JP2000282952A - エンジンのカム軸受構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、カム軸の一端に装着されるスプロ
ケットを両持ち支持構造によって支持し、カム軸におい
て片持ち支持構造がなくなり、カム軸が曲げられる惧れ
が全くなく、カム軸とタペット間のクリアランスを一定
且つ適正に維持してクリアランスの変動による不具合を
解消し得ることを目的としている。 【構成】 このため、シリンダヘッド上に複数のカムハ
ウジングにより軸方向に長いカム軸を軸支し、カム軸の
端部にタイミングチェーンにより駆動されるスプロケッ
トを設け、スプロケットとタイミングチェーンを覆うチ
ェーンカバーをシリンダヘッド側方に配設したエンジン
のカム軸受構造において、カム軸の一端をスプロケット
外側面よりも外側に延長した突出部を形成し、チェーン
カバーにカム軸受部を設け、カム軸受部とカムハウジン
グとにより突出部を軸支する構成としている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明はエンジンのカム軸
受構造に係り、特にカム軸の一端に装着されるスプロケ
ットを両持ち支持構造によって支持することができ、カ
ム軸において片持ち支持構造がなくなり、カム軸が曲げ
られる惧れが全くなく、カム軸とタペット間のクリアラ
ンスを一定且つ適正に維持することができ、クリアラン
スの変動による不具合を解消し得るエンジンのカム軸受
構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】エンジンは、シリンダヘッド上面に配設
されるカム軸を有している。そして、このカム軸は、一
端にスプロケットを固定して設けるとともに、スプロケ
ットにタイミングチェーンを捲回して設け、このタイミ
ングチェーンを介してクランク軸からの駆動力をカム軸
に伝達させ、吸気及び排気バルブを開閉動作させてい
る。

【０００３】前記エンジンのカム軸受構造としては、実
開昭６４−３９４５６号公報に開示されるものがある。
この公報に開示されるエンジンのシリンダヘッド部構造
は、シリンダヘッド上部に配置したカムシャフトの一端
に調時駆動用の駆動輪を設けるとともに、駆動輪を覆う
カバーの後側ケース部にベアリングキャップを一体形成
している。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のエン
ジンのカム軸受構造においては、エンジン１０２が、図
７及び図８に示す如く、図示しないシリンダブロック
と、このシリンダブロックの上面に装着されるシリンダ
ヘッド１０４と、シリンダヘッド１０４の上面に装着さ
れるシリンダヘッドカバー１０６と、前記シリンダブロ
ックの下面に配置されるオイルパン（図示せず）とを有
している。

【０００５】そして、前記シリンダヘッド１０４に形成
したシリンダヘッド部カム軸受１０８と複数のカムハウ
ジング１１０とによってカム軸１１２を軸支するととも
に、カム軸１１２には吸気及び排気用バルブ１１４の個
数に合致したカム１１６を設けている。

【０００６】また、カム軸１１２の端部にスプロケット
１１８を設け、スプロケット１１８を片持ち支持状態と
するとともに、このスプロケット１１８にタイミングチ
ェーン１２０を捲回して設け、図示しないクランク軸か
らの駆動力をタイミングチェーン１２０を介してカム軸
１１２に伝達している。

【０００７】前記スプロケット１１８とタイミングチェ
ーン１２０との一部、つまりスプロケット１１８の略中
心部位から下側を覆うチェーンカバー１２２を前記シリ
ンダヘッド１０４の側方に配設する。

【０００８】このとき、前記エンジン１０２を駆動する
と、図示しないクランク軸からの駆動力をタイミングチ
ェーン１２０を介してカム軸１１２に伝達され、カム軸
１１２が回転される。

【０００９】通常、カム軸１１２と吸気及び排気用バル
ブ１１４のタペット１３２との間には、適正なクリアラ
ンスが設定されているとともに、カム軸１１２がシリン
ダヘッド部カム軸受１０８とカムハウジング１１０とに
よって支持されていることにより、シリンダヘッド部カ
ム軸受１０８とカム軸１１２間にも所定のクリアランス
が確保されている。

【００１０】前記エンジン１０２の駆動時には、図９に
黒矢印で示す如く、タイミングチェーン１２０によって
スプロケット１１８を下方向に引き下ろすような力がス
プロケット１１８に作用することとなる。

【００１１】このとき、支持点Ｐとスプロケット１１８
間が、図９に示す如く、距離Ｓだけ離間しているととも
に、スプロケット１１８を片持ち支持していることによ
り、カム軸１１２の中央部位が上方向に突出する弓形状
に湾曲する。

【００１２】この結果、湾曲したカム軸１１２のカム１
１６とタペット１３２間のクリアランスが、カム軸１１
２の各位置によって異なることとなり、適正な動力伝達
が行われず、実用上不利であるという不都合がある。

【００１３】また、前記カム軸１１２のカム１１６とタ
ペット１３２間のクリアランスは、タイミングチェーン
１２０を組み付ける前に調整され、エンジン１０２の駆
動時に適正なクリアランスを確保するためには、タイミ
ングチェーン組付時の調整が非常に困難であるととも
に、クリアランス調整用のシムの交換作業も必要とな
り、作業工数が増加するという不都合がある。

【００１４】更に、前記タイミングチェーン１２０を介
してカム軸１１２に作用しカム軸１１２を湾曲させよう
とする力は、エンジン１０２の駆動時における運転状態
に応じて変化するものであり、エンジン１０２の駆動時
にクリアランスを一定に保持することが困難であり、改
善が望まれていた。

【００１５】

【課題を解決するための手段】そこで、この発明は、上
述不都合を除去するために、シリンダヘッド上に複数の
カムハウジングにより軸方向に長いカム軸を軸支し、該
カム軸の端部にタイミングチェーンにより駆動されるス
プロケットを設け、該スプロケットと該タイミングチェ
ーンを覆うチェーンカバーをシリンダヘッド側方に配設
したエンジンのカム軸受構造において、該カム軸の一端
をスプロケット外側面よりも外側に延長した突出部を形
成するとともに前記チェーンカバーにカム軸受部を設
け、該カム軸受部とカムハウジングにより前記突出部を
軸支する構成としたことを特徴とする。

【００１６】

【発明の実施の形態】上述の如く発明したことにより、
エンジンにカム軸を配設する際には、カム軸受部とカム
ハウジングによって突出部を軸支し、カム軸の一端に装
着されるスプロケットを両持ち支持構造によって支持し
てカム軸において片持ち支持構造をなくし、カム軸が曲
げられる惧れがなく、カム軸とタペット間のクリアラン
スを一定且つ適正に維持してクリアランスの変動による
不具合を解消している。

【００１７】

【実施例】以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細
に説明する。

【００１８】図１〜図４はこの発明の実施例を示すもの
である。図３及び図４において、２はエンジン、４はシ
リンダヘッドである。

【００１９】前記エンジン２は、図示しないシリンダブ
ロックと、このシリンダブロックの上面に装着されるシ
リンダヘッド４と、シリンダヘッド４の上面に装着され
るシリンダヘッドカバー６と、前記シリンダブロックの
下面に配置されるオイルパン（図示せず）とを有してい
る。

【００２０】そして、前記シリンダヘッド４上に複数個
のシリンダヘッド部カム軸受８を形成し、これらのシリ
ンダヘッド部カム軸受８と複数のカムハウジング１０と
によってカム軸１２の途中部位に形成される軸受部１２
ａを軸支して設けるとともに、カム軸１２には吸気及び
排気用バルブ１４の個数に合致したカム１６を設ける。

【００２１】また、カム軸１２の端部にスプロケット１
８を設け、このスプロケット１８にタイミングチェーン
２０を捲回して設け、図示しないクランク軸からの駆動
力をタイミングチェーン２０を介してカム軸１２に伝達
する。

【００２２】前記スプロケット１８とタイミングチェー
ン２０との一部、つまりスプロケット１８の略中心部位
から下側を覆うチェーンカバー２２を前記シリンダヘッ
ド４の側方、図１〜図４においては左側に配設する。

【００２３】このとき、前記カム軸１２の一端をスプロ
ケット１８外側面よりも外側に延長した突出部たる延長
軸受部２４を設けるとともに、前記チェーンカバー２２
にカム軸受部たるチェーンカバー部カム軸受２６を設
け、このチェーンカバー部カム軸受２６とカムハウジン
グ１０とにより前記延長軸受部２４を軸支する構成とす
る。

【００２４】詳述すれば、前記カム軸１２の一端をスプ
ロケット１８外側、つまり図１及び図２において左側に
突出する延長軸受部２４を設ける。このとき、この延長
軸受部２４の径を、前記カム軸１２の軸径に対して略同
一寸法に形成する。

【００２５】また、前記チェーンカバー２２には、図１
〜図４に示す如く、シリンダヘッド４側に突出するチェ
ーンカバー部カム軸受２６を設ける。このとき、チェー
ンカバー部カム軸受２６と前記シリンダヘッド部カム軸
受８との高さ位置は、延長軸受部２４の径とカム軸１２
の軸径とが略同一寸法であることにより、略同一高さ位
置となる。

【００２６】そして、前記延長軸受部２４の下側に位置
するチェーンカバー部カム軸受２６と上部のカムハウジ
ング１０とにより前記延長軸受部２４を軸支し、前記カ
ム軸１２の一端に装着されるスプロケット１８を両持ち
支持するものである。

【００２７】前記エンジン２は、チェーンカバー２２の
上面２２ｆとシリンダヘッド４の上面４ｆとを同一平面
とし、該チェーンカバー２２とシリンダヘッド４の夫々
の上面２２ｆ、４ｆをシリンダヘッドカバー６により一
体的に覆うべく構成されている。

【００２８】また、前記シリンダヘッド４にシリンダヘ
ッドカバー６を装着する際に、２本のカム軸１２、１２
間、且つチェーンカバー２２とシリンダヘッドカバー６
間には、図１〜図３に示す如く、カム軸１２の端部に接
触する補助部材３０を設ける。この補助部材３０は、チ
ェーンカバー２２とシリンダヘッドカバー６間の隙間を
埋める補助を行う。

【００２９】なお、符号３２は前記バルブ１４の端部に
形成されカム１６に接触するタペット、３４は点火プラ
グ、３６は前記カム軸１２内に長手方向に形成されるオ
イル通路、３８はカム軸１２の一端側においてオイル通
路３６を閉塞する閉塞ボールである。

【００３０】次に作用を説明する。

【００３１】前記エンジン２にカム軸１２を配設する際
には、シリンダヘッド部カム軸受８と複数のカムハウジ
ング１０とによってカム軸１２の途中部位に形成される
軸受部１２ａを軸支するとともに、カム軸１２の一端に
形成した延長軸受部２４をチェーンカバー部カム軸受２
６と上部のカムハウジング１０とにより軸支する。

【００３２】そして、カム軸１２の配設後に、同一平面
としたチェーンカバー２２の上面２２ｆとシリンダヘッ
ド４の上面４ｆとをシリンダヘッドカバー６により一体
的に覆う。

【００３３】これにより、前記カム軸１２の一端に装着
されるスプロケット１８を両持ち支持構造によって支持
することができ、カム軸１２において片持ち支持構造が
なくなり、従来の如くカム軸が曲げられる惧れが全くな
く、カム軸１２とタペット３２間のクリアランスを一定
且つ適正に維持することができ、クリアランスの変動に
よる不具合を解消し得て、実用上有利である。

【００３４】また、エンジン運転中においては、図示し
ないクランク軸からの駆動力をカム軸１２に伝達するタ
イミングチェーン２０によって、運転状態に応じて異な
るカム軸１２を曲げようとする力がカム軸１２に作用す
るが、カム軸１２の一端に位置するスプロケット１８を
両持ち支持構造によって支持することにより、運転中の
カム軸１２とタペット３２間のクリアランスの変動を低
減し得て、良好なエンジン性能を確保することができる
ものである。

【００３５】更に、前記エンジン２のチェーンカバー２
２の上面２２ｆとシリンダヘッド４の上面４ｆとを同一
平面とし、該チェーンカバー２２とシリンダヘッド４の
夫々の上面２２ｆ、４ｆをシリンダヘッドカバー６によ
り一体的に覆うべく構成したことにより、シールを必要
とする面を減少させることができ、シリンダヘッドカバ
ー６の取付性を向上し得て、実用上有利である。

【００３６】更にまた、前記エンジン２のチェーンカバ
ー２２の上面２２ｆとシリンダヘッド４の上面４ｆを同
一平面とし、且つ該同一平面上でカムハウジング１０を
カム軸１２上方から締着固定したことにより、カム軸受
部たるチェーンカバー部カム軸受２６とカムハウジング
取付面とが同一平面となり、面加工が１回で済み、カム
ハウジングの取付性を向上し得る。

【００３７】なお、この発明は上述実施例に限定される
ものではなく、種々の応用改変が可能である。

【００３８】例えば、この発明の実施例においては、延
長軸受部２４の径を、カム軸１２の軸径に対して略同一
寸法に形成したが、図５に示す如く、カム軸１２の軸径
Ｄ１に対して大なる径Ｄ２を有する延長軸受部４２を設
ける特別構成とすることもできる。

【００３９】さすれば、延長軸受部４２をチェーンカバ
ー部カム軸受４４とカムハウジング１０とにより軸支し
た際に、延長軸受部４２の大径化によって保持力を増加
させ、延長軸受部４２を効率良く軸支することができ、
実用上有利である。

【００４０】また、チェーンカバー２２に形成されるチ
ェーンカバー部カム軸受５２に、図６に示す如く、カム
軸１２の延長軸受部５４を上方向に押圧する押圧手段５
６を設ける特別構成とすることも可能である。

【００４１】すなわち、押圧手段５６を、図６に示す如
く、チェーンカバー２２のチェーンカバー部カム軸受５
２に形成される凹部５６−１と、この凹部５６−１内を
移動する移動子５６−２と、凹部５６−１上部を覆う押
圧板５６−３と、この押圧板５６−３と移動子５６−２
間に配設されるスプリングやゴム等の弾性部材５６−４
と、前記移動子５６−３の移動量を調整し押圧板５６−
３による押圧力を任意に設定する調整ボルト５６−５と
を有している。

【００４２】また、前記押圧手段５６の押圧板５６−３
は、カム軸１２の延長軸受部５４外周を支持する軸受５
８を押圧している。

【００４３】さすれば、押圧手段５６によってカム軸１
２の延長軸受部５４を下方向から押圧することができ、
スプロケットの両持ち支持構造と相俟って、従来の如く
カム軸が曲げられる惧れが全くなくなり、カム軸とタペ
ット間のクリアランスを一定且つ適正に維持することが
でき、クリアランスの変動による不具合を解消し得る。

【００４４】なお、前記弾性部材５６−４の付勢力の設
定が適正に行われる場合には、前記調整ボルト５６−５
を使用しなくとも対処することが可能となり、構成の簡
略化に寄与し得るものである。

【００４５】

【発明の効果】以上詳細に説明した如くこの本発明によ
れば、シリンダヘッド上に複数のカムハウジングにより
軸方向に長いカム軸を軸支し、カム軸の端部にタイミン
グチェーンにより駆動されるスプロケットを設け、スプ
ロケットとタイミングチェーンを覆うチェーンカバーを
シリンダヘッド側方に配設したエンジンのカム軸受構造
において、カム軸の一端をスプロケット外側面よりも外
側に延長した突出部を形成するとともにチェーンカバー
にカム軸受部を設け、カム軸受部とカムハウジングによ
り突出部を軸支する構成としたので、カム軸の一端に装
着されるスプロケットを両持ち支持構造によって支持す
ることができ、カム軸において片持ち支持構造がなくな
り、従来の如くカム軸が曲げられる惧れが全くなく、カ
ム軸とタペット間のクリアランスを一定且つ適正に維持
することができ、クリアランスの変動による不具合を解
消し得て、実用上有利である。また、エンジン運転中に
おいては、クランク軸からの駆動力をカム軸に伝達する
タイミングチェーンによって、運転状態に応じて異なる
カム軸を曲げようとする力がカム軸に作用するが、カム
軸の一端に位置するスプロケットを両持ち支持構造によ
って支持することにより、運転中のカム軸とタペット間
のクリアランスの変動を低減し得て、良好なエンジン性
能を確保することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施例を示すカム軸の延長軸受部の
概略拡大断面正面図である。

【図２】カム軸取付時の概略断面正面図である。

【図３】エンジンのカム軸配設部分の概略断面正面図で
ある。

【図４】エンジンのカム軸配設部分の概略平面図であ
る。

【図５】この発明の他の第１の実施例を示すカム軸の延
長軸受部の概略拡大断面正面図である。

【図６】この発明の他の第２の実施例を示すカム軸の延
長軸受部端部の要部拡大断面図である。

【図７】この発明の従来技術を示すエンジンのカム軸配
設部分の概略断面正面図である。

【図８】エンジンのカム軸配設部分の概略平面図であ
る。

【図９】カム軸取付時の概略断面正面図である。

【符号の説明】

２ エンジン ４ シリンダヘッド ６ シリンダヘッドカバー ８ シリンダヘッド部カム軸受 １０ カムハウジング １２ カム軸 １４ 吸気及び排気用バルブ １６ カム １８ スプロケット ２０ タイミングチェーン ２２ チェーンカバー ２４ 延長軸受部 ２６ チェーンカバー部カム軸受

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 3G016 AA08 AA12 AA19 BA03 BA06 BA23 BA28 BB04 CA11 CA22 CA27 GA06 3G024 AA18 AA19 AA73 DA01 DA06 DA10 DA18 FA14 FA15

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダヘッド上に複数のカムハウジン
   グにより軸方向に長いカム軸を軸支し、該カム軸の端部
   にタイミングチェーンにより駆動されるスプロケットを
   設け、該スプロケットと該タイミングチェーンを覆うチ
   ェーンカバーをシリンダヘッド側方に配設したエンジン
   のカム軸受構造において、該カム軸の一端をスプロケッ
   ト外側面よりも外側に延長した突出部を形成するととも
   に前記チェーンカバーにカム軸受部を設け、該カム軸受
   部とカムハウジングにより前記突出部を軸支する構成と
   したことを特徴とするエンジンのカム軸受構造。
2. 【請求項２】 前記エンジンは、チェーンカバーの上面
   とシリンダヘッドの上面とを同一平面とし、該チェーン
   カバーとシリンダヘッドとの夫々の上面をシリンダヘッ
   ドカバーにより一体的に覆うべく構成した請求項１に記
   載のエンジンのカム軸受構造。
3. 【請求項３】 前記エンジンは、チェーンカバーの上面
   とシリンダヘッドの上面を同一平面とし、且つ該同一平
   面上でカムハウジングをカム軸上方から締着固定した請
   求項１に記載のエンジンのカム軸受構造。