JP2002194815A - ユニット式建物 - Google Patents

ユニット式建物

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JP2002194815A JP2000391298A JP2000391298A JP2002194815A JP 2002194815 A JP2002194815 A JP 2002194815A JP 2000391298 A JP2000391298 A JP 2000391298A JP 2000391298 A JP2000391298 A JP 2000391298A JP 2002194815 A JP2002194815 A JP 2002194815A
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Yoshiyuki Fukuzawa
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裕 小松
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 積層ユニット建物において、上階側の建物ユ
ニットによって形成される空間の内、外での音、振動等
の伝わりを抑えるための防音、遮音を、簡単でしかも施
工時の手間もかからない構造によって得る。 【解決手段】 四隅の柱41とその上下端を連結する床
梁43および天井梁42とによって箱状に形成された建
物ユニット20,30を上下に積層することにより、積
層ユニット式建物10を構築する。上階側に配置される
建物ユニット30の床梁43を補強する補強梁70を備
える。この補強梁70を、上階側の建物ユニット30に
接続し、下階側の建物ユニット20から隔離した状態
で、該床梁43に沿って設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に柱材、梁材等
によって箱型形状に形成されている建物ユニットを上下
に積層することにより構成されるユニット式建物(以
下、積層ユニット式建物という)に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、工場で製造した箱型形状の建
物ユニットを、建築現場で前後、左右、あるいは上下に
複数個並べて連結することにより建築されるユニット式
建物が知られている。この種のユニット式建物を形成す
る建物ユニットとしては、四隅の柱の上下端を天井梁お
よび床梁で連結した箱状のフレームを有するものが一般
的である。フレームには、天井梁に支持される天井面
材、床梁に支持される床面材および部屋を仕切る間仕切
り壁等の内装材や、軽量気泡コンクリート等で形成され
た外壁等の外装材が工場で組付けられている。
【0003】このようなユニット式建物によれば、工場
において箱状のフレームに内装材や外装材の取付け作業
まで行って建物ユニットを製造した後、その建物ユニッ
トを現場に運搬して連結作業を行うだけで建物が完成す
るから、建築現場での作業が大幅に削減され、工事を短
期間で完了できるという利点がある。
【0004】複数個の建物ユニットを上下に積層するこ
とにより構築される積層ユニット式建物において、たと
えば下側建物ユニットの内部に、広い居間等のような柱
のない大空間を形成する場合がある。この場合には、箱
型形状に組立てられる通常の建物ユニットのフレームに
設けた四本の柱のうちの一つを省略して大空間用建物ユ
ニットとし、この大空間用建物ユニットの柱を省略した
角隅部を四つ寄せ合わせて大空間を形成している。この
とき、一つの柱が省略されるから、この大空間用建物ユ
ニットの剛性が低下するために、柱が省略された角隅部
を挟んでその両側に配置される柱の間に、通常の倍のス
パン分の長さを有する補強梁を設けて剛性を補っている
(たとえば特開平8−277580号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の積層ユ
ニット式建物では、下階側の建物ユニット、あるいは下
階側の建物ユニットと上階側の建物ユニットとの両方に
補強梁が接続されることによって、柱を省略した角隅部
を補強しているが、上階側の建物ユニットの荷重が下階
側の建物ユニットの天井梁に作用する構造であるため、
上階側の建物ユニット内で発生した音、振動等が下階側
に伝達されるのを抑えるために防音対策が必要となる。
【0006】しかし、上下に積層した建物ユニット間に
従来から一般に知られている防音、遮音対策を講じた場
合、建物全体の構造が複雑となり、施工時の手間がかか
るという問題を生じる。たとえば防音室を形成する場合
にあっては、より一層の防音構造を施すことが必要であ
るから、上述した構造上や施工上での問題はより顕著と
なる。
【0007】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、上下に建物ユニットを積層している積層ユ
ニット式建物において、上階側の建物ユニットによる空
間での音、振動等の伝わりを可能な限り抑制し、防音室
等での防音性を高めることができ、しかも構造が簡単で
施工時に手間がかからないユニット式建物を得ることを
目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的に応える
ために本発明(請求項1記載の発明)に係るユニット式
建物は、四隅の柱とその上下端を連結する床梁および天
井梁とによって箱状に形成された建物ユニットを上下に
積層することにより構築されているユニット式建物にお
いて、上階側に配置される建物ユニットの床梁を補強す
る補強梁を備え、この補強梁を、前記上階側の建物ユニ
ットに接続させ、前記下階側の建物ユニットからは隔離
した状態で、前記床梁に沿って設けたことを特徴とす
る。
【0009】本発明(請求項2記載の発明)に係るユニ
ット式建物は、四隅の柱とその上下端を連結する床梁お
よび天井梁とによって箱状に形成された複数の建物ユニ
ットを、下階側と上階側とに配列、積層することにより
構築されているユニット式建物において、上階側に配置
される建物ユニットのうちの少なくとも一つに、当該建
物ユニットの床梁を補強するために設けられる補強梁を
備え、この補強梁を、前記上階側の建物ユニットに接続
させ、前記下階側の建物ユニットから隔離した状態で、
当該上階側の建物ユニットの床梁に沿って設けたことを
特徴とする。
【0010】本発明(請求項3記載の発明)に係るユニ
ット式建物は、請求項1または請求項2において、前記
補強梁は、梁本体とこの梁本体に設けられる接続部とを
備え、この接続部は、上階側の建物ユニットに接続さ
れ、下階側の建物ユニットから隔離されていることを特
徴とする。
【0011】本発明(請求項4記載の発明)に係るユニ
ット式建物は、請求項3において、接続部は、平板状で
あることを特徴とする。
【0012】本発明(請求項5記載の発明)に係るユニ
ット式建物は、請求項3または請求項4において、接続
部は、上階側の建物ユニットと下階側の建物ユニットと
の間に配置され、上階側の建物ユニットに緊締具で固定
されていることを特徴とする。
【0013】本発明(請求項6記載の発明)に係るユニ
ット式建物は、請求項4または請求項5において、梁本
体は筒状であって、下面に平板状の前記接続部が固定さ
れていることを特徴とする。
【0014】本発明(請求項7記載の発明)に係るユニ
ット式建物は、請求項4または請求項5において、梁本
体は平板状であって、下面に平板状の前記接続部が固定
され、この固定部分に沿って一定間隔置きにスチフナー
が設けられていることを特徴とする。
【0015】本発明(請求項1、請求項2または請求項
3記載の発明)によれば、上階側の建物ユニットの床梁
の補強のために設ける補強梁を、上階側の建物ユニット
に接続し、下階側の建物ユニットから隔離して設けてい
るから、簡単でしかも施工時の手間もかからない構造に
よって、上階側の建物ユニットにより形成される空間の
内、外での音、振動等の下階側への伝わりを必要最小限
に抑制することができる。したがって、たとえば防音室
を上階側に形成する際に効果がある。
【0016】また、本発明によれば、補強梁を、下階側
の建物ユニットから隔離させた状態で設けているので、
上階側の建物ユニット内で音、振動等が発生しても、そ
の振動が補強梁を介して下階側の建物ユニットに伝播す
ることがなくなり、騒音上の問題は生じない。
【0017】また、本発明によれば、補強梁の梁本体
を、上階側の建物ユニットの隣接する床梁間に配置する
ことにより、該梁本体が下階側の建物ユニットの天井梁
の高さ位置まで突出せず、補強梁の軽量化を図れるとと
もに、下階側の建物ユニットの天井梁を貫通する配管、
配線などの施工が容易になる。
【0018】本発明(請求項4記載の発明)によれば、
補強梁の接続部を平板材で形成しているので、梁本体の
下面に接続部を容易に固定することができる。また、梁
本体の高さ方向の中間部分にスリットを設け、このスリ
ットに接続部を挿通させることによっても、接続部を容
易に梁本体に固定することができ、施工が容易になる。
【0019】本発明(請求項5記載の発明)によれば、
上階側の建物ユニットの床梁に接続部を固定するのにボ
ルト、ナット等の緊締具を用いることにより、溶接接合
のような設備や高度な技術が不要であり、容易でしかも
確実な施工が可能となる。
【0020】本発明(請求項6記載の発明)によれば、
梁本体を筒状とすることにより、上階側の建物ユニット
による鉛直荷重に対する剛性ばかりでなく、鉛直荷重に
よるねじれや地震等による水平力に対する剛性を確保で
きる。
【0021】本発明(請求項7記載の発明)によれば、
梁本体を板状材で形成することにより、上階側の建物ユ
ニットや下階側の建物ユニットの隣接する梁どおしの間
隔が狭い場合であっても補強梁を設けることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】図1ないし図12は本発明に係る
ユニット式建物の一つの実施の形態を示すものである。
これらの図において、符号10はこの実施の形態におけ
る複数個の建物ユニットからなるユニット式建物で、こ
のユニット式建物10は、図5に示すように、基礎11
と、この基礎11上に構築される建物本体12と、この
建物本体12の上部に搭載して設けられる屋根13とを
備えている。
【0023】建物本体12は、箱状に枠組みされること
により形成されている建物ユニットを前後、左右、およ
び上下に複数個並べて組み合わせることにより形成され
ている。ここで、この建物本体12は、下階側(1階
側)の建物ユニット20と、上階側(2階側)の建物ユ
ニット30とを複数個づつ備えている。
【0024】下階側の建物ユニット20は、図6に示す
ように、建物本体12の外周縁に沿ってL字形状に配置
された5個の通常の建物ユニット20Aと、通常の建物
ユニット20Aが形成するL字形状の入隅部分(図中一
点鎖線のハッチングで示す部分)に配置された4個の大
空間用建物ユニット20Bとで構成されている。上階側
の建物ユニット30は、通常の建物ユニット20Aと同
一形状である9個の通常の建物ユニット30Aとで構成
されている。
【0025】通常の建物ユニット20A,30Aは、図
7に示すように、四隅の柱41の上、下端を連結する天
井梁42および床梁43を有する箱形形状のフレーム4
0を備えている。このうち、下階側の建物ユニット20
Aにおける柱41と天井梁42とは、柱41の柱頭側に
配置される柱頭接合部材45を介して連結されている。
また、上階側の建物ユニット30Aにおける柱41と床
梁43とは、柱41の柱脚側に配置される柱脚接合部材
46を介して連結されている。
【0026】天井梁42としては、長さの異なる短辺天
井梁42Aおよび長辺天井梁42Bの二種類が設けら
れ、床梁43としては、長さの異なる短辺床梁43Aお
よび長辺床梁43Bの二種類が設けられている。また、
対向する長辺天井梁42Bの間には、天井面材を支持す
るための天井小梁(図示せず)が架け渡され、また対向
する長辺床梁43Bの間には、床を形成するパーチクル
ボード等の床面材を支持するための複数の根太(図示せ
ず)が架け渡されている。
【0027】前記建物本体12において、通常の建物ユ
ニット20A,30Aの連結部分は、図8に示すような
構造となっている。すなわち、下階側の柱頭接合部材4
5の上面には、位置決めピン45Aと挿通孔45Bとが
設けられ、これに対向して上階側の柱脚接合部材46の
下面には、位置決め孔(図示せず)と挿通孔46Bとが
設けられている。
【0028】また、通常の建物ユニット20A,30A
どおしの連結には、平板状の通常のシアプレート60が
用いられている。この通常のシアプレート60が、下階
側の建物ユニット20Aの隣接する柱頭接合部材45
と、これらの柱頭接合部材45の上に配置される上階側
の建物ユニット30Aの柱脚接合部材46との間に介在
されることにより、上下方向および前後、左右方向(水
平方向)に隣接する建物ユニット20A,30Aどおし
が連結される。これらの建物ユニット20A,30Aど
おしの連結には、緊締具81としてのボルト81Aとナ
ット81Bとが用いられている。
【0029】具体的には、通常のシアプレート60に
は、位置決め孔60Aと挿通孔60Bとが設けられてい
る。下階側の建物ユニット20Aの柱頭接合部材45の
位置決めピン45Aが、通常のシアプレート60の位置
決め孔60Aに挿通され、さらに上階側の建物ユニット
30Aの柱脚接合部材46の位置決め孔に嵌合されるこ
とにより、建物ユニット20A,30Aどおしの位置が
決定される。この状態において、下階側の建物ユニット
20Aの柱頭接合部材45の挿通孔45B、通常のシア
プレート60の挿通孔60Bおよび上階側の建物ユニッ
ト30Aの柱脚接合部材46の挿通孔46Bにボルト8
1Aを挿通させ、このボルト81Aにナット81Bを螺
合することにより緊締されることにより、建物ユニット
20A,30Aどおしが連結される。
【0030】上述した構造をもつ建物本体12に用いら
れる大空間用建物ユニット20Bを、図9に示す。この
大空間用建物ユニット20Bは、通常の建物ユニット2
0Aにおけるフレーム40の1本の柱41が省略された
角隅部20Dを備えた箱型形状の大空間用フレーム50
を備え、各々の一つの角隅部20Dどおしが寄せ合わさ
れた状態で隣接して配置されている。したがって、4個
の大空間用建物ユニット20Bの内部には、天井と床と
の間に柱41等の突出物が何ら存在しない広い大空間が
形成されることになる。
【0031】また、大空間用建物ユニット20Bは、柱
41が省略されかつ寄せ合わされた角隅部20Dを間に
おいて、その短辺方向の両側に角隅部20Cを備えると
ともに、角隅部20Dには大空間用シアプレート61が
設置され、角隅部20Cに配置される柱41の間には補
強梁70が付設されている。
【0032】この補強梁70の詳細を、図10に示す。
この補強梁70は、断面縦長の長方形の筒状部材であっ
て、継ぎ目なく一体に成形された梁本体71と、通常の
シアプレート60と同一形状であって、前記梁本体71
の下面の所定位置に溶接固定された接続部72とを備え
ている。この接続部72を角隅部20Dに対応した位置
であって、梁本体71の中央に設けられた中央接続部7
3と、角隅部20Dの両側の角隅部20Cに対応した位
置であって、梁本体71の端部に設けられた端部接続部
74とを含んで構成されている。
【0033】また、前記中央接続部73には複数の位置
決め孔73Aおよび挿通孔73Bが設けられ、端部接続
部74にも、複数の位置決め孔74Aおよび挿通孔74
Bが設けられている。
【0034】図11には、補強梁70と大空間用建物ユ
ニット20Bとの連結部分の分解図が示されている。な
お、この補強梁70の中央接続部73の上階側建物ユニ
ット30A,30Aと下階側の大空間用建物ユニット2
0B,20Bとの関係は、後述する図1と同様の構造に
なっている。すなわち、梁本体71の梁背Hは、図1に
示すように上階側の建物ユニット30Aの短辺床梁43
Aの上面から下面までの間に収まる寸法となっている。
また、梁本体71の梁幅Wは、隣接する上階側の建物ユ
ニット30Aの間に形成される隙間よりわずかに狭くな
っている。
【0035】この実施の形態では、中央接続部73(図
1では符号72を付した部分)は、隣接する4つの上階
側の建物ユニット30Aの柱脚接合部材46の下面に跨
って配置されているが、緊締具81としてのボルト81
A、ナット81Bによって柱脚接合部材46にのみ連結
されている。換言すれば、隣接する上階側の建物ユニッ
ト30Aどおしが水平方向にのみ連結されている。具体
的には、上階側の建物ユニット30Aの柱脚接合部材4
6の挿通孔46Bおよび中央接続部73の挿通孔73B
にボルト81Aを挿通され、ナット81Bで緊締されて
いる。
【0036】端部接続部74は、通常のシアプレートと
同様に、建物ユニット20Bの柱頭接合部材45と、建
物ユニット30Aの柱脚接合部材46の間に介在して連
結されている。具体的には、下階側の建物ユニット20
Bの柱頭結合部材45の位置決めピン45Aが、端部接
続部74の位置決め孔74Aに挿通されて、上階側建物
ユニット30Aの柱脚接合部材46の位置決め孔に嵌合
されている。また、下階側の建物ユニット20Bの柱頭
接合部材45の挿通孔45B、端部接続部74の挿通孔
74Bおよび上階側の建物ユニット30Aの柱脚接合部
材46の挿通孔46Bにボルト81Aが挿通され、ナッ
ト81Bで緊締されている。
【0037】大空間用シアプレート61は、通常のシア
プレート60と同一形状であって、隣接する4つの角隅
部20Dの柱頭接合部材45の上面に跨って、かつ中央
接続部73の下方に設置され、緊締具81によって柱頭
接合部材45にのみ連結されている。すなわち、隣接す
る下階側の建物ユニット20Aどおしが前後、左右の水
平方向にのみ連結されている。
【0038】具体的には、下階側の建物ユニット20B
の柱頭接合部材45の位置決めピン45Aが大空間用シ
アプレート61の位置決め孔61Aに挿通され、建物ユ
ニット20Bの柱頭接合部材45の挿通孔45Bおよび
大空間用シアプレート61の挿通孔61Bにボルト81
Aが挿通され、ナット81Bで緊締されている。
【0039】また、中央接続部73およびその緊締具8
1と、大空間用シアプレート61およびその緊締具81
とが隔離されるように、上階側の建物ユニット30Aと
下階側の建物ユニット20Bとの間隔Tが確保されてい
る。
【0040】ここで、上述した実施の形態におけるユニ
ット式建物10において、柱41等の突出物が何ら存在
しない広い大空間を組み立てる際の順序を説明する。ま
ず、大空間用建物ユニット20Bを、建物ユニット20
A,30Aおよび補強梁70と同様に工場で制作した
後、建築現場に運搬する。この運搬の際に、建物ユニッ
ト20Bの大空間用フレーム50の変形を防止するため
に、角隅部20Dに仮柱(図示せず)を設けておく。こ
の仮柱は、柱脚接合部材46と柱頭接合部材45とに着
脱可能に連結されている。そして、図12に示すように
4つの大空間用建物ユニット20Bの角隅部20Dを寄
せ合わせて隣接して配置する。
【0041】次に、角隅部20Dに大空間用シアプレー
ト61を配置し、大空間用建物ユニット20Bの柱頭接
合部材45の位置決めピン45Aを大空間用シアプレー
ト61の位置決め孔61Aに挿通して、大空間用建物ユ
ニット20Bどおしの位置を決定する。そして、大空間
用建物ユニット20Bの柱頭接合部材45の挿通孔45
Bおよび大空間用シアプレート61の挿通孔61Bにボ
ルト81Aを挿通してナット81Bで緊締し、大空間用
建物ユニット20Bどおしを水平方向にのみ連結する。
【0042】その後、角隅部20C間に補強梁70を配
置し、大空間用建物ユニット20Bの柱頭接合部材45
の位置決めピン45Aを、端部接続部74の位置決め孔
74Aに挿通して、補強梁70の位置を決定する。この
際、中央接続部73およびその緊締具81と大空間用シ
アプレート61およびその緊締具81とが隔離されるよ
うに、建物ユニット20Aと建物ユニット20Bとの間
隔Tを確保する。たとえば端部接続部74と大空間用建
物ユニット20Bの柱頭接合部材45との間に通常のシ
アプレート60を重ねることによって調整する。
【0043】その後、上階側の建物ユニット30Aを大
空間用建物ユニット20Bの上に積層し、緊締具81で
連結して上階側の建物ユニット30A、大空間用建物ユ
ニット20Bおよび補強梁70を一体化させる。この
際、補強梁70の中央接続部73は、上階側の建物ユニ
ット30Aにのみ連結する。すなわち、上階側の建物ユ
ニット30Aの柱脚接合部材46の挿通孔46Bおよび
中央接続部73にボルト81Aを挿通してナット81B
で緊締する。その後、仮柱80を取り外すと、天井およ
び床との間に柱41等の突出物が何ら存在しない広い大
空間が形成される。
【0044】なお、下階側の大空間用建物ユニット20
Bにおいて、柱を省略している角隅部20Dにおける強
度を確保するには、この角隅部20Dに向って片持ちと
なるフレーム50自体を補強するか、あるいは該フレー
ム50の基端部分に筋かい、バットレス等の補強部材を
付設するか、または振動を伝達しない状態で上階側につ
り下げ支持するかの補強構造を適宜採用するとよい。
【0045】以上の構成によるこの実施の形態でのユニ
ット式建物10では、柱41が省略された角隅部20D
の短辺方向の両側に配置される柱41の間に補強梁70
を架け渡し、この補強梁70が中央接続部73を介して
上階側の建物ユニット30Aを支持できるから、該上階
側の建物ユニット30Aの荷重が下階側の建物ユニット
20Bに作用せず、その結果下階側の建物ユニット20
B内に大空間を形成することができる。
【0046】さらに、補強梁70の中央接続部73を1
階建物ユニット20Bの大空間用シアプレート61から
隔離させているので、上階側の建物ユニット30A内で
音、振動等が発生しても、その振動等が補強梁70を介
して下階側の建物ユニット20Bの角隅部20Dに接続
される天井梁42に伝播することがなくなる。したがっ
て、大空間の天井面が振動せず、騒音上の問題は生じな
いから、内部に大空間を形成し、かつこの大空間の上階
側で発生した振動等の伝播を抑制できる。
【0047】本発明によれば、上述したような構造を有
する積層ユニット式建物10において、図1ないし図3
に示すように、通常の建物ユニット20A,30Aを上
下に積層することにより構築される部分で、上階側の建
物ユニット30Aの床梁43Aを補強する補強梁70を
備え、この補強梁70を、上階側の建物ユニット30A
に接続させ、下階側の建物ユニット20Aからは隔離し
た状態で、前記床梁43Aに沿って設けている。
【0048】ここで、前記補強梁70は、図3に示され
るように、梁本体71とこの梁本体71に設けられる端
部接続部74からなる接続部72とを備え、この接続部
72は、上階側の建物ユニット30Aに接続され、下階
側の建物ユニット20Aから隔離されている。なお、上
述した以外の部分については、前述した図8、図11と
ほぼ同等の構造を有するものであり、ここでの具体的な
説明は省略する。
【0049】このような構造によれば、補強梁70を、
上階側の建物ユニット30Aにおける床梁43Aのみに
接続した状態で該床梁43Aに沿って設けているため、
簡単な構造で施工時の手間もかからないにもかかわら
ず、上階側の建物ユニット30Aにおいて生じている
音、振動等の下階側への伝わりを必要最小限に抑制する
ことが可能となる。すなわち、補強梁70を下階側の建
物ユニット20Aからは隔離させているから、上階側の
建物ユニット30Aで音や振動等が発生しても、その振
動が補強梁70を介して下階側の建物ユニット20Aの
天井梁42Aに伝播することがないから、振動の伝わり
を抑制し、騒音上の問題を解決することを、簡単な構造
により達成できるのである。したがって、たとえば防音
室を上階側に形成する際に優れている。
【0050】ここで、上述した図1、図2では、補強梁
70を、上階側の建物ユニット30A,30Aの隣接す
る床梁43A,43A間に配置させた場合を説明した
が、本発明はこれに限らず、建物ユニット30Aにおい
て建物の外壁寄りに位置する床梁43Aに沿って付設し
た補強梁70を設けるにあたっても同様の構造を採用す
るとよい。その例を図4に示す。
【0051】また、この実施の形態では、補強梁70の
梁本体71を、図1、図2に示したように、上階側の建
物ユニット30A,30Aの隣接する床梁43A,43
A間に配置しているため、該梁本体71が下階側の建物
ユニット20Aの天井梁42Aの高さ位置まで突出しな
いから、補強梁70の軽量化を図れるとともに、下階側
の建物ユニット20Aの天井梁42Aを貫通する配管、
配線などの施工が容易になる。このような利点は、前述
した図11を用いて説明した構造においても同等であ
る。
【0052】さらに、補強梁70の接続部72を平板材
で形成することにより、梁本体71の下面に接続部を容
易に固定することができるから、施工容易である。ま
た、上階側の建物ユニット30Aの柱脚接合部材46に
接続部72を固定するのに緊締具81としてのボルト8
1Aとナット81Bを用いているから、溶接接合のよう
な設備や高度な技術が不要であり、容易でしかも確実な
施工が行える。
【0053】さらに、補強梁70の梁本体71を筒状と
することにより、鉛直荷重に対する剛性ばかりでなく、
鉛直荷重によるねじれや地震等による水平力に対する剛
性が確保できる。また、建物ユニット20A,30Aど
おしを連結する通常のシアプレート60を接続部72と
して利用可能であるから、従来の建物ユニット20A,
30Aの連結構造を何ら変更する必要がなくなるうえ、
補強梁70専用の接続部72を別途製造する必要がな
く、コスト削減になる。
【0054】なお、本発明は上述した実施の形態で説明
した構造、形状には限定されず、各部の構造、形状など
を適宜変更、変形してもよいことは言うまでもない。た
とえば上述した実施の形態では、複数個の建物ユニット
からなるユニット式建物において、下階側の建物ユニッ
ト20A,20Bにより構築される下階部分に、大空間
を形成するために、大空間用建物ユニット20Bを用い
て柱41の一部を削除する構造とした場合を説明した
が、本発明はこれに限定されない。
【0055】すなわち、本発明はたとえば上下に一個づ
つの建物ユニット20,30を積層する場合において
も、適用できることは言うまでもない。要は、上下に積
層した建物ユニット20,30間において、上階側の建
物ユニット30Aの床梁43Aを補強する補強梁70
を、上階側にのみ接続し、下階側からは離間させた状態
で設ける構造とすればよい。
【0056】また、補強梁70の梁本体71の梁背H
を、上階側の建物ユニット30Aの短辺床梁43Aの上
面から下面までの間に収まる寸法で形成した場合を述べ
たが、図13(A)に示すように、上階側の建物ユニッ
ト30Aの短辺床梁43Aから下階側の建物ユニット2
0Aまたは20Bの短辺天井梁42Aに跨って形成して
もよい。要は、梁幅Wを下階側の建物ユニット20A,
20Bの端面天井梁42Aに接触しないようにし、隔離
して構成すればよいものである。このようにすれば、補
強梁70の高さ方向の所定寸法を確保することができる
から、上階側の建物ユニット30Aによる鉛直荷重に対
する剛性が向上する。
【0057】また、上述した実施の形態では、梁本体7
1に筒状部材を用いているが、図13(B)に示すよう
に、板状部材を用い、この板状部材と接続部72との固
定部分に沿って一定間隔置きにスチフナー75を設けて
もよい。このようにすれば、梁本体71が板材で形成さ
れているから、たとえば隣接する建物ユニット30Aの
短辺床梁43Aどおしの間隔が狭い場合にあっても、補
強梁70を設けることができるという利点がある。
【0058】また、上述した実施の形態では、梁本体7
1に筒状部材を用い、該梁本体71の梁背Hを上階側の
建物ユニット30Aの短辺床梁43Aの上面から下面ま
での間に収まる寸法としているが、これに限定されな
い。たとえば、図13(C)に示すように、梁本体71
に板状部材を用いて、この板状部材を上階側の建物ユニ
ット30Aの短辺床梁43Aから下階側の建物ユニット
20A,20Bの短辺天井梁42Aに跨って形成し、か
つ板状部材と接続部との固定部分に沿って一定間隔置き
にスチフナー75を設けてもよい。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係るユニッ
ト式建物によれば、積層ユニット式建物において、上階
側の建物ユニットの床梁の補強のために設ける補強梁を
備え、この補強梁を、上階側の建物ユニットに接続さ
せ、下階側の建物ユニットからは隔離した状態で、当該
上階側の建物ユニットの床梁に沿って設けているので、
以下に述べる優れた効果を奏する。
【0060】本発明によれば、補強梁を、上階側の建物
ユニットにおける床梁のみに接続した状態で該床梁に沿
って設けているため、簡単な構造で施工時の手間もかか
らないにもかかわらず、上階側の建物ユニットにおいて
生じている音、振動等の下階側への伝わりを必要最小限
に抑制することが可能となる。すなわち、補強梁を下階
側の建物ユニットから隔離させているから、上階側の建
物ユニットで音や振動等が発生しても、その振動が補強
梁を介して下階側の建物ユニットの天井梁に伝播するこ
とがないから、簡単な構造により、振動の伝わりを抑制
し、騒音上の問題を解決することができる。したがっ
て、たとえば防音室を上階側に形成する際に優れた効果
を奏することができる。
【0061】また、本発明によれば、補強梁の梁本体
を、上階側の建物ユニットの隣接する床梁間に配置する
ことにより、該梁本体が下階側の建物ユニットの天井梁
の高さ位置まで突出しないから、補強梁の軽量化を図れ
るとともに、下階側の建物ユニットの天井梁を貫通する
配管、配線などの施工が容易になる。
【0062】さらに、本発明によれば、補強梁の接続部
を平板材で形成することにより、梁本体の下面に接続部
を容易に固定することができる。また、梁本体の高さ方
向の中間部分にスリットを設け、このスリットに接続部
を挿通させることによっても、接続部を容易に梁本体に
固定することができ、施工が容易になる。
【0063】また、本発明によれば、上階側の建物ユニ
ットの床梁に接続部を固定するのにボルト、ナット等の
緊締具を用いることにより、溶接接合のような設備や高
度な技術が不要であり、容易でしかも確実な施工が可能
となる。
【0064】さらに、本発明によれば、梁本体を筒状と
することにより、上階側の建物ユニットによる鉛直荷重
に対する剛性ばかりでなく、鉛直荷重によるねじれや地
震等による水平力に対する剛性を確保できる。
【0065】また、本発明によれば、梁本体を板状材で
形成することにより、上階側の建物ユニットや下階側の
建物ユニットの隣接する梁どおしの間隔が狭い場合であ
っても補強梁を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るユニット式建物の一つの実施の
形態を示し、補強梁の上階側の建物ユニット、下階側の
建物ユニットとの関係を説明するための要部断面図であ
る。
【図2】 図1に示す部分を説明するための分解斜視図
である。
【図3】 図1、図2における補強梁を示す概略斜視図
である。
【図4】 上階側の建物ユニットにおいて建物の外側に
位置する床梁に補強梁を付設した構造を説明するための
要部断面図である。
【図5】 本発明の一つの実施の形態でのユニット式建
物の全体を示す概略斜視図である。
【図6】 図5のユニット式建物における一階部分を示
す概略平面図である。
【図7】 本発明に係るユニット式建物に用いる通常の
建物ユニットのフレームを示す斜視図である。
【図8】 図5のユニット式建物における通常の建物ユ
ニットの連結部分を示す分解斜視図である。
【図9】 図6における大空間用建物ユニットを示す分
解斜視図である。
【図10】 図6、図9で説明した大空間用建物ユニッ
トに対応する部分に設ける補強梁を示す概略斜視図であ
る。
【図11】 図10の補強梁を用いた上階側の建物ユニ
ットを下階側の大空間用建物ユニットとの連結部分を示
す分解斜視図である。
【図12】 図11の大空間用建物ユニットの連結方法
を説明するための説明図である。
【図13】 (A),(B),(C)は本発明に係るユ
ニット式建物における補強梁の変形例を説明するための
要部断面図である。
【符号の説明】
10…ユニット式建物、20…下階側(一階側)の建物
ユニット、20A,30A…通常の建物ユニット、20
B…大空間用建物ユニット、20C,20D…角隅部、
30…上階側(2階側)の建物ユニット、41…柱、4
2…天井梁、43…床梁、70…補強梁、71…梁本
体、72…接続部、74…端部接続部、75…スチフナ
ー、81…緊締具。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 四隅の柱とその上下端を連結する床梁お
    よび天井梁とによって箱状に形成された建物ユニットを
    上下に積層することにより構築されているユニット式建
    物において、 上階側に配置される建物ユニットの床梁を補強する補強
    梁を備え、 この補強梁を、前記上階側の建物ユニットに接続させ、
    前記下階側の建物ユニットからは隔離した状態で、前記
    床梁に沿って設けたことを特徴とするユニット式建物。
  2. 【請求項2】 四隅の柱とその上下端を連結する床梁お
    よび天井梁とによって箱状に形成された複数の建物ユニ
    ットを、下階側と上階側とに配列、積層することにより
    構築されているユニット式建物において、 上階側に配置される建物ユニットのうちの少なくとも一
    つに、当該建物ユニットの床梁を補強するために設けら
    れる補強梁を備え、 この補強梁を、前記上階側の建物ユニットに接続させ、
    前記下階側の建物ユニットから隔離した状態で、当該上
    階側の建物ユニットの床梁に沿って設けたことを特徴と
    するユニット式建物。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2記載のユニット
    式建物において、 前記補強梁は、梁本体とこの梁本体に設けられる接続部
    とを備え、 この接続部は、前記上階側の建物ユニットに接続され、
    前記下階側の建物ユニットから隔離されていることを特
    徴とするユニット式建物。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のユニット式建物におい
    て、 前記接続部は、平板状であることを特徴とするユニット
    式建物。
  5. 【請求項5】 請求項3または請求項4記載のユニット
    式建物において、 前記接続部は、前記上階側の建物ユニットと前記下階側
    の建物ユニットとの間に配置され、前記上階側の建物ユ
    ニットに緊締具で固定されていることを特徴とするユニ
    ット式建物。
  6. 【請求項6】 請求項4または請求項5記載のユニット
    式建物において、 前記梁本体は、筒状であって、下面に平板状の前記接続
    部が固定されていることを特徴とするユニット式建物。
  7. 【請求項7】 請求項4または請求項5記載のユニット
    式建物において、 前記梁本体は、平板状であって、下面に平板状の前記接
    続部が固定され、この固定部分に沿って一定間隔置きに
    スチフナーが設けられていることを特徴とするユニット
    式建物。
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