JP2001226913A - 橋梁架設装置及び橋梁架設方法 - Google Patents

橋梁架設装置及び橋梁架設方法

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JP2001226913A JP2000036243A JP2000036243A JP2001226913A JP 2001226913 A JP2001226913 A JP 2001226913A JP 2000036243 A JP2000036243 A JP 2000036243A JP 2000036243 A JP2000036243 A JP 2000036243A JP 2001226913 A JP2001226913 A JP 2001226913A
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秀人 森田
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和直 横田
Kiyoshi Naganuma
清 長沼
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 張出架設工法に使用する軽量化、小型化を図
った橋梁架設装置を提供する。 【課題手段】 橋梁上を移動可能であるトラス構造の移
動式作業台車2と、センターホールジャッキ40並びに
揚重物の吊上治具90からなる、前記移動式作業台車に
支持されている揚重装置4と、から構成される橋梁架設
装置1であって、前記移動式作業台車及び揚重装置は、
揚重物の吊上時に作動する前記橋梁の橋長方向又は橋幅
方向の少なくとも一方向への位置調節手段を有するとと
もに、前記吊上治具は、前記揚重物の吊りビーム91
と、前記吊りビームに取り付けられている吊り部材93
とからなり、前記吊りビームは、前記吊り部材と前記揚
重物の相対的な位置関係を調整するための油圧シリンダ
97,98を有することを特徴とする橋梁架設装置とし
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、張出架設工法に使
用する橋梁架設装置及び当該橋梁架設装置を用いた橋梁
の架設方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、橋梁の架設方法として、橋脚
を中心として両側へ釣り合いを保ちながら、工場または
ヤードで予め製作されたプレキャストセグメント(以
下、「PCセグメント」という)を架設する張出架設工
法が用いられている。当該工法は架設装置の違いにより
各種の方法が用いられているが、この工法の一例とし
て、橋脚又は既設の橋桁上に配設された張出型橋梁架設
装置(通称「エレクションノーズ」)によりPCセグメ
ントを吊り上げ、橋脚からの斜吊材により支持しなが
ら、当該PCセグメントを順次接合していく工法が存在
している。
【0003】前記工法に用いられるPCセグメントを吊
り上げる張出型橋梁架設装置は、移動式作業台車と、当
該移動式作業台車に支持されている揚重手段とから構成
されていた。従来の移動式作業台車は、梁材に移動用の
車輪を設けたものであり、その重量で揚重物を支持して
いた。また、揚重手段は、吊り材であるワイヤーロープ
をウインチにより巻張する構造であるとともに、吊り上
げ精度を上げるために橋桁近傍でPCセグメントを受け
替えるためのシリンダ型の油圧ジャッキを備えるもので
あることが一般的であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、移動式作業台
車は重量が重いため、張出型橋梁架設装置を頑強な構造
としなければならなかった。また、ワイヤーロープの引
張荷重には限界があり、数百トンのセグメントを吊り上
げるためには、多数台の揚重装置が必要となっていた。
また、ウインチを用いる場合には、ウインチドラム、シ
ーブブロック等の大重量の設備を用いる必要があるとと
もに、荷重の受け替え用の油圧ジャッキも配置しなけれ
ばならなかった。そのため、張出型橋梁架設装置を頑強
な構造としなければならず装置が大型化するとともに、
張出型橋梁架設装置の取り扱いが煩雑となり、作業時
間、工事費用が増大していた。さらに、張出型橋梁架設
装置を設置する橋桁の設計強度を過大に設定しなければ
ならないことからも、工事費用が割高となっていた。ま
た、従来から、揚重手段に油圧ジャッキとステップロッ
ドを用いる橋型クレーンは存在しているが、引張荷重お
よび作業性等の点から、張出型橋梁架設装置には用いら
れていなかった。
【0005】さらに、張出型橋梁架設装置を用いた張出
架設工法は、橋脚を中心として、張出型橋梁架設装置を
張り出し架設部の両端に取り付け、両端の重量バランス
を保持しながらPCセグメントを吊り上げ、所定の位置
に架設することによりその作業を行っている。このと
き、最初に、橋脚上に張出型橋梁架設装置を設置して、
順次左右両方向の既設の橋桁上に当該張出型橋梁架設装
置を移動させながら、以後の作業を行うことになる。
【0006】しかし、橋脚上部は2基の張出型橋梁架設
装置を設置するために必要な広さには構築されていな
い。そのため、従来の方法では、左右いずれか一方向の
PCセグメントを架設するための張出型橋梁架設装置を
先行して橋脚上部に設置し、1個又は2個のPCセグメ
ントを架設した後に、当該架設したPCセグメント上に
張出型橋梁架設装置を移動させ、橋脚上部に設置空間を
確保した後に、他方向のPCセグメントを架設するため
の張出型橋梁架設装置を設置するという作業を行ってい
た。
【0007】したがって、従来の方法によると、橋脚を
中心に先行して架設された橋桁側にPCセグメントの荷
重が作用するため、橋脚に大きな回転モーメントが作用
して、大きな変形を生じてしまう。このとき、ゴム支承
を有する橋桁の場合には、当該ゴム支承も大きく変形し
てしまうため、柱頭部に設置する基準PCセグメントが
所定の方向に接合することができない場合が生じてしま
う。橋桁は、基準PCセグメントに順次接合されていく
ため、当該基準PCセグメントの接合位置がずれてしま
うと接合位置を修正することが不可能になってしまうこ
とになる。そのため、橋脚の設計強度を過大に設定する
必要があり、工事費用が割高となっていた。
【0008】本発明は、前記の種々の問題点を解決する
ためになされたものであって、張出架設工法に使用する
軽量化、小型化を図った橋梁架設装置を提供するととも
に、当該橋梁架設装置を用いた効率的な橋梁の架設方法
を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、請求項1記載の本発明は、橋梁上を移動可能である
トラス構造の移動式作業台車と、PC鋼より線及び前記
PC鋼より線を吊り上げるセンターホールジャッキ並び
に揚重物の吊上治具からなる、前記移動式作業台車に支
持されている揚重手段と、から構成される橋梁架設装置
であって、前記移動式作業台車及び揚重手段は、揚重物
の吊上時に作動する前記橋梁の橋長方向又は橋幅方向の
少なくとも一方向への位置調節手段を有するとともに、
前記吊上治具は、前記揚重物の支持部材と、前記支持部
材に取り付けられている吊り部材とからなり、前記支持
部材は、前記吊り部材と前記揚重物の相対的な位置関係
を調整するための位置調整手段を有することを特徴とす
る橋梁架設装置を提供するものである。
【0010】したがって、本発明の橋梁架設装置によれ
ば、トラス構造の移動式作業台車を採用することによ
り、移動式作業台車の軽量化を図ることができる。ま
た、揚重手段をセンターホールジャッキとPC鋼より線
により構成したため、橋梁架設装置を格段に軽量化する
ことができる。また、移動式作業台車及び揚重手段は、
揚重物の吊上時に作動する前記橋梁の橋長方向及び橋幅
方向の少なくとも一方向への位置調節手段を有すること
から、揚重物の接合位置の調節を容易に行うことができ
る。さらに、揚重装置が、吊り部材と揚重物の相対的な
位置関係を調整するための位置調整手段を有する吊り治
具を備えていることから、規格の異なる分割製作された
橋桁の吊り点を容易に調節可能となるため、吊上作業を
効率的に行うことができる。
【0011】また、請求項2記載の本発明は、以下の各
工程を含むことを特徴とする橋梁架設方法を提供するも
のである。 (1)橋桁の張り出し方向に向けて、橋脚上に、一対の
請求項1に記載の橋梁架設装置を設置し、前記移動式作
業台車又は前記揚重装置を前記張り出し方向に移動さ
せ、前記橋脚と間隔を保った状態で、前記各々の揚重装
置により分割製作された橋桁をバランスを保持しながら
吊り上げ、前記移動式作業台車又は前記揚重装置を前記
張り出し方向と反対方向に移動させ、前記吊り上げられ
た橋桁を橋脚に接合する第1工程。 (2)前記一対の橋梁架設装置を、それぞれ既設の橋桁
上の両端部に移動させ、前記移動式作業台車又は前記揚
重装置を前記張り出し方向に移動させ、前記橋脚と間隔
を保った状態で、前記各々の揚重装置により分割製作さ
れた橋桁をバランスを保持しながら吊り上げ、前記移動
式作業台車又は前記揚重装置を前記張り出し方向と反対
方向に移動させ、前記吊り上げられた橋桁を既設の橋桁
に接合する第2工程。 (3)前記第2工程を繰り返すことにより、分割製作さ
れた橋桁を既設の橋桁に順次接合する第3工程。
【0012】したがって、本発明によれば、軽量化およ
び小型化を図った請求項1記載の橋梁架設装置を用いる
ことにより、橋脚上に2基設置することができる橋梁架
設装置を構成可能となり、当該橋梁架設装置の移動、固
定等の取り扱いを容易として、作業時間、工事費用等を
大幅に削減することができるとともに、作業の安全性を
も確保することが可能な橋梁架設方法とすることができ
る。なお、本発明はゴム支承を備える橋脚を有する橋梁
の架設に特に有効である。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示す実施の
形態に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、分割
製作された橋桁として予め工場またはヤード等において
製造されたPCセグメント9を用いて橋梁の架設を行う
こととする。なお、前記PCセグメント9は、マッチキ
ャスト方式により製造することにより、後述する接合作
業を容易に行うことができる。
【0014】(1)橋梁架設装置1の構成 図1及び図2に示すように、本発明の橋梁架設装置1
は、移動式作業台車2と、当該移動式作業台車2に支持
されている揚重装置4(揚重手段)とから構成されてい
る。
【0015】○移動式作業台車2 移動式作業台車2は、トラス構造を成しており、それぞ
れ、上弦材21、下弦材22、垂直材23、斜材24,
25,26、上横構27、下横構28から構成されてい
る。また、上横構27の先線端の橋幅方向には、クロス
ビーム29が横設されている。さらに、垂直材23の後
面における下部位置には、下弦材22と平行に移動式作
業台車2の橋長方向位置の移動を行うためのシリンダタ
イプの油圧ジャッキ(図示せず)が取り付けられてお
り、PCセグメント9(揚重物)の吊上時に作動可能と
なっている。
【0016】なお、下弦材22の所定箇所には複数の車
輪(図示せず)が枢設されており、図示しない移動手段
によって、橋脚6および既設の橋桁7上に敷設されてい
るレール8上を移動可能となっている。さらに、前記移
動式作業台車2は、揚重作業時には、前記下弦材22の
橋脚6側の端部において、アンカー30により橋脚6又
は橋桁7に固定されている。
【0017】○揚重装置4 図2に示すように、揚重装置4は、吊り材であるPC鋼
より線5と、当該PC鋼より線5を吊り上げる油圧作動
の揚重機であるセンターホールジャッキ40と、吊上治
具90と、から構成されている。 [センターホールジャッキ40]センターホールジャッ
キ40は、クロスビーム29の中央部上に、ベースプレ
ート67及びジャッキチェア68を介して固設されてお
り、その詳細は以下の通りである。
【0018】センターホールジャッキ40は、ジャッキ
本体41、ジャッキラム45、上部定着機構50と下部
定着機構60及び油圧シリンダ機構(図示せず)を主要
部として構成されている。ジャッキ本体41は、外郭部
であるアウターシリンダ42と、その内部に同心状に設
けられているインナーシリンダ43とから形成されてい
る。当該アウターシリンダ42とインナーシリンダ43
の間に形成されるシリンダ室44には、ジャッキラム4
5が、当該シリンダ室44内の壁面に対して上下に摺動
自在に設けられている。当該ジャッキラム45は、油圧
シリンダ機構の操作により、シリンダ室44の送り側4
4a及び戻し側44bを加圧、減圧することで、上下に
移動可能となっている。
【0019】PC鋼より線5は、インナーシリンダ43
内部を挿通して設けられており、ジャッキ本体41の上
部および下部位置において、上部定着機構50および下
部定着機構60により保持可能とされている。
【0020】上部定着機構50は、上部グリッパー51
と上部グリッパープレート52とプーリングヘッド54
とから形成されている。プーリングヘッド54は、円錐
形状の定着孔54aが多数穿設された多孔円盤形状の部
材である。当該プーリングヘッド54は、ジャッキラム
45の上部に固定されており、複数のPC鋼より線5が
前記定着孔54a内に挿通されている。また、上部グリ
ッパー51は、定着孔54aに嵌合する円錐形状のくさ
び部材であり、中心部に複数本のPC鋼より線5が挿通
されている。上部グリッパプレート52は、上部グリッ
パー51を押圧、開放するための部材であり、PC鋼よ
り線5を挿通するための貫通孔が多数穿設されている。
【0021】ここで、上部グリッパープレート52が上
部グリッパー51を押圧すると、当該上部グリッパー5
1が定着孔54a内に嵌入して、PC鋼より線5を保持
することになる。また、上部グリッパープレート52が
上方に移動して、上部グリッパー51の押圧が解除され
ると、当該上部グリッパー51が定着孔54a内から抜
出して、PC鋼より線5の保持状態が解かれることにな
る。後述するように、このとき下部グリッパー61はP
C鋼より線5を保持しているため、センターホールジャ
ッキ40に作用する荷重を双方の定着機構で受け替え可
能となっている。
【0022】なお、ジャッキチェア68の内側部に設け
られている下部定着機構60は、上部定着機構50と略
同一の構成になっており、プーリングヘッド54に対応
するアンカーヘッド64が、ベースプレート67上に固
設されている点に関してのみ異なっている。
【0023】また、揚重装置4は、シリンダタイプの油
圧ジャッキにより構成されている図示しない横方向スラ
イド機構により、橋長と直交する方向(図1の白抜き矢
印方向)に移動可能となっている。さらに、揚重装置4
とクロスビーム29は一体となって、シリンダタイプの
油圧ジャッキにより構成されている図示しない橋長方向
スライド機構により、橋長方向(図2の白抜き矢印方
向)に移動可能となっている。
【0024】[索条巻取装置80]図3に示すように、
センターホールジャッキ40に挿通されているPC鋼よ
り線5は、索条巻取装置80に捲回されている。ここ
で、索条巻取装置80は、ウインチ81(捲回手段)及
び多孔部材82を主要部として構成されている。ウイン
チ81はクロスビーム29上に配設されており、複数の
PC鋼より線5の先端部が固着されている。当該ウイン
チ81の真上部には、複数のPC鋼より線5を挿通し、
列状に整列させるための多孔部材82が設けられてい
る。前記多孔部材82は、使用するPC鋼より線5の数
に相当する管材からなる管部82aを一列に並設して一
体的に形成した部材である。この多孔部材82は、ウイ
ンチ81及びセンターホールジャッキ40の上部に架設
されている支持架台85に取付部材86を介して取り付
けられている。
【0025】また、支持架台85の上部には、ガイド部
材87が設けられている。このガイド部材87は側面視
で半円形状の部材であり、その外周に沿ってPC鋼より
線5を整列させ、当該PC鋼より線5の向きを上方から
下方へ変えて、ウインチ81に導くための部材である。
このガイド部材87の外周には、PC鋼より線5の巻き
取り及び送り出しを円滑に行うために、複数の回転体8
8が枢設されている。
【0026】PC鋼より線5は、上部グリッパープレー
ト52の近傍における上部位置では、PC鋼より線5
は、平面視で略円形形状となるように束ねられている。
このPC鋼より線5は、ガイド部材87に枢設されてい
る回転体88の周面に沿って敷設されており、多孔部材
82を構成する管部82aを通り、ウインチ81のドラ
ムに捲回されている。そのため、上部グリッパープレー
ト52の近傍において、平面視で略円形形状となるよう
に束ねられている複数のPC鋼より線5は、ガイド部材
87を介し、多孔部材82に至る間において、徐々に一
列に整列させられ、列状になった状態でウインチ81の
ドラムに捲回されることになっている。
【0027】[吊上治具90]図1、図2及び図4に示
すように、本発明の吊上治具90は、PCセグメント9
の吊りビーム91(支持部材)と、当該吊りビーム91
に取り付けられている吊り部材93とから構成されてい
る。吊りビーム91における橋幅方向の左右対称位置に
は、PC鋼より線繋止部材92が取り付けられており、
当該部位にPC鋼より線5が繋止されている。
【0028】吊りビーム91の左右両端部(左右方向は
図1参照)であり、かつ、当該吊りビーム91のそれぞ
れ前後(前後方向は図2参照)には、吊り部材93が設
けられている。この前後の吊り部材93は、門型部材9
4を介して吊りビーム91に支持されている。当該吊り
部材93には、その両端部にPCセグメント9を係止す
るための吊り金具95が付設されている。また、吊り金
具95は、1箇所において4つの係止部材96を介し、
取付部材99に取り付けられている。この係止部材96
は、取付部材99に穿設されている孔部(図示せず)と
比較して大径に形成されている円柱部材であり、下部方
向への移動のみが拘束され上部方向への移動が可能とな
っている。
【0029】前記吊りビーム91は、PCセグメント9
の重心に対応して、吊り金具95とPCセグメント9の
相対的な位置関係を調整するための橋長方向油圧シリン
ダ97及び橋幅方向油圧シリンダ98(位置調整手段)
が付設されている。橋長方向油圧シリンダ97は、吊り
ビーム91の側面部と門型部材94の垂直部94aとの
間に配設されており、当該橋長方向油圧シリンダ97の
シリンダロッドの伸縮に応じて吊り部材93の位置を橋
長方向に調節可能となっている。また、橋幅方向油圧シ
リンダ98は、吊りビーム91上において、PC鋼より
線繋止部材92と門型部材94との間に配設されてお
り、当該橋幅方向油圧シリンダ98のシリンダロッドの
伸縮に応じて吊り部材93の位置を橋幅方向に調節可能
となっている。
【0030】[橋梁架設装置1を用いたPCセグメント
9の吊り上げ方法]移動手段(図示ぜず)により、橋梁
架設装置1を所定位置に移動させた後に、当該橋梁架設
装置1を用いてPCセグメント9を吊り上げる方法につ
いて説明する。
【0031】最初に、PC鋼より線5を下部グリッパー
61で定着させている状態から、油圧シリンダ機構を作
動させてシリンダ室44を加圧し、ジャッキラム45を
上昇させる。すると、上部グリッパー51が自重により
下方に押し下げられ、プーリングヘッド54の定着孔5
4aに嵌入する。これにより、上部位置でPC鋼より線
5が定着されることになり、徐々に当該PC鋼より線5
が上方に引き上げられる。PC鋼より線5が引き上げら
れると、下部グリッパー61は、PC鋼より線5の摩擦
力により持ち上げられて開放され、当該PC鋼より線5
は、下部グリッパー61の内側を通過しながら引き上げ
られる。
【0032】ジャッキラム45が、ストロークの上限に
達した後、シリンダ室44を減圧し、ジャッキラム45
の下降を開始させると、下部グリッパー61が自重によ
り下方に押し下げられ、アンカーヘッド64の定着孔6
4aに自重により嵌入し、下部位置においてPC鋼より
線5が定着される。これにより、上部位置から下部位置
に、PC鋼より線5の定着位置が移動することになる。
【0033】ジャッキラム45が下端まで降下した後、
シリンダ室44を加圧し、ジャッキラム45を再び上昇
させると、前記と同様の作用により、徐々にPC鋼より
線5が引き上げられる。以降、当該作業の繰り返しによ
り、PC鋼より線5を断続的に引き上げる(巻き上げ
る)ことで、PC鋼より線5に繋止されているPCセグ
メント9を所定の高さにまで吊り上げることができる。
【0034】(2)橋梁架設方法 本発明の橋梁架設装置1を用いた橋梁架設方法の一例に
ついて説明する。なお、橋軸方向に設置されている橋梁
架設装置を区別するために、橋脚を挟んで、左側に設置
されている装置を左側橋梁架設装置L1、右側に設置さ
れている装置を右側橋梁架設装置R1とする。
【0035】まず、ここで使用する一体型橋梁架設装置
10について簡単に説明する。図5に示すように、一体
型橋梁架設装置10は、2基の前記橋梁架設装置L1,
R1を連結した装置である。2基の橋梁架設装置L1,
R1の進行方向は、互いに離間する方向となる向きに配
置されており、移動式作業台車L2,R2の下弦材22
を共通とする(共通下弦材22’)とともに、各々の上
弦材L21,R21を連結材70で連結した一体の装置
として形成されている。
【0036】左橋梁架設装置L1は、連結材70が設け
られている以外は、前記橋梁架設装置1の構成と同一で
ある。右橋梁架設装置R1は、前記橋梁架設装置1にお
いて、下弦材22を左橋梁架設装置L1と共通としてい
るとともに、斜材24が設けられていない点が異なって
いる。前記左右の橋梁架設装置L1,R1は、共通下弦
材22’および連結材70の結合を解除することで、簡
単に分離することができるように構成されている。
【0037】ここで、図1に示すように、橋梁架設装置
1は、橋幅方向の左右両方向において、橋幅方向に2基
並設して設けられており、2基一対の橋梁架設装置1が
協動してPCセグメント9を吊り上げる作業を行う。本
実施形態では、橋軸方向に、互いに離間する向きに計4
台の橋梁架設装置が設置されている。なお、吊り上げ、
接合を行うPCセグメント9は、予め必要数が用意され
ており、運搬船(図示せず)により接合される橋桁の架
設位置まで運搬されているとともに、PC鋼より線5を
繋止するための吊り金具95が所定位置に付設されてい
る。
【0038】さらに、本発明の橋梁架設方法では、橋脚
6を中心として、左右両方向にPCセグメントを接合し
ていくことになるが、左右方向に接合されるPCセグメ
ントを区別するために、橋脚6の左側のn番目に設けら
れるPCセグメントを左nセグメント、橋脚の右側のn
番目に設けられるPCセグメントを右nセグメントと、
便宜的に称することとする。
【0039】本発明の橋梁架設方法は、以下の第1工程
から第3工程までの各工程を含むことを特徴としてい
る。以下に、各工程について詳細に説明する。
【0040】1)第1工程 図5に示すように、本工程は、分割製作されたPCセグ
メント9の張り出し方向に向けて、橋脚6上に、一対の
橋梁架設装置L1,R1(一体型橋梁架設装置10)を
設置し、前記移動式作業台車L2,R2又は前記揚重装
置L4,R4を前記張り出し方向に移動させ、前記橋脚
6と間隔を保った状態で、前記各々の揚重装置L4,R
4によりPCセグメントL9,R9をバランスを保持し
ながら吊り上げ、前記移動式作業台車L2,R2又は前
記揚重装置L4,R4を前記張り出し方向と反対方向に
移動させ、吊り上げられたPCセグメントL9,R9を
橋脚6に接合する工程である。
【0041】まず、橋脚6上にレール8を敷設し、当該
レール8上に一対の橋梁架設装置L1,R1を、PCセ
グメント9の張り出し方向に向けて設置する。
【0042】次に、油圧ジャッキ(図示せず)を作動さ
せることにより移動式作業台車L2,R2を前方に移動
させ、橋脚6と間隔を保ちながら、それぞれの揚重装置
L4,R4により左右のバランスを保持しながら、左1
セグメントL9及び右1セグメントR9を吊り上げる。
接合高さまで左右1セグメントL9,R9を吊り上げた
後に、油圧ジャッキを作動させることにより、移動式作
業台車L2,R2を後方(橋脚6方向)に移動させ、略
同時に橋脚6に左右1セグメントL9,R9を接合す
る。なお、PCセグメント9の吊上時においては、橋長
方向油圧シリンダ97及び橋幅方向油圧シリンダ98を
作動させることにより、その重心位置に対応して吊り点
を調節することができる。
【0043】接合作業は、PCセグメントL9,R9を
架設位置まで吊り上げ、PCセグメントL9,R9のマ
ッチングを行い、接着剤で圧着した後、プレストレス用
ケーブルをPCセグメントL9,R9内に設けたシース
内に挿入し、緊張力を付与しながらグラウト材を注入し
て1体づつ架設接合することになる。前記のようにPC
セグメントL9,R9は、マッチキャスト方式により製
造されているため、揚重装置L4,R4の位置を調節す
ることにより、容易に接合することができる。
【0044】なお、移動式作業台車L2,R2又は揚重
装置L4,R4の位置の調節は、作業現場の状況等によ
り、一方又は両方について行うものである。また、前記
の吊り上げられたPCセグメントL9,R9を略同時に
橋脚6に接合するとは、吊り上げられたPCセグメント
L9,R9の重量のバランスを保つことにより、橋脚6
に過大な回転モーメントが生じることがないように接合
するものである。このことは、第2工程及び第3工程に
おいても同様である。
【0045】2)第2工程 図6(a)に示すように、本工程は、橋梁架設装置L
1,R1を、それぞれ既設の橋桁7上の両端部に移動さ
せ、移動式作業台車L2,R2又は揚重装置L4,R4
を前記張り出し方向に移動させた状態で、前記各々の揚
重装置L4,R4によりPCセグメントL9’,R9’
をバランスを保持しながら吊り上げ、前記移動式作業台
車L2,R2又は前記揚重装置L4,R4を前記張り出
し方向と反対方向に移動させ、前記吊り上げられたPC
セグメントL9’,R9’を既設の橋桁7に接合する作
業を行う工程である。
【0046】本工程では、まず、第1工程で接合した左
右1セグメントL9,R9上に、橋脚6上に敷設された
レール8と連接するようにレール8’を敷設した後、橋
脚6に接合された既設の左右1セグメントL9,R9上
の両端部に、それぞれ左右橋梁架設装置L1,R1を分
離する作業を以下の手順で行うことになる。
【0047】[1]接合されたPCセグメントL9,R
9上に敷設されているレール8を使用し、移動手段(図
示せず)を用いて、一体型橋梁架設装置10を右側PC
セグメントR9上に移動させる。 [2]右橋梁架設装置R1の移動式作業台車R2におけ
る垂直材R23の下部と右側PCセグメントR9の間に
スチールブロック72を介挿し、アンカー(図示せず)
により右側PCセグメントR9と垂直材R23を固定す
る。加えて、右橋梁架設装置R1における垂直材R23
と上弦材R21における揚重装置R1の下部位置の間に
仮ステー73を取り付け、右橋梁架設装置R1を支持す
る。
【0048】[3]共通下弦材22’および連結材70
を右橋梁架設装置R1の垂直材R23から分離し、左橋
梁架設装置L1を移動手段(図示せず)により、左側P
CセグメントL9上に移動させる(図6(a))。
【0049】[4]右橋梁架設装置R1の垂直材R23
の下部に、新たな下弦材R22を取り付けるとともに、
斜材R25を設け、仮ステー73を取り外すことによ
り、左右同一の橋梁架設装置とする(図6(b))。
【0050】左右橋梁架設装置L1,R1を分離した後
に、第1工程と同様に、油圧ジャッキを作動させること
により移動式作業台車L2,R2を前方に移動させて橋
脚6と間隔を保ち、それぞれの揚重装置L4,R4によ
り左右のバランスを保持しながら、左2セグメントL
9’及び右2セグメントR9’を吊り上げる。接合高さ
まで左右2セグメントL9’,R9’を吊り上げた後
に、油圧ジャッキを作動させることにより、移動式作業
台車L2,R2を後方(橋脚方向)に移動させ、略同時
に橋脚6に左右セグメントL9’,R9’を接合する作
業を行う。
【0051】3)第3工程 本工程は、前記第2工程を繰り返すことにより、PCセ
グメントを既設の橋桁7に順次接合する工程であり、既
設の橋桁7に前記吊り上げたPCセグメントを略同時に
接合する作業を複数回繰り返すことにより、PCセグメ
ントを順次接合していくことになる。
【0052】なお、橋梁架設装置L1,R1の移動およ
びPCセグメントの接合方法は、基本的には第1工程と
同様であるが、架設された橋桁が所定長さに達した後
は、橋脚6の頂部から緊張された支持ケーブルにより、
PCセグメントを支持する工程を追加することになる。
【0053】以上、本発明について、好適な実施形態に
ついての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限
られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱し
ない範囲で適宜設計変更が可能である。特に、移動式作
業台車は、橋幅方向に移動可能となるように、油圧ジャ
ッキを設けるものであってもよいことは勿論である。ま
た、前記橋梁架設方法で使用する橋梁架設装置は、2台
の橋梁架設装置の移動式作業台車を一体の装置として形
成することも可能である。
【0054】
【発明の効果】本発明の橋梁架設装置によれば、移動式
作業台車をトラス構造にしたこと、及び、揚重手段をセ
ンターホールジャッキとPC鋼より線により構成したこ
とにより、橋梁架設装置を格段に軽量化することができ
る。橋梁架設装置は、橋桁先端に設置してその作業を行
うため、その重量は、橋桁の強度に大きな影響を与える
ことになる。したがって、橋梁架設装置を軽量化するこ
とにより、橋脚および橋桁に作用する応力を軽減できる
ため、作業の安全性を図ることができる。また、橋梁架
設装置の軽量化により、当該橋梁架設装置のアップリフ
トが減少することで、橋梁架設装置を支持するアンカー
鋼材の径および本数を減少することができるとともに、
橋梁架設装置の移動、固定等の取り扱いが容易となり、
作業時間、工事費用等を大幅に削減することができる。
【0055】さらに、本発明の橋梁架設装置および橋梁
の架設方法によれば、橋脚を中心に左右同時に分割製作
された橋桁を架設することができる。そのため、橋脚に
過大な回転モーメントを与えることなく、橋桁の架設を
行うことができることから、橋脚及び支承部の変形が少
なくなる。また、橋脚に大きな曲げ応力が作用すること
を想定して橋脚の設計を行う必要がなく、費用の低減を
図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の橋梁架設装置を示す正面図である。
【図2】本発明の橋梁架設装置を示す側面図である。
【図3】本発明の橋梁架設装置における揚重装置を示す
図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は
要部を拡大した断面図である。
【図4】本発明の橋梁架設装置における吊上治具を示す
平面図である。
【図5】本発明の橋梁架設方法(第1工程)を示す側面
図である。
【図6】(a),(b)ともに本発明の橋梁架設方法
(第2工程)を示す側面図である。
【符号の説明】
1 橋梁架設装置 2 移動式作業台車 4 揚重装置(揚重手段) 5 PC鋼より線(吊り材) 6 橋脚 7 橋桁 8,8’ レール 9 PCセグメント(揚重物) 10 一体型橋梁架設装置 21 上弦材 22 下弦材 22’ 共通下弦材 23 垂直材 24,25,26 斜材 27 上横構 28 下横構 29 クロスビーム 30 アンカー 40 センターホールジャッキ 41 ジャッキ本体 42 アウターシリンダ 43 インナーシリンダ 44 シリンダ室 44a 送り側 44b 戻し側 45 ジャッキラム 50 上部定着機構 51 上部グリッパー 52 上部グリッパープレート 54 プーリングヘッド 54a 定着孔 60 下部定着機構 61 下部グリッパー 64 アンカーヘッド 67 ベースプレート 68 ジャッキチェア 70 連結材 72 スチールブロック 73 仮ステー 80 索条巻取装置 81 ウインチ(捲回手段) 82 多孔部材 82a 管部 85 支持架台 86 取付部材 87 ガイド部材 88 回転体 90 吊上治具 91 吊りビーム(支持部材) 92 PC鋼より線繋止部材 93 吊り部材 94 門型部材 95 吊り金具 96 係止部材 99 取付部材 97 橋長方向油圧シリンダ(位置調整手段) 98 橋幅方向油圧シリンダ(位置調整手段)
フロントページの続き (72)発明者 堀口 政一 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 大成 建設株式会社内 (72)発明者 浦崎 宣行 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 大成 建設株式会社内 (72)発明者 森田 秀人 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 大成 建設株式会社内 (72)発明者 横田 和直 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 大成 建設株式会社内 (72)発明者 長沼 清 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 大成 建設株式会社内 (72)発明者 多田 勝 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 大成 建設株式会社内 Fターム(参考) 2D059 CC06 DD03

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 橋梁上を移動可能であるトラス構造の移
    動式作業台車と、 PC鋼より線及び前記PC鋼より線を吊り上げるセンタ
    ーホールジャッキ並びに揚重物の吊上治具からなる、前
    記移動式作業台車に支持されている揚重手段と、から構
    成される橋梁架設装置であって、 前記移動式作業台車及び揚重手段は、揚重物の吊上時に
    作動する前記橋梁の橋長方向又は橋幅方向の少なくとも
    一方向への位置調節手段を有するとともに、 前記吊上治具は、前記揚重物の支持部材と、前記支持部
    材に取り付けられている吊り部材とからなり、前記支持
    部材は、前記吊り部材と前記揚重物の相対的な位置関係
    を調整するための位置調整手段を有することを特徴とす
    る橋梁架設装置。
  2. 【請求項2】 以下の各工程を含むことを特徴とする橋
    梁架設方法。 (1)橋桁の張り出し方向に向けて、橋脚上に、一対の
    請求項1に記載の橋梁架設装置を設置し、 前記移動式作業台車又は前記揚重装置を前記張り出し方
    向に移動させ、前記橋脚と間隔を保った状態で、前記各
    々の揚重装置により分割製作された橋桁をバランスを保
    持しながら吊り上げ、 前記移動式作業台車又は前記揚重装置を前記張り出し方
    向と反対方向に移動させ、前記吊り上げられた橋桁を橋
    脚に接合する第1工程。 (2)前記一対の橋梁架設装置を、それぞれ既設の橋桁
    上の両端部に移動させた後、前記移動式作業台車又は前
    記揚重装置を前記張り出し方向に移動させ、 前記橋脚と間隔を保った状態で、前記各々の揚重装置に
    より分割製作された橋桁をバランスを保持しながら吊り
    上げ、 前記移動式作業台車又は前記揚重装置を前記張り出し方
    向と反対方向に移動させ、前記吊り上げられた橋桁を既
    設の橋桁に接合する第2工程。 (3)前記第2工程を繰り返すことにより、分割製作さ
    れた橋桁を既設の橋桁に順次接合する第3工程。
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