JP2002348626A - ダイカスト用アルミニウム合金材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】３００℃を超える高温領域で高い強度を有し、
且つ耐食性にも優れたダイカスト用アルミニウム合金材
を提供する。 【解決手段】Ｓｉ ０．２５〜３．００ｗｔ％、Ｍｇ
０．１５〜１．２ｗｔ％、Ｍｎ ０．３〜３．０ｗｔ
％、及びＦｅ ０．２〜１．０ｗｔ％を含有し、残部ア
ルミニウムおよび不可避的不純物からなることを特徴と
するダイカスト用アルミニウム合金材。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は高温強度及び耐食性
に優れたダイカスト用アルミニウム合金材に関するもの
であり、詳しくは高温での強度が要求されるヒーター部
品等、或いは高温強度と共に耐食性が要求される給湯器
部品等の材料として利用するのに有用なアルミニウム合
金材に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】ダイカスト用ＪＩＳアルミニウム合金
で、最も広く用いられているＡＤＣ１２は、常温での強
度が優れており、一般に様々なアルミニウムダイカスト
製品に用いられている。しかし、このＡＤＣ１２は、３
００℃を超える様な高温領域ではその強度は弱く、例え
ばヒーター部品等の高温下での強度が要求される部品に
対しては、その強度は不十分である。また、ＡＤＣ１２
はその成分中にＣｕを含有しているため耐食性が悪く、
例えば給湯器部品等には適用できない。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、３０
０℃を超える高温領域で高い強度を有し、且つ耐食性に
も優れたダイカスト用アルミニウム合金材を提供するこ
とにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、３００℃
を超える高温領域での高い強度を確保し、しかも良好な
耐食性を確保したダイカスト用アルミニウム合金材を目
的として、アルミニウム合金に添加される成分元素につ
いて種々検討した結果、所定量のＳｉ、Ｍｇ、Ｍｎ、Ｆ
ｅを添加した合金が有用であることを見出し本発明に達
した。即ち、本発明の要旨は、Ｓｉ ０．２５〜３．０
０ｗｔ％、Ｍｇ ０．１５〜１．２ｗｔ％、Ｍｎ ０．３
〜３．０ｗｔ％、及びＦｅ ０．２〜１．０ｗｔ％を含
有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなる
ことを特徴とするダイカスト用アルミニウム合金材に存
する。

【０００５】

【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のダイカスト用アルミニウム合金材は、上記の特
定元素を所定量含有させることにより、最も代表的なダ
イカスト用アルミニウム合金材として各種製品に汎用さ
れているＡＤＣ１２に比べ、かなり高い温度領域でも高
い強度を有し、更に良好な耐食性をも有する優れた特性
のアルミニウム合金材である。具体的には、本発明のア
ルミニウム合金材は、３００℃以上の高温下での強さ、
つまり、高温にさらされた時の材料変形に対する耐力が
優れていることが特に重要で、物性値として０．２％耐
力がＡＤＣ１２のそれを上回るものであり、又ＡＤＣ１
２よりも優れた耐食性を有するのである。

【０００６】本発明のアルミニウム合金材にはＣｕは添
加されず、添加される特定成分元素は、Ｓｉ、Ｍｇ、Ｍ
ｎ及びＦｅである。これらの成分中、Ｆｅは合金と金型
との焼付き防止のために添加されるものであり、他のＳ
ｉ、Ｍｇ及びＭｎは、これらの所定量を同時に添加する
ことによる相乗作用によって、高温領域における合金の
強度、即ち耐熱性と強さを高めるのである。特に、従来
の合金からＳｉ添加量を大幅に減らし、且つＭｇ、Ｍｎ
を添加することで耐熱性、及び強度を向上させ得ること
は本発明者らの新規な知見に基づくのである。そして、
本発明のアルミニウム合金材は、ＡＤＣ１２とは異な
り、耐食性を悪化させるが耐熱性と強さに寄与するＣｕ
を添加することなく高い強度を確保しているのである。

【０００７】本発明のアルミニウム合金材におけるＳｉ
添加量は、０．２５〜３．０ｗｔ％、好ましくは０．４
〜２．０ｗｔ％の範囲で適宜選定する。添加量が０．２
５ｗｔ％未満では強度が十分でない。他方、３．０ｗｔ
％を超えて添加しても、強度の向上には寄与しない。

【０００８】Ｍｇ添加量は、０．１５〜１．２ｗｔ％、
好ましくは０．２５〜１．０ｗｔ％の範囲で適宜選定す
る。添加量が０．１５ｗｔ％未満では強度が十分でな
い。他方、１．２ｗｔ％を超えて添加した場合、強度の
向上には寄与するが、ダイカスト鋳造時の湯流れ性が低
下する弊害が生じやすい。

【０００９】Ｍｎ添加量は、０．３〜３．０ｗｔ％、好
ましくは０．５〜２．０ｗｔ％の範囲で適宜選定する。
添加量が０．３ｗｔ％未満では強度が十分でない。他
方、３．０ｗｔ％を超えて添加した場合、後述の比較例
から明らかなように合金の靱性が低下する。引張試験で
の伸びが１０％を下回ると、変形応力が加わった際、割
れの懸念が生じる。

【００１０】Ｆｅは従来のダイカスト用ＪＩＳ合金にも
添加されているように、アルミニウム合金と金型の焼付
きを防止するために添加される。添加量が０．２ｗｔ％
未満では焼付き防止効果は十分ではなく、また１．０ｗ
ｔ％を超えて添加しても、その効果は１．０ｗｔ％以下
の場合と変わらず、靱性の低下を招くだけである。この
ため、Ｆｅの添加量は、０．２〜１．０ｗｔ％、好まし
くは０．３〜０．７ｗｔ％の範囲で適宜選定する。

【００１１】本発明のアルミニウム合金材は、上記の合
金成分の他、不可避的不純物を含有するが、本発明合金
材の特性を損なわない限り、必要に応じ他の特性の改
善、例えば、金属組織微細化等のために添加される成分
を含んでいても良い。そのような成分としては、例え
ば、Ｚｎ、Ｎｉ、Ｚｒ、Ｃｒ、Ｔｉ、Ｂ、Ｓｎ、Ｉｎ、
Ｃａ、Ｓｒ、Ｎａ等が挙げられるが、これらの成分は過
剰の添加により合金の強度または靱性を低下させるおそ
れがあるので、０．５ｗｔ％以下とすることが必要であ
る。

【００１２】本発明のアルミニウム合金材は、高温領域
において従来のダイカスト用ＪＩＳ合金ＡＤＣ１２より
高い強度、並びに優れた耐食性を有しており、高温強度
を要求されるヒーター部品等、或いは高温強度とともに
耐食性が要求される給湯器部品等の材料として利用する
ことが出来る極めて有用な合金材である。

【００１３】

【実施例】以下に本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例
により制限されるものではない。 ［実施例および比較例］下記表１に示した各組成の合金
を舟型形状の金型に鋳造した。得られた鋳塊の３５０℃
における高温引張試験を実施し、機械的性質を評価し
た。合金調製用のアルミニウムとしては純度９９．８ｗ
ｔ％のものを用い、比較例合金Ｎｏ.１０としてＡＤＣ
１２を用いた。尚、引張試験は、ＪＩＳ Ｚ２２０１に
従って行った。試験測定の結果、本発明実施例の合金で
は、引張強度、及び０．２％耐力のいずれにおいてもＡ
ＤＣ１２より優れていることが明らかである。

【００１４】

【表１】

【００１５】又、上記に得られた鋳塊（実施例）及びＡ
ＤＣ１２（比較例）を用いて、塩水腐食試験を行いその
結果を下記表２に示した。塩水腐食試験は、各合金の試
験片（２０×８０ｍｍ）を各々１ケ５％食塩水溶液に室
温（２０℃）で３０日間浸漬し、腐食による減量を測定
し、評価した。ＡＤＣ１２と比較して、本発明の実施例
の合金はいずれも腐食減量が大幅に少なく、耐食性に優
れていることが判る。

【００１６】

【表２】

【００１７】

【発明の効果】本発明のダイカスト用アルミニウム合金
を利用することで、高温強度に優れたヒーター用部品
等、或いは高温強度と耐食性に優れた給湯器部品等を提
供することができるので、工業的価値は大きい。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 土屋 敦 新潟県上越市福田１番地 菱化マックス株 式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】Ｓｉ ０．２５〜３．００ｗｔ％、Ｍｇ
   ０．１５〜１．２ｗｔ％、Ｍｎ ０．３〜３．０ｗｔ
   ％、及びＦｅ ０．２〜１．０ｗｔ％を含有し、残部ア
   ルミニウムおよび不可避的不純物からなることを特徴と
   するダイカスト用アルミニウム合金材。