JP2003000229A - 微生物とこの微生物を用いた石油代替油の製造方法 - Google Patents

微生物とこの微生物を用いた石油代替油の製造方法

Info

Publication number
JP2003000229A
JP2003000229A JP2001190323A JP2001190323A JP2003000229A JP 2003000229 A JP2003000229 A JP 2003000229A JP 2001190323 A JP2001190323 A JP 2001190323A JP 2001190323 A JP2001190323 A JP 2001190323A JP 2003000229 A JP2003000229 A JP 2003000229A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
microorganism
hydrocarbons
hydrocarbon
alkane
petroleum
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001190323A
Other languages
English (en)
Inventor
Kazuhisa Miyamoto
和久 宮本
Kazumasa Hirata
收正 平田
Meigyoku Boku
明玉 朴
Hitoshi Miyasaka
均 宮坂
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kansai Electric Power Co Inc
Original Assignee
Kansai Electric Power Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kansai Electric Power Co Inc filed Critical Kansai Electric Power Co Inc
Priority to JP2001190323A priority Critical patent/JP2003000229A/ja
Publication of JP2003000229A publication Critical patent/JP2003000229A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い炭化水素産生能を有する新規微生物と、
この微生物を用いた石油代替油の製造方法を提供する。 【解決手段】 ビブリオ・フルニッシー(Vibrio furni
ssii)に属し、炭素源を基質として炭化水素を産生する
微生物と、この微生物を炭素源を含む培地中で培養し、
培養物から単離・精製した炭化水素から石油代替油を製
造することを特徴とする石油代替油の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】この発明は、炭化水素産生能
の極めて高い新規微生物と、この微生物を用いて石油代
替油を製造する方法に関するものである。
【従来の技術とその課題】大気中の二酸化炭素増加に伴
う地球規模の温暖化等の環境汚染問題は、資源を再循環
させることなく排出し続ける現在の産業技術に一因が求
められている。また、化石エネルギーの枯渇への懸念も
相まって、循環型エネルギー生産の構築は緊急と課題と
なっている。これまでに循環型エネルギー生産を目的と
した様々な検討が行われており、廃棄物バイオマスをメ
タン、水素、エタノール等へ変換する方法が提案されて
いる(文献Biorechnol. Bioeng., 28, 1014-1023, 198
6; J. Ferment. Bioeng., 84,428-433, 1997; Biomass,
23, 179-199, 1990; J. Ferment. Bioeng., 27, 286-2
95, 1994)。しかしながら、メタンや水素等の気体燃料
は液体燃料に比べ貯蔵や輸送にコストがかかるため、現
段階では生産地における局所的エネルギー(domestic e
nergy)の枠を出ないとされている。また、エタノール
生産についても生成物が低濃度であるため、蒸留等の濃
縮操作が必要となり、未だ現実的な利用段階には至って
いない。この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑み
てなされたものであって、新しい循環型エネルギーとし
ての石油代替油を製造するために、石油成分である炭化
水素を高効率で産生する新規微生物を提供することを課
題としている。またこの出願の発明は、前記微生物を用
いた石油代替油の製造方法と、この方法によって製造さ
れる石油代替油を提供することを課題としてもいる。
【課題を解決するための手段】この出願は、前記の課題
を解決する発明として、ビブリオ・フルニッシー(Vibr
io furnissii)に属し、炭素源を基質として炭化水素を
産生する微生物を提供する。またこの出願の発明は、ビ
ブリオ・フルニッシーM1(Vibrio furnissii M1:FERM
P-18382)を提供する。さらにこの出願の発明は、前記
の微生物を、炭素源を含む培地中で培養し、培養物から
単離・精製した炭化水素から石油代替油を製造すること
を特徴とする石油代替油の製造方法を提供する。またさ
らに、この出願の発明は、前記の方法によって製造され
た石油代替油を提供する。以下、この出願の発明につい
て、実施形態を詳しく説明する。
【発明の実施の形態】この発明の微生物は、ビブリオ・
フルニッシー(Vibrio furnissii、以下「V.furnissi
i」と記載する)に属し、炭素源を基質として高い炭化
水素産生能を有することを特徴とする。このような微生
物は、この出願の発明者らが新たに分離・同定したV. f
urnissii M1株(FERM P- )を例示することができる
が、この発明の微生物はM1株に限定されるものではな
い。後記の方法によって、同様に高い炭化水素産生能を
有するV. furnissii株を分離・同定することができる。
なお、この発明の微生物V. furnissiiは酸素の有無に係
わらず高い炭化水素生産性を有しており、使用目的や実
施条件等に応じて嫌気性、好気性のいずれの培養条件を
採用することもできる。また、嫌気性培養の場合には酸
素を必要としないため、微生物から産生された炭化水素
と酸素との共存による火災、爆発等の危険性を排除でき
るという点において優れている。この発明の微生物の培
養に使用する培地は、この菌株が良好に生育するもので
あれば、いかなる組成の培地であっても良く、また、菌
体増殖用と炭化水素生産用にそれぞれ異なる2種類の培
地を用いても良い。炭化水素生産用の培地には、この発
明の微生物による炭化水素生産の基質となる炭素源を含
有させる。また、培地成分として適当な窒素源および無
機イオン等を含有していても良い。炭素源は特に制限は
なく、公知の炭素源を使用することができるが、酢酸、
リンゴ酸、コハク酸、プロピオン酸、バルミチン酸等の
低級脂肪酸、デンプン、ショ糖等が好ましく使用でき
る。これらの炭素源は、単独または混合して培地に添加
することができる。また、混合基質の一形態として、後
記するように有機廃棄物を利用することもできる。この
ような廃棄物の利用は、エネルギーの循環利用という観
点から特に好ましい。また、窒素源としては、硫酸アン
モニウム、硝酸アンモニウム等の無機窒素化合物、およ
びペプトン、酵母エキス等の有機窒素源が利用できる。
さらに、無機イオンとしては、リン酸イオン、マグネシ
ウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオン、鉄イ
オン、銅イオン、マンガンイオン等が挙げられ、これら
無機イオンを培地に無機塩等の形で含有させても良い。
この発明の微生物の培養方法としては、振とう培養法等
の液体培地による培養法および寒天培地等の固体培地に
よる培養法等が利用できる。培養温度は例えば15〜42
℃、好ましくは30〜40℃であり、培地のpH中性付近であ
る。炭化水素生産時の培養時間は、菌体量ならびに炭化
水素の産生等に応じて決めることができるが、4時間か
ら48時間、より好ましくは8時間から24時間が適当であ
る。以下、V. furnissii M1株の分離・同定、その機能
解析の結果、並びにこの菌株を用いて有機廃棄物からの
炭化水素生産の一例を示す。ただし、この出願の発明は
以下の例によって限定されるものではない。 1.炭化水素分泌産生菌Vibrio furnissiiの分離・同定 この出願の発明者らは、酢酸、リンゴ酸、コハク酸、プ
ロピオン酸を基質として高効率で水素生産を行う微生物
を環境中から分離する過程で、高い脂質産生能をもつバ
クテリアを得た。そして、この分離したバクテリアの産
生する脂質の分析およびバクテリアの同定を行った。得
られたバクテリアの培養液は脂質を多く含んでおり、こ
れを静置すると脂質膜が液表面に形成されるのが観察さ
れた。培養中の総脂質量の変化を調べた結果、この分離
株において脂質生産は増殖依存的に行われることが確認
された(図1)。細胞バイオマスに匹敵する量の生産が
起こったのは、脂質が細胞内だけでなく培養液中にも放
出されたためと考えられる。同株に見られるような高い
脂質生産性は、過去に他の微生物に例を見ない。さら
に、その脂質は主に中性脂質から成り、炭化水素と同等
のRf値を示すものが最も多く含まれていることが確認さ
れた(図2)。同時に、培養液中の脂質は細胞内脂質と
ほぼ同等の成分を含み、いずれも炭化水素を含むことが
明らかとなったことから、この炭化水素分画の定性分析
を行った。炭化水素分画の赤外光吸収は、図3にに示す
ようにn-アルカンに特有のピークを示した。また、48時
間培養後の培養液から得た炭化水素についてGC-MS分析
を行ったところ、その成分がn-アルカンである、C
12H32、C21H44、C22H46、C24H50等であることが明らか
になった(図4)。なお、GC-MS分析に際しては、EI法
とCI法の併用によって化合物の帰属を行った。二つの方
法を併用するのは、中長鎖n-アルカンの分子イオンピー
クがEI法では得られにくく、またCI法ではアルキルフラ
グメントイオンピークが得られにくいためである。得ら
れたアルカンはその炭素数において、灯油および軽油に
相当するものであった。すなわち、代替燃料として現行
の燃料機関に直接用いることが可能であることが示され
た。また、細胞内および培養液中の炭化水素についてそ
れぞれGC-MS分析を行ったところ、両者は同一の成分を
含むことが示された。両者の炭化水素生産の経時的変化
を図5に示した。細胞内の炭化水素量は培養4時間目以
降ほぼ一定に保たれたが、これは細胞内の炭化水素プー
ルが飽和に達したためと考えられる。一方で培養液中の
炭化水素は増加し続けることが示された。これらのこと
から培養液中の炭化水素は、細胞内で生産された後に、
それが放出されたものであると考えられる。培養液中の
炭化水素生産は細胞増殖が活発な時期に既に始まってい
ることから、細胞死に伴う漏出とは区別されると考えら
れる。実際に脂溶性色素を使って細胞膜損傷を調べた結
果、培養48時間目になって初めて損傷が確認された。さ
らに、至適生育塩濃度を調べたところ、分離に用いた条
件と同じ3% NaCl存在下で、最大の増殖速度が得られた
(図6)。このことからも、浸透圧ストレスに起因する
細胞の破壊が起こっている可能性は否定された。なお、
一部のグラム陰性菌においては、細胞壁からのリボ多糖
の遊離がしばしば見出されている。そこで、総脂質を分
画したTLCプレート上で糖脂質およびリン脂質の特異的
染色を行ったが、いずれの脂質も原点にわずかに検出さ
れたのみであった。また、リボ多糖を分解するために
は、強い酸性条件下に置く必要があることから、アルカ
ンが脂質抽出操作中に変性によって生成された可能性は
否定された。次に分離株の同定結果を表1に示した。分
離株はVibrio属に特有のコンマ状の細胞形態を示した。
また、API20E同定キットによる判定から同株がVibriona
ceae科であることが示された。
【表1】 分離株の16S rRNA配列はVibrio furnissiiおよびVibrio
fluvialisと98%以上の相同性を示した。一般に2つの
株の間で16S rRNA配列の相同性が98%以上であった場
合、両者は同一であると判定される。V.furnissiiはか
つてV.fluvialisのガス産生性グループ(グループ2)
として分類されており(J.Clin.Microbiol.18, 816-82
4, 1983)、両者のDNA配列は非常に相同性が高いことが
知られている。分離はD-グルコースを基質としたときに
ガスを産生したことから、V.furnissii であると同定さ
れた。そこで、この分離株をV. furnissii M1株と命名
し、2001年6月20日付で独立行政法人産業技術総合研究
所特許生物寄託センターに寄託し、受託番号FERM P-183
82を得た。なお、V.furnissiiは日本細菌学会分類によ
ると、危険度クラス1に属し、人体への感染は過去に報
告されていない。過去の報告によると、Vibrio属におい
ても他のグラム陰性菌と同様に総脂質の主成分は極性脂
質であり、炭化水素の含量は細胞乾燥重量の0.04%以下
と極微量である(J. Bacteriol., 93, 1811-1818, 196
7)。また、V.furnissii M1株の近縁種における脂質生
産を調べたところ、先の検討で高い相同性を示したV.fu
rnissii ATCC 35016、V.fluvialis ATCC 33809はV.furn
issii M1と比較して炭化水素生産量が著しく少なかった
(表2)。これらの結果から、V.furnissii M1は既知の
Vibrio属の株と比較して、高い炭化水素生産能をもつこ
とが明らかになった。一方で、上記の同属株において
も、培養液中に炭化水素が少量ではあるが検出された。
また、これらの細胞および培養液中の炭化水素組成を比
較したところ、両者における炭化水素の分布パターンは
ほとんど一致した。このことから、V.furnissii M1が細
胞外へと炭化水素を放出する性質は、同株が膜機能変異
などによって獲得したものではないことが示された。そ
してこのことは、M1株以外にも高い炭化水素産生能を有
するV.furnissii属細菌の存在を示唆する。
【表2】 2. V.furnissii M1におけるアルカン生合成機構の解
析 バクテリアにおける炭化水素の存在量は一般に極微量で
ある。E.coli等においては、非イソプレノイド型の偶数
・奇数炭素鎖アルカンがその主成分を占める(Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA, 64, 436-443, 1969; Experienti
a, 38, 43-47, 1982)。しかし、未だそのアルカン生合
成機構は明らかではない。一方、高等植物、微細藻類、
昆虫においてアルカン生合成の機構は既に解明されてい
る(Arch. Biochem. Biophys., 377, 341-349, 2000; A
rch. biochem. biophys., 287, 268-275, 1991; Proc.
Natl. Acad. Sci. USA, 91, 10000-10004, 1994)。す
なわち、脂肪酸が還元されてアルデヒドが生成され、こ
れが脱カルボニルを受けてアルカンが生成するというも
のである。そこで、高いアルカン生成能を有するV.furn
issii M1を用いて、バクテリアのアルカン生合成機構に
ついて検討を行った。アルカンの生合成前駆体となる遊
離脂肪酸についてその細胞内分布を調べたところ、バル
ミチン酸が最も多く、他にミリスチン酸、ステアリン酸
が含まれることが確認された(図7)。一方、アルカン
生合成の中間体と考えられるアルデヒドは検出されなか
ったが、遊離のヘキサデカノール、オクタデカノール等
のアルコールが検出された。そこで、以降のアルカン生
合成経路に関する検討においては、バルミチン酸を基質
とした。次に、in vivoの検討においてバルミチン酸を
基質としてアルカンの生成が起こることを確認した。煮
沸処理した細胞において同様の反応は確認されなかった
ことから、アルカンは生合成によって得られたものと考
えられる。細胞分画を行ったところ、ミクロソーム分画
において最も高い活性が得られた(表3)。
【表3】 またその生成物アルカンはペンタデカンおよびヘキサデ
カンであることが確認された(図8)。ペンタデカンの
生成は、他の生物で確認されたのと同様に還元的脱カル
ボニル反応によるものと考えられる。一方、ヘキサデカ
ンの生成は前者とは異なった経路で生成したと考えられ
る。すなわち、連続した還元反応によって、生成したも
のと考えられる。次にヘキサデカン生合成についてさら
なる確証を得るために、放射性基質を用いた検討を行
た。[1-14C]バルミチン酸を基質として反応を行ったと
き、14Cの放射活性がCOおよびアルカンにおいて確認さ
れた(図9)。14COの存在はペンタデカンの生成を意味
し、また脱カルボニルが起こるのはC-1位であるから、
14C-アルカンの存在は脱カルボニル以外の経路によって
もアルカンの生成が起こっていることを意味する。さら
に、アルデヒド分画およびアルコール分画から14Cが確
認されたことは、これらがアルカン生合成の中間体であ
ることを意味する。以上の事実より、V.furnissii M1に
おいて2つのアルカン生合成経路が存在することが確認
された。これらは図10に示すように、これまで報告され
ている還元的脱カルボニル経路と、この出願の発明者ら
によって初めて示唆された連続的還元経路である。連続
的還元経路は、炭化水素資化性菌に見られるアルカンの
連続的酸化経路の逆経路に等しい。アルカン生合成に関
与する酵素は極度の疎水的環境を必要とするので、連続
的還元を行うのはヒドロゲナーゼではなく、レダクター
ゼであることが予想される。さらに、細胞を用いた検討
より、グルコースからC14-C22のn-アルカンがde novo合
成によって生成することを確認した(図11)。生成物ア
ルカンは偶数・奇数炭素数のものが交互に得られてい
た。これは、脂肪酸がC2単位の鎖伸長を受ける脂肪酸鎖
伸長経路を経てアルカン生合成経路に入る、と解釈する
ことができる。また、興味深いのは、V.furnissii M1に
おいてアルカン生合成を行わせるのに嫌気的な条件をと
くに必要としないという事実である。このことはin viv
o において、還元力が非常に豊富に供給されていること
を意味する。さらに、可溶化したアルカン生合成酵素の
部分精製をDEAE-Sephacelカラムを用いて行った(図1
2)。二つのアルカン生成活性は互いに分離されたこと
から、2つのアルカン生成系の少なくとも最終段階は別
の酵素系の働きによることが示唆された。以上のとおり
の知見は、一部のバクテリアにおけるアルカン分布につ
いての過去の報告とも一致するものである。これらの報
告はバクテリア・アルカンの偶数・奇数比がほぼ等しい
ことを記載しているが、この現象は前記のとおりに新た
に提案した生合成経路によって説明され得る。 3. V.furnissii M1を用いた有機性廃棄物の石油代替
燃料への変換 前記の知見を基に、循環型エネルギー生産の構築を目的
として、有機性廃棄物の炭化水素への変換を試みた。先
ず、廃棄物中に含まれる炭素源以外の成分が炭化水素生
産に与える影響について調べた。微生物の脂質生産につ
いてはその基本的な生理機構についての理解が得られて
いる。中でも、培地中の炭素対窒素比(C:N比)は脂
質生産を左右する因子とされている(Single Cell Oil,
Longman Scientific & Technical, 1998, pp1-28)。
これは、N欠乏時にはCおよびエネルギーを脂質の形態
で蓄積する分路機構が働くためと考えられている。一方
で、V.furnissii M1の炭化水素生産においてC:N比の
影響による変化は見られなかった(図13)。これはV.fu
rnissii M1において炭化水素生産量はタンパク生産量を
はるかに上回っているので、仮に分路機構が稼働しても
その影響は相対的に小さくなるためと考えられる。嫌気
状態においても炭化水素生産の促進はとくに認められな
かったことから、酸素の存在は炭化水素生産に影響を与
えないことが示された。微量栄養素は炭化水素の生成と
代謝のバランスを担う重要な因子であることが明らかと
なった(図14)。図14は微量栄養素を含む半合成培地と
これらを含まない合成培地における炭化水素生産の経時
的変化を示したものである。合成培地において見られる
増殖定常期以降の炭化水素の減少は、炭化水素が細胞に
よって消費されていることを示唆するものである。貧栄
養状態において炭化水素が資化されることは、炭化水素
の生理的存在意義がCおよびエネルギーの貯蔵にあるこ
とを示唆するものである。炭化水素の資化を抑えるため
に、以降の検討においては半合成培地を基本条件として
用いることにした。次に、実際の有機性廃棄物中に含ま
れる炭素源について、その炭化水素生産への利用性のス
クリーニングを行った。広く得られやすい下水処理水、
食品加工廃棄物、農林水産廃棄物について、文献からそ
の炭素源組成を調べ、主要な炭素源をスクリーニングの
材料として用いることにした。まず、初段階のスクリー
ニングを95種類の炭素源について行い、これらを唯一の
炭素源としたとき、細胞増殖または基質の酸化が起こる
ものを選択した。炭素源の資化または酸化の指標として
は、酸化還元色素の呈色反応を利用した。このように選
択した候補について、次にその炭化水素への変換を調べ
た(表4)。V.furnissii M1は様々な炭素源を炭化水素
へと変換することができた。特に一連の低級脂肪酸は炭
化水素生産の優れた基質であったことから、これらを多
く含む下水処理水、食品加工廃水などが基質として利用
可能であることが示された。またデンプンは加水分解処
理などを経ずに直接炭化水素への変換が可能であること
が示された。ショ糖もまた優れた基質であったことか
ら、廃糖蜜や製糖工場廃液などが利用可能であることが
示された。さらに、いずれの基質を用いた場合も生成物
の鎖長は中長鎖であったことから、有機性廃棄物の変換
によって燃料特性の優れた炭化水素が得られることが確
認された。
【表4】 以上の検討から得られた知見を基に、代表的な廃棄物で
ある廃糖蜜を基質として炭化水素への変換を試みた(図
15)。24時間の培養で得られた炭化水素は約9mg/50ml
であった。これは消費された全糖中の炭素のうち約20%
が炭化水素へと変換された計算となり、生物触媒の変換
効率としては非常に優れていることが確認された。
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の
発明によって、高い炭化水素産生能を有する新規微生物
と、この微生物を用いた石油代替油の製造方法が提供さ
れる。この発明の微生物が産生する炭化水素は、石油の
主成分と同等のものであり、現行の内燃機関および輸送
・貯蔵系をそのまま利用することができるため、新しい
循環型エネルギーとして大きな可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】細胞増殖と脂質生産の関係を示したグラフであ
る。白三角は増殖の程度、黒丸は培地中の脂質量、黒四
角は細胞中の脂質量を示す。
【図2】総脂質のTLC分画の結果である。
【図3】分離株が生産した炭化水素の3 IRスペクトラム
である。
【図4】分離株が生産した炭化水素のGC-MSスペクトラ
ムである。
【図5】分離株による炭化水素生産の経時的変化を示す
グラフである。黒丸は培地中の炭化水素、黒四角は細胞
中の炭化水素を示す。
【図6】分離株の増殖に対するNaCl濃度の効果を示すグ
ラフである。黒四角は0.5%、黒三角は1%、黒丸は3%、白
四角は5%、白三角は7%、白丸は10%、×印は20%のNaCl濃
度を示す。
【図7】V. furnissii M1株によって酢酸から生産され
た遊離脂肪酸およびアルコール誘導体のMSスペクトラム
である。メチルエステルは、N,N-dimethylformamide-di
methyl acetalを用いた遊離脂肪酸のメチル化によって
調製した。トリメチルシリルエステルは、N,O-bis(trim
ethylsilyl) trifluoroacetamideとtrimethylchlorosil
aneの混合物(99:1)を用いた脂肪アルコールのエステ
ル化によって調製した。
【図8】ミクロソーム分画によってパルミチン酸から生
産されたアルカンのGC-MSスペクトラムである。
【図9】ミクロソームによる[1-14C]パルミチン酸から
の産生物における放射活性の測定結果を示すグラフであ
る。
【図10】新たに提案されたアルカンの生合成過程であ
る。
【図11】V. furnissiiによってグルコースから生成され
たn-アルカンのGCチャートである。
【図12】パルミチン酸からアルカンを生成する酵素の、
イオン交換クロマトグラフィーによる分画である。白丸
はC15H32、黒菱はC16H34、実線はタンパク質、点線はKc
lを示す。
【図13】炭化水素およびタンパク質生産に対するC:N比
変化の効果を示すグラフである。黒バーは炭化水素、白
バーはタンパク質を示す。
【図14】様々な培地における炭化水素生産の測定結果を
示すグラフである。Aは乳酸を含む半合成培地、Bは乳酸
を含む合成培地、Cはデンプンを含む半合成培地、Dはデ
ンプンを含む合成培地の結果である。白丸は増殖の程
度、黒丸は炭化水素量を示す。
【図15】廃密糖を唯一の炭素源とする培地における炭化
水素生産、細胞増殖および全糖消費の経時的変化の測定
結果である。黒丸は炭化水素、白丸は増殖の程度、白四
角は全糖を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平田 收正 大阪府枚方市楠葉丘一丁目21番8号 (72)発明者 朴 明玉 岩手県釜石市上中島町二丁目6番 (72)発明者 宮坂 均 大阪府大阪市北区中之島3丁目3番22号 関西電力株式会社内 Fターム(参考) 4B064 AB02 CA02 CC03 CD04 DA16 DA20 4B065 AA55X AC14 BB04 CA03 CA54 CA60

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビブリオ・フルニッシー(Vibrio furni
    ssii)に属し、炭素源を基質として炭化水素を産生する
    微生物。
  2. 【請求項2】 ビブリオ・フルニッシーM1(Vibrio fur
    nissii M1:FERM P-18382)である請求項1の微生物。
  3. 【請求項3】 請求項1または2の微生物を、炭素源を
    含む培地中で培養し、培養物から単離・精製した炭化水
    素から石油代替油を製造することを特徴とする石油代替
    油の製造方法。
  4. 【請求項4】 炭化水素が、n-アルカンである請求項3
    の方法。
  5. 【請求項5】 請求項3の方法によって製造された石油
    代替油。
JP2001190323A 2001-06-22 2001-06-22 微生物とこの微生物を用いた石油代替油の製造方法 Pending JP2003000229A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001190323A JP2003000229A (ja) 2001-06-22 2001-06-22 微生物とこの微生物を用いた石油代替油の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001190323A JP2003000229A (ja) 2001-06-22 2001-06-22 微生物とこの微生物を用いた石油代替油の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003000229A true JP2003000229A (ja) 2003-01-07

Family

ID=19029109

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001190323A Pending JP2003000229A (ja) 2001-06-22 2001-06-22 微生物とこの微生物を用いた石油代替油の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003000229A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2434006A2 (en) 2005-04-12 2012-03-28 Denso Corporation Novel microalga and process for producing hydrocarbon

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2434006A2 (en) 2005-04-12 2012-03-28 Denso Corporation Novel microalga and process for producing hydrocarbon

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Petitdemange et al. Fermentation of raw glycerol to 1, 3-propanediol by new strains of Clostridium butyricum
KR101375029B1 (ko) 신규 세균 및 이의 이용 방법
Franzmann et al. Halobacterium lacusprofundi sp. nov., a halophilic bacterium isolated from Deep Lake, Antarctica
Sompong et al. Optimization of simultaneous thermophilic fermentative hydrogen production and COD reduction from palm oil mill effluent by Thermoanaerobacterium-rich sludge
Maitra et al. Ecological significance and phosphorus release potential of phosphate solubilizing bacteria in freshwater ecosystems
Kim et al. Hydrogen production conditions from food waste by dark fermentation with Clostridium beijerinckii KCTC 1785
Duangmanee Hydrogen production by anaerobic microbial communities exposed to repeated heat treatments
US20090137013A1 (en) Microorganisms and methods for increased hydrogen production using diverse carbonaceous feedstock and highly absorptive materials
Ike et al. Hydrogen photoproduction from CO2-fixing microalgal biomass: application of halotolerant photosynthetic bacteria
CN102317463A (zh) 厌氧微生物发酵生产丁二醇
CN101426900B (zh) 新的微生物及使用该新的微生物制造十二氢-3a,6,6,9a-四甲基萘并[2,1-b]呋喃中间体的方法
US20190301029A1 (en) Bioelectrosynthesis of organic compounds
Johnson et al. Utilization of molasses for the production of fat by an oleaginous yeast, Rhodotorula glutinis IIP-30
CN103992959A (zh) 长链二元酸生产菌株及其制备方法和应用
JP2003000229A (ja) 微生物とこの微生物を用いた石油代替油の製造方法
CN110564649A (zh) 一株产脂肪酶菌株及其应用
Ormerod Physiology of the photosynthetic prokaryotes
Huang et al. Hydrogen production by non-photosynthetic bacteria
Akasaka et al. Effects of plant residue extract and cobalamin on growth and propionate production of Propionicimonas paludicola isolated from plant residue in irrigated rice field soil
Chen Biological hydrogen production by anaerobic fermentation
KR102079741B1 (ko) 메타노박테리움 콩고렌스를 유효성분으로 포함하는 포름산 제거용 조성물 및 이를 이용한 숙신산 제조방법
Ziganshin et al. Hydride-mediated reduction of 2, 4, 6-trinitrotoluene by yeasts as the way to its deep degradation
JP4480436B2 (ja) メタン資化菌
JPS60114187A (ja) 新規微生物
Jiao et al. Isolation and enzyme determination of Candida tropicalis mutants for DCA production