JP2001013259A - 遺伝的アルゴリズムを用いた海底堆積層パラメータ推定装置 - Google Patents

遺伝的アルゴリズムを用いた海底堆積層パラメータ推定装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】海底堆積層の特性を示すパラメータの値を、実
測データから安定して推定することのできる海底堆積層
パラメータ推定装置を提供する。 【解決手段】観測特性値演算部2は、対象である海底堆
積層について観測したデータから、前記海底堆積層を伝
搬する弾性波の特性値C0を求める。遺伝子操作部10
は、海底堆積層の物理的特性を示す複数のパラメータの
候補値を組み合わせたものを個体として、この個体に遺
伝的アルゴリズムにより遺伝的操作を施して次世代の個
体に進化させる。推定特性値演算部4は、前記個体につ
いて、理論的に弾性波の特性値Cを推定する。適応度演
算部3は、特性値Cと特性値C0との一致の度合いを示
す適応度を求め、最も適応度の高い個体を構成する候補
値が、パラメータの値の解であるとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海底の堆積層の物
理的特性を示すパラメータを推定するための装置に係わ
り、特に浅海域の堆積層における音響伝搬特性を評価す
るための装置および鉱物資源探索のための装置に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】海底の堆積層の物理的特性を示すパラメ
ータの値を推定する方法として、これまで、インバージ
ョン法、重回帰分析法、最尤推定法などが知られてい
る。これらについては、例えば、R.D.Stoll 他2名 : Es
timation of Shear Wave Velocity in Shallow Marine
Sediments : IEEE J.Oce.Eng.,Vol.19,No.1,Jan.,(199
4)や、木村、他1名 : 地盤表面におけるレーリー波の速
度分散特性、日本音響学会講演論文集、Mar.,1163-1164
(1996) や、A.Dziewonski 他2名 : A Technique for An
alysis of Transient Seismic Signal, Bulletin of S.
S.A.,Feb.,427-444(1969) 等に記載されている。これら
の推定方法は、いずれも海底堆積層について実測した測
定結果に基づいて数値解析を行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】海底堆積層について実
測することによって得られる測定データは、量的に不十
分でかつノイズを多く含んでいる。このため、従来の数
値解析方法によって、これらの測定データに基づいて海
底堆積層の特性パラメータ値の推定を行った場合、解が
局所的最小値に陥ったり、あるいは発散したりすること
がある。また、従来の数値解析方法において、分散特性
の基本モードだけでなく高次モードも利用して、解析モ
デルをより現実に近い精緻なものにしようとすると、変
数の数が増加し、その結果解析の安定性が欠如したり計
算量が著しく増加してしまう。さらに、実際の海底堆積
層の測定データは、含まれる誤差の統計的性質の把握が
困難な場合もある。このような場合には、上記従来技術
の数値解析方法では、問題を適切に表し、かつ、解を求
めることが可能であるような数学モデルを構築すること
自体が困難である。
【0004】本発明は、海底堆積層の特性を示すパラメ
ータの値を、実測データから安定して推定することので
きる海底堆積層パラメータ推定装置を提供することを目
的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によれば、以下のような海底堆積層パラメー
タ推定装置が提供される。
【0006】すなわち、対象である海底堆積層について
観測したデータから、前記海底堆積層を伝搬する弾性波
の特性値を求める観測特性値演算部と、前記海底堆積層
の物理的特性を示す複数のパラメータの候補値を遺伝子
とし、この候補値を組み合わせたものを個体として、該
個体を予め定めた個体数だけ発生させ、この個体に遺伝
的アルゴリズムにより遺伝的操作を施して次世代の個体
に進化させる遺伝子操作部と、前記個体について、理論
的に前記弾性波の特性値を推定する推定特性値演算部
と、前記推定特性値演算部が前記個体について推定した
前記弾性波の特性値と、前記観測特性値演算部が求めた
前記弾性波の特性値との一致の度合いを示す適応度を求
め、最も適応度の高い個体を構成する前記候補値が、前
記パラメータの値の解であるとする適応度演算部とを有
することを特徴とする海底堆積層パラメータ推定装置で
ある。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態の海
底堆積層パラメータ推定装置について図面を用いて説明
する。
【0008】本実施の形態の海底堆積層パラメータ推定
装置は、実測データから分散特性を求めるともに、遺伝
的アルゴリズムにより生成させたパラメータ候補値(パ
ラメータセット)から理論的に分散特性を算出する。そ
して、これら2つの分散特性を比較することにより、最
適なパラメータセットを求め、これを最適解もしくは実
用上満足できる準最適解とするものである。まず、本実
施の形態の海底堆積層パラメータ推定装置の構成につい
て、図1および図2を用いて説明する。
【0009】本実施の形態の海底堆積層パラメータ推定
装置は、起振器101と受振器1と解析処理器11とを
有する。解析処理器11は、観測船102に搭載され
る。起振器101と受振器1は、図1のように観測船1
02から海中におろされ海底面104の互いに離れた位
置に設置される。解析処理器11は、図2のように、観
測分散特性演算部2と、推定分散特性演算部4と、適応
度演算部3と、遺伝的アルゴリズム装置10と、設定値
受付部106とを有する。
【0010】観測分散特性演算部2は、受振器1の測定
結果を解析することにより、海底堆積層105を伝搬す
る弾性波の位相速度cと周波数fとの関係を示す分散特
性を演算する動作を行う部分である。
【0011】推定分散特性演算部4は、遺伝的アルゴリ
ズム装置10が発生させた海底堆積層の物理的特性を示
す個体(パラメータ候補値)に基づいて、海底堆積層1
05の弾性波の分散特性を計算により求める部分であ
る。
【0012】適応度演算部3は、観測分散特性演算部2
が演算した分散特性と、推定分散特性演算部4が求めた
分散特性とを比較し、上記個体の適応度を計算する。
【0013】遺伝的アルゴリズム装置10は、初期集団
発生部8、集団プール部5、遺伝子操作部6、最終世代
プール部7を備え、海底堆積層の物理的特性を示す各種
パラメータの候補値の組み合わせ(個体)を発生させ、
それらに選択、交叉、突然変異等の遺伝的操作を施しな
がら世代交代させ、適応度の高い個体に進化させていく
装置である。
【0014】設定値受付部106は、遺伝的アルゴリズ
ム装置10における処理に必要な海底堆積層の層数n、
世代数、集団サイズ、交叉係数p、突然変異率a、クリ
ープ度b、エリート数等の設定をオペレータから受け付
ける部分である。
【0015】解析値表示器9は、最終世代の最も適応度
の高い個体を、最適解として表示する。また、解析値表
示器9には、各世代の進化の状況等を示すデータも表示
される。
【0016】なお、遺伝的アルゴリズム装置10の各部
の詳しい動作については後述するが、一般的な遺伝的ア
ルゴリズムについては、以下の文献に詳しく記載されて
いる。Holland, John (1975). Adaptation in Natural
and Artificial Systems, MIT press 1992"、Goldberg,
David (1987). Genetic Algorithm in Search, Optimi
zation,and Machine Learning. Reading, Mass.: Addis
on-Wesley , Davis,Lawrence (1990). Handbook of Gen
etic Algorithms, Van Nostrand (邦訳:遺伝アルゴリ
ズムハンドブック 嘉数(かかず)他 森北出版)。
【0017】本実施の形態の海底堆積層パラメータ推定
装置の各部の詳しい動作について、さらに説明する。
【0018】観測分散特性演算部2は、起振器101の
動作を制御し、起振器101より予め定めた範囲の周波
数fの振動を海底面104に与えさせる。受振器1は、
堆積層105を伝わってきた弾性波を測定し、その測定
結果を観測分散特性演算部2が取り込む。観測分散特性
演算部2は、測定結果を解析し、弾性波の位相速度cを
各周波数fごとに求め、位相速度cの周波数fに対する
分散特性の峰を示す曲線である分散曲線C0を求める。
求められた分散曲線C0は、観測分散特性演算部2内の
メモリに格納する。本実施の形態では、海底堆積層10
5を伝搬する弾性波波について扱い、少なくとも第0次
モードであるレーリー波について、分散曲線C0を求め
る。観測条件によっては高次モードの分散曲線も得られ
るので、その場合は高次モードの分散曲線も求め、メモ
リに格納する。
【0019】このとき、観測分散特性演算部2が、受振
器1の測定結果から分散特性を求めるために用いる解析
手法としては、一般的によく知られた各種の方法を用い
ることができるが、ここでは地球物理学でよく用いられ
ている多重フィルタ法を用いる。この多重フィルタ法
は、測定された信号を周波数領域である微少帯域毎に切
り出し、これを時間領域に引き戻すことにより周波数と
位相速度の関係、つまり分散特性を得る。この分散特性
から求めた分散曲線をC0する。多重フィルター法の詳
細については文献 "A Technique for the Analysis of
Transient Seismic Signals" by A. Dziewonski, S. Bl
och and M. Landisman Bulletin of the Seismological
Society of America. Vol.59, No.1 p.427-444. Febru
ary,1969に記載されている。
【0020】一方、遺伝的アルゴリズム装置10は、海
底堆積層105を構成する各層の物理的特性を示す各種
のパラメータの候補値を遺伝子とし、その組み合わせ
(パラメータセット)を個体とする。そして、遺伝的操
作により適応度の高い個体を生成する。
【0021】本実施の形態の海底堆積層パラメータ推定
装置では、海底堆積層が図4の様なn層の多層構造であ
るとモデル化し、各層のパラメータは、層厚hi、層の
密度ρi、縦波速度αi、横波速度βiの4種類であると
する。なお、i(i=0、1、2・・・n)は層の番号
を示し、海底面104から最も遠い層を第0層、海底面
104を上面とする層を第n層とする。そして、第0層
から第n層のそれぞれの層ごとの4種類のパラメータを
すべてを遺伝子とし、これらのパラメータの候補値のセ
ットが上述の個体となる。よって、一つの個体は、図6
のように、(4種類)×(n層)=4・n個のパラメー
タ(遺伝子)の値の組み合わせとなる。
【0022】図4の多層の堆積層のモデルにおいて、各
層の水平面内にx、y軸をとり、鉛直方向にz軸をとっ
た場合、各パラメータ(遺伝子)の値はzだけの関数
で、しかも区分的に一定、すなわち、同一層内では一定
値であるとする。また、第0層の層厚h 0は∞とする。
このモデルは海底堆積層を伝わる弾性波の分散特性を求
めるのに有効とされている。このモデルについての理論
的説明は 斎藤 : 「成層構造に対する反射率、表面波分
散曲線の計算」 物理探査第46巻第4号(1993) 283-298頁
に記載されている。
【0023】遺伝的アルゴリズム装置10の初期集団発
生部8は、初期世代の個体(パラメータセット)を設定
値受付部106が受け付けた個体数だけ発生させ、集団
プール部5に格納する。ただし、初期集団発生部8は、
n層のnの値として、設定値受付部106が受け付けた
値を用いる。また、第0層の層厚h0のみは、∞とす
る。また、本実施の形態では、初期集団発生部8は、各
個体(パラメータセット)のh0以外の遺伝子(層厚
i、層の密度ρi、縦波速度αi、横波速度βi(ただし
i=1〜n))の値について、実用的観点から数値の範
囲(上限、下限)を予め定めている。そして、この予め
定めた範囲内の予め定められた単位量きざみの値を候補
値とする。この候補値の中から一つの値をランダムに選
択することにより、それぞれの個体を構成するパラメー
タの候補値を一つ一つ決定する。一例として、ある層の
各パラメータの数値の範囲および単位量を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】単位量は、それぞれ1ビットに対する量で
ある。表1のように各パラメータの範囲および単位量を
定めておいた場合、その層の候補値の組み合わせの総数
は512×512×512×512≒7×1010個である。よって、一
個体の候補値の組み合わせは、7×1010個のn層倍であ
るため、n×7×1010個の候補値の組み合わせがある。
上述の初期集団発生部8では、これらの候補値の組み合
わせの中から設定値受付部106で設定された個体数
(集団サイズ)の個体をランダムに選択し、集団プール
部5に格納する。以上の初期集団発生部8による初期集
団発生の動作は、図3の遺伝的アルゴリズム装置10の
一部動作を示すフローチャートのステップ301であ
る。
【0026】推定分散特性演算部4は、集団プール部5
に格納されている個体(パラメータセット)の一つ一つ
について、海底堆積層105の各層のパラメータの値が
その値である場合の分散特性を理論的計算によって求め
る。本実施の形態では、観測分散特性演算部2により、
少なくとも、海底堆積層105を伝わる弾性波のうち第
0次モードであるレーリー波について分散曲線C0を求
めているので、これと比較するために、推定分散特性演
算部4は、集団プール部5内のパラメータセットからレ
ーリー波についての分散曲線Cを理論的に計算する。こ
の計算方法について説明する。
【0027】本実施の形態では海底堆積層105を図4
のようにモデル化して、このモデルにそってパラメータ
セットを定めている。このようなモデルにおけるレーリ
ー波の分散曲線の計算方法は、上述の文献、 斎藤 :
「成層構造に対する反射率、表面波分散曲線の計算」
物理探査第46巻第4号(1993) 283-298頁に記載されてい
る。本実施の形態では、この計算方法に沿って、分散曲
線Cを求める。
【0028】上記モデルの第i層(i=0、1、2・・
・n)における弾性波の周波数をf、水平方向の波数を
kとすると、第i層における弾性波の位相速度cは、下
式(1)のように表される。また、この第i層における
諸量γα、γβ、ν、να、νβ、Cα、Sα、Cβ、
Sβを式(2)、式(3)のように定義する(γα、γ
β、να、νβ、Cα、Sα、Cβ、Sβのα、βの文
字は、以下の式中では、下付で示す。)。
【0029】
【数1】
【0030】なお、式(2)、(3)において、cおよ
びkは式(1)の位相速度cおよび波数kであり、α、
β、hは、i層における縦波速度αi、横波速度βi、層
厚hiを表す。式(1)、(2)、(3)において、各
パラメータの層の番号を示すiの添え字は省略してあ
る。
【0031】また、このモデルにおいて、第i層の下面
における変位および応力を表すベクトルをYi、その層
の上面における変位および応力を表すベクトルをYi
で示すと、このモデルにおけるYiとYi’との関係は、
第i層におけるテンソルQiを用いて、 Yi’=Qii ・・・・(4) と表される。また、この変位および応力に関する諸量の
ベクトルYiは、至る所で連続であるから、 Yi’=Yi+1 である。よって、式(4)は、 Yi+1=Qii ・・・・(5) と表される。
【0032】この第0層のベクトルY0は、第0層を均
質半無限弾性体とすれば、上述の式(2)、(3)で定
義される諸量およびその第i層の密度ρiを用いて下式
(6)のように表すことができる。
【0033】
【数2】
【0034】なお、式(6)において、y1およびy3
変位を表す要素であり、y2およびy4は応力を表す要素
である。式(6)においてρ、ν、γα、γβの第i層
のiを示す添え字は省略してある。
【0035】また、上述の式(4)、(5)における第
i層のテンソルQiは、具体的には、下式(7)のよう
な5×5の行列で表される。なお、式(7)において、
ν、Cα、Cβ、γα、γβ、Sα、Sβの第i層のi
を示す添え字は省略してある。
【0036】
【数3】
【0037】
【数4】
【0038】よって、式(5)を第0層から第n層まで
順次計算していくと、最終的には第n層の上部つまり海
底面104の変位および応力を表すベクトルYnを求め
ることができる。海底面104には、外力が働いていな
いとすると、海底面104では境界条件として応力が0
になる。よって、ベクトルYnにおける要素y4は0でな
ければならない。この条件は、特定の周波数f、波数k
でしか満たすことができない。したがって、周波数fを
固定し、波数kを変えながらy4の零点を探すことによ
り、海底面104における境界条件をみたす波数kを求
めることができる。この波数kを式(1)に代入して、
第n層(最上層)の位相速度cを求めることにより、レ
ーリー波のその周波数fの位相速度cを求めることがで
きる。これを、予め設定した範囲の周波数fについて求
めることにより、レーリー波についての分散曲線Cを得
ることができる。
【0039】よって、推定分散特性演算部4の具体的な
計算手順としては、まずレーリー波の位相速度cを求め
るべき周波数fを定め、波数kは適当に仮定する。そし
て式(1)により、第0層の位相速度cを求める。この
位相速度cと、集団プール部5の個体(パラメータセッ
ト)の第0層のパラメータh0、α0、β0を用いて、
(2)および(3)式により第0層の諸元を求め、この
諸元と個体(パラメータセット)の第0層のρ0とを、
式(6)に代入し、第0層のベクトルY0を計算する。
次に式(7)に、(2)および(3)式により求めた第
0層の諸元とρ0とを代入し、第0層のテンソルQ0を求
める。求めたベクトルY0とテンソルQOを式(5)に代
入し、第1層のベクトルY1を求める。これを第2層〜
第n層まで繰り返すことにより、最終的にYnを得る。
得られたベクトルYnの要素y4が0になるように波数k
を定める。求めた波数kと、そのときの周波数fとを式
(1)に代入して、最上層(第n層)の位相速度cを求
める。この計算を予め定めた範囲の周波数fごとに行
い、対応する位相速度cを求め、周波数fと位相速度c
との関係を表す分散曲線Cを得る。本実施の形態では、
これらの計算を、ニュートン・ラフソン法を適用して行
っている。
【0040】つぎに、適応度演算部3の動作について詳
しく説明する。
【0041】適応度演算部3は、推定分散特性演算部4
によってある個体について上述のようにして計算された
分散曲線Cが、観測分散特性演算部2が測定データから
求めた分散曲線C0に対して、一致しているかどうかを
示す指標である適応度Φを計算する。具体的には、適応
度演算部3は、下式(8)のように予め定めた周波数f
jごとに、分散曲線C0の位相速度C0(fj)と、分散曲
線Cの位相速度C(fj)との差の2乗の平均の逆数を
もって適応度Φとする。式(8)により与えられる適応
度Φは、分散曲線C0と分散曲線Cとの一致の度合いが
高いほど大きな値となる。
【0042】
【数5】
【0043】なお、式(8)では、サンプル数m=20
がオペレータから設定されたとして、適応度Φの計算に
用いる周波数fjを、1Hzから100Hzまで等比級
数的に20ポイント定めた場合について示している。し
かしながら、周波数fjの定め方は、式(8)の定め方
に限定されるものではない。例えば、分散曲線の変化率
が周波数によって著しく相違する場合、分散曲線の変化
が比較的大きい部分においては周波数のサンプリング間
隔(fj+1とfjとの間隔d)を小さくとり、分散特性の
変化が比較的小さい部分において周波数のサンプリング
間隔を大きくとることによって解析性能の向上を図るこ
とも可能である。
【0044】適応度演算部3によって計算された適応度
Φは、集団プール部5に格納されている個体(パラメー
タセット)に対応させて遺伝子操作部6内のメモリに格
納される。
【0045】つぎに、遺伝的アルゴリズム装置10の遺
伝子操作部6の動作を詳しく説明する。
【0046】遺伝子操作部6は、集団プール部5に格納
されている個体(パラメータセット)の集団に、遺伝的
アルゴリズムにより図3のステップ302〜304のよ
うに「選択」、「交叉」、「突然変異」の3種類の遺伝
的操作を施す。これにより、より高い適応度Φを有する
個体の集団に進化させていく。この遺伝的アルゴリズム
は、自然淘汰と遺伝現象のメカニズムを単純化した数理
モデルであり、対象問題の解候補である個体の集団が適
応度Φという外部環境に適応するように、次に示す規則
に基づく集団の構成を世代毎に生成させるものである。
【0047】(規則1) 適応度の高い個体ほど生存確
率が高い。
【0048】(規則2) 古い個体をもとに新しい個体
を生成させる。
【0049】遺伝的アルゴリズムを組み合わせ最適化問
題の一解法とした場合、(規則1)を確率的探索法、ま
た、(規則2)を経験的探索法と見なすことができ、遺
伝的アルゴリズムは確率的探索法および経験的探索法の
両者の側面を持っている。具体的には、遺伝子操作部6
は、適応度演算部3に格納されている各個体(パラメー
タセット)の適応度Φを読み込んで、この適応度Φに比
例する確率で、集団プール部5に格納されている個体を
「選択」する(図3のステップ302)。集団の個体数
は、変化させないとものとする。よって、適応度Φの高
い個体ほど選択される確率が高く、適応度Φの高い個体
の中には、複数回選択される個体もある。これにより、
適応度Φの高い個体がより多くの子孫を次世代に残し、
適応度Φの低い個体は淘汰される。この「選択」の操作
により、初期世代の個体の集団から、次世代に遺伝子を
残す個体が選択される。
【0050】つぎに、遺伝子操作部6は、ステップ30
2で選択された個体について交叉処理を施す(ステップ
303)。本実施の形態では、数値表現遺伝子に対する
交叉法として最も単純な確率的平均化交叉法を用いる。
交叉処理は、上述のステップ302で選択されたすべて
の個体をランダムに2つずつ組み合わせ、組み合わされ
た2つの個体(パラメータセット)の対応する遺伝子
(パラメータの値)について行われる。2つの個体の対
応する遺伝子をg1およびg2とすると、これらを次式
(9)、(10)に代入し、新たな2つの遺伝子g1
およびg2’を発生させる。そして、発生させた遺伝子
1’を遺伝子g1と置き換え、遺伝子g2’を遺伝子g2
と置き換える。この交叉処理は、全ての組の個体の全て
の遺伝子について施される。
【0051】 g1’=g1+p(g1−g2)R ・・・(9) g2’=g2+p(g1−g2)R ・・・(10) ただし、Rは−1〜1の範囲で発生させた一様乱数、p
は、設定受付部106がオペレータから受け付けた交叉
係数である。この計算の結果新しい遺伝子の値が負にな
ったり、予め定めておいた上限値を超える場合は、再計
算し、範囲内のものだけ使用する。図5に式(9)、
(10)の確率的平均化交叉法により発生する新たな遺
伝子g1’、g2’の範囲を概念的に示す。この交叉処理
により、2つの個体の遺伝子g1、g2の特徴を継承しつ
つ新たな遺伝子g1’、g2’を発生させることができ
る。
【0052】つぎに、遺伝子操作部6は、ステップ30
3で交叉処理が施された個体の遺伝子に対して突然変異
を生じさせる(ステップ304)。すなわち、集団を構
成するすべての個体の数をNとし、1個体当たりの遺伝
子数をMとすると、遺伝子の総数はNM個であるので、
設定受付部106が受け付けた突然変異率aを用い、a
NM個の遺伝子を、無作為に選択する。そして、選択し
た遺伝子(パラメータの値)を、ランダムに発生させた
数値と置き換える。
【0053】このように突然変異を生じさせることによ
り、交叉では現れない特徴を持った遺伝子を生成するこ
とができるため、集団の多様性を保つことができる。こ
れにより、解が局所的最適値に陥る危険を回避すること
ができる。
【0054】このように遺伝子操作部6により選択・交
叉・突然変異の操作により生成された個体の集団は、次
世代集団として、集団プール部5に格納されている集団
と置き換えて格納される。推定分散特性演算部4は、新
たに集団プール部5に格納された次世代集団の各個体に
ついて、上述のように分散曲線Cを求める。適応度演算
部3は、分散曲線Cをもとに次世代集団の各個体につい
て適応度Φを上述のように計算する。遺伝子操作部6
は、この適応度Φをもとづいて、次世代集団にステップ
302〜304の選択・交叉・突然変異を施し、さらに
次の世代集団を発生させる。この一連の操作を、設定値
受付部106に設定された世代数だけ繰り返すことによ
り、次第に適応度Φの高い個体の集団が生成される。最
終世代の個体集団は、最終世代プール部7に格納され
る。最終世代プール部7に格納された個体の集団のう
ち、適応度Φが最も高い個体(パラメータセット)の遺
伝子(パラメータの値)が、解として解析値表示器9に
表示される。
【0055】なお、上述の交叉および突然変異処理(ス
テップ303、304)の説明では、すべての個体につ
いて交叉処理を行い、すべての個体の全ての遺伝子から
突然変異率aで突然変異させる処理を行ったが、この方
法に代えて、エリート保存法を用いることもできる。上
述の交叉処理および突然変異処理では、適応度Φが最大
の個体についても行われるため、交叉もしくは突然変異
の処理が適応度Φの最大値を持つ個体に対して悪い方に
働いた場合、その個体の子孫の適応度Φが減少する。し
かも、別の個体からそれを凌ぐ適応度Φを有する子孫も
生成されなかった場合には、一時的に次世代の適応度Φ
の最大値が減少する。このような現象を避けるために、
エリート保存法を交叉および突然変異処理に適用するこ
とができる。エリート保存法では、その世代の集団にお
いて最大の適応度Φを持つ個体は、そのまま次世代に残
す。つまり、交叉処理において、その個体とその個体の
配偶者は交叉を行わない。また、さらに突然変異処理の
場合も、最大の適応度Φを持つ個体の遺伝子は突然変異
を免れるようにする。さらに、この優秀な個体の値を後
世に伝えるためこの個体の分身を作り、これは交叉、突
然変異とも他の個体と同等の扱いを受けるものとする。
なお、分身を作ったことにより集団サイズが増加するこ
とを防ぐために、その世代の個体の中で適応度最小の個
体を集団から削除し、集団サイズを一定に保つ。なお、
エリート数は1に限定されず、設定値受付部がエリート
数として受け付けた複数の値にすることができる。
【0056】また、上述の突然変異処理の説明では、突
然変異率aで選択した遺伝子(パラメータの値)を、ラ
ンダムに選択した数値と置き換える方法を用いたが、こ
の方法に代えて、数値クリープ法を用いることができ
る。数値クリープ法の考え方は、遺伝的処理が施されて
世代交代再生が行われた個体の遺伝子は、初期のものに
比べてかなり良い場所に位置しているであろうという仮
定に基づいている。ここで最適化の対象としているパラ
メータは、多くの山や谷を持つ連続関数であると考えら
れるから、もし、たどり着いた山(パラメータの値)が
最大の山の頂上(最適のパラメータ値)にかなり近い良
い位置であれば、その位置から近い周囲のどこかに飛び
移ることでより、頂上の近くに移れるのではないかと考
えることが出来る。数値クリープ法は、この考え方に基
づいたものである。数値クリープ法による突然変異の動
作は、突然変異率aに従って選択した遺伝子gを、ある
確率に従ってその遺伝子gの位置する場所(遺伝子の
値)の上方あるいは下方に、ある小さな乱数値の大きさ
だけ、移動させることで行われる。具体的には次式(1
1)にしたがって遺伝子(パラメータの値)を突然変異
させる。
【0057】 g’=g+bgmax R ・・・(11) ただし、式(11)においてg’は新しい遺伝子の値、
gは現在の遺伝子の値、gmaxは、gのパラメータの範
囲として表1のように定められている上限の値、bはク
リープ度、Rは−1〜1の範囲で発生させた一様乱数であ
る。
【0058】つぎに、本実施の形態の海底堆積層パラメ
ータ推定装置によって、実際に堆積層パラメータの推定
を行う手順および推定結果について説明する。
【0059】まず、観測船102から起振器101を海
中に下ろし、海底面104に設置する。起振器101か
ら離れた場所に同じく受振器1を設置する。観測分散特
性演算部2は、起振器101および受振器1を制御し
て、予め定めた範囲の周波数fの振動を起振器101に
より海底面104に与え、受振器1により海底堆積層1
05を伝わって来た弾性波を測定する。
【0060】また、オペレータは、設定値受付部106
に、遺伝的アルゴリズム装置10における処理に必要な
海底堆積層の層数n、世代数、集団サイズ、交叉係数
p、突然変異率a、クリープ度b、エリート数、ならび
に、周波数のサンプル数mを設定入力する。入力された
設置値は、解析値表示器9の表示画面上の表示部702
に図7(a)のように表示される。なお、周波数のサン
プル数mは、式(8)では、m=20を設定していた
が、ここではm=30を設定している。また、ここで
は、遺伝子操作部6は、交叉および突然変異操作の際
に、上述のエリート保存および数値クリープ法を用いる
ため、エリート数およびクリープ度の設定入力を行って
いる。また、層数nは、対象の海底堆積層104につい
て予め海底下音響測定によって測定された層構造等、予
め調査された情報に基づいてオペレータが定めた値を入
力する。
【0061】また、オペレータは、設定値受付部106
に、初期集団発生部8が初期集団を発生させる際に用い
る各パラメータの上限値および下限値等の値(表1の
値)も入力する。入力された値は、解析値表示器9の表
示画面上の表示部701に図7(a)のように表示され
る。なお、ここでは、パラメータの上限値および下限値
を、各層について共通としているため、図7(a)のよ
うに一組の上限値と下限値のみが表示されているが、各
層ごとに上限値および下限値を異なる値にすることもで
きる。また、ここでは、本装置の性能を確認する実験と
して、予め層構造(3層構造)および各層のパラメータ
が明らかな海底堆積層104についてパラメータ値の推
定を行う。そのため、表示部702には、真値として各
層(第0層、第1層、第2層)の各パラメータの真値が
表示されている。
【0062】観測分散特性演算部2は、受振器1の受信
データに基づいて上述の説明のように分散曲線C0を求
める。求めた分散曲線C0は、解析値表示部9の表示部
704の位相速度−周波数のグラフに実線として表示さ
れる。遺伝的アルゴリズム装置10は、上述のように適
応度演算部3の計算した適応度Φを用いて個体(パラメ
ータセット)を進化させていく。そして、最終世代(こ
こでは第20世代)まで演算が終了した時点において、
個体集団の中で最大の適応度Φを有する個体は、最適解
として、解析値表示部9の表示部703に、その遺伝子
(パラメータの値)が表示される。また、この適応度Φ
最大の個体について、推定分散特性演算部4が演算した
分散曲線Cは、表示部704のグラフに分散曲線C0
に重ねて表示される(図7(b))。図7(b)では、
分散曲線Cは、式(8)で用いた分散曲線CのC
(fj)を×印として表示している。
【0063】また、解析値表示器9の表示部802に
は、図8のように、適応度演算部3が各世代の個体ごと
に計算した適応度が、世代ごとに表示される。ここでは
集団サイズ(個体数)を50としているので、図8の表
示部802のように、各世代毎に適応度Φが50個プロ
ットされている。プロットの最上部の黒丸印はその世代
の適応度Φの最大値を示し、白丸印はその世代の適応度
Φの平均値を示す。図8からわかるように、初期の世代
では最大値で0.1に満たなかった適応度Φが、世代が
進むにつれて、次第に増加し、最終の第20世代では最大
値で1に近くなっている。
【0064】また、ここでは、予め各層のパラメータが
予め明らかな海底堆積層105について推定を行ってい
るので、その真値と、本装置によって推定したパラメー
タ値との誤差を解析値表示器9の表示部801に表示し
ている。この表示部801の表示のように、誤差は、世
代が進むにつれてわずかに減少している傾向が見られる
が顕著ではない。
【0065】なお、実際の海底堆積層105のパラメー
タを本装置で推定する場合には、表示部801には誤差
表示の代わりに、すべての個体のパラメータ値を各世代
ごとに表示するようにすることができる。このように全
ての個体のパラメータ値を世代ごとに表示させることに
より、初期世代にはばらついている個体ごとのパラメー
タ値が、世代が進むにつれて収束することを確認するこ
とができる。この各パラメータの収束値がそのパラメー
タの最適解と推測できる。よって、十分な収束を表示部
801の表示で確認できた場合、それ以上の世代を重ね
て演算する必要がない等の判断をすることができる。ま
た、世代を重ねても収束する兆しがない場合には、設定
値が適当ではない等の問題があると判断できるため、設
定値をかえる等の処置をとることができる。
【0066】また、世代数以外は、図7(a)と同じ条
件で、世代数を500まで進めた場合について、図9
(a)、(b)、図10に示す。世代が進むにつれて適
応度Φは10に近くなり、パラメータ値は横波速度にお
いて誤差8%程度で推定出来ている。
【0067】なお、観測分散特性演算部2は、高次モー
ドの分散曲線が得られた場合には、それもメモリに格納
しているので、その場合には、推定分散特性演算部4
は、高次モードの分散曲線についてもパラメータセット
(個体)から公知の数式に基づいて演算するようにす
る。そして、適応度演算部3は、観測分散特性演算部2
の演算した高次モードの分散曲線と推定分散特性演算部
4の演算した高次モードの分散曲線との一致度を含め
て、適応度Φを求めるようにすることができる。このよ
うに、高次モードの分散曲線を含めて適応度Φを求める
ことにより、解析性能を向上させることができる。
【0068】また、本実施の形態では、推定分散特性演
算部4は、設定値受付部106に最初に設定された交叉
係数pおよび突然変異率aの設定値等により、初期世代
から最終世代まで演算を行う構成であるが、これらの設
定値を、進化の途中で変更可能な構成にすることも可能
である。
【0069】このように、本実施の形態の海底堆積層パ
ラメータ推定装置では、快適堆積層特有の誤差を多く含
む実測データに基づいて、海底堆積層のパラメータを求
めるという対象問題について、この対象問題が、何らか
の方法で2通りの分散特性、つまり仮定したパラメータ
セットに基づいて理論的に算出された弾性波位相速度の
分散特性、および観測された弾性波に基づく弾性波位相
速度の分散特性とが得られるならば、両者の差異につい
ての評価(適応度)が比較的容易に実施できるという特
徴をもつことに着目することにより、パラメータ値を確
実かつ容易に求めることを可能にした。したがって、本
実施の形態のパラメータ推定装置では、従来の数値解析
法のように解が局所的最小値に陥ったり、発散したりす
ることを防止しながら、誤差を多く含む海底堆積層の実
測値から、最適解もしくは実用上満足できる準最適解の
パラメータ値を安定して推定することができる。
【0070】また、2通りの分散特性の適応度から解を
求める手法としては、総当たり法も考えられるが、も
し、総当たり法を用いるとすると、予め定めた範囲のパ
ラメータセットのすべてについて適応度Φを計算し、適
応度Φが最大のパラメータセットを解とすることにな
る。予め定めた範囲が例えば上述の表1の条件の場合に
は、n×7×1010個の候補値の組み合わせ(パラメータ
セット)があるため、総当たり法ならば、そのすべてに
ついて、適応度Φを計算する必要があり、計算量が膨大
になる。このため、リアルタイム制の観点から総当たり
法は、非現実的である。これに対し、本実施の形態の推
定装置では、上述してきたように遺伝的アルゴリズムで
適応度の高い個体(パラメータセット)を生成させてい
く構成であるため、一度に扱う個体数は予め定められた
集団サイズ(例えば50個体)のみでよい。これによ
り、本実施の形態の装置では、計算量を大幅に抑制して
効率よく、安定して解のパラメータセットを求めること
ができる。
【0071】本実施の形態の装置のように、海底堆積層
パラメータ推定という対象問題に、遺伝的アルゴリズム
を導入した場合、遺伝的アルゴリズムの特徴であるとこ
ろの多数の解候補を同時に扱うという本質的並列性によ
り、解の局所的収束を避けることが出来る。また、遺伝
的アルゴリズムは、有限個の解候補の範囲内での探索処
理であることから、解の発散という現象は、本質的に発
生しない。また、遺伝的アルゴリズムは、変数が増加し
ても安定性は維持できる。さらに、パラメータの数を増
加させる等、モデルを精緻化した場合にも、遺伝的アル
ゴリズムでは計算量の増加が、推定分散特性演算部4に
おける分散特性の計算処理に影響するに留まる。また、
遺伝的アルゴリズムを用いた場合、モデル構築時に、適
応度の計算方法および遺伝子の表現方法にだけ留意すれ
ばよく、解を求める手段そのものは上述した選択・交叉
・突然変異等の生物進化に見られる幾つかの過程を模倣
した遺伝的操作を実行するだけでよいという利点もあ
る。
【0072】なお、上述の実施の形態では、解析処理器
11の構成全体を観測船102に搭載し、全ての演算を
観測船102上で行う構成について説明したが、解析処
理器11と、受振器1および起振器101とを取り外し
可能な構成にし、受振器1が測定したデータをいったん
記憶装置に取り込んで、陸上に配置した解析処理器11
により、演算処理する構成にすることも可能である。こ
のとき、解析処理器11に予め船上解析モードと陸上解
析モードとを設ける構成にすることもできる。この場
合、船上解析モードは、個体数や世代数やサンプル数m
等を小さく設定して短時間で終了する簡便なモードに
し、例えば、受振器1の測定データが、解析処理器11
の処理により解を求めるのに十分なデータであるかどう
かの判断をするために用いるようにする。陸上解析モー
ドは、船上解析モードで処理可能と判断された測定デー
タに基づき、時間をかけてオペレータが望む設定により
最適解または実用上満足できる準最適解を求めるモード
にすることができる。
【0073】また、上述の実施の形態では、解析処理器
11の各部は、図2のようにそれぞれ独立した装置とし
て構成されているが、この構成に限らず、解析処理器1
1の全体を、演算装置、記憶装置、キーボードやマウス
等の受付部、表示装置等を備えたコンピュータにより構
成することができる。その場合、図2の解析処理器11
の集団プール部5および最終世代プール部7は、記憶装
置内の記憶領域により実現できる。また、推定分散特性
演算部4、適応度演算部3、観測分散特性演算部2、初
期集団発生部8、および、遺伝子操作部6は、演算装置
によって実行されるプログラムにより実現できる。これ
らプログラムおよびこのプログラムによって計算された
適応度Φや分散曲線C0およびCは、記憶装置の記憶領
域に格納する。設定受付部106は、コンピュータの受
付部によって実現でき、解析値表示器9は、コンピュー
タの表示装置により実現することができる。
【0074】
【発明の効果】上述してきたように、本発明によれば、
海底堆積層の特性を示すパラメータの値を、実測データ
から安定して推定することのできる海底堆積層パラメー
タ推定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の海底堆積層パラメータ
推定装置を観測船に搭載し、測定を行う状態を示す説明
図。
【図2】本発明の一実施の形態の海底堆積層パラメータ
推定装置の構成を示すブロック図。
【図3】図2の海底堆積層パラメータ推定装置の初期集
団発生部8と遺伝子操作部6の動作を簡単に示すフロー
チャート。
【図4】図2の海底堆積層パラメータ推定装置において
もちいる海底堆積層のモデルと推定するパラメータを示
す説明図。
【図5】図2の海底堆積層パラメータ推定装置において
遺伝子操作部6の交叉処理によって発生する新たな遺伝
子の値の範囲を示す説明図。
【図6】図2の海底堆積層パラメータ推定装置において
遺伝的アルゴリズム装置10が扱う個体(パラメータセ
ット)を示す説明図。
【図7】図2の海底堆積層パラメータセット推定装置の
解析表示器9に表示される(a)入力設定値等と最適解
とを示す表示の例、(b)観測及び推定分散曲線を示す
グラフの表示の例。
【図8】図2の海底堆積層パラメータセット推定装置の
解析表示器9に表示される、適応度Φの世代変化を示す
グラフの表示の例、および、解のパラメータセットと真
値との誤差の世代変化を示すグラフの表示の例。
【図9】図2の海底堆積層パラメータセット推定装置の
解析表示器9に表示される(a)入力設定値等と最適解
とを示す表示の例、(b)観測及び推定分散曲線を示す
グラフの表示の例。
【図10】図2の海底堆積層パラメータセット推定装置
の解析表示器9に表示される、適応度Φの世代変化を示
すグラフの表示の例、および、解のパラメータセットと
真値との誤差の世代変化を示すグラフの表示の例。
【符号の説明】
1・・・受振器、2・・・観測分散特性演算部、3・・・適応度
演算部、4・・・推定分散特性演算部、5・・・集団プール
部、6・・・遺伝子操作部、7・・・最終世代プール部、8・・
・初期集団発生部、9・・・解析値表示器、10…遺伝的ア
ルゴリズム装置、11・・・解析処理器、101…起振
器、106…設定値受付部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大岩 正憲 神奈川県横浜市戸塚区戸塚町216番地 株 式会社日立製作所通信システム事業本部内 (72)発明者 浅野 健一 東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地 株式会社日立製作所防衛技術推進本部内 Fターム(参考) 2F068 AA28 BB14 CC05 FF11 KK15

Claims (5)

    【明細書】 【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】対象である海底堆積層について観測したデ
    ータから、前記海底堆積層を伝搬する弾性波の特性値を
    求める観測特性値演算部と、 前記海底堆積層の物理的特性を示す複数のパラメータの
    候補値を遺伝子とし、この候補値を組み合わせたものを
    個体として、該個体を予め定めた個体数だけ発生させ、
    この個体に遺伝的アルゴリズムにより遺伝的操作を施し
    て次世代の個体に進化させる遺伝子操作部と、 前記個体について、理論的に前記弾性波の特性値を推定
    する推定特性値演算部と、 前記推定特性値演算部が前記個体について推定した前記
    弾性波の特性値と、前記観測特性値演算部が求めた前記
    弾性波の特性値との一致の度合いを示す適応度を求め、
    最も適応度の高い個体を構成する前記候補値が、前記パ
    ラメータの値の解であるとする適応度演算部とを有する
    ことを特徴とする海底堆積層パラメータ推定装置。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の海底堆積層パラメータ推
    定装置において、 前記弾性波の特性値は、弾性波の位相速度の周波数につ
    いての分散特性であり、前記パラメータは、前記海底堆
    積層を構成する1以上の層のそれぞれについての、層
    厚、密度、縦波速度、および、横波速度を含み、 前記遺伝子操作部は、前記遺伝的操作の際に、前記適応
    度の高い個体ほど次世代に残る確率が高くなるように操
    作することを特徴とする海底堆積層パラメータ推定装
    置。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の海底堆積層パラ
    メータ推定装置において、 前記遺伝子操作部は、前記遺伝的操作の際に、同一世代
    の個体集団において適応度が最大の個体または適応度の
    高い複数個の個体をそのまま次世代に残すエリート保存
    法を用いることを特徴とする海底堆積層パラメータ推定
    装置。
  4. 【請求項4】請求項2に記載の海底堆積層パラメータ推
    定装置において、 前記観測特性値演算部は、観測データに前記分散特性に
    高次モードが含まれる場合には、高次モードも含めて分
    散特性を求め、前記適応度演算部は、高次モードの分散
    特性を含めて適応度を求めることを特徴とする海底堆積
    層パラメータ推定装置。
  5. 【請求項5】請求項2に記載の海底堆積層パラメータ推
    定装置において、 前記適応度演算部は、前記観測特性値演算部が求めた前
    記分散特性と、前記推定特性値演算部が演算した前記分
    散特性との差異を、予め定められた間隔の周波数ごとに
    求めることにより、前記適応度を計算する構成であり、
    前記間隔は、前記分散特性の変化が大きい部分について
    は小さく、前記分散特性の変化が小さい部分については
    大きく定められていることを特徴とする海底堆積層パラ
    メータ推定装置。
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