JP2002139218A - 溶融炉の気相部煉瓦落下防止構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、スラグライン煉瓦の一部が損傷し
た時でも、気相部煉瓦が炉本体内へ落下するのを防ぐこ
とにより、炉本体の耐久性向上を図ることが可能な溶融
炉の気相部煉瓦落下防止構造を提供することにある。 【解決手段】 本発明は、炉本体２の内周壁を構成する
スラグライン煉瓦１１の上部に設置される気相部煉瓦１
２の落下防止構造において、炉本体２の外周部に設けら
れる水冷ジャケット１６側にＬ型アンカー１７の基端部
を固着し、炉本体２内のＬ型アンカー１７にて気相部煉
瓦１２を支持することにより、スラグライン煉瓦１１の
一部損傷状態で、気相部煉瓦１２の炉本体２内への落下
を防止している。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、下水汚泥、都市ご
み及び産業廃棄物等の焼却灰を溶融する灰溶融炉など
や、金属溶解用の溶融炉などから出る溶融スラグ及び溶
融メタルを搬送しながら冷却して排出する溶融炉の気相
部煉瓦落下防止構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来から、下水汚泥、都市ごみ及び産業
廃棄物等の焼却灰は、その資源化、減容化及び無害化を
図るために、灰溶融炉によって溶融され、溶融スラグ及
び溶融メタルとして取り出されている。すなわち、この
ような溶融炉を使用して炉本体内で焼却灰を溶融するに
は、ごみ焼却炉から排出された焼却灰を各種搬送手段及
び供給手段等を経て炉本体内に投入し、投入された焼却
灰を高温プラズマで溶融する。溶融スラグ及び溶融メタ
ルは、出滓口から出滓樋を通って排出され、コンベヤを
介してスラグピット及びメタルピットに導かれ、種々の
利用に供されることになる。

【０００３】ところで、上記溶融炉の炉本体の内周壁
は、スラグラインの位置に設けられるスラグライン煉瓦
や、該スラグライン煉瓦の上部に設置される気相部煉瓦
などの耐火物によって構成されている。そして、炉本体
の外周部は、スタンプ及び鉄皮を介して設けられた水冷
ジャケットによって覆われ、この水冷ジャケットの内部
を流通する冷却水によって炉本体の外周部を冷却してい
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た溶融炉の炉本体では、気相部煉瓦がスラグライン煉瓦
の上部に載置されているに過ぎないので、炉本体の内壁
面側に臨むスラグライン煉瓦の一部が溶融スラグなどに
よって損傷すると、その真上の気相部煉瓦が自重にて炉
本体内の溶融スラグ中に落下するおそれがあった。その
結果、炉本体内のスタンプ及び鉄皮が排ガスに晒される
ため、炉本体の外周部が高温となったり、炉本体の内部
が腐食したりして、溶融炉の劣化を招くという不具合が
予想された。

【０００５】本発明はこのような実状に鑑みてなされた
ものであり、その目的は、スラグライン煉瓦の一部が損
傷した時でも、気相部煉瓦が炉本体内へ落下するのを防
ぐことにより、炉本体の耐久性向上を図ることが可能な
溶融炉の気相部煉瓦落下防止構造を提供することにあ
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記従来技術の有する課
題を解決するために、本発明においては、炉本体の内周
壁を構成するスラグライン煉瓦の上部に設置される気相
部煉瓦の落下防止構造において、前記炉本体の外周部に
設けられる冷却ジャケット側に支持部材の基端部を固着
し、前記炉本体内の支持部材にて前記気相部煉瓦を支持
することにより、前記スラグライン煉瓦の一部損傷状態
で、前記気相部煉瓦の前記炉本体内への落下を防止して
いる。

【０００７】また、本発明においては、前記支持部材が
Ｌ型アンカーであり、前記気相部煉瓦の下部には前記Ｌ
型アンカーと係合する係合部が設けられている。さら
に、本発明においては、前記支持部材が前記気相部煉瓦
を載せる支持台であり、該支持台の先端部は前記炉本体
の内壁面とほぼ面一となる位置に配置されている。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施の形態
に基づいて詳細に説明する。ここで、図１は本発明の実
施形態に係る気相部煉瓦落下防止構造が適用された溶融
炉を示す断面図、図２は本実施形態に係る溶融炉の炉本
体を構成する気相部煉瓦と支持部材との関係を示す概念
的斜視図、図３は本実施形態に係るスラグライン煉瓦の
上部に設置された気相部煉瓦を示す断面図である。

【０００９】本実施形態の溶融炉１は、図１に示す如
く、有底円筒状に形成された炉本体２を有しており、該
炉本体２の下部側面には、溶融されたスラグ３、メタル
４及び排ガス５を排出する出滓口６と下り傾斜の出滓樋
７が設けられている。溶融スラグ３は、溶融炉１の炉本
体２から出滓口６を経て溢れ出るオーバフロー方式で排
出されるようになっている。また、炉本体２の上下部中
央には、図示しない直流電源装置に接続される主電極８
及び炉底電極９が配設され、主電極８には図示しない窒
素ガス発生装置から窒素ガスが送給されるように構成さ
れており、投入された焼却灰を高温プラズマ１０で加熱
することによって溶融するようになっている。このた
め、炉本体２の出滓口６と反対側の上部側面には、廃棄
物などの焼却灰を炉本体２内に投入する灰投入口等（図
示せず）が設けられている。

【００１０】上記炉本体２の内周壁は、スラグラインＬ
の高さ位置に設けられるスラグライン煉瓦１１や、該ス
ラグライン煉瓦１１の上部に設置される気相部煉瓦１２
などの耐火物を周方向に沿って隙間なく多数個配置し
（出滓口６を含む）、かつ積み重ねることにより構成さ
れており、上下及び周方向の隣接する煉瓦同士間にはモ
ルタル１３が充填されている。スラグライン煉瓦１１は
溶融スラグ３と接触する箇所に設けられ、気相部煉瓦１
２は排ガス５と接触する箇所に設けられている。そし
て、炉本体２の外周部は、充填材（ＳｉＣ）のスタンプ
１４及び鉄皮１５を介して設けられた水冷ジャケット
（冷却ジャケット）１６によって覆われており、この水
冷ジャケット１６の内部を流通する冷却水によって炉本
体２の外周部が冷却されている。

【００１１】上記気相部煉瓦１２は、図２及び図３に示
す如く、炉本体２内のＬ型アンカー（支持部材）１７に
て支持されることにより、スラグライン煉瓦１１上に設
置固定されている。このＬ型アンカー１７は、スラグラ
イン煉瓦１１の一部損傷状態で、気相部煉瓦１２の炉本
体２内への落下を防止するために設けられ、１本の軸状
部材を用いて加工成形されており、直線状に延びる軸部
１７ａと、該軸部１７ａの先端を上方へ直角に折り曲げ
て形成したフック部１７ｂとから構成されている。Ｌ型
アンカー１７の基端部は、水冷ジャケット１６側の鉄皮
１５に溶接などで固着されており、片持ち梁の状態で、
気相部煉瓦１２の中間部分に達する長さにわたり、炉本
体２内に突出して配置されている。

【００１２】また、気相部煉瓦１２の下部には、Ｌ型ア
ンカー１７と係合する係合部１８がプレス加工の段階で
製作されて設けられている。この係合部１８は、気相部
煉瓦１２の下面に沿って炉本体２の径方向へ延びる溝部
１８ａと、該溝部１８ａの先端に位置し、気相部煉瓦１
２の下面から上方へ延びる縦穴部１８ｂとによって形成
されており、溝部１８ａにはＬ型アンカー１７の軸部１
７ａが挿入され、縦穴部１８ｂにはＬ型アンカー１７の
フック部１７ｂが差し込まれて係止固定されるようにな
っている。

【００１３】このような溶融炉１において、焼却灰を炉
本体２内に投入すると、投入された焼却灰は主電極８及
び炉底電極９による高温プラズマ１０で加熱されて溶融
し、溶融スラグ３及び溶融メタル４となる。これら溶融
スラグ３及び溶融メタル４のうち、溶融スラグ３は、オ
ーバフロー方式で出滓口６から溢れ出て出滓樋７を通り
ながら排出され、図示しない空のモールドなどに落下し
て受け取られ、冷却後に回収されることになる。一方、
炉本体２内で発生した排ガス５は、出滓口６から抜き出
され、図示しない排ガスダクトを経て排ガス処理設備に
導かれることになる。

【００１４】本発明の実施形態に係る溶融炉１の気相部
煉瓦落下防止構造では、炉本体２を構成する気相部煉瓦
１２がスラグライン煉瓦１１の上部に単に載っていると
いうのではなく、基端部が鉄皮１５に固着されたＬ型ア
ンカー１７の軸部１７ａ及びフック部１７ｂを係合部１
８の溝部１８ａ及び縦穴部１８ｂに入れて係合させ、当
該気相部煉瓦１２がＬ型アンカー１７により支持されて
固定されているため、運転中にスラグライン煉瓦１１の
一部が損傷して欠けても、気相部煉瓦１２がスラグライ
ン煉瓦１１より炉本体２内の溶融スラブ３中に落下する
のを防止でき、気相部煉瓦１２の箇所のスタンプ１４及
び鉄皮１５が排ガス５に晒されることは無くなり、炉本
体２の耐久性を向上させることができる。また、本実施
形態のＬ型アンカー１７の基端部は、水冷ジャケット１
６側に固着されているため、当該Ｌ型アンカー１７を介
してスラグライン煉瓦１１を冷却することが可能とな
り、溶融スラグ３に接触して加熱されるスラグライン煉
瓦１１の寿命を延ばすことができる。

【００１５】図４は、本発明の他の実施形態に係る気相
部煉瓦落下防止構造が適用された溶融炉の炉本体の一部
を上から見た概略図、図５は本実施形態に係るスラグラ
イン煉瓦の上部に設置された気相部煉瓦を示す断面図で
ある。本実施形態に係る溶融炉の気相部煉瓦落下防止構
造が上記実施形態の落下防止構造と異なる点は、図４及
び図５に示す如く、支持部材がＬ型アンカーでなく、気
相部煉瓦１２を載せる支持台１９が使用されていること
である。このため、本実施形態の気相部煉瓦１２では、
上記実施形態の係合部が設けられていない。本実施形態
に係る支持台１９は、鉄製の板状体を用いて形成されて
おり、その先端部は、炉本体２の内壁面を構成するスラ
グライン煉瓦１１及び気相部煉瓦１２の前面とほぼ面一
となる位置に配置されている。その他の構成は上記実施
形態とほぼ同様である。

【００１６】本発明の実施形態に係る溶融炉の気相部煉
瓦落下防止構造では、先端部が炉本体２の内壁面とほぼ
面一となる位置に配置された支持台１９によって、気相
部煉瓦１２が支持されており、運転中にスラグライン煉
瓦１１の一部が欠けても、気相部煉瓦１２は支持台１９
に載っていることから、上記実施形態と同様の効果が得
られ、気相部煉瓦１２が炉本体２内の溶融スラグ３中に
落下するのを確実に防止できる。

【００１７】以上、本発明の実施形態につき述べたが、
本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本
発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能
である。例えば、既述の実施形態では、プラズマアーク
式溶融炉１の炉本体２に適用したが、本発明の気相部煉
瓦落下防止構造は、プラズマアーク式溶融炉以外の抵抗
溶融炉、旋回溶融炉、アーク式溶融炉などの溶融炉に適
用しても良い。

【００１８】

【発明の効果】上述の如く、本発明に係る溶融炉の気相
部煉瓦落下防止構造は、スラグライン煉瓦と、このスラ
グライン煉瓦の上部に設置される気相部煉瓦とを備えた
炉本体の外周部に設けられる冷却ジャケット側に支持部
材の基端部を固着し、前記炉本体内の支持部材にて前記
気相部煉瓦を支持することにより、前記スラグライン煉
瓦の一部損傷状態で、前記気相部煉瓦の前記炉本体内へ
の落下を防止しているので、スラグライン煉瓦の一部が
欠けた場合でも、気相部煉瓦が炉本体内へ落下するのを
確実に防止でき、炉本体の耐久性向上によって設備費の
コストダウンを図ることができる。しかも、本発明のス
ラグライン煉瓦は、支持部材を介して冷却ジャケットに
より冷却されるので、その寿命を延ばすこともできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態に係る気相部煉瓦落下防止構
造が適用された溶融炉を示す断面図である。

【図２】図１における溶融炉の炉本体を構成する気相部
煉瓦と支持部材との関係を示す概念的斜視図である。

【図３】本発明の実施形態に係るスラグライン煉瓦の上
部に設置された気相部煉瓦を示す断面図である。

【図４】本発明の他の実施形態に係る気相部煉瓦落下防
止構造が適用された溶融炉の炉本体の一部を上から見た
概略図である。

【図５】上記実施形態に係るスラグライン煉瓦の上部に
設置された気相部煉瓦を示す断面図である。

【符号の説明】

１ 溶融炉 ２ 炉本体 ３ スラグ １１ スラグライン煉瓦 １２ 気相部煉瓦 １４ スタンプ １５ 鉄皮 １６ 水冷ジャケット １７ Ｌ型アンカー １８ 係合部 １９ 支持台

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 炉本体の内周壁を構成するスラグライン
   煉瓦の上部に設置される気相部煉瓦の落下防止構造にお
   いて、前記炉本体の外周部に設けられる冷却ジャケット
   側に支持部材の基端部を固着し、前記炉本体内の支持部
   材にて前記気相部煉瓦を支持することにより、前記スラ
   グライン煉瓦の一部損傷状態で、前記気相部煉瓦の前記
   炉本体内への落下を防止したことを特徴とする溶融炉の
   気相部煉瓦落下防止構造。
2. 【請求項２】 前記支持部材がＬ型アンカーであり、前
   記気相部煉瓦の下部には前記Ｌ型アンカーと係合する係
   合部が設けられていることを特徴とする請求項１に記載
   の溶融炉の気相部煉瓦落下防止構造。
3. 【請求項３】 前記支持部材が前記気相部煉瓦を載せる
   支持台であり、該支持台の先端部は前記炉本体の内壁面
   とほぼ面一となる位置に配置されていることを特徴とす
   る請求項１に記載の溶融炉の気相部煉瓦落下防止構造。