JP2000302795A - 放射性遷移金属で標識された脂肪酸誘導体 - Google Patents

放射性遷移金属で標識された脂肪酸誘導体

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JP2000302795A JP11112086A JP11208699A JP2000302795A JP 2000302795 A JP2000302795 A JP 2000302795A JP 11112086 A JP11112086 A JP 11112086A JP 11208699 A JP11208699 A JP 11208699A JP 2000302795 A JP2000302795 A JP 2000302795A
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Hideo Saji
英郎 佐治
Yasuhiro Magata
泰寛 間賀田
Yasushi Arano
泰 荒野
Norio Yamamura
典男 山村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体内においてエネルギー基質として認識さ
れ,β酸化を受けて代謝され,該β酸化活性の変化を放
射能消失速度の変化として捉えることができる,放射性
遷移金属で標識された脂肪酸誘導体の提供. 【解決手段】 下記式(1)で示される化合物であっ
て, Q-RCOOH (1) Qは放射性遷移金属と中性の錯体を形成するキレート
基, Rは,R=-(CR12)n-で表され,n=4-9, R
1,R2は互いに独立して,水素または低級アルキル基で
ある直鎖または分岐を有するアルキル基である直鎖また
は分岐を有する放射性遷移金属で標識された脂肪酸誘導
体.

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,放射性遷移金属で
標識された脂肪酸誘導体に関する.さらに詳しくは,生
体内においてエネルギー基質として認識され,β酸化を
受けて代謝され,該β酸化活性の変化を放射能消失速度
の変化として捉えることができる,放射性遷移金属で標
識された脂肪酸誘導体であって,細胞のエネルギー産生
状態を体外から検出することによる生体の放射性画像診
断に有用な脂肪酸誘導体およびその製造法に関する.
【0002】
【従来の技術】細胞のエネルギー産生状態を体外から検
出できる化合物の開発は,生体の病態把握のために極め
て重要である.また,放射性遷移金属は,例えば,放射
性テクネチウム(99mTc)が,短い半減期(6hr)を有
し,適当な強度(141 keV)のγ線を放出し,かつ広く
用いられている99Mo/99mTcジェネレーターによって低い
コストで得られる核種であること等の理由から,放射性
医薬品の標識体としてよく用いられている.しかし,脂
肪酸など細胞のエネルギー産生に関与する母体化合物の
分子内に,生体には存在しない放射性遷移金属元素を保
持するためにはキレート形成部位を導入しなければなら
ないが,生体内での母体化合物の性質を損なわないキレ
ートのサイズ,電荷,脂溶性など薬剤設計上の問題があ
り,現在まで満足できる薬剤の開発は成功していない.
【0003】心筋の細胞のエネルギーは脂肪酸の酸化に
よってまかなわれていることから,効率よく心筋に集積
し,適当に心筋に滞留する放射性標識された脂肪酸は,
虚血性心臓疾患や心筋症の診断に有用な化合物である.
しかし,炭素数14-16の長鎖脂肪酸のω位等にN2S2型のビ
スアミノエタンチオールを結合させて,99mTcを配位し
た化合物が検討されているが,臨床的に実用化されてい
る[123I]-(p-ヨードフェニルペンタデカン酸([123I]-I
PPA)に比較して,心臓への低い集積性のため成功して
いない.また,心筋においてβ酸化を受けて代謝される
か否かについても確認されていない.(Mach, R.H. et a
l. Int. J. Rad. Appl. Instrum. B, 18, 215-226; Jo
nes, G. Et al. Nucl. Med. Biol., 21,117-123).肝臓
においては,一般に腺細胞組織が脂肪酸のβ酸化によっ
てエネルギーを得ている一方で, 脂肪酸のエステル化
も行われていることはよく知られている.しかし,中鎖
脂肪酸誘導体がエステル化されることなく,β酸化のみ
によって代謝され,肝臓でのβ酸化活性の変化を肝臓か
らの放射能消失速度の変化として体外から捉えることが
可能であることが,11Cで標識した中鎖脂肪酸を用いて
示されてはいる(Yamamura,et al. Nucl. Med. Biol.,
25,467-472.)ものの,キレート基を結合し放射性遷移
金属で標識した脂肪酸誘導体がβ酸化のみをを受けて代
謝されるか否かについては未だ知られていない.
【0004】
【発明が解決しようとする課題】かかる状況に鑑み,本
発明は生体内においてエネルギー基質として認識され,
β酸化を受けて代謝され,そのエネルギー代謝状況を体
外から把握することができる放射性遷移金属で標識され
た脂肪酸誘導体を提供することを目的とする.
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は,生体内におい
てエネルギー基質として認識され,β酸化を受けて代謝
され,該β酸化活性の変化を放射能消失速度の変化とし
て捉えることができる,放射性遷移金属で標識された脂
肪酸誘導体である.具体的には,下記式(1)で示され
る化合物であって, Q-RCOOH (1) Qは放射性遷移金属と中性の錯体を形成するキレート
基, Rは,R=-(CR12)n-で表され,n=4-9, R
1,R2は互いに独立して,水素または低級アルキル基で
ある直鎖または分岐を有するアルキル基である直鎖また
は分岐を有する放射性遷移金属で標識された脂肪酸誘導
体である.Qはビスアミノエタンチオール,モノアミノ
-モノアミド-ビスチオールまたはビスアミド-ビスチオ
ールから選ばれる.好ましくは, N-[[[2-(トリフェニ
ルメチル)チオ]エチル]アミノ]アセチル]-S-[トリフェ
ニルメチル]-2-アミノエタンチオールが挙げられる.放
射性遷移金属としては,テクネチウムまたはレニウムか
ら選ばれ,好ましくはテクネチウムが用いられる.本発
明の他の態様は,システアミンとハロゲン化アセチルハ
ライドとを反応させてモノアミンモノアミド化合物を合
成する工程と,該モノアミンモノアミド化合物とω-ハ
ロゲン化脂肪酸エステルと反応させることよりなる,下
記式(1)を有する化合物であって, Q−RCOOH (1) Qは放射性遷移金属と中性の錯体を形成するキレート基
であって,R=-(CR1 2)n-で表され,n=4-9, R1
2は互いに独立して,水素または低級アルキル基であ
る直鎖または分岐を有する請求項1から5のいずれかに
記載の脂肪酸誘導体の製造法である.ハロゲンは,塩
素,臭素,ヨウ素,フッ素のいずれかより選ばれるが,
好ましくは臭素である.
【0006】
【発明の実施の形態】11Cまたは123Iで標識された中鎖
脂肪酸誘導体が,肝臓においてエステル化されることな
くβ酸化を受けて代謝されることから,β酸化活性の変
化を放射能消失速度の変化として体外から捉えることが
可能であることが示されたが,放射性遷移金属で標識し
た脂肪酸については未だ知られていない.放射性遷移金
属で脂肪酸を標識するには,放射性遷移金属と安定で,
小さな単核の錯体を形成するキレート基を脂肪酸に結合
する必要がある.
【0007】本発明における,放射性遷移金属で標識さ
れた脂肪酸誘導体は,下記式(1)で示される化合物で
ある.即ち, Q-RCOOH (1) Qは放射性遷移金属と中性の錯体を形成するキレート
基, Rは,R=-(CR12)n-で表され,n=4-9, R
1,R2は互いに独立して,水素または低級アルキル基で
ある直鎖または分岐を有するアルキル基である直鎖また
は分岐を有する放射性遷移金属で標識された脂肪酸誘導
体である.
【0008】キレート形成基Qは,放射性遷移金属と中
性で安定な単核錯体を形成し,さらには比較的高い脂溶
性を有するキレート基が好ましい.例えば, N2S2型の
ビスアミノエタンチオール,モノアミンモノアミド,ビ
スアミド-ビスチオール等が挙げられ,具体的には,N-
(2-メルカプトエチル)-N'-メチル-2'-メルカプトプロピ
ルエチレンジアミン, N-(2"-メチル-2"メルカプトプロ
ピル)-2-[2'-メチル-2'-(メルカプトプロピル)エチレン
ジアミン, N,N'-ビス(2-メルカプトエチル)エチレンジ
アミン, N-(2"-メチル-2"メルカプトメチルプロピル)-
2-[(2'-メルカプトエチル)アミノ]アセトアミド, N-
(2"-メルカプトエチル)-2-[(2'-メルカプトエチル)アミ
ノ]アセトアミド, N-(2"-メチル-2"メルカプトプロピ
ル)-2-[(2'-メチル-2'-メルカプトプロピル)アミノ]ア
セトアミド, N,N'-ビス(メルカプトアセチル)エチレン
ジアミン等が例示される.脂肪酸は直鎖または分岐を有
する脂肪酸であるが,好ましくはペンタン酸,ヘキサン
酸,ヘプタン酸,オクタン酸,ノナン酸,デカン酸,3-
メチルブタン酸,2-ジメチルプロパン酸,2-メチルオク
タン酸,3-ジメチルオクタン酸等が挙げられる.脂肪酸
のキレート基への結合位置は,キレート基の構成成分の
炭素あるいは窒素のいずれでもよい.キレート基Qと錯
体を形成する放射性遷移金属としては,テクネチウムま
たはレニウムが用いられるが,特にテクネチウムが好ま
しい.
【0009】本発明における,放射性遷移金属と中性で
安定かつ小さな単核錯体を形成するキレート基と結合し
た脂肪酸誘導体の製造法の一つの態様として,システア
ミンとハロゲン化アセチルハライドとを反応させてモノ
アミンモノアミド化合物を合成する工程と,該モノアミ
ンモノアミド化合物とω-ハロゲン化脂肪酸エステルと
反応させることよりなる,下記式(1)を有する化合物
であって, Q−RCOOH (1) Qは放射性遷移金属と中性の錯体を形成するキレート基
であって,R=-(CR1 2)n-で表され,n=4-9, R1
2は互いに独立して,水素または低級アルキル基であ
る直鎖または分岐を有する脂肪酸誘導体の製造法が挙げ
られる.ハロゲンは,塩素,臭素,ヨウ素,フッ素のい
ずれかより選ばれるが,好ましくは臭素である.
【0010】例えば,ヘキサン酸にN-(2"-メルカプトエ
チル)-2-[(2'-メルカプトエチル)アミノ]アセトアミド
(MAMA)を結合させ,99mTcを配位させた化合物([99mT
c]MAMA-HA)を,下記式(2)の如く合成することができ
る.まず,システアミン塩酸塩(1)を塩化トリチルと反
応させ,システアミンのチオール基をトリチル(Tr)保護
した後,クロロホルムに溶解し,トリエチルアミンを加
える.この溶液を,-78℃に冷却したブロモアセチルブロ
マイドのクロロホルム溶液に攪拌しながら滴下し,N-
[[[2-[(トリフェニルメチル]チオ]エチル)アミノ]アセ
チル]-S-(トリフェニルメチル)-2-アミノエタンチオー
ル(Tr-MAMA(3))を得る.
【0011】
【化1】
【0012】次いで,得られた化合物Tr-MAMAおよびジ
イソプロピルエチルアミンをアセトニトリルに溶解した
溶液に,6-ブロモヘキサン酸メチル(4)のアセトニトリ
ル溶液(8 mL)を攪拌しながら滴下し,得られたN-[[[[2-
[(トリフェニルメチル]チオ]エチル)アミノ]カルボニ
ル]メチル]-N-[2[(トリフェニルメチル)チオ]エチル]ア
ミノ-6-ヘキサン酸メチルエステル(5)を5%水酸化ナト
リウム水溶液で加水分解して, N-[[[[2-[(トリフェニ
ルメチル]チオ]エチル)アミノ]カルボニル]メチル]-N-
[2[(トリフェニルメチル)チオ]エチル]アミノ-6-ヘキサ
ン酸(Tr-MAMA-HA(6))を定量的に得ることができる.得
られたTr-MAMA-HA(6)をトリエチルシラン含有TFAで脱ト
リチル化した後,[99mTc]グルコヘプタネートと配位子
交換させて[99mTc]MAMA-HAを得ることができる.
【0013】同様にして,[99mTc]MAMA-HAの代謝を検討
するために,Tr-MAMA-HA(6)の代謝物と考えられる,N-
[[[[2-[(トリフェニルメチル]チオ]エチル)アミノ]カル
ボニル]メチル]-N-[2[(トリフェニルメチル)チオ]エチ
ル]アミノ-4-酪酸(Tr-MAMA-BA)およびN-[[[[2-[(トリフ
ェニルメチル]チオ]エチル)アミノ]カルボニル]メチル]
-N-[2[(トリフェニルメチル)チオ]エチル]アミノ-4-酢
酸(Tr-MAMA-AA)を合成して99mTc標識し,代謝物の標品
として用いた.
【0014】一方,MAMAと同様に99mTcと安定でかつ小
さな錯体を形成するが,錯体が一価の負電荷を有し,水
溶性となるN3S型のメルカプトグリシルグリシルグリシ
ン(MAG)をヘキサン酸に結合して99mTcを標識した脂肪
酸誘導体([99mTc]MAG-HA)は,式(3)に示したように
合成できる.即ち,メルカプト酢酸より合成したS-アセ
チルメルカプト酢酸(9)とN-ヒドロキシスクシミド(NHS)
をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し,混合溶液を10分
間室温で攪拌し,氷冷後,反応液にジシクロヘキシルカ
ルボジイミド(DCC)のTHF溶液を加え,一晩室温で乾燥さ
せる.生成したDCCウレアを濾過により除去し,濾液は
溶媒留去後減圧下で乾燥させる.残査をヘキサンで数回
洗浄し,S-アセチルチオグリコ−ル酸 N-ヒドロキシス
クシミドエステル(SATA)(10)の白色結晶が得られる.
【0015】次いで,グリシルグリシンのアミノ基をBo
c基で保護し,カルボキシル基をDCC存在下でN-スクシミ
ドエステル化した化合物(11)を合成し,得られた化合物
(11)をアセトニトリルに溶解し,これを6-アミノヘキサ
ン酸を溶解した0.2M水酸化ナトリウム水溶液に50-60℃
で滴下して2時間還流後,0℃まで冷却し溶液のpHを3
に調整した後,酢酸エチルにて抽出する.有機層を無水
硫酸カルシウムで乾燥し,溶媒を減圧除去して,アニソ
ール含有トリフルオロ酢酸(TFA)で処理することにより,
脱Bocした後,TFAを減圧留去後,中和した溶液をSATAの
DMF溶液に滴下し,S-アセチルメルカプトグリシルグリ
シルアミノヘキサン酸(S-アセチルMAG-HA)(13)を得るこ
とができる.このS-アセチルMAG-HAを[99mTc]グルコヘ
プタネートと配位子交換させて[99mTc]MAG-HAを得るこ
とができる.
【0016】
【化2】
【0017】99mTcで標識した[99mTc]MAMA-HAの正常
ラットにおける体内分布実験の結果,[99mTc]MAMA-HA
は投与後速やかな肝臓へ放射能集積と,その後の速やか
な放射能消失が観察された.また,血液からも速やかに
消失し,肝臓から洗い出された放射能は腎臓から膀胱へ
と移動し,肝臓で生成した放射性代謝物が尿排泄性であ
ることが示された.腸を含めその他の臓器には顕著な放
射能集積は認めなかった.[99mTc]MAMA-HA投与60分後
の尿中放射性代謝物の逆相HPLCによる分析より,尿中の
放射能の大部分が[99mTc]MAMA-BAと同じ保持時間に溶
出されることが明らかとなった.このことは尿試料と別
途合成した標品[99mTc]MAMA-BAまたは[99 Tc]MAMA-AA
との同時分析により,さらに支持された.加えて,[
99mTc]MAMA-BAをラットに投与した場合,肝臓には集積
せず直接腎臓から膀胱に排泄されたことから,[99mTc]
MAMA-HAの代謝によって生じた[99mTc]MAMA-BAの肝臓へ
の再分布は無視できると考えられた.これらのことは、
生体に投与された[99mTc]MAMA-HAが肝臓でβ酸化さ
れ,[99mTc]MAMA-BAとして尿排泄されることを示唆し
ている.
【0018】[99mTc]MAMA-HAがβ酸化によって[99mT
c]MAMA-BAに代謝されるということは,肝スライスを用
いたインビトロ代謝実験によっても示された.緩衝液中
で肝スライスと[99mTc]MAMA-HAをインキュベートする
と,[99mTc]MAMA-BAが唯一の放射性代謝物として検出
されたが,この緩衝液にβ酸化の阻害剤である2−ブロ
モオクタン酸を添加すると,[99mTc]MAMA-BAの生成は
完全に抑制された.この結果は[99mTc]MAMA-HAが肝臓
でβ酸化に関与する酵素に認識されて代謝を受け,[
99mTc]MAMA-BAを生成していることを示している.
【0019】[99mTc]MAMA-HAのβ酸化による最終放射
性代謝物が[99mTc]MAMA-AAではなく,[99mTc]MAMA-BA
であることは,逆相HPLCによって尿中代謝物と標品とを
同時分析することによって確認された.このことは,ヘ
キサン酸へMAMAを導入することによって,その代謝物で
ある[99mTc]MAMA-BAのβ酸化に関わる酵素の認識を妨
げて, [99mTc]MAMA-AAにまで酸化されずに,[99mTc]
MAMA-HAの最終代謝物が[99mTc]MAMA-BAとなったと考え
られる.以上に述べた如く,6炭素の側鎖をもつ[99mT
c]MAMA-HAのβ酸化による最終放射性代謝物は,意外に
も炭素2の側鎖をもつ[99mTc]MAMA-AAではなく炭素4の
側鎖をもつ[99mTc]MAMA-BAであることが明らかにされ
た.
【0020】一方、 [99mTc]MAG-HAは投与後肝臓にほ
とんど集積されなかった(図1,C,D).表1に示した
ようにオクタノール/水分配係数は,[99mTc]MAG-HAは
[99mTc]MAMA-HAよりも水溶性が高いことを示してい
る.[99mTc]MAG-HAは同じ条件の逆相HPLCで分析した場
合,[99mTc]MAMA-BAとほぼ一致する保持時間に溶出さ
れた(図4).さらに,[99mTc]MAMA-BAもラットに投
与後、肝臓にほとんど集積しなかったことから,[99mT
c]MGAキレート部位自身の電荷も一つの要因ではあるか
もしれないが,[99mTc]MAG-HAの水溶性が大であること
が肝臓への低集積性の大きな要因である.
【0021】本発明により,生体に投与された[99mTc]
MAMA-HAは肝臓に取り込まれた後,β酸化により[99mT
c]MAMA-BAに代謝されるが[99mTc]MAMA-AAにまでは代謝
されないこと,生体においてエネルギー基質として認識
され,代謝される初めての放射性遷移金属標識脂肪酸で
あることが明らかにされた.さらに,導入するキレート
基の脂溶性を適度に選択することにより,特定の臓器へ
の取り込みと生じた放射性代謝物の速やかな尿排泄とが
可能になった.即ち,適切な放射性遷移金属のキレート
基を脂肪酸に導入することによって,生体内でのエネル
ギー基質として放射性遷移金属標識脂肪酸誘導体が認識
され,その放射性消失速度の変化を組織の活性変化とし
て,体外から捉えることが可能としたものであり,本発
明におけるMAMA-HAの合成法は炭素鎖の異なる脂肪酸誘
導体の合成に容易に応用できるところから,各種脂肪酸
の放射性遷移金属で標識された医学画像診断放射性薬剤
の開発に有用である.
【0022】
【実施例】以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明
するが,本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない.得られた物質の測定方法,試薬等は下記のものを
使用した. (1)H1-NMR: JMN-EX270(JEOL社)を用い,化学シフト
値は,テトラメチルシランを内部標準として測定した. (2)質量分析: JMS-HX/HX110A model(JEOL社)を用い
て測定した. (3)逆相HPLC: 逆相カラムCosmosil 5C18-AR-300(15
0mmラ4.6mm;ナカライテスク社製)を用いた. (4)TLC:シリカプレート(Merck Art 5553; メルク
社製)を用いた. (5)99mTcO4 -99Mo/99mTcジェネレーター(ウルトラ
テクネカウ;第一ラジオアイソトープ研究所製)を用
い,生理食塩水溶液として溶出したものを用いた. (6)試薬はすべて特級試薬を用いた. (7)すべての実験動物は雄性ウイスターラット(200-
250g)を用いた.実験動物は実験に先立ち1週間12時間
毎の明暗サイクル条件下で飼育した.その期間,餌およ
び水は自由に摂取させた.
【0023】例1 N-[[[2-[(トリフェニルメチル]チ
オ]エチル)アミノ]アセチル]-S-(トリフェニルメチル)-
2-アミノエタンチオール(Tr-MAMA)(3)の合成 システアミン塩酸塩(11.1g,97.7mmol)を塩化トリチル
(27.3g,97.9mmol)を含む150mLのN,N-ジメチルホルムア
ミド(DMF)中,室温で48時間攪拌し,システアミンのチ
オール基をトリチル(Tr)保護した.反応後,溶媒を減圧
留去し,酢酸エチルで再溶解した後,氷冷下に飽和炭酸
水素ナトリウム溶液を加えることにより,S-トリチルシ
ステアミンを白色結晶として得た.得られた結晶は良く
乾燥させた後,9.97g(28mmol)を50mLのクロロホルムに
溶解し,トリエチルアミン(14mL)を加え攪拌した.この
溶液を,-78℃に冷却したブロモアセチルブロマイド(2.8
4g,14mmol)のクロロホルム溶液(40mL)に攪拌しながら
滴下した.反応溶液は-78℃で30分,次いで室温で24時
間攪拌した.反応溶液をpH3の希硫酸,飽和炭酸ナトリ
ウム水溶液,食塩水の順で洗浄し.有機層を無水硫酸カ
ルシウムで乾燥後,減圧濃縮した.これをクロロホルム
を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーにて粗
精製し,さらに酢酸エチル:ヘキサン(95:5)を溶出
溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに付し,0.95
gの化合物Tr-MAMA(3)を淡黄色の油状物質として得た.
収率は,10%であった.1 H-NMR(CDCl3):δ7.44-7.15(overlapped m,30H), 3.07
(td,2H), 3.02(s,2H), 2.45(t,2H), 2.45(t,2H), 2.38-
2.31(overlapped m,4H). FABMS計算値:m/z 679,測定値 679
【0024】例2 N-[[[[2-[(トリフェニルメチル]チ
オ]エチル)アミノ]カルボニル]メチル]-N-[2[(トリフェ
ニルメチル)チオ]エチル]アミノ-6-ヘキサン酸メチルエ
ステル(5)の合成 塩化水素を溶解したメタノール中で6-ブロモヘキサン
酸を攪拌することで得られた6-ブロモヘキサン酸メチ
ル(4)(160 mg,0.77 mmol)のアセトニトリル溶液(8 mL)
を化合物Tr-MAMA(400 mg,0.59 mmol)およびジイソプロ
ピルエチルアミン(120 mg,1.84 mmol)を2mLのアセト
ニトリルに溶解した溶液に攪拌しながら滴下した.室温
で48時間攪拌後,溶媒を減圧留去し,酢酸エチル:ヘキ
サン(95:5)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグ
ラフィーに付し,117 mgの化合物(5)を淡黄色の油状物
質として得た.収率は,24.6%であった.1 H-NMR(CDCl3):δ7.43-7.15(overlapped m,30H), 3.64
(s,3H), 3.01(td,2H), 2.82(s,2H), 2.40-2.33(overlap
ped m,4H), 2.28-2.22(overlapped m,6H) ,1.59-1.48
(m,2H) , 1.39-119(overlapped m,4H). FABMS計算値:C51H54N2O3S2(M+H+):m/z 807, 測定値 8
07
【0025】例3 N-[[[[2-[(トリフェニルメチル]チ
オ]エチル)アミノ]カルボニル]メチル]-N-[2[(トリフェ
ニルメチル)チオ]エチル]アミノ-6-ヘキサン酸(Tr-MAMA
-HA)(6)の合成 例2で得られた化合物(5)を5%水酸化ナトリウム水溶液
で加水分解することで,Tr-MAMA-HA(6)を定量的に得
た.1 H-NMR(CDCl3):δ7.40-7.14(overlapped m,30H), 2.99
(td,2H), 2.87(s,2H), 2.40-2.33(overlapped m,4H),
2.28-2.20(overlapped m,6H), 1.59-1.48(m,2H) ,1.32-
1.21(overlapped m,4H). FABMS計算値:C50H52N2O3S2(M
+H+):m/z 793, 測定値793
【0026】例4 N-[[[[2-[(トリフェニルメチル]チ
オ]エチル)アミノ]カルボニル]メチル]-N-[2[(トリフェ
ニルメチル)チオ]エチル]アミノ-4-酪酸(Tr-MAMA-BA)の
合成 Tr-MAMAを原料にし,化合物(6)と同様の方法で合成し
た.即ち,Tr-MAMAに,4-ブロモ酪酸エチルを加えて反
応後,酢酸エチル:ヘキサン(95:5)を溶出溶媒とす
るシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し,5%水酸
化ナトリウム水溶液で化合物(5)のメチルエステルを加
水分解して,Tr-MAMA-BAを黄色の油状物質として得た.
収率は3.3%であった.1 H-NMR(CDCl3):δ7.40-7.17(overlapped m,30H), 2.99
(td,2H), 2.87(s,2H), 2.36-2.33(overlapped m,4H),
2.30-2.23(overlapped m,6H), 1.65-1.62(m,2H). FABMS計算値:C48H48N2O3S2(M+H+):m/z 787, 測定値787
【0027】例5 N-[[[[2-[(トリフェニルメチル]チ
オ]エチル)アミノ]カルボニル]メチル]-N-[2[(トリフェ
ニルメチル)チオ]エチル]アミノ-4-酢酸(Tr-MAMA-AA)の
合成 Tr-MAMAを原料にし,化合物(6)と同様にして合成した.
即ち, Tr-MAMAに,2-ブロモ酢酸メチルを加え反応後,
酢酸エチル:ヘキサン(95:5)を溶出溶媒とするシリ
カゲルクロマトグラフィーにて精製,さらに5%水酸化
ナトリウム水溶液でメチルエステルを加水分解すること
で,Tr-MAMA-AAを黄色の油状物質として得た.収率は1
2.7%であった.1 H-NMR(CDCl3):δ7.39-7.14(overlapped m,30H), 3.10
(s,2H), 2.99(s,2H), 2.98(td,2H), 2.50(t,2H), 2.34
(t,2H), 2.24(t,2H). FABMS計算値:C46H44N2O3S2(M+H+):m/z 759, 測定値759
【0028】例6 S-アセチルチオグリコ−ル酸 N-ヒ
ドロキシスクシミドエステル(SATA)(10)の合成 S-アセチルメルカプト酢酸(9)は,Benaryの方法(Benar
y,E. Thiotetronic acid and derivatives. Ber.,46,21
03-2107)に従い,メルカプト酢酸より合成した. S-ア
セチルメルカプト酢酸(9)(5.15g,38.15 mmol)とN-ヒ
ドロキシスクシミド(NHS)(4.45 g, 38.5 mmol)を50 mL
のテトラヒドロフラン(THF)に溶解し,混合溶液を10分
間室温で攪拌した.氷冷後,反応液にジシクロヘキシル
カルボジイミド(DCC)(7.95g, 38.5 mmol)を5mLのTHFに
溶解させた溶液を加え,一晩室温で乾燥させた.生成し
たDCCウレアを濾過により除去し,濾液は溶媒留去後減
圧下で乾燥させた.残査をヘキサンで数回洗浄し,7.69
gのSATAを白色の結晶として得た.収率は86.3%であっ
た.1 H-NMR(CDCl3):δ3.99(s,2H), 2.85(s,4H), 2.43(s,3H)
【0029】例7 S-アセチルメルカプトグリシルグリ
シルアミノヘキサン酸(S-アセチル MAG-HA)(13)の合成 グリシルグリシンのアミノ基をBoc基で保護し,カルボ
キシル基をDCC存在下でN-スクシミドエステル化した化
合物(11)を合成した.得られた化合物(11)を30mLのアセ
トニトリルに溶解し,これを6-アミノヘキサン酸(0.79
mg, 38.5 mmol)を溶解した0.2M水酸化ナトリウム水溶液
に50-60℃で滴下し,その後2時間還流した.0℃まで
冷却後,希硫酸にて溶液のpHを3に合わせた後,酢酸エ
チルにて抽出した.有機層を無水硫酸カルシウムで乾燥
し,溶媒を減圧除去することで,1.41gの化合物(12)を
5%アニソール含有トリフルオロ酢酸(TFA)で処理する
ことにより,脱Bocした.TFAを減圧留去後,残査を20mL
の蒸留水に溶解させ水酸化ナトリウム水溶液で中和し
た.この溶液を20mLのDMFにSATA(1.04g,4.5 mmol)を溶
解させた溶液に滴下し,室温で2時間攪拌した.溶媒留
去後396mgのS-アセチル MAG-HA(13)を白色結晶で得た.
収率は29.1%であった.1 H-NMR(CDCl3):δ8.42(t,1H),8.13(t,1H),7.70(t,1H),
3.72(d,2H),3.66(s,2H),3.65(d,2H),3.03(td,2H),2.36
(s,3H),2.19(t,2H),1.54-1.21(overlappedm, 6H) FABMS計算値:C14H23N3O6S(M+H+):m/z 362, 測定値362
【0030】例8 99mTcの標識 例1-7で合成したそれぞれのリガンドと99mTcとの錯体
形成は[99mTc]グルコヘプタネート([99mTc]GH)との配
位子交換反応によって行った.すなわち,ジェネレータ
ーから溶出された99mTcO4 -の生理食塩水溶液に予め調製
しておいたSn(II)GHの凍結乾燥粉末(4gのグルコヘプタ
ネート(GH)と1.2 mgのSnC12をpH8.6のリン酸緩衝液50mL
に溶解)を溶解させた.GHの最終濃度は3-5 mg/mLであ
った.10分間室温放置後、[99mTc]GH の生成をアセトン
を展開溶媒とするTLC法で確認した.Rf=0.0:[99mTc]G
H,Rf=1.0:99mTcO4 -である.Tr-MAMA-HA(1mg)を反応
バイアル中で5%トリエチルシラン含有TFAで処理するこ
とで脱トリチル化した.TFA除去後1Mの水酸化ナトリウ
ム水溶液で中和し,さらに0.4mLのリン酸緩衝液(0.1
M. pH 8.0)を加えた.この溶液に上記の[99mTc]GH 溶
液(0.4mL)を加え,良く攪拌後1時間室温放置した.Tr
-MAMA-HA は逆相HPCL法で精製した.流速1mL/min,カラ
ム温度30℃の条件下で,移動相には0.05Mリン酸緩衝液
(pH 7.0):メタノール混液(90:10)からメタノール
100%へ,60分間での直線グラディエント溶媒を用いた
(溶出時間23分).同様にして,[99mTc]MAMA-BAおよび[
99mTc]MAMA-AAを得た(溶出時間[99mTc]MAMA-BA:17
分,[99mTc]MAMA-AA:16分).MAG−HAの99mTc標識はS-
アセチル保護体(13)3 mgを0.1 Mのリン酸緩衝液(Ph
8.0)1 mLに溶解し,同量の[99mTc]GH 生理食塩水溶液
を加え攪拌した後,反応混合液を90-95℃で30分間加温
することで行った.冷却後,[99mTc]MAG−HAは逆相HPLC
法で精製した.流速1mL/min,カラム温度30℃の条件下
で,移動相には0.05 Mリン酸緩衝液(pH 7.0):メタノ
ール混液(90:10)からメタノール5O%へ,30分間での
直線グラディエント溶媒を用いた.溶出時間は18分であ
った.放射化学的収率および放射化学的純度は各々の
99mTc標識脂肪酸誘導体の精製に用いた逆相HPLC法とア
セトンを展開溶媒とするTLC法にて求めた(Rf=0.75:[
99mTc]MAMA-HA,Rf=0.58:[99mTc]MAG).
【0031】例9 分配係数の測定 [99mTc]MAMA-HAおよび[99mTc]MAG-HAの分配係数を次の
ようにして行った.各3gの1-オクタノールと0.1M,pH
7.4のリン酸緩衝液の入った試験管に10μlの[99mTc]MA
MA-HAまたは[99mTc]MAG-HAを含む溶液を加え、1分x3回
のボルテックスの後、20分間室温で放置する操作を3回
繰り返し,1000xgで5分間遠心分離した.各層から1mL
ずつ採取し,別々に放射能を測定した.分配係数はcpm/
gの1-オクタノール/緩衝液で表した.[99mTc]MAMA-HA
は僅かであるが有意に[99mTc]MAG-HAより高い脂溶性を
有している.測定結果を表1に示す.
【0032】
【表1】
【0033】例10 SPECTによるラットのイメージン
99m Tc標識脂肪酸誘導体のラット体内分布を,SPECTによ
りイメージングした.すなわち、ラットをペントバルビ
タール麻酔後,それぞれの脂肪酸誘導体を尾静脈より投
与し(15 MBq/0.5 mL生理食塩水),その時点より20秒x
30フレーム,1分x10フレーム,2分x20フレームのダイナミ
ックデータ収集を行った.[99mTc]MAMA-HAは投与後速や
かに肝臓に集積した(図1A).また、投与60分後には
ほとんど全ての放射能が肝臓から排出され,腎臓と膀胱
に存在していた(図1B).一方,[99mTc]MAG-HAの場合
には放射能は投与後直後から肝臓ヘほとんど集積するこ
となく,腎臓から膀胱に排泄されていることが確認され
た(図1C,D).同様に,[99mTc]MAMA-HAより2炭素短い
側鎖をもつ[99mTc]MAMA-BAを投与した場合にも,肝臓に
は殆ど取り込まれることなく,投与初期から腎臓と膀胱
が描出された(図1E).また,投与60分後には膀胱のみ
が描出された(図1F).
【0034】例11 体内分布の測定 [99mTc]MAMA-HA(37 kBq/0.1 mL生理食塩水)をラット
の尾静脈より投与し,一定時間経過後に断頭した.血液
および各臓器を摘出し,重量を測定後,各試料の放射能
を測定した.結果は放射能の減衰補正後,%ID/gを算出
し評価した.表2に[99mTc]MAMA-HAの正常ラットにお
ける体内分布実験の結果を示す.[99mTc]MAMA-HA は
投与後肝臓に高い取り込みを示したが(10.59±0.02%ID
/g,投与5分後),時間とともに肝臓から速やかに消失
した.また,血液からも速やかに消失し、腎臓には高い
放射能が観察されたが、腸を含めその他の臓器には顕著
な放射能集積を認めなかった.
【0035】
【表2】
【0036】例12 インビボでの代謝物の検討 [99mTc]MAMA-HA(15MBq/0.5 mL生理食塩水)をラット
の尾静脈より投与し,60分後に開腹し膀胱より尿を採取
した.尿試料は10kDaカットオフの限外濾過膜(Molcut
II LGC;日本ミリポア社製)で濾過することにより蛋白
を除去し,標識時と同条件下の逆相HPLCで精製した.図
2Aには[99mTc]MAMA-HA, [99mTc]MAMA-BA,[99mTc]MAM
A-AAの典型的なHPLCチャートを示す.[99mTc]MAMA-HA投
与60分後に膀胱より採取した尿中の放射性代謝物を逆相
HPLCで分析した結果、保持時間17分と23分に溶出してお
り、尿中の放射能の82.9±9.0%が保持時間17分の画分
に存在していることが認められた(図2B).また、尿試
料と[99mTc]MAMA-BA標品とを同時に逆相HPLCで分析した
ところ、得られたチャートは保持時間17分と23分の2つ
の放射能ピークを示していたが,尿試料と[99mTc]MAMA-
AAの同時分析では保持時間16分のピークも加えた3つの
放射能ピークが観察された(図2C,図2D).
【0037】例13 インビトロでの代謝物の検討 麻酔下にラットを開腹し,門脈よりO2/CO2(95/5)ガスで
飽和させた20 mMトリス-塩酸緩衝液(塩化カリウム100 m
M,塩化マグネシウム5 mM,リン酸二水素カリウム5 mM
を含む.pH 7.4)を灌流することで脱血した. 直ちに肝
臓を摘出し,夏目製作所製stadie,Riggs型スライサー
を用いて厚さ300μmの肝スライスを作成した.各スライ
スの重量測定後、β酸化阻害剤である2-ブロモオクタ
ン酸(最終濃度100μM)を含む阻害群もしくは含まない
コントロール群を20 mMトリス-塩酸緩衝液中で37℃,5分
間プレインキュベートした.次いで,[99mTc]MAMA-HA
(3.7MBq)を加え、02/CO2(95/5)ガスを通気下に60回毎
分で振盪しつつ37℃,60分間インキュベートした.5 mL
のアセトニトリルを加え,ホモジナイズした後,1000xg
で20分間遠心分離して蛋白質を沈殿させた.上清を減圧
下に濃縮後、径0.22μmのフィルター(Hospital/Pharma
cy Milles GV,ミリポア社)で濾過し、測定試料を調製
した.試料はインビボ代謝物実験と同様の条件の逆相HP
LC法にて分析した.実験に用いた肝スライス中の細胞の
生存率はメディウム中に渇出する乳酸脱水素酵素(LD
H)の活性を測定することで求めた.なお,阻害群とコ
ントロール群の間には実験終了時点で本酵素活性に有意
な差異は認められなかった(阻害群3,285±367IU/L:コ
ントロール群3,175±478IU/L).肝スライスを用いたイ
ンビトロ代謝物実験において,ホモジナイズから抽出ま
での一連の操作で90%以上の放射能が抽出された. 肝
スライスと[99mTc]MAMA-HAを緩衝液中でインキュベー
トした試料を逆相HPLCによる分析したところ,保持時間
17分と23分の2つの放射能ピークが観察された(図3-
A).保持時間17分の画分には全体の放射能の21.2±3.0
%が溶出された.一方,緩衝液中にβ酸化阻害剤を添加
した試料では,保持時間17分の画分は観察されず,未変
化の[99mTc]MAMA-HA の放射能ピークのみが観察された
(図3-B).
【0038】
【発明の効果】本発明により,生体内においてエネルギ
ー基質として認識され,β酸化を受けて代謝され,該β
酸化活性の変化を放射能消失速度の変化として捉えるこ
とができる放射性遷移金属で標識された脂肪酸誘導体の
提供が可能となった.
【図面の簡単な説明】
【図1】SPECTによるラットのイメージングを示す図で
ある.
【図2】尿中の放射性代謝物のHPLCチャートを示す図で
ある.
【図3】肝スライスによるインビトロ代謝物のHPLCチャ
ートを示す図である.
【図4】[99mTc]MAMA-BAと[99mTc]MAG-HAの逆相HPLCチ
ャートを示す図である.
【符号の説明】
1 aは[99mTc]MAMA-AAを示す. 2 bは[99mTc]MAMA-BAを示す. 3 cは[99mTc]MAMA-HAを示す. 4 dは[99mTc]MAG-HAを示す.
フロントページの続き Fターム(参考) 2G045 AA25 CB01 CB26 DA02 FA19 FB08 FB10 GB10 4C085 HH03 JJ01 KA09 KA29 KB09 KB10 KB42 LL20 4H050 AA01 AA02 AA03 AB20 WB14 WB15 WB21

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生体内においてエネルギー基質として認
    識され,β酸化を受けて代謝され,該β酸化活性の変化
    を放射能消失速度の変化として捉えることができる放射
    性遷移金属で標識された脂肪酸誘導体.
  2. 【請求項2】 下記式(1)で示される化合物であっ
    て, Q−RCOOH (1) Qは放射性遷移金属と中性の錯体を形成するキレート
    基,Rは,R=-(CR12) n-で表され,n=4-9,
    1,R2は互いに独立して,水素または低級アルキル基
    である直鎖または分岐を有する請求項1記載の脂肪酸誘
    導体.
  3. 【請求項3】 キレート基Qが,ビスアミノエタンチオ
    ール,モノアミノ-モノアミド-ビスチオールまたはビス
    アミド-ビスチオールから選ばれる1である請求項1ま
    たは2記載の脂肪酸誘導体.
  4. 【請求項4】 放射性遷移金属がテクネチウムまたはレ
    ニウムから選ばれる1である請求項1から3のいずれか
    に記載の脂肪酸誘導体.
  5. 【請求項5】 キレート基QがN-[[[2-(トリフェニルメ
    チル)チオ]エチル]アミノ]アセチル]-S-[トリフェニル
    メチル]-2-アミノエタンチオールである請求項3または
    4記載の脂肪酸誘導体.
  6. 【請求項6】 システアミンとハロゲン化アセチルハラ
    イドとを反応させてモノアミンモノアミド化合物を合成
    する工程と,該モノアミンモノアミド化合物とω-ハロ
    ゲン化脂肪酸エステルと反応させることよりなる,下記
    式(1)で示される化合物であって, Q−RCOOH (1) Qは放射性遷移金属と中性の錯体を形成するキレート
    基,R=-(CR12)n-で表され,n=4-9,R1,R2
    互いに独立して,水素または低級アルキル基である直鎖
    または分岐を有する請求項1から5のいずれかに記載の
    脂肪酸誘導体の製造法.
  7. 【請求項7】 ハロゲンが臭素である請求項6記載の脂
    肪酸誘導体の製造法.
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