JP2001119214A - 誘電体共振器装置及びその導電性ケーシングの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 製造が容易で、温度依存性が小さく、しかも
軽量な誘電体共振器装置及び、その導電性ケーシングの
製造方法を提供する。 【解決手段】 導電性ケーシング４を、ケースを展開し
た形状の複数の面部を連接してなる合成樹脂製展開板２
０の、その少なくとも一面に導電層２４を形成すると共
に、各面部間に折曲溝２５を形成し、該展開板２０の面
部を折曲溝２５で折り曲げて構成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、高周波帯域で濾波
器，発振器等として用いられる誘電体共振器装置に関
し、詳しくは誘電体共振器を内蔵する導電性ケーシング
及びその導電性ケーシングの製造方法に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】誘電体磁器材料で形成された誘電体共振
器を、導電性ケーシング内に支持してなる誘電体共振器
装置は種々提案されている。この誘電体共振器装置は、
構造が簡単で、低廉であるため、マイクロ波発振器等と
して好適に用いられる。

【０００３】ここで、マイクロ波発振器として用いられ
る誘電体共振器装置は、共振周波数が１０〜１２ＧＨｚ
と、極めて高く、誘電体共振器が支持される内部空隙を
シールドすることが不可欠であり、このため、導電性ケ
ーシングが用いられる。この導電性ケーシングの材料と
しては、アルミニウム，鉄，銅，インバー等の金属ケー
スが使用されている。その他、導電性ケーシングとし
て、セラミック材料に電極膜を形成したものも用いられ
ているが、このセラミック材料を用いた場合には、誘電
体共振器とほぼ同一の線膨張係数を有するセラミックケ
ースを形成して、該ケース内に誘電体共振器を結合する
方法と、誘電体共振器とセラミックケースを同一の誘電
体セラミック材料を用いて一体形成する方法とがある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】かかる導電性ケーシン
グにあって、金属ケースを用いた場合には、金属板を板
間のシールド加工を施しながら組み付ける必要があり、
製造が面倒であり、セラミックケースの場合には、成形
が面倒であり、特に、同一の誘電体セラミック材料を用
いて一体形成する場合には、共振周波数ごとに成形用金
型を用意しなければならず、製造コストがかかった。

【０００５】また、いずれも、誘電体共振器と電磁的に
結合して信号の入出力を行う端子を保持するための接続
孔等の形成加工を要し、ケースを構成した後に、各面毎
に加工する必要があり、加工性が悪く、手作業に頼らざ
るを得なかった。

【０００６】さらには、金属ケースはその熱膨張により
同調軸の位置が変化して、温度により共振周波数が変化
し易く、温度依存性が大きいという問題もあった。

【０００７】金属ケースを用いた場合，セラミックケー
スの場合のいずれも大重量であり、取扱が面倒であっ
た。

【０００８】本発明は、製造が容易で、温度依存性が小
さく、しかも軽量な誘電体共振器装置及び、その導電性
ケーシングの製造方法を提供することを目的とするもの
である。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、誘電体磁器材
料で形成された誘電体共振器を、導電性ケーシング内に
支持してなる誘電体共振器装置において、導電性ケーシ
ングが、複数の面部を連接してなり、かつその少なくと
も一面に導電層が形成されてなる合成樹脂製展開板を、
各面部間に形成された折曲溝で折り曲げてケース状に組
み付けてなるものであることを特徴とする誘電体共振器
装置である。

【００１０】また、誘電体磁器材料で形成された誘電体
共振器を内部に備える誘電体共振器装置の導電性ケーシ
ングの製造方法であって、ケースを展開した形状の複数
の面部を連接してなる合成樹脂製展開板の、その少なく
とも一面に導電層を形成すると共に、各面部間に折曲溝
を形成し、該展開板の面部を折曲溝で折り曲げて、導電
性ケーシングを構成したことを特徴とする誘電体共振器
装置の導電性ケーシングの製造方法である。

【００１１】かかる構成にあって、複数の面部を連接し
た所要形状となるように、板材の打ち抜き，又は切断加
工を施して、合成樹脂製展開板を形成する。合成樹脂材
料としては、ガラス入りエポキシ樹脂等の耐熱性材料が
好適となる。また展開板は、その少なくとも一面に銅メ
ッキ等により、導電層が形成されている。この導電層を
形成された合成樹脂板は市販のものを用いることができ
る。尚、板材を各面部を備える所定形状に形成してか
ら、導電層を形成しても良い。

【００１２】次に、この展開板の面部間に折曲溝を形成
する。さらに、この展開板には、誘電体共振器と電磁的
に結合して信号の入出力を行う端子を保持する接続孔
や、同調軸を昇降可能に保持する螺子孔等、種々の形成
加工が施されるが、これを組み付け前の板状の段階で施
すことが可能となり、この場合には量産加工性が良い。
尚、ケース状に組みつけてから、形成加工を施しても、
本発明の範囲内である、

【００１３】次に、折曲溝で折り込んで、各面部の端縁
を当接し、これにより内部が密閉されたケースを構成す
る。このケース内には、折り込み前、又は一部の面部を
折り込む前に組みつけることにより、誘電体共振器が支
持される。

【００１４】

【発明の実施の形態】添付図面に従って本発明の実施例
を説明する。図１は、本発明に係る誘電体共振器装置１
の一例を示すものである。この誘電体共振器装置１は、
本発明に係る直方体状の導電性ケーシング４の底面に、
支持台５を介して誘電体共振器２が保持されてなる。こ
の導電性ケーシング４は方体状だけでなく、円筒状等種
々のケース構造が提案される。

【００１５】ここで、誘電体共振器２はTiO_２系やBaO-T
iO_２系等の誘電体磁器材料でプレス成形等により、円板
状又は筒状に形成してなり、その中心に貫通孔３が形成
される。誘電体共振器２の外周形状は、円形のほか正方
形としても良い。そして誘電体共振器２は絶縁性支持台
５に固結される。

【００１６】この支持台５は、アルミナ、フォルステラ
イト等により一体形成してなるものであり、内孔５ａか
ら導電性ケーシング４の底面部２１に形成された透孔２
６を挿入した固定螺子６と、これに螺合するナット７と
によって固着される。さらに支持台５の上縁には、ガラ
スグレース系接着剤やシリカ系無機接着剤等からなる耐
熱性接着剤によって誘電体共振器２が接着される。

【００１７】さらには誘電体共振器２上で、導電性ケー
シング４の天面部２３には同調軸１０が配設される。こ
の同調軸１０は、図３で明らかなように、周面に螺子が
形成され、天面部２３に形成された螺子孔２７に螺合
し、その高さ位置により、共振周波数を調整する。

【００１８】さらに、導電性ケーシング４の対向する二
側面には、誘電体共振器２と磁界結合するループ状端子
３０，３０が支持され、この端子３０，３０と誘電体共
振器２との磁界結合度を適正に決定することにより、誘
電体共振器装置の共振周波数で発振動作し、発振出力が
出力側端子３０から取り出される。

【００１９】次に本発明の要部につき説明する。導電性
ケーシング４は合成樹脂製展開板２０を組み付けること
により構成される。この合成樹脂製展開板２０は、ガラ
ス入りエポキシ樹脂等の耐熱性材料からなる。また、こ
の展開板２０は直方体状の導電性ケーシング４を構成し
得るように、図２で示すように、ほぼ正方形状の底面部
２１の四周側に連続して側面部２２ａ，２２ｂ，２２
ｃ，２２ｄが形成され、さらに一側の側面部２２ａに天
面部２３が連成されてなる。この面部の形状及び数は、
導電性ケーシング４の形状により定められる。この導電
性ケーシング４は種々の多面体のほか、円筒状等のケー
ス構造が提案される。寸法例として、底面部２１及び天
面部２３は一辺が２４ｍｍ，側面部２２ａ，２２ｂ，２
２ｃ，２２ｄは高さ８ｍｍである。この形状は単に具体
的一例に過ぎない。

【００２０】そして各面部２１，２２ａ，２２ｂ，２２
ｃ，２２ｄ，２３間には、図３で拡大して示すように、
外面側でＶ字の切り込み条からなる折曲溝２５が形成さ
れ、該折曲溝２５を介して各面部は直角状に折曲可能と
なっている。

【００２１】この展開板２０は内面側に銅メッキからな
る導電層２４（例えば３４μｍ厚）が形成されている。
また底面部２１には支持台５を螺合するための透孔２６
が中心に形成され、同じく天面部２３には同調軸を螺合
する透孔２７が形成されている。さらに対向する側面部
２２ａ，２２ｃには、誘電体共振器２と磁界結合するル
ープ状端子３０，３０を保持するための取付け孔３１が
形成されている。また該取付け孔３１の周囲にはビスの
挿通孔３２が形成されている。

【００２２】この展開板２０は、導電層２４を形成され
た合成樹脂板は市販されており、この場合には、これを
所要形状に切り抜きまたは打ち抜き加工を施して形成す
ることができる。さらには、無垢の合成樹脂板を所要形
状に切り抜きまたは打ち抜き加工を施してから、その一
面又は両面に導電層２４を形成しても良い。そして、各
面部に、透孔２６，２７及び取付け孔３１，３２が形成
され、さらに、上述した折曲溝２５が、導電層２４の形
成面と反対側の面（外面）に刻まれる。この各加工も、
板状のものを穿孔等を施すものであるから、扱いが簡単
であり、しかも合成樹脂製であるから加工性が良く、量
産に適している。

【００２３】このようにして形成された展開板２０は、
各折曲溝２５を介して折曲され、内部が密閉化されたケ
ース状となる。尚、各面部の形状は、開放端が他の重な
り端と密に接触し得るように、展開板２０の肉厚分だけ
長くする等の配慮がなされる。

【００２４】而して、底面部２１に支持台５を固定螺子
６とナット７により固着し、さらに該支持台５上に誘電
体共振器２を支持した後、導電性ケーシング４の各折曲
溝２５で折り込んで、ケース状とする。さらに、透孔２
７に同調軸１０を螺合し、取付け孔３１，３２にループ
状端子３０，３０を取付ける。

【００２５】上述の構成にあって、導電層２４は展開板
２０の両面に形成しても良い。また展開板２０の外面側
に形成しても良い。かかる導電層２４により、導電性ケ
ーシング４の内部空隙が、電磁シールドされる。

【００２６】かかる構成にあって、展開板２０は合成樹
脂製であるから、金属板に比して発熱の問題があるが、
低出力の用途においては問題が無く、または、合成樹脂
材料をポリイミド樹脂等の耐熱性材料のものを選択する
ことにより対応可能となる。

【００２７】そして、導電性ケーシング４は合成樹脂製
であるため、線膨張係数が小さく、導電性ケーシング４
の熱変形が抑制される。このため、ケーシングの熱変形
を原因とする同調軸１０の誘電体共振器２に対する位置
変化が可及的に低減し、共振周波数の温度依存性が小さ
くなる。

【００２８】また、上述したように、折曲溝２５により
容易に各面部を折り込むことができ、組付けが容易であ
り、しかも、組みつけ前の板形状の展開板２０の段階
で、加工することができるから、合成樹脂製であること
と相俟って、加工性が良く、量産に適する。従って、低
廉に生産可能となる。さらに、合成樹脂製導電性ケーシ
ング４は、金属や、セラミックに比して軽量であり、取
扱が容易となる。

【００２９】

【発明の効果】本発明は、上述したように、導電性ケー
シング４を、ケースを展開した形状の複数の面部を連接
してなる合成樹脂製展開板２０の、その少なくとも一面
に導電層２４を形成すると共に、各面部間に折曲溝２５
を形成し、該展開板２０の面部を折曲溝２５で折り曲げ
て構成したものである。このため、展開板２０は合成樹
脂製であるから、線膨張係数が小さく、このため導電性
ケーシング４の熱変形による共振周波数の温度依存性が
小さくなり、安定した共振周波数を得ることができる。
さらに、金属や、セラミックに比して軽量であり、取扱
が容易となる。また上述したように、折曲溝２５により
容易に各面部を折り込むことができ組付けが容易であ
り、更には、板形状の展開板２０を加工すれば良いか
ら、合成樹脂製であることと相俟って、加工性が良く、
量産に適する。従って、低廉に生産可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る誘電体共振器装置１の縦断側面図
である。

【図２】展開板２０の平面図である。

【図３】折曲溝２５を示す、展開板２０の一部拡大断面
図である。

【符号の説明】

１ 誘電体共振器装置 ２ 誘電体共振器 ３ 貫通孔 ４ 導電性ケーシング ２０ 展開板 ２１ 底面部 ２２ａ，２２ｂ，２２ｃ，２２ｄ 側面部 ２３ 天面部 ２４ 導電層 ２５ 折曲溝

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】誘電体磁器材料で形成された誘電体共振器
   を、導電性ケーシング内に支持してなる誘電体共振器装
   置において、 導電性ケーシングが、複数の面部を連接してなり、かつ
   その少なくとも一面に導電層が形成されてなる合成樹脂
   製展開板を、各面部間に形成された折曲溝で折り曲げて
   ケース状に組み付けてなるものであることを特徴とする
   誘電体共振器装置。
2. 【請求項２】誘電体磁器材料で形成された誘電体共振器
   を内部に備える誘電体共振器装置の導電性ケーシングの
   製造方法であって、 ケースを展開した形状の複数の面部を連接してなる合成
   樹脂製展開板の、その少なくとも一面に導電層を形成す
   ると共に、各面部間に折曲溝を形成し、該展開板の面部
   を折曲溝で折り曲げて、導電性ケーシングを構成するよ
   うにしたことを特徴とする誘電体共振器装置の導電性ケ
   ーシングの製造方法。