JP2002228800A - 電子線照射装置 - Google Patents

電子線照射装置

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JP2002228800A
JP2002228800A JP2001027640A JP2001027640A JP2002228800A JP 2002228800 A JP2002228800 A JP 2002228800A JP 2001027640 A JP2001027640 A JP 2001027640A JP 2001027640 A JP2001027640 A JP 2001027640A JP 2002228800 A JP2002228800 A JP 2002228800A
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Japan
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electron
electrons
emitting
filament
electron beam
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JP2001027640A
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English (en)
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Eiji Iwamoto
英司 岩本
Tsukasa Hayashi
司 林
Toshiro Nishikimi
敏朗 錦見
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Nissin High Voltage Co Ltd
Original Assignee
Nissin High Voltage Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フィラメントの発熱に起因する課題、各フィ
ラメントから放出される電子が集中することに起因する
課題およびフィラメント加熱時に窓箔が破れたときの課
題を解決することのできる電子線照射装置を提供する。 【解決手段】 この電子線照射装置は、電子源として、
フィラメントではなく、多数のナノチューブを有してい
て電界放出によって電子22を放出する複数個の電子放
出チップ20を備えており、これを真空容器4内にY方
向に長く配列している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電子線を被照射
物に照射して、被照射物の架橋、改質、硬化、殺菌、そ
の他の表面処理に用いられる電子線照射装置に関し、よ
り具体的には、多数のナノチューブを有する電子放出チ
ップを電子源として備えている電子線照射装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来の電子線照射装置の一例を図5に示
す。なお、これと同様の装置は、例えば特開2000−
171599号公報に記載されている。電源回路の詳細
例は、例えば特開平11−211900号公報に記載さ
れている。
【0003】この電子線照射装置は、電子を走査するこ
となく、X方向に相対的に短く、当該X方向と直交する
Y方向に相対的に長い平面形状(例えば帯状または矩形
状)の電子(電子線)12を発生させる装置であり、非
走査型またはエリア型と呼ばれる。
【0004】この電子線照射装置は、Y方向に長い筒状
の真空容器4内に、Y方向に長い筒状のシールド電極6
を設け、このシールド電極6内に、X方向に沿う直線状
のフィラメント8を複数本(例えば38本程度)Y方向
に並設した構造をしている。このY方向は、電子12の
照射幅方向とも呼ばれ、フィラメント8を並設する数
は、必要とする照射幅に応じて選ばれる。
【0005】シールド電極6の開口部には、各フィラメ
ント8から放出された電子12を引き出す引出し電極1
0が設けられている。
【0006】引出し電極10に対向する真空容器4の開
口部には、真空容器4内の雰囲気(真空)と真空容器外
の雰囲気(例えば大気)とを分離すると共に、引出し電
極10を通して引き出されかつ加速された電子12を透
過させる窓箔14が設けられている。
【0007】各フィラメント8は、互いに並列接続され
ていて、フィラメント電源(図示省略)によって高温に
加熱されて電子12を放出する。
【0008】各フィラメント8と引出し電極10との間
には、電子12を引き出すための引出し電圧(例えば数
kV程度)が引出し電源(図示省略)から印加される。
【0009】引出し電極10とシールド電極6は互いに
同電位であり、窓箔14と真空容器4も互いに同電位で
あり、前者と後者間には、電子12を加速するための加
速電圧(例えば数百kV程度)が加速電源(図示省略)
から印加される。
【0010】窓箔14を透過させて外に取り出された電
子12は、被照射物(図5では図示省略。図1の被照射
物16参照)に照射される。これによって、当該被照射
物に、架橋、改質、硬化、殺菌等の処理を施すことがで
きる。被照射物は、例えば、X方向に沿って搬送され
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】従来の電子線照射装置
は、電子源として、高温に加熱されて熱電子を放出する
複数本のフィラメント8を用いており、これに起因し
て、次に示す課題を有していた。
【0012】(1)フィラメント8の発熱に起因する課
題 フィラメント8の高温加熱に伴って、フィラメント8お
よびその近傍の構造物(例えばシールド電極6、引出し
電極10、絶縁物等)が高温に(例えば数百℃程度に)
加熱され、それらからアウトガスが発生する。前述した
ように、引出し電極10等と窓箔14等との間には例え
ば数百kVという高圧の加速電圧が印加されるので、こ
のアウトガス発生に伴って、加速電圧が印加される部分
間で空間放電あるいは沿面放電が起こりやすくなり、加
速電圧の印加、ひいては電子12の加速および取り出し
が不安定になる。
【0013】この対策として、従来は、電子12を正規
に取り出す前に、コンディショニング工程と呼ばれる、
電子12の取り出しを安定させる慣らし運転を行う必要
があった。しかもこのコンディショニング工程には、長
時間を要していた。
【0014】(2)各フィラメント8から放出される電
子12が集中することに起因する課題 線状の各フィラメント8から放出される電子12の量
は、その長さ方向(X方向)に均一ではなく、中央付近
に集中する傾向にある。即ち、山形の電流密度分布にな
る(例えば、前記特開2000−171599号公報の
図5参照)。窓箔14は、電子12の透過損失によって
加熱されるので、電子12の上記のような集中に対応し
て、窓箔14も局所的に集中加熱され、これが窓箔14
の寿命を短くすると共に、窓箔14が破れる一因にもな
っていた。また、窓箔14を通して取り出す電子12の
電流密度の平均値を上げようとすると、上述した局所的
な電流密度が上がり、窓箔14が局所的に集中加熱され
て破れる原因になり、これが、窓箔14を通して取り出
す電子12の平均電流密度を上げられない制限の一つに
なっていた。
【0015】(3)フィラメント8の加熱時に窓箔14
が破れたときの課題 フィラメント8の加熱時に、不幸にして窓箔14が破れ
て真空容器4内に空気が入って真空容器4内が大気圧に
戻った場合、窓箔14の交換は仕方ないとしても、それ
だけでは済まない。真空容器4内に空気が入ると、高温
に加熱されているフィラメント8が全て焼け切れてしま
う。しかも、それに伴って発生する不純物が、フィラメ
ント8の周りのみならず、真空容器4内の殆どの箇所に
付着する。従って、フィラメント8を全て交換すると共
に、真空容器4内全体を清掃しなければならず、大変な
手間がかかる。しかも、窓箔14と違って、フィラメン
ト8は真空容器4内の奥まった所にあるので、交換およ
び清掃作業は容易ではない。
【0016】そこでこの発明は、上述したフィラメント
の発熱に起因する課題、各フィラメントから放出される
電子が集中することに起因する課題およびフィラメント
加熱時に窓箔が破れたときの課題を解決することのでき
る電子線照射装置を提供することを主たる目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】この発明の電子線照射装
置は、真空容器と、この真空容器内に配列されていて、
多数のナノチューブおよびそれに対向するグリッドを有
していて電界放出によって電子を放出する複数個の電子
放出チップと、この各電子放出チップに電子を放出させ
る電圧を印加するグリッド電源と、前記各電子放出チッ
プから放出された電子を加速する加速電源と、前記真空
容器の内外の雰囲気を分離すると共に、前記各電子放出
チップから放出されかつ加速された電子を透過させる窓
箔とを備えることを特徴としている。
【0018】この電子線照射装置によれば、複数の電子
放出チップから電子を放出させ、それを加速して窓箔を
通して取り出すことができる。
【0019】各電子放出チップは、多数のナノチューブ
を有していて電界放出によって電子を放出するものであ
り、電子線照射装置の電子源として、フィラメントを用
いずに、この電子放出チップを用いることによって、フ
ィラメントに起因する上記課題を一挙に解決することが
できる。
【0020】即ち、各電子放出チップは、強電界によっ
てナノチューブの表面から電子がトンネル効果によって
真空中に放出される現象、即ち電界放出(field emissi
on)によって電子を放出するものであり、原理的に発熱
は起こらない。即ち常温の電子源である。
【0021】従って、フィラメントの場合と違って、温
度上昇によるアウトガス発生を惹き起こさないので、加
速電圧を安定して印加することが可能になり、ひいては
電子の加速および取り出しが安定になる。コンディショ
ニング工程も不要になるか、極めて短くすることができ
る。
【0022】各電子放出チップからは、従来の線状のフ
ィラメントの場合と違って、電子を面状に均一な分布で
放出させることができる。このような電子放出チップを
複数個配列することにより、電子発生の分散および均一
化を図ることができるので、電子の局所的な集中を防い
で、窓箔の長寿命化および破損防止を図ることができ
る。また、取り出した電子の平均電流密度を上げること
も容易になる。
【0023】仮に窓箔が破れて真空容器内に空気が入っ
て大気圧になっても、電子放出チップは常に常温状態に
あるので、従来の高温に加熱したフィラメントの場合と
違って、ナノチューブに物性的および機械的な変化は起
こらない。起こったとしても、無視できる程度である。
即ち、電子放出チップは、物性的および機械的な変化を
起こさず、元のままである。従って、窓箔の交換のみで
簡単にかつ速やかに装置を復帰させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】図1は、この発明に係る電子線照
射装置の一例を示す概略断面図である。図5に示した従
来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以
下においては当該従来例との相違点を主に説明する。
【0025】この電子線照射装置は、前述したようなY
方向に長い筒状(例えば円筒状)の真空容器4内に、複
数個の電子放出チップ20をY方向に並べた構造をして
いる。この各電子放出チップ20は、通常はこの例のよ
うに、電界緩和用のY方向に長い筒状(例えば円筒状)
のシールド電極6内に設けられる。
【0026】各電子放出チップ20は、図2に示すよう
に、金属等の導体製の支持体26上に面状に配置された
多数のナノチューブ24と、このナノチューブ24に対
向するグリッド28とを有していて、電界放出によって
電子22を放出するものである。各ナノチューブ24
は、微視的に言えば、その先端がグリッド28側に向く
ように支持体26上に形成されている。支持体26とグ
リッド28との間は、セラミックス等の絶縁物30によ
って電気的に絶縁されている。グリッド28は、多孔
状、網状または格子状等の電極である。
【0027】各ナノチューブ24は、極細線であり、例
えば、その各々の直径は1〜50nm程度であり、長さ
は10μm程度以上である。各ナノチューブ24は、例
えば炭素から成り、その場合はカーボンナノチューブと
呼ばれる。各ナノチューブ24の材質は、炭素、グラフ
ァイト、ダイヤモンド状炭素等の炭素系のものが、化学
的安定性、機械的強靱性等に優れている観点から好まし
いけれども、それ以外のものでも良い。なお、カーボン
ナノチューブからの電界放出とディスプレイデバイスへ
の応用については、例えば、応用物理第69巻第3号
(2000)314−317頁にも報告されている。
【0028】各電子放出チップ20には、より具体的に
はそのナノチューブ24(この例ではそれを支える支持
体26)とグリッド28との間には、前者を負極側にし
て、直流のグリッド電源32から、電子22を電界放出
させるためのグリッド電圧V G が印加される。このグリ
ッド電圧VG の大きさは、例えば、150V〜1500
V程度であり、これを高くするほど放出する電子22の
量は増える。即ち、このグリッド電圧VG によって、各
電子放出チップ20から放出する電子22の量を制御す
ることができる。
【0029】各電子放出チップ20と真空容器4および
窓箔14との間には、より具体的には各電子放出チップ
20のナノチューブ24(この例ではそれを支える支持
体26)と窓箔14等との間には、前者を負極側にし
て、直流の加速電源34から、各電子放出チップ20か
ら放出された電子22を加速するための加速電圧VA
印加される。この加速電圧VA の大きさは、電子22の
必要とするエネルギーに応じて選ばれる。例えば、数十
kV〜数百kV程度である。
【0030】各電子放出チップ20から放出されかつ加
速された電子22は、真空容器4の内外の雰囲気を分離
する前述したような窓箔14を透過させて真空容器4外
に取り出され、被照射物16に照射される。これによっ
て、被照射物16に、架橋、改質、硬化、殺菌等の処理
を施すことができる。被照射物16は、例えば、前述し
たように、X方向に沿って(図1では紙面の表方向また
は裏方向に)搬送される。
【0031】各電子放出チップ20の(より具体的には
その電子放出面の)平面の大きさ、平面形状、各電子放
出チップ20から放出する電子22の電流値、電子放出
チップ20の個数、複数の電子放出チップ20の配列の
仕方等は、取り出したい電子22の電流密度、全体の電
流値、電子22の必要とする照射野の形状等に応じて決
めれば良い。
【0032】例えば、1個の電子放出チップ20の電子
放出面を一辺が14mmの正方形(面積2cm2 )と
し、1個の電子放出チップ20から放出する電子22の
電流値を20mAとする。この電子放出チップ20の電
流密度は10mA/cm2 であり、上記文献からも分か
るように、十分に実現可能な値である。
【0033】そして例えば、1000mAの電子22を
取り出したいときは、上記のような電子放出チップ20
を50個、Y方向に1列に並べれば良い。このとき、照
射幅を2mとする場合は、40mmピッチで並べれば良
い。各電子放出チップ20間に間をあけたくなければ、
電子放出チップ20の平面形状を、正方形とせずにY方
向に長い長方形にしても良い。
【0034】電子放出チップ20は単位チップ化してい
るので、あたかも床にタイル(チップ)を貼るように、
電子線源全体の形状を自由に決めることができる。即
ち、電子放出チップ20の並べ方次第で、電子22の照
射野を自由に決めることができる。例えば、照射幅を大
きくしたい場合は、複数個の電子放出チップ20をY方
向に1列に必要な幅に並べれば良い。被照射物16のX
方向の搬送速度を上げてその処理速度(スループット)
を上げる等のために、電子22のX方向の幅を大きくし
たい場合は、電子放出チップ20をY方向だけでなくX
方向にも複数列並べれば良い。
【0035】この電子線照射装置は、次のような特長を
有している。
【0036】(1)各電子放出チップ20は、電界放出
によって電子22を放出するものであり、原理的に発熱
はなく、常温の電子源である。従って、従来のフィラメ
ント8の場合と違って、電子放出チップ20およびそれ
に面する場所(例えばシールド電極6等)の温度上昇が
なく、アウトガス発生を惹き起こさない。その結果、上
記加速電圧VA が印加される箇所間でのアウトガス発生
に伴う空間放電あるいは沿面放電がなくなるので、加速
電圧VA を安定して印加することが可能になり、ひいて
は電子22の加速および取り出しが安定になる。あるい
は逆に、余裕のできた分だけ電界強度を上げることがで
き、真空容器4を小さく作ることができる。また、正規
に電子22を取り出す前の前述したコンディショニング
工程も不要になるか、行うとしても極めて短くすること
ができる。
【0037】(2)各電子放出チップ20からは、従来
の線状のフィラメント8の場合と違って、電子22を面
状に均一な分布で放出させることができる。このような
電子放出チップ20を複数個配列することにより、電子
発生の分散および均一化を図ることができるので、電子
22の局所的な集中を防いで、窓箔14の局所的な温度
上昇を防ぐことができ、それによって窓箔14の長寿命
化および破損防止を図ることができる。また、取り出し
た電子22の平均電流密度を上げることも容易になる。
【0038】(3)仮に何らかの原因で窓箔14が破れ
て真空容器4内に空気が入って大気圧になっても、各電
子放出チップ20は常に常温状態にあるので、従来の高
温に加熱したフィラメント8の場合と違って、ナノチュ
ーブ24に物性的および機械的な変化は起こらない。起
こったとしても、無視できる程度である。即ち、電子放
出チップ20は、物性的および機械的な変化を起こさ
ず、元のままである。従って、窓箔14の交換のみで簡
単にかつ速やかに装置を復帰させることができる。従来
のフィラメント8が焼損し、かつ真空容器4内を汚す現
象とは大きな違いである。
【0039】(4)各電子放出チップ20からの電子2
2の発生のオン、オフを、グリッド電源32からグリッ
ド28に印加するグリッド電圧VG によって極めて高速
で(例えばμ秒オーダーで)制御することができるの
で、外部に取り出す電子22のオン、オフを極めて高速
で行うことができる。従来のフィラメント8を用いた装
置では、フィラメント8の加熱をオン、オフしても熱慣
性によって電子12の発生を高速でオン、オフすること
は不可能であり、しかもフィラメント8の寿命も短くな
る。引出し電極10に印加する引出し電圧を制御して
も、フィラメント8から電子12が発生し続けているの
で、電子12を完全にかつ高速でオン、オフするのは難
しい。
【0040】(5)従来のフィラメント8を並設した装
置では、2本の線状のフィラメント8間で電子12の量
が大きく低下するので、照射幅方向(Y方向)における
電子量分布(即ち電流密度分布)の均一性を高めるのが
難しかった。従来は例えば、照射幅が1mの場合、この
均一性は±7.5%程度が限度であった。これに対して
この電子線照射装置では、前述したように、従来の線状
のフィラメント8の場合と違って、各電子放出チップ2
0から電子22を面状にしかも均一な分布で放出させる
ことができるので、照射幅方向における電子量分布の均
一性が良くなる。従来の±7.5%よりも均一性を良く
することも可能になる。勿論、X方向の電子量分布の均
一性も良くなる。
【0041】(6)各電子放出チップ20ごとに、放出
させる電子22の電流値を制御することも容易であるの
で、これによって電子量分布の均一性をより良くするこ
とも可能である。その具体例を以下に説明する。
【0042】図3は、各電子放出チップ20から放出す
る電子22の量を一定に制御する制御回路を各電子放出
チップ20ごとに設けている例である。そのようにする
と、個々の電子放出チップ20ごとに制御することがで
き、きめ細かな制御が可能になるので、電子量分布の均
一性をより一層高めることができる。
【0043】この図3の例では、各電子放出チップ20
ごとに、より具体的には加速電源34と各電子放出チッ
プ20のナノチューブ24とを接続する回路に、そこを
流れるカソード電流IK を一定に制御する定電流制御回
路36を挿入している。
【0044】各電子放出チップ20において、それから
放出する電子22の電流(電子電流)IE と、ナノチュ
ーブ24に流れる上記カソード電流IK と、グリッド電
源32からグリッド28に流れるグリッド電流IG との
間には、次の関係が成立する。
【0045】
【数1】IK =IE +IG
【0046】電子電流IE とグリッド電流IG との比
(例えばIE /IG )は、電子放出チップ20の構造に
よって一義的に決まる定数と考えても差し支えないの
で、グリッド電圧VG が一定の場合、カソード電流IK
を一定に制御することによって、電子電流IE を一定に
制御することができる。
【0047】各定電流制御回路36は、能動素子やフィ
ードバック回路を有する自動制御回路でも良いし、単な
る抵抗器でも良い。各定電流制御回路36を自動制御回
路とする場合は、外部からの制御信号に基づいてカソー
ド電流IK ひいては電子電流IE を制御するようにして
も良い。外部からのフィードバック信号に基づいてリア
ルタイムで制御するようにしても良い。各定電流制御回
路36を抵抗器とした場合、その抵抗値をRとすると、
そこでの電圧降下VD は次式で表される。
【0048】
【数2】VD =R・IK
【0049】電子電流IE が増えると上記のようにそれ
に応じてカソード電流IK も増え、電圧降下VD が大き
くなり、電子電流IE は減少する。逆もしかりである。
これによって、定電流制御回路36が単なる抵抗器であ
っても、各電子放出チップ20から放出する電子22の
量(即ち電子電流IE )を一定に制御することができ
る。
【0050】なお、厳密に見れば、電子22の加速エネ
ルギーは、上記電圧降下VD の変動分だけ変動するけれ
ども、通常は加速電圧VA は例えば100kV前後もあ
り、電圧降下VD はせいぜい1kV程度でありその変動
分は更に小さいので、電子22の加速エネルギーの変動
は実用上は無視することができる。
【0051】図4は、前記複数個の電子放出チップ20
を複数のグループに分け、この各グループから放出する
電子22の量を一定に制御する制御回路を設けている例
である。そのようにすると、制御回路の数を減らすこと
ができるので、構成の簡素化および低コスト化を図るこ
とができる。
【0052】この図4の例では、各グループのナノチュ
ーブ24を互いに電気的に並列接続してその接続部と加
速電源34とを接続する回路に、前述したような定電流
制御回路36を挿入している。この定電流制御回路36
による動作は、グループごとに制御する以外は、図3の
例の場合と同様であるので、ここではその説明を省略す
る。
【0053】(7)従来の複数本のフィラメント8を用
いた装置では、それの加熱用の大きな電力(例えば数k
W程度)を大地電位部から、前述した加速電圧を絶縁す
る絶縁変圧器を経由して供給しなければならず、またフ
ィラメント8用に低電圧化するフィラメント変圧器が高
電圧部に必要であり、構成が複雑かつ大がかりになる。
各フィラメント8からの熱に対処する部品も必要であ
る。これに対してこの電子線照射装置では、各電子放出
チップはフィラメントとは全く異なるので、フィラメン
トに関する上記のような絶縁変圧器、フィラメント変圧
器は不要である。熱対策部品も不要である。従って、機
器構成の簡素化および装置の小型化を図ることができ
る。
【0054】
【発明の効果】この発明は、上記のとおり構成されてい
るので、次のような効果を奏する。
【0055】請求項1記載の発明によれば、電子源とし
て、フィラメントではなく、多数のナノチューブを有し
ていて電界放出によって電子を放出する電子放出チップ
を備えているので、フィラメントに起因する従来技術の
課題を一挙に解決することができる。即ち、次の効果を
奏する。
【0056】(1)各電子放出チップは、電界放出によ
って電子を放出するものであり、原理的に発熱はなく、
常温の電子源である。従って、フィラメントの場合と違
って、温度上昇によるアウトガス発生を惹き起こさない
ので、加速電圧を安定して印加することが可能になり、
ひいては電子の加速および取り出しが安定になる。コン
ディショニング工程も不要になるか、極めて短くするこ
とができる。
【0057】(2)各電子放出チップからは、従来の線
状のフィラメントの場合と違って、電子を面状に均一な
分布で放出させることができる。このような電子放出チ
ップを複数個配列することにより、電子発生の分散およ
び均一化を図ることができるので、電子の局所的な集中
を防いで、窓箔の長寿命化および破損防止を図ることが
できる。また、取り出した電子の平均電流密度を上げる
ことも容易になる。
【0058】(3)仮に窓箔が破れて真空容器内に空気
が入って大気圧になっても、電子放出チップは常に常温
状態にあるので、従来の高温に加熱したフィラメントの
場合と違って、ナノチューブは、ひいては電子放出チッ
プは、物性的および機械的な変化を起こさない。従っ
て、窓箔の交換のみで簡単にかつ速やかに装置を復帰さ
せることができる。
【0059】(4)各電子放出チップからの電子の発生
のオン、オフを、グリッド電源からグリッドに印加する
電圧によって極めて高速で制御することができるので、
外部に取り出す電子のオン、オフを極めて高速で行うこ
とができる。
【0060】(5)従来の線状のフィラメントの場合と
違って、各電子放出チップから電子を面状にしかも均一
な分布で放出させることができるので、取り出す電子量
分布の均一性を良くすることができる。
【0061】(6)各電子放出チップはフィラメントと
は全く異なるので、フィラメントに関する従来のような
絶縁変圧器、フィラメント変圧器は不要であり、熱対策
部品も不要である。従って、機器構成の簡素化および装
置の小型化を図ることができる。
【0062】請求項2記載の発明によれば、取り出す電
子量分布の均一性をより良くすることができる、という
更なる効果を奏する。しかも、個々の電子放出チップご
とに制御することができ、きめ細かな制御が可能になる
ので、電子量分布の均一性をより一層高めることができ
る。
【0063】請求項3記載の発明によれば、取り出す電
子量分布の均一性をより良くすることができる、という
更なる効果を奏する。しかも、グループ化することによ
って制御回路の数を減らすことができるので、構成の簡
素化および低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る電子線照射装置の一例を示す概
略断面図である。
【図2】図1中の電子放出チップの1個を拡大して電源
と共に示す図である。
【図3】制御回路を各電子放出チップごとに設けた例を
示す回路図である。
【図4】制御回路を電子放出チップのグループごとに設
けた例を示す回路図である。
【図5】従来の電子線照射装置の一例を示す斜視図であ
る。
【符号の説明】
4 真空容器 14 窓箔 16 被照射物 20 電子放出チップ 22 電子 24 ナノチューブ 28 グリッド 32 グリッド電源 34 加速電源 36 定電流制御回路
フロントページの続き (72)発明者 錦見 敏朗 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新ハイボルテージ株式会社内 Fターム(参考) 4C058 BB06 KK01 KK21 KK32 4G075 AA30 BA05 BB10 CA24 CA65 DA02 EA02 EB21 EC21 ED13 FA20 FB02 FB03 FB04

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空容器と、この真空容器内に配列され
    ていて、多数のナノチューブおよびそれに対向するグリ
    ッドを有していて電界放出によって電子を放出する複数
    個の電子放出チップと、この各電子放出チップに電子を
    放出させる電圧を印加するグリッド電源と、前記各電子
    放出チップから放出された電子を加速する加速電源と、
    前記真空容器の内外の雰囲気を分離すると共に、前記各
    電子放出チップから放出されかつ加速された電子を透過
    させる窓箔とを備えることを特徴とする電子線照射装
    置。
  2. 【請求項2】 前記各電子放出チップから放出する電子
    の量を一定に制御する制御回路を各電子放出チップごと
    に設けている請求項1記載の電子線照射装置。
  3. 【請求項3】 前記複数個の電子放出チップを複数のグ
    ループに分け、この各グループから放出する電子の量を
    一定に制御する制御回路を各グループごとに設けている
    請求項1記載の電子線照射装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007528497A (ja) * 2004-03-09 2007-10-11 コリア アトミック エナージイ リサーチ インスチチュート 電界放出チップを用いた低エネルギー大面積電子ビーム照射装置
JP2010194503A (ja) * 2009-02-27 2010-09-09 Jfe Engineering Corp 電子線照射による排ガス処理装置

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