JP2002515893A - ヒトラクトフェリンおよびその改変体の有用な特性 - Google Patents
ヒトラクトフェリンおよびその改変体の有用な特性Info
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Abstract
(57)【要約】
本発明は、ヒトラクトフェリン、またはタンパク質のアミノ末端領域で(すなわち、第1の塩基性クラスターで)1つ以上のアルギニン残基を欠くラクトフェリン改変体を含む組成物、およびこの組成物を使用する方法を提供する。ヒトラクトフェリンまたはラクトフェリン改変体は、炎症を含む、ヒトの疾患および症状の処置に有用である。
Description
【発明の詳細な説明】
ヒトラクトフェリンおよびその改変体の有用な特性
発明の背景
ラクトフェリン(LF)は、乳汁、涙、唾液、気管支分泌物、腸分泌物、膣分泌
物、および他の分泌物に見られるMr77,000の金属結合糖タンパク質である。LFは
また、好中球の二次顆粒に存在する。ラクトフェリンは、単球コロニー刺激因子
合成の調節、インターロイキン合成の調節、ナチュラルキラー細胞活性の活性化
、転移の阻害、およびT細胞の成熟のような、多くの炎症および免疫応答機能に
重要な役割を果たす。
LFのアミノ酸配列は、タンパク質配列決定およびcDNAクローンの配列決定によ
って決定されている。ヒトLF(hLF)は、692アミノ酸のポリペプチド鎖からなる
。hLFのアミノ末端領域は、塩基性残基の2つのクラスター、RRRR(残基2〜5
)およびRNMRKVR(残基25〜31)を含む。LFポリペプチドは、2つの球状ローブ(
lobe)に折り畳まれ、そのそれぞれは鉄結合クレフトを含む。LFの鉄に対する高
い親和性は、タンパク質に特定の抗菌特性を与え、そしてさらに、小腸による規
定の鉄の吸収において役割を果たし得る。
LFの生物学的活性化のいくつかは、鉄の結合からではなく、他の分子に結合す
る能力から生じる。hLFとヒトリゾチーム(hLZ)との間の直接的分子間相互作用
は、これらの2つのタンパク質の抗菌作用間の相乗作用を説明し得る。リポ多糖
(LPS)およびポーリンのような細菌外膜成分とhLFとの相互作用は、おそらく、
hLFの抗菌活性に重要な役割を果たす。LPSのリピドA部分へのhLFの結合は、増
強されたfMLPがきっかけとなるスーパーオキシド放出についての好中球のLPSプ
ライミングを阻害する。LFのヘパリンとの相互作用は、ヘパリンの抗凝固活性の
中和を説明し得る。
LFのいくつかの生物学的活性は、膜結合したレセプターによるLFと細胞との間
の相互作用を生じる。例えば、単球、マクロファージ、および活性化したリンパ
球の特異的レセプターへのLF結合は、サイトカイン産生の阻害を生じる。hLFへ
の特異的結合を示す細胞には、肝細胞、腸細胞、乳腺上皮細胞、単球細胞株、活
性化したリンパ球、および血小板が挙げられる。
発明の簡単な要旨
本発明は、ヒトラクトフェリン、またはタンパク質のアミノ末端領域における
(すなわち、第1の塩基性クラスターにおける)1つ以上のアルギニン残基を欠
失したラクトフェリン改変体を含む組成物、および組成物の使用を提供する。1
つの局面では、本発明は、第1の塩基性クラスターにおける1つ以上のアルギニ
ン残基を欠失したヒトラクトフェリン改変体を含む組成物である。本発明は、特
に、ヒトラクトフェリン改変体hLF-2N、hLF-3N、hLF-4N、およびhLF-5Nに関する
。これらの改変体のこれらの結合特性は、有利な点で、天然ラクトフェリンの特
性とは異なる。1つの局面では、組成物は、必要に応じてウシ乳汁を含む、薬学
的組成物である。いくつかの実施態様では、ヒトラクトフェリンまたはラクトフ
ェリン改変体は、鉄で飽和され、代表的には少なくとも95%飽和される。
本発明はまた、ヒトラクトフェリンおよびラクトフェリンアルギニン欠失改変
体の使用に関する。1つの局面では、本発明は、hLFまたはhLF改変体を投与する
ことによって、ラクトフェリンレセプター、例えば、105kdラクトフェリンレセ
プターを活性化する方法を提供する。
他の局面では、本発明は、ラクトフェリンまたはラクトフェリン改変体を投与
することによって、患者においてラクトフェリンレセプター保有細胞から、IL-1
、IL-2、またはTNFαのようなサイトカインの放出を減少または阻害する方法を
提供する。
他の局面では、本発明は、ヒトラクトフェリンまたはラクトフェリン改変体が
、慢性炎症性腸疾患の処置のために骨髄造血を阻害するために、または患者にお
いてTNFα媒介好中球脱顆粒を減少させるために、患者に投与される方法を提供
する。
他の局面では、本発明は、鉄で少なくとも約95%飽和されるヒトラクトフェリ
ンまたはラクトフェリン改変体の組成物を患者に投与することによって、患者に
おいてラクトフェリンレセプター保有細胞に鉄を送達する方法を提供する。これ
らの化合物の投与は、例えば、貧血または鉄蓄積疾患(iron storage disease)の
処置に有益である。
他の局面では、本発明は、ヒトラクトフェリンまたはラクトフェリン改変体が
、炎症を減少させるために患者に投与される方法を提供する。hLFおよびhLF改変
体の投与は、心筋梗塞後の患者における再灌流障害を減少させるために有用であ
る。
他の局面では、本発明は、ヒトラクトフェリンまたはラクトフェリン改変体が
、患者において固形腫瘍の増殖を阻害するために、および患者においてナチュラ
ルキラー(NK)細胞を刺激するために、患者に投与される方法を提供する。
本発明はまた、ウイルス侵入が、ウイルスと細胞表面プロテオグリカンとの間
の相互作用によって媒介される、ウイルス、例えば、CMV、HIV、またはHSV1ウイ
ルスの細胞への侵入を阻害するための方法を提供する。
関連する局面では、本発明は、ラクトフェリンの第1の塩基性クラスターが、
例えば、抗ラクトフェリンモノクローナル抗体またはヘパリンの結合によって中
和され、そのためラクトフェリンが、天然のラクトフェリンよりも高い親和性で
Jurkat細胞105kDラクトフェリンレセプターを結合する、ヒトラクトフェリンを
含む組成物である。
他の局面では、本発明は、第1の塩基性クラスターを含むが、第2の塩基性ク
ラスターを含まない、ラクトフェリン改変体を含む薬学的組成物を提供する。
図面の簡単な説明
図1は、固相ヘパリン、リピドA、hLZ、およびDNAへのhLFの結合を示す。精
製した天然hLF(50ng/ml)の連続希釈を、記載のようにマイクロタイタープレー
トにコーティングされたヘパリン(●)、リピドA(×)、hLZ(□)、およびdsDNA(
■)とともにインキュベートした。結合したhLFを、ペルオキシダーゼ標識した
ウシ抗hLFとの続いてのインキュベーションによって検出した。基質変換を硫酸
で停止した後に測定したA450値を、縦軸に示す。ウェル中のhLF濃度を、横軸に
示す。
図2は、LPSおよびhLZへのhLFの結合におけるNaCl濃度の影響を示す。Salmone
lla minnesota Re595(●)またはhLZ(○)由来のLPSが固定される等量のSepharose
を、0.02%(w/v)Tween-20および種々の濃度のNaClを含む10mMリン酸ナトリウム
緩衝液、pH7.6に懸濁した。Sepharoseビーズを、ヘッドオーバーヘッドローテー
ションによって125I-hLFとともにインキュベートした。16時間後、ビーズを10mM
リン酸ナトリウム、0.02%Tween-20で洗浄し、そして結合した放射能を測定した
。結果を、添加した125I-hLFの総量の結合割合として表した。Sepharose懸濁液
のNaCl濃度を横軸に示す。
図3は、ヘパリン、リピドA、およびhLZに結合するhLFの抗hLF mAb E11によ
る競合阻害を示す。プレートを、ヘパリン(左)、リピドA(中)、およびhLZ
(右)でコーティングした。ビオチン化hLFを、記載のように抗hLF mAb E11(□)
、抗hLF mAb E3(■)、およびコントロールmAb(●)の連続希釈とともにプレイ
ンキュベートした。競合物の存在で結合する残りのhLF(競合物なしでのhLFに関
して;100%)を、縦軸に示す。ウェル中のmAb濃度(nM)を横軸に示す。
図4は、抗hLF mAbへの組換えN-およびC-ローブならびに天然hLFの結合を示す
。天然hLF(100ng/ml、□)およびrN-ローブ(○)またはrC-ローブ(Δ)を分泌
する293(S)細胞の馴化培地の連続希釈を、記載のようにマイクロタイタープレー
トにコーティングされた精製したmAb E11(A);E3(B)およびE19(C)とともにイン
キュベートした。結合したhLFを、ペルオキシダーゼ結合抗hLFとの続いてのイン
キュベーションによって検出した。基質変換を硫酸で停止した後に測定したA45 0
値を、縦軸に示す。試験した実験容量(μl)を、横軸に示す。
図5は、抗hLF mAb E11およびE3へのN末端欠失したおよび天然のhLFの結合の
比較を示す。天然hLF(40μg/ml、■)、hLF-2N(20μg/ml、□)、hLF-3N(10
μg/ml、●)、およびrhLF-5N(7μg/ml、○)の連続希釈を、Sepharoseにカッ
プリングしたmAb E11(A)またはE3(B)とともにインキュベートした。結合したhLF
を、ポリクローナル125I-抗hLF抗体との続いてのインキュベーションによって検
出した。結果を、添加した抗体の総量の結合の割合として表した。
図6は、限定してタンパク質分解されたhLfのMono Sクロマトグラフィー後に
得られる精製したN末端欠失したhLfの非還元SDS-PAGE分析を示す。0.5および0.
6 NaClでMono Sから溶出された限定してタンパク質分解されたhLfを含む画分を
、非還元サンプル緩衝液で希釈し、そして5分間煮沸した後にSDS-PAGE(12.5%
w/
v)にアプライした[van Berkelら,1995,Biochem.J.,312,107-114]。天然
hLF(レーン1)、および1分切断物(レーン2および3)から、5分切断物(レーン
4および5)から、25分切断物(レーン6および7)から、および180分切断物(レ
ーン8および9)から単離されたhLf-2NおよびhLf-3Nのサンプル。すべてのレー
ンは、5μgのタンパク質を含む。右の数字(10-3×Mr)は、タンパク質スタンダー
ドの移動度を示す。サンプルの還元SDS-PAGE分析で同様の結果を得た(データを
示さず)。
図7は、濃度の関数として、Jurkat細胞へのN末端欠失したhLf改変体の結合
を示す。曲線は、hLf(●);rhLf(○);hLf-2N(■);hLf-3N(□);hLf-4N(◇);
およびrhLf-5N(◆)の特異的結合に対応する。値は、二連での2〜3の別々の実
験の平均である。
図8は、Jurkat細胞へのN末端欠失したhLf改変体の結合パラメータを示す。h
LF(1);rhLf(2);hLf-2N(3);hLf-3N(4);hLf-4N(5);およびrhLf-5N(6)の解離
定数(a)および細胞当たりの結合部位の数(b)。値は、二連での2〜3の別々の実
験の平均(±S.E.M.)である。
図9は、濃度の関数としてJurkat細胞へのhLf、bLf、およびmLfの結合を示す
。曲線は、細胞へのhLf(●);bLf(○);およびmLf(□)の特異的結合に対応する
。値は、二連での2〜3の別々の実験の平均である。
図10は、Jurkat細胞へのhLf、bLf、およびmLfの結合パラメータを示す。hLF(1
)、bLf(2)、およびmLf(3)の解離定数(a)および細胞当たりの結合部位の数(b)。
値は、二連での2〜3の別々の実験の平均(±S.E.M.)である。
図11は、天然hLfおよびN末端欠失したhLf改変体の結合に対するJurkat細胞の
塩素酸ナトリウム処理の効果を示す。曲線は、塩素酸ナトリウムの非存在下で培
養したJurkat細胞へのhLf(●)の特異的結合、および30mM塩素酸ナトリウムの存
在下で24時間培養したJurkat細胞へのhLf(○);hLf-3N(■);rhLf-5N(□)の特異
的結合に対応する(方法を参照のこと)。値は、二連での2〜3の別々の実験の
平均である。図12は、30mM塩素酸ナトリウムの存在または非存在下で培養したJurkat細胞へ
の天然hLfおよびN末端欠失したhLf改変体の結合パラメータを示す。塩素酸ナト
リウムの非存在下で培養した細胞におけるhLf(1)の、および24時間塩素酸ナトリ
ウムの存在下で培養した細胞におけるhLf(2);hLf-3N(3);rhLf-5N(4)の、解離
定数(a)および細胞当たりの結合部位の数(b)。値は、二連での2〜3の別々の実
験の平均(±S.E.M.)である。
図13は、塩基性残基の分布を示すhLf、bLf、およびmLfのN末端アミノ酸配列
アラインメントを示す。hLf[Metz-Boutigueら,1984,Eur.J.Biochem.145,
659-676;Reyら,1990,Nucleic Acids Res.18,5288]と、bLf[Pierceら,19
91,Eur.J.Biochem.196,177-184]と、mLf[Pentecostら,1987,J.Biol.
Chem.262,10134-10139]との間の同一アミノ酸を四角で囲む。ArgおよびLys残
基に、それぞれ黒および灰色で下線を引く。配列の番号付けは、Metz-Boutigue
ら,前出による。
図14は、全血培養物中の種々のラクトフェリン種によるヘパリンの中和を示す
。種々の濃度でヘパリンを、100μg/mlラクトフェリンの存在または非存在下で
希釈した全血に添加した。2時間後、上清中のTAT複合体の量を、ELISAによって
決定した。
図15は、種々のGAGによる全血培養物の抗凝固ならびにラクトフェリンおよび
硫酸プロタミンによる中和を示す。種々の濃度のヘパリン、エノキサパリン(eno
xaparine)、硫酸ヘパラン、またはNアセチルヘパリンを、非存在(○)または100
μg/ml hLF(■)、bLF(□)、もしくは2μg/ml硫酸プロタミン(●)の存在下で、
希釈した全血に添加した。2時間後、上清中のTAT複合体の量を、ELISAによって
決定した。
図16は、HT-29細胞への天然hLFの特異的結合を示す。値は、二連の実験の平均
である。挿入図は、データのスキャッチャード分析を示す。
図17は、HT-29細胞への天然hLFの特異的高親和性結合を示す。値は、二連の実
験の平均である。挿入図は、データのスキャッチャード分析を示す。
図18は、HT-29細胞へのhLFの結合の阻害を示す。ヒトラクトフェリンを、mAbE
11の漸増濃度の存在下で1時間プレインキュベートした。
詳細な説明
I.序論
本発明は、天然LFの生物学的活性、例えば、細胞上の高親和性LFレセプターへ
の結合を有するが、天然LFに対して、ヘパリン、DNA、ヒトリゾチーム、細菌リ
ポ多糖(LPS)のリピドA成分、および硫酸化細胞表面分子への減少した結合を
有する、ラクトフェリン改変体を提供する。特に、本発明は、第1の塩基性クラ
スター(すなわち、残基2〜5)からの1〜4アルギニン残基が欠失されている
ラクトフェリンの改変体を提供する。
本発明はまた、ヒトおよび他の動物における特定の疾患および症状の緩和のた
めの、hLFおよびLF改変体を使用する方法を提供する。本明細書に開示されるよ
うに、ヒトラクトフェリンは、例えば、炎症、貧血、骨髄造血の処置のために、
および再灌流障害、サイトカイン放出、および細胞へのウイルスのプロテオグリ
カン媒介侵入を減少させるために、有用である。ラクトフェリン改変体はまた、
これらの疾患および症状の処置に有用であり、そして、天然ラクトフェリン処置
の有益な効果が高親和性LFレセプターへの結合によるものであるその症状の処置
に特に有用である。さらに、LF改変体の使用に対する有利点は、所望の生理学的
効果が達成され得るが、ヘパリン、DNA、ヒトリゾチーム、リピドA、または細
胞表面プロテオグリカンへの天然LFの結合によって引き起こされる副作用を避け
ることである。例えば、本発明のラクトフェリン改変体は、ヘパリンの同時中和
および類似の効果なしに、細胞へ栄養性鉄を送達するために使用され得る。LF改
変体が硫酸化した細胞表面分子にほとんどまたは全く結合せず、そして高親和性
LFレセプターへの増加した親和性で結合するので、これらのレセプターへのLFの
より効率的標的化が達成され得る。
II.定義
天然ラクトフェリン
本明細書で使用される場合、「天然ラクトフェリン」とは、4つの連続するア
ルギニン残基のN末端クラスターを含む全長ヒトラクトフェリンポリペプチド、
例えば、実質的にMetz-Boutigueら,1984,Eur.J.Biochem.659:1451に記載の
ようなアミノ酸配列を有するポリペプチドをいい、PCT公開WO91/08216および他
の刊行されたタンパク質およびDNA配列で同定された配列不一致を示す。用語天
然ラクトフェリンはまた、第1の塩基性クラスター(すなわち、アミノ末端残基
2〜5)における欠失および/または第2の塩基性クラスター(すなわち、残基
25〜31)における欠失のある任意の改変体が、天然ラクトフェリンではないこと
以外は、天然に存在するヒトラクトフェリンと比較して、1つ以上のアミノ酸の
挿入、置換、または欠失によって改変されている天然に存在するヒト対立遺伝子
変異体およびアミノ酸配列改変体を含む。
天然ラクトフェリンは、ウシのようなトランスジェニック非ヒト動物で発現さ
れる組換えコードされたヒトラクトフェリン(「rhLF」)を含み、ここで、グリコ
シル化パターンは、ヒト乳汁から得られる天然に存在するヒトラクトフェリンの
グリコシル化パターンとは異なり得る。
ラクトフェリン改変体
本明細書に記載のラクトフェリン改変体は、アミノ末端での1、2、3、また
は4アルギニン残基が除去されている(すなわち、第1の塩基性クラスターのす
べてまたは一部の欠失)か、または第2の塩基性クラスターの残基が除去されて
いるか、または第1および第2の両方の塩基性クラスターが除去されている、天
然ラクトフェリンの配列を有するポリペプチドを含む。第1の塩基性クラスター
のアルギニン残基は、天然ラクトフェリンのタンパク質分解によって、または短
縮型hLFをコードするポリペプチドの発現によって、除去され得る。あるいは、
第1の塩基性クラスターの1つ以上のアルギニン残基は、他の(すなわち、アル
ギニン以外)アミノ酸によって、例えば、hLFをコードするポリヌクレオチドの
特異的(directed)変異誘発によって、置換され得る。好ましい実施態様では、第
1の塩基性クラスターの1つ以上のアルギニン残基は、欠失されるか、あるいは
、生理学的pHで正荷電していないアミノ酸、すなわち、中性または酸性残基に、
通常は中性アミノ酸に、より頻繁にはアラニン、ロイシン、グリシン、バリン、
またはイソロイシンに変異される。以下、第1の塩基性クラスターのすべてまた
はいくつかのアルギニン残基が「欠失」または「除去」されているhLF改変体に
ついての言及は、他に明確に述べられなければ、両方とも、欠失によるまたは変
異
誘発による第1の塩基性クラスターのアルギニンの除去をいう。
hLFのアミノ末端配列は、N'-GRRRSVQWCである。本発明のラクトフェリン改変
体には、1つのアルギニン(末端グリシンとともに)残基の欠失を有する改変体
(hLF-2Nという)、除去された2つのアルギニン残基を有する改変体(hLF-3Nと
いう)、除去された3つのアルギニン残基を有する改変体(hLF-4Nという)、お
よび除去された4つのすべてのアルギニン残基を有する改変体(hLF-5Nという)
が含まれる。
他のラクトフェリン改変体は、第2の塩基性クラスターの残基が欠失または(
例えば、非荷電残基に)変異されているhLFである。本発明のさらに他のラクト
フェリン改変体は、第2の塩基性クラスターの欠失および1つ以上のアミノ末端
アルギニン残基の欠失を有する。
中和されたラクトフェリン
本明細書で使用される、「中和されたラクトフェリン」は、第1の塩基性クラ
スターの残基の改変によって、天然のヒトラクトフェリンと同様に、以下の実施
例Iに記載される固相リガンド結合アッセイによって測定されるように、LFリガ
ンド(例えば、ヘパリン)に結合し得ないが、以下の実施例IIに記載の細胞結合
アッセイによって測定されるように、Jurkatヒトリンパ芽球T細胞で見られる10
5kdラクトフェリンレセプターを結合する(Biら,1994,Eur.J.Cell Biol.65
,164-171およびBiら,1996,Eur.J.Cell Biol.69,288-296)、天然のラク
トフェリンの配列を実質的に有するラクトフェリンである。「改変」には、第1
の塩基性クラスターの残基の化学的改変、あるいは、ラクトフェリンおよびヘパ
リンの第1の塩基性クラスターの相互作用をブロックする(すなわち、立体障害
によって)分子の結合が含まれる。ブロッキング分子には、モノクローナル抗体
、そのフラグメント、およびヒトリゾチームまたはヘパリンのようなLFリガンド
が含まれる。
実質的に含まない
LF改変体組成物は、サンプルに存在するヒトタンパク質の少なくとも約90%、
より通常には少なくとも約95%、および最も普通には少なくとも約99%が、LF改
変体である場合、他のヒトタンパク質(天然hLFを含む)を実質的に含まない。
サンプルに存在する任意の特異的タンパク質の量は、(比較的単純な混合物につ
いては)定量的SDS-PAGEによって、またはより複雑な混合物(例えば、ウシ乳汁
タンパク質とLF改変体との混合物)については免疫学的アッセイ(例えば、ELIS
AおよびRIA)によって、決定され得る。
免疫学的および分子生物学的方法は周知であり、そして、例えば、Sambrookら
,Molecular Cloning-A Laboratory Manual,2版,Cold Spring Harbor Laborat
ory,Cold Spring Harbor,New York,1989ならびにHarlowおよびLane,Antibod
ies:A Laboratory Manual,Cold Spring harbor,New York(1988)に記載され、
その両方とも、その全体がおよびすべての目的で参考として本明細書に援用され
る。
実質的に純粋
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」とは、目的の種が存在する優性
な種である(すなわち、モルベースでは、組成物中の任意の他の個々の種よりも
豊富である)ことを意味し、そして好ましくは、実質的に精製された画分は、目
的の種が、存在するすべての巨大分子種の少なくとも約50パーセント(モルベー
スで)を含む組成物である。一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物に存在
するすべての巨大分子種の約80〜90パーセントより多くを含む。最も好ましくは
、目的の種は、本質的に均一(夾雑種は、従来の検出方法によって組成物中で検
出され得ない)まで精製され、ここで組成物は、単一の巨大分子種から本質的に
なる。
III.ラクトフェリンおよびラクトフェリン改変体の産生
1つ以上のアミノ末端アルギニン残基を欠くLF改変体は、種々の方法によって
産生され得る。産生の好ましい方法には、(1)天然LFのタンパク質分解切断、ま
たは(2)組換え発現、例えば、LF遺伝子の変異誘発、次いでLF改変体の細胞また
はトランスジェニック動物での発現が挙げられ、組換え発現が最も好ましい。第
2の塩基性クラスターの残基の欠失は、好ましくは、インビトロ変異誘発によっ
て行われる。
A.LFの精製および続いてのタンパク質分解切断
LF改変体は、プロテアーゼ、好ましくはセリンプロテアーゼ、および最も好ま
しくはトリプシンでの、精製されたラクトフェリンの切断によって産生され得る
。LFは、乳汁中に豊富であり、そしてこの供給源から最も容易に精製されるが、
外分泌および好中球の二次顆粒でも見られる。hLFの好ましい供給源は、ヒトラ
クトフェリントランスジーンを含むトランスジェニックウシ種からの乳汁である
。トランスジーンコードされたヒトラクトフェリンは、トランスジェニックウシ
の乳汁中の他の乳汁タンパク質から実質的に精製され、そして好ましくは、乳汁
中に存在するならば、内因性ウシラクトフェリンから実質的に単離される。
乳汁からのヒトラクトフェリンの精製のための多くの方法が報告されている。
例えば、米国特許第4,436,658号;第4,791,193号;および第4,668,771号を参照
のこと。これらは、参考として本明細書に援用される。Nuijensら,J.,1996,M
ammary Gland Biology and Neoplasia 1:3,283-293(1996)およびそれに引用さ
れる参考文献もまた参照のこと。
hLF精製に好ましい方法は、PCT出願PCT/EP95/00583に記載され、これは参考と
して本明細書に援用される。簡単にいえば、乳汁またはhLFを含む乳汁画分は、
比較的高いイオン強度(0.2M〜0.5M NaClまたはKCl、好ましくは0.4M NaClまた
はKCl)の存在下で強陽イオン交換樹脂(例えば、S SepharoseTM)と接触されて
、強陽イオン交換樹脂への非ラクトフェリンタンパク質および他の物質の結合を
抑制し、そして他のタンパク質(例えば、カゼイン)または物質(例えば、リポ
多糖)とラクトフェリンとの静電的相互作用を減少させ、そして複合体からラク
トフェリンを遊離させる。結合したラクトフェリンを含む強陽イオン交換樹脂は
、代表的には、遠心分離または沈降、次いでバッチ式での洗浄によって、および
/またはカラムに樹脂を注ぎそしてほぼ等しいかまたはより低い塩濃度を有する
緩衝液でビーズを洗浄することによって、乳汁または乳汁画分中の非結合化合物
から分離される。陽イオン交換樹脂に結合したラクトフェリンは、水性、代表
的には緩衝化された、NaClまたはKCl勾配(例えば、20mMリン酸ナトリウム、pH7
.5中0〜1M NaClの直線勾配)で、あるいは0.4M以上、好ましくは少なくとも0.
5M NaClまたはKClの水性、好ましくは緩衝化された、NaClまたはKCl溶液で、バ
ッチ溶出または段階的溶出によって、溶出される。適切な溶出条件を選択するこ
とによって、ヒトラクトフェリンは、ウシ乳汁から実質的に精製され、そして効
率的方法によってウシラクトフェリンから実質的に分離される。
ヒトラクトフェリン(例えば、rhLF)は、塩勾配または段階的溶出で、S Seph
aroseTM Fast Flowのような強陽イオン交換体での再クロマトグラフィーのさら
に続いての工程によって内因性ラクトフェリン(例えば、bLF)からさらに精製
され得、内因性非ヒトラクトフェリン種(例えば、bLF)の軌跡を維持すること
から、ヒトラクトフェリンを分離するか、および/またはbLFは、hLFよりもConA
樹脂により強力に結合しているので、bLFからヒトラクトフェリンをさらに分離
するためにコンカナバリンA樹脂でのアフィニティークロマトグラフィーを必要
に応じて含み得る。
精製された天然ラクトフェリンのトリプシン切断は、以下のように行われ得る
:5ミリグラムの天然hLFを、PBS中37℃にて1:8の酵素:基質モル比でトリプシ
ンとインキュベートする。切断を、12倍モル過剰のSBTIの添加によって1、5、
25分、および3時間後に停止し、そしてN末端完全性を、例えば、分析用Mono S
クロマトグラフィー(Van Berkelら,1995,Biochem.J.312:107-114)ならび
にSDS-PAGE、クロマトグラフィー、およびタンパク質配列決定のような標準的技
法によって、モニターする。
タンパク質分解の後、LF改変体は、互いからおよび天然の(すなわち、切断さ
れていない)hLF(および、存在するならば他のタンパク質)から、陽イオン交
換クロマトグラフィー(例えば、Mono S;ヘパリン)、疎水性相互作用クロマト
グラフィー(HIC)、またはCibracon Blue Sepharoseクロマトグラフィーによっ
て分離され得る。1つの実施態様では、LF改変体は、組換え発現されたラクトフ
ェリンまたはラクトフェリン改変体およびS Sepharoseの4時間のバッチ式イン
キュベーションによって、切断されていないLF(および互いに)から分離される
。混合物を、カラムに注ぎ、そしてラクトフェリンを、20mMリン酸ナトリウム、
0,
5M NaCl、pH7.5で溶出する。S Sepharose溶出物を、20mMリン酸ナトリウム、pH7
.5(緩衝液A)で希釈し、Mono S HR 5/5陽イオン交換カラムにアプライし、そ
して60mlの緩衝液A中0〜0.5M NaClの直線塩勾配で0.5ml/分の流速で溶出する
。天然hLF溶出物は0.7M NaClで(Van Berkelら,1995,Biochem.J.312:107-11
4)そしてhLF-5N溶出物は約0.33M NaClで溶出する。hLF-3NおよびhLF-2N種は、
それぞれ約0.5および約0.6M NaClでMono Sから溶出する。
B.組換えhLFまたはhLF改変体の変異誘発および発現
変異タンパク質のインビトロ変異誘発および発現は周知であり、そして一般的
にAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing a
nd Wiley-Interscience,New York(1987)およびSambrookら,Molecular Cloning
-A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring
Harbor,New York,1989に記載され、これらの両方ともその全体でおよびすべ
ての目的で参考として本明細書に援用される。Kunkel,1985,Proc.Natl.Acad
.Sci.82:488(部位特異的変異誘発を記載する)およびRobertsら,1987,Natu
re 328:731-734またはWells,J.A.ら(1985)Gene 34:315(カセット変異誘発
を記載する)もまた参照のこと。
ラクトフェリンおよびラクトフェリン改変体は、周知の組換え技法を使用して
培養された細胞によって発現され得る。代表的には、所望のポリペプチドをコー
ドする核酸が、発現ベクターで使用される。句「発現ベクター」とは、一般的に
、このような配列と適合可能な宿主において構造遺伝子の発現に影響を及ぼし得
るヌクレオチド配列をいう。これらの発現ベクターは、代表的には、少なくとも
適切なプロモーター配列および必要に応じて転写終結シグナルを含む。発現をも
たらすために必要または助けとなる追加の因子もまた、本明細書に記載のように
使用され得る。本発明のラクトフェリンポリペプチドをコードするDNAは、代表
的には、インビトロ細胞培養物への導入および発現を可能にするDNA構築物に組
込まれる。しばしば、本発明の核酸は、適切な組換え宿主細胞を産生するために
使用され得る。詳細には、DNA構築物は、細菌(例えば、E.coli)のような原核
生物宿主における複製に適切であるか、または培養された哺乳動物、植物、昆虫
(例えば、Sf9)、酵母、菌類、もしくは他の真核生物細胞株に導入され得る。
特定の宿主、例えば、昆虫または細菌への導入について調製されるDNA構築物は
、代表的には、宿主によって認識される複製系、所望のポリペプチドをコードす
る目的のDNAセグメント、ならびにポリペプチドコードセグメントに作動可能に
連結される転写および翻訳開始ならびに終結調節配列を含む。DNAセグメントは
、別のDNAセグメントとの機能的関係に配置される場合、作動可能に連結される
。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写を刺激するならば、
コード配列に作動可能に連結される。シグナル配列についてのDNAは、ポリペプ
チドの分泌に関与するプレタンパク質として発現されるならば、ポリペプチドを
コードするDNAに作動可能に連結される。一般的に、作動可能に連結されるDNA配
列は隣接し、そしてシグナル配列の場合、両方とも隣接しそしてリーディングフ
レーム内である。しかし、エンハンサーは、これが転写を制御するコード配列に
隣接する必要がない。連結(linking)は、便利な制限部位で、またはその代わ
りに挿入されるアダプターもしくはリンカーで、連結(ligation)によって達成
される。適切なプロモーター配列の選択は、一般的に、DNAセグメントの発現に
ついて選択される宿主細胞に依存する。適切なプロモーター配列の例には、当該
技術分野で周知の原核生物および真核生物プロモーターが挙げられる。例えば、
Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版),第1〜3巻Cold S
pring Harbor Laboratory(1989)を参照のこと。転写調節配列には、代表的には
、宿主によって認識される異種エンハンサーまたはプロモーターが挙げられる。
適切なプロモーターの選択は宿主に依存するが、trp、lac、およびファージプロ
モーターのようなプロモーター、tRNAプロモーター、ならびに解糖系酵素プロモ
ーターが公知であり、そして利用可能である。Sambrookら(1989)を参照のこと。
ポリペプチドコードセグメントについての挿入部位とともに複製系ならびに転
写および翻訳調節配列を含む便利に利用可能な発現ベクターが用いられ得る。細
胞株および発現ベクターの実行可能な組み合わせの例は、SambrookらおよびVetz
gerら,Nature 334:31-36(1988)に記載される。例えば、適切な発現ベクターは
、例えば、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)、
および細菌細胞(例えば、E.coli)で発現され得る。
好ましい実施態様では、ヒトラクトフェリンおよび改変体は、ウシ、ヤギ、ウ
サギ、ヒツジ、ブタ、またはマウスのようなトランスジェニック動物(すなわち
、ヒト介在によって導入された生殖系列および体細胞のゲノム中に外因性DNA配
列を含む非ヒト動物)における発現によって産生される。トランスジェニック非
ヒト種による組換えポリペプチドの産生のための方法は当該技術分野で公知であ
り、そして例えば、米国特許第5,304,489号;第5,633,076号;および第5,565,36
2号(これらは参考として本明細書に援用される)、ならびにPCT公開PCT/US93/0
5724およびPCT/US95/09580(両方とも参考として本明細書に援用される)に記載
される。トランスジェニック動物の有利点は、特に経済的精製方法による、大量
でのLFの単離である。例えば、乳腺分泌細胞における発現について標的したヒト
ラクトフェリンポリペプチドをコードするトランスジーンを含むトランスジェニ
ックウシ種の産生は、WO91/08216に記載され、これは参考として本明細書に援用
される。ラクトフェリン改変体がトランスジェニックウシで産生される場合、ヒ
トタンパク質は、使用(例えば、患者への投与)前にウシ乳汁タンパク質(例え
ば、乳漿タンパク質、カゼイン、ウシラクトフェリン、IgA、アルブミン、リゾ
チーム、β-ラクトグロブリンなど)から分離され得る。あるいは、使用は、ヒ
トラクトフェリンタンパク質または改変体を含む全体または部分精製されたウシ
乳汁から作製され得る。
C.hLF塩基性クラスターを中和するための代替方法
hLFの第1または第2の塩基性クラスターにおける残基の欠失は、変化した生
理学的特性を有するhLFを生成するための好ましい方法であるが、1つまたは両
方の塩基性クラスターを中和するための他の方法が存在する。例えば、第1の塩
基性クラスターは、ヘパリンのようなリガンドとhLFをインキュベートすること
によって中和され得、これは、第1のクラスターで結合し、そして105kdラクト
フェリンレセプター、LPS、ヒトリゾチーム、および結合が第1のクラスター依
存的である他の分子へのラクトフェリンの結合を阻害する。
第1の塩基性クラスターを中和するための好ましい方法は、アミノ末端で結合
しそして第1の塩基性クラスターと標的分子(例えば、ヘパリン)との間の結合
を抑制するモノクローナル抗体とhLFをインキュベートすることである。モノク
ローナル抗体を産生するための方法は周知である(例えば、Godingら,Monoclon
al Antibodies:Principles and Practice(第2版)Acad.Press,N.Y.、ならび
にHarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor L
aboratory,New York,1988を参照のこと)。ヒトまたはヒト化モノクローナル
抗体の使用は、これが患者への投与後の抗原応答の可能性を減少させるので、最
も好ましい(例えば、米国特許第5,569,825号および第5,585,089号を参照のこと
)。モノクローナル抗体の抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fab'F(ab')2、
Fabc、およびFvフラグメント)は、同様に有用である。抗体または抗体フラグメ
ントもまた、第2の塩基性クラスターに結合しそして第2のクラスター依存性結
合を抑制するために使用され得ることが認識される。
IV.ラクトフェリンおよびラクトフェリン改変体の特性
A.ヘパリン、リピドA、DNA、およびヒトリゾチームへの結合。
天然hLFは、ヘパリン、リピドA、DNA、およびヒトリゾチーム(hLZ)に結合
する。本発明の1つの発見は、第1の塩基性クラスターの1、2、または3つの
アルギニンを欠くLF改変体が、これらの4つのリガンドの各々への反応性の強力
な減少を示し、そして4つすべてのアミノ末端アルギニン残基が欠失される場合
、結合が、標準的アッセイ(例えば、固相リガンド結合アッセイ)で検出不可能
であることである。
天然LFおよびLF改変体の結合特性は、標準的結合アッセイ(以下の項5.3.2を
参照のこと)で測定され得、そしてリガンドへの天然LFの結合のレベルが100%
反応性として定義される場合の反応性の用語によって表され得る。LF改変体の、
天然LFリガンドヘパリン、DNA、リピドA、およびhLZとの反応性は、代表的には
、80%未満、より通常には60%未満、しばしば15%未満である。いくつかのLH改
変体(例えば、第1の塩基性クラスターからの4つすべてのアルギニン残基の欠
失を有するもの)について、反応性は検出不可能である。
B.結合アッセイ
天然LFおよびLF改変体によるヘパリン、リピドA、DNA、およびヒトリゾチー
ムへの結合のような、リガンド-レセプター相互作用を測定するために適切なア
ッセイには、固相リガンド結合アッセイおよび競合的固相結合アッセイのアッセ
イが挙げられる(例えば、Mannら,1994,J.Biol.Chem.269:23661-67を参照
のこと)。好ましい実施態様では、以下の実施例Iに記載のような固相結合アッ
セイは、ラクトフェリン改変体および天然LFによる結合を測定するために決定さ
れる。代表的には、hLFまたはhLF改変体によるLFレセプターの結合は、LFレセプ
ターの活性化を生じる。レセプター活性化をアッセイする方法は公知であり、例
えば、得られる細胞内カルシウムシフトが測定され得る(例えば、Misraら,199
4,J.Biol.Chem.269:18303-306)。
C.細胞膜関連レセプターへの特異的結合
hLFの生物学的活性のいくつかは、鉄と強くキレート形成する能力に関連する
が、他の活性は、腸細胞(Huら,1990,Biochemistry 29,535-541;Kawakamら
,1991 Am.J.Physiol.261,G841-G846;Mikogamiら,1994,Am.J.Physiol
.267,G308-G31)、乳腺上皮細胞(Rochardら,1992,Anticancer Res.1,204
7-2052)、肝細胞(Regoecziら,1985,Am.J.Physiol.248,G8-G14;MacAbee
ら,1991,J.Biol.Chem.226,23624-23631;Ziereら,1992,J.Biol.Chem.
267,11229-11235)、単球(Ismailら,1993,J.Biol.Chem.268,21618-2162
5)、活性化したリンパ球(Mazurierら,1989,Eur.J.Biochem.179,481-487
)、および血小板(Leveugleら,1993,Eur.J.Biochem.,213,1205-1211)を
含む標的細胞とhLFとの相互作用に関連し、これらの各々は、その全体およびす
べての目的で参考として本明細書に援用される。
LFは、LF結合部位の2つのクラスを通じて細胞表面に結合する:細胞表面硫酸
化分子(例えば、細胞表面プロテオグリカンまたはグリコサミノグリカン)であ
る比較的低い親和性部位および高親和性レセプター。1つの局面では、本発明は
、部分的に、低親和性部位への結合が、塩基性アルギニン残基の第1のクラスタ
ーによって媒介され、そして1つ以上のこれらの残基の欠失(または中和)が、
低親和性部位への結合を減少または除去するという発見に基づく。したがって、
本
発明のhLF改変体は、代表的には、少なくとも約10nM、通常は約10nMと約40nMと
の間の親和性で高親和性LFレセプターを結合する。細胞結合アッセイは周知であ
り、そして例えば、Mazurier,1989,Eur.J.Biochem.179:481-87、ならびに
以下の実施例IIに記載される。逆に、1つ以上のアミノ末端アルギニン残基の欠
失は、高親和性LFレセプターへの結合を減少または消滅しない。
高親和性LF結合部位は、活性化されたリンパ球、乳腺上皮細胞、血小板、単球
、マクロファージ、腸細胞、および肝細胞で見い出されており、そして同様に他
の細胞タイプに存在すると考えられる。105kD特異的hLFレセプターは、活性化さ
れたリンパ球(Mazurierら,1989,Eur.J.Biochem.179,481-487)、Jurkat
T細胞株(Biら,1994,Eur.J.Cell Biol.65,164-171;Biら,1996,Eur.J
.Cell Biol.69,288-296)、および血小板(Leveugleら,1993,Eur.J.Bioc
hem.,213,1205-1211)において特徴づけられている。
105kDレセプターへのLFの結合は、血小板凝集を阻害することが示されており
、そしておそらくhLFの増殖因子および/または分化活性に関与する。このレセ
プターは、被覆小窩小胞ならびに細胞内小胞において細胞表面へ、ヒトリンパ芽
球腫T細胞(すなわち、Jurkat細胞、Pawelecら,1982,Eur.J.Immuno.12:38
7-92)において局在化されている。Jurkat細胞によるhLFのインターナリゼーシ
ョンが実証されている。Jurkat細胞は、12301 Parklawn Dr.,Rockville,Maryl
and,USA 20852に位置するAmerican Tissue Type Collectionアメリカンタイプ
カルチャーコレクション[ATCC]から得られ得る。LFは、約40nMのkDを有するリン
パ球(Jurkat細胞)高親和性レセプターに結合する。
105kDレセプターは、免疫学的方法によって同定され得る。例えば、特異的ウ
サギ抗105kDレセプターポリクローナル抗体が記載されている。これは、すなわ
ち類似のポリクローナル抗体、または抗105kDレセプターモノクローナル抗体は
、他の細胞タイプにおけるレセプターを同定するために使用され得る。例えば、
上でいわれるポリクローナル抗体は、非悪性ヒト乳ガン、良性乳腺症、および乳
ガンからの上皮細胞に結合することが見いだされている(Rochardら,1992,Ant
icancer Research 12:2047-52)。あるいは、105kDレセプターは、標識されたhL
F(またはアミノ末端欠失したhLF)および細胞の膜タンパク質調製物を使用する
リガンドブロッティング(例えば、Ausubelら,Current Protocols in Molecula
r Biology,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New Yorkを参照のこ
と)によって同定され得る。
特異的hLFレセプターは、腸刷子縁膜から単離されており、そして110の報告さ
れたMrを有する(KawaskamiおよびLonnerdal,1991,Am.J.Physiol.261:G84
1-46)。おそらく、このレセプターが、105kDレセプターと同じまたは密接に関
連するが、まだ証明されていない。
肝細胞では、LFは、キロミクロンレムナントレセプターまたは細胞表面に存在
するLDL-レセプター関連タンパク質(LRP)に結合する。LFは、キロミクロンレ
ムナントを含むβ-VLDLの取り込みを阻害する。マウス腹膜マクロファージに結
合するラクトフェリンは、リポタンパク質および他の血漿タンパク質のエンドサ
イトーシスを媒介する構造関連細胞表面レセプターファミリーのメンバーである
、低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質(LRP)を介して明らかに生
じる。単球およびマクロファージに結合するhLFの性質は、完全には特徴づけら
れないが、少なくとも一部は、LRP/キロミクロンレムナントレセプターのメンバ
ーを媒介するようである(Misraら,1994,J.Biol.Chem.269:18303-306)。
V.薬学的および栄養的適用
A.効能
ラクトフェリンは、治療設定に有益性を提供する多くの生物学的活性を示す。
これらには、抗炎症、抗ウイルス、および抗感染活性、ならびにプロ凝固効果お
よび抗凝固効果、補体活性化の調節、好中球のLPS媒介活性化の阻害、転写の調
節、腸上皮細胞の増殖促進、ヒドロキシルラジカル形成の阻害、ならびに腸鉄取
り込みおよび排出における役割が挙げられる。ラクトフェリンの他の特性および
生物学的活性は、Nuijensら,1996,J.Mammary Gland Biology and Neoplasia
1:3,283-293に記載され、これは、その全体および目的について参考として本明
細書に援用される。
本発明のヒトラクトフェリン改変体、および中和されたラクトフェリンは、一
般的に、第1の塩基性クラスターのアルギニンの欠失が、以下の実施例に記載の
ように、ヘパリン、リピドA、DNA、リゾチーム、および細胞表面硫酸化分子へ
の結合の減少を生じること以外は、天然ラクトフェリンと同じ活性および使用を
有する。したがって、本発明のLF改変体は、LF投与の他の生理学的結果(例えば
、結合によるヘパリンの中和)を引き起こすことなく、特定のLF媒介生理学的変
化(例えば、サイトカインの調節)をもたらすために患者に投与され得る。本発
明の中和されたhLFおよびhLF改変体は、種々の有利な特性を有する。例えば、第
1の塩基性クラスターを欠くhLF改変体は、hLF-レセプター媒介免疫および炎症
応答(例えば、減少するサイトカイン放出、ナチュラルキラー細胞の活性化、お
よび抗腫瘍効果)、栄養性鉄の効率的レセプター媒介送達、ならびに他の生物学
的効果を開始するために特に有用である。
hLFおよびLF改変体の治療効能には、局所感染、大規模(細菌)感染、血液由
来感染(敗血症)を含む感染、ならびに感染または非感染炎症性疾患から生じる
炎症(例えば、回腸または結腸の慢性炎症性疾患)の治療または予防での使用が
挙げられる。ヒトLFおよびLF改変体はまた、感染の効果に対して器官移植レシピ
エントまたは他の免疫抑制された個体(例えば、AIDS患者)を調製または処置す
るために使用され得る。
ヒトLF、LF改変体、および中和されたhLFはまた、ラクトフェリンまたはラク
トフェリン改変体を投与することによって、患者においてラクトフェリン-レセ
プター保有細胞からの、IL-1、IL-2、またはTNFαのようなサイトカインの放出
を減少または阻害するために有用である。ラクトフェリンは、細胞からのサイト
カイン(例えば、IL-1、IL-2、およびTNFα)の放出を減少させ、そして混合さ
れたリンパ球培養物における増殖を阻害することが示されている(Chiericiら,
1994,Acta Pediatr Suppl 402:83-89)。hLFおよび改変体によるLPSに応答する
単球からのIL-1およびTNFα放出の抑制は、炎症部位で好中球の補充および活性
化をダウンレギュレートすることが期待される(例えば、Lonnerdalら,1995,A
nn Rev Nutr 15:93-110を参照のこと)。LFの抑制効果は、ラクトフェリンの単
球ラクトフェリンレセプターへの結合によって媒介されると考えられ(Miyazawa
ら,1991,J.Immunol.146:723-729)、そしてマウスにおけるLPS-媒介TNF応答
が、ラクトフェリンの前投与によって減弱されたので(Lonnerdalら,前出)、E
.
coliの致死用量を静脈内注射したマウスにおけるラクトフェリンの予防効果の原
因であり得る(Sanchezら,1992,Arch Dis Child.67:657-661)。サイトカイ
ン放出を測定するための方法は周知である(例えば、ELISA)。試薬の存在下で
のサイトカイン放出のレベルが、アッセイ条件下で試薬の非存在下で放出される
レベルの約90%未満、より頻繁には約70%未満、および最も頻繁には約50%未満
である場合、試薬は、細胞からのサイトカインの放出を減少または阻害するとい
われ得る。
ヒトラクトフェリンまたはラクトフェリン改変体は、TNFα媒介好中球脱顆粒
を低下させるために患者に投与され得る。好中球は、敗血症、慢性関節リウマチ
、および潰瘍性大腸炎を含む、一般化および局所的の両方の炎症反応に、重要な
メディエーターとして関与している。例えば、抗TNFモノクローナル抗体を使用
する臨床研究は、TNF、およびおそらく好中球のTNF媒介活性化が、慢性関節リウ
マチおよび潰瘍性大腸炎の病理生理学に重要な役割を果たすことを示す。
ヒトラクトフェリンまたはラクトフェリン改変体の患者への投与は、患者にお
いてナチュラルキラー(NK)細胞を剌激することに有用である。hLFおよびラク
トフェリン改変体はナチュラルキラー(NK)細胞の刺激を引き起こすので、LF改
変体は、NK細胞の標的、例えば、腫瘍、ウイルス、および細胞内病原体と闘うた
めに有用である。ラクトフェリンによるナチュラルキラー(NK)細胞の刺激は、
インビトロ(Shauら,1992,J.Leukoc.Biol.51:343-349)およびインビボ(B
ezaultら,1994,Cancer Res.54:2310-2312)で示されている。NK細胞は、ヒト
ラクトフェリン改変体および薬学的賦形剤を含む組成物を患者に投与することに
よって、患者において刺激され得る。ヒトLFおよび改変体はまた、固形腫瘍の増
殖を阻害するために患者に投与され得る。LFの単回腹腔内注射は、マウスにおい
て同系線維芽細胞由来腫瘍細胞株の皮下注射によって誘導される固形腫瘍の増殖
を阻害した(Bezaultら,前出)。したがって、LF改変体は、ヘパリンの中和ま
たは他の望ましくない効果のないNK細胞の刺激に有用である。
本発明はまた、hLFまたは改変体を患者に投与する工程を包含する、ウイルス
、例えば、CMV(サイトメガロウイルス)ウイルス、HIV(ヒト免疫不全ウイルス
)ウイルス、またはHSV1(単純ヘルペス1型ウイルス)ウイルスの細胞への侵入
を
阻害するための方法を提供する。抗ウイルス作用は、(i)細胞侵入のためのウイ
ルス粒子によって用いられる細胞表面プロテオグリカン(例えば、ヘパリン)と
hLFとの相互作用、および(ii)hLFおよびLF改変体によるNK細胞の刺激によって、
媒介される。
他の局面では、本発明は、鉄で少なくとも約95%飽和されたヒトラクトフェリ
ンまたはラクトフェリン改変体の組成物を患者に投与する工程によって、患者に
おけるラクトフェリン-レセプター保有細胞に鉄を送達する方法を提供する。こ
れらの化合物の投与は、例えば、貧血または鉄蓄積疾患の処置に有益である。LF
結合した鉄またはLF改変体結合した鉄は、ポリペプチド-鉄複合体が細胞レセプ
ターに結合しそして細胞によってインターナリゼーションされる場合、細胞に送
達される。したがって、本明細書に開示される組成物は、乳児処方(baby formul
a)における使用ならびに鉄代謝における障害のある患者への投与に適切である(
例えば、鉄欠乏性貧血および鉄蓄積疾患、ならびに未熟児の鉄不足貧血)。LF改
変体は、van Berkelら,1995,Biochem J.312,107-114に記載される手順に従
って、鉄で飽和され得る。本発明のラクトフェリン改変体組成物は、代表的には
、鉄で少なくとも3%飽和、より通常は80%飽和、最も頻繁には少なくとも95%
飽和、および頻繁には99%以上飽和される。第1の塩基性クラスター、または第
1および第2の塩基性クラスターの両方を欠くLF改変体が、LFの鉄結合活性が所
望される場合、および塩基性クラスター1および2によって媒介される活性(例
えば、ヘパリン結合、高親和性レセプター相互作用)が所望されない場合、特に
有用である。
LF改変体は、炎症性疾患の処置に特に有用である。したがって、他の局面では
、本発明は、ヒトラクトフェリンまたはラクトフェリン改変体が、例えば、慢性
炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)における炎症を減少さ
せるために患者に投与される方法を提供する。hLFおよびhLF改変体の投与は、心
筋梗塞後の患者における再灌流障害を減少させるために有用である。
ヒトラクトフェリンは、LPS(細菌リポ多糖)を中和するために投与され得る
。LPSは、第1の塩基性クラスターによって結合し、そして第2の塩基性クラス
ターによって循環からクリアランスされる。
他の局面では、本発明は、ヒトラクトフェリンまたはラクトフェリン改変体が
、骨髄造血を阻害しそしてGM-CSFの産生を減少させるために患者に投与される方
法を提供する。
第2の塩基性クラスターを欠くが第1の塩基性クラスターの残基を保持するヒ
トLF改変体は、同様に、治療適用を有する。このような改変体は、例えば、LF高
親和性レセプターを活性化することなくヘパリンまたはLPSを中和するために有
用である。このような改変体はまた、細胞へのウイルス侵入を阻害するために使
用される。
B.薬学的組成物
本発明のヒトラクトフェリンおよびラクトフェリン改変体は、薬剤、食品添加
物、栄養補充物などとして使用され得る。本発明の薬学的組成物は、通常静脈内
または経口投与される。皮内または筋肉内投与もまた、いくつかの状況で可能で
ある。
代表的には、hLF/改変体は、患者にポリペプチドを送達するために適切な任意
の適合可能な非毒性物質を含む薬学的賦形剤またはキャリアとともに投与され、
この場合、薬学的組成物と呼ばれ得る。滅菌水、アルコール、脂肪、蝋、および
不活性固体が、賦形剤またはキャリアとして使用され得る。薬学的に受容可能な
アジュバント、緩衝化剤、分散化剤などもまた、薬学的組成物に組み込まれ得る
。薬学的組成物中のポリペプチドの濃度は、広く、すなわち、約0.1重量%以下
から、通常少なくとも約1重量%から、20重量%以上までも、変化し得る。
経口投与について、ヒトラクトフェリンまたは改変体は、カプセル剤、錠剤、
および粉剤のような固体投与形態で、またはエリキシル剤、シロップ剤、および
懸濁剤のような液体投与形態で投与され得る。本発明の薬学的組成物は、食品、
代表的には乳汁、例えば、牛乳とともに投与され得る。投与のこの態様は、ラク
トフェリン/改変体が、トランスジェニックウシ、ヤギ、またはウサギのような
トランスジェニック動物での発現によって産生される場合、利点を有する。トラ
ンスジェニックウシ乳汁におけるラクトフェリンの産生は、ヒト消費のために精
製がほとんどまたは全く必要でないマトリクスを提供するので、所望される。
静脈内注入のための代表的組成物は、100〜500mlの滅菌リンゲル溶液および10
0〜500mgの組換えポリペプチドを含むように作製され得る。筋肉内注射のための
代表的薬学的組成物は、例えば、1mlの滅菌緩衝化水および1〜100μgのラクト
フェリンポリペプチドを含むように作製される。非経口投与可能組成物を調製す
るための方法は、当該技術分野で周知であり、そして例えば、Remongton's Phar
maceutical Science(15版,Mack Publishing,Easton,PA,1980)(その全体
がすべての目的のために参考として援用される)を含む、種々の出典により詳細
に記載される。
化合物を含む組成物は、予防および/または治療的処置のために投与され得る
。治療適用では、組成物は、疾患に既にかかっている患者に、疾患およびその合
併症の徴候を治癒または少なくとも一部を緩和するために十分な量で、上記のよ
うに投与される。これを達成するために適切な量は、「治療有効量または用量」
と定義される。このような有効投与量は、疾患または症状の性質および重篤度に
、および患者の健康の一般的状態に依存するが、一般的に、体重1キログラム当
たり約1〜500mgの精製したタンパク質の範囲であり、1キログラム当たり約5
〜100mgの投与量が、より普通に用いられる。
予防適用では、本発明の化合物を含む組成物は、特定の疾患の疑いのあるまた
はそうでなければ危険性のある患者に投与される、このような量は、「予防有効
量または用量」であると定義する。この使用でも再度、正確な量は、患者の健康
および体重の状態に依存する。代表的には、用量は、体重1kg当たり1〜500mg
の精製したタンパク質の範囲であり、1kg当たり約5〜100mgの投与量がより普
通に用いられる。
実施例
実施例に引用した参考文献は、実施例2の後リストを挙げる。
実施例1
この実施例は、LFの第1の塩基性クラスターからのアルギニン残基の欠失(す
なわち、本発明のLF改変体を産生するために)が、ヘパリン、DNA、リピドA、
およびヒトリゾチームへの結合を除去または減少させることを証明する。
I.材料および方法
A.試薬
変異誘発プライマー、S Sepharose、およびCNBr活性化Sepharose 4Bを、Pharm
acia Fine chemicals AB(Uppsala,Sweden)から得た。リピドA(Salmonella mi
nnesota Re595から)、ヘパリン(ナトリウム塩、グレードI-A、ブタ腸粘膜から
)二本鎖仔ウシ胸腺DNA、硫酸プロタミン、およびポリクローナルウサギ抗hLF抗
血清を、Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO,USA)から購入した。ヒトLFをま
た、Sigmaから購入したか、または下記のように精製した。ヒトリゾチーム(hLZ
)を、記載のように精製した[5]。NHS-LC-ビオチンを、Pierce(Rockford,Ill,
USA)から得た。ストレプトアビジンビオチン化HRPO複合体および125IをAmersham
(Bucks.,UK)から得た。MaxisorbおよびPolysorbマイクロタイタープレートを、
Nunc(Roskilde,Denmark)から得た。Universal結合プレートを、Costar(Cambrid
ge,MA,USA)から得た。すべての細胞培養試薬を、Gibco(Paisley,UK)から得た
。
B.hLFの精製、鉄飽和、およびビオチン化
ヒトLFを、記載のように[5]S Sepharoseでの陽イオン交換クロマトグラフィー
によって新鮮なヒト乳汁から精製した(さらに「天然hLF」と命名した)。天然h
LFを鉄で3.5%飽和し:天然hLFの鉄での完全飽和を記載のように[5]行った。天
然hLFを、25倍モル過剰のビオチンとの20℃での2時間のインキュベーションに
よってビオチン化した。非結合ビオチンを、10mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl
、pH7.4(PBS)に対する16時間の透析によって除去した。ビオチン化hLFを、0.0
2%アジ化ナトリウムを含むPBS中で4℃にて保存した。
C.抗hLFモノクローナル抗体の産生および精製
Balb/Cマウスを、既述のように[7]50μg天然hLFでの反復腹腔内注射によって
過剰免疫した。4回目の注射の4日後、脾臓細胞を、SP2/0-Ag14[ATCC CRL 158
3]ミエローマ細胞と融合した。融合およびハイブリドーマ選択を、記載のように
[8]行った。培養上清を、最初にラジオイムノアッセイ(RIA)によって特異的抗
体の存在についてスクリーニングし、ここでは125I-hLFを抗原として使用した。
hLF特異的抗体を産生するハイブリドーマを、反復限界希釈によってクローニン
グした。総計で、10の異なる抗hLFモノクローナル抗体(mAb)を得た。培養上清
の免疫グロブリン富化画分を、硫酸アンモニウム沈殿によって調製し、そしてSe
pharose(1gのCNBr活性化Sepharose 4Bに対して20mgのタンパク質)にカップリ
ングしたか、または製造業者の推奨のようにRepligen抗体精製キット(Cambridg
e,MA,USA)での抗hLF mAbの精製のために使用した。精製した調製物の抗体濃
度を、1.4の値を使用して、280nmでの吸光度測定によって決定した。
D.N末端欠失したhLF変異体の発現および精製
アミノ酸Ser6〜Lys692をコードする発現ベクターpCMV/hLF-5Nを、記載のよう
に[9]TransformerTM部位特異的変異誘発キットで産生した。変異誘発プライマー
配列は、ヌクレオチド352〜364の欠失を作製するためにhLF cDNAのヌクレオチド
365〜379(太字;[2])に融合したウシaS1カゼインシグナル配列の最後の14ヌク
レオチド(下線:[10])からなった[5’CTGTTGCTCTTGCCAGTGTTCAGTGGTGC3']で
あった。pCMV/hLF-5Nを構成的に発現するヒト293(S)[ATCC CRL 1537]細胞を、記
載のように[9]生成し、そして50U/mlペニシリンおよび50μg/mlストレプトマイ
シンを補充したダルベッコ改変イーグル培地で無血清馴化した。S Sepharoseを
上清と4時間バッチ式でインキュベートし、カラムに注ぎ、そして20mMリン酸ナ
トリウム、0.5M NaCl、pH7.5で溶出した。S Sepharose溶出物を、20mMリン酸ナ
トリウム、pH7.5(緩衝液A)で希釈し、Mono S HR 5/5陽イオン交換カラムにア
プライし、そして60mlの緩衝液A中0〜0.5M NaClの直線塩勾配で0.5ml/分の流
速で溶出した。天然hLFは0.7M NaClで溶出するが[5]、N末端を欠失したrhLF変
異体(さらにrhLF-5Nと命名した)は、hLF特異的ELISAで決定した場合0.33M NaC
lで溶出したようであった[9]。
E.N末端短縮型天然hLFの単離
2つ(Gly1-Arg2;hLF-2Nと命名)または3つ(Gly1-Arg2-Arg3;hLF-3Nと命
名)のN末端残基を欠くヒトLF改変体を、上記のようにMono Sクロマトグラフィ
ーによってSigmaの精製ヒト乳汁ラクトフェリンから単離した。hLF-3NおよびhLF-2N
種は、それぞれ、0.5および0.6M NaClでMono Sから溶出する。
F.固相リガンド結合アッセイ
マイクロタイタープレートを、1μg/mlリピドA(Polysorb);10μg/ml hLZ
(Universal結合プレート);25μg/mlヘパリン;またはdsDNA(Maxisorb,硫酸
プロタミンでプレコーティングされている(H2O中0.5mg/ml))を含むPBSで16時
間コーティングした。PBS、0.02%(w/v)Tween-20での洗浄後、プレートを、PBS
、0.02%(w/v)Tween-20、0.2%(w/v)ゼラチン(PTG)で試験サンプルの連続希釈
とともにインキュベートした。2時間後、プレートを洗浄し、そして1%正常ウ
シ血清を含むPTG中0.4μg/mlペルオキシダーゼ結合した精製ウシ抗hLFとともに
1時間インキュベートした。別の洗浄後、基質溶液(0.11M酢酸ナトリウム、pH5
.5中0.01%(w/v)TMB、0.003%(v/v)H2O2)を添加した。基質変換を、2M H2SO4の
添加によって停止し、そして450nmでの吸光度をSLT 340 ATCCマイクロプレート
リーダー(SLT-labinstruments,Austria)で読みとった。すべてのインキュベ
ーションを、100μl容量で行った。
種々のリガンドに対する異なるhLF種の反応性を決定するために、欠失した*hL
F改変体およびN末端が未処理の天然hLF(参照として使用される)の連続希釈を
、hLF抗原についてのリガンド結合アッセイおよびELISAで並行して試験した(hL
F濃度の差を較正するために)。リガンドのそれぞれに対するhLF改変体の反応性
を、任意に100%として定義した天然hLFとの応答のパーセントとして表した。
G.固相リガンドへのhLF結合の競合阻害
ビオチン化hLF(100ng)を、PTG中の競合物の連続希釈と16時間プレインキュ
ベートし、上記のようにコーティングしたマイクロタイタープレートに添加した
。2時間後、プレートを洗浄し、そしてストレプトアビジンビオチン化HRPO複合
体と30分間インキュベートした。第2の洗浄後、基質溶液を添加した。さらなる
手
順を記載のように行った。結果を、競合物なしでのビオチン化hLFの応答の阻害
のパーセントとして表した。
H.組換えN-またはC-ローブ(lobe)に対するモノクローナル抗hLF抗体エピ
トープのマッピング
Polysorbプレートを、1μg/ml精製mAbを含むPBSで20℃にて16時間コーティン
グした。プレートを洗浄し、そして天然hLF(100ng/ml)の連続希釈および組換
えN-ローブまたはC-ローブのいずれかを分泌する安定な293(S)細胞株の馴化培地
と2時開インキュベートした。洗浄後、結合したhLFを、記載のように、ペルオ
キシダーゼ結合したウシ抗hLFで検出した。
I.抗hLF-Sepharoseへの異なるhLF種の結合を比較するためのRIA手順
これらのRIAの技術手順は、hLF抗原についてのRIAについて記載されたとおり
であった。簡単にいえば、Sepharoseにカップリングした抗hLF mAbを、hLF改変
体の連続希釈物とインキュベートした。結合したhLFを、ポリクローナル125I-抗
hLF抗体との続いてのインキュベーションによって検出した。結果を、添加した
標識した抗体の総量の結合パーセントとして表した。
II.結果
A.ヒトラクトフェリンは、ヘパリン、リピド(lipid)、hLZ、およびDNAと
特異的に相互作用する。
固相リガンド結合アッセイを、ヘパリン、リピドA、hLZ、およびDNAとのhLF
の相互作用を研究するために開発した。図1は、マイクロタイタープレートに固
定したリガンドのそれぞれに対する天然hLFの結合を示す。hLFを、コーティング
していないプレートまたはウシ血清アルブミンでコーティングしたプレートとイ
ンキュベートした場合、結合は観察されなかった(結果を示さず)。これらの結
果は、hLFが、ヘパリン、リピドA、hLZ、およびDNAに特異的に結合することを
示す。
次に、これらのリガンドへの天然および鉄飽和したhLFの結合を特徴づけた。
表1は、同一のIC50値を有する両方のhLF種が、ヘパリン、リピドA、およびhLZ
へのhLFの結合について競合したことを示し、これは、各リガンドに対する天然
および鉄飽和したhLFの同一の親和性を示す。サイズおよび構造がhLFに密接に関
連する金属結合タンパク質である、ヒトトランスフェリン(hTF)での阻害は見
られず、このことはhLF-リガンド相互作用の特異性を確証づけた。
hLF上のヘパリンおよびDNAの結合には、静電的相互作用が挙げられ、これはイ
オン強度を増加させることによって破壊され得る。図2は、LPSおよびhLZへのhL
Fの結合におけるNaCl濃度の効果を示す。生理学的NaCl濃度(0.15M)では、約40
%のhLFがLPSおよびhLZに結合した。塩濃度を減少させると、LPSおよびhLZに結
合するhLFを、0.013M NaClでそれぞれ約75%および55%まで増加させたが、0.4M
NaClを超えてNaClを増加させると結合が消滅した。これらの結果は、リガンド
へのhLFのイオン強度依存性を示し、そしてタンパク質のカチオン性の高いN末
端が、hLFのリガンドとの静電的相互作用に関連することを示唆する。
表1
hTF とではなく非標識hLFとのhLFリガンド相互作用の阻害 a12.5Mビオチン化hLFとの応答の50%阻害を得るための競合物の濃度。結果は、
少なくとも4つの独立した実験の平均±SDである。
B.領域Arg2-Arg3Arg4-Arg5はヘパリン、リピドA、hLZ、およびDNAへのhLF
の結合に必須である。
hLF-リガンド相互作用におけるhLF N末端での4つの連続するアルギニン(「
第1の塩基性クラスター」)の寄与を描写するために、ヘパリン、リピドA、hL
Z、およびDNAへのN末端が欠失したhLF種の結合を研究した。hLF-2Nと命名し
た、Gly1-Arg2を欠く天然hLFは、N末端未処理hLFよりも、ヘパリン、リピドA
、hLZ、およびDNAに対してそれぞれ2、1.5、3、および3倍低い親和性を示し
た(表2)。hLF-3Nと命名した、Gly1-Arg2-Arg3を欠く天然hLFは、ヘパリン、
リピドA、hLZ、およびDNAに対してそれぞれ8、4、17、および17倍低い親和性
を示した。hLFの結合は、Arg2-Arg3-Arg4-Arg5を欠く変異体rhLF-5Nではなかっ
た(表2)。これらの結果は、4つのすべてのアルギニンが、ヘパリン、リピド
A、hLZ、およびDNAとhLFとの相互作用に寄与すること、および第1の塩基性ク
ラスターの除去がこれらのリガンドとhLFとの相互作用を消滅させることを示す
。
表2 ヘパリン、リピドA、hLZ、およびDNAへのN末端欠失したhLF種の結合 C.モノクローナル抗体E11はhLF-リガンド相互作用を阻害する。
10の異なる精製抗hLF mAbを、固定されたリガンドへのhLFの結合を阻害する能
力について試験した。図3の結果は、hLFの抗hLF mAb E11とのプレインキュベー
ションが、ヘパリン(A)、リピドA(B)、およびhLZ(C)とhLFとの相互作用を完全
にブロックし得るが、コントロールmAbはhLF結合に影響を及ぼさなかったことを
示す。固相リガンドへのhLF結合を完全に防止するために必要とされる、プレイ
ンキュベーション混合物中のmAb E11およびhLFのモル比の差は、おそらく、各リ
ガンドおよびmAb E11に対するhLFの親和性の差(異なるリガンドおよびmAbとのh
LFの界面におけるわずかな差のため)ならびに固定されたリガンドの量の差から
生じる。驚くべきことに、E11以外のすべての抗hLF mAbはhLF-リガンド相互作用
を増加させる(図3はmAb E3との代表的結果を示す)。後者は、おそらく、モノ
マーhLFより、固定されたリガンドに対する高い親和性を有するダイマー複合体
を含むmAbによる、2つの固相結合したビオチン化hLF分子の架橋のためである。
D.mAb E11のエピトープはhLFのN末端にある。
hLF上にmAb E11エピトープを位置決定するために、天然hLFの連続希釈および
組換えN-またはC-ローブのいずれかを含む培養上清を、マイクロタイタープレー
ト上に固定したE11に添加した。図4Aは、E11が組換えN-ローブに結合することを
示す。図4BおよびCは、抗N-(E3;図4B)および抗C-ローブ(E19;図4C)mAbを
使用したコントロール実験を示す。mAb E11(図4A)およびmAb E3(図4B)でのE
LISAにおけるrN-ローブ中のN-ローブ抗原検出の天然hLF中の検出との比較分析は
、結合したhLFの検出のために使用されたポリクローナル抗hLFが、E11エピトー
プに対するより、mAb E3エピトープに対して指向する、より多くの抗体を含むこ
とを示唆する。
2つのN-ローブ特異的mAb E3およびE11(図4)を、Sepharoseにカップリング
し、そしてrhLF-5N、hLF-3N、hLF-2N、および天然hLFの精製サンプルの連続希釈
とインキュベートした。E3-SepharoseでのRIAにおいてこれらのhLF種の用量応答
曲線は、同一勾配および最大応答を示し(図5B)、このことは、N末端欠失した
hLFおよび天然hLFが、mAb E3によって等しく良好に結合し、そしてポリクローナ
ル抗体によって検出されることを示唆した。E3およびE11でのRIAにおける応答の
比較は、rhLF-5NおよびhLF-3NにおけるN末端残基の除去が、E11によるこれらの
hLF改変体の結合に影響を及ぼすことを示す(減少したプラトー値および非平行
曲線によって表されるので)。これらの結果は、N末端アルギニン残基がE11エ
ピトープの一部であることを意味する。mAb E11へのrhLF-5Nの結合が完全に廃棄
されなかったという観察は、E11エピトープがまたArg5のC末端の残基を含むこ
とを示す。
III.議論
これらのデータは、単一の領域Arg2-Arg3-Arg4-Arg5が、hLZおよびポリアニ
オン(ヘパリン、リピドA、DNAのような)とhLFとの特異的静電的相互作用を決
定することを示す。データは、ヘパリン、リピドA、hLZ、およびDNAとhLFの相
互作用において4つのアルギニンのN末端から2番目のストレッチの必須の役割
を、明確に証明する。結合は、連続するArg残基の除去において減少し、そしてA
rg2〜Arg5を欠く変異体であるrhLF-5Nでは消滅した。後者の観察は、Arg4および
Arg5がhLF-GAG相互作用に重要であると結論した、Mannら,前出と一致する。し
かし、1つまたは2つのN末端アルギニン残基を欠く天然hLF種でのここで示さ
れる結果は、Arg2およびArg3がまた、ヘパリン、リピドA、hLZ、およびDNAとhL
Fとの相互作用に寄与することを示す。残基Arg4およびArg5が、ヒト、ヒツジ、
ウマ、ウシ、およびブタLFに保存されることは注目すべきことである。マウスLF
(mLF)は、これらの位置で1対の塩基性残基を欠く[32]。実際、mLFは、Mono S
クロマトグラフィー[1]において0.3M NaClで、すなわち、実際にrhLF-5Nと同じ
位置で溶出し、そしてリガンドへのhLFの結合と競合しない。
変異体rhLF-5Nは、20μg/mlまでの濃度が固相結合アッセイで添加される場合
でさえ、任意のリガンドと相互作用する能力を喪失した。さらに、LPSおよびヘ
パリンへの組換えC-ローブの結合は検出可能ではない。明らかに、N-ローブの第
1の塩基性クラスターArg2-Arg3-Arg4-Arg5に相同である、C-ローブの塩基性ク
ラスターArg342-Arg343-Ala344-Arg345は、これらのリガンドと相互作用し得な
い。これは、Arg342-Arg343-Arg344-Arg345の前の3つの連続するグルタミン酸
(Glu336-Glu337-Glu338)および/または正電荷の表面曝露によるものであり得
る。N末端トリプシン処理フラグメントでのC末端トリプシン処理フラグメント
の少量の夾雑は、LPSへのC末端トリプシン処理フラグメントの見かけの結合を
説明するようである[11]。鉄を含まないhLFおよび鉄飽和したhLFは、ヘパリン凝
固活性を中和する同じ能力を有することが見いだされている[3]。天然のhLFおよ
び鉄飽和したhLFが、ヘパリン、リピドA、およびhLZへのhLFの結合について等
しく十分に競合したことを表1で示し、これは、両方のhLF種がこれらのリガン
ドについて同一の親和性を有することを示唆する。したがって、鉄の取込みの際
にhLFで生じるコンホメーション変化は、明らかに、N末端リガンド結合部位の
突出に影響を及ぼさない。実際、結晶学は、鉄でのhLFの飽和において、N
-ローブの2つのドメインは剛体として回転し、N末端の相対位置を本質的に影
響を受けないままにすることを示した[12]。モノクローナル抗体E11は、リピド
A、ヘパリン、およびhLZとhLFとの相互作用を特異的に阻害し、そしてArg2-Arg3
-Arg4-Arg5にまたはその近くに結合することがマッピングされた(図5)。こ
れは、hLF-リガンド相互作用におけるこの領域の重要性を確認する。
発明者らは、ヒト乳汁LFの多くの市販の調製物が、0.5および0.6M NaClで溶出
する、3または2個のN末端残基を欠くhLF種の種々の量を含むが、N末端がイ
ンタクトなhLFは、0.7M NaClでMono Sから溶出することを、これまでに見いだし
た。hLFは、SDS-PAGE分析によって評価されるようにインビトロでのトリプシン
処理タンパク質分解に非常に抵抗性であるが、実験は、N末端アルギニン2およ
び3で最初におよび比較的容易に切断が生じることを証明した。N末端で切断さ
れた多くのhLFを含む調製物は、ヘパリン、LPS、hLZ、およびDNAとの相互作用が
hLF作用に対する基礎である生物学的アッセイにおいて、インタクトなhLFよりも
低い比活性を提示するようである。切断されたhLFがヘパリン抗凝固活性を中和
しそのためトロンビン形成および凝固を増強する能力は、おそらく、インタクト
なhLFの能力よりも低い。細胞表面GAGに対するウイルス結合のhLFによる妨害が
、実際に、抗ウイルス効果の基礎であるならば、切断されたhLFは、CMVでの感染
をあまり効果的に予防しないかもしれない。切断されたhLFが好中球のLPS誘導性
プライミングを阻害する能力は、減少するようである。同様に、核DNAへの結合
による遺伝子転写の効果は、切断されたhLFであまり生じないようである。LPSへ
のhLFの結合およびそれからの効果[6]が、抗菌効果全体における重要な決定要素
であるならば、いくつかのグラム陰性細菌に対する切断されたhLFの抗菌活性は
減少する。故意または夾雑物としてのいずれでも、生物学的系中のリガンドの存
在はまた、別のリガンドとの相互作用が、活性に重要であるならば、または複合
体の活性がhLF単独の効果を超える場合、hLFの生物学的活性に影響を及ぼし得る
。例えば、ヘパリンは、Staphylococcus aureus[13]へのhLFの結合をブロックす
ることが示されている。RNAおよびDNAは、hLFがナチュラルキラー細胞の細胞傷
害性を増加させる能力を阻害した[14]。リピドAとhLFのプレインキュベーショ
ンは、ヘパリンへの結合を完全にブロックし得た。hLFのLPSでの夾雑は、hLFの
骨
髄抑制効果[33]、単球性IL-1およびTNF放出の抑制、ならびに増強されたfMLPが
引き起こしたスーパーオキシド放出についての好中球のLPSプライミングの阻害[
4]を除去する。0.4M NaClでの乳汁からのhLFのバッチ式抽出は、hLZおよびLPSで
のこのタンパク質の夾雑を抑制する効果的手段である。しかし、また、N末端短
縮したhLFが、いくつかの他の生物学的系においてインタクトなhLFより高い比活
性または他の異なる性能を提示し得るようである。循環からのhLFの迅速な肝ク
リアランスは、少なくとも2つのクラスのhLF結合部位、すなわち、多数の低親
和性結合部位(おそらく細胞会合型プロテオグリカン)およびキロミクロンレム
ナントレセプターおよび/またはLDL-レセプター関連タンパク質(LRP)を提示
するさらに少数の高親和性結合部位を含む[15、16]。Ziereらは、ラット肝細胞
キロミクロンレムナントレセプターへの結合およびその後のインターナリゼーシ
ョンが、最初の14個のN末端残基がアミノペプチダーゼ処理によって除去されて
いるhLFで増加したことを示した[16]。N末端短縮されたhLF種では、細胞表面に
会合した硫酸化分子への切断されたhLFの「低親和性」結合は、Jurkatヒトリン
パ芽球T細胞における豊富な低親和性結合部位を示す。これらの結果は、特異的
レセプターへのhLFの結合が、hLFの第2の塩基性クラスターを含むという明らか
な証拠を提供する。したがって、hLFの制限されたN末端タンパク質分解は、よ
り大きな割合のhLFを特異的レセプターに結合するようにシフトさせ、したがっ
ておそらくhLF免疫調節活性を変化させ得る。
実施例2
この実施例は、LF改変体が、Jurkat細胞LFレセプターに高親和性で結合するが
、硫酸化細胞表面分子には結合しないかまたは天然LFに比較して低い親和性で結
合することを証明する。
I.材料および方法
A.化学薬品
大豆トリプシンインヒビター(SBTI、I-S型)、ウシ膵臓トリプシン(III-S型
)、および塩素酸ナトリウムを、Sigma Chemical Co.(St.Louls,MO,U.S.
A.)から購入した。制限エンドヌクレアーゼおよびオリゴヌクレオチドを、Eurog
entec(Seraing,Belgium)から得た。T4リガーゼ、ウシアルカリホスファターゼ
、およびpBluescript SKを、Stratagene(La Jolla,U.S.A.)から得た。Sequanas
e DNA配列決定キットを、United States Biochemical Corporation(Cleveland,
U.S.A.)から得た。線状化したAcNPV DNAを含むBaculogoldキットおよびアガロー
スを、Pharmingen(San Diego,U.S.A.)から購入した。プラスミドpVL1392および
細胞株Spodoptera frugiperda(Sf9)は、C.Auriault博士(Institut Pasteur,Li
lle,France)から善意で提供された。キャリアを含まないNa125Iを、ICN Pharma
ceuticals(Orsay,France)から、そしてIodo-Beadsを、Pierce(Rockford,U.S.A
.)から得た。Sephadex G25 PD-10カラムを、Pharmacia-LKB Biotechnology(Upps
ala,Sweden)から購入した。RPMI 1640培地およびウシ胎児血清(FCS)を、それ
ぞれ、Techgen International(Les Ulis,France)およびD.Dutscher(Brumath,
France)から得た。SF900II昆虫細胞培地およびゲンタマイシンを、Gibco BRL(Ce
rgy-Pontoise,France)から得た。すべての他の化学薬品は、分析グレードであ
った。
B.タンパク質
天然のhLFを、既述[24]のようにイオン交換クロマトグラフィーによって単一
のドナーの新鮮なヒト乳汁から精製した。ウシLfは、Biopole(Brussels,Belgiu
m)によって提供された。マウスLfを、以下のようにマウス乳汁から単離した:マ
ウス乳汁を、0.01%(w/v)SBTI、10mM塩酸ベンズアミジン、0.05%ヘキサジメト
リンブロミド(Polybrene)、10mM EDTA、1mM PMSF、および0.8M NaClを含むリン
酸緩衝化生理食塩水、pH7.5(PBS)で2倍希釈した。希釈した乳汁を、40,000g
で4℃にて1時間、スイングアウトローターで回転して、乳漿、カゼイン(ペレ
ット)、および脂肪を分離した。乳漿画分を、20mMリン酸ナトリウム、pH7.5(
緩衝液A)で希釈し、そしてS-Sepharoseカラムにアプライした。カラムを、0.2
M NaClを含む緩衝液Aで洗浄し、そして0.5M NaClを含む緩衝液Aでのブロッキ
ングによって溶出した。S-Sepharose溶出画分を、緩衝液A中でMono S HR 5/5カ
ラム(Pharmacia,Upsalla,Sweden)に戻した。結合したタンパク質を、15ml
緩衝液A中0〜0.5M NaClの線型塩勾配で0.5ml/分の流速で溶出した。0.28M NaC
lで溶出するマウスLfを、さらなる実験に使用した。タンパク質の均一性を、SDS
/PAGE[25]によってチェックした。ラクトフェリンの鉄飽和を、他[26]に記載の
ように行った。ヒト血清トランスフェリンを、Sigma(St.Louis,MO,U.S.A.)
から得た。非改変rhLfを、[27]に記載のように得た。
C.アミノ酸1〜5を欠くN末端欠失したhLf変異体の発現および精製
hLfをコードする全長2.3kbp cDNAを、記載[28]のように、ヒト乳腺cDNAライブ
ラリー(Clontech,Palo Alto,CA,U.S.A.)から得た。Sculptorインビトロ変
異誘発システムキット(Amersham International,Amersham,Bucks,U.K.)を使
用して、hLfのGly1-Arg2-Arg3-Arg4-Arg5をコードする配列5'-GGCCGTAGGAGAAGG-
3'[19]を欠失した。この目的のために、変異誘発オリゴヌクレオチド:5'-CTGTG
TCTGGCTAGTGTTCAGTGGTG-3'を合成した。変異誘発のためのテンプレートは、ファ
ージM13mp11であり、これはpBluescript SKプラスミド[28]にクローニングした
コード配列の310bp EcoRI-AccIフラグメント(ヌクレオチド295〜606[19])を含
んでいた。変異誘発後、欠失を、DNA配列分析によって確認し、そして変異したE
coRI-AccIフラグメントを、記載[28]のようにhLfの全長cDNAの3'相補的部分とと
もに、pBluescript SKに連結し戻した。最後に、変異したcDNAを、pVL1392にサ
ブクローニングし、pVL1392-rhLf-5N構築物を得た。組換えバキュロウイルス、S
f9昆虫細胞培養物の産生、およびN末端欠失したrhLf変異体(本明細書では以下
「rhLf-5N」と命名した)の産生を、[27]に報告されるように行った。組換えタ
ンパク質を、0.2M酢酸ナトリウム、pH7.8で平衡化したSP-Sepharose Fast Flow
カラムで、細胞培養培地から精製し、そして0〜1M NaClの線型塩勾配で溶出し
た。rhLf-5Nの純度を、7.5%SDS-PAGEでチェックした。rhLf-5NのN末端アミノ
酸配列分析を、Applied BioSystem 477 Protein Sequencerを使用して、エドマ
ン分解手順によって行った。
D.SDS-PAGE分析
非還元および還元hLfのSDS-PAGEを記載[18]のように行った。タンパク質を、
クーマシーブリリアントブルーで染色し、そしてhLfタンパク質バンドを、Signa
l Analytics(Vienna,VA,U.S.A.)のIPlabGelソフトウエアを使用してデンシト
メトリーによって定量した。
E.タンパク質の放射標識
種々のラクトフェリン改変体の125I標識を、触媒としてヨードビーズを使用し
て行った。2つのヨードビーズを、1.5mlポリプロピレン遠心チューブ中で1ml
PBSで2回洗浄し、そして100ml PBS中0.2mCiの放射性ヨウ素とともに室温にてプ
レインキュベートした。次いで、100ml PBS中100mgタンパク質を混合物に添加し
、そして4℃にて10分間インキュベートした。容量を、PBSで500mlに調節し、そ
して遊離のヨウ素を、無血清RPMI 1640で平衡化したPD-10カラムでのゲル濾過に
よって除去した。放射性ヨウ素化したタンパク質の比活性を、280nmでの吸光度
を測定することによって推定し、そしてCompugamma LKB-Wallac(Turku,Finland
)γ放射線カウンターで計数した。
F.細胞培養
Jurkat細胞を、5mg/mlゲンタマイシン、2mM L-グルタミン、20mM Hepes、お
よび10%熱不活化FCSを含む、RPMI 1640培地pH7.4中で、5%CO2下で湿潤雰囲気
で37℃にてルーチンで培養した。細胞を、対数増殖期に保ち、そして結合実験の
1日前に4×105/ml(細胞カウンターを使用することによって決定した)の細胞
密度まで希釈した。24時間後、細胞生存能力をトリパンブルー染色を使用してチ
ェックした。次いで、細胞を、氷冷無血清RPMI 1640で2回洗浄し、そして4℃
、200gにて10分間の遠心分離によって採取した。
G.塩素酸ナトリウムでのJurkat細胞の処理
Jurkat細胞を、10%FCS、5mg/mlゲンタマイシン、および30mM塩素酸ナトリウ
ムを含む新鮮なRPMI 1640培地中4×105/mlの細胞密度まで希釈した。塩素酸ナ
トリウムの非存在下でインキュベートした細胞を、コントロールとして使用した
。塩素酸処理の24時間後、細胞を計数し、そして細胞生存能力を、トリパンブル
ー
を用いて評価した。
H.細胞結合実験
平衡結合実験を、0.4%(w/v)ヒト血清トランスフェリンを含む無血清RPMI 164
0中で行って、hLfの細胞またはプラスチックへの非特異的結合を防止した。5.105
細胞を含むアリコート(100ml)を、1.5mlポリプロピレン遠心チューブに添加
し、そして125I-標識したタンパク質の連続希釈物(0〜80nMの範囲の濃度)と
ともにインキュベートした。タンパク質との細胞のインキュベーションを、0.01
%(w/v)アジ化ナトリウムの存在下で4℃にて1時間行って、リガンドインタナ
リゼーションを防止した。細胞を、1ml RPMIを用いる7分間の180gでの遠心分
離によって3回洗浄し、0.5ml PBSに再懸濁し、そして結合した放射能を測定し
た。非標識hLfの100倍モル過剰の存在下で測定した非特異的結合は、代表的には
、総結合の約25%であり、そして特異的結合を得るために総結合から差し引いた
。結合パラメータ(Kdおよび細胞当たりの結合部位数)を、Enzfitterプログラ
ムソフトウエア1.05(vioSoft)を使用して、スキャッチャードプロット分析[29
]によって算出した。
II.結果
A.N末端欠失したhLf改変体の調製
ArgおよびLys残基の後ろを特異的に切断するセリンプロテアーゼである、トリ
プシンによるhLfの制限されたタンパク質分解を研究した。5mg量の天然のhLfを
、PBS中37℃にて1:8の酵素:基質モル比でトリプシンとともにインキュベートし
た。切断を、12倍モル過剰のSBTIの添加によって1、5、25分、および3時間後
に停止し、そしてN末端の完全性を、分析用Mono Sクロマトグラフィー[18]によ
って評価した。結合したタンパク質を、30ml緩衝液A中0〜1.0M NaClの線型塩
勾配を用いて1.0ml/分の流速にて溶出した。溶出したタンパク質を、280nmでの
吸光度測定によって検出した。相対量(%)を、ピーク面積を積分することによ
って算出した。表3は、1分間のトリプシン処理後に、20%および80%のhLf分
子が、それぞれ残基Gly1-Arg2-Arg3またはGly1-Arg2を欠くので、すべてのhLf分
子が、
N末端切断されていることを示す。3時間後、総hLf分子の2%、49%、および4
2%は、それぞれ、残基Gly1-Arg2-Arg3-Arg4(さらに「hLf-4N」と命名)、Gly1
-Arg2-Arg3(さらに「hLf-3N」と命名)、およびGly1-Arg2(さらに「hLf-2N」
と命名)を欠いた。
表3
天然のhLfの制限されたトリプシン処理タンパク質分解後に得られる N- 末端欠失したhLf改変体の相対量 ヒトLfを、Lys283の後ろでトリプシンによって切断し、これは、Mr 39,000お
よび51,000の主要NおよびC末端トリプシン処理フラグメントを生じる[30,31]
。1、5、25分、および3時間のトリプシン処理後に得られるhLf-2NおよびhL
f-3Nの非還元サンプルのSDS-PAGE分析は、Arg2およびArg3の後ろのペプチド結合
のトリプシン処理タンパク質分解が、Lys283の後ろの切断前に生じること、すな
わち、Mr39,000および51,000のトリプシン切断フラグメントが、1および5分切
断から得られたサンプルで観察されなかったことを示した(図6)。25分後、少
量のNおよびC末端トリプシン処理フラグメントの存在が観察された。1%未満
の総タンパク質は、Mr 39,000および51,000のフラグメントに切断された。3時
間後、これらのフラグメントは、総hLfの約5%を示した。
B.残基1〜5を欠く組換えhLfの調製
Arg5は、天然のhLfの制限されたトリプシン処理によって切断され得なかった
。したがって、さらにrhLf-5Nと命名した、最初の5つのN末端アミノ酸のいず
れかを欠く組換えhLf(rhLf)変異体を発現した。線状化したバキュロウイルス
およびpVL1392-rhLf-5Nを使用して、Sf9細胞を形質転換し、そしてrhLf-5N発現
クローンをELISA[17]によって選択した。このクローンの培養培地を、SP-Sephar
ose Fast Flowカラムにロードし、そしてrhLf-5Nは、0.4M NaClで単一ピークと
して溶出した。タンパク質は、SDS-PAGEによってMr 78,000の単一タンパク質の
バンドとして現れた。rhLf-5NのN末端、Ser-Val-Gln-Trp-Cys-Ala-Valを、アミ
ノ酸配列分析によって確認した。組換え体hLf-5Nを、培養培地1mlあたり8mgの
の最大収量で得た。
C.天然のLfおよびN末端欠失したhLF種のJurkat細胞への結合
Jurkatヒトリンパ芽球T細胞への結合におけるhLfのArg2-Arg3-Arg4-Arg5(「
第1の塩基性クラスター」)の役割を描写するために、0〜80nMの範囲の濃度で
の125I-標識した天然のhLfおよびN末端欠失したhLf種の結合を研究した。図7
は、すべてのhLf種の結合が、濃度依存的および飽和可能であったことを示す。
さらに、すべてのタンパク質の結合を、非標識ラクトフェリンの100倍モル過剰
の存在下で約75%阻害し、これは、結合が可逆的および特異的であったことを示
唆した。スキャッチャード分析は、使用したhLf濃度の範囲で、N末端欠失したh
Lfの親和性が、N末端がインタクトなhLfと比較した場合、有意に増加したこと
を示した(図8a)。Kdは、hLfまたはrhLfについての69または81nMから、hLf-2N
、hLf-3N、およびhLf-4Nについての65、57、および41nMまでそれぞれシフトした
。rhLf-5Nについて顕著に減少した12.4nMのKdが観察された。さらに、細胞当た
りの結合部位の数が、N末端がインタクトなhLfについての110,000から、hLf-4N
およびrhLf-5Nの両方についての20,000まで減少したことが見いだされた(図8b
)。hLf-2NおよびhLf-3Nは、それぞれ約75,000および35,000の結合部位に結合し
た。これらの結果は、Jurkat細胞上の約80,000の結合部位へのhLfの結合が、Gly1
-Arg2-Arg3-Arg4の存在に依存することを示唆する。
ラクトフェリン-Jurkat細胞相互作用の種特異性を評価するために、125I-hLf
、
bLf、およびmLfの結合を研究した。図9は、bLfの結合曲線がhLfの結合曲線に匹
敵することを示す。したがって、算出されたKdおよび細胞当たりの結合部位の数
は、顕著な違いはなく、すなわち、両方のLf種について約60nMおよび100,000部
位/細胞であった(図11)。一方、mLfは、細胞当たり約8,000の結合部位に結合
し、31nMのKdを有した。mLfのこれらの結合パラメータは、hLf-4NまたはrhLf-5N
で得られる結合パラメータに匹敵する(図8b)。
D.Jurkat細胞へのhLf種の結合に対する、塩素酸ナトリウム処理の影響
硫酸化されたGAG(例えば、硫酸ヘパリン、デルマタン硫酸、またはコンドロ
イチン硫酸)が、Jurkat細胞へのhLfの結合をどの程度決定するかを評価するた
め、これらの細胞を、塩素酸ナトリウムで前処理した。塩素酸塩は、ATPスルフ
リラーゼのインヒビターであり、したがってスルホトランスフェラーゼについて
の活性スルフェートドナーであるホスホアデノシンホスホスルフェートの産生の
インヒビターである。塩素酸塩は、細胞増殖またはタンパク質合成を妨害するこ
となく、インタクトな細胞において炭水化物残基の硫酸化をなくすことが示され
ている[22、23]。Jurkat細胞を、30mM塩素酸ナトリウムの非存在または存在のい
ずれかで24時間増殖した2つのプールに分割した。塩素酸塩は、Jurkat細胞の増
殖速度にも形態にも影響を与えなかった。細胞を洗浄し、そして0〜80nMの範囲
の濃度の125I-hLf、hLf-3N、およびrhLf-5Nとともにインキュベートした。図11
および12は、Jurkat細胞の塩素酸塩での処理が、天然のhLFについての結合パラ
メータに影響を及ぼしたことを示す。Kdは、塩素酸塩処理で71.1nMから62.6nMま
でわずかに減少し、そして結合部位の量は、細胞当たり102,000から65,450まで
減少した。細胞に結合した硫酸基の枯渇は、それぞれ、57.2nMおよび27.9nMのKd
値を有するhLf-3NまたはrhLf-5Nのいずれかを認識する、類似の数の21,000の結
合部位を生じた(図11および12)。結合部位のこの数は、hLf-4NおよびrhLf-5N
の両方についての未処理細胞で見られる数(約17,000部位/細胞;図8)と非常
に近い。したがって、塩素酸塩処理は、hLf-3Nの結合部位の数を35,600から21,1
00まで減少させ、これは、rhLf-5NではなくhLf-3Nがまだ、未処理のJurkat細胞
の細胞表面に曝露された硫酸化された基と相互作用し得ることを示唆する。
III.議論
この実施例は、リンパ芽球細胞株Jurkatへのこのタンパク質の結合におけるhL
fのArg2-Arg3-Arg4-Arg5の役割を示す。
天然のhLfの制限されたトリプシン処理タンパク質分解によって、Gly1Arg2、G
ly1-Arg2-Arg3、またはGly1-Arg2-Arg3-Arg4のいずれかを欠く、大量のN末端欠
失hLf改変体を得る。表3の結果は、Arg2の後ろの切断が、Arg3の後ろの切断の
前に起こることを示す。hLf-4Nを得る、Arg4の後ろのペプチド結合のその後の切
断は、ずっと遅い速度で起こる。SDS-PAGE分析は、使用した穏和な加水分解条件
下で、タンパク質分解が主としてN末端で起こったことを示した。Lys283の後ろ
の内部トリプシン処理タンパク質分解は、切断の3時間後に総hLf分子の3%未
満のみで示されたが、2、49、および42%の分子は、それぞれ、4、3、および
2つのN末端残基を欠いた。これらの結果は、N末端のトリプシン処理タンパク
質分解が、Lys283での主なトリプシン切断部位の後ろの切断の前に起こることを
明確に示す。したがって、hLfのN末端の分解は、外分泌物で容易に達成される
ようであり、このプロセスの生理学的重要性が疑われる。
天然のhLfのJurkat細胞への結合パラメータは、既述[34]のパラメータに近か
ったが、N末端アルギニンの1つのその後の除去は、親和性の漸進的増加、なら
びに細胞当たりの結合部位の数の減少を生じた。これらの結果は、hLfのArg2、A
rg3、およびより低い程度でArg4が、総結合の約80%を示すJurkat細胞上の「低
親和性」結合部位へのhLfの結合に相乗的に関連することを示す。hLfからのArg5
の除去は、おそらくLf特異的レセプターを表す、Jurkat細胞上の約20,000の「高
親和性」結合部位についてのhLfの親和性を強力に増加させた(図8)。したが
って、Arg5は、ラクトフェリンレセプター結合部位の一部として既に同定された
領域である[21]、第2の塩基性クラスター(Arg28-Lys29-Val30-Arg31)にhLfリ
ンパ球レセプターが到達するための立体障害を提供するようである。これはまた
、Arg5が、トリプシン処理後にhLfから放出され得ない理由を説明する。hLfのX
線結晶学的解析データ[20]は、実際、Arg5が、水素結合によってタンパク質コア
に連結されることを示す。したがって、Arg5は、hLfの他の分子と
の相互作用よりも、hLfの構造の完全性により関連するようである。まとめると
、これらの結果は、Arg5ではなくArg2、Arg3、およびArg4が、Jurkat細胞の表面
での約80,000の低親和性結合部位へのhLfの結合を相乗的に必要とすることを示
す。さらに、Jurkat細胞は、約20,000の高親和性結合部位(約20nMのKd)を含み
、これはおそらく、以前[35]に特徴づけられたhLfレセプターを表す。高親和性
結合部位のこのクラスへのhLfの結合は、第1の塩基性クラスターの存在を必要
としない。
これらの結果は、Arg5ではなくArg2、Arg3、およびArg4が、Jurkat細胞上のプ
ロテオグリカンの認識に寄与することを示唆する。
4つの連続するアルギニン残基のN末端クラスターは、hLfに独特である(図1
3)[36、32]。それにもかかわらず、bLfおよびhLfのJurkat細胞への結合に匹敵
した。マウスLfは、hLf-4NおよびrhLf-5Nの結合パラメータに匹敵する、ずっと
少ない数の結合部位(細胞当たり約10,000)への高親和性結合のみを示した。こ
れは、hLfおよびbLfとは対照的に、mLfは、Jurkat細胞のs硫酸化分子と相互作
用せず、リンパ球レセプターとのみ相互作用したことを示唆する。実際、mLfの
N末端配列は、1位で1つのみのリジン残基を含むので、hLf配列(図13)とは
異なり、mLfのプロテオグリカン相互作用がないことについての構造的基礎を提
供する。ウシLfは、hLfのArg4およびArg5と相同な位置にArg残基およびLys残基
を含む。両方のLf種のJurkat細胞への類似の結合は、bLfのN末端での他の塩基
性残基が、プロテオグリカンと相互作用することを示す。塩基性電荷に関して、
hLfおよびbLfの両方とも、残基1〜37の間の異なる位置に類似の数の9つの塩基
性アミノ酸を含むが、mLfは5つの塩基性残基しか含まないことに注目する価値
がある。さらに、mLfは、hLfおよびbLfにおける1の代わりに1〜37の領域に4
つのGlu残基を有する。
結果として、これらのデータは、hLfのArg2-Arg3-Arg4が、タンパク質のリン
パ球への結合に関与することを示す。hLfの第1の塩基性クラスターは、主とし
て硫酸化した細胞表面分子として同定された約80,000の低親和性結合部位と相互
作用することが示された。約20,000のみの高親和性結合部位は、以前[35]に特徴
づけられているhLfリンパ球レセプターに対応するようである。本明細書に記載
のN末端欠失したhLf改変体の定量的調製物は、リンパ球細胞の表面で発現する
異なる結合部位の生物学的役割へのさらなる洞察を得る機会を提供する。
実施例3
この実施例は、インビトロでヒトラクトフェリンによるヘパリン抗凝固活性の
中和を記載する。
1.序論
薬物の抗炎症活性は、抗凝固化された血液が、エンドトキシンを含まない培地
で10倍希釈されるWB(全血)アッセイを使用して分析され、そして96ウェルプレ
ートに移され得る。推定抗炎症化合物の存在または非存在での、グラム陰性菌か
らのリポ多糖(LPS)、免疫複合体、またはサイトカインのような、前炎症性メ
ディエーターの添加の効果は、血漿カスケード系の活性化(例えば、補体活性化
、凝固系の活性化についてのトロンビン-アンチトロンビンIII複合体[TAT]、お
よび/または単球サイトカイン産生および好中球の活性化)を測定することによ
って研究され得る。ラクトフェリンは、炎症の強力なメディエーターである、LP
SのリピドA部分に高い親和性で結合する。LPSに結合するラクトフェリンの推定
生理学的結果を研究するために、一連の実験を、WB-アッセイでラクトフェリン
と行った。WBが、ヘパリン処理した血液で、またはTFPI(組織-因子経路インヒ
ビター)で抗凝固したWBで、行われた場合、前炎症性サイトカイン産生に対する
ラクトフェリンの効果で有意な差が示された。ヒトラクトフェリンがヘパリンに
結合することが証明されている(van Berkelら,Biochem.J.328,145-151(199
7)、Wuら,Arch.Biochem.Biophys.317,85-92(1995)、Mannら,J.Biol.Che
m.269,23661-23667(1994))。この相互作用は、インビトロでヘパリン活性の
中和を生じる(Wuら,Blood 85,421-428(1995))。ラクトフェリンがヘパリン
の抗凝固活性を阻害する能力を、ラクトフェリンの存在または非存在で抗凝固さ
れた全血培養物中でTAT複合体の量を測定することによって決定した。
II.方法
A.プロトコル
新鮮なヒト血液を、培養培地(IMDM,Biowithaker)で10倍希釈し、そして100
μg/mlラクトフェリンの存在または非存在で種々の濃度のヘパリン(Leo,Leo W
eesp)で抗凝固化した。ウェルを、37℃にて2時間インキュベートした。サンプ
ルを上清から採取し、そしてTAT複合体の量をELISAによって決定した。
B.タンパク質
天然hLF(Batch 67)、トランスジェニックhLF、ウシラクトフェリン、および
市販のバッチServa hLF(Feinbiochemica,Heidelberg)を使用した。hLF-3N(Gly1
-Arg2-Arg3を欠く)を、Serva hLF(Feinbiochemica,Heidelberg)から単離した
。
III.結果
種々のラクトフェリン種での結果を、図14に示す。100μg/ml hLFの存在下で
は、約10倍多いヘパリンが、十分な抗凝固化された血液を得るために添加されな
ければならない(TAT値<20ng/ml)。ウシからのトランスジェニックhLFおよび
マウスからのゲノムトランスジェニックhLFとの類似の曲線を得、これらが同様
に良好にヘパリンを中和することを示した。hLF-3Nは、N末端未処理hLFと比較
した場合、8倍低い親和性でヘパリンに結合する。ServaのPeak IIIおよび天然h
LFよりもそれぞれ2.1および3.5倍低い効果でヘパリンを中和した。マウスからの
cDNAトランスジェニックhLFを使用して得た比較的減少した効果は、おそらく、
この調製物中の大量のポリブレンの存在による。
ウシラクトフェリン(bLF)、ヒトラクトフェリン、および硫酸プロタミンが
種々のグリコサミノグリカン(ヘパリン、エノキサパリン、ヘパラン硫酸、およ
びN-アセチルヘパリン)を中和する能力も決定した。図15は、hLFおよびbLFが十
分等しくヘパリンおよびエノキサパリン(低分子量ヘパリンである)を中和する
ことを示す。ヘパラン硫酸およびN-アセチルヘパリンとの全血培養物は、TATの
かなりの量を生じ、これらが、全血を抗凝固化するために有用ではないことを示
す。hLF、bLF、または硫酸プロタミンのいずれかのヘパラン硫酸に対する効果は
ない。hLFおよびbLFによるN-アセチルヘパリンの少しの中和を観察した。
IV.結論
上の結果は以下を示唆する:
1)ヒトおよびウシラクトフェリンはまた、エノキサパリン(所定の低分子量ヘ
パリンである)を中和する。
2)種々の多型Arg29/Lys29改変体(hLFバッチ67は異種接合体Arg29/Lys29であ
り、ゲノムトランスジェニックhLFは同種接合体Arg29/Arg29である)間に差がな
いようである。
3)N末端分解したhLF(hLF-3N)は、Peak III Serva hLFおよび天然hLF(box
67)とそれぞれ比較した場合、2.1および3.5倍低くヘパリンを中和する。
実施例4
この実験は、天然hLF、N末端分解したhLF改変体、および鉄飽和したhLFの結
合特性を記載する。
I.序論
乳汁中の少量の鉄にもかかわらず、乳汁中の平均49%の鉄が吸収される。この
レベルは、非強化牛乳および牛乳処方物からの10〜12%と比較して高い。ヒト乳
汁からの鉄のバイオアベイラビリティーを説明するために、ヒトラクトフェリン
(hLF)の鉄吸収に対する可能性のある効果が、長く提案されている(Montreuil
ら,Biochim.Biophys.Acta 45,413-421(1960))。1979年には、Coxらは、ヒ
ト十二指腸粘膜の小片および59Fe標識したhLFフラグメントを使用して、hLFから
の鉄取り込みプロセスの証拠を提供した(CoxらBiochim.Biophys.Acta 588,1
20-128(1979))。ウシラクトフェリン(bLF)からの取り込みが数倍減少しそし
てヒトトランスフェリンおよびニワトリオボトランスフェリン(Ovatransferin
)から観察されたので、この取り込みプロセスは、種およびタンパク質特異的で
あるようであった。これらの知見の後、母乳を与えられている乳児の糞便中の未
処理のhLFの存在は、hLFが胃腸管の通過中にタンパク質分解攻撃を免れ得、そし
てhLFが鉄吸収に関連し得るという考えを強化した(SpikらActa Pediatr.Scand
.71,979-985(1982))。
上記のように、本発明者らは、リンパ球上のhLF結合部位の2つのクラスの存
在を同定した(LegrandらBiochem.J.327841-846(1997)も参照のこと)。1つ
のクラスは、hLFの低親和性結合および多数の結合部位を示すが、第2のクラス
は、高親和性結合および細胞当たり少数の結合部位を示す(前出、LegrandらBio
chem.J.327 841-846(1997))。天然および組換えhLF改変体との結合研究は、h
LFの第1の塩基性クラスターが、低親和性結合部位(おそらく、細胞会合したプ
ロテオグリカン)と相互作用することを示した。hLF N末端におけるカチオン性
残基の第2の塩基性クラスターは、リンパ球上の推定hLFレセプターとの高親和
性相互作用に関連する。したがって、腸細胞上のhLF結合部位の2つのクラスの
存在は、既に観察された腸細胞へのhLFの結合特性を説明し得る。この実験にお
いて、本発明者らは、N末端未処理hLFの結合パラメータをN末端分解したhLF改
変体のパラメータと比較した。さらに、鉄飽和したhLF、bLF、mLF、およびウシ
からのトランスジェニックhLFの結合を分析した。
II.方法
A.結合アッセイ
ヒト結腸癌腫細胞株HT-29(MikogamiらAm.J.Physiol.267,G308-G315(1994
))からの細胞を調製しそして凍結保存した。細胞を毎週継代培養し、そして10
%FCSを含むDMEM中2×104細胞/cm2(24ウェルプレート中)に3週間播種し、十
分に分化した状態に達した。培地を毎日交換した。220μgのラクトフェリンを、
Iodo-genを使用して125Iで放射標識した。細胞を、冷DPBSで3回リンスした。
インキュベーション培地を、4.3mg/mlアポトランスフェリン+ラクトフェリン(
種々の濃度で)を含むDPBS+(1mM Ca2+、0.5mM Mg2+)中で調製し、そしてウェ
ルに添加した。非特異的結合を、冷(cold)天然hLFの100倍モル過剰の存在下で
決定した。4℃にて1時間のインキュベーション後、50μlのインキュベーショ
ン培地を収集し、そして放射能を、ガンマカウンターで決定した。培地を除去し
た後、細胞をDPBSで5回リンスし、DPBS-EDTA中で採集し、そして細胞に付随す
る放射能を決定した。ラクトフェリンのあらゆる濃度を、2連で少なくとも3回
研究した。
B.タンパク質
天然のヒトラクトフェリン、鉄飽和したhLF、トランスジェニックウシの乳汁
から単離されたトランスジェニックhLF、ウシラクトフェリン、マウスラクトフ
ェリン、およびN末端欠失したhLFを使用した。Gly1-Arg2(hLF-2N)、Gly1-Arg2
-Arg3(hLF-3N)、またはGly1-Arg2-Arg3-Arg4(hLF-4N)を欠くヒトラクトフ
ェリンを、制限されたタンパク質分解によって産生した(上記)。
III.結果
図16は、天然hLFのHT-29細胞への結合を示す。図は、(100倍モル過剰の冷hLF
の存在下で)総結合-非特異的結合である、hLFの特異的結合を示す。試験した濃
度内で、結合は比較的非飽和可能であった。スキャッチャード分析(挿入図)は
、これらの濃度内で、hLFが、1.1μMの解離定数で細胞当たり3.19×106部位に結
合したことを示した。図17は、より低いhLF濃度の結合曲線を示す。これらのデ
ータのスキャッチャード分析(図17の挿入図)は、細胞当たり2.3×105部位への
より高い親和性(36nM)での結合の存在を示した。同様の実験を、表4にまとめ
たように、他のラクトフェリンおよび改変体で行った。すべての実験で、天然hL
Fは、コントロールとして含まれた。結合パラメータは、総結合および高親和性
結合に分割される。結果は、天然hLF、鉄飽和したhLF、ウシラクトフェリン、お
よびトランスジェニックウシからのトランスジェニックhLFの間の結合パラメー
タに差がないことを示す。マウスラクトフェリンは、HT-29細胞に結合しない。
1つのN末端アルギニンの除去は、結合パラメータに小さい影響を有するが、高
親和性部位に対する親和性は、124nMの平均値まで減少する。2つのN末端アル
ギニンの除去後、高親和性結合がなくなった。1回のみの測定であるが、3つの
N末端アルギニンを欠くhLFで、同じことが観察される。これらの結果は、N末
端欠失したhLF改変体のJurkat細胞への結合研究とは異なり、ここでは、N末端
アルギニンの除去は、細胞当たりの結合部位の数を減少させるが親和性を増加さ
せる。これらの結果は、HT-29上の特異的レセプターはないが、HT-29に結合する
大きい能力のみがあることを示唆する。表4: 種々のラクトフェリン種のHT-29細胞への結合パラメータ。比較的大きい標準変 動は、接着細胞の使用に関連する(ウェル対ウェル変動)。 a)天然hLFとは有意に異なる(P<0.01)。
N=独立した実験の数。
N末端アルギニンの除去がHT-29への結合を廃止するという観察は、これらの部
位への結合が、第1の塩基性クラスターによってのみ媒介されることを示唆する
。これを試験するために、モノクローナル抗体mAb E11がHT-29細胞への天然hLF
の結合をブロックする能力を試験した。このモノクローナル抗体は、細菌リポ多
糖、ヘパリン(GAG)のようなリガンドへのhLFの結合をブロックし、そしてArg5
を含むエピトープにマッピングされた(前出、van BerkelらBiochem.J.328,1
4
5-151(1977))。図18は、2倍モル過剰のE11が、hLFのHT-29への結合を完全にブ
ロックし得たことを示す。30μg/ml hLFの存在下でのスキャッチャード分析は、
実際、hLF結合の総阻害によって可能ではなかった(示していない)。これらの
結果は、hLFのHT-29細胞への結合が、第1の塩基性クラスターによってのみ媒介
されることを確認する。
HT-29細胞へのhLF結合における塩素酸ナトリウムの効果を決定した(Jurkat細
胞への結合については上記のとおり)。塩素酸は、タンパク質合成での妨害なし
に未処理細胞上の炭水化物残基の硫酸化を阻害し、そして処理は、ヘパラン硫酸
、デルマンタン硫酸、またはコンドロイチン硫酸のような硫酸化したグリコサミ
ノグリカン(GAG)に頼る結合を同定するために使用され得る。HT-29細胞を、硫
酸を含まない培地中で30nM塩素酸ナトリウムで24時間前処理した。結合実験を、
上記のように行った。予備結果は、塩素酸処理が、ヒトラクトフェリンの結合パ
ラメータに著しい効果がないことを示唆する。予備実験はまた、ヘパリナーゼI
と行った。細胞を、硫酸を含まない培地中で37℃にて4時間、2.5U/mlヘパリナ
ーゼIで前処理した。これらの予備結果は、未処理とヘパリナーゼ処理HT-29細
胞との差があることを示唆しない。
IV.結論
上記の結果は、HT-29細胞へのhLF結合が、第1の塩基性クラスターによって全
体的に媒介されることを示す。この結論は、以下の結果に基づく:
1)N末端アルギニンの除去は、hLFのHT-29細胞への「高親和性」結合を廃止す
る。
2)結合は、Arg5を含むエピトープに結合する、抗hLF mAb E11によって完全に
ブロックされる。
3)第1の塩基性クラスター全体を欠くマウスラクトフェリンは、HT-29細胞と
相互作用しない。
結果は、さらに、HT-29で発現される特異的hLF-レセプターがないことを示唆
する。これらの細胞への結合は、まだ同定されていない成分によってのみ生じる
。可能性のある候補物は、グリコサミノグリカンまたはシアル酸(例えば、ムチ
ン
での)である。したがって、hLF-レセプターメカニズムは、結腸での鉄取り込み
を担うようではない。本明細書に示される結果に基づいて、これらのhLF改変体
は、腸壁に結合せず、そしておそらく排泄される。
明快および理解の目的のために、本発明は、これらの実施例および上記の開示
において幾分詳細に記載されている。しかし、特定の変更および改変が、添付の
請求の範囲の範囲内で実施され得ることが明らかである。すべての刊行物および
特許出願は、それぞれが個々にそのように示されているかのような同じ程度まで
、すべての目的のために、その全体が参考として本明細書に援用される。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61P 31/12 A61P 31/18
31/18 35/00
35/00 37/06
37/06 43/00 111
43/00 111 C07K 14/79
C07K 14/79 C12N 7/04
C12N 7/04 C12Q 1/02
15/09 ZNA C07K 16/18
C12Q 1/02 A61K 37/14
// C07K 16/18 C12N 15/00 ZNAA
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
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SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M
W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY
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,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E
S,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU,ID
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LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M
G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT
,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,
TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,V
N,YU,ZW
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.ヒトラクトフェリン改変体を含む薬学的組成物であって、該組成物が、他 のヒトタンパク質を実質的に含まず、そして該ラクトフェリン改変体が、天然ラ クトフェリンよりも低い親和性でヘパリンを結合する、組成物。 2.前記ヒトラクトフェリン改変体が、hLF-2N、hLF-3N、hLF-4N、またはhLF- 5N である、請求項1に記載の組成物。 3.ウシ乳汁タンパク質をさらに含む、請求項2に記載の組成物。 4.前記ヒトラクトフェリン改変体が、鉄で約3%と約100%との間に飽和さ れる、請求項1に記載の組成物。 5.前記ヒトラクトフェリン改変体が、鉄で少なくとも約95%飽和される、請 求項4に記載の組成物。 6.請求項1に記載の組成物を投与する工程を包含する、患者においてラクト フェリンレセプターを活性化する方法。 7.前記ラクトフェリンレセプターが、105kDラクトフェリンレセプターであ る、請求項6に記載の方法。 8.前記105kDレセプターが、Jurkat細胞ラクトフェリンレセプターである、 請求項7に記載の方法。 9.ヒトラクトフェリンを含む組成物を患者に投与する工程を包含する、患者 においてラクトフェリンレセプター保有細胞からのサイトカインの放出を減少さ せる方法。 10.ヒトラクトフェリンを含む前記組成物が、請求項1に記載の組成物であ る、請求項9に記載の方法。 11.前記サイトカインが、IL-1、IL-2、またはTNFαである、請求項9に記 載の方法。 12.ヒトラクトフェリンを含む組成物を患者に投与する工程を包含する、患 者において骨髄造血を阻害する方法。 13.ヒトラクトフェリンを含む前記組成物が、請求項1に記載の組成物であ る、請求項12に記載の方法。 14.ヒトラクトフェリンを含む組成物を患者に投与する工程を包含する、患 者においてTNFα媒介好中球脱顆粒を減少させる方法。 15.ヒトラクトフェリンを含む前記組成物が、請求項1に記載の組成物であ る、請求項14に記載の方法。 16.患者においてラクトフェリンレセプター保有細胞に鉄を送達する方法で あって、ヒトラクトフェリンを含む組成物を該患者に投与する工程を包含し、こ こで、該ヒトラクトフェリンが、鉄で少なくとも約95%飽和される、方法。 17.ヒトラクトフェリンを含む前記組成物が、請求項1に記載の組成物であ る、請求項16に記載の方法。 18.ヒトラクトフェリンを含む組成物を患者に投与する工程を包含する、患 者において慢性炎症性腸疾患を処置する方法。 19.ヒトラクトフェリンを含む前記組成物が、請求項1に記載の組成物であ る、請求項18に記載の方法。 20.ヒトラクトフェリンを含む組成物を患者に投与する工程を包含する、患 者において貧血または鉄蓄積疾患を処置する方法。 21.ヒトラクトフェリンを含む前記組成物が、請求項1に記載の組成物であ る、請求項20に記載の方法。 22.ヒトラクトフェリンを含む組成物を患者に投与する工程を包含する、患 者において炎症を減少させる方法。 23.ヒトラクトフェリンを含む前記組成物が、請求項1に記載の組成物であ る、請求項22に記載の方法。 24.ヒトラクトフェリンを含む組成物を患者に投与する工程を包含する、患 者において固形腫瘍の増殖を阻害する方法。 25.ヒトラクトフェリンを含む前記組成物が、請求項1に記載の組成物であ る、請求項24に記載の方法。 26.請求項1に記載の組成物を患者に投与する工程を包含する、患者におい てナチュラルキラー(NK)細胞を刺激する方法。 27.ヒトラクトフェリンを含む前記組成物が、請求項1に記載の組成物であ る、請求項26に記載の方法。 28.ヒトラクトフェリンを含む組成物を患者に投与する工程を包含する、心 筋梗塞後の患者において再灌流障害を減少させる方法。 29.ヒトラクトフェリンを含む前記組成物が、請求項1に記載の組成物であ る、請求項28に記載の方法。 30.ヒトラクトフェリンを含む組成物であって、該ラクトフェリンの第1の 塩基性クラスターが中和され、そしてラクトフェリン改変体が、天然ラクトフェ リンよりも高い親和性でJurkat細胞105kDラクトフェリンレセプターを結合する 、組成物。 31.前記ラクトフェリンが、抗ラクトフェリンモノクローナル抗体によって 中和される、請求項30に記載の組成物。 32.前記ラクトフェリンが、ヘパリンへの結合によって中和される、請求項 30に記載の組成物。 33.ヒトラクトフェリン改変体を含む薬学的組成物であって、該ラクトフェ リンが、第1の塩基性クラスターを含むが第2の塩基性クラスターを含まない、 組成物。 34.細胞表面プロテオグリカンへの結合によって細胞に侵入するウイルスの 細胞への侵入を阻害する方法であって、ヒトラクトフェリンを含む組成物に該細 胞を曝露する工程を包含し、該ヒトラクトフェリンが細胞表面プロテオグリカン に結合し、そして細胞表面プロテオグリカンへの結合によって該細胞に侵入する ウイルスの該細胞への侵入が阻害される、方法。 35.前記ウイルスが、CMV、HSV1、またはHIVである、請求項34に記載の方 法。 36.細胞表面プロテオグリカンへの結合によって細胞に侵入するウイルスの 該細胞への侵入を阻害する方法であって、請求項2に記載の組成物に該細胞を曝 露する工程を包含し、ヒトラクトフェリン改変体が、細胞表面プロテオグリカン に結合し、そして細胞表面プロテオグリカンへの結合によって該細胞に侵入する ウイルスの該細胞への侵入が阻害される、方法。 37.前記ウイルスが、CMV、HSV1、またはHIVである、請求項36に記載の方 法。
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