JP2002207306A - 感光体の製法ならびにこの感光体を搭載した画像形成装置 - Google Patents

感光体の製法ならびにこの感光体を搭載した画像形成装置

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JP2002207306A
JP2002207306A JP2001001789A JP2001001789A JP2002207306A JP 2002207306 A JP2002207306 A JP 2002207306A JP 2001001789 A JP2001001789 A JP 2001001789A JP 2001001789 A JP2001001789 A JP 2001001789A JP 2002207306 A JP2002207306 A JP 2002207306A
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layer
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Manabu Takimoto
学 滝本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】膜剥がれを防止する。 【解決手段】導電性基板2上に光導電層4を形成し、こ
の光導電層4上にグロー放電法によりシリコンカーバイ
ド(SiC)もしくはカーボン(C)からなるアモルフ
ァス層を成膜形成し、ついでこのアモルファス層に対し
フッ素を含むガスをプラズマ化してエッチング処理する
と同時に、膜内にフッ素を12〜35原子%含有させ、
その後にボンバード処理をおこなう工程を複数回繰り返
すことで表面保護層5を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアモルファスシリコ
ンカーバイドもしくはアモルファスカーボンからなるフ
ッ素含有の表面保護層を備えた感光体の製法ならびにこ
の感光体を搭載した画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アモルファスシリコン(以下、アモルフ
ァスシリコンをa−Siと略記する)を光導電層とした
感光体が、すでに製品化されているが、このa−Si感
光体は導電性基板上にグロー放電分解法により水素化ア
モルファスシリコン(以下、水素化アモルファスシリコ
ンをa−Si:Hと略記する)からなる電荷注入阻止層
と、a−Si:Hからなる光導電層と、水素化アモルフ
ァスシリコンカーバイド(以下、水素化アモルファスシ
リコンカーバイドをa−SiC:Hと略記する)からな
る表面保護層とを順次積層した層構成である。
【0003】しかしながら、このような層構成の感光体
においては、とくに高湿環境下で耐刷をおこなうと、画
像流れと呼ばれる画像不良が発生していた。
【0004】この画像流れの発生を防止するために、ヒ
ーターを用いて感光体を加熱して、その原因となる水分
を飛散させる技術が提示されているが、これによって画
像流れが改善されたが、その反面、感光体の帯電能が低
下したり、感光体表面にトナーが固着したり、画像形成
装置の消費電力が増大していた。
【0005】かかる課題を解消するために、a−Si
C:H表面保護層の元素比率と自由表面の動的押し込み
硬さとを規定することで、ヒーターを用いないでもクリ
ーニング手段などにより表面を適度に研磨して、表面層
に吸着した放電生成物などを除去し、これによって画像
流れを解消する技術が提示されている(特開平9−20
4056号参照)。
【0006】一方、a−Siを主成分とする感光体層の
上に水素化アモルファスカーボン(以下、水素化アモル
ファスカーボンをa−C:Hと略記する)からなる表面
保護層を積層し、ついでフッ素を含むガスでプラズマ放
電処理をおこない、表面近傍中にCF、CF2等の官能
基を形成し、これによって疎水性を高め、オゾンの照射
による疎水性の劣化を抑制して耐環境性が高める技術が
提示されている(特公平7−3597号参照)。
【0007】上記のようなプラズマ放電処理をおこなう
と、膜の表面がエッチングされるが、加えて成膜とエッ
チングを交互に複数回繰り返すことで表面保護層を形成
する技術も提案されている(特開平10−177265
号参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
9−204056号によれば、ヒーターを用いた加熱を
おこなわないにしても、この感光体を搭載した画像形成
装置に、ブレードなどの研磨手段を設けなければなら
ず、設計上および構成上煩雑になり、製造歩留りを低下
させたり、耐久性および信頼性が劣る原因になってい
た。
【0009】他方、特公平7−3597号においては、
a−C:Hからなる表面保護層を設けて、フッ素を含む
ガスでプラズマ放電処理し、疎水性を高めることができ
るが、画像形成装置に感光体用ヒーターを設けないでも
よい程度の高い疎水性能は達成されていない。
【0010】また、特開平10−177265号におい
ては、表面保護層をBN膜で形成し、1回のエッチング
によってエッチングされる膜厚を20Å以上にすること
が記載されるが、エッチングレートについては、一切記
載されていない。しかしながら、このような方法にてB
N膜を形成すると成膜速度が低くなり、製造コストが高
くなる。
【0011】さらに表面保護層をBN膜で形成しても、
硬度が低く、耐久性に劣ったり、原子レベルにおける結
合状態が不安定であるために、電位特性にバラツキが生
じるという問題点もある。
【0012】この問題点を解消するために、本願出願人
は、グロー放電法によりシリコンカーバイドもしくはカ
ーボンからなるアモルファス層を成膜形成し、ついでこ
のアモルファス層に対しフッ素を含むガスによりエッチ
ング処理するフッ素化工程を複数回繰り返すことで、フ
ッ素を12〜35%含有する表面保護層を形成すること
で、疎水性が著しく高くなり、これによって画像形成装
置に感光体用のヒーターを設けなくてもよくなる技術を
提案した。
【0013】しかしながら、このようなフッ素を含む表
面保護層においては、表面自由エネルギーを下げ、画像
流れを解消することができたが、アモルファス層に対し
フッ素を含むガスによりエッチング処理するフッ素化工
程を複数回繰り返した場合、さきのフッ素化工程により
表出した膜面は、表面自由エネルギーが下がったこと
で、つぎに成膜するアモルファス層との間にて接着性が
低下し、これによって得られた感光体を画像形成装置に
装着し、耐久試験をおこなうと、そのアモルファス層や
表面保護層が剥がれるという問題点があることが判明し
た。
【0014】したがって本発明は叙上に鑑みて完成され
たものであり、その目的は画像流れとともに、膜剥がれ
を解消した感光体の製法を提供することにある。
【0015】本発明の他の目的は感光体加熱用のヒータ
ーを設けない程度にまで表面の疎水性を高めた感光体の
製法を提供することにある。
【0016】本発明のさらに他の目的は表面保護層の硬
度を高めて優れた耐久性を達成するとともに、電位特性
のバラツキをなくした高信頼性かつ低コストの感光体の
製法を提供することにある。
【0017】本発明のさらに他の目的は、感光体用のヒ
ーターを設けないことで、構造上簡単となり、製造歩留
りが向上し、さらに部品点数が少なくなることで優れた
耐久性が得られ、その結果、低コストかつ高信頼性の画
像形成装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は、導電性基板上
に光導電層を形成し、この光導電層上にフッ素含有のア
モルファスシリコンカーバイド(a−SiC)もしくは
アモルファスカーボン(a−C)からなる表面保護層を
積層した感光体の製法であって、導電性基板上に光導電
層を形成し、この光導電層上にグロー放電法によりシリ
コンカーバイド(SiC)もしくはカーボン(C)から
なるアモルファス層を成膜形成し、ついでこのアモルフ
ァス層に対しフッ素を含むガスをプラズマ化してエッチ
ング処理すると同時に、フッ素を12〜35原子%含有
させ、その後にボンバード処理をおこなう工程を複数回
繰り返すことで表面保護層を形成したことを特徴とす
る。
【0019】本発明の画像形成装置は、本発明の製法に
より得られた感光体と、この感光体の表面に電荷を付与
する帯電手段と、感光体の帯電領域に対して光照射する
露光手段と、これら帯電手段と露光手段とにより感光体
表面に形成された静電潜像に対してトナー像を感光体の
表面に形成する現像手段と、上記トナー像を被転写材に
転写する転写手段と、転写後に感光体表面の残留トナー
を除去するクリーニング手段と、転写後に残余静電潜像
を除去する除電手段とを配設したことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】感光体の構成 本発明に係る感光体は導電性基板の上に少なくとも光導
電層と表面保護層との積層構造を基本とするものであっ
て、さらに性能を上げるために、たとえば図1に示すよ
うな積層構造にする。
【0021】同図は本発明の実施形態に係る感光体1の
層構成であり、グロー放電分解法などによりa−Si:
Hなどからなる電荷注入阻止層3およびa−Si:Hな
どからなる光導電層4とを順次積層し、この光導電層4
上に表面保護層5を積層する。
【0022】導電性基板2は銅、黄銅、SUS、Al、
Niなどの金属導電体、あるいはガラス、セラミックな
どの絶縁体の表面に導電性薄膜を被覆したものなどがあ
る。この導電性基板2はシート状、ベルト状もしくはウ
ェブ状可とう性導電シートでもよく、このようなシート
にはSUS、Al、Niなどの金属シート、あるいはポ
リエステル、ナイロン、ポリイミドなどの高分子樹脂フ
ィルムの上にAl、Niなどの金属もしくは酸化スズ、
インジウム・スズ・オキサイド(ITO)などの透明導
電性材料や有機導電性材料を蒸着などにより被覆して導
電処理したものを用いる。
【0023】また、電荷注入阻止層3をa−Si:Hな
どで構成した場合には、酸素や窒素を含有させて、禁制
帯幅を大きくし、これによって電荷注入阻止という機能
上、障壁を高くしてもよい。しかも、酸素を含有させる
ことで基板との密着性が高められる。ただし、酸素のみ
ではシランガスとの反応して爆発を引き起こし易いので
不活性な窒素も併存させるとよく、実際には一酸化窒素
(NO)ガスなどを使用する。
【0024】光導電層4はa−Si以外に、Se、Se
−Te、As2Se3などのSe合金、ZnO、CdS、
CdSeなどのII−VI族化合物の粒子を樹脂に分散した
もの、ポリビニルカルバゾール等の有機半導体材料など
があり、これでもって単層型とする。あるいは光導電層
4を電荷発生層と電荷輸送層に分けた機能分離型にして
もよい。
【0025】そして、上記表面保護層5については、シ
リコンカーバイド(SiC)もしくはカーボン(C)か
らなるフッ素含有のアモルファス層により構成して、動
的押し込み硬さを90kgf/mm2 以上、好適には1
50kgf/mm2 以上にするとよく、さらにフッ素含
有量を12〜35原子%に規定している。
【0026】すなわち、フッ素含有量は表面保護層5を
構成する各種原子の全量に対し12〜35原子%、好適
には18〜26原子%にするとよく、12原子%未満の
場合には画像流れが発生し、35原子%を超えると結合
状態において終端部が増え、原子間のネットワークが少
なくなり、C−C、Si−Si、Si−Cというような
原子間結合が減少し、これによって膜強度が弱くなり、
その結果、膜削れおよびキズが発生する。
【0027】しかも、本発明においては、フッ素含有量
を規定するとともに、硬度を高めるとよい。すなわち、
上述のようにフッ素を12〜35原子%にまで多く含有
させる処理(フッ素を含むガスのプラズマ化)をおこな
って、表面をエッチングすると、その表面の硬度にバラ
ツキが生じやすくなり、低い硬度になる場合もあり、そ
こで、原料ガスを希釈ガスでもって希釈させたり、高周
波電力を高くする、というような製造条件でもって動的
押し込み硬さを90kgf/mm2 以上にまで高めてい
る。さらに一回のエッチング量を少なくすることで、膜
強度のバラツキを小さくするとともに、硬度を高めると
よい。
【0028】本発明にて規定する動的押し込み硬さは島
津製作所製の超微小硬度計DYNAMICULTRA MICRO HARDNES
S TESTER (DUH−201・202)を使用してダイ
ナミック硬さでもって表す。この測定方法によれば、電
磁石により圧子(三角すい圧子)を試料に押しつけ、こ
の押圧力を0.1gの荷重まで一定の割合で増加させ、
圧子が試料に侵入していく過程で、圧子の試料への侵入
深さを自動計測するものであって、その際に生じるくぼ
みの大きさを顕微鏡にて測定し、塑性変形分から硬さの
値を得る。
【0029】かくして上記構成のように表面保護層5の
動的押し込み硬さを90kgf/mm2 以上であり、フ
ッ素含有量を12〜35原子%にしたことで、優れた耐
刷性が得られ、紙などでもって擦れる度合いが著しく低
減し、これによって優れた耐久性が得られ、画像流れが
発生しない高性能な感光体となった。
【0030】さらに本発明においては、上記のような表
面保護層5に対し、ボンバード処理をおこない、これに
よって膜の剥がれが発生しないようにしている。この点
を、つぎの表面保護層の形成方法にて述べる。
【0031】表面保護層5の形成方法 つぎに上記構成の表面保護層5の形成方法を図3および
図4により述べる。
【0032】図3(イ)〜(ニ)は表面保護層5の形成
方法Aを示す各工程図であって、図4(イ)〜(ホ)は
表面保護層5の他の形成方法Bを示す各工程図である。
【0033】〔表面保護層5の形成方法Aについて〕以
下、図3の各工程(イ)〜(ニ)を述べる。
【0034】(イ)工程:光導電層4の上にグロー放電
法によりシリコンカーバイド(SiC)もしくはカーボ
ン(C)からなるアモルファス層6aを成膜形成する。
【0035】(ロ)工程:フッ素を含むガスによりエッ
チング処理する。このエッチング処理はCF4ガス、N
3ガス、SF6ガス、C26ガス、F2ガス、ClF3
ガス、CHF3ガス、CH22ガス、CH3Fガスなどの
ガスを用いて、たとえばCF4ガスを使用した場合であ
れば、真空度0.35トール(torr)、基板温度270
℃、高周波電力200Wという条件でもってプラズマ化
し、これによってアモルファス層6aの表面から内部に
漸次フッ素を侵入させると同時に、表面がエッチングさ
れる。6bはアモルファス層6aのうちフッ素が侵入し
ていない領域(フッ素未侵入領域)、6cはフッ素化領
域、6dはアモルファス層6aのうち上層領域のエッチ
ング処理された領域(エッチング領域)である。
【0036】なお、上記の真空度を0.35トール(to
rr)と表記したが、これは46000Paに相当する
(1Torr=133320Pa)。以下、このような
ガス圧はTorr単位で表記するが、これをPaに換算する
ことができる。
【0037】また、エッチングレートが膜質に影響する
こともわかり、エッチングレートを50〜500Å/
分、好適には100〜250Å/分に規定することで、
膜表面に対するダメージが小さくなり、膜剥がれや画像
欠陥等が発生しなくなるとともに、十分にフッ素化処理
される。
【0038】フッ素化領域6cにおいては、エッチング
処理されたことで、水素原子がフッ素原子に置換された
り、終端部にフッ素原子が結合し、C−F、C−F2
C−F3などの官能基が生成され、とくにC−F2が多く
生成される。そして、これらの生成物は疎水性を高める
のに顕著な効果がある。これら各官能基の量はフーリエ
変換赤外分光光度計により測定する。
【0039】(ハ)工程:(ロ)工程のエッチング処理
によりフッ素化領域6cが形成されるが、そのエッチン
グ処理をさらに進行させると同時にエッチング領域6d
もさらに大きくすることで、実質上フッ素未侵入領域6
bがない程度にまでエッチング処理を進める。これによ
ってアモルファス層6aの全体がフッ素化されるまでエ
ッチング処理してフッ素化アモルファス層6eとなす。
【0040】(ニ)工程:フッ素化アモルファス層6e
に対し、水素ガスを用いてボンバード処理をおこなう。
【0041】(イ)工程〜(ニ)工程を一サイクルとし
て、このサイクルを繰り返すことで複数のフッ素化アモ
ルファス層6eを積層する。たとえば、(イ)工程にて
アモルファス層6aを2000Åの厚みで成膜形成し、
(ロ)工程〜(ニ)工程によって1000〜1500Å
にする。そして、このようなサイクルを5回繰り返すこ
とで、すなわちフッ素化アモルファス層6eを5層積層
することで、表面保護層5を形成する。
【0042】かくして表面保護層5の形成方法Aによれ
ば、結合エネルギの大きなC−F系の官能基が形成され
ることで、表面自由エネルギが大幅に小さくなり、耐酸
化性に優れ、これにより、放電生成物が付着されにくく
なり、現像剤に働く力がほとんど静電引力となって転写
性が改善され、その結果、画像流れが発生しなくなっ
た。そして、放電生成物がわずかに付着されても、表面
硬度が高くなったことで、クリーニング手段や紙などで
もって容易にクリーニングができ、トナーの付着を抑制
したり、防止することができる。
【0043】加えて本発明においては、フッ素化アモル
ファス層6eを形成した際に(ニ)の工程にて水素ガス
を用いてボンバード処理をおこなうことで、その上につ
ぎのフッ素化アモルファス層6eを積層しても、その間
での接着力が高くなり、これによって積層構造の表面保
護層5において膜剥がれが生じなくなった。
【0044】本発明者はボンバード処理によりフッ素化
アモルファス層6eの表面自由エネルギーが変化する
が、その変化により膜の密着性が向上すると考える。
【0045】この点をさらに述べると、2種類の異なる
物質が接着(付着)するためには、その両者に接着を促
す力が必要になるが、その力が分子間力(van del waal
s力)と呼ばれる。分子間力には分散力、双極子力、誘
起双極子力、水素結合等の力があり、つまり接着力を高
めるということは、接着面との分子間力を高く必要があ
る。
【0046】一方、液体や固体表面付近は内側と比較し
て内部エネルギーが高い状態にあるが、一般にエネルギ
ーというものは、できるだけ低エネルギーになることで
安定状態が得られ、実際目に見えている現実というもの
は、安定な状態つまりその物質の系がとり得る最低エネ
ルギーの状態で存在する。そのため、この場合、表面に
ついては、できるだけエネルギーを低くしようとするた
めに表面張力が発生するが、表面張力は液体表面を等温
的に単位面積だけ増加する時の仕事に等しく、したがっ
て表面積毎に蓄えられるギブスの自由エネルギー、すな
わち表面自由エネルギーを表している。
【0047】表面張力の起源は分子間力にあり、表面自
由エネルギーの大きさを知ることで、表面の分子間力の
大小を知ることができ、接着力を増すということは分子
間力を増大させることであり、分子間力を増大させると
いうことは、表面自由エネルギーの値を増やすことにな
る。
【0048】以上の理論により、ボンバード処理により
フッ素化アモルファス層6eの表面自由エネルギーを大
きくすることで、つぎのフッ素化アモルファス層6eを
積層しても、その間での接着力が高くなり、積層構造の
表面保護層5において膜剥がれが生じなくなる。
【0049】また、本発明においては、望ましくは2層
〜15層〔サイクル数:2〜15〕、最適には3層〜1
0層〔サイクル数:3〜10〕のフッ素化アモルファス
層6eを積層することで、膜の密着性を高め、電子写真
特性を向上させた表面保護層5となる。
【0050】さらに望ましくは、上記工程により得られ
た表面保護層5の最表面に対し、水素ガスを用いてボン
バード処理をおこなってもよく、これによって最表面の
マイナスの極性を水素により電気的に中性化し、その結
果、プラスのトナーの付着性を弱め、画像のかぶり現象
が防止されるという点でよい。
【0051】〔表面保護層5の形成方法Bについて〕つ
ぎに図4に示すような表面保護層5の他の形成方法Bを
述べる。この形成方法Bにおいては、上述した形成方法
Aに比べて(ハ)工程を除いている。すなわち、(ロ)
工程のエッチング処理によりフッ素化領域6cが形成さ
れるが、フッ素未侵入領域6bが残存する程度にエッチ
ング処理を進める。そして、つぎのフッ素化アモルファ
ス層6eに対し、水素ガスを用いてボンバード処理をお
こなう(ニ)の工程をおこなうことで、一サイクルとし
て、このサイクルを繰り返すことでフッ素化領域6cと
フッ素未侵入領域6bとを交互に積層させ、表面保護層
5をなす。
【0052】このようにフッ素未侵入領域6bが表面保
護層5内に存在してもよいが、前述の形成方法Aのよう
にフッ素未侵入領域6bが存在しない方が成膜の信頼性
が向上し、安定した電子写真特性が得られ、さらに生産
歩留りも高められる。
【0053】表面保護層5の形成方法Aおよび形成方法
Bのいずれにおいても、アモルファス層6aの膜厚を
0.01〜1μm、好適には0.05〜0.5μmにす
るとよく、この範囲内であれば、適度な量でもってエッ
チングされ、膜全体に対しフッ素化が容易になるという
点でよい。
【0054】フッ素化領域6cについても、膜厚を0.
005〜0.5μm、好適には0.03〜0.3μmに
するとよく、この範囲内であれば、耐久性および電位特
性の双方を高めるという点でよい。
【0055】そして、このように成膜した表面保護層5
の膜厚を0.1〜1.5μm、好適には0.2〜1.0
μmにするとよく、この範囲内であれば、耐久性および
電位特性の双方を高めるという点でよい。
【0056】さらに形成方法Bについては、フッ素未侵
入領域6bの膜厚を0.001〜0.05μm、好適に
は0.001〜0.01μmにするとよく、この範囲内
であれば、適度な量でもってエッチングされて均等な膜
厚が得られ、安定した膜厚となり、しかも、画像流れが
発生しなくなるという点でよい。
【0057】この形成方法Bにおいても、望ましくは2
積層〜15積層〔サイクル数:2〜15〕、最適には3
積層〜10積層〔サイクル数:3〜10〕の範囲にて表
面保護層5を構成するとよい。
【0058】〔アモルファス層6aの材質について〕
(イ)工程にて成膜形成するアモルファス層6aはシリ
コンカーバイド(SiC)またはカーボン(C)からな
るが、a−C膜はa−SiC膜に比べて硬度が小さいこ
とから、a−SiC膜にて形成するのがよい。そのため
に原子組成比率SiX1-XのX値を0.5以下、好適に
は0.3以下、最適には0.1以下にするとよい。そし
て、このようにSiを減少させたままで含有させること
で耐コロナ性が向上する。ただし、a−C膜について
は、ガス希釈することで硬度を大きくすることができる
が、a−SiC膜にて得られる程度の硬度が得られない
場合がある。
【0059】画像形成装置の構成 図2は本発明の感光体を搭載したプリンター構成の画像
形成装置7であり、8は感光体であり、この感光体8の
周面にコロナ帯電器9と、その帯電後に光照射する露光
器10(LEDヘッド)と、トナー像を感光体8の表面
に形成するためのトナー11を備えた現像機12と、そ
のトナー像を被転写材13に転写する転写器14と、そ
の転写後に感光体表面の残留トナーを除去するクリーニ
ング手段15と、その転写後に残余静電潜像を除去する
除電手段16とを配設した構成である。また、17は被
転写材13に転写されたトナー像を熱もしくは圧力によ
り固着するための定着器である。
【0060】このカールソン法は次の(1)〜(6)の
各プロセスを繰り返し経る。 (1)感光体8の周面をコロナ帯電器9により帯電す
る。 (2)露光器10により画像を露光することにより、感
光体8の表面上に電位コントラストとしての静電潜像を
形成する。 (3)この静電潜像を現像機12により現像する。この
現像により黒色のトナーが静電潜像との静電引力により
感光体表面に付着し、可視化する。 (4)感光体表面のトナー像を紙などの被転写材13の
裏面よりトナーと逆極性の電界を加えて、静電転写し、
これにより、画像を被転写材13の上に得る。 (5)感光体表面の残留トナーをクリーニング手段15
により機械的に除去する。 (6)感光体表面を強い光で全面露光し、除電手段16
により残余の静電潜像を除去する。
【0061】なお、画像形成装置7はプリンターの構成
であるが、露光器10に代えて原稿からの反射光を通す
レンズやミラーなどの光学系を用いれば、複写機の構成
の画像形成装置となる。
【0062】また、この画像形成装置7には通常の乾式
現像を用いているが、その他、湿式現像に使用される液
体現像剤にも適用される。
【0063】
【実施例】(例1)純度99.9%のAlからなる円筒
状の基板の上に表1に示すような成膜条件(この条件は
一チェンバ内での値である)でもってグロー放電分解法
により電荷注入阻止層3および光導電層4を積層した。
【0064】
【表1】
【0065】ついで表面保護層5を形成方法Aにより設
ける。まず、表2に示す(イ)工程の成膜条件によりカ
ーボン(C)からなるアモルファス層6aを2000Å
の厚みで成膜形成する。
【0066】
【表2】
【0067】つぎに表3に示す(ロ)工程の条件により
エッチング処理する。
【0068】
【表3】
【0069】表3のエッチング処理を続けることで、
(ハ)工程を経て、実質上フッ素未侵入領域6bがない
程度にまでエッチング処理を進め、これによって膜厚1
000Åのフッ素化アモルファス層6eとなす。
【0070】しかる後に表4に示すような条件でもって
(ニ)工程の水素ガスを用いたボンバード処理をおこな
う。
【0071】
【表4】
【0072】この条件によれば、高周波電力を50〜5
00Wの範囲内にて、そして、処理時間を1〜5分間の
範囲内にて変えている。
【0073】そして、高周波電力を150Wに定め、処
理時間を1〜5分間の範囲内にて変え、そして、フッ素
化アモルファス層6eの表面自由エネルギーを測定した
ところ、図5に示すような結果が得られた。
【0074】同図から明らかなとおり、ボンバード処理
の時間を長くすると表面自由エネルギーが大きくなる傾
向にあり、3分経過することで41mN/m程度にまで
大きくなっている。
【0075】つぎに(イ)工程〜(ニ)工程を一サイク
ルとして、このサイクルを5回繰り返すことでフッ素化
アモルファス層6eを5層積層し、動的押し込み硬さが
250kgf/mm2 であり、フッ素含有量が24原子
%の表面保護層5を形成した。
【0076】かくして得られた本発明の感光体におい
て、その表面保護層5の密着性を測定したところ、表5
に示すような結果が得られた。
【0077】
【表5】
【0078】膜の密着性はつぎのようにして測定した。
感光体を前記画像形成装置7に搭載し、そして、感光体
を50rpmにて回転させるとともに、ラッピングフィ
ルム(アルミナ粒子(3μm径)を分散して、その表面
を荒している。このフィルムは2cm×9cmの帯状を
なし、面積は18cm2である)を200g〜2000
gの荷重を加圧しながら接触させることで表面保護層の
状態を目視により確認することで、良否の判定をおこな
った。
【0079】この判定には、その試験をおこなった後、
5分後の表面状態を光学式顕微鏡により1250倍にて
観察し、図6はまったく剥がれがなかった場合を、図7
は微小な剥がれが発生した場合を示す。
【0080】本例では、同一条件にて3回繰り返しラッ
ピングテストをおこない、そして、良否判定の結果を3
とおりに区分し、○印は図6に示すようにまったく剥が
れなかった場合であり、△印は3回のテストのうち1回
のテストだけ、あるいは2回のテストについてだけ微小
な剥がれが発生した場合であり、×印は3回のテストと
も図7に示すような剥がれが発生した場合である。
【0081】表5に示す結果から明らかなとおり、ボン
バード処理時間を長くして表面自由エネルギーを大きく
したことで、膜の密着性が向上し、剥がれが発生しなく
なったことがわかる。
【0082】(例2)(例1)に示すように(イ)工程
〜(ニ)工程でもってボンバード処理したフッ素化アモ
ルファス層6eを成膜するに際し、その処理時間を3分
間に定め、高周波電力を50〜500Wの範囲内にて変
え、そして、フッ素化アモルファス層6eの表面自由エ
ネルギーを測定したところ、図8に示すような結果が得
られた。
【0083】同図から明らかなとおり、高周波電力を大
きくすると表面自由エネルギーが大きくなる傾向にあ
り、200Wになると41mN/m程度にまで大きくな
っている。
【0084】つぎに(イ)工程〜(ニ)工程を一サイク
ルとして、このサイクルを5回繰り返すことでフッ素化
アモルファス層6eを5層積層し、動的押し込み硬さが
250kgf/mm2 であり、フッ素含有量が24原子
%の表面保護層5を形成した。
【0085】かくして得られた本発明の感光体におい
て、その表面保護層5の密着性を測定したところ、表6
に示すような結果が得られた。
【0086】
【表6】
【0087】同表に示す結果から明らかなとおり、高周
波電力を大きくして表面自由エネルギーを大きくしたこ
とで、膜の密着性が向上し、剥がれが発生しなくなった
ことがわかる。
【0088】(例3)(例1)と(例2)にて膜剥がれ
がない良好な本発明の感光体について、前記画像形成装
置7(京セラ株式会社製エコシスLS−3550、乾式
現像:トナー平均粒径8μm)に搭載し、この装置7に
設けられた感光体加熱用ヒーターのスイッチングを常時
OFFにして、感光体加熱をおこなわなかった。そし
て、カールソン法で画像形成して、30万枚のランニン
グテストをおこない、画像流れと画質を測定したとこ
ろ、表7に示すような結果(a−C:H:Fからなる表
面保護層)が得られた。
【0089】
【表7】
【0090】画像流れは33℃、85%湿度の環境下で
8時間放置し、その画質を3段階にて評価し、○印は画
像変化がまったくない場合であり、△印は一部画像が流
れた場合であり、×印は全面にわたって画像が流れた場
合である。
【0091】画質は3段階にて評価し、黒ベタ、白ベタ
およびハーフトーン画像にて評価し、○印は黒ベタ濃度
・白ベタにおいてかぶりにまったく問題なく、また、ハ
ーフトーン画像にスジがまったく発生していない場合で
あり、△印はハーフトーン画像の一部にスジが発生して
いる場合であり、×印はハーフトーン画像の全面にわた
ってスジが発生している場合である。
【0092】比較例として、a−SiC:Hからなる表
面保護層やa−C:Hからなる表面保護層を表8および
表9に示すような成膜条件にて形成し、その他の層構成
を表1の通りにして、それぞれの感光体を作製し、同様
に評価したところ、表7に示すような結果が得られた。
なお、表9に示すSiH4ガス量は8.3SCCMから
2.5SCCMに漸次減少させている。
【0093】このようなa−SiC:Hからなる表面保
護層の動的押し込み硬さは350kgf/mm2 であ
り、a−C:Hからなる表面保護層の動的押し込み硬さ
は200kgf/mm2 であった。
【0094】
【表8】
【0095】
【表9】
【0096】表7に示す結果から明らかなとおり、本発
明のようなa−C:H:Fからなる表面保護層を形成し
たことで、画像流れおよび画質の双方が向上しているこ
とがわかる。
【0097】(例4)(例1)と(例2)にて膜剥がれ
がない良好な本発明の感光体について、表10に示すよ
うにRF電力を変えることで、表面保護層5のフッ素量
を規定した各種感光体A〜Gを作製した。
【0098】
【表10】
【0099】これらの感光体を画像形成装置7に搭載
し、画像流れと画質を評価測定したところ、表11と表
12に示すような結果が得られた。
【0100】
【表11】
【0101】
【表12】
【0102】これらの表から明らかなとおり、本発明の
試料である感光体C〜Fは画像流れと画質の双方とも優
れている。しかし、感光体Gはフッ素含有量が多くなる
ことで結合状態において終端部が増え、原子間のネット
ワークが少なく、膜強度が弱くなったため、膜削れおよ
びキズが発生した。
【0103】(例5)(例1)と(例2)にて膜剥がれ
がない良好な本発明の感光体について、a−Cの表面保
護層を表13に示すようなエッチング条件でもって、表
14に示すようにCF4ガス流量をさまざまに変えるこ
とでエッチングも変え、これによって試料a〜h(感光
体a〜h)を作製した。
【0104】
【表13】
【0105】
【表14】
【0106】そして、各感光体a〜hに対し同様に画像
流れと画質を評価測定したところ、表15と表16に示
すような結果が得られた。
【0107】
【表15】
【0108】
【表16】
【0109】以上のとおり、本発明の試料c〜fによう
にエッチングレートを50〜500Å/分にしたこと
で、画像変化がまったくなく、さらに黒ベタ濃度・白ベ
タにおいてかぶりにまったくなくなった。
【0110】(例6)(例1)〜(例5)はa−C:
H:Fからなる表面保護層を形成した場合であるが、以
下、これに代えてa−SiC:H:Fからなる表面保護
層を形成した場合を説明する。
【0111】表1に示すような成膜条件でもって電荷注
入阻止層3および光導電層4を積層し、その上にa−S
iC:H:Fからなる表面保護層5を形成方法Aにより
設ける。その場合、表17に示す(イ)工程の成膜条件
によりa−SiC:Hからなるアモルファス層6aを2
000Åの厚みで成膜形成する。
【0112】
【表17】
【0113】つぎに表18に示す(ロ)工程の条件によ
りエッチング処理する。
【0114】
【表18】
【0115】表18のエッチング処理を続けることで、
(ハ)工程を経ることで、実質上フッ素未侵入領域6b
がない程度にまでエッチング処理を進め、これによって
膜厚1000Åのフッ素化アモルファス層6eとなす。
【0116】しかる後に表4に示すような条件でもって
(ニ)工程の水素ガスを用いたボンバード処理をおこな
う。
【0117】本例においても、高周波電力を50〜50
0Wの範囲内にて、そして、処理時間を1〜5分間の範
囲内にて変えている。
【0118】そして、高周波電力を150Wに定め、処
理時間を1〜5分間の範囲内にて変え、そして、フッ素
化アモルファス層6eの表面自由エネルギーを測定する
と、前述しようにボンバード処理の時間を長くすると表
面自由エネルギーが大きくなる傾向にある。
【0119】つぎに(イ)工程〜(ニ)工程を一サイク
ルとして、このサイクルを5回繰り返すことでフッ素化
アモルファス層6eを5層積層し、動的押し込み硬さが
300kgf/mm2 であり、フッ素含有量が21原子
%の表面保護層5を形成した。
【0120】かくして得られた本発明の感光体におい
て、その表面保護層5の密着性を測定したところ、表1
9に示すような結果が得られた。
【0121】
【表19】
【0122】表19に示す結果から明らかなとおり、ボ
ンバード処理時間を長くして表面自由エネルギーを大き
くしたことで、膜の密着性が向上し、剥がれが発生しな
くなったことがわかる。
【0123】(例7)(例6)に示すように(イ)工程
〜(ニ)工程でもってボンバード処理したフッ素化アモ
ルファス層6eを成膜するに際し、その処理時間を3分
間に定め、高周波電力を50〜500Wの範囲内にて変
え、そして、フッ素化アモルファス層6eの表面自由エ
ネルギーを測定したところ、前述のとおり、高周波電力
を大きくすると表面自由エネルギーが大きくなる傾向に
ある。
【0124】つぎに(イ)工程〜(ニ)工程を一サイク
ルとして、このサイクルを5回繰り返すことでフッ素化
アモルファス層6eを5層積層し、動的押し込み硬さが
300kgf/mm2 であり、フッ素含有量が21原子
%の表面保護層5を形成した。
【0125】かくして得られた本発明の感光体におい
て、その表面保護層5の密着性を測定したところ、表2
0に示すような結果が得られた。
【0126】
【表20】
【0127】同表に示す結果から明らかなとおり、高周
波電力を大きくして表面自由エネルギーを大きくしたこ
とで、膜の密着性が向上し、剥がれが発生しなくなった
ことがわかる。
【0128】(例8)(例6)と(例7)にて膜剥がれ
がない良好な本発明の感光体について、前記画像形成装
置7(京セラ株式会社製エコシスLS−3550、乾式
現像:トナー平均粒径8μm)に搭載し、この装置7に
設けられた感光体加熱用ヒーターのスイッチングを常時
OFFにして、感光体加熱をおこなわなかった。そし
て、カールソン法で画像形成して、30万枚のランニン
グテストをおこない、画像流れと画質を測定したとこ
ろ、表21に示すような結果(a−SiC:H:Fから
なる表面保護層)が得られた。
【0129】
【表21】
【0130】比較例として、(例1)に示すa−Si
C:Hからなる表面保護層やa−C:Hからなる表面保
護層を記す。
【0131】表21に示す結果から明らかなとおり、本
発明のようなa−SiC:H:Fからなる表面保護層を
形成したことで、画像流れおよび画質の双方の点が著し
く向上していることがわかる。
【0132】(例9)(例6)と(例7)にて膜剥がれ
がない良好な本発明の感光体について、表22に示すよ
うにRF電力を変えることで、表面保護層5のフッ素量
を規定した各種感光体A〜Gを作製した。
【0133】
【表22】
【0134】これらの感光体を画像形成装置7に搭載
し、画像流れと画質を評価測定したところ、表23と表
24に示すような結果が得られた。
【0135】
【表23】
【0136】
【表24】
【0137】これらの表から明らかなとおり、本発明の
試料である感光体C〜Fは画像流れと画質の双方とも優
れている。しかし、感光体Gはフッ素含有量が多くなる
ことで結合状態において終端部が増え、原子間のネット
ワークが少なく、膜強度が弱くなったため、膜削れおよ
びキズが発生した。
【0138】(例10)(例6)と(例7)にて膜剥が
れがない良好な本発明の感光体について、表25に示す
ようなエッチング条件でもって、表26に示すようにC
4ガス流量をさまざまに変えることでエッチングも変
え、これによって試料a〜h(感光体a〜h)を作製し
た。
【0139】
【表25】
【0140】
【表26】
【0141】そして、各感光体a〜hに対し同様に画像
流れと画質を評価測定したところ、表27と表28に示
すような結果が得られた。
【0142】
【表27】
【0143】
【表28】
【0144】以上のとおり、本発明の試料c〜fによう
にエッチングレートを50〜500Å/分にしたこと
で、画像流れと画質の双方とも優れている。
【0145】(例11)(例1)〜(例5)はa−C:
H:Fからなる表面保護層を形成した場合であり、(例
6)〜(例10)はa−SiC:H:Fからなる表面保
護層を形成した場合であるが、以下、これに代えて(例
1)に示すように(ニ)工程の水素ガスを用いたボンバ
ード処理をおこなったa−C:H:Fからなるフッ素化
アモルファス層6eと、(例6)に示すように(ニ)工
程の水素ガスを用いたボンバード処理をおこなったa−
SiC:H:Fからなるフッ素化アモルファス層6eと
を、それぞれ交互に積層し、全層を6層にした表面保護
層5を成膜した。
【0146】そして、(イ)工程〜(ニ)工程を一サイ
クルとして、上述のようにサイクルを6回繰り返すこと
でフッ素化アモルファス層6eを6層積層し、動的押し
込み硬さが300kgf/mm2の表面保護層5を形成
した。
【0147】かくして得られた本発明の感光体におい
て、その表面保護層5の密着性を測定したところ、表2
9に示すような結果が得られた。
【0148】
【表29】
【0149】表29に示す結果から明らかなとおり、ボ
ンバード処理時間を長くして表面自由エネルギーを大き
くしたことで、膜の密着性が向上し、剥がれが発生しな
くなったことがわかる。
【0150】(例12)(例11)に示すように(イ)
工程〜(ニ)工程でもってボンバード処理したフッ素化
アモルファス層6eを成膜するに際し、その処理時間を
3分間に定め、高周波電力を50〜500Wの範囲内に
て変え、そして、その表面保護層5の密着性を測定した
ところ、表30に示すような結果が得られた。
【0151】
【表30】
【0152】同表に示す結果から明らかなとおり、高周
波電力を大きくして表面自由エネルギーを大きくしたこ
とで、膜の密着性が向上し、剥がれが発生しなくなった
ことがわかる。
【0153】(例13)つぎの本例では、上述した
(ニ)工程の水素ガスを用いてボンバード処理をおこな
った各フッ素化アモルファス層6eにおける好適な表面
自由エネルギーを前述した各例にしたがって求めたとこ
ろ、表31に示すような結果が得られた。
【0154】
【表31】
【0155】同表の「a−C膜―a−C膜の積層」は
(例1)〜(例5)にて述べたa−C:H:Fからなる
表面保護層の場合であり、「a−SiC膜―a−SiC
膜の積層」は(例6)〜(例10)にて述べたa−Si
C:H:Fからなる表面保護層の場合である。さらに
「a−C膜―a−SiC膜の積層」は(例11)と(例
12)にて述べたa−C:H:Fからなるフッ素化アモ
ルファス層6eとa−SiC:H:Fからなるフッ素化
アモルファス層6eとを、それぞれ交互に積層した表面
保護層5の場合である。
【0156】(例14)つぎに(例1)〜(例5)にて
説明したa−C:H:Fからなる表面保護層において、
本例においては、さらに最表面に対しボンバード処理に
関する作用効果を説明する。
【0157】表32に示されるように、従来の単一の組
成のa−C:H:Fからなる表面保護層を3種類作成
し、それらを感光体1、感光体2および感光体3とす
る。
【0158】
【表32】
【0159】また、(例1)にて述べているような表面
保護層5の形成方法Aにしたがって、表33に示す成膜
条件により感光体4、感光体5および感光体6を作製し
た。
【0160】
【表33】
【0161】そして、これら感光体において、コロナ暴
露時の表面自由エネルギおよび5時間後の表面自由エネ
ルギを測定したところ、表34に示すような結果が得ら
れた。
【0162】
【表34】
【0163】つぎに各感光体について、画像流れの評価
をおこなった。京セラ製LS−3550(ECOSY
S)を使用し、ドラムヒータは常時、OFFとした。そし
て、25℃、50%の環境にて1000枚耐刷した後、
33℃、85%の環境に移し、8時間放置した後の画像
を確認した。また、画像流れ以外には、画質およびトナ
ー付着性も評価したところ、表35に示すような結果が
得られた。
【0164】
【表35】
【0165】各評価を5段階に分け、◎、〇、△、×、
××という順序にて劣化するものとした。
【0166】表35に示す結果から明らかなとおり、従
来の感光体3においてもトナー付着がないが、本発明の
ようにフッ素を含む表面保護層を形成すると、いずれも
トナー付着が生じていた。
【0167】さらに感光体4〜6について、ボンバード
ガスをアルゴン、窒素、水素の3種類を用いて、表36
に示す条件にてボンバード処理をおこなって、同様に画
像流れ、トナー付着性およびかぶりを測定したところ、
表37に示すような結果が得られた。
【0168】
【表36】
【0169】
【表37】
【0170】同表から明らかなとおり水素ガスを用いる
ことで、トナー付着およびかぶりが改善されていること
がわかる。
【0171】さらにまた、感光体6について高周波電力
を変化させ、同様に画像流れ、トナー付着性およびかぶ
りを測定したところ、表38に示すような結果が得られ
た。
【0172】
【表38】
【0173】高周波電力が100W〜500Wの範囲に
おいては、良好な結果が得られ、一方、電力が低いとボ
ンバードによる効果が小さくなり、トナー付着性および
かぶりが改善されていないことがわかる。
【0174】
【発明の効果】以上のとおり、本発明の感光体の製法に
よれば、フッ素含有のアモルファスシリコンカーバイド
(a−SiC)もしくはアモルファスカーボン(a−
C)からなる表面保護層を作製するに当り、光導電層上
にグロー放電法によりシリコンカーバイド(SiC)も
しくはカーボン(C)からなるアモルファス層を成膜形
成し、ついでこのアモルファス層に対しフッ素を含むガ
スをプラズマ化してエッチング処理すると同時に、フッ
素を12〜35原子%含有させ、その後にボンバード処
理をおこなう工程を複数回繰り返すことで表面保護層を
形成したことで、膜剥がれが発生しなくなり、高寿命か
つ高耐久性の感光体が得られた。
【0175】また、本発明の製法においては、優れた耐
刷性が得られ、紙などでもって擦れる度合いが著しく低
減し、しかも、感光体加熱用のヒーターを設けない程度
にまで表面の疎水性を高めて、画像流れが発生しなくな
り、さらに電位特性のバラツキがなくなり、その結果、
高耐久性、高性能、高信頼性、かつ低コストの感光体が
提供できた。
【0176】しかも、かかる表面保護層に対し、さらに
水素ガスを用いてボンバード処理をおこなうことで、最
表面のマイナスの極性を水素により電気的に中性化し、
これによってプラスのトナーの付着性を弱め、その結
果、画像のかぶり現象が防止された。
【0177】また、本発明の画像形成装置は、上記本発
明の感光体を装着することで、感光体用のヒーターを設
けなくてもよく、これにより、構造上簡単となり、製造
歩留りが向上し、さらに部品点数が少なくなることで優
れた耐久性が得られ、その結果、低コストかつ高信頼性
の画像形成装置が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施形態に係る感光体の層構成を示す断
面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の概略図である。
【図3】(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)は本発明
に係る表面保護層の形成方法を示す工程図である。
【図4】(イ)、(ロ)および(ホ)は本発明に係る表
面保護層の他の形成方法を示す工程図である。
【図5】フッ素を含むガスにてエッチング処理したアモ
ルファス層における処理時間と表面自由エネルギーとの
関係を示す線図である。
【図6】光学式顕微鏡により膜剥がれがない状態を示す
写真図である。
【図7】光学式顕微鏡により微小な膜剥がれが発生した
状態を示す写真図である。
【図8】フッ素を含むガスにてエッチング処理したアモ
ルファス層における高周波電力のパワー(W)と表面自
由エネルギーとの関係を示す線図である。
【符号の説明】
1、8 感光体 2 導電性基板 3 電荷注入阻止層 4 光導電層 5 表面保護層 6a アモルファス層 6b フッ素未侵入領域 6c フッ素化領域 6d エッチング領域 6e フッ素化アモルファス層 7 画像形成装置 9 コロナ帯電器 10 露光器 12 現像機 14 転写器 15 クリーニング手段 16 除電手段 17 定着器

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導電性基板上に光導電層を形成し、該光導
    電層上にグロー放電法によりシリコンカーバイドもしく
    はカーボンからなるアモルファス層を成膜形成し、つい
    でこのアモルファス層に対しフッ素を含むガスをプラズ
    マ化してエッチング処理すると同時に、膜内にフッ素を
    12〜35原子%含有させ、その後にボンバード処理を
    おこなう工程を複数回繰り返すことで表面保護層を形成
    したことを特徴とする感光体の製法。
  2. 【請求項2】請求項1の製法により得られた感光体と、
    該感光体の表面に電荷を付与する帯電手段と、感光体の
    帯電領域に対して光照射する露光手段と、これら帯電手
    段と露光手段とにより感光体表面に形成された静電潜像
    に対してトナー像を感光体の表面に形成する現像手段
    と、上記トナー像を被転写材に転写する転写手段と、該
    転写後に感光体表面の残留トナーを除去するクリーニン
    グ手段と、転写後に残余静電潜像を除去する除電手段と
    を配設した画像形成装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012053094A (ja) * 2010-08-31 2012-03-15 Kyocera Corp 電子写真用感光体および画像形成装置
JP2017097308A (ja) * 2015-11-28 2017-06-01 京セラ株式会社 電子写真感光体および画像形成装置

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