JP2000294842A - 酸化物超伝導体薄膜接合素子およびその作製方法 - Google Patents

酸化物超伝導体薄膜接合素子およびその作製方法

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JP2000294842A JP11100670A JP10067099A JP2000294842A JP 2000294842 A JP2000294842 A JP 2000294842A JP 11100670 A JP11100670 A JP 11100670A JP 10067099 A JP10067099 A JP 10067099A JP 2000294842 A JP2000294842 A JP 2000294842A
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oxide
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Masanori Sugawara
昌敬 菅原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 室温において高速動作することのできる、新
しい酸化物超伝導体薄膜結合素子、およびこの酸化物超
伝導体薄膜結合素子を再現性良く容易に作製することの
できる、新しい作製方法を提供する。 【解決手段】 Cuを構成成分として含有した酸化物超
伝導体による接合素子であって、酸化物超伝導体はキャ
リアが局在している薄膜であり、互いに異なるキャリア
密度を有する複数の層がこの薄膜内に存在している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、酸化物超
伝導体薄膜接合素子およびその作製方法に関するもので
ある。さらに詳しくは、この出願の発明は、室温におけ
る高速動作が可能な、全く新しい酸化物超伝導体薄膜接
合素子およびその作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来より、酸化物超伝導体と
して多くのものが知られており、たとえばLaSrCu
O、YBaCuO、BiSrCaCuOなどがその代表
的なものである。これらの酸化物超伝導体においては、
たとえばLaSrCuOではLaをSrにより置換する
量を制御することにより、またYBaCuOではOの欠
損量を制御することにより、キャリア量が制御される。
通常は、Cu原子一個あたりのキャリア量が0.05か
ら0.3程度の範囲で高温超伝導性が発現する。
【0003】しかし、酸化物超伝導体の高温超伝導性
は、このような原子組成のみで決まるものではなく、結
晶構造や組成の不均一性に著しく敏感である。このた
め、従来から知られている高い臨界温度などの超伝導特
性は、結晶構造や組成が極めて均一な結晶において初め
て実現されるものである。また、酸化物超伝導体は、微
量の結晶構造や組成の不均一性の存在により、その超伝
導性を損失するだけでなく、導電特性さえも失って絶縁
体に近づいてしまう。この導電特性の低減および絶縁体
化を「キャリアの局在」と呼ぶ。なお、NbやPbなど
の金属超伝導体ではこのような変化は起こらない。
【0004】したがって、従来では、適切なキャリア密
度を持つ材料について、キャリアの局在性を極力除去す
るために、いかにして原子組成と結晶構造とを均一化し
て高い超伝導特性を維持するかが研究、開発されてき
た。すなわち、酸化物超伝導体においては、組成の均一
性と結晶構造の完全性と結晶境界の除去が最重要事項で
あり、バルク材料と薄膜材料とを問わず、適切に選択さ
れた原子組成の結晶を、十分な酸素供給の下でできるだ
け均一なものにし、さらに十分長い時間をかけたアニー
リングにより結晶構造の完全化と結晶境界の除去を図っ
て、キャリアの局在化を極力排除することに研究・開発
が集中されてきた。
【0005】しかしながら、このようにキャリアの局在
性が排除された酸化物超伝導体については以下のような
問題点があった。すなわち、まず、結晶境界を除去して
キャリアの局在性を排除する方法では超伝導特性を室温
で実現することが不可能であり、よって酸化物超伝導体
を材料とした接合素子の実現も室温では達成できていな
い。
【0006】また、従来の酸化物超伝導体ではその動作
限界周波数が1THz程度であり、近年の高度情報化に
伴い、より高速で動作が可能な接合素子の実現が強く望
まれている。この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑
みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、
室温で動作し、且つ非常に高速な動作が可能である、新
しい酸化物超伝導薄膜接合素子およびその作製方法を提
供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、Cuを構成成分として含
有した酸化物超伝導体による接合素子であって、酸化物
超伝導体はキャリアが局在している薄膜であり、互いに
異なるキャリア密度を有する複数の層がこの薄膜内に存
在していることを特徴とする酸化物超伝導体薄膜接合素
子(請求項1)、およびこの酸化物超伝導体薄膜接合素
子の作製方法であって、酸素欠損を導入することによ
り、または結晶の組成原子の組成を典型的組成から変化
させることにより、または結晶の不完全性を導入するこ
とにより、酸化物超伝導体の薄膜にキャリアを局在させ
ることを特徴とする酸化物超伝導体薄膜接合素子の作製
方法(請求項3)を提供する。
【0008】また、この出願の発明は、Cuを構成成分
として含有した酸化物超伝導体による接合素子であっ
て、キャリアが局在しており、且つ互いに異なるキャリ
ア密度を有する複数の酸化物超伝導体の薄膜が積層され
ていることを特徴とする酸化物超伝導体薄膜接合素子
(請求項2)、およびこの酸化物超伝導体薄膜接合素子
の作製方法であって、酸素欠損を導入することにより、
または結晶の組成原子の組成を典型的組成から変化させ
ることにより、または結晶の不完全性を導入することに
より酸化物超伝導体の薄膜にキャリアを局在させ、互い
に異なるキャリア密度を有する複数の当該酸化物超伝導
体の薄膜を積層させることを特徴とする酸化物超伝導体
薄膜接合素子の作製方法(請求項4)を提供する。
【0009】ここで、この発明の原理について説明す
る。酸化物超伝導体において、それを薄膜結晶とするこ
とにより結晶境界を確定し、且つキャリアを強く局在さ
せると、超伝導性は完全に喪失するばかりでなく、薄膜
結晶内部(以下、バルク領域と呼ぶ)のキャリアは動け
なくなり、導電特性も失われ絶縁体化する。このような
超伝導特性は前述したように従来より周知である。
【0010】しかしながら、この出願の発明の発明者に
よる度重なる研究の結果、従来周知の超伝導特性とは全
く異なる性質を有する新しい量子効果(または量子状
態)が見出された。すなわち、酸化物超伝導体を薄膜結
晶化して結晶境界を確定し、且つこの酸化物超伝導体薄
膜結晶にキャリアを積極的に局在させると、表面から数
nm程度の深さの周辺部分(以下、エッジ領域と呼ぶ)
ではキャリアの局在は生じないが、s電子による三次元
的導電機構による金属超伝導体とは異なり、酸化物超伝
導体のd電子による二次元的導電機構により、バルク領
域に局在している全キャリアはあたかもエッジ領域に存
在しているかのような導電特性を示す。また、バルク領
域の電子励起に0.1eV程度のエネルギーギャップが
現れるため、この局在したバルク電子系は、室温でも超
伝導と双対な巨視的量子干渉効果を示す。たとえば、超
伝導では、外部磁界Hを印加すると、内部で電流が発生
して磁気分極Mを作り、外部磁界Hを打ち消す。これが
完全反磁性である。
【0011】このようにキャリアの局在性を導入した酸
化物超伝導体薄膜結晶では、外部電界Eの存在の下にエ
ッジ領域のキャリア系が変位して静電分極Pを作り、外
部電界Eを打ち消す。この効果は、キャリアの局在性を
導入した酸化物超伝導体薄膜結晶が負の静電容量を持つ
現象として観測される。熱力学的安定性の条件から、負
の静電容量を単独では観測できず、通常の正の静電容量
を持つキャパシタンスと直列にしたキャパシタンス構造
で、全体として正の静電容量の値の変化として観測され
る。
【0012】キャリアの局在性を導入した酸化物超伝導
体薄膜結晶内に発生する巨視的量子干渉効果(または巨
視的量子干渉状態とも呼ぶ)は、酸化物超伝導体薄膜の
二次元導電面と垂直に配置された多数の二次元面内にキ
ャリアが集中することにより形成され、また、このキャ
リアが集中した面のそれぞれが正負に帯電した面領域で
構成されている。たとえば、後述する実施例にあるよう
なc軸配向した酸化物超伝導体薄膜結晶の場合には、薄
膜と垂直に配置された正負帯電面が多数積層したキャリ
ア状態となっているため、薄膜は正負に帯電した二層で
構成されているように見える。
【0013】各キャリア面は、薄膜に印加された電流に
沿った位置、すなわち外部印加電流に平行に配置されて
いる。また、各キャリア面の正帯電領域と負帯電領域は
量子状態が異なるため、異なった量子状態の接合が自然
に形成される。薄膜のバルク領域のキャリアは局在して
いるので、この自然に形成された接合で実際にキャリア
のやり取りが起こるのは、接合のエッジ部分に限られ
る。すなわち、この接合一個は太さが数nm程度の微細
な点接触的接合の性質を持っている。しかも、キャリア
面のバルク領域の全局在キャリアが、あたかもこの点接
触的接合を動くような特性を持つ。実施例にあるc軸配
向の薄膜では、薄膜に垂直に、且つ外部電流に平行に配
置された多数のキャリア面のエッジ部分で形成された点
接触的接合の集合として働く。そのため、たとえば、数
mm平方の寸法の薄膜でも数十THzのようなレーザ光
と量子干渉効果を生ずることが可能となる。
【0014】この発明では、基本的には上述したように
キャリアの局在性を積極的に導入した酸化物超伝導体薄
膜結晶内に自然に形成される電荷二重層による点接触的
接合の特性を利用している。この酸化物超伝導体薄膜結
晶内において実際の薄膜電流はエッジ領域に流れる。た
とえばc軸配向の薄膜の場合、薄膜に垂直のc軸方向の
電流が点接触的接合の集合に流れることになる。後述の
実施例に見られるように、これらの点接触的接合は、従
来の超伝導体特性が実現する温度よりもさらに高い温
度、たとえば室温、においても以下のような巨視的量子
干渉効果を生じる。
【0015】直流的に観測される静電的な干渉パター
ンが観測される。 周波数が少なくとも数十THz(たとえば少なくとも
30THz(波長10μメータ))のレーザ光と量子干
渉効果を生じ、交流ジョセフソン効果のジャピロステッ
プと双対な効果や、照射角に依存した干渉効果を示す。
また、この発明では、たとえばc軸配向の酸化物超伝導
体薄膜であって、異なったキャリアドープ量の局在性を
導入した複数の酸化物超伝導体薄膜、すなわちキャリア
が局在され、且つ互いに異なるキャリア密度を有する複
数の酸化物超伝導体薄膜、を積層させることにより、上
記の電荷二重層を人工的に形成させてもよく、この場合
では、新しい巨視的量子干渉効果の再現性を向上するこ
とができる。
【0016】なお、以上のような巨視的量子干渉効果が
最も強く現れるのは、酸化物超伝導体の材料となる酸化
超伝導物質のドープ量がx=1/2,1/4,1/6,
・・・などのx=1/(2n)の近傍のときであるた
め、ドープ量はx=1/2,1/4,1/6,・・・な
どのx=1/(2n)の近傍とすることが好ましい。ま
た、x=1/(2n)の近傍以外であっても、巨視的量
子干渉効果は生じる。
【0017】上述したように、この出願の発明は、従来
では極力排除してきたキャリアの局在性と結晶境界の存
在を逆に積極的に取り入れた酸化物超伝導体薄膜により
構成した接合素子であり、キャリアの局在性と結晶境界
の存在を積極的に利用することによって、従来の高温超
伝導体技術では全く予想されもされなかった、超電導と
は全く異質で新しい巨視的量子干渉効果が、超電導性と
導電特性を抑制した状態で発現されるようになる。そし
て、この巨視的量子干渉効果は、高温超電導特性よりも
高温で動作が可能であり、また高周波特性にも優れてい
る。
【0018】したがって、この発明の酸化物超伝導体薄
膜接合素子は、従来技術では全く不可能であった室温下
でも動作し、且つ、従来技術の動作限界周波数が1TH
zであったのに対し、少なくとも数十THz程度で動作
する。動作限界周波数は100THz程度にも達すると
考えられる。キャリアの局在性の導入は、酸素欠損を導
入することにより、または結晶の組成原子の組成を典型
的組成から変化させることにより、または結晶の不完全
性を導入することにより効果的に、且つ再現性良く行な
うことができるが、キャリアが比較的強く局在されれば
よいので、これらの方法に限られるものではない。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、添付した図面に沿って実施
例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく
説明する。
【0020】
【実施例】図1は、この発明の一実施例である酸化物超
伝導体薄膜接合素子を例示したものである。たとえばこ
の図1に例示した酸化物超伝導体薄膜接合素子は、(1
00)SrTiO3 の基板(2)上に、第一酸化物超伝
導体(1a)と第二酸化物超伝導体(1b)との積層構
造を有している。第一酸化物超伝導体(1a)は、Sr
ドープ量xが0.23[=1/4−0.02]であるL
2-x Srx CuO4 の酸化超伝導物質によりなる薄膜
であり、第二酸化物超伝導体(1b)は、Srドープ量
xが0.27[=1/4+0.02]であるLa2-x
x CuO4 の酸化超伝導物質によりなる薄膜である。
そして、これら第一酸化物超伝導体(1a)および第二
酸化物超伝導体(1b)はそれぞれ、成膜時に酸素欠損
を導入することによりキャリアが局在されており、且つ
互いに異なるキャリア密度を有している。それぞれの膜
厚は100nmである。また基板(2)は1mmの厚さ
を有している。電流端子(3a)(3b)および電圧端
子(4a)(4b)は、第二酸化物超伝導体(1b)と
接続されている。
【0021】このような第一酸化物超伝導体(1a)お
よび第二酸化物超伝導体(1b)による二層構造とする
ことにより、キャリアの一部がドープ量の大きな領域か
ら小さな領域へと拡散するため、電荷二重層の形成が促
進される。キャリアが局在した単層膜においても、キャ
リアが局在した酸化物超伝導体で生じる特殊な量子干渉
効果のため、自然に電荷二重層構造が形成されるが、本
実施例のような二層構造をとることにより、より確実に
再現性良く電荷二重層構造が形成される。電荷二重層構
造では、それぞれの帯電領域は異なった量子状態とな
り、正負帯電二領域間の境界領域にある無電荷層を挟ん
で正負帯電二領域間に接合が形成される。
【0022】さらにこの発明の酸化物超伝導体薄膜接合
素子では、たとえば周波数30THz(波長10μメー
タ)のCO2レーザ光照射時に、室温でも、薄膜に平行
方向のコンダクタンスおよび垂直方向のコンダクタンス
の変化として交流ジョセフソン効果と双対な巨視的量子
干渉効果を観測することでき、超伝導ジョセフソン接合
素子と双対な性質が存在していることがわかった。
【0023】このような巨視的量子干渉効果の直流的干
渉パターンを、図2に例示したこの発明の酸化物超伝導
体薄膜接合素子の一例を用いて観測した。この図2に例
示した酸化物超伝導体薄膜接合素子は、x=0.23の
La2-xSrx CuO4 の第一酸化物超伝導体(1a)
およびx=0.27のLa2-x Srx CuO4 の第二酸
化物超伝導体(1b)の積層構造と、この積層構造が形
成されているSrTiO3 の基板(2)と、それらを挟
んだ下部Pd電極(5a)および上部Pd電極(5b)
とからなる多層構造素子である。また、全体の容量構造
の下部電極に正電圧、上部電極に負電圧が印加される。
第一酸化物超伝導体(1a)および第二酸化物超伝導体
(1b)はともに、酸素欠損によりキャリアに局在性を
持たせており、一部のキャリアの拡散により、正負帯電
層を形成し、無電荷の境界領域(6)を介して接合が形
成されている。なお、図2の例では、SrTiO3 基板
(2)は厚さ1mmを有し、第一酸化物超伝導体(1
a)および第二酸化物超伝導体(1b)はc軸配向薄膜
である。
【0024】この図2に例示した酸化物超伝導体薄膜接
合素子について、室温で、第一酸化物超伝導体(1a)
および第二酸化物超伝導体(1b)に対する静電容量C
LSCOを測定したところ、図3(a)(b)に例示したよ
うな干渉パターンが得られ、誘電的な巨視的量子干渉効
果が存在することが確認できた。La2-x Srx CuO
4 薄膜の静電容量CLSCOは次式で表される。
【0025】
【数1】
【0026】この式において、VLSCOは第一酸化物超伝
導体(1a)および第二酸化物超伝導体(1b)に加わ
る電圧、−QLSCOは第一酸化物超伝導体(1a)および
第二酸化物超伝導体(1b)に存在する負電荷である。
なお、図3(a)は第一酸化物超伝導体(1a)および
第二酸化物超伝導体(1b)の膜厚がそれぞれ75nm
の場合、図3(b)は第一酸化物超伝導体(1a)およ
び第二酸化物超伝導体(1b)の膜厚がそれぞれ45n
mの場合における干渉パターンの一測定結果を例示して
いる。
【0027】この誘電的量子干渉効果に基づき、たとえ
ば、原理的に図4に例示したような構造を有し、半導体
FETを理想化したような室温で動作するトランジスタ
が可能となる。すなわち、図4に例示したこの発明の酸
化物超伝導体薄膜接合素子の一例としてのトランジスタ
は、キャリアが局在され、且つ互いに異なるキャリア密
度を有するa軸配向薄膜であるLa2-x Srx CuO4
(x=0.23)の第一酸化物超伝導体(1a)とa軸
配向薄膜であるLa2-x Srx CuO4 (x=0.2
7)の第二酸化物超伝導体(1b)とを、無電荷の境界
領域(6)を介して対向させて配置した構造を有してい
る。また、境界領域(6)の両側には一対の第一ゲート
電極(5c)が設けられ、境界領域(6)の穴には第二
ゲート電極(5d)が設けられており、一対の第一ゲー
ト電極(5c)の間にゲート電圧VG を印加し、または
片側の第一ゲート電極(5c)若しくは両側の第一ゲー
ト電極(5c)と第二ゲート電極(5d)との間にゲー
ト電圧VG を印加することにより、第一酸化物超伝導体
(1a)と第二酸化物超伝導体(1b)との間を流れる
電流が制御されるようになっている。そして、このトラ
ンジスタは、図2の接合素子に誘電的量子干渉効果をも
たらした物理機構と同一の機構により、微小なゲート電
圧VG の印加により動作し、図5に例示したようにON
状態ではゼロ抵抗となり、OFF状態では高抵抗を示し
ている。またその動作上限周波数は数十THzに達する
と考えられる。
【0028】したがって、この発明により、誘電的量子
干渉効果に基づいて優れた特性を有するトランジスタ
(たとえば誘電的量子干渉トランジスタと呼ぶこととす
る)を実現することができる。以下に、さらに詳しく、
この発明の酸化物超伝導体薄膜接合素子における誘電的
量子干渉効果の発生機構について、図6(b)に例示し
たこの発明の酸化物超伝導体薄膜接合素子としての容量
素子を用いて、図6(a)に例示した従来の電流端子の
ない超伝導dcSQUID(=Superconducting QUantu
m InterferenceDevice , 超伝導量子干渉素子)と対比
させて説明する。
【0029】図6(a)の超伝導dcSQUIDは、超
伝導ループ(ア)に二つのジョセフソン接合(イ)
(ウ)が設けられて構成されている。この図6(a)の
超伝導dcSQUIDでは、そのループ電流Iは次式で
与えられる。
【0030】
【数2】
【0031】したがって、もし超伝導ループ(ア)内部
に磁束を侵入させるような駆動力が働く場合、ジョセフ
ソン接合(イ)(ウ)におけるトンネル障壁を通過して
侵入する磁束Φexは次第に増加するが、それにしたがっ
て電流Iは数2に従って変動する。図6(b)の容量素
子は、下部Pd電極(5a)に正電圧、上部Pd電極
(5b)に負電圧を印加した場合のものである。電荷−
LSCOは、La2-x Srx CuO4 (x=0.23)の
第一酸化物超伝導体(1a)およびLa2-x Srx Cu
4 (x=0.27)の第二酸化物超伝導体(1b)に
上部Pd電極(5b)から注入され、FQHE(=Frac
tional Quantum Hall Effect,分数量子ホール効果)が
生じる領域である第一酸化物超伝導体(1a)および第
二酸化物超伝導体(1b)内に蓄積される。この電荷−
LSCOの絶対値|QLSCO|は、第一酸化物超伝導体(1
a)および第一酸化物超伝導体(1b)内に加わる電圧
LSCO(上側が正で下側が負、図2参照)に比例する。
このように、VLSCOの方向が、容量構造全体に加わる電
圧と逆方向を向くのは、以下に説明する不容量特性のた
めである。他方、−QLSCOは、|QLSCO|に比例した正
電荷Qex>0を境界領域(6)に呼びこむように動く。
すなわち、Qex>0はVLSCO>0に比例する。Qexは次
式で与えられる。
【0032】
【数3】
【0033】このQexの変化に対応して、図6(b)の
第一酸化物超伝導体(1a)のエッジ領域(11a)お
よび第二酸化物超伝導体(1b)のエッジ領域(11
b)に、FQHE準粒子がループ状に流れる。次式は、
このループ状のFQHE準粒子流Jを示したものであ
る。
【0034】
【数4】
【0035】FQHE準粒子の持つ位相量子(つまり等
価的な磁束量子)の環状流は、外部から第一酸化物超伝
導体(1a)のバルク領域(12a)および第二酸化物
超伝導体(1b)のバルク領域(12b)に電荷を呼び
こむかまたは追い出すような電界を発生させる。このバ
ルク電荷の変化ΔQLSCOはFQHE準粒子流Jに比例す
る。したがって、La2-x Srx CuO4 (x=0.2
3)の第一酸化物超伝導体(1a)およびLa2-x Sr
x CuO4 (x=0.27)の第二酸化物超伝導体(1
b)に対応する容量を測定すると、
【0036】
【数5】
【0037】のような干渉パターンが得られる。上式に
おいてK1 およびK2 は定数である。図7(a)(b)
は、各々、図6(b)の容量素子において観測された干
渉パターンの一例を示したものであり、図7(a)は第
一酸化物超伝導体(1a)および第二酸化物超伝導体
(1b)の膜厚がそれぞれ75nmの場合、図7(b)
は第一酸化物超伝導体(1a)および第二酸化物超伝導
体(1b)の膜厚がそれぞれ45nmの場合のものであ
る。
【0038】これら図7(a)(b)から明らかなよう
に、電圧VLSCOの変化に伴い、〜12V周期と〜6V周
期の二種類のパターンが重なって現れていることがわか
る。このことは、α=2πVLSCO/12としたときのs
inα/αおよびsin2α/2αを例示した図8から
明確である。このように二種類の周期の存する理由とし
ては、FQHE面が一枚で単独に動作するモードと、二
枚が協調して一個の素子として動作するモードとが、等
確率で存在するためであると考えられる。
【0039】ここで、この発明の酸化物超伝導体薄膜接
合素子における誘電的量子干渉効果で重要となるFQH
E(=分数量子ホール効果)の「バルク状態」と「エッ
ジ状態」について説明する。図6(b)に例示したよう
な第一酸化物超伝導体(1a)および第二酸化物超伝導
体(1b)における表面から深さ数nmのエッジ領域
(11a)(11b)の状態をFQHEの「エッジ状
態」とよび、エッジ領域(11a)(11b)を除いた
内部の領域であるバルク領域(12a)(12b)の状
態をFQHEの「バルク状態」と呼ぶ。「バルク状態」
のFQHE準粒子は、不均一なポテンシャルにピン止め
され、局在する傾向をもち、「エッジ状態」のFQHE
準粒子は、特別な一次元流体状態にあり、局在すること
がない。さらに、FQHEの特殊な性質として、局在し
ている全ての「バルク状態」のFQHE準粒子が、あた
かもエッジ領域に存在して動いているように、エッジ領
域のFQHE準粒子電流Jが流れる。
【0040】「バルク状態」のFQHE準粒子励起エ
ネルギー 第一酸化物超伝導体(1a)および第二酸化物超伝導体
(1b)のドープ量xが決まると、それに対応してFQ
HEのバルク状態が決まり、その場合のFQHE励起エ
ネルギーEs (x)が決まる。ここでsはランク数であ
る。酸化物超伝導体La2-x Srx CuO4 のホールキ
ャリア系に対しては、このFQHE励起エネルギーEs
(x)はドープ量xの関数として、たとえば図9に示し
たように計算で求められる。この図9において、縦軸は
s (x)をFQHE準粒子電荷qで割った値であり、
横軸はドープ量xである。
【0041】この結果は、図6(b)の容量素子で実験
的に求められた静電容量CLSCOのx依存性から求められ
た値と一致している。上述の実施例のような二種類の酸
化物超伝導体である第一酸化物超伝導体(1a)および
第二酸化物超伝導体(1b)を用いる場合には、第一酸
化物超伝導体(1a)のドープ率はx=1/2nの近傍
の値でE1 (x)、E2 (x)などが存在する範囲内に
選ぶことが好ましい。たとえば、x=1/4±0.1〜
0.25またはx=1/6±0.05〜0.1程度とす
ることができる。
【0042】「エッジ状態」のFQHE準粒子のエネ
ルギー状態 一方、図10に例示したように、試料表面のエッジ領域
(11a)(11b)では、キャリアの閉じ込めポテン
シャルの存在により、基底状態の「ランダウ準位」が上
向きに折れ曲がる。このエッジ領域(11a)(11
b)には、バルク状態のFQHE準粒子を一般化した独
特なFQHE準粒子状態をとり、Luttinger 液体と呼ば
れる一次元の液体を形成する(X.G.Wen,Phys.Rev.Lett.
18,2206; C.L.Kane and M.P.A.Fisher,Nature,389,119
(1997) 参照)。このFQHE準粒子状態は、x=ν0
=1/2nで決まる分数電荷を持ち、FQHE準粒子の
流れの方向に電流を発生するのみでなく、FQHE準粒
子が位相粒子を持つため、FQHE準粒子の流れと垂直
に電界を発生するため、誘電的量子干渉効果において重
要な役割を果たす。
【0043】ところで、正負に帯電したバルク領域(1
2a)(12b)の寸法数nm程度の境界領域(たとえ
ば図2における(6))は、弱いFQHE状態にあり、
外部電荷の侵入が他の領域より容易である。ここでは、
バルク領域(12a)(12b)(12a)(12b)
の帯電状態と境界領域(6)への外部電荷の侵入につい
て説明する。
【0044】たとえば図11(a)(b)に例示したよ
うに、c軸配向薄膜の第一酸化物超伝導体(1a)のバ
ルク領域(12a)および第二酸化物超伝導体(2b)
のバルク領域(12b)は、それぞれ正負に帯電してい
る。この帯電は、キャリアの局在性を導入したc軸配向
の酸化物超伝導体薄膜では、単一の層でも基底状態で自
然に発生するものであり、正負の帯電電荷は基底電荷と
呼び、またこの正負の帯電層の構造を電荷ドメイン構造
と呼ぶことができる。しかし、上記の実施例で述べたよ
うにドープ率の異なった二種類の酸化物超伝導体である
第一酸化物超伝導体(1a)および第二酸化物超伝導体
(1b)を用いることにより、電荷の拡散現象によっ
て、この電荷ドメイン構造をより再現性良く生じさせる
ことができる。
【0045】電荷ドメイン構造で、基底電荷のみが存在
する場合には、化学ポテンシャルは電荷ドメイン構造内
で一定であり、最低エネルギー状態にある。帯電量が基
底電荷量からずれる場合にエネルギーが上昇する。基底
状態から電荷や電位がずれた場合、FQHE系の「過剰
電荷排除性」により、電荷のズレと電位のズレの間に、
【0046】
【数6】
【0047】が成り立つ。電荷侵入距離λs は〜200
nm程度の値をとる。上式から、電荷のズレと電位のズ
レとは逆符合となることから、図2や図11(b)に例
示したように、Pd電極(5e)に負電圧を加え負電荷
−QLSCOを注入した場合、SrTiO3 の基板(2)側
からみて、第一酸化物超伝導体(1a)および第二酸化
物超伝導体(1b)の電位が上昇する。すなわち、第一
酸化物超伝導体(1a)および第二酸化物超伝導体(1
b)に加わる電圧VLSCOが正となる。
【0048】この負電荷−QLSCOが小さいと、境界領域
(6)への外部電荷(7)の侵入はない。この状態は、
超伝導で言えば磁束の侵入のないマイスナー状態に対応
し、電子系の波動関数は不変に保たれる。逆に、負電荷
−QLSCOが大きいと、側面から外部にもれた電気力線の
一部が外部電荷(7)をバルク領域(12a)(12
b)内に呼びこむ働きをする。この外部電荷(7)は、
図11(b)に例示したように、「過剰電荷排除性」が
弱い境界領域(6)に侵入する。これは、超伝導で言え
ば、ジョセフソン接合のトンネル障壁領域や超伝導量子
干渉素子のループ内に磁束が侵入した場合に対応する。
このような外部電荷(7)の侵入に伴い、この発明の酸
化物超伝導体薄膜接合素子における誘電的量子干渉効果
があらわれる。
【0049】ここで、従来の超伝導体におけるジョセフ
ソン効果とこの発明における上述した誘電的量子干渉効
果における位相量子トンネル効果とを対比して定性的に
説明する。図12(a)に示した従来例では、超伝導体
(エ)が絶縁体または弱い超伝導体のトンネルバリア
(オ)を介して結合された構造において、結合領域に沿
って磁束量子Φ0 が通過する。超伝導体(エ)は、反磁
性の性質があるので、この磁束量子Φ0 を追い出すよう
なローレンツ力を発生させる。このため、電子対の流れ
である超伝導電流による遮蔽電流Is が流れる。磁束量
子Φ0 が出て行くときには反対方向の遮蔽電流−Is
流れる。結果的に、通過磁束Φのとき、
【0050】
【数7】
【0051】なる超伝導電流が流れる。これがジョセフ
ソン効果である。一方、図12(b)に示した例では、
ジョセフソン効果での電子対の役割をするのが、エッジ
領域(11)で一次元流体を構成するエッジFQHE準
粒子である。このエッジFQHE準粒子は、位相量子±
Φ0 (=等価的な磁束量子)と分数電荷(x=1/2n
の基底状態の近傍では、q=±q0 /2n[但しq0
2|e|])を持つ。したがって、エッジ領域(11)
に添うエッジFQHE準粒子の流れは、分数電荷の流れ
である一方、位相量子の流れでもあり、流れと位相量子
の方向に垂直に電圧VS =−dΦ/dtを生じる。位相
量子でもあるエッジFQHE準粒子は境界領域(6)を
越えてトンネルする。このエッジFQHE準粒子のトン
ネル効果、すなわち位相量子のトンネル効果は、前述の
図12(a)のジョセフソン効果の電子対トンネルの場
合と双対な電気現象をもたらし、境界を通過する外部電
荷量がQexであるとき、外部電荷(7)の流れを妨げる
方向を正として、外部電荷(7)の流れと平行に、
【0052】
【数8】
【0053】なる電圧を発生する。このジョセフソン効
果と双対な効果を位相量子トンネル効果と呼ぶ。この位
相量子トンネル効果には以下の特徴がある。 ジョセフソン効果にdc効果とac効果があるよう
に、位相量子トンネル効果にもdc効果とac効果の存
在があると考える。 ジョセフソン接合内にある磁束量子数が1程度である
小さな接合でないとジョセフソン効果が観測されにくい
ように、位相量子トンネル効果の明確な観測のためには
位相量子トンネル効果素子のなかのノーマル電荷が1程
度の小さな素子であることが望まれる。この条件は、エ
ッジ領域の一次元流体を用いれば常に満たされる。
【0054】ac効果の観測で加える高周波は、ジョ
セフソン効果では超伝導ギャップエネルギーで制限され
るためにマイクロ波やサブミリ波であるのに対し、位相
量子トンネル効果ではほぼキャリアの零点振動エネルギ
ー(たとえば〜0.1eV以上)で制限されるために遠
赤外を用いることが可能であると考える。また、エッジ
領域(11)のFQHE準粒子の流れは、位相量子Φ0
の流れであるとともに、分数電荷qの流れでもある。こ
の分数電荷qの流れにより作られる電流Ixsは、ゼロ抵
抗で流れる超電流であり、またその方向は位相量子Φ0
の動きと平行である。位相量子Φ0 の流れで作られる起
電力Vs は、流れと常に垂直である。分数電荷qの流れ
で作られる超電流は次式で与えられる。
【0055】
【数9】
【0056】最後に、上述した誘電的量子干渉効果によ
るこの発明の酸化物超伝導体薄膜接合素子について、ジ
ョセフソン効果による従来のSQUID(=Supercondu
cting QUantum Interference Device ,超伝導量子干渉
素子)に対応させてより詳細に説明する。まず、単独の
ジョセフソン接合の超電導電流Is は、接合を通過する
磁束Φにより決まり、
【0057】
【数10】
【0058】で与えられる。図13(a)はdcSQU
IDの一例を示した概念図であり、このdcSQUID
では、超伝導ループ(ア)に二つのジョセフソン接合
(イ)(ウ)が設けられている。各ジョセフソン接合
(イ)(ウ)を横切る磁束がΦ1 、Φ2 であるとき、各
ジョセフソン接合(イ)(ウ)を流れる超伝導電流
1 、I 2 は、数10より、
【0059】
【数11】
【0060】で与えらえる。ただし、接合臨界電流I0
が等しいとする。したがって、全SQUID電流Iは次
式となる。
【0061】
【数12】
【0062】そして、
【0063】
【数13】
【0064】であり、且つ超伝導ループ(ア)内の磁束
はΦ=Φ1 −Φ2 であることを考慮すると、SQUID
電流Iの最大値Imax は、
【0065】
【数14】
【0066】となる。また、上下の電流端子(カ)
(キ)がなく、SQUID電流Iがゼロの場合、ループ
電流I1 =−I2 は、
【0067】
【数15】
【0068】で与えられる。一方、図13(b)に例示
したこの発明の酸化物超伝導体薄膜接合素子では、上述
のSQUIDと全く双対な考察を、境界領域(6)近傍
で上下方向を向くエッジ準粒子流(=位相量子流)Jx
=dNx /dtについて行なうことができる。ただし、
エッジ準粒子電流Ix は、準粒子の分数電荷をqとし
て、
【0069】
【数16】
【0070】で与えられ、また、y方向、つまり境界領
域(6)の近傍で左右方向を向く電圧Vy は、
【0071】
【数17】
【0072】で与えられる。以下に二つの場合にわけて
説明する。境界領域(6)近傍で//x方向の電流Ix =qJx
境界領域(6)近傍で//y方向の電圧Vy =Φ0 x
測定する場合 この場合が、前述した図4に例示した誘電的量子干渉ト
ランジスタの場合に対応する。そして、エッジ準粒子流
x および電圧Vy について、上述の数14に双対な関
係が次式のようになりたつ。
【0073】
【数18】
【0074】//x方向の電流Ix =qJx がゼロでル
ープ準粒子流を測定する場合 この場合が、前述した図6(b)に例示した容量素子の
場合に対応する。この条件では、Q1 =−Q2 =Q/2
が満たされる必要がある。ここで、Q1は境界領域
(6)に左側から侵入する外部電荷、Q2 は境界領域
(6)から右側へ出る外部電荷であり、またQ=Q1
2 である。したがって、境界領域(6)の両端から外
部電荷を同時に呼びこむか、追い出すことでQを変化さ
せなくてはならない。エッジ準粒子流はループ状に流
れ、次式で表される。
【0075】
【数19】
【0076】エッジ準粒子流の運ぶ位相量子の流れで誘
起される電圧は、外部からバルク領域(12b)へ、ま
たはバルク領域(12a)(12b)から外部へと電荷
を移動させ、バルク領域(12a)(12b)内の電荷
LSCOを増減する働きをする。したがって、この場合に
は、エッジ領域(11a)(11b)のFQHE準粒子
のループ電流の大きさJLOOP(前述の数4におけるJと
同じ)は、バルク領域(12a)(12b)の電荷の変
化を通して静電的な方法で測定する必要がある。この測
定によって得られた干渉パターンは、たとえば、前述し
た図7(a)(b)に例示したようになる。
【0077】以上の二つのモードで動作するこの発明の
酸化物超伝導体薄膜接合素子は、たとえば誘電干渉素子
(=Dielectric Interferrometer,DIN)と呼ぶこと
ができる。もちろん、この発明は以上の例に限定される
ものではなく、細部については様々な態様が可能である
ことは言うまでもない。
【0078】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って、キャリアを局在させることにより、超電導性と導
電特性を抑制した状態で発現する超電導と双対な性質を
持つ新しい巨視的量子効果を利用した、単層または複数
層の酸化物超伝導体薄膜により構成される結合素子であ
って、室温における高速動作が可能な、新しい酸化物超
伝導体薄膜接合素子、およびこの接合素子を再現性良く
容易に作製することのできる、新しい作製方法が提供さ
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)(b)は、各々、この発明の一実施例で
ある酸化物超伝導体薄膜接合素子の要部構成を例示した
平面図および正面図である。
【図2】この発明の別の一実施例である酸化物超伝導体
薄膜接合素子を例示した概念図である。
【図3】(a)(b)は、各々、図2の酸化物超伝導体
薄膜接合素子における誘導的量子干渉パターンの一測定
結果を例示した図である。
【図4】この発明の酸化物超伝導体薄膜接合素子の一実
施例である誘電的量子干渉トランジスタを例示した概念
図である。
【図5】図4の誘電的量子干渉トランジスタにおけるゲ
ート電圧と電流との関係を例示した図である。
【図6】(a)(b)は、従来の超伝導SQUIDおよ
びこの発明の酸化物超伝導体薄膜接合素子である容量素
子を例示した概念図である。
【図7】(a)(b)は、図6(b)の容量素子におけ
る誘電的量子干渉パターンの一測定結果を例示した図で
ある。
【図8】図7の誘電的量子干渉パターンの一測定結果を
解析するために行われた干渉パターンの計算結果であ
り、干渉周期が1倍と2倍の例を示した図である。
【図9】FQHE準粒子励起エネルギーのドープ量依存
性を例示した図である。
【図10】エッジ状態のFQHE準粒子の準位を例示し
た概念図である。
【図11】(a)(b)は、各々、この発明の酸化物超
伝導体薄膜接合素子を例示した概念図である。
【図12】(a)(b)は、各々、従来のジョセフソン
効果およびこの発明の誘電的量子干渉効果における位相
量子トンネル効果についての説明図である。
【図13】(a)(b)は、各々、従来のdcSQUI
Dおよびこの発明の酸化物超伝導体薄膜接合素子の一例
を示した概念図である。
【符号の説明】
1a 第一酸化物超伝導体 1b 第二酸化物超伝導体 11,11a,11b エッジ領域 12a,12b バルク領域 2 基板 3a,3b 電流端子 4a,4b 電圧端子 5a 上部Pd電極 5b 下部Pd電極 5c 第一ゲート電極 5d 第二ゲート電極 5e Pd電極 6 境界領域 7 外部電荷 ア 超伝導ループ イ,ウ ジョセフソン接合 エ 超伝導体 オ トンネルバリア カ,キ 電流端子

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cuを構成成分として含有した酸化物超
    伝導体による接合素子であって、酸化物超伝導体はキャ
    リアが局在している薄膜であり、互いに異なるキャリア
    密度を有する複数の層がこの薄膜内に存在していること
    を特徴とする酸化物超伝導体薄膜接合素子。
  2. 【請求項2】 Cuを構成成分として含有した酸化物超
    伝導体による接合素子であって、キャリアが局在してお
    り、且つ互いに異なるキャリア密度を有する複数の酸化
    物超伝導体の薄膜が積層されていることを特徴とする酸
    化物超伝導体薄膜接合素子。
  3. 【請求項3】 請求項1の酸化物超伝導体薄膜接合素子
    の作製方法であって、酸素欠損を導入することにより、
    または結晶の組成原子の組成を典型的組成から変化させ
    ることにより、または結晶の不完全性を導入することに
    より、酸化物超伝導体の薄膜にキャリアを局在させるこ
    とを特徴とする酸化物超伝導体薄膜接合素子の作製方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項2の酸化物超伝導体薄膜接合素子
    の作製方法であって、酸素欠損を導入することにより、
    または結晶の組成原子の組成を典型的組成から変化させ
    ることにより、または結晶の不完全性を導入することに
    より酸化物超伝導体の薄膜にキャリアを局在させ、互い
    に異なるキャリア密度を有する複数の当該酸化物超伝導
    体の薄膜を積層させることを特徴とする酸化物超伝導体
    薄膜接合素子の作製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015503235A (ja) * 2011-12-02 2015-01-29 アルカテル−ルーセント 横方向電極を備えた量子井戸デバイス

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