JP2001003684A - 推進管のバッキング防止方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】閉鎖型の面板を装備したシールド掘進機の推進
施工において、面板に作用するバッキング力を効率良
く、確実に防止するバッキング防止方法を提供する。 【解決手段】初期の推進施工中にシールド掘進機の面板
に作用する泥水圧や地下水圧による推進方向と逆方向の
力により推進管９が押し戻されるのを防止する方法にお
いて、推進管の後方の両側壁面の対称位置に、予め複数
本のインサートアンカー６を埋め込んでおき、１本分の
推進管の推進が完了すると、前記インサートアンカーに
側壁面より所定の長さだけ突出するようにボルト５をね
じ込み、側方に突出する支持腕３を有したプレートより
なるバッキング防止金具１を前記ボルトによって固設
し、前記支持腕に当接するように設けた固定枠４によっ
て推進管の押し戻しを防止するバッキング防止方法であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、閉鎖型の面板を装
備したシールド掘進機の推進施工を効率良く行うための
推進管のバッキング防止方法に関するものである。

【０００２】

【従来技術】上下水道、電力、電信、ガス管路を地中に
埋設していく推進工法は、埋設管路の一端に設けた発進
立坑に装備した元押しジャッキより、シールド掘進機や
推進管の後端面を加圧することによって行われる。発進
立坑に装備される元押しジャッキの設備としては、推進
管の径や推進延長及び土質条件等によって変わるため、
施工前に予め推進力や推進管の耐荷力の検討が行われて
決定される。推進管を推進埋設するための推進力は、シ
ールド掘進機先端の面板抵抗力と、シールド掘進機及び
推進管外周と周辺地盤との摩擦抵抗力によって発生す
る。シールド掘進機先端の面板抵抗力は、土質条件や土
被りが変化しない場合には、ほぼ一定の値であるが、推
進管外周と周辺地盤の摩擦抵抗力は、推進延長に比例し
て徐々に増大していく。

【０００３】通常の推進施工時には、シールド掘進機先
端の面板に土圧や水圧が作用し、シールド掘進機や推進
管を後方に押し戻そうとするバッキング力が働くが、推
進管外周と周辺地盤の摩擦抵抗力がバッキング力より大
きく、シールド掘進機や推進管は後方に押し戻されるこ
とはない。しかし、初期推進施工時には、推進延長が短
く推進管外周と周辺地盤の摩擦抵抗力に比べ、シールド
掘進機や推進管を後方に押し戻そうとするバッキング力
の方が大きく、シールド掘進機や推進管を後方に押し戻
そうとするが、推進施工時は常に元押しジャッキによる
大きな力で推進管端面が加圧されているため、後方に押
し戻されることはない。しかし、１本分の推進管の施工
が完了すると、推進管と元押しジャッキの間に次の推進
管を設置するために、伸長した元押しジャッキを縮小さ
せると、推進管外周と周辺地盤の摩擦抵抗力がバッキン
グ力より小さいため、シールド掘進機や推進管が、発進
立坑内に抜け出してくるという事故がしばしば発生して
いる。このため、ワイヤやチェーン等で推進管外周を締
め付けて、押し戻しを防止するバッキング方法が一般に
よく使用されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前記したバッキング方
法により、通常の初期推進施工時にはシールド掘進機や
推進管は後方に押し戻されることもなく、安全な推進作
業が行える。しかし、土被りが深く、被圧水が高い地盤
等では、シールド掘進機の先端にかかる面板抵抗である
土圧や水圧が非常に大きくなり、ワイヤやチェーン等に
よる推進管外周の締め付けによる力だけでは、シールド
掘進機や推進管を押し戻すバッキング力に充分に耐えら
れず、発進立坑側に推進管やシールド掘進機が後方へ抜
け出し、立坑内での作業員の安全性の問題やシールド掘
進機や推進管が抜け出た分だけ、シールド掘進機先端に
空洞ができるために、地盤の崩壊や陥没が発生し地上の
構造物や地下埋設物の破損を招来することとなる。

【０００５】このため、本発明は、土被りが深く、被圧
水の高い地盤でも安全で確実なバッキング防止方法を提
供するものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、複数
の掘削刃を装備した閉鎖型の面板を有したシールド掘進
機を用いて地中に推進管を埋設する推進工法で、初期の
推進施工中にシールド掘進機の面板に作用する泥水圧や
地下水圧による推進方向と逆方向の力により推進管が押
し戻されるのを防止する方法において、推進管の後方の
両側壁面の対称位置に、予め複数本のインサートアンカ
ーを埋め込んでおき、１本分の推進管の推進が完了する
と、前記インサートアンカーに側壁面より所定の長さだ
け突出するようにボルトをねじ込み、側方に突出する支
持腕を有したプレートとよりなるバッキング防止金具を
前記ボルトによって固設し、前記支持腕に当接するよう
に設けた固定枠によって推進管の押し戻しを防止するバ
ッキング防止方法である。さらに、複数の掘削刃を装備
した閉鎖型の面板を有したシールド掘進機を用いて地中
に推進管を埋設する推進工法で、初期の推進施工中にシ
ールド掘進機の面板に作用する泥水圧や地下水圧による
推進方向と逆方向の力により推進管が押し戻されるのを
防止する方法において、推進管の後方の両側壁面の対称
位置に、予め所定の径を有する貫通孔を設けておき、１
本分の推進管の推進が完了すると各貫通孔に側方に突出
するように貫通棒を挿入し、前記貫通棒を支持するよう
に設けた固定枠によって推進管の押し戻しを防止するバ
ッキング防止方法である。

【０００７】インサートアンカーとしては、従来技術と
して採用されているもので良く、推定されるバッキング
力に合わせてボルトの本数や径が決定されるため、その
ボルトの径にあった大きさや本数のもの必要となる。イ
ンサートアンカーは、推進管の製作時に設置しておくの
が効率的である。インサートアンカーにねじ込むボルト
は、推進管の製作時に工場等で取付を行っても良いが、
ボルトが推進管の側壁面より突出するために、現場への
運搬時に支障となり、現地において設置する方法が最適
である。

【０００８】バッキング防止金具のプレートとしては、
方形で推進管の側面に沿って接合する形状をしている。
プレートには、インサートアンカーにねじ込まれたボル
トの位置と合致する箇所に貫通孔が設けられ、ボルトに
通したナットによりプレートを固定する。プレートに
は、側方にリブ材を突出した支持腕が設けられている。
プレートおよび支持腕は、バッキング力によって変形や
破損しないように比較的強度のある鋼材で製作される。

【０００９】固定枠としては、前記支持腕に当接するよ
うにリブ材から構成されている。固定枠の材質も、鋼材
が使用され、支持腕からのバッキング力に変形すること
なく、支持できる構造となっている。固定枠の固定は、
発進立坑内に設置した推進台のＨ型鋼定規の上に固定さ
れる。固定方法としては、溶接による方法でも良いが、
次の推進管接続後の推進時には、バッキング防止金具を
撤去しなければならないため、比較的取り外しの簡単な
ボルト、ナット方式の採用が有効である。

【００１０】推進管に設ける貫通孔の大きさは、バッキ
ング力によって決められる貫通棒の径によって決定され
る。貫通孔の位置としては、推進台のＨ型鋼定規に固定
した固定枠に貫通棒が当接するように設けられる。貫通
棒撤去後は、貫通孔から地下水や土砂が侵入しないよう
に、推進管の内側からめくら蓋等をねじ込んで防止す
る。

【００１１】発進立坑内の発進坑口壁にシールド掘進機
を設置し、元押しジャッキによりシールド掘進機の後端
を加圧するとともに、先端の面板で地盤を掘削しながら
シールド掘進機を地中に掘進していく。シールド掘進機
の推進施工が完了すると、推進台のＨ型定規上に固定し
た固定枠に当接するように、シールド掘進機の両側面に
支持枠等を突出するように溶接して固定する。支持枠の
固定が完了すると、元押しジャッキを縮小させ、シール
ド掘進機と元押しジャッキの間に推進管を吊り降ろして
接続し、元押しジャッキで推進管の後端面を加圧した
後、支持枠を撤去し、推進施工を再開する。１本目の推
進管の推進施工が完了すると、推進管両側面のインサー
トアンカーにボルトをねじ込み、支持枠を有したバッキ
ング防止金具のプレートをボルトに固定する。この時、
支持枠はＨ型定規上に固定した固定枠と当接した状態と
なっている。この作業が完了すると、元押しジャッキを
縮小されて推進方向への押圧が解除され、シールド掘進
機と推進管には推進方向と逆のバッキング力が働くが、
支持枠と固定枠の当接によってバッキング力が支持され
て後方に抜け出ることはない。元押しジャッキの縮小が
完了し次の推進管の設置、接続が完了すると、元押しジ
ャッキを伸長して推進管接続部の隙間をなくした後、元
押しジャッキを停止し、プレートを撤去してから推進施
工が再開される。前記した作業は、面板に作用するバッ
キング力より、推進管外周と周辺地盤の摩擦力が大きく
なる距離まで行われる。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を
基に説明する。図１は、本発明の推進管のバッキング防
止方法を説明する横断面図である。発進立坑内に吊り降
ろされた推進管９は、２本のＨ型定規を並列して設置し
た推進台８に据え付けられて支持される。各Ｈ型定規の
前方には、固定枠４がボルト７によって固定されてい
る。１本分の推進管９の推進施工が完了すると、推進管
９の後方の両側側面に埋め込まれたインサートアンカー
６に、ボルト５がねじ込まれ、側方に突出する支持腕３
を有したバッキング防止金具１のプレート２を、前記ボ
ルト５によって固定する。この時、バッキング防止金具
１の支持腕３と固定枠４の位置は、丁度双方が当接する
ように設置されている。

【００１３】図２は、本発明の推進管のバッキング防止
方法を説明する縦断面図である。発進坑口壁１０より発
進された推進管９の推進施工が完了し、推進管９の側面
のインサートアンカー６に、ボルト５をねじ込み、バッ
キング防止金具１のプレート２を前記ボルト５によって
固定する。プレート２には、推進台８のＨ型鋼定規の上
に固定した固定枠４の前面に当接するように、支持腕３
が取り付けられている。支持腕３や固定枠４は、推進管
９を後方に押し戻そうとするバッキング力によって変形
や破損を起こさないようにリブ材によって補強されてい
る。

【００１４】バッキング防止金具１の設置が完了する
と、推進管９の後端面を加圧していた元押しジャッキ
（図示省略）を縮小させる。この時、推進管９の前方の
シールド掘進機先端の面板には、大きな土圧や水圧によ
るバッキング力が作用しており、元押しジャッキの押圧
の解放により推進管９を後方に押し戻そうとする力が働
くが、推進管９に取り付けられたバッキング防止金具１
の支持腕３が、推進台８の固定枠４で支持されて後方へ
の移動を防止する。元押しジャッキの縮小が完了する
と、推進管９と元押しジャッキの空間に次の推進管９が
吊り降ろされ、前の推進管９と接続される。推進管９の
接続が完了すると、元押しジャッキを伸長して、推進管
９の後端面を加圧させた状態で元押しジャッキの伸長を
停止させる。そして、前の推進管９に設置したバッキン
グ防止金具１のプレート２を取り外し、再び元押しジャ
ッキを伸長して推進施工を再開する。この時、プレート
２のボルト５を取り外したインサートアンカー６の孔
は、モルタル等によって処理が行われる。

【００１５】図３は、本発明の他の実施形態であるバッ
キング防止方法を説明する横断面図である。推進管９の
両側面には、貫入孔１１が設けられている。貫入孔１１
の大きさは、シールド掘進機先端の面板に作用するバッ
キング力を支持できる貫入棒１２が入るように、あらか
じめ工場等で製作時に取り付けられている。１本分の推
進施工が完了すると、推進管９内より推進管９の壁厚よ
り所定の長さだけ長くした貫入棒１２が貫入孔１１に挿
入され、所定に長さだけ推進管９の外周より突出する。
推進管９より突出した貫入棒１２は、推進台８のＨ型鋼
定規の上に固定した固定枠４と当接してバッキング力を
支持する。

【００１６】貫入棒１２としては、大きなバッキング力
を支持するために、比較的強度のある鋼材が用いられ
る。貫入孔１１は、次の推進管９の接続が完了すると、
貫入棒１２を引き抜き、推進管９内よりめくら蓋をねじ
込み、推進施工中における地下水や土砂の侵入を防止す
る。

【００１７】

【発明の効果】以上のように、本発明の推進管のバッキ
ング防止方法により、土被りが深く、被圧水の高い地盤
での大きなバッキング力に対しても、確実にバッキング
防止金具の支持腕または貫入棒と固定枠の当接で支持す
ることができ、安全で効率の良い推進管の据え付けや接
続が可能となった。

【００１８】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の推進管のバッキング防止方法を説明す
る横断面図である。

【図２】本発明の推進管のバッキング防止方法を説明す
る縦断面図である。

【図３】本発明の他の実施形態であるバッキング防止方
法を説明する横断面図である。

【符号の説明】

１ バッキング防止金具 ２ プレート ３ 支持腕 ４ 固定枠 ５ ボルト ６ インサートアンカー ７ ボルト ８ 推進台 ９ 推進管 １０ 発進坑口壁 １１ 貫入孔 １２ 貫入棒

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】複数の掘削刃を装備した閉鎖型の面板を有
   したシールド掘進機を用いて地中に推進管を埋設する推
   進工法で、初期の推進施工中にシールド掘進機の面板に
   作用する泥水圧や地下水圧による推進方向と逆方向の力
   により推進管が押し戻されるのを防止する方法におい
   て、推進管の後方の両側壁面の対称位置に、予め複数本
   のインサートアンカーを埋め込んでおき、１本分の推進
   管の推進が完了すると、前記インサートアンカーに側壁
   面より所定の長さだけ突出するようにボルトをねじ込
   み、側方に突出する支持腕を有したプレートとよりなる
   バッキング防止金具を前記ボルトによって固設し、前記
   支持腕に当接するように設けた固定枠によって推進管の
   押し戻しを防止することを特徴とする推進管のバッキン
   グ防止方法。
2. 【請求項２】複数の掘削刃を装備した閉鎖型の面板を有
   したシールド掘進機を用いて地中に推進管を埋設する推
   進工法で、初期の推進施工中にシールド掘進機の面板に
   作用する泥水圧や地下水圧による推進方向と逆方向の力
   により推進管が押し戻されるのを防止する方法におい
   て、推進管の後方の両側壁面の対称位置に、予め所定の
   径を有する貫通孔を設けておき、１本分の推進管の推進
   が完了すると各貫通孔に側方に突出するように貫通棒を
   挿入し、前記貫通棒を支持するように設けた固定枠によ
   って推進管の押し戻しを防止することを特徴とする推進
   管のバッキング防止方法。