JP2002136600A

JP2002136600A - 医療用長尺体およびその製造方法

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Publication number: JP2002136600A
Application number: JP2000330522A
Authority: JP
Inventors: Jun Iwami; 純岩見; Hidenori Fujimagari; 英紀藤曲
Original assignee: Terumo Corp
Current assignee: Terumo Corp
Priority date: 2000-10-30
Filing date: 2000-10-30
Publication date: 2002-05-14
Also published as: DE60126220T2; US20050080358A1; US20020087098A1; US6811958B2; ATE352341T1; EP1203595B1; EP1203595A1; DE60126220D1

Abstract

(57)【要約】【課題】表面の所望の位置に任意の形状や幅を有するマ
ークを有し、耐溶媒性に優れ、マークの位置を曲面とす
ることができ、使用中にマークがはく離するおそれがな
く、芯線として超弾性合金（Ｎｉ−Ｔｉ合金）等の種々
の材料を用いることができ、マーク部分に隆起や窪みの
ない医療用長尺体の提供。【解決手段】表面の少なくとも一部にレーザ発色剤を含
有する高分子材料により形成される部分を有し、かつ、
該部分にレーザ光照射による該レーザ発色剤の発色によ
り形成される発色部を有することを特徴とする医療用長
尺体。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、表面にマークを有
する医療用長尺体に関する。

【０００２】

【従来の技術】内視鏡を用いた生体管腔等の観察におい
ては、内視鏡を生体管腔等の所定位置まで誘導するため
に、ガイドワイヤが用いられる。このガイドワイヤは、
内視鏡の導入の前に、生体管腔等の所定位置まで挿入さ
れる。この際、ガイドワイヤが単色であると、軸方向に
動いていても、動きが分からないため、ガイドワイヤの
表面に位置等を示すマークが設けられているのが好まし
い。このため、以前より、種々のマークを設ける方法が
提案されている。

【０００３】例えば、特表平９−５０１５９３号公報に
は、テフロン（登録商標）等からなり、着色された複数
の縞を有する中空チューブをガイドワイヤの芯線の上か
ら収縮させて包むことにより付着させる方法が記載され
ている。しかし、この方法では、ガイドワイヤ形成と同
時にマークを設けるため、所望の位置にマークを設ける
ことが困難である。また、マークの形状や幅も全体に画
一的になってしまう。

【０００４】また、実開平４−１０８５５６号公報に
は、マークを印刷により形成する方法が記載されてい
る。しかし、印刷による方法には、インクが耐溶媒性を
持たないため、マーク形成後、ガイドワイヤの表面に親
水性ポリマー等により潤滑コートを行うことが困難であ
り、また、曲面へのマーキングが難しいこと、インクを
乾燥させる時間が必要があること、使用中にインクがは
く離し生体中に流入する可能性があること等の欠点があ
る。

【０００５】実開平６−６３０５４号公報には、上記印
刷による方法の欠点を解消する方法として、マークを印
刷した後に透明なフッ素樹脂のコーティング層を設ける
方法が記載されている。しかし、インクの乾燥工程が必
須となるなど製造工程が複雑なものとなり、また、透明
な樹脂しか用いることができないという設計上の制約も
ある。

【０００６】更に、特公平３−２５９４５号公報には、
スチール製カテーテル誘導ワイヤーのカラーマークを形
成させる部位をテンパーカラー（焼戻し色）が現出する
温度で加熱する方法が記載されている。しかし、この方
法は、スチール製カテーテル誘導ワイヤーにしか用いる
ことができない。また、ガイドワイヤの芯線として一般
的に用いられている超弾性合金（Ｎｉ−Ｔｉ合金）は、
加熱等の熱処理により物性が変化しやすいので、このよ
うな方法は好ましくない。

【０００７】更に、前記公報には、マークをスタンピン
グやレーザ光線照射によって形成する方法も記載されて
いる。しかし、前者の方法には形成されるマーク部分が
隆起するという欠点あり、後者の方法には形成されるマ
ーク部分が窪むという欠点がある。

【０００８】したがって、上記のような諸問題のないガ
イドワイヤが望まれている。

【０００９】また、このような問題は、ガイドワイヤに
限られるものではない。例えば、カテーテルにおいて
も、表面にスケール等の情報（先端からの長さ等）を印
刷すること等が行われており、ガイドワイヤと同様の問
題がある。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、表面の所望
の位置に任意の形状や幅を有するマークを有し、耐溶媒
性に優れ、マークの位置を曲面とすることができ、使用
中にマークがはく離するおそれがなく、芯線として超弾
性合金（Ｎｉ−Ｔｉ合金）等の種々の材料を用いること
ができ、マーク部分に隆起や窪みのない医療用長尺体を
提供することを課題とする。また、本発明は、インクを
乾燥させる時間が必要なく、製造工程が複雑でない、医
療用長尺体の製造方法を提供することを課題とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、表面の
少なくとも一部にレーザ発色剤を含有する高分子材料に
より形成される部分を有し、かつ、該部分にレーザ光照
射による該レーザ発色剤の発色により形成される発色部
を有することを特徴とする医療用長尺体を提供する。

【００１２】特に、先端部と基端部とを有する医療用長
尺体であって、少なくとも該先端部にレーザ発色剤を含
有する高分子材料により形成される高分子材料表面を有
し、かつ、該高分子材料表面にレーザ光照射による該レ
ーザ発色剤の発色により形成される発色部を有すること
を特徴とする医療用長尺体を提供する。

【００１３】前記レーザ発色剤が雲母および／またはそ
の化合物を含有するのが好ましい。

【００１４】前記医療用長尺体がガイドワイヤであるの
は、本発明の好ましい態様の一つである。

【００１５】前記医療用長尺体がカテーテルであるの
は、本発明の好ましい態様の一つである。

【００１６】また、本発明は、医療用長尺体の表面の少
なくとも一部をレーザ発色剤を含有する高分子材料によ
り形成し、該医療用長尺体の表面の発色させる部分にの
みレーザ光を照射することによって該レーザ発色剤を発
色させて、該医療用長尺体の表面に任意の模様を形成す
ることを特徴とする医療用長尺体の製造方法を提供す
る。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。本発明の医療用長尺体は、表面の少なくとも一部に
レーザ発色剤を含有する高分子材料により形成される部
分を有する。本発明に用いられる高分子材料としては、
樹脂、ゴム等が挙げられる。樹脂は、例えば、ポリウレ
タン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロ
ピレン共重合体、フッ素樹脂（例えば、ポリテトラフル
オロエチレン）、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩
化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合
体、シリコーン、ポリカーボネート、スチレン−ブタジ
エン共重合体、ＡＢＳ樹脂、ポリイソプレン、ポリブタ
ジエンが挙げられる。中でも、ポリウレタンが好まし
い。これらは単独で用いてもよく、２種以上を併用して
もよい。

【００１８】本発明に用いられるレーザ発色剤は、レー
ザ光照射により発色を起こすものであれば特に限定され
ないが、雲母および／またはその化合物を含有するもの
であるのが好ましい。雲母および／またはその化合物を
含有するレーザ発色剤を用いると、高分子材料中に少量
含有させただけでも十分な発色を示すこと、発色部分に
隆起や窪みがほとんどないこと、含有させる量が少量で
よいため非発色部の色調変化が抑えられること等の利点
がある。なお、本発明における「発色」には、発色のほ
か、変色、脱色、退色等の知覚しうる色の変化がすべて
含まれる。

【００１９】雲母および／またはその化合物を含有する
レーザ発色剤としては、例えば、シロウンモ系列に属す
る雲母（例えば、シロウンモ、ベニウンモ、ソーダウン
モ、セリサイト（キヌウンモ）、バナジンウンモ、イラ
イト）、クロウンモ系列に属する雲母（例えば、クロウ
ンモ、キンウンモ、テツウンモ、チンワルドウンモ）、
カイリョク石、セラドン石、ムスコバイト、フロゴバイ
ト、スゾライト、パラゴナイト、バーミキュライト等の
天然雲母；合成雲母（具体的には、粒径１５μｍ以下の
メルクジャパン社製のイリオジンＬＳ−８００、粒径２
〜１００μｍのメルクジャパン社製のイリオジンＬＳ−
８０５が挙げられる。）；雲母、酸化チタン、酸化ケイ
素および酸化アンチモンドープ酸化スズからなる組成物
（以下「雲母組成物１」という。具体的には、粒径１５
μｍ以下のメルクジャパン社製のイリオジンＬＳ−８２
０が挙げられる。）；雲母および酸化アンチモンドープ
酸化スズからなる組成物（以下「雲母組成物２」とい
う。具体的には、粒径１５μｍ以下のメルクジャパン社
製のイリオジンＬＳ−８２５が挙げられる。）；雲母お
よび酸化チタンからなる組成物（以下「雲母組成物３」
という。具体的には、粒径２〜２８μｍのメルクジャパ
ン社製のイリオジンＬＳ−８１０が挙げられる。）、雲
母、酸化チタンおよび酸化鉄からなる組成物（以下「雲
母組成物４」という。具体的には、粒径１０〜６０μｍ
のメルクジャパン社製のイリオジンＬＳ−８３０が挙げ
られる。）；雲母および酸化鉄からなる組成物（以下
「雲母組成物５」という。具体的には、粒径１５μｍ以
下のメルクジャパン社製のイリオジンＬＳ−８３５が挙
げられる。）が挙げられる。これらの中でも、雲母組成
物１および２が好ましい。

【００２０】これらのレーザ発色剤は単独で用いてもよ
く、２種以上を併用してもよい。

【００２１】高分子材料中のレーザ発色剤の含有量は、
レーザ発色剤の種類、高分子材料の色調等にもよるが、
一般に、高分子材料成分に対して０．１〜１０質量％で
あるのが好ましく、０．２〜２質量％であるのがより好
ましい。レーザ発色剤の含有量により、レーザ光照射後
の色調を調整することができる。雲母組成物１および／
または２を用いる場合には、特に少量の含有量で高い発
色が得られる。具体的には、高分子材料成分に対して
０．１〜２質量％、より好ましくは０．２〜１質量％で
得ることができる。

【００２２】本発明に用いられる高分子材料には、本発
明の目的を損なわない範囲で、レーザ発色剤以外の添加
剤、例えば、他の充填剤、顔料、染料、老化防止剤、酸
化防止剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、熱安定剤を添加
することができる。

【００２３】本発明の医療用長尺体は、レーザ発色剤を
含有する高分子材料により形成される部分を表面のどこ
かに有するものであればよいが、本発明の医療用長尺体
が先端部と基端部とを有する場合、少なくとも該先端部
の表面に上記部分を有することは、好ましい態様の一つ
である。先端部の表面にマークがあると、医療用長尺体
の操作が容易になり、また、先端からの長さ等の情報を
表示させることができる。即ち、本発明の好ましい態様
の一つとして、先端部と基端部とを有する医療用長尺体
であって、少なくとも該先端部にレーザ発色剤を含有す
る高分子材料により形成される高分子材料表面を有し、
かつ、該高分子材料表面にレーザ光照射による該レーザ
発色剤の発色により形成される発色部を有することを特
徴とする医療用長尺体が挙げられる。

【００２４】本発明においては、医療用長尺体の表面の
全部または医療用長尺体の全体が上述したレーザ発色剤
を含有する高分子材料により形成されていてもよい。医
療用長尺体の表面の一部のみが上述したレーザ発色剤を
含有する高分子材料により形成されている場合には、他
の部分の材質は特に限定されず、医療用長尺体の用途に
応じて適宜選択することができる。

【００２５】また、本発明の医療用長尺体は、生体管腔
内等に対する摺動性を向上するために、表面の上に更
に、低摩擦材料をコーティングしてもよい。これによ
り、摩擦が低減され、その挿入を円滑に行うことがで
き、操作性および安全性が向上する。低摩擦材料として
は、親水性ポリマーが挙げられる。親水性ポリマーとし
ては、天然高分子物質系のもの（例えば、デンプン系、
セルロース系、多糖類系、タンパク質）、合成高分子物
質系（例えば、ＰＶＡ系、ポリエチレンオキサイド系、
アクリル酸系、無水マレイン酸系、フタル酸系、水溶性
ポリエステル、（メタ）アクリルアミド系、ポリアミン
系、水溶性ナイロン系）が挙げられるが、これらの中で
も、特に、セルロース系高分子物質（例えば、ヒドロキ
シプロピルセルロース）、ポリエチレンオキサイド系高
分子物質（例えば、ポリエチレングリコール）、無水マ
レイン酸系高分子物質（例えば、メチルビニルエーテル
無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸共重合
体）、アクリルアミド系高分子物質（例えば、ポリジメ
チルアクリルアミド）、水溶性ナイロン（例えば、東レ
社製のＡＱ−ナイロンＰ−７０）、これらの誘導体が
低い摩擦係数が安定的に得られるので好ましい。表面に
低摩擦材料をコーティングする場合、コーティングを行
っても外部から表面の発色部を観察することができるよ
うに、上記親水性ポリマーの中でも、透明または半透明
のものが用いられる。

【００２６】本発明の医療用長尺体は、レーザ発色剤を
含有する高分子材料により形成される部分に、レーザ光
照射による該レーザ発色剤の発色により形成される発色
部を有する。レーザ光照射に用いられるレーザ光は、レ
ーザ発色剤に応じて選択されるが、例えば、Ｎｄ−ＹＡ
Ｇレーザ光等の近赤外線レーザ光、ＣＯ₂レーザ光等の
近赤外線レーザ光、エキシマレーザ光が挙げられる。Ｎ
ｄ−ＹＡＧレーザ光は、波長１．０６μｍの近赤外線で
あり、ＹＡＧ（イットリウム・アルミニウム・ガーネッ
ト）ロットにアークランプの光を照射することにより得
ることができる。ＣＯ₂レーザ光は、波長１０．６μｍ
の遠赤外線であり、ＣＯ₂混合ガスを封入した管に高周
波（ＲＦ）、高電圧（ＴＥＡ）をあてて励起させること
により得ることができる。

【００２７】上記レーザ光の中でも、レーザ発色剤とし
て、上記雲母（粒径１５μｍ以下のもの、粒径２〜１０
０μｍのもの）、上記雲母組成物３を用いる場合は、Ｃ
Ｏ₂レーザ光が好ましく、上記雲母組成物１、２を用い
る場合は、ＹＡＧレーザ光が好ましく、上記雲母組成物
４、５を用いる場合は、ＣＯ₂レーザ光またはＹＡＧレ
ーザ光が好ましい。

【００２８】レーザ光の照射量は、例えば、Ｎｄ−ＹＡ
Ｇレーザ光の場合、照射元のエネルギー出力として１．
８〜２．０ｋＷであるのが好ましい。

【００２９】レーザは、特に限定されず、従来公知のも
の、例えば、スキャンニングタイプ、ドットタイプ、マ
スクタイプのものを用いることができる。スキャンニン
グタイプのレーザは、発振器から発射されたレーザ光
が、２枚の回転ミラーでＸＹ方向にスキャンニングされ
た後、レンズで集光され、放射されるという方式のレー
ザである。これによれば、医療用長尺体を静止させてレ
ーザ光放射を行うため、任意の形状のマーキングが可能
である。ドットタイプのレーザは、レーザ光を高速回転
する多角形ミラーに同調させて放射するという方式のレ
ーザである。高速でのマーキングが可能である。マスク
タイプのレーザは、レーザ光がパターンを切り抜いたマ
スク（ステンシル）および集光レンズを通過して放射さ
れるという方式のレーザである。高速でのマーキングが
可能であり、細かい模様のマーキングが可能である。こ
れらのレーザは、医療用長尺体の用途等に応じて、適宜
選択することができる。

【００３０】レーザ光照射により、高分子材料に含有さ
れているレーザ発色剤が発色して、発色部が形成され
る。これにより、医療用長尺体の表面にマークを設ける
ことができる。例えば、レーザ光照射により、マークを
全長の所望の箇所に複数個形成することができる。ま
た、マークは、文字、数字、模様、意匠等であり、レー
ザ発色剤を選択することにより白黒またはカラーで形成
することができる。

【００３１】本発明の医療用長尺体の大きさ、形状等
は、用途や目的に応じて適宜決定することができる。

【００３２】本発明の医療用長尺体の用途としては、例
えば、ガイドワイヤ、カテーテルが挙げられる。ガイド
ワイヤおよびカテーテルは曲面を有するため、従来の印
刷によりマークを形成する方法を用いることは困難であ
った。したがって、ガイドワイヤおよびカテーテルは、
それぞれ本発明の医療用長尺体の好ましい態様の一つで
ある。

【００３３】本発明の医療用長尺体がガイドワイヤであ
る場合について説明する。本発明のガイドワイヤは、表
面の少なくとも一部にレーザ発色剤を含有する高分子材
料により形成される部分を有し、かつ、該部分にレーザ
光照射による該レーザ発色剤の発色により形成される発
色部を有するガイドワイヤであれば、特に限定されず、
公知の形状、構造等を採用することができる。

【００３４】本発明のガイドワイヤに用いられる芯線
は、可撓性を有する線材であって、その構成材料は特に
限定されず、各種プラスチックや各種金属を用いること
ができるが、超弾性合金で構成されているのが好まし
い。これにより、ガイドワイヤの径を増大することな
く、トルク伝達性および耐キンク（折れ曲がり）性に優
れたガイドワイヤが得られる。

【００３５】ここで、超弾性合金とは、一般に形状記憶
合金とも言われ、使用温度で超弾性を示す合金を言う。
超弾性とは、使用温度、すなわち少なくとも生体温度
（３７℃付近）において、通常の金属が塑性変形する領
域まで変形（曲げ、引っ張り、圧縮）させても、ほぼ元
の形に回復する性質を言う。超弾性合金の好ましい組成
としては、４９〜５８原子％ＮｉのＴｉ−Ｎｉ合金、３
８．５〜４１．５質量％ＺｎのＣｕ−Ｚｎ合金、１〜１
０質量％ＸのＣｕ−Ｚｎ−Ｘ合金（Ｘは、Ｂｅ、Ｓｉ、
Ｓｎ、ＡｌおよびＧａのうちの少なくとも１種）、３６
〜３８原子％ＡｌのＮｉ−Ａｌ合金等の超弾性体が挙げ
られる。中でも、前記Ｔｉ−Ｎｉ合金が好ましい。

【００３６】本発明のガイドワイヤに用いられる芯線の
直径は、特に限定されないが、０．２５〜１．５７ｍｍ
であるのが好ましく、０．４〜０．９７ｍｍであるのが
より好ましい。また、芯線の先端部には、付き当て抵
抗、曲げ抵抗等の特性に応じたテーパ加工が施され、そ
の外径が先端に向かって漸減しているのが好ましい。こ
れにより、ガイドワイヤを先端側から生体管腔等へ挿入
し、目的部位（病変部）へ到達させる際に、生体管腔の
湾曲や分岐等の複雑な管腔形状に柔軟に対応し、ガイド
ワイヤの挿入、抜去操作を容易かつ安全に行うことがで
きる。

【００３７】本発明のガイドワイヤは、上述したような
芯線の表面の少なくとも一部をレーザ発色剤を含有する
高分子材料で被覆して得られる。被覆層の厚さは、特に
限定されないが、平均０．０５〜０．３ｍｍであるのが
好ましく、平均０．１〜０．２ｍｍであるのがより好ま
しい。また、被覆層の厚さは、被覆層全体に渡って均一
でも、部位により異なっていてもよい。例えば、ガイド
ワイヤの先端部付近において、被覆層の厚さを厚くする
構成とすることができる。なお、被覆層は、１層のもの
に限らず、複数の層を積層したものであってもよい。

【００３８】本発明の医療用長尺体がカテーテルである
場合について説明する。本発明のカテーテルは、表面の
少なくとも一部にレーザ発色剤を含有する高分子材料に
より形成される部分を有し、かつ、該部分にレーザ光照
射による該レーザ発色剤の発色により形成される発色部
を有するカテーテルであれば、特に限定されず、公知の
形状、構造等を採用することができる。

【００３９】本発明のカテーテルは、表面の少なくとも
一部にレーザ発色剤を含有する高分子材料により形成さ
れる部分を有していれば、他の部分は、例えば、ポリ塩
化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、シリコ
ーンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のような可
撓性を有する材料で構成されていてもよい。レーザ発色
剤を含有する高分子材料により形成される部分に用いら
れる高分子材料と他の部分に用いられる高分子材料と
は、同一であっても、異なっていてもよい。カテーテル
の先端部は、上記材料やカテーテル本体の径等の適宜選
定により、後述するワイヤにより牽引された際、容易に
屈曲しうる程度の柔軟性を有している。

【００４０】また、カテーテル本体の先端部を除く部分
に、例えば硬質ポリウレタン、ポリイミド等の高分子材
料やコイルばね等の金属よりなる補強部材を埋設または
被覆することにより、カテーテル本体の先端部を除く部
分の剛性を先端部に比べて高めることもできる。

【００４１】なお、カテーテルは、通常、Ｘ線透視下で
生体内に挿入、留置して使用されるので、カテーテル本
体にＸ線造影性を付与しておくのが好ましく、すなわ
ち、カテーテル本体の構成材料中にＸ線造影剤を含有せ
しめるのが好ましい。Ｘ線造影剤としては、例えば、白
金、銀、タングステン、硫酸バリウム、酸化ビスマス等
の金属または金属化合物が挙げられる。

【００４２】カテーテル本体には、以下に述べるような
用途および機能の異なる種々のルーメンが形成されてい
てもよい。例えば、血管や管状器官のような体腔内を観
察する観察器具（ファイバースコープ）としての光ファ
イバー束が収納されているルーメンが挙げられる。な
お、光ファイバー束は、例えば、血管や管状器官内壁へ
のレーザ光の照射等の医療処置にも使用することができ
る。また、カテーテル本体の先端部へ開放し、その開口
より体腔内等に流体を注入し、または体腔内等から流体
を吸引することができるルーメンが挙げられる。更に、
カテーテル本体の先端部を湾曲させるためにカテーテル
本体の先端を牽引するワイヤを収納するためのルーメン
が挙げられる。なお、カテーテル本体の先端部付近であ
って、先端部の湾曲点より基端側には、作動流体の注入
により拡張し得るバルーンのような拡張体が１個または
２個以上設置されていてもよい。この場合、カテーテル
本体には、拡張体に作動流体を送り込むために、拡張体
に連通するルーメンが形成される。

【００４３】本発明のカテーテルの形状、構造等は、カ
テーテルの目的により異なる。例えば、硬膜外用カテー
テルの場合、外径は０．６〜１．５ｍｍであるのが好ま
しく、０．８〜１．２ｍｍであるのがより好ましく、内
径は０．３〜０．９ｍｍであるのが好ましく、０．４〜
０．６ｍｍであるのがより好ましい。また、血管用カテ
ーテルの場合、外径は０．８〜２．５ｍｍであるのが好
ましく、内径は０．３〜２．０ｍｍであるのが好まし
い。また、造影用カテーテルの場合、外径は２．７ｍｍ
以下であるのが好ましく、２．０ｍｍ以下であるのがよ
り好ましく、内径は０．９〜１．８ｍｍであるのが好ま
しく、１．０〜１．５ｍｍであるのがより好ましい。こ
の範囲の内径および外径とすることにより、柔軟性、湾
曲に対する追随性が十分に発揮される。また、本発明の
カテーテルは、一重管構造としてもよいし、二重管構造
としてもよい。

【００４４】本発明の医療用長尺体の製造方法として
は、医療用長尺体の表面の少なくとも一部をレーザ発色
剤を含有する高分子材料により形成し、該医療用長尺体
の表面の発色させる部分にのみレーザ光を照射すること
によって該レーザ発色剤を発色させて、該医療用長尺体
の表面に任意の模様を形成するのが好ましい。以下、本
発明の医療用長尺体がガイドワイヤである場合を例に挙
げて、具体的に説明する。なお、本発明の医療用長尺体
の製造方法は、ガイドワイヤに限定して用いられるもの
ではない。

【００４５】（１）初めに、高分子材料にレーザ発色剤
および、必要に応じて、その他の添加剤を添加し、混練
して均一に分散させる。

【００４６】（２）つぎに、得られたレーザ発色剤を含
有する高分子材料を用いて芯線（例えば、Ｎｉ−Ｔｉ合
金製）を被覆する。被覆方法は、特に限定されず、例え
ば、押出成形、射出成形、インサート射出成形、プレス
成形を用いることができる。

【００４７】（３）その後、レーザ発色剤を含有する高
分子材料で形成された表面に、レーザ発色剤に応じたレ
ーザ光を照射し、レーザ発色剤を発色させてマークを形
成する。図１は、本発明の医療用長尺体の製造における
レーザ光照射方法の一例を示す概念図である。図１にお
いて、ガイドワイヤ１は、２基のレーザ２の間を矢印の
向きに移動し、レーザ光３を照射されている。図１に示
すように、ガイドワイヤ１を移動させながらレーザ光３
を照射すると、ガイドワイヤの表面にはレーザ発色剤が
均一に存在しているので、照射方向、照射時間等を調整
することにより、任意の場所、任意の形状にマーキング
を行うことが可能となる。例えば、文字、複雑な図形等
の模様も容易に形成することができる。図２に、具体的
なマーキングの例を四例示す（（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）
および（Ｄ））。発色部４および非発色部５により模様
が形成されている。また、図１に示すように、レーザ２
を２基用いて２方向からレーザ光３を照射すると、ガイ
ドワイヤの全周にマーキングを行うことが可能となる。
なお、レーザ光照射方法は、これに特に限定されるもの
ではない。

【００４８】（４）更に、必要に応じて、表面に親水性
ポリマーをコーティングする。コーティングは、従来公
知の方法を用いることができる。なお、インクを用いて
印刷した場合と異なり、レーザ発色剤により形成された
発色部は耐溶媒性に優れるので、親水性ポリマーのコー
ティングに用いられる溶媒によりマークが消えたりする
ことがない。また、インクを用いて印刷する方法で必要
であったインク乾燥のための時間は不要であり、レーザ
光照射後、すぐに親水性ポリマーのコーティングを行う
ことができる。

【００４９】また、上記方法においては、レーザ光照射
後に親水性ポリマーのコーティングを行っているが、親
水性ポリマーのコーティング後にレーザ光照射を行うこ
ともできる。従来、手技中に、医療用長尺体にマーキン
グを行うことは不可能であった。しかし、医療用長尺体
の用途、目的によっては、手技中にマーキングを行い、
病変位置を特定すること等が望まれる。本発明の医療用
長尺体において、レーザ光照射前に親水性ポリマーのコ
ーティングを行っておけば、手技中にレーザ光を照射し
てマーキングを行うことも可能となり、極めて有用であ
る。

【００５０】このようにして得られる本発明の医療用長
尺体は、表面の少なくとも一部にマークが設けられてい
るため、軸方向の動きが分かり、また、スケール等の情
報を表示することができるので、有用である。また、上
述したように、使用中にマークがはく離するおそれがな
い。更に、本発明の医療用長尺体は、形成されるマーク
部分に隆起や窪みが存在せず、平滑な表面を有する。

【００５１】

【実施例】以下に実施例を示して本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらに限られるものではない。（実施例１）初めに、ポリウレタン樹脂（エーテル系）
９９．８ｇに、雲母組成物１の０．２ｇおよび青顔料３
ｇを添加し、混練して均一に分散させた。つぎに、得ら
れたレーザ発色剤を含有する樹脂を用いて、芯線（Ｎｉ
−Ｔｉ合金製、直径０．６ｍｍ）を外径０．８ｍｍとな
るように、押出成形により被覆し、ガイドワイヤを得
た。その後、レーザ発色剤を含有する樹脂で形成された
表面に、図１に示すレーザ光照射方法により、ＹＡＧレ
ーザ光を照射し、マークを形成した。ガイドワイヤの移
動速度は３００ｍｍ／ｍｉｎ、照射元のエネルギー出力
は１８００Ｗであった。更に、表面に無水マレイン酸エ
チルエステル共重合体をディッピングによりコーティン
グし、乾燥して、本発明の医療用長尺体（ガイドワイ
ヤ）を得た。

【００５２】（実施例２）レーザ光照射後に無水マレイ
ン酸エチルエステル共重合体のコーティングを行う代わ
りに、無水マレイン酸エチルエステル共重合体のコーテ
ィング後にレーザ光照射を行った以外は、実施例１と同
様の方法により、本発明の医療用長尺体（ガイドワイ
ヤ）を得た。

【００５３】実施例１および２で得られた本発明のガイ
ドワイヤは、所望の位置に所望の形状のマークを有する
ものであり、挿入中等に軸方向の動きが分かるものであ
った。また、使用中にマークがはく離しなかった。ま
た、本発明のガイドワイヤは、平滑な表面（円柱状表
面）を有しており、マーク部分に隆起や窪みが存在しな
かった。また、インクを用いて印刷した場合と異なり、
親水性ポリマーのコーティングに用いられる溶媒により
マークが消えることはなかった。また、レーザ光照射
後、すぐに親水性ポリマーのコーティングを行うことが
できた。

【００５４】また、親水性ポリマーのコーティング後に
レーザ光照射を行うことにより（実施例２）、手技中に
医療用長尺体のマーキングを行うことが可能となった。

【００５５】

【発明の効果】本発明の医療用長尺体は、表面の少なく
とも一部にマークが設けられているため、軸方向の動き
が分かり、また、スケール等の情報を表示することがで
きるので、有用である。また、本発明の医療用長尺体に
は、従来解決されていなかった諸問題がない。本発明の
医療用長尺体の製造方法によれば、本発明の医療用長尺
体を好適に製造することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の医療用長尺体であるガイドワイヤの
製造におけるレーザ光照射方法の一例を示す概念図であ
る。

【図２】（Ａ），（Ｂ），（Ｃ）および（Ｄ）は、そ
れぞれガイドワイヤの表面の模様の具体例を示す。

【符号の説明】

１医療用長尺体（ガイドワイヤ）２レーザ３レーザ光４発色部５非発色部

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】表面の少なくとも一部にレーザ発色剤を含
有する高分子材料により形成される部分を有し、かつ、
該部分にレーザ光照射による該レーザ発色剤の発色によ
り形成される発色部を有することを特徴とする医療用長
尺体。
【請求項２】先端部と基端部とを有する医療用長尺体で
あって、少なくとも該先端部にレーザ発色剤を含有する
高分子材料により形成される高分子材料表面を有し、か
つ、該高分子材料表面にレーザ光照射による該レーザ発
色剤の発色により形成される発色部を有することを特徴
とする医療用長尺体。
【請求項３】前記レーザ発色剤が雲母および／またはそ
の化合物を含有する請求項１または２に記載の医療用長
尺体。
【請求項４】ガイドワイヤである請求項１〜３のいずれ
かに記載の医療用長尺体。
【請求項５】カテーテルである請求項１〜３のいずれか
に記載の医療用長尺体。
【請求項６】医療用長尺体の表面の少なくとも一部をレ
ーザ発色剤を含有する高分子材料により形成し、該医療
用長尺体の表面の発色させる部分にのみレーザ光を照射
することによって該レーザ発色剤を発色させて、該医療
用長尺体の表面に任意の模様を形成することを特徴とす
る医療用長尺体の製造方法。