JP2002243742A - 抗酸菌症鑑別用試薬および鑑別方法 - Google Patents
抗酸菌症鑑別用試薬および鑑別方法Info
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Abstract
き、短時間で容易に一回の操作で多数の検体をほぼ同時
に検査することができる抗酸菌症鑑別用試薬および鑑別
方法を提供する。 【解決手段】 グリコペプチドリピドのインバリアント
リピド コアをマイクロプレートの穴に分注して固定
し、ヒト血清を添加し、グリコペプチドリピドのインバ
リアント リピド コアに結合する血清中のヒト抗体を
マイクロプレートに捕捉する。捕捉されたヒト抗体の
内,IgM抗体を検出するために,ヤギ由来ペルオキシダ
ーゼ標識抗ヒトIgM抗体を添加し,ヒトIgM抗体にペル
オキシダーゼ標識抗ヒトIgM抗体を結合させ,ペルオキ
シダーゼの酵素活性を発現させた後,発色の強度(吸光
度)を測定する。
Description
薬および抗酸菌症鑑別方法に関する。
栄養と衛生の状態が改善したこと,優れた抗結核薬の開
発などにより着実に減少してきた。しかし近年,結核罹
患率の減少速度が鈍化する一方で結核と臨床症状が似た
非結核性抗酸菌症(非定型抗酸菌症とも呼ばれる),特
にマイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(My
cobacterium avium complex)症とマイコバクテリウム
・カンサシ(Mycobacterium kansasii)症の増加が著し
く,公衆衛生上の大きな問題となっている。非結核性抗
酸菌は,結核菌と同じ抗酸菌に分類されるが,感染性は
結核菌よりも弱く,免疫能が低下した場合に感染する日
和見感染菌と考えられており,非結核性抗酸菌症の約70
%がマイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス
症,約25%がマイコバクテリウム・カンサシ症である。
マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス症は,
生化学性状によりマイコバクテリウム・アビウム(Myco
bacterium avium)とマイコバクテリウム・イントラセ
ルラ(Mycobacterium intracellulare)の間を区別でき
ないことから,これまでこれらはまとめてマイコバクテ
リウム・アビウム・コンプレックス(Mycobacterium av
ium complex)症として取り扱われてきた経緯がある。
(阿部千代治著「抗酸菌の検査」43頁,財団法人結核予
防会発行,1997年11月20日改訂版) 非結核性抗酸菌症の詳細に関しては,小山 明著の「非
結核性抗酸菌症」(財団法人結核予防会発行,1996年10
月4日初版発行)に記載されているので参照できる。
の初期の臨床症状が似ていること,治療面で結核菌と非
結核性抗酸菌に有効な薬剤が異なること,結核への公衆
衛生対策面などから結核菌と非結核性抗酸菌との分離・
鑑別同定は一層に重要性を増してきている。
ら肺に局在するため喀痰を検査試料として用い,塗抹染
色による顕微鏡観察や分離培養により行われてきた。し
かし,分離培養の結果を得るには2〜3週間を要し,胸
部X線所見と臨床症状から深く抗酸菌感染が疑われる場
合でも,25〜50%の検査試料からは菌の検出ができない
のが現状である。よって結核菌と非結核性抗酸菌との鑑
別同定が可能なのは,これ以外の菌の増殖を抑えて目的
の抗酸菌の分離培養に成功した分離菌株を用い,菌種の
鑑別同定検査,例えばナイアシン試験や耐熱カタラーゼ
試験など複数の組み合わせ試験で鑑別できた場合に止ま
っていた。以上の抗酸菌検査の詳細は,阿部千代治著の
「抗酸菌の検査」に記載されているので参照できる。
養法が開発されている。例えば,ベクトン・デッキンソ
ン社の開発した培養方法[セプティチェック(Septi-Ch
eck)AFB,BACTECシステム,およびMGIT]やオルガノン
テクニカ社が開発したMB/BacT マイクロバイアルディテ
クションシステム(Microbial Detection System)など
がこれに当たり,これらの抗酸菌検出率は従来の培養法
(小川法:60.2%,小川変法:75.9%)と比較してSepti-
Check(84.3%),MGIT(84.3%)へと改善し,培養期間
も2週間程度まで短縮可能であると報告されている。
(阿部千代治著「抗酸菌の検査」29〜35頁) また,抗酸菌の鑑別同定法として核酸を用いる新しい検
査法も開発されている。例えば,米国ジン−プローブ
(Gen-Probe)社が開発したアキュプローブ法や極東製
薬工業のDDHマイコバクテリアは,検査試料から分離培
養できた抗酸菌の鑑別同定をそれぞれ2時間(アキュプ
ローブ法),4〜6時間(DDHマイコバクテリア)で正
確に行うことができる。
・鑑別同定まで行う試みが進められている。例えば,ロ
シュ社が開発したAMPLICPR法または米国ジン−プローブ
(Gen-Probe)社が開発したMTD法を用いれば,検査試料
から直接に菌種の鑑別同定が行えるまでに達しており,
慣れた人ならば1日30〜50検体を処理できると報告され
ている。(阿部千代治著「抗酸菌の検査」73〜89頁) 以上に示した多くの技術は,全てが検査試料の喀痰から
抗酸菌を分離・鑑別同定する試みであるが,喀痰に菌が
排泄されている場合でなければ有用性が無い。
検査方法が開発されている。例えば,抗酸菌細胞膜に共
通した構成成分であるミコール酸誘導体を固定化した固
相担体を用い,当該担体と血液を接触させることによ
り,ミコール酸誘導体に結合する血液中の抗体を当該担
体上に捕捉した後,当該担体に捕捉された抗体量を測定
する方法が開示されている。[特許第2519128,平成8年
5月17日登録]この方法によれば,結核や非結核性抗酸
菌症を罹患した患者の血液中に増加する特定の抗体(ミ
コール酸誘導体に結合する抗体)量を測定することによ
り,抗酸菌感染症を簡易に診断できると報告されている
が,ミコール酸誘導体は結核菌にも非結核性抗酸菌にも
共通して存在するので,結核菌と非結核性抗酸菌との感
染症を鑑別することはできない。
ール酸誘導体の他に非結核性抗酸菌の特定種が固有する
グリコペプチドリピド(Glycopeptidolipid)について
多くの報告がある。グリコペプチドリピドは,一般式
(I)に示した構造のR1位に脂質,R2位に糖鎖[oligos
accharide]を有するペプチド糖脂質であり,当該糖鎖
はD-タロース(D-talose)の6位炭素がD-ハイドロキシ
-アロ-スレオニル基と結合する共通構造を含む糖誘導体
2から5個程度の直鎖構造を有している。この糖鎖構造
は,非結核性抗酸菌の種類によって異なるので菌種の区
別に利用されている。一方,当該糖鎖以外の構造部位は
非結核性抗酸菌の種類に関わらず共通性が高いのでイン
バリアント リピド コア(invariant lipid core)と
呼ばれている。グリコペプチドリピドの詳細に関して
は,マイクロバイアル リピッズ(Microbial lipids)
第1巻251〜263頁に記載されているので参照できる。
リピド コア,および菌種に固有の糖鎖の抽出精製法に
関しては,ジョン・ティ・ベリスル(John T. Belisl
e)らの方法[ジャーナル オブ バイオロジカル ケ
ミストリー(The Journal of Biological Chemistry),
第268巻第14号,10510〜10516頁,1993年],レイモン
ド ティ (Raymond T. Camphausen)らの方法[ジャー
ナル オブ バクテリオロジー(Journal of Bacteriol
ogy),第168巻第2号,660〜667頁,1986年]などが例示
できる。また,西川慶一郎はグリコペプチドリピドをベ
ータ排除(β-elimination)法で糖鎖を脱離した血清型
16型不完全グリコペプチドリピド,すなわち上記のイン
バリアント リピド コアの分子量を高速原子衝突質量
分析法(fast atom bombardment mass spectrometry, F
AB/MA)を用いて測定し,分子量が1028であると報告し
ている。[結核 第73巻第4号,295〜306頁,1998年] グリコペプチドリピドの菌種に固有の糖鎖に関しては,
当該糖鎖に結合する抗体試薬を作製して菌種判別に利用
する試みが行われている。すなわち,レイモンド ティ
(Raymond T. Camphausen)らの方法[Proc. Natl. Ac
ad. Sci. USA,Vol.82,pp.3068-3072,1985]やジェイム
ス シー デナー(James C. Demmer)らの方法[ジヤ
ーナル オブ クリニカル マイクロバイオロジー(Jo
urnal of Clinical Microbiology),第30巻第2号,473
〜478頁,1992年]などは,グリコペプチドリピドの糖
鎖構造の差異に基づいて非結核性抗酸菌を判別できるこ
とを報告している。
の糖鎖を利用して非結核性抗酸菌症の診断法開発が試み
られている。すなわち,バイ−ユウ リイ(BAI-YU LE
E)らは,マイコバクテリウム・アビウム・コンプレッ
クスに属する非結核性抗酸菌11種類のグリコペプチドリ
ピドの混合物を抗原試薬として用いた酵素免疫測定法を
組み立て,抗酸菌感染症の罹患率が高い免疫不全患者や
マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium aviu
m)の感染が確認できている患者の血液を検査試料とし
て当該グリコペプチドリピド混合物に結合する抗体量を
測定した。そして,マイコバクテリウム・アビウムに感
染した患者では血液中に当該抗体量が増すことを報告
[ジャーナル オブ クリニカル マイクロバイオロジ
(Journal ofClinical microbiology),第29巻5号,10
26〜1029頁,1991年]している。同様に,北田らは第23
回 結核・非定型抗酸菌症治療研究会(平成12年6月3
日,後楽園会館,主催:財団法人結核予防会)におい
て,13種のグリコペプチドリピド混合物を抗原試薬とし
て用いた酵素免疫測定法で検討した結果,マイコバクテ
リウム・アビウム・コンプレックス症の患者では血清中
にグリコペプチドリピドと結合するIgG抗体量が増加す
ることを報告している。
ビウム・コンプレックスに属する多種の抗酸菌由来のグ
リコペプチドリピドを混合する,すなわち菌種によって
異なる糖鎖の多種類を用いることにより,当該糖鎖と結
合する抗体を逃さずに捕らえようとする試みであるが,
糖鎖の種類が多くなるほど精製の手間が増えるので実用
困難な方法である。
検査方法は,喀痰中に菌体が排出されていなければどの
様に優れた方法を開発しても抗酸菌鑑別診断はできな
い。また,抗酸菌感染症を罹患した人の血液中に発病原
因菌種の細胞膜成分と特異的に結合する抗体量が増加す
ることは開示されているが,抗酸菌の如何なる細胞膜成
分を用いれば抗酸菌鑑別診断が可能になるかは未だ不明
であった。
性抗酸菌症の大半を占めるマイコバクテリウム・アビウ
ム・コンプレックス症(以下MAC症と略記する)と結核
との鑑別診断ができるだけでも臨床治療に大きく貢献で
きると考えた。そして,MAC症と結核とを鑑別するため
の試薬と方法に関して誠意研究に努めた結果,MAC症を
罹患している人の血液中にはグリコペプチドリピドのイ
ンバリアント リピドコアと特異的に結合する抗体量が
増加していることを見出し,MAC症と結核とを鑑別する
ための試薬と方法を発明するに至った。
菌の細胞膜に由来したグリコペプチドリピドのインバリ
アント リピド コアを有効成分とする、当該有効成分
に結合するIgA抗体またはIgM抗体から選ばれた1種また
はその組合せを検出するために用いる、抗酸菌症鑑別用
試薬に関する。
試料中の当該試薬に結合するIgA抗体またはIgM抗体から
選ばれた1種またはその組合せの抗体量を免疫学的測定
法で測定することを特徴とする抗酸菌症鑑別方法に関す
る。
は,免疫学的測定法が,放射免疫測定法,酵素免疫測定
法,蛍光免疫測定法,免疫比濁法,ラテックス法,ドッ
トブロット法,イムノクロマト法から選ばれた1種であ
ることが好ましい。
法においては,検査試料が人を含む恒温動物の血液,血
漿,血清,喀痰,気道分泌液,気管支分泌液,肺胞分泌
液から選ばれた1種またはその組合せであることが好ま
しい。
非結核性抗酸菌のグリコペプチドリピドが共通して有す
る共通構造部位に相当するインバリアント リピド コ
アに結合するIgA抗体またはIgM抗体から選ばれた1種ま
たはその組合せを検出するために用いるものであるた
め,多種の抗酸菌由来のグリコペプチドリピドを精製し
て混合する必要は無く,少なくとも1種の抗酸菌由来の
グリコペプチドリピド,またはグリコペプチドリピドの
インバリアント リピド コアを用いれば良い。本発明
において「グリコペプチドリピドのインバリアント リ
ピド コアを有効成分とする」の意味は、前述したよう
に、抗酸菌症鑑別用試薬として「グリコペプチドリピド
のインバリアント リピド コア」そのものを用いても
よいし、これを含んでいる「グリコペプチドリピド」を
用いてもよいと言う意味である。
細胞膜成分として持っているマイコバクテリウム・アビ
ウム・コンプレックスに該当するマイコバクテリウム・
アビウム(Mycobacterium avium)やマイコバクテリウ
ム・イントラセルラ(Mycobacterium intracellulare)
の20種以上の菌種,その他のグリコペプチドリピドを菌
体細胞膜成分として持つマイコバクテリウム属から選ん
だ一種またはその複数種を混合して培養した後,高圧蒸
気滅菌などの殺菌法により死滅させた菌体を原料として
抽出精製することができる。
ト リピド コアの抽出精製法は,既知の手法が適用可
能であり,例えばレイモンド ティ (Raymond T. Camp
hausen)らの方法[ジャーナル オブ バクテリオロジ
ー(Journal of Bacteriology),第168巻第2号,660〜6
67頁,1986年]が利用できる。例えば,グリコペプチド
リピドは,特に限定するものでないが,死滅させた非結
核性抗酸菌の菌体と適当な有機溶媒,例えばクロロホル
ムとメタノールの混合液などと充分に混和することによ
り脂質成分を有機溶媒へ抽出し,有機溶媒を集めて乾燥
させた後,水酸化ナトリウム溶液などを加えてアルカリ
加水分解処理を施すことによりグリコペプチドリピド以
外の脂質を分解し,さらに適当な有機溶媒,例えばクロ
ロホルムとメタノールの混合液などと充分に混和するこ
とによりグリコペプチドリピドを有機溶媒へ抽出し,適
当な有機溶媒,例えばクロロホルムなどを展開溶媒とし
たシリカゲルのカラムクロクトグラフィを行うことによ
り精製することができる。
らインバリアント リピド コアを抽出精製するには,
特に限定するものではないが,適当な有機溶媒に溶解し
たグリコペプチドリピドに水酸化ナトリウムと水素化硼
素ナトリウムとを添加して還元処理を施すことによりグ
リコペプチドリピドから糖鎖を外し,適当な有機溶媒,
例えばクロロホルムのメタノールの混合液と充分に混和
することによりインバリアント リピド コアを有機溶
媒へ抽出する方法があげられる。
は,既知の抗酸菌の液体培養法が適用可能であり,培地
の各組成成分を自家混合しても良いが,市販の培地組成
混合物と添加剤を利用することもできる。市販の培地組
成混合物は,ミドルブルック(Middlebrook)7H9 BROT
H [Difco laboratories社,米国],添加剤はBBLTM ミ
ドルブルック OACD エンリッチメント[Difco laborat
ories社,米国]が好ましく用いられる。
合する抗体量を測定する方法は,検査試料中に存在する
抗体量の多少が測定できる方法であれば良く,蛋白質測
定法,高速液体クロマトグラフィ法,アフィニティーク
ロマトグラフィ法,免疫学的測定法などやその組合せが
使用可能であるが,好ましくは免疫学的測定法が用いら
れる。免疫学的測定法としては,放射免疫測定法,酵素
免疫測定法,蛍光免疫測定法,免疫比濁法,イムノラテ
ックス法,ドットブロット法,イムノクロマト法などが
好ましく,なかでも測定操作が簡易で測定精度と検出感
度が良好な酵素免疫測定法,ドットブロット法,イムノ
クロマト法が一層好ましいく用いられる。免疫学的測定
法の原理や測定に用いる材料・器具に関しては,ジェイ
・クラウセン(J. CLAUSEN)著,佐々木 實監訳「免疫
学的同定法(第3版)」(株式会社 東京化学同人,199
3年11月22日発行)に詳細が記載されているので参照で
きる。
漿,血清,喀痰,気道分泌液,気管支分泌液,肺胞分泌
液から選ばれた1種またはその組合せが使用できるが,
中でも採取が容易であり,検査試料の均一性が良好な血
液,血漿,血清が一層好ましい。
(免疫能)の主要物質として生体内に異物が進入した時
に盛んに分泌される蛋白質であり,立体構造やアミノ酸
組成の違いからIgA,IgD,IgE,IgM,IgGなどの種類に
分類され,生体内に進入した特定の異物(抗原と呼ばれ
る)とだけ結合する性質を有しているものであり,詳細
に関しては矢田純一著「免疫」第1版(株式会社東京化
学同人,第5刷1992年3月25日発行)に記載されている
ので参照できる。本発明で測定する抗体の種類は,IgA
抗体またはIgM抗体から選ばれた1種またはその組合せ
であることが好ましい。
施例を挙げて説明するが,本発明はこの実施例に限定さ
れるものではない。
ン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Typ
e Culture Collection, ATCC)からマイコバクテリウム
・アビウム・コンプレックスに該当するマイコバクテリ
ウム・アビウムの血清型1〜6型菌株および8〜11型菌
株,マイコバクテリウム・イントラセルラの血清型7型
菌株および12〜20型菌株を入手した。培地は,市販の培
地組成混合物であるミドルブルック(Middlebrook)7H9
BROTH [Difco laboratories社,米国]の4.7グラム
とグリセロールの2ミリリットルを3リットル容量の三角
フラスコに分取し,蒸留水900ミリリットルを加えて溶
解した後,高圧蒸気滅菌器で121℃,10分間の滅菌処理
を施し,40〜45℃程度に冷却した時点で無菌的に添加剤
のBBLTM ミドルブルック OACD エンリッチメント[Di
fco laboratories社,米国]の100ミリリットルを添加し
た。
を用意し,安全キャビネット[アメリカ・フォーマサイ
エンテフィック社製1124型]の中で各培地に各菌体を1
種ずつ植え付けた。培養は,37℃の恒温振とう器[BR-3
000LF,タイテック株式会社]で100回転/分の攪拌を加
えながら3週間行った。
器で121℃,20分間の滅菌処理を施し,遠心分離器[株
式会社トミー精工製SRX-201]により8000回転/分の遠
心分離を行って集菌した。結果として得られた各菌の湿
潤重量は,菌種により異なったが5〜15グラムの範囲で
あった。
精製] マイコバクテリウム・アビウムの血清型4型菌株の培養
により得た湿潤菌体5グラムを300ミリリットル容量のビ
ーカに秤取し,クロロホルムとメタノールを容量比で2
対1に混合した溶液100ミリリットルを加えた後,超音波
発生器[ブランソン(BRANSON)社製 cell disruptor 1
85]により10分間の菌体破砕処理を施した。当該溶液は
300ミリリットル容量の分液ロートに移し入れて激しく5
分間攪拌した後,静置して有機溶媒相と水相が分離する
のを待ち,下位の有機溶媒相を分取した。さらに分液ロ
ート内に残った水相に前記のクロロホルムとメタノール
を混合した溶液100ミリリットルを添加して上記と同様
の抽出操作を繰り返し,下位の有機溶媒相を分取して先
の有機溶媒相と混合した。この有機溶媒相にはグリコペ
プチドリピドを含む脂質及びそれ以外の脂質も含んだ脂
質成分(以下、この両者をまとめて、単に、「脂質成
分」と略称する)が抽出される。
ことにより有機溶媒を除去した後,クロロホルムとメタ
ノールを容量比で9対0.5に混合した溶液1ミリリットル
を加えて溶解した。当該溶液は,カラムクロマトグラフ
ィとしての,クロロホルムとメタノールを容量比で9対
0.5に混合した溶液で湿潤させたシリカゲル60(230〜40
0メッシュ,ナカライテスク株式会社製)を充填したガ
ラス製カラム[内径1.5センチメートル,長さ20センチ
メートル]に添加し,クロロホルムとメタノールを容量
比で9対0.5に混合した溶液を用いて展開して,カラム溶
出液4ミリリットル毎に10ミリリットル容量の試験管に
分画して50本分を分取した。この操作により,脂質成分
の分離を行うことができる。
の含まれている分画の選定を行うため,分画したカラム
溶出液は,各溶液0.05ミリリットルを少量ずつシリカゲ
ル薄層板[アナルテック(ANALTECH)社製 薄層クロマ
トグラム]に温風を当てながら滴下した後,クロロホル
ムとメタノールを容量比で9対0.5に混合した溶液を用い
て展開し,風乾後に硫酸とエタノールを容量比で1対9に
混合した溶液を噴霧して200℃で5分間加熱した。
ム溶出液は,赤色から黒褐色に発色する展開像を示すの
で,同様の展開像を示すカラム溶出液を集めて6分画に
まとめた後,各分画を50℃恒温で減圧することにより有
機溶媒を除去した。乾燥した各分画は,各々にクロロホ
ルムとメタノールを容量比で2対1に混合した溶液の5ミ
リリットルを加えて溶解した後,さらに0.2モル濃度水
酸化カリウム含有メタノール溶液の5ミリリットルを加
えて37℃で60分間攪拌後に酢酸を加えて中和して,各分
画毎に別の100ミリリットル容量の分液ロートに移し入
れた。それぞれの分液ロートに水,メタノールおよびク
ロロホルムの適量を順次に添加して激しく攪拌し,水相
と有機溶媒相を分離できる液組成に調整後,静置して分
離した下位の有機溶媒相を別々に集めた。この操作によ
り,アルカリ加水分解に耐えるグリコペプチドリピドが
分解されずに残り,他の脂質成分が分解される。
トルを少量ずつシリカゲル薄層板[アナルテック(ANAL
TECH)社製 薄層クロマトグラム]に温風を当てながら
滴下した後,クロロホルムとメタノールを容量比で5対1
に混合した溶液を用いて展開し,風乾後に硫酸とエタノ
ールを容量比で1対9に混合した溶液を噴霧して200℃で5
分間加熱した。
脂質成分を含んだ有機溶媒相は,展開先端の位置に褐色
から茶褐色に発色する展開像を示すが,アルカリ加水分
解に耐えるグリコペプチドリピドを含んだ有機溶媒相
は,展開先端以外の位置に黄色から黄褐色に発色する展
開像を示すので,当該有機溶媒相の溶液を選び出して50
℃恒温で減圧することにより有機溶媒を除去して乾燥さ
せた。
有機溶媒相の乾燥物は,クロロホルムとメタノールを容
量比で5対1に混合した溶液0.5ミリリットルを加えて溶
解した。当該溶液は,カラムクロマトグラフィとして
の,クロロホルムとメタノールを容量比で5対1に混合し
た溶液で湿潤させたシリカゲル60(230〜400メッシュ,
ナカライテスク株式会社製)を充填したガラス製カラム
[内径1センチメートル,長さ20センチメートル]に添
加し,クロロホルムとメタノールを容量比で5対1に混合
した溶液を用いて展開して,カラム溶出液1ミリリット
ル毎に5ミリリットル容量の試験管に分画して50本分を
分取した。この操作により,アルカリ加水分解に耐える
グリコペプチドリピドと分解した脂質成分とを分離でき
る。
リットルを少量ずつシリカゲル薄層板[アナルテック
(ANALTECH)社製 薄層クロマトグラム]に温風を当て
ながら滴下した後,クロロホルムとメタノールを容量比
で5対1に混合した溶液を用いて展開し,風乾後に硫酸と
エタノールを容量比で1対9に混合した溶液を噴霧して20
0℃で5分間加熱した。
含有するカラム溶出液は,展開先端以外の位置に黄色か
ら黄褐色に発色する展開像を示すので,同様の展開像を
示すカラム溶出液を集めて50℃恒温で減圧することによ
り有機溶媒を除去した。以上の操作により,マイコバク
テリウム・アビウムの血清型4型菌株の湿潤菌体5グラム
からグリコペプチドリピドの7.4ミリグラムを得た。
様に実施することでグリコペプチドリピドの精製が可能
であった。
バリアント リピド コアの抽出精製] 実施例2の操作により得られるマイコバクテリウム・ア
ビウムの血清型4型菌株由来グリコペプチドリピドの40
ミリグラムを10ミリリットル容量の蓋付きガラス製試験
管に分取し,2ミリリットルのエタノール,1ミリリット
ルの1モル濃度水酸化ナトリウム水溶液,および150ミリ
グラムの水素化硼素ナトリウムを加えて充分に攪拌した
後,60℃で24時間の加熱処理を施した(還元による糖鎖
をはずす操作)。当該溶液は,100ミリリットル容量の
分液ロートに移し入れ,水,メタノールおよびクロロホ
ルムの適量を順次に添加して激しく攪拌し,水相と有機
溶媒相を分離できる液組成に調整後,静置して分離した
下位の有機溶媒相を集め,50℃恒温で減圧することによ
り有機溶媒を除去して乾燥させた。引き続き有機溶媒相
の乾燥物は,アセトンとクロロホルムとを容量比で1対3
に混合した溶液1ミリリットルを加えて溶解し,カラム
クロマトグラフィとしての,アセトンとクロロホルムを
容量比で1対3に混合した溶液で湿潤させたシリカゲル60
(230〜400メッシュ,ナカライテスク株式会社製)を充
填したガラス製カラム[内径1.5センチメートル,長さ2
5センチメートル]に添加し,アセトンとクロロホルム
とを容量比で1対3に混合した溶液を用いて展開して,カ
ラム溶出液4ミリリットル毎に10ミリリットル容量の試
験管に分画して20本分を分取した。続いて同様にアセト
ンとクロロホルムを容量比で1対2に混合した溶液により
10本分,さらにアセトンとクロロホルムを容量比で1対1
に混合した溶液により30本分を分取した。この操作によ
りグリコペプチドリピドのインバリアント リピド コ
アと分解した糖鎖を分離できる。
リットルを少量ずつシリカゲル薄層板[アナルテック
(ANALTECH)社製 薄層クロマトグラム]に温風を当て
ながら滴下した後,アセトンとクロロホルムを容量比で
3対5に混合した溶液を用いて展開し,風乾後に硫酸とエ
タノールを容量比で1対9に混合した溶液を噴霧して200
℃で5分間加熱した。この操作により,グリコペプチド
リピドのインバリアントリピド コアを含有するカラム
溶出液は,赤紫から赤色に発色する展開像を示すので,
同様の展開像を示すカラム溶出液を集めて50℃恒温で減
圧することにより有機溶媒を除去した。
アビウムの血清型4型菌株由来グリコペプチドリピドの4
0ミリグラムからインバリアント リピド コアの7.3ミ
リグラムを得た。得られたグリコペプチドリピドのイン
バリアント リピド コアは,高速原子衝突質量分析法
(FAB/MS)[日本電子株式会社製SX102型二重収束高分
解能質量分析計]により分子量を確認して前出の西川慶
一郎らが報告しているインバリアント リピド コアの
分子量(1028)と一致することを確認した。
ラの血清型14型菌株由来グリコペプチドリピドの40ミリ
グラムを上記の操作で抽出精製した場合,インバリアン
トリピド コアの7.2ミリグラムが得られ,高速原子衝
突質量分析法(FAB/MS)による分子量測定値は前記と同
様の1028であった。すなわち,異なる菌種由来のグリコ
ペプチドリピドから本操作によりインバリアント リピ
ド コアを抽出精製できることが確認できた。
バリアント リピド コアを用いたヒト抗体の酵素免疫
測定] 実施例3の操作により得られたグリコペプチドリピドの
インバリアント リピド コアの2ミリグラムを1ミリリ
ットルのエタノールに溶解し,さらに10ミリモル濃度リ
ン酸水素2ナトリウム水溶液で200倍に希釈した溶液の
0.05ミリリットルを,ポリスチレン製96穴マイクロプレ
ート[ヌンク(Nunc)社製CI96-C, #446612]の穴に分
注して4℃で16時間静置した。この操作によりグリコペ
プチドリピドのインバリアント リピド コアがマイク
ロプレートに固定される。
コン(CHEMICON International, Inc.)社製]とリン酸
生理食塩水とを容量比で2対100に混合した溶液の0.3ミ
リリットルを添加して30分間攪拌後に廃棄し,次にヤギ
血清とリン酸生理食塩水を容量比で25対100に混合した
溶液で40倍希釈したヒト血清0.05ミリリットルを添加し
て室温で60分間攪拌した。引き続き穴中の溶液を廃棄し
た後,ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートと
リン酸生理食塩水を容量比で0.05対100に混合した溶液
(以下,洗浄液と表示する)を0.3ミリリットル添加し
て室温で30秒間攪拌して廃棄する操作を計3回繰り返し
た。この操作によりグリコペプチドリピドのインバリア
ント リピド コアに結合する血清中のヒト抗体はマイ
クロプレートに捕捉される。
を検出するために,0.01ミリリットルのヤギ由来ペルオ
キシダーゼ標識抗ヒトIgM抗体[F(ab')2分画,ICN Phar
maceuticals, Inc.製]を牛血製アルブミン(ナカライテ
スク社製)とリン酸生理食塩水を重量比で1対10に混合し
た溶液により60,000倍に希釈し,当該溶液0.05ミリリッ
トルをマイクロプレートの穴に分注して室温で60分間攪
拌した。そして穴中の溶液を廃棄した後,0.3ミリリッ
トルの洗浄液を添加して室温で30秒間攪拌して廃棄する
操作を計6回繰り返した。この操作によりマイクロプレ
ートに捕捉されたヒトIgM抗体にペルオキシダーゼ標識
抗ヒトIgM抗体を結合させることができる。
ジアミン[ナカライテスク株式会社製]を10ミリリット
ルの0.2モル濃度リン酸クエン酸緩衝液(5ミリモル濃度
過酸化水素含有,pH4.8)で溶解した溶液0.05ミリリッ
トルをマイクロプレートの穴に分注して室温で20分間静
置した後,追加して4モル濃度硫酸水溶液0.05ミリリッ
トルを添加した。この操作によりペルオキシダーゼ標識
抗ヒトIgM抗体のペルオキシダーゼが酵素活性を発現す
るので,ペルオキシダーゼ量が多いほど黄〜橙色の発色
が増す。この発色の強度は,マイクロプレートリーダー
[バイオラッド社製モデル550]を用いて測定波長490ナ
ノメータの吸光度として測定した。この操作では,ヒト
血清中にグリコペプチドリピドのインバリアント リピ
ド コアに結合するヒトIgM抗体が多いほど強い吸光度
測定値として得られる。
会の診断基準を満たす肺MAC症95例(培養陽性71例,培
養陰性24例),活動性肺結核77例,陳旧性肺結核26例,
MAC症以外の非結核性抗酸菌症15例,慢性閉塞性肺疾患2
4例,および健常人132例の血清を測定し,[健常人の吸
光度測定値の平均+2×標準偏差]以上を検査陽性とし
た場合の結果を下記する。
リアント リピド コアに結合するヒトIgM抗体量を測
定する本発明の鑑別方法では,肺MAC症の患者から得ら
れた血清では半数以上が検査陽性を示すが,活動性肺結
核の症例では健常人と同程度の低い検査陽性率となり,
MAC症と結核との判別が可能であると考えられた。
を検出するために,上記の操作で用いるヤギ由来ペルオ
キシダーゼ標識抗ヒトIgM抗体の代わりにヤギ由来ペル
オキシダーゼ標識抗ヒトIgA抗体[EY Laboratories, In
c.製]を用い,上記と同様の患者血清に対して操作を実
施した場合の結果を下記する。
リアント リピド コアに結合するヒトIgA抗体量を測
定する本発明の鑑別方法では,肺MAC症で培養陽性の症
例では著しく高い検査陽性率となり,同培養陰性の症例
では半数,MAC症以外の非結核性抗酸菌症では3分の1の
検査陽性率を示した。逆に早急な治療が求められる活動
性肺結核では検査陽性率が著しく低く健常人と同程度で
あった。すなわち,胸部X線所見と臨床症状から深く抗
酸菌感染が疑われる患者に対して本発明の鑑別方法によ
る血清診断を実施すれば,治療面から早急な鑑別が求め
られている活動性肺結核では検査陰性となるため,MAC
症との鑑別診断が可能であると考えられた。
のインバリアント リピド コアによる吸収] 実施例4で用いた血清中の抗体がグリコペプチドリピド
のインバリアント リピド コアに結合していることを
確認するために以下の検討を行った。すなわち,実施例
3で得られたグリコペプチドリピドのインバリアント
リピド コアの2ミリグラムを1ミリリットルのエタノー
ルに溶解し,10ミリモル濃度リン酸水素2ナトリウム水
溶液10ミリリットルおよび実施例4の洗浄液10ミリリッ
トルを順次に加えて希釈した溶液を調製し,この溶液2
ミリリットルに肺MAC症の患者血清0.05ミリリットルを
添加して室温で60分間攪拌する前処理を施した。この操
作により,グリコペプチドリピドのインバリアント リ
ピド コアと結合する抗体の一部は抗原抗体反応を終え
るので,後に実施例4の操作を行っても検査結果が陰性
化する傾向が現れると考えた。
に対して上記の前処理を行い,実施例4の操作に従いグ
リコペプチドリピドのインバリアント リピド コアと
結合するヒトIgA抗体量を測定した結果,全ての血清に
おいて前処理しない場合よりも吸光度測定値が低下し,
2例では健常者血清と同程度まで吸光度測定値が低下し
た。すなわち,実施例4において検査陽性を示した肺MA
C症の血清に含まれる抗体は,グリコペプチドリピドの
インバリアント リピド コアに結合していることが確
認できた。
バリアント リピド コアを用いたドットブロット検
出] 予めメタノールとリン酸生理食塩水とで順次に馴染ませ
たポリビニルデンジフロライド(PVDF)膜[ミリポア社
製, #IPVH00010]をドットプレート[アドバンテック東
洋株式会社製,DP-48]に装着して準備した。そして,
実施例3の操作により得られたグリコペプチドリピドの
インバリアント リピド コアの2ミリグラムを1ミリリ
ットルのエタノールに溶解し,さらに10ミリモル濃度リ
ン酸水素2ナトリウム水溶液で200倍に希釈した溶液の
0.05ミリリットルをドットプレートの穴に分注して4℃
で16時間静置した。この操作によりグリコペプチドリピ
ドのインバリアント リピド コアがPVDF膜上に固定さ
れる。
からPVDF膜を取り外して,ヤギ血清[ケミコン(CHEMIC
ON International, Inc.)社製]とリン酸生理食塩水と
を容量比で2対100に混合した溶液の50ミリリットルが入
ったステンレス製トレーに浸して30分間振とうした。引
き続き,新たなリン酸生理食塩水の50ミリリットルが入
ったステンレス製トレーに移し替えて5分間振とうする
操作を2回繰り返した。以後の操作ではPVDF膜を適当な
大きさに裁断して用いた。
リピド コアが固定されているPVDF膜(縦横各0.7セン
チメートル)は,ヤギ血清とリン酸生理食塩水を容量比
で25対100に混合した溶液で40倍希釈したヒト血清1ミリ
リットルを分注した5ミリリットル容量の試験管に入れ
て室温で60分間攪拌した。引き続き,PVDF膜は残したま
ま試験管内の溶液を廃棄し,ポリオキシエチレンソルビ
タンモノラウレートとリン酸生理食塩水を容量比で0.05
対100に混合した溶液(以下,洗浄液と表示する)を2ミ
リリットル分注して室温で30秒間攪拌して廃棄する操作
を計5回繰り返した。この操作によりグリコペプチドリ
ピドのインバリアント リピド コアに結合する血清中
のヒト抗体はPVDF膜上に捕捉される。
を検出するために,0.01ミリリットルのヤギ由来ペルオ
キシダーゼ標識抗ヒトIgM抗体[F(ab')2分画,ICN Phar
maceuticals, Inc.製]を牛血製アルブミン(ナカライテ
スク社製)とリン酸生理食塩水を重量比で1対10に混合し
た溶液により60,000倍に希釈し,当該溶液1ミリリット
ルを試験管に分注して室温で60分間攪拌した。そしてPV
DF膜は残したまま試験管内の溶液を廃棄し,2ミリリッ
トルの洗浄液を添加して室温で30秒間攪拌して廃棄する
操作を計5回繰り返した。この操作によりPVDF膜上に捕
捉されたヒトIgM抗体にペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgM
抗体を結合させることができる。
抗ヒトIgM抗体は,ペルオキシダーゼ染色キット[ナカ
ライテスク社製,#266-52]によりペルオキシダーゼ活
性に依存した色素沈着の程度で観察した。すなわち,健
常者の血清を上記の操作に用いた場合はPVDF膜上に発色
がほとんど認められないが,実施例4で検査陽性となっ
た肺MAC症の患者血清では,グリコペプチドリピドのイ
ンバリアント リピドコアが固定されている膜部分に紫
色の発色像が認められた。
免疫測定] 実施例4の操作でマイクロプレートに捕捉されたヒト抗
体の内,IgG抗体を検出するために,ヤギ由来ペルオキ
シダーゼ標識抗ヒトIgM抗体の代わりにマウス由来ペル
オキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体[ナカライテスク株式
会社製]を用いて,実施例4と同様に患者血清を測定し
た結果を下記する。
ペプチドリピドのインバリアントリピド コアに結合す
るヒトIgG抗体量を測定した場合,肺MAC症で高い検査陽
性率を示すが,判別したい活動性肺結核の症例でも3分
の1が検査陽性となり,活動性肺結核とMAC症との鑑別
診断が不可能であった。
方法によれば,従来の方法では適わなかった結核と非結
核性抗酸菌症,特にその約70%を占めるマイコバクテリ
ウム・アビウム・コンプレックス症との鑑別診断がで
き、しかも菌を培養することなく短時間で容易に一回の
操作で多数の検体をほぼ同時に検査することができるの
で,抗酸菌感染症の患者の病名判断や適切な化学療法の
適用が治療の早期から実施可能になり,無効な薬剤投与
による治療遅延,病名不明のままに結核患者として隔離
入院させるなどの危険性を低減することができる。
Claims (4)
- 【請求項1】 非結核性抗酸菌の細胞膜に由来したグリ
コペプチドリピドのインバリアント リピド コアを有
効成分とする、当該有効成分に結合するIgA抗体またはI
gM抗体から選ばれた1種またはその組合せを検出するた
めに用いる、抗酸菌症鑑別用試薬。 - 【請求項2】 請求項1に記載の試薬を用いて,検査試
料中の当該試薬に結合するIgA抗体またはIgM抗体から選
ばれた1種またはその組合せの抗体量を免疫学的測定法
で測定することを特徴とする抗酸菌症鑑別方法。 - 【請求項3】 免疫学的測定法が,放射免疫測定法,酵
素免疫測定法,蛍光免疫測定法,免疫比濁法,ラテック
ス法,ドットブロット法,イムノクロマト法から選ばれ
た1種であることを特徴とする請求項2に記載の抗酸菌
症鑑別方法。 - 【請求項4】 検査試料が人を含む恒温動物の血液,血
漿,血清,喀痰,気道分泌液,気管支分泌液,肺胞分泌
液から選ばれた1種またはその組合せであることを特徴
とする請求項3に記載の抗酸菌症鑑別方法。
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