JP2003063395A - 鉄道車両用軸箱支持装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 軸箱重量を増加させずにバネ下質量の低減効
果と、台車長の縮小効果を維持しつつ、軸箱支持剛性の
確保と、軸箱ピッチングを有効に抑える。 【解決手段】 軸箱７上部と台車枠３のバネ帽１０との
間に配置されるコイルバネ１１内に軸箱７を支持する軸
箱上部円筒積層ゴム１２を配設するとともに、車体前後
方向に延びる軸箱７の支持腕８を軸箱側部円筒積層ゴム
１３を介して台車枠３に支持させる。両円筒積層ゴム１
２，１３の少なくとも一方を剛性切り換え可能とする。
バネ帽１０に、軸箱側部円筒積層ゴム１３の支持座１０
ｂを一体形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道車両用軸箱支
持装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】鉄道車両の軸箱支持装置として、車体前
後方向両側に延びる支持腕を有する軸箱上部と台車枠の
バネ帽との間にコイルバネを配置し、両支持腕をそれぞ
れ円筒積層ゴムを介して前記台車枠に支持させる構成
や、例えば、特開平５−２３８３８９号公報に示される
ように、車体前後方向の片側に延びる支持腕を有する軸
箱上部と台車枠のバネ帽との間にコイルバネを配置し、
前記支持腕を円筒積層ゴムを介して前記台車枠に支持さ
せたものがある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、車体前後方
向両側に延びる支持腕を有する構成では、軸箱支持剛性
は確保できるものの、軸箱の重量増と台車長を小さくで
きない問題がある。また、車体前後方向の片側に延びる
支持腕を有する構成では、円筒積層ゴムが１個であるた
め、軸箱支持剛性の確保に限界があり、しかも、軸箱が
ピッチングすると円筒積層ゴムの変位方向は軸方向であ
るため、これを十分に抑えることができない。さらに、
軸箱の左右方向支持は、軸箱とオフセットした支持腕先
端であるため、軸箱が左右方向に大きな力を受けた際
に、軸受にコジリモーメントが発生し、軸受を痛める問
題があった。

【０００４】そこで本発明は、軸箱重量を増加させずに
バネ下質量の低減効果と、台車長の縮小効果を維持しつ
つ、軸箱支持剛性の確保と、軸箱のピッチングを有効に
抑えることができる鉄道車両用軸箱支持装置を提供する
ことを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ため、本発明は、車体前後方向に延びる支持腕を有する
軸箱上部と台車枠のバネ帽との間にコイルバネを配置
し、前記支持腕を円筒積層ゴムを介して前記台車枠に支
持させた鉄道車両用軸箱支持装置において、前記コイル
バネ内に前記軸箱を支持する円筒積層ゴムを配設したこ
とをを特徴としている。また、前記円筒積層ゴムの少な
くとも一方が剛性切り換え可能であること、及び前記バ
ネ帽は、前記支持腕を支持する円筒積層ゴムの支持座を
一体形成していることが望ましい。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示される実
施形態例に基づいて説明する。図１乃至図４は本発明の
第１実施形態例を示すもので、台車１は、車体２を支持
する台車枠３と前後の輪軸４，４とを有し、台車枠３の
左右一対の側梁５の前後方向中心部に車体２を支持する
空気バネ６を配置している。前後の輪軸４，４は、それ
ぞれ軸箱７に回転可能に支持されている。各軸箱７は、
台車内側方向に延びる支持腕８を有し、軸箱支持装置９
にて側梁５の端部に設けられている。

【０００７】軸箱支持装置９は、側梁５の端部に設けら
れるバネ帽１０と、該バネ帽１０と軸箱７との間に配置
されるコイルバネ１１と、該コイルバネ１１内に配設さ
れる軸箱上部円筒積層ゴム１２と、軸箱７の支持腕８と
側梁５との間に配置される軸箱側部円筒積層ゴム１３と
を有している。なお、側梁５の端部と軸箱７との間に
は、軸箱７の上下方向の振動を減衰するダンパ１４が設
けられている。

【０００８】バネ帽１０は、コイルバネ１１を収納する
筒部１０ａと、該筒部１０ａの下部から台車内側方向に
延びる軸箱側部円筒積層ゴム１３の支持座１０ｂとを鋳
造又は鍛造により一体形成したもので、筒部１０ａの外
側面と支持座１０ｂとが側梁５に溶接接合される。これ
により、従来のバネ帽のみを側梁端部に溶接接合するの
に比べ、溶接線長が長くとれ、溶接部の信頼性を向上さ
せることができる。

【０００９】また、バネ帽１０の筒部１０ａ内には、コ
イルバネ１１と軸箱上部円筒積層ゴム１２を保持する受
け部材１５が配置されている。この受け部材１５は、上
部外周のフランジ部１５ａでコイルバネ１１の上部を受
け、筒部１５ｂ内周の段部で軸箱上部円筒積層ゴム１２
の上部を受け、該段部と筒部１５ｂ下部に取り付けられ
る受け板１５ｃとで軸箱上部円筒積層ゴム１２の上下を
拘束する。コイルバネ１１は、前記受け部材１５のフラ
ンジ部１５ａと軸箱７上面のバネ受け座との間に縮設さ
れる。

【００１０】軸箱上部円筒積層ゴム１２は、径寸法の異
なる複数枚の積層板間にゴム板を積層したもので、中央
部に支持孔１２ａが形成されている。この支持孔１２ａ
と受け板１５ｃ中央の挿通孔には、軸箱７上面に固設さ
れた支軸１６が挿通され、該支軸１６はボルト１７及び
押さえ金１８により支軸１６が軸箱上部円筒積層ゴム１
２に取り付けられる。ボルト１７及び押さえ金１８の取
付作業は、バネ帽１０及び受け部材１５の上部中央に形
成された作業孔１９から行われ、作業孔１９はゴムキャ
ップ２０にて塞がれる。

【００１１】軸箱７の支持腕８は、先端に軸箱側部円筒
積層ゴム１３の装着孔８ａを形成している。この装着孔
８ａに装着される軸箱側部円筒積層ゴム１３は、径寸法
の異なる複数枚の積層板間にゴム板を積層するととも
に、中央部に支持孔１３ａを形成し、さらに、積層板と
ゴム板を積層した部分に粘性流体の液室１３ｂ，１３ｂ
を形成し、両液室１３ｂ，１３ｂを絞り弁２０と電磁弁
２１とを並列に備えた流路２２で連通し、電磁弁２１の
作動で軸箱側部円筒積層ゴム１３の剛性を切り換え可能
としている。なお、絞り弁２０は非常に微少な絞りであ
って、この絞り弁２０と電磁弁２１とは、軸箱側部円筒
積層ゴム１３下部の収納室２３内に配置されている。

【００１２】前記支持孔１３ａには、バネ帽１０の支持
座１０ｂに取り付けられた支軸２４が挿通され、ボルト
２５及び押さえ金２６により軸箱側部円筒積層ゴム１３
に取り付けられる。支軸２４は、バネ帽１０の支持座１
０ｂ下面に溶接接合された座板２７にボルト２８，ナッ
ト２９により取り付けられる。なお、このボルト２８を
緩めることにより、前後の輪軸４，４の軸距寸法及び輪
軸４，４の平行度を微調整できる。

【００１３】このように構成することにより、軸箱７の
支持腕８が台車内側へ延びる形状であるから、軸箱７の
重量を増加させることがなく、バネ下質量の低減効果と
台車長の縮小効果を維持できる。また、軸箱７を軸箱上
部円筒積層ゴム１２と軸箱側部円筒積層ゴム１３とで支
持するから、軸箱支持剛性の設計自由度を拡大でき、軸
箱支持剛性を十分に確保できるとともに、円筒積層ゴム
の耐久性を向上できる。さらに、軸箱７のピッチングに
対しては、軸箱上部円筒積層ゴム１２の硬い方向に作用
するため、ピッチングを有効に抑えることができる。ま
た、軸箱上部円筒積層ゴム１２でも軸箱７の左右方向支
持を行うため、軸受にコジリモーメントが大幅に小さく
なり、軸受に優しい構造である。しかも、輪軸４の上下
動にて輪軸４，４の軸距寸法が変化せず、ローリングか
ら蛇行動への連成が解消される。

【００１４】また、図３に示されるように、軸箱側部円
筒積層ゴム１３の電磁弁２１を閉じた状態では、両液室
１３ｂ，１３ｂの粘性流体の移動が絞り弁２０によって
制限されるから、軸箱側部円筒積層ゴム１３の動的な剛
性が高くなり、超高速走行時の走行安定性を向上させる
ことができる。さらに、図４に示されるように、電磁弁
２１を励磁して開いた状態では、両液室１３ｂ，１３ｂ
の粘性流体は、電磁弁２１を介して連通するから、軸箱
側部円筒積層ゴム１３の剛性が低くなり、在来線のよう
な曲線通過性能を向上させることができる。

【００１５】この軸箱側部円筒積層ゴム１３の剛性切り
換え機構は、軸箱支持装置９内に収納可能なため、従来
のシリンダ、梃子、ピン等を用いた輪軸操舵機構に比べ
非常にコンパクトでメンテナンス性に優れ、、電磁弁２
１の作動によるシンプルなアクティブ機構であり、電源
ＯＦＦにて高剛性側となるから安全である。

【００１６】なお、上記実施形態例では、軸箱側部円筒
積層ゴム１３の剛性を切り換え可能としたもので説明し
たが、軸箱上部円筒積層ゴム１２の剛性を切り換え可能
としてもよい。

【００１７】図５は本発明の第２実施形態例を示すもの
で、前記第１実施形態例と同一要素には同一の符号を付
して説明する。本実施形態例の台車１は、低床路面電車
の台車や振子台車等に適した台車で、輪軸４，４間の側
梁５を低くし、軸箱７の支持腕８を台車外側へ向け、軸
箱７をバネ帽１０内のコイルスプリング１１と軸箱上部
円筒積層ゴム１２とで支持し、支持腕８を軸箱側部円筒
積層ゴム１３で支持したもので、この構成でも、前記第
１実施形態例と同様の効果を奏する。

【００１８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の鉄道車両
用軸箱支持装置は、軸箱上部と台車枠のバネ帽との間に
配置されるコイルバネ内に軸箱を支持する円筒積層ゴム
を配設するとともに、車体前後方向に延びる軸箱の支持
腕を円筒積層ゴムを介して台車枠に支持させたので、軸
箱の重量増を招くことなくバネ下質量の低減効果と台車
長の縮小効果を維持できる。また、軸箱をタンデムに配
置した２つの円筒積層ゴムで支持するから、軸箱支持剛
性の設計自由度を拡大でき、軸箱支持剛性を十分に確保
できる。さらに、両円筒積層ゴムの支持により、軸箱の
ピッチング挙動が安定し、輪軸の上下動にて軸距寸法が
変化せず、ローリングから蛇行動への連成が解消され
る。

【００１９】また、両円筒積層ゴムの少なくとも一方を
剛性切り換え可能とすることにより、超高速走行時の走
行安定性の向上と曲線通過性能の向上の両立が図れる。
さらに、バネ帽に、支持腕を支持する円筒積層ゴムの支
持座を一体形成することにより、溶接線長が長くとれ、
溶接作業効率を向上することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の第１実施形態例の軸箱支持装置の断
面図

【図２】 同じく台車の側面図

【図３】 剛性を高くした状態の円筒積層ゴムの概略図

【図４】 剛性を低くした状態の円筒積層ゴムの概略図

【図５】 本発明の第２実施形態例の台車の側面図

【符号の説明】

１…台車、２…車体、３…台車枠、４…輪軸、５…側
梁、７…軸箱、８…支持腕、９…軸箱支持装置、１０…
バネ帽、１１…コイルスプリング、１２…軸箱上部円筒
積層ゴム、１３…軸箱側部円筒積層ゴム

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 車体前後方向に延びる支持腕を有する軸
   箱上部と台車枠のバネ帽との間にコイルバネを配置し、
   前記支持腕を円筒積層ゴムを介して前記台車枠に支持さ
   せた鉄道車両用軸箱支持装置において、前記コイルバネ
   内に前記軸箱を支持する円筒積層ゴムを配設したことを
   特徴とする鉄道車両用軸箱支持装置。
2. 【請求項２】 前記円筒積層ゴムの少なくとも一方が剛
   性切り換え可能であることを特徴とする請求項１記載の
   鉄道車両用軸箱支持装置。
3. 【請求項３】 前記バネ帽は、前記支持腕を支持する円
   筒積層ゴムの支持座を一体形成したことを特徴とする請
   求項１又は２記載の鉄道車両用軸箱支持装置。