工業的には、
圧延率を70〜85%程度として冷間圧延法が実施され
ている。ところが、この方法では、これ以上に硬質化す
るには限界があり、圧延率を高めると一般に延性が低下
するため、圧延破断の危険が高まるといった問題があっ
た。
法には、セラミックコーティング方法等がある。ところ
が、このような表面処理方法は、製造コストが高くなる
といった問題点があった。
では、耐摩耗性に優れたマルテンサイトとフェライトの
2相ステンレス鋼を提案しているが、本合金系は炭化物
が析出していないため、十分な耐摩耗性を有していると
は言えなかった。
化物を含有するマルテンサイト系ステンレス鋼が使用さ
れる場合もある。ところが、このステンレス鋼はSUS
301オーステナイト系ステンレス鋼に比べ耐摩耗性が
良好であるが、強度を確保するため焼き入れ、焼戻し処
理を行うので製造コストが高くなるということがある。
また、耐食性に劣るため使用中に錆が発生するので、摩
耗していなくても交換せざるを得ない場合もあった。
食性が要求される材料、例えば、筬羽、ヘルド等のよう
な機料品用途に適し、耐摩耗性及び耐食性に優れた材料
を提供することにある。
に、本発明の第1の態様は、下記の成分組成(以下%は
重量ベースである)を備えたことを特徴とする耐摩耗性
及び耐食性に優れたステンレス鋼材である。 (a) C:0.03〜0.30%、Si:3.0%以
下、Mn:3.0%以下、Ni:5.0〜20.0%、
Cr:15.0超え〜30.0%、N:0.30%以下
を含有し、かつ残部がFe及び不可避的不純物からなる
ステンレス鋼材であって、(b) 前記ステンレス鋼材
の金属組織中に析出した炭化物および炭窒化物の占める
面積率が3〜30%の範囲である。
材は、成分組成として、さらにMoを4.0%以下含有
することを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に優れたステ
ンレス鋼である。
材は、成分組成として、さらにV:1.0%以下、T
i:1.0%以下、Nb:1.0%以下、Zr:1.0
%以下のうちから選ばれる少なくとも1種以上を含有す
ることを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に優れたステン
レス鋼材である。
炭窒化物は、Crを主体とする析出物であることを特徴
とする耐摩耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材であ
る。
物および炭窒化物の直径の最大値が直径10μm以下で
あることを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に優れたステ
ンレス鋼材である。
材が、耐摩耗部材用であることを特徴とする耐摩耗性及
び耐食性に優れたステンレス鋼材である。
材が、筬羽又はヘルド用であることを特徴とする耐摩耗
性及び耐食性に優れたステンレス鋼材である。
たことを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に優れたステン
レス鋼材の製造方法である。 (a) C:0.03〜0.30%、Si:3.0wt
%以下、Mn:3.0%以下、Ni:5.0〜20.0
%、Cr:15.0超え〜30.0%、N:0.30%
以下を含有し、かつ残部がFe及び不可避的不純物から
なるステンレス鋼材のスラブを用意し、(b) 前記ス
ラブに熱間圧延加工を行ってから、温度が700〜95
0℃、時間が30分〜36時間の範囲で炭化物析出熱処
理を施し、(c) その後冷間圧延する。
き続いて700〜950℃で軟化焼鈍を行ってから、そ
の後さらに冷間圧延することを特徴とする請求項8に記
載の耐摩耗性及び耐食性に優れたステンレス鋼材の製造
方法である。
えたことを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に優れたステ
ンレス鋼材の製造方法である。 (a) C:0.03〜0.30%、Si:3.0wt
%以下、Mn:3.0%以下、Ni:5.0〜20.0
%、Cr:15.0超え〜30.0%、N:0.30%
以下を含有し、かつ残部がFe及び不可避的不純物から
なるステンレス鋼材のスラブを用意し、(b) 前記ス
ラブに熱間圧延加工を行ってから、固溶化熱処理、次い
で冷間圧延を行い、(c) 引き続いて、温度が700
〜950℃、時間が30分〜36時間の範囲で炭化物析
出熱処理を施し、(d) その後冷間圧延する。
鋼材は、成分組成として、さらにMoを4.0%以下含
有することを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に優れたス
テンレス鋼材の製造方法である。
鋼材は、成分組成として、さらにV:1.0%以下、T
i:1.0%以下、Nb:1.0%以下、Zr:1.0
%以下のうちから選ばれる少なくとも1種以上を含有す
ることを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に優れたステン
レス鋼材の製造方法である。
に説明する。本発明では、マトリックスを硬質化した
り、表面処理により表層を硬質化させるのではなく、オ
ーステナイトに硬質な炭化物及や炭窒化物を析出、分散
させることで耐摩耗性を向上させ、かつ耐食性も確保す
ることができる。
等のフェライトステンレス鋼、SUS420J2等のマ
ルテンサイトステンレス鋼の一部で認められるが、フェ
ライト系ステンレス鋼ではマトリックスの硬度を上げる
には限界がある、すなわち、硬度を上げようとすると靭
性が劣化して、工業規模で製造できなくなるためHV4
00程度が限界である。つまり、耐摩耗性には炭化物の
みの効果しかないため、耐摩耗性の向上にはおのずと限
界がある。
マトリックスの硬度を確保することも可能であるが、マ
ルテンサイト組織を得るには耐食性に有効なCr量を増
加することができないので、耐食性に問題がある。実際
に、SUS420J2を機料品として使用した場合に
は、しばしば錆の問題を起こすことがある。また、マル
テンサイト系ステンレス鋼では、製造コストが高くなる
ほか、成分バランス上耐食性に有効なCr量を増やすこ
とができないので、耐食性を上げるには限界がある。
を用いた高磨耗性、高耐食性鋼について検討を進めた。
しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼では、耐
摩耗性を向上させるためにCrを主体とした炭化物を積
極的に利用しようとした例はなく、一般に炭化物は完全
に固溶した状態にあるか、またその析出量は僅かであっ
た。このように、炭化物が利用されなかった理由は、炭
化物が析出するとステンレス鋼の特徴である耐食性を劣
化させることにある。
出量を規定することで、耐摩耗性及び耐食性は両立可能
であり、オーステナイト系ステンレス鋼をベースに炭化
物を析出、分散を図ることで耐摩耗性及び耐食性を向上
することができる。
下で説明するような成分組成を有している。成分組成を
限定した理由について以下に述べる。
ばかりか、炭化物、炭窒化物を構成する元素であるた
め、耐摩耗性向上には多いほど好ましく、0.03wt
%以上は必要である。しかしながら、0.30wt%を
超えて含有すると、粗大な未固溶炭化物が生成し冷間圧
延破断の危険が高まるばかりか、耐食性も劣化させるた
め、0.03〜0.30wt%、好ましくは0.05〜
0.25wt%、より好ましくは0.10〜0.25w
t%とする。
高強度化に有効な元素であるが、3.0wt%を超えて
含有すると冷間圧延破断の危険が高まるため3.0wt
%以下とする。
り、かつオーステナイト形成元素であるため、オーステ
ナイト組織を得るのに必要であるが、3.0wt%を超
えて含有すると焼鈍酸洗時に異常酸化の原因を招き、歩
留まり低下につながるため3.0wt%以下とする。
あり、5wt%以上必要である。しかしながら高価な元
素であり、上限を20wt%とし、5.0〜20.0w
t%、好ましくは5.0〜15.0wt%とする。
つ耐食性向上にも有効なことから、15.0wt%を超
えて含有することが必要である。しかしながら30.0
wt%を超えて含有すると、σ相が析出し、逆に耐食性
を害するほか、製造性も劣化させるので上限を30.0
wt%とし、15.0超え〜30.0wt%、好ましく
は15.0超え〜25.0wt%とする。
冷間圧延破断の危険が高まるため0.30wt%以下と
する。ただし、高強度化や耐食性向上に有効であるた
め、これらの効果を必要とする場合には、好ましくは
0.02〜0.25wt%、より好ましくは0.05〜
0.20wt%とする。
り、かつ精錬での除去が困難な元素であるが、0.04
5%を超えて含有すると耐食性を劣化させるため、0.
045wt%以下が望ましい。
り、精錬での除去にはコストがかかるが、0.01wt
%を超えて含有すると耐食性を劣化させるほか、熱間加
工性も劣化させるため、0.01wt%以下が望まし
い。
であるが、非常に高価な元素であるため、4.0wt%
以下で含有しても構わないとする。
V,Ti,Nb、Zrのいずれか1種以上を1.0wt
%以下添加することができる。V,Ti,Nb、Zrは
CまたはNと結合し、安定な炭化物、または窒化物を形
成してオーステナイト組織を微細化する。従って、本発
明の炭化物析出熱処理を行った場合には、Cr炭化物の
生成サイトとなって、Cr炭化物形成に有利に作用する
ため、1.0wt%以下の範囲であれば添加してもかま
わない。しかし、いずれの元素も高価であることや、
1.0wt%を超えて添加すると、粗大な炭化物を形成
して製造性を害するため、1.0wt%以下、好ましく
は0.5wt%以下の範囲であれば添加してもかまわな
い。
延加工を行ってから、温度が700〜950℃、時間が
30分〜36時間の範囲で炭化物析出熱処理を施し、そ
の後冷間圧延する。
冷間圧延を行い、続いて700〜950℃で軟化焼鈍を
行ってから、その冷間圧延する。
ってから、固溶化熱処理、次いで冷間圧延を行い、引き
続いて、温度が700〜950℃、時間が30分〜36
時間の範囲で炭化物析出熱処理を施し、その後冷間圧延
する。
組織は、オーステナイト、冷間圧延により形成された加
工誘起マルテンサイト、それにバッチ焼鈍によって析出
した炭化物および炭窒化物からなる。
わせたものの面積率が3〜30%である。炭化物および
炭窒化物の析出により耐摩耗性を大幅に向上できるが、
3%未満では効果が少ない。そこで下限を3%とする。
炭化物および炭窒化物の析出量は多いほど耐摩耗性は向
上するが、30%を超えて含有させると耐食性が劣化す
るばかりか加工性が劣化し、冷間圧延で割れが発生す
る。そこで3〜30%とし、好ましくは5〜25%、よ
り好ましくは10〜25%とする。
物の直径が10μm以下である。耐摩耗性が良好である
ためには、炭化物および炭窒化物が微細に分散している
ことが望ましい。また、炭化物および炭窒化物の直径が
10μmを超えると、炭化物および炭窒化物が冷間圧延
破断の起点になった製造性を害するので、最大の炭化物
および炭窒化物の直径は10μm以下、好ましくは5μm以
下、より好ましくは3μm以下とする。ここで、炭化物お
よび炭窒化物の面積率や直径は、電子顕微鏡により撮影
した写真を用いて求めることができる。
体とする析出物である。上記のように炭化物および炭窒
化物を形成するために、炭化物析出熱処理を行う。炭化
物をおよび炭窒化物を析出させるために、熱処理方法は
バッチ法により、長時間行うことが望ましいが、連続法
としても支障はない。また、温度は低い方が望ましい。
すぎると、必要十分な析出量を得るために、熱処理時間
を長くする必要があるだけでなく、熱処理後に延性に乏
しくなって、その後の圧延工程で破断の危険が高まる。
従って、工業的には700℃以上で実施する必要があ
る。一方、熱処理温度を高温にした場合、炭化物の析出
時間は短くなるが、析出量は減少する。そこで上限は9
50℃とした。なお好ましくは、800〜900℃とす
る。
めに、本発明では熱処理時間を30分〜36時間とす
る。熱処理時間は、長くするほうが炭化物の析出には有
利であり、少なくとも30分は必要である。しかしなが
ら、36時間を超えて熱処理を行っても析出量は飽和す
る傾向にあることや、多量のスケールが形成されるの
で、その後の酸洗工程に支障をきたしコストアップの原
因となる。従って上限を36時間とする。なお、好まし
くは4〜24時間である。
めに、本発明では熱処理雰囲気は、焼鈍後にデスケーリ
ング工程を容易にするためにも、H2ガス雰囲気が好ま
しいがN2ガス雰囲気、または大気でも構わない。
に、本発明では軟化焼鈍を行う。軟化焼鈍は短時間であ
り、例えば5分以内で熱処理すれば良い。短時間焼鈍す
るために、焼鈍方法は連続法とする方が望ましい。軟化
焼鈍はその後の冷間圧延に耐え得る延性を付与すること
が目的であり、700℃以上の温度が必要である。しか
しながら、950℃以上の高温とすると、炭化物が再固
溶して耐摩耗性が劣化するため、上限を950℃とす
る。なお、好ましくは750〜900℃とする。
表1、および図2としての表2を用いて説明する。表
1、表2のA〜Fは本発明例である。A〜Fについて
は、表に示した成分組成で板厚が3.5mmの熱延板に
ついて、1100℃で1分間の固溶化熱処理を施した
後、冷間圧延を行って板厚を1.0mmまで加工した。
得られた冷延板に、800℃で12時間の炭化物析出熱
処理を施して炭化物を析出させた。その後、冷間圧延を
行って板厚を0.3mmとした。表1のG〜Jは、比較
例および先行技術例であり、G、Hは成分組成が本発明
と異なり、IはSUS301材、JはSUS420J2
材である。
る。a〜eについては、表に示した成分組成で板厚が
3.5mmの熱延板について、1100℃で1分間の固
溶化熱処理を施した後、冷間圧延を行って板厚を1.0
mmまで加工した。得られた冷延板に、各種温度と時間
で炭化物析出熱処理を施して炭化物を析出させた。その
後、冷間圧延を行って板厚を0.3mmとしたものであ
る。
で板厚が3.5mmの熱延板について、各種温度、時間
で炭化物析出熱処理をした後、冷間圧延を行って板厚を
1.0mmまで加工したものである。得られた冷延板
に、各種温度と時間で軟化焼鈍を施した。その後、冷間
圧延を行って板厚を0.3mmとしたものである。
は板厚が3.5mmの熱延板について、1100℃で1
分間の固溶化熱処理を施した後、冷間圧延を行って板厚
を1.0mmまで加工した。得られた冷延板に、各種温
度と時間で炭化物析出熱処理を施した。その後、冷間圧
延を行って板厚を0.3mmとした。表3、4のm〜n
の比較例は、板厚が3.5mmの熱延板について、各種
温度、時間で炭化物析出熱処理を行った後、冷間圧延を
行って板厚を1.0mmまで加工した。得られた冷延板
に、各種温度と時間で軟化焼鈍を施した。その後、冷間
圧延を行って板厚を0.3mmとしたものである。
金属組織について説明する。得られた板材の組織は、オ
ーステナイト、冷間圧延により形成された加工誘起マル
テンサイト、それにバッチ焼鈍によって析出した炭化物
からなる。代表的な組織を図5としての写真に示した。
図5の写真は本発明品例のE鋼について示したものであ
る。写真中で白い点状に見えるものが炭化物、炭窒化物
を示している。板材の組織観察は電子顕微鏡を用いて行
った。なお、前処理は、製造した板厚0.3mmの板材
を、圧延方向に直角に切断して表面研磨し、次に塩酸と
ピクリン酸アルコールの混液を用いてエッチングして行
った。
炭化物の面積率は、電子顕微鏡により撮影した3000
倍の写真を用い点算法で求める。具体的には、写真視野
上に縦、横が5mm間隔の桝目を設け、例えば縦に10
個、横に10個、計100個の桝目の格子点に触れる、
又は格子点上にある炭化物の数を求める。この作業を1
0視野繰り返し、その平均値を面積率とする。
のである。n÷(p×f)×100=炭化物面積率
(%)であり、n、p、fは以下を示す。 p:視野内の総格子点数 f:視野数 n:f個の視野における炭化物によって占められる格子
点中心の数
より撮影した3000倍の写真を用い、写真視野内の粒
子が大きいもの数個を選択して円相当直径を求め、この
作業を10視野行いその平均値を求め、炭化物および炭
窒化物の最大値とする。硬さは、JISG0555に準
じて求めたビッカース硬度を示した。
定時間(5時間)供試材の表面を通過させて加速度的に
摩耗を形成させ、形成した摩耗痕の最大深さを表面荒さ
計(メーカー:(株)東京精密、型番:1400A−3
DF)で求めた。その結果は表2、4に合わせて示し
た。図6に、摩耗痕の最大深さ(μm)と炭化物面積率
(%)との関係を示した。これから、炭化物面積率が高
いほど、すなわち炭化物析出量が多いほど良好な耐摩耗
性を示すことがわかる。特に炭化物の面積率が3%以上
でその効果が大きい。本発明例では、摩耗痕深さは15
μm以下であり、SUS301の23μmに比べて、耐
摩耗性が優れており、もちろんSUS420J2の15
μmと比べても遜色ない値である。
G0577に準じた方法)を求めて評価した。孔食電位
が高いほど耐食性が優れることを意味する。本発明品
は、いずれもSUS420J2に較べ優れた耐食性を示
し、SUS301に較べても遜色がない。
無について評価した。その結果を表2,4に示したが、
特に製造上の問題はなかった。本発明鋼は、良好な耐摩
耗性、耐食性を示し、かつ製造上の問題もない。
スに炭化物および炭窒化物を析出、分散させることで良
好な耐摩耗性、耐食性および製造性を有するステンレス
鋼が得られる。従って、本発明品を用いることで、耐摩
耗性及び耐食性が要求される分野、例えば、筬羽、ヘル
ドなどの機料品、プレスプレート、スイッチコネクタ
ー、刃物等に使用した場合、寿命を延ばすことができる
等の効果があり、本発明鋼の存在は極めて有効である。
である。
の熱処理条件および評価結果一覧表である。
である。
熱処理条件および評価結果一覧表である。
した図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 下記の成分組成(以下%は重量ベースで
ある)を備えたことを特徴とする耐摩耗性及び耐食性に
優れた筬羽又はヘルド用ステンレス鋼材。 (a) C:0.03〜0.30%、Si:3.0%以
下、Mn:3.0%以下、Ni:5.0〜20.0%、
Cr:15.0超え〜30.0%、N:0.30%以下
を含有し、かつ残部がFe及び不可避的不純物からなる
ステンレス鋼材であって、(b) 前記ステンレス鋼材
の金属組織中に析出した炭化物および炭窒化物の占める
面積率が3〜30%の範囲である。 - 【請求項2】 前記ステンレス鋼材は、成分組成とし
て、さらにMoを4.0%以下含有することを特徴とす
る請求項1に記載の耐摩耗性及び耐食性に優れた筬羽又
はヘルド用ステンレス鋼材。 - 【請求項3】 前記ステンレス鋼材は、成分組成とし
て、さらにV:1.0%以下、Ti:1.0%以下、N
b:1.0%以下、Zr:1.0%以下のうちから選ば
れる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請
求項1又は2に記載の耐摩耗性及び耐食性に優れた筬羽
又はヘルド用ステンレス鋼材。 - 【請求項4】 前記炭化物および炭窒化物は、Crを主
体とする析出物であることを特徴とする請求項1〜3の
いずれか1項に記載の耐摩耗性及び耐食性に優れた筬羽
又はヘルド用ステンレス鋼材。 - 【請求項5】 前記析出した炭化物および炭窒化物の直
径の最大値が10μm以下であることを特徴とする請求
項1〜4のいずれか1項に記載の耐摩耗性及び耐食性に
優れた筬羽又はヘルド用ステンレス鋼材。
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