JP2003082763A - 柱梁接合構造およびその設計方法 - Google Patents

柱梁接合構造およびその設計方法

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JP2003082763A JP2001278143A JP2001278143A JP2003082763A JP 2003082763 A JP2003082763 A JP 2003082763A JP 2001278143 A JP2001278143 A JP 2001278143A JP 2001278143 A JP2001278143 A JP 2001278143A JP 2003082763 A JP2003082763 A JP 2003082763A
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Hisaya Kamura
Nobuyuki Nakamura
Haruhito Okamoto
Hiromi Shimokawa
Takuya Ueki
弘海 下川
信行 中村
久哉 加村
晴仁 岡本
卓也 植木
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日本鋼管株式会社
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 通しダイアフラムを有す柱梁接合部におい
て、地震荷重時の塑性化領域の形成および崩壊機構が明
確な柱梁接合構造を形成することができる設計方法を提
供することを目的とする。 【解決手段】 ブラケットおよびH鋼梁の各位置におい
て、地震荷重時に発生するモーメントを、ボルト穴断面
欠損および前記添え板への応力伝達を考慮した有効断面
係数で除したフランジ応力度のうち、前記鋼管柱から最
も遠いボルト穴位置における値が最大で、該位置におけ
るボルト穴断面欠損による有効断面係数の低下に従い、
降伏比の低い梁材を用いることにより、該位置に形成さ
れた塑性化領域が、柱から遠ざかる方向に広がることを
特徴とする柱梁接合構造の設計方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼管柱とH鋼梁との接
合、特に、通しダイアフラムを有すボルト接合による、
柱梁接合構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図7は、登録実用新案第3041116
号公報に開示された鉄骨構造の接合構造を示す斜視図で
ある。図7において、下方より上方に向けて、下部角柱
101、下部通しダイアフラム102、角柱コア部10
3、上部通しダイアフラム104、上部角柱105が接
合されている。また、下部通しダイアフラム102およ
び上部通しダイアフラム104はそれぞれブラケット
(添え板111が設置される範囲に略同じ)が一体的に
成形されている。
【0003】これにより、ブラケットを溶接した際の、
ブラケットと上部通しダイアフラム104ないし下部ダ
イアフラム102との溶接線が、角柱101と上部通し
ダイアフラム104ないし下部ダイアフラム102との
溶接線に近接することによる角柱(下部角柱101、角
柱コア部103、上部角柱105)への応力集中が、緩
和されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来技
術は、1次設計時の存在応力に対して各部位が弾性状態
になるように強度設計することにより、安全性をチェッ
クしていた。そのため地震荷重時の塑性化領域の形成お
よび崩壊機構が不明確であった。たとえば、角柱に最も
近いボルトの位置でブラケットが塑性化した場合には、
十分な塑性化領域を形成するために必要とされるエネル
ギー吸収量が得られないおそれがあった。そのため、地
震エネルギーが吸収されずに構造物が崩壊するとの危険
があった。
【0005】さらに、地震荷重により通しダイアフラム
が破断した場合には、地震後に、通しダイアフラムの補
修ないし取り替えが必要となり、大掛かりな復旧工事を
余儀なくされていた。
【0006】本発明は上記の問題を解決するためになさ
れたもので、地震荷重時の塑性化領域の形成および崩壊
機構が明確な柱梁接合構造を形成することができる設計
方法、および該設計方法により設計された柱梁接合構造
を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決す
るための本発明の、柱梁接合構造の設計方法は以下のと
おりである。
【0008】[1] 鋼管柱を貫通する通しダイアフ
ラムが、H鋼梁のフランジとの接合部に向けて突出する
ブラケットを一体的に具備し、添え板が、前記ブラケッ
トおよび前記フランジをまたいで配置され、該添え板と
前記ブラケットおよび該添え板と前記フランジが、それ
ぞれボルト接合された柱梁接合構造の設計方法であっ
て、地震荷重時に発生するモーメントを、前記ブラケッ
トおよび前記H鋼梁のフランジの各位置において、ボル
ト穴断面欠損および前記添え板への応力伝達を考慮した
有効断面係数で除したブラケット応力度およびH鋼梁フ
ランジ応力度、ならびに、前記モーメントを、梁切断位
置において前記添え板のみの添え板有効断面係数で除し
た添え板応力度を求め、前記ブラケット応力度および前
記H鋼梁フランジ応力度および添え板応力度のうち、前
記鋼管柱から最も遠いボルト穴位置におけるH鋼梁フラ
ンジ応力度を最大の値とし、さらに、該位置におけるボ
ルト穴断面欠損による有効断面係数の低下に従い、降伏
比の低い梁材を用いることにより、該位置に形成された
塑性化領域が、前記鋼管柱から遠ざかる方向に広がるこ
とを特徴とするものである。
【0009】[2] 前記[1]において、 前記ブ
ラケットの板厚が、前記H鋼梁のフランジの板厚より大
きい又は等しく、前記ブラケットの前記H鋼梁との接合
位置における幅が、前記H鋼梁のフランジの幅より大き
い又は等しく、前記ブラケットの前記鋼管柱に最も近い
ボルト穴位置における幅Cが、下記式1または式2のい
ずれかを満足することを特徴とするものである。
【0010】
【式1】
【0011】または
【0012】
【式2】
【0013】ここで、 L :鋼管柱内−内スパン SI :鋼管柱の側面からH鋼梁のフランジの最も遠
いボルト位置までの距離 SB :鋼管柱の側面から通しダイアフラムの最も近
いボルト位置までの距離 ZpI :ボルト穴断面欠損を考慮したH鋼梁の塑性断
面係数 H :梁せいd tf :通しダイアフラム板厚 g :ゲージライン数 dB :鋼管柱から最も近いボルト位置のボルト穴径b σy :H鋼梁の降伏応力度d σy :通しダイアフラムの降伏応力度b σu :H鋼梁の引張応力度d σu :通しダイアフラムの引張応力度 [3] 前記[1]または[2]において、 前記H
鋼梁のボルト穴断面欠損がない位置における断面係数Z
と、前記鋼管柱から最も離れたボルト穴の位置における
前記H鋼梁のボルト穴断面欠損を考慮した塑性断面係数
Zpeとの比(Z/Zpe)と、前記H鋼梁の降伏比(
bσybσubσy は降伏応力度、bσuは引張応力度)
が、次式を満足することを特徴とするものである。
【0014】
【式3】
【0015】ここで、 Z :H鋼梁全断面の断面係数 Zpe :ボルト穴断面欠損を考慮したH鋼梁の塑性断
面係数b σy :H鋼梁の降伏応力度b σu :H鋼梁の引張応力度 [4] 前記[1]または[2]において、外壁が取
り付く側の柱フランジ外面と前記ブラケット縁端が1直
線上になるようにH鋼梁が偏心して取り付く場合の、前
記ブラケットの前記鋼管柱に最も近いボルト穴位置にお
ける幅Cが、次式を満足することを特徴とする請求項1
または2記載の柱梁接合構造の設計方法。
【0016】
【式4】
【0017】ここで、 L :鋼管柱内−内スパン SI :鋼管柱の側面からH鋼梁のフランジの最も遠
いボルト位置までの距離 SB :鋼管柱の側面から通しダイアフラムの最も近
いボルト位置までの距離 ZpI :ボルト穴断面欠損を考慮したH鋼梁の塑性断
面係数b B :梁幅 H :梁せいd tf :通しダイアフラム板厚b σy :H鋼梁の降伏応力度d σy :通しダイアフラムの降伏応力度 g :ゲージライン数 dB :鋼管柱から最も近いボルト位置のボルト穴径 さらに、本発明の柱梁接合構造は以下のとおりである。
【0018】[5] 鋼管柱を貫通する通しダイアフラ
ムが、H鋼梁のフランジとの接合部に向けて突出するブ
ラケットを一体的に具備し、添え板が、前記ブラケット
および前記フランジをまたいで配置され、該添え板と前
記ブラケットおよび該添え板と前記フランジが、それぞ
れボルト接合された柱梁接合構造であって、前記[1]
から[4]のいずれかに記載の柱梁接合構造の設計方法
により設計されたことを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る柱梁接合構
造の設計方法の一実施形態における柱梁接合構造を示す
平面視の断面図である。図1において、鋼管柱1、を貫
通して通しダイアフラム2が鋼管柱1に接合されてい
る。通しダイアフラム2は、鋼管柱1の内部を覆いさら
にその外周部にわずかに突出した矩形部20と、梁3の
フランジ31が接合されるべきブラケット21、が、一
体的に成形されている。ブラケット21には、ボルト穴
22が穿設されている。 一方、梁3のフランジ31に
もボルト穴32が穿設されている。
【0020】さらに、ブラケット21のボルト穴22が
穿設された範囲およびフランジ31のボルト穴32が穿
設された範囲を覆って、それぞれ外添え板4と内添え板
5が配置され、外添え板4および内添え板5にはそれぞ
れボルト穴41およびボルト穴51が穿設されている。
【0021】したがって、前記ボルト穴22とボルト穴
41、51に装入したボルト62、および前記ボルト穴
32とボルト穴41、51に装入したボルト63によ
り、フランジ31はブラケット21に接合されている。
【0022】図2は、前記柱梁接合構造における添え板
部によるブラケットと梁のフランジの接合部の、力の伝
達を説明するための模式的断面図である。なお、図1で
説明した平面図と同じ部分には、これと同じ符号を付
し、一部の説明を省略する。
【0023】図2において、地震荷重時には、b〜e、
f〜iのそれぞれの範囲では、ブラケット21、梁のフ
ランジ31および上下に設置された添え板4、5が、ボ
ルト62、63の支圧力によって一体化され、応力を負
担しているため、所定の板厚を有する添え板4,5を用
いることにより、範囲b〜eまたは範囲f〜iが先行し
て塑性化することはない。また、e〜fの範囲において
も上下に設置された添え板4、5が応力を負担している
ため、前記範囲で先に塑性化することはない。
【0024】さらに、範囲a〜bでは添え板4,5の負
担する力は小さくなり、ブラケット21が大半の力を負
担するものの、ブラケット21の幅が広がっているた
め、範囲a〜bが先行して塑性化することはない。
【0025】これに対し、範囲i〜jでは、添え板4,
5の負担する力は小さくなり、梁のフランジ31が大半
の力を負担することになる。すなわち、梁のフランジ3
1が引張力によりポアソン比分だけ減厚するために、前
記梁のフランジ31に対する添え板4、5の押付け力が
低下し、範囲i〜jにおける摩擦力の伝達が減少するた
め、曲げモーメントに基づく引張応力の大半を前記梁の
フランジが負担することになる。
【0026】以上より、前記柱梁接合構造では、地震荷
重時に鋼管柱から最も遠いボルトの位置で塑性化が始ま
り、荷重が増加するに伴い、塑性化領域は梁側に広がっ
ていくことになる。以下詳細に説明する。
【0027】(中心配置)図3は、本発明に係る柱梁接
合構造の一実施形態を示す平面図と、地震荷重時のモー
メント勾配との関係を示す説明図である。なお、図1で
説明した平面図と同じ部分には、これと同じ符号を付
し、一部の説明を省略する。
【0028】柱から最も遠いボルト位置Iにおけるボル
ト穴断面欠損を考慮した全塑性モーメントMpIは、MpI=Z
pI×bσyとなる。このとき、ZpIはボルト穴断面欠損を
考慮した梁の塑性断面係数、bσyは梁の降伏応力度であ
る。
【0029】柱から最も遠いボルト位置Iでのモーメン
トに対する、柱に最も近いボルト位置Bでのモーメント
上昇率kは、k=(L/2−SB) /(L/2−SI)となる。このと
き、Lは柱の内−内スパン(対峙する柱の内側面間の距
離)、SIは柱の側面から最も遠いボルト位置Iまでの距
離、SBは柱の側面から最も近いボルト位置Bまでの距離
である。
【0030】一方、柱に最も近いボルト位置Bにおけ
る、通しダイアフラムのみ(添え板を含まない)の全塑
性モーメントMpBは、MpB= ZpB× dσy=(C−g・dB)×dt
f×(H−dtf)×dσyとなる。このとき、Cは柱から最も
近いボルト位置Bにおける通しダイアフラム幅、gはゲ
ージライン数、dBは柱から最も近いボルト位置Bにおけ
るボルト穴径、dtfは通しダイアフラムの板厚、Hは梁せ
い、dσyは通しダイアフラムの降伏応力度である。ゲー
ジライン数gはボルト穴が平行に2列配置されるとき
2.0であり、千鳥状に2列配置されるとき2.75と
なる。
【0031】以上より、柱から最も遠いボルト位置Iに
おいて、他の位置より先行して塑性が発生するために、
柱に最も近いボルト位置Bにおける通しダイアフラムの
幅Cは、条件式MpB>MpIを満足するように決定される。
よって、次式となる。
【0032】
【式1】
【0033】さらに、柱から最も遠いボルト位置Iおよ
び柱に最も近いボルト位置Bの双方において塑性が発生
した後、柱から最も遠いボルト位置Iにおいて破断が発
生した(引張応力度に到達した)ときに、柱に最も近い
ボルト位置Bではまだ破断していない(引張応力度に達
していない)ことが条件になる。
【0034】柱に最も近いボルト位置Bにおける、通し
ダイアフラムのみ(添え板を含まない)の終局モーメン
トMuBは、MuB= ZpB× dσu=(C−g・dB)×dtf×(H−dt
f)×dσu,このとき、dσuは通しダイアフラムの引張応
力度となる。
【0035】また、柱から最も遠いボルト位置Iにおけ
る、梁の終局モーメントMuIは、MuI= ZpI× bσu、この
とき、bσuは梁の引張応力度となる。
【0036】従って、柱から最も遠いボルト位置Iにお
いて、他の位置より先行して破断が発生するために、柱
に最も近いボルト位置Bにおける通しダイアフラムの幅
Cは、条件式MuB>MuIを満足するように決定される。よ
って、次式となる。
【0037】
【式2】
【0038】また、地震荷重時に梁が必要とされるエネ
ルギー吸収量を得るためには、該エネルギー吸収量に相
当する梁の塑性化領域が形成される以前に、柱から最も
遠いボルト位置Iでボルト穴断面欠損部が破断しないこ
とが条件となる。図4は本発明に係る柱梁接合構造の一
実施形態を示す側面図と、地震荷重時の塑性化領域の形
成状態を示す説明図である。図4において、ボルト位置
IでのH鋼梁の終局モーメントMuは、Mu=Zpe×bσu=a×
Qとなる。ここで、Zpeはボルト穴断面欠損を考慮した有
効塑性断面係数、bσuは梁の引張応力度、aは梁中央か
らボルト位置Iまでの距離、Qは梁のせん断力である。
また、前記終局モーメントを与える荷重時に、弾性限と
なる位置をKとすると、位置KでのH鋼梁の降伏モーメ
ントMyは、My=Z×bσy=b×Qとなる。ここで、Zは断面係
数、bσyは梁の降伏応力度、bは梁中央から位置Kまで
の距離である。
【0039】ボルト位置IでMu、位置KでMyとなる時の
せん断力は等しいので、a/b=(Z/Zpe)・(bσyb
σu)となる。
【0040】図5は、本発明に係る柱梁接合構造の一実
施形態における計算による塑性化領域形成比a/bと、
実験による累積塑性変形倍率ηEとの関係を示す説明図
であって、ボルト穴断面欠損と梁の降伏比をパラメータ
とした実大の柱梁接合部実験を行った結果である。図5
中の横軸は部材から求まるa/bであり、縦軸は梁のエネ
ルギー吸収能力を測る指標の一つである、エネルギー評
価による累積塑性変形倍率ηEである。a/bとηEの関係
は、ほぼ右下がりの比例関係にあり、実験結果のプロッ
トを最も安全側で評価すると図中の直線で表される。
【0041】また、地震時に必要とされる累積塑性変形
倍率ηEは、「建築耐震設計における保有耐力と変形性
能」(日本建築学会)によると、安定した梁降伏の崩壊
系が実現できる構造ランクIに相当する構造特性係数
(Ds)を得るためには、片側振幅でηE≧6と規定され
ている。
【0042】これを両側振幅とし、かつボルトの滑りに
よるエネルギー吸収能力の低下を考慮して安全係数を2
倍とすると、梁に要求されるηEは24以上となる。
【0043】よって、図5より、実験から推定されるη
Eを約24以上とするためには、前記直線との交点からa/
b≦0.9を満足する必要があり、この条件から、梁のボ
ルト穴断面欠損比と降伏比の関係が決定される。よって
次式となる。
【0044】
【式3】
【0045】(偏心配置)図6は本発明に係る柱梁接合
構造の一実施形態における梁偏心時のダイアフラム形状
を示す平面図と、地震時に柱に最も近いボルト位置に発
生する外力と内力を示す説明図である。外壁が取り付く
側の柱フランジ外面と梁のフランジ縁端が1直線上にな
るように梁が偏心して取り付く場合は、ブラケットに発
生する軸力とモーメントに対して、内力の軸力とモーメ
ントが釣り合うことを条件として、以下の手順で柱に最
も近いボルト位置でのダイアフラム幅が決定される。 B-B断面に作用する軸力Pは次式で表わされる。
【0046】
【式5】
【0047】O点まわりの曲げモーメントMeは下式と
なる。
【0048】
【式6】
【0049】B-B断面の内力の軸力Pi、O点まわりのモ
ーメントMiは次式で表わされる。
【0050】
【式7】
【0051】
【式8】
【0052】P=Pi、Me=Mi より、
【0053】
【式9】
【0054】
【式10】
【0055】上式よりXを消去して、柱に最も近いボ
ルト位置でのダイアフラム幅は下式で表わされる。
【0056】
【式4】
【0057】(設計指針)式1および式2の値を仮定し
て、設計指針を説明する。 (ケース1) (イ) 式1の計算値が50cm、式2の計算値が40
cmと仮定した場合、ブラケット幅を55cmとする
と、式1および式2の両方を満足しているから、柱から
も最も遠いボルト位置(位置I)において、塑性化が始
まり、この位置で破断が発生する。また、柱に最も近い
ボルト位置(位置B)は、塑性化するものの、破断する
ことがない。したがって、ブラケット側(位置B)の損
傷を少なくし、梁側(位置I)で破断が起こる構造とな
る。
【0058】(ロ) ブラケット幅を45cmとする
と、式1を満足しないから、柱に最も近いボルト位置
(位置B)において塑性化が始まるものの、式2を満足
しているから、柱から最も遠いボルト位置(位置I)に
おいて、破断することになる。つまり、ブラケット側
(位置B)は、破断することなく塑性化が進み、地震時
のエネルギを吸収し、梁側(位置I)は、位置Bに遅れ
て塑性化が始まるものの、塑性化が進みやがて破断に至
るといえる。したがって、ブラケット幅を押さえながら
も、破断位置を梁側(位置B)とした、エネルギ吸収量
の多い構造となる。
【0059】(ハ) ブラケット幅を35cmとする
と、式1および式2の両方を満足しないから、柱に最も
近いボルト位置(位置B)において塑性化が始まり、こ
の位置で破断する。また、柱から最も遠いボルト位置
(位置I)において、十分な塑性化領域が確保できない
ことになる。 (ケース2) (イ) 式1の計算値が40cm、式2の計算値が50
cmと仮定した場合、ブラケット幅を55cmとする
と、式1および式2の両方を満足しているから、前記
(イ)と同様、柱からも最も遠いボルト位置(位置I)
において、塑性化が始まり、この位置で破断が発生す
る。また、柱に最も近いボルト位置(位置B)は、塑性
化するものの、破断することがない。したがって、ブラ
ケット側(位置B)の損傷を少なくし、梁側(位置I)
で破断が起こる構造となる。
【0060】(ロ) ブラケット幅を45cmとする
と、式1を満足するから、柱から最も遠いボルト位置
(位置I)において塑性化が始まるものの、式2を満足
していないから、柱に最も近いボルト位置(位置B)に
おいて、破断することになる。つまり、梁側(位置I)
より塑性化が始まり、位置Iから梁側に塑性化領域が拡
大していく。そして、位置Bの有効断面の全塑性化モー
メントが、梁全断面の全塑性モーメントを上回ると、ブ
ラケット側(位置B)に塑性化が起こり、該塑性化領域
の拡大により、やがて、ブラケット側で破断が発生す
る。したがって、ブラケット幅を押さえながら、破断位
置がブラケット側(位置B)である、エネルギ吸収量の
多い構造となる。
【0061】(ハ) ブラケット幅を35cmとする
と、式1および式2の両方を満足しないから、前記
(ハ)と同様、柱に最も近いボルト位置(位置B)にお
いて塑性化が始まり、この位置で破断する。また、柱か
ら最も遠いボルト位置(位置I)において、十分な塑性
化領域が確保できないことになる。
【0062】
【発明の効果】以上述べた本発明の柱梁接合構造によれ
ば、以下のような顕著な効果が得られる。
【0063】1)柱から最も遠いボルト穴位置におい
て、塑性ヒンジを形成することができるため、地震荷重
時の崩壊機構が明確となる。梁側のみを塑性化させ、ブ
ラケット側を弾性内に抑えることが出来るため、地震後
において、梁部のみを補修ないし取り替えるだけで済
み、大掛かりな復旧工事が不要になる。
【0064】2)さらに、梁側およびブラケット側の双
方に塑性が発生する場合でも、梁側で破断させることが
出来るため、地震後において、梁部のみを補修ないし取
り替えるだけで済み、大掛かりな復旧工事が不要にな
る。
【0065】3)また、要求されるエネルギー吸収量
(累積塑性変形倍率)に対して、使用ボルト径が既知の
場合には、梁に用いる鋼材の降伏比を特定でき、また、
梁の鋼材(降伏比)が既知の場合には、梁のフランジの
ボルト穴断面欠損率を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る柱梁接合構造の一実施形態を示す
平面視の断面図である。
【図2】本発明に係る柱梁接合構造の一実施形態におけ
る添え板部の、ブラケットと梁のフランジの力の伝達を
説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明に係る柱梁接合構造の一実施形態を示す
平面図と、地震荷重時のモーメント勾配との関係を示す
説明図である。
【図4】本発明に係る柱梁接合構造の一実施形態を示す
側面図と、地震荷重時の塑性化領域の形成状態を示す説
明図である。
【図5】本発明に係る柱梁接合構造の一実施形態におけ
る計算による塑性化領域形成比a/bと、実験による累
積塑性変形倍率ηEとの関係を示す説明図である。
【図6】本発明に係る柱梁接合構造の一実施形態におけ
る梁偏心時のダイアフラム形状を示す平面図と、地震時
に柱に最も近いボルト位置に発生する外力と内力を示す
説明図である。
【図7】従来の鉄骨構造の接合構造を示す斜視図であ
る。
【符号の説明】
1 鋼管柱 2 通しダイアフラム 20 通しダイアフラム2の矩形部 21 通しダイアフラム2のブラケット 22 ボルト穴 3 梁 31 梁のフランジ 32 ボルト穴 4 外添え板 41 ボルト穴 5 内添え板 51 ボルト穴 62 ボルト 63 ボルト
フロントページの続き (72)発明者 植木 卓也 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 加村 久哉 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 下川 弘海 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 2E125 AA03 AA13 AB01 AB16 AC15 AC16 AG50 BB02 CA06

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼管柱を貫通する通しダイアフラムが、
    H鋼梁のフランジとの接合部に向けて突出するブラケッ
    トを一体的に具備し、 添え板が、前記ブラケットおよび前記フランジをまたい
    で配置され、 該添え板と前記ブラケットおよび該添え板と前記フラン
    ジが、それぞれボルト接合された柱梁接合構造の設計方
    法であって、 地震荷重時に発生するモーメントを、前記ブラケットお
    よび前記H鋼梁のフランジの各位置において、ボルト穴
    断面欠損および前記添え板への応力伝達を考慮した有効
    断面係数で除したブラケット応力度およびH鋼梁フラン
    ジ応力度、 ならびに、前記モーメントを、梁切断位置において前記
    添え板のみの添え板有効断面係数で除した添え板応力度
    を求め、 前記ブラケット応力度および前記H鋼梁フランジ応力度
    および添え板応力度のうち、前記鋼管柱から最も遠いボ
    ルト穴位置におけるH鋼梁フランジ応力度を最大の値と
    し、 さらに、該位置におけるボルト穴断面欠損による有効断
    面係数の低下に従い、降伏比の低い梁材を用いることに
    より、該位置に形成された塑性化領域が、前記鋼管柱か
    ら遠ざかる方向に広がることを特徴とする柱梁接合構造
    の設計方法。
  2. 【請求項2】 前記ブラケットの板厚が、前記H鋼梁の
    フランジの板厚より大きい又は等しく、 前記ブラケットの前記H鋼梁との接合位置における幅
    が、前記H鋼梁のフランジの幅より大きい又は等しく、 前記ブラケットの前記鋼管柱に最も近いボルト穴位置に
    おける幅Cが、下記式1または式2のいずれかを満足す
    ることを特徴とする請求項1記載の柱梁接合構造の設計
    方法。 【式1】 または 【式2】 ここで、 L :鋼管柱内−内スパン SI :鋼管柱の側面からH鋼梁のフランジの最も遠
    いボルト位置までの距離 SB :鋼管柱の側面から通しダイアフラムの最も近
    いボルト位置までの距離 ZpI :ボルト穴断面欠損を考慮したH鋼梁の塑性断
    面係数 H :梁せいd tf :通しダイアフラム板厚 g :ゲージライン数 dB :鋼管柱から最も近いボルト位置のボルト穴径b σy :H鋼梁の降伏応力度d σy :通しダイアフラムの降伏応力度b σu :H鋼梁の引張応力度d σu :通しダイアフラムの引張応力度
  3. 【請求項3】 前記H鋼梁のボルト穴断面欠損がない位
    置における断面係数Zと、前記鋼管柱から最も離れたボ
    ルト穴の位置における前記H鋼梁のボルト穴断面欠損を
    考慮した塑性断面係数Zpeとの比(Z/Zpe)と、
    前記H鋼梁の降伏比(bσybσubσy は降伏応力
    度、bσu は引張応力度)が、次式を満足することを特
    徴とする請求項1または2記載の柱梁接合構造の設計方
    法。 【式3】 ここで、 Z :H鋼梁全断面の断面係数 Zpe :ボルト穴断面欠損を考慮したH鋼梁の塑性断
    面係数b σy :H鋼梁の降伏応力度b σu :H鋼梁の引張応力度
  4. 【請求項4】 外壁が取り付く側の柱フランジ外面と前
    記ブラケット縁端が1直線上になるようにH鋼梁が偏心
    して取り付く場合の、前記ブラケットの前記鋼管柱に最
    も近いボルト穴位置における幅Cが、次式を満足するこ
    とを特徴とする請求項1または2記載の柱梁接合構造の
    設計方法。 【式4】 ここで、 L :鋼管柱内−内スパン SI :鋼管柱の側面からH鋼梁のフランジの最も遠
    いボルト位置までの距離 SB :鋼管柱の側面から通しダイアフラムの最も近
    いボルト位置までの距離 ZpI :ボルト穴断面欠損を考慮したH鋼梁の塑性断
    面係数b B :梁幅 H :梁せいd tf :通しダイアフラム板厚b σy :H鋼梁の降伏応力度d σy :通しダイアフラムの降伏応力度 g :ゲージライン数 dB :鋼管柱から最も近いボルト位置のボルト穴径
  5. 【請求項5】 鋼管柱を貫通する通しダイアフラムが、
    H鋼梁のフランジとの接合部に向けて突出するブラケッ
    トを一体的に具備し、 添え板が、前記ブラケットおよび前記フランジをまたい
    で配置され、 該添え板と前記ブラケットおよび該添え板と前記フラン
    ジが、それぞれボルト接合された柱梁接合構造であっ
    て、 請求項1から4のいずれかに記載の柱梁接合構造の設計
    方法により設計されたことを特徴とする柱梁接合構造。
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