JP2000199037A - 耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レ―ル - Google Patents

耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レ―ル

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JP2000199037A
JP2000199037A JP215199A JP215199A JP2000199037A JP 2000199037 A JP2000199037 A JP 2000199037A JP 215199 A JP215199 A JP 215199A JP 215199 A JP215199 A JP 215199A JP 2000199037 A JP2000199037 A JP 2000199037A
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resistance
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Masaharu Ueda
正治 上田
Koichi Uchino
耕一 内野
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気伝導性、耐ころがり疲労損傷性を兼ね備
えたレールを提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.15〜0.45%、Si:0.10 〜
0.50%、Mn:0.20 〜1.80%、Cr:0.20 〜1.80%、Mo:0.0
1 〜0.60%、B:0.0001〜0.0050%、Al:0.0050 〜0.0250
%、P:≦0.025 %、S:≦0.025 %を含有し、残部が鉄お
よび不可避不純物よりなり、所定の式による電気抵抗計
算値が26.5μΩ・cm以下であり、頭部コーナー部およ
び頭頂部表面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲が
硬さHv240以上のベイナイト組織であることを特徴とす
る耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト
系レール。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に旅客鉄道の高
速運転区間に要求される、電気伝導性、耐ころがり疲労
損傷性を兼ね備えたレールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、旅客鉄道では、輸送効率の向上を
目的として、列車の高速化が進められている。これにと
もない主に高速運転が行われる直線区間のレールにおい
ては、レール使用環境の苛酷化により、今後、レールと
車輪の繰り返し接触によるダークスポット損傷と呼ばれ
るレール頭表面のころがり疲労損傷の発生が増加するも
のと予想されている。
【0003】このダークスポット損傷は、従来からのパ
ーライト組織を呈したレールが使用されている旅客鉄道
の高速運転区間のレールで発生しやすいものである。本
発明者らは、レールと車輪の繰り返し接触によって生成
する疲労層(疲労ダメージ層、集合組織)の形成と金属
組織の関係を研究した。その結果、フェライト相とセメ
ンタイト相の層状構造を成しているパーライト組織で
は、疲労ダメージ層が蓄積し易く、さらに、集合組織が
発達し易いの対して、柔らかなフェライト組織地に粒状
の硬い炭化物が分散したベイナイト組織は、疲労ダメー
ジ層が蓄積し難く、さらに、表面疲労損傷の引き金とな
る集合組織が発達し難く、結果としてダークスポット損
傷が発生しにくいことが明らかとなった。
【0004】そこで、ベイナイト組織を呈したレールと
して下記に示すような製品および製造法が開発された。 低炭素成分でMn、Cr、Moなどの合金元素を多
量に添加して圧延ままでベイナイト組織を呈する高強度
レール(特開平5-271871号公報)。 低炭素成分でMn、Cr、Moなどの合金元素を添
加し、熱間圧延後の高温度の熱を保有するレール、ある
いは高温に加熱されたレールの頭部を加速冷却する高強
度ベイナイトレールの製造法(特開平6-248347号公
報)。 これらのレールの特徴は、耐ころがり疲労損傷性に優れ
たベイナイト組織を安定に生成させるため、従来の普通
炭素鋼レールと比較して炭素量を低減させると同時に、
Mn、Cr、Moなどの合金元素を多く添加し、さら
に、強度を確保するため適切な熱処理を施したものであ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記発明レー
ルのようにベイナイト組織を得るためレール鋼の合金添
加量を増加させると、レールの電気抵抗値が増加する。
その結果、電車や電気機関車の動力源である軌道電流が
低下し、列車の運行が密な線区では、電流低下により列
車走行速度が低下するなどの運行上の問題の発生が予想
される。この対策として、電流損失を補い、軌道電流を
確保するため、変電所間隔を短くする、軌道電圧を増加
するなどの軌道電化システムの対応が考えられるが、こ
れらの軌道電気設備の改造には多くの費用が必要とな
り、不経済であるという問題があった。
【0006】そこで、ベイナイト組織を呈したレールの
電気抵抗を低減する方法として、下記に示すような製品
が開発された。 Mn、Cr、Moの合金元素を適度に押さえ、電気
抵抗値を23.7μΩ・cm以下にしたベイナイト組織を呈
するレール(特開平7-305144号公報)。 ベイナイト組織の生成に有効なMnの添加量を増加
させ、さらに、Cr、Moの合金添加量の適正化を図
り、電気抵抗の低減を図ったベイナイト組織を呈するレ
ールおよびその製造法(特開平9-13144 号公報)。 これらのレールの特徴は、電気抵抗値を低減するため合
金添加量を押さえ、ある一定レベルの強度を有するベイ
ナイト組織のレールを提供するものである。
【0007】しかし、このような合金添加量の少ない鋼
レールでは、Mn、Cr等の合金元素の組み合わせや、
レール圧延後の冷却速度の変化によっては、ベイナイト
変態が安定せず、オーステナイト粒界に耐摩耗性に有害
なフェライト組織や耐ころがり疲労損傷性に有害なパー
ライト組織が混入しやすく、ベイナイト組織のレールを
安定的に製造することが困難であった。
【0008】本発明者らは、鋼の電気抵抗値を増加させ
ず、ベイナイト変態を安定化する方法として、オーステ
ナイト粒界からのフェライト組織の生成を抑え、ベイナ
イト変態を促進させるBと、焼入れ性の向上によりベイ
ナイト変態を促進させるNbを複合添加する方法や、B
のベイナイト変態促進効果を確保し、同時に低コスト化
を図る方法として、微量なBを添加し、さらに鋼中のN
量をある一定量以下にする方法を提案している。しか
し、これらの方法ではベイナイト変態は安定するもの
の、Nb等の高価な元素を添加する必要があるため、製
造コストが大幅に増加することや、溶鋼での脱窒が安定
し難いため、過剰なNによりBのベイナイト変態促進効
果が不安定になり易いといった問題があった。
【0009】そこで、本発明者らは、鋼の電気抵抗値を
増加させず、低コストでベイナイト変態を安定化する方
法を検討した。そこで、微量の添加量でベイナイト変態
を促進する効果の強いBの添加およびその安定化を検討
した。Bは鋼中に存在する窒素と結びつき易く、Bの窒
化物として析出するため、固溶Bの減少によりベイナイ
ト変態促進効果が減少することが確認されている。本発
明者らは、この固溶Bを確保する方法として、不安定な
溶鋼での脱窒に代わる方法を実験により検討した。
【0010】その結果、鋼中のN量を制御する方法とし
て、ある一定量のAlを鋼中に添加し、AlNとしてN
を析出させることにより、Bの窒化物の形成を押さえ、
結果として鋼中に固溶しているB量が確保され、ベイナ
イト変態が促進されることを確認した。さらに、本発明
者らはAlの添加量を変化させた鋼において、B添加に
よるベイナイトの変態の促進効果を実験により検討し
た。その結果、Alの添加量がある一定量以下になる
と、B添加によるベイナイトの変態の促進効果が失わ
れ、また、Alの添加量がある一定量以上になると、B
添加によるベイナイトの変態の促進効果に変化がなくな
り、Al添加の効果が飽和することが確認された。した
がって、B添加によるベイナイトの変態の促進効果を十
分に発揮するには、Alの添加量に最適値があることを
知見した。
【0011】以上の検討結果から、本発明者らは、鋼中
のAlの添加量をある一定範囲とすることにより、Al
Nを優先析出させ、結果としてBNの析出を防止し、固
溶B量を高めることによりベイナイト変態が促進され、
さらに、Nb等のベイナイト変態促進元素の添加や不安
定な溶鋼での脱窒を行うことなく、、に記載された
発明レール鋼と比較して、低コストで、より一層の低電
気抵抗化が図れることを確認した。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するものであって、その要旨とするところは、重量%
で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.20〜1.80%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 B :0.0001〜0.0050%、 Al:0.0050〜0.0250%、P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、さらに、必要に応じて Nb:0.005〜0.05%、 V :0.01〜0.30%、 Cu:0.05〜0.50%、 Ni:0.05〜1.00%、 Ti:0.005〜0.050% の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避
不純物よりなり、下記式1による電気抵抗値が26.5
μΩ・cm以下であり、頭部コーナー部および頭頂部表
面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲が硬さHv
240以上のベイナイト組織であることを特徴とする耐
ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レ
ールである。 *電気抵抗値(μΩ・cm)=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P] +11.2[S]+2.9[Ti]+2.5[Ni]+6.0[Cu]+5.5[V]+3.3[ Mo] ・・・・・・式1 但し、[元素]は重量%。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。 (1)化学成分 まず、レールの化学成分を上記のように定めた理由につ
いて説明する。Cはベイナイト組織の強度と耐摩耗性を
確保するための必須元素であるが、0.15%未満で
は、ベイナイト組織中にフェライト組織が生成し、ベイ
ナイトレールに必要とされる強度や耐摩耗性を確保する
ことが難しくなる。また、0.45%を超えると、ベイ
ナイト組織中にころがり疲労損傷の発生に有害なパーラ
イト組織が多く生成しやすくなることや、ベイナイト変
態速度が著しく低下し、レールの靭性に有害なマルテン
サイト組織が生成しやすくなるため、C量を0.15〜
0.45%に限定した。
【0014】Siはベイナイト組織中の素地のフェライ
トに固溶することによって強度を向上させる元素である
が、0.10%未満では強度の向上が期待できない。ま
た、Siは電気抵抗に対して最もその寄与度が高い元素
であるが、0.50%を超えて添加すると、強度への寄
与に比べて電気抵抗を増加させる悪影響が非常に大きく
なるため、Si量を0.10〜0.50%に限定した。
【0015】Mnは、C同様に鋼の焼入性を高め、ベイ
ナイト組織を安定的に生成させるためには欠かせない元
素である。本成分系においては、Mn量が0.20%未
満ではその効果が微弱であり、添加元素の組み合わせに
よっては、添加元素の組み合わせによっては、ベイナイ
ト組織中に耐摩耗性に有害なフェライト組織や耐表面損
傷性に有害なパーライト組織が生成しやすくなる。ま
た、1.80%を超えると、電気抵抗を現行レール範囲
に納めることが非常に困難になるため、Mn量を0.2
0〜1.80%に限定した。
【0016】Crは、ベイナイト組織中の炭化物を微細
に分散させ、強度を確保するために重要な元素である
が、0.20%未満ではその効果が微弱であり、添加元
素の組み合わせによっては、ベイナイト組織を安定的に
得ることが困難となる。また、1.80%を超えると、
レール頭表面にマルテサイト組織が生成しやすく、レー
ルの靱性や耐摩耗性を低下させることや、Mn同様に電
気抵抗を現行レール範囲に納めることができないことか
ら、Cr量を0.20〜1.80%に限定した。
【0017】Moは、MnあるいはCrと同様、安定的
にベイナイト組織を生成させ、さらに、MnあるいはC
rのように電気抵抗を極端に増加させることなく強度を
上昇させることができる有望な元素であるが、0.01
%未満では強度への寄与が少なく、0.60%を超えて
添加すると、強度への寄与に比べて電気抵抗を増加させ
る悪影響が非常に大きくなる。また、Moは偏析しやす
く、偏析部にレールの靱性に有害なマルテンサイト組織
を生成させやすいことから、Mo量を0.01〜0.6
0%に限定した。
【0018】Bは、旧オーステナイト粒界から生成する
初析フェライト組織や、これにともない変態するパーラ
イト組織の生成を抑制し、ベイナイト組織を安定的に生
成させる元素である。しかし、0.0001%未満では
その効果は弱く、0.0050%を超えて添加すると、
オーステナイト粒界にBの窒化物や炭化物が生成し、逆
に焼入れ性を低下させる、初析フェライト組織やパーラ
イト組織を生成しやすくするため、B量を0.0001
〜0.0050%に限定した。
【0019】Alは、鋼中の過剰なNをAlNとして析
出させ、結果として、BNの析出を防止し、固溶B量を
高める、ベイナイト変態を促進する元素である。しか
し、0.0050%未満では、鋼中の過剰なNをAlN
として析出させるには不十分であり、BNの析出を防止
することが不完全となり、Bのベイナイト変態促進効果
が減少する。また、0.0250%を超えて添加する
と、過剰なAlが硬い酸化物(Al2 3 )として鋼中
に粗大析出し、レール使用中の疲労損傷の起点となりや
すく、使用寿命を著しく低下させるため、Al量を0.
050〜0.0250%に限定した。
【0020】なお、固溶Bの効果を安定的に作用させる
には、鋼中のN量に応じてAl添加量を制御することが
望ましく、通常のレール鋼では0.0080〜0.01
20%の範囲に制御すると固溶Bの効果が安定化し、ベ
イナイト変態の促進効果が最も強い。
【0021】また、Bを添加し、Alの含有量をある一
定範囲に限定する理由は、Alの添加量をある一定範囲
としない鋼と比較して、Bの焼入れ性が飛躍的に増加
し、オーステナイト粒界からのフェライト組織やパーラ
イト組織の生成が抑制され、ベイナイト組織が安定的に
生成するためである。また、電気抵抗の低いBを添加す
ることによりベイナイト変態が促進され、ベイナイト変
態の安定化および硬度を確保するために添加されていた
電気抵抗の高いMn、Cr、Mo等の合金元素やNb等
の高価な合金元素の添加量低減が可能となり、電気抵抗
の低減が図れるためである。
【0022】P、Sはあえて添加する元素ではないが、
それぞれ0.025%を超えて含有すると、電気抵抗が
過剰に増加することや、偏析帯の形成を助長し、靱性を
低下させるマルテサイト組織などを生成しやすくするた
め、それぞれの添加量を0.025%以下に限定した。
【0023】また、上記の成分組成で製造されるレール
は強度、延性、靭性、さらには溶接時の材料劣化を防止
する目的で以下の元素を必要に応じて1種類または2種
以上を添加する。 Nb:0.005〜0.05%、 V :0.01〜0.30%、 Cu:0.05〜0.50%、 Ni:0.05〜1.00%、 Ti:0.005〜0.050%
【0024】NbはBと同様に、旧オーステナイト粒界
から生成する初析フェライト組織やパーライト組織の生
成を抑制し、焼入れ性の増加によりベイナイト組織を安
定的に生成させる元素であり、さらに、Vと同様に、熱
間圧延時の冷却課程で生成したNb炭・窒化物による析
出硬化でベイナイト組織の強度を高める元素であるが、
その効果は、0.005%未満では期待できず、また、
0.05%を超える過剰な添加を行うと、Nbの金属間
化合物や粗大析出物が生成して靭性を低下させることか
ら、Nb量を0.005〜0.05%に限定した。
【0025】Vは熱間圧延時の冷却課程で生成したV炭
化物、V窒化物による析出硬化でベイナイト組織の強度
を高めると同時に、高温度に加熱する熱処理が行われる
際に結晶粒の成長を抑制する作用によりオーステナイト
粒を微細化させ、ベイナイト組織の延性や靭性を向上さ
せるのに有効な成分であるが、0.01%未満ではその
効果が十分に期待できず、0.30%を超えて添加して
もそれ以上の効果が期待できないことや、電気抵抗を不
必要に上昇させることから、V量を0.01〜0.30
%に限定した。
【0026】Cuは、鋼の靭性を損なわず強度を向上さ
せる元素であり、その効果は0.05〜0.50%の範
囲で最も大きく、また、0.50%を超えると赤熱脆化
を生じやすくなることから、Cu量を0.05〜0.5
0%に限定した。
【0027】Niは、オーステナイトを安定化させる元
素であり、ベイナイト変態温度を下げ、ベイナイト組織
を微細化し、靭性を向上させる効果を有するが、0.0
5%未満ではその効果が著しく小さく、また、1.00
%を超えて添加するとベイナイト変態速度が大きく低下
し、レールの靭性に有害なマルテンサイト組織を生成し
やすくするため、Ni量を0.05〜1.00%に限定
した。
【0028】Tiは、溶解・凝固時に析出したTi炭化
物、Ti窒化物がレール圧延時加熱の高温でも溶解しな
いことを利用して、レール圧延加熱時のオーステナイト
結晶粒の微細化を図り、ベイナイト組織の延性や靱性の
改善に寄与する。さらに、鋼中の過剰な窒素を窒化物
(TiN)として析出させ、Bの窒化物(BN)の析出
を抑制し、結果として、固溶したBによりベイナイト変
態を促進させる元素であるが、0.005%未満では、
これらの効果が十分に発揮されず、また、0.050%
を超えて添加すると、粗大な窒化物(TiN)や炭化物
(TiC)が生成し、レールの延性や靱性が低下すると
同時に、レール使用中の疲労損傷の起点となりやすいた
め、Ti量を0.005〜0.050%に限定した。
【0029】上記のような成分組成で構成されるレール
鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製
を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは連続鋳造法、
さらに熱間圧延を経てレールとして製造される。さらに
必要に応じて、この熱間圧延した高温度の熱を保有する
レール、あるいは熱処理する目的で高温に加熱されたレ
ール頭部に加速冷却を行い、レール頭部の硬さを調整す
る。
【0030】(2)ベイナイト組織の範囲およびその硬
さ はじめに、ベイナイト組織を有する範囲を、頭部コーナ
ー部および頭頂部の該頭部表面を起点として少なくとも
深さ15mmの範囲に限定した理由について説明する。レ
ール頭部については、高速鉄道の直線区間で使用される
レールの摩耗寿命が15mmであり、したがって、ベイナ
イト組織を有する範囲が15mm未満ではレール頭部に必
要とされているころがり疲労損傷を防止する領域として
は小さく、摩耗寿命に達する前にダークスポット損傷や
フレーキング損傷などの表面損傷が発生し、十分な寿命
改善効果が期待できないため、ベイナイト組織を有する
範囲を少なくとも15mmに限定した。
【0031】ここで、図1に本発明の耐ころがり疲労損
傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レールの頭部断面
表面位置の呼称を示す。レール頭部において1は頭頂
部、2は頭部コーナー部であり、頭部コーナー部2の一
方は車輪と主に接触するゲージ・コーナー(G. C. )
部である。
【0032】さらに、ベイナイト組織の硬さをHv24
0以上に限定した理由について説明する。硬さがHv2
40未満では、レールに要求されている基本的な強度や
耐摩耗性を確保することが困難となり、さらに、緩曲線
区間では、G. C. 部にレールと車輪の強い接触による
メタルフローが生成し、これにともないきしみ割れやフ
レーキングなどの表面損傷が発生しやすくなるため、ベ
イナイト組織の硬さをHv240以上に限定した。な
お、ベイナイト組織は硬いほうが好ましく上限は特に限
定しないが、本願発明の成分組成で熱処理等の製造方法
を工夫しても工業的にはHv400程度が上限となる。
【0033】(3)電気抵抗値 電気抵抗値(μΩ・cm)を計算値で26.5μΩ・c
m以下に定めた理由について説明する。表1に代表的な
旅客鉄道用レールの化学成分、式1による電気抵抗計算
値および実測値の一例に示す。
【0034】
【表1】
【0035】表1に示すように、レールの電気抵抗実測
値は、式1による計算値と非常によい相関が認められ
る。ここで、式1とは下記の通りである。 *電気抵抗値(μΩ・cm)=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P] +11.2[S]+2.9[Ti]+2.5[Ni]+6.0[Cu]+5.5[V]+3.3[ Mo] ・・・・・・式1 レール化学成分の製造上のばらつきを考慮すると、電気
抵抗値が計算値で26.5μΩ・cmを超えると、現在
使用されている代表的な高炭素のパーライト組織を呈し
た旅客鉄道用レールと比較して実測においても電気抵抗
値が大きくなる可能性が高いと考えられる。したがっ
て、電気抵抗の計算値が26.5μΩ・cmを超える
と、実測においても電気抵抗が現行レールよりも増加
し、上記のように電車の動力源である軌道電流が低下
し、列車の運行が過密な線区では、電流低下により列車
走行速度が低下するなどの運行上の問題が発生すると予
測されるため、レールの電気抵抗値を計算値で26.5
μΩ・cm以下に限定した。
【0036】なお、電気抵抗は低いほうが好ましく下限
は特に限定しないが、本願発明の成分組成で熱処理等の
製造方法を工夫しても工業的には18μΩ・cm程度が
下限となる。
【0037】また、本発明レール鋼の金属組織はベイナ
イト組織であることが望ましいが、成分系の組み合わ
せ、レールの冷却方法、素材の偏析状態によってはベイ
ナイト組織中に微量にパーライト組織、マルテンサイト
組織、フェライト組織が生成する場合がある。しかし、
これらの組織がベイナイト組織中に微量に生成してもレ
ールの耐ころがり疲労損傷性、耐摩耗性および強度に大
きな影響をおよぼさないため、本ベイナイト系レールの
組織としては若干の異組織の混在も含んでいる。
【0038】上記のように、本発明ベイナイト系レール
は、旅客鉄道の高速運転区間に要求される、電気伝導
性、耐ころがり疲労損傷性を有している。
【0039】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。表
2には、本発明レール鋼の化学成分、頭部ミクロ組織、
頭部の硬さ、下記の式1で計算された電気抵抗値を示
す。さらに、図2に示すころがり疲労損傷試験機による
水潤滑ころがり疲労試験結果、図3に示すレール電気抵
抗の実測結果を併記した。
【0040】
【表2】
【0041】また、表3には比較レール鋼の化学成分、
頭部ミクロ組織、頭部の硬さ、下記の式1で計算された
電気抵抗値を示す。さらに、図2に示すころがり疲労損
傷試験機による水潤滑ころがり疲労試験結果、図3に示
すレール電気抵抗の実測結果を併記した。
【0042】
【表3】
【0043】さらに、図4には本発明レール鋼(符号:
D〜G)と比較レール鋼(符号:T〜V)の頭部の硬さ
と電気抵抗実測値の関係を示す。 *電気抵抗値(μΩ・cm)=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P] +11.2[S]+2.9[Ti]+2.5[Ni]+6.0[Cu]+5.5[V]+3.3[ Mo] ・・・・・・式1 但し、[元素]は重量%。
【0044】レールの構成は以下のとおりである。 ・本発明レール鋼(11本) 符号:A〜K 上記成分範囲で、電気抵抗計算値が26.5μΩ・cm
以下である鋼レールにおいて、レール頭部コーナー部お
よび頭頂部の該頭部表面を起点として少なくとも深さ1
5mmの範囲の部分の金属組織が硬さHv240以上のベ
イナイト組織であることを特徴とする電気伝導性、耐こ
ろがり疲労損傷性に優れたベイナイト系レール。 ・比較レール鋼(11本) 符号:L〜V 符号L,M:現在、旅客鉄道で使用されているパーライ
ト組織の比較レール鋼。 符号N〜S:上記成分範囲外の比較レール鋼。 符号T〜V:電気抵抗が上記限定範囲外の比較レール
鋼。
【0045】ころがり疲労試験は下記条件で実施した。 ・試験機 :ころがり疲労試験機 ・試験片形状:円盤状試験片 レール 外径:200mm、レール材断面形状:60Kレールの1/4モデル 車輪 外径:200mm、車輪材断面形状 :円弧踏面車輪の1/4モデル ・試験荷重 :1.0トン(ラジアル荷重) ・雰囲気 :乾燥+水潤滑(60cc/min ) ・回転数 :乾燥:100rpm、水潤滑:300rpm ・繰返し回数:0〜5000回まで乾燥状態、その後、水潤滑により損傷発生ま で。(損傷が発生しない場合は200万回で試験を中止)
【0046】レール電気抵抗の測定については下記の要
領で実施した。図3に示すレールの電気抵抗の測定方法
としては電圧降下法を用いた。測定方法としてはレール
端部両側の柱部に電流端子を取り付け、基準電流25A
を流し、電圧端子を電流端子の内側約1mの位置にレー
ル足部にセットする。このようにして測定された電流
値、電圧値から電気抵抗を次式により求めた。 ρ(μΩ・cm)=ρ20×A×10-1/L A:測定レールの断面積(mm2 )、L:電圧端子間距離
(mm) 但し、ρ20は20℃のときの値に換算された測定材の抵
抗値(μΩ)で、次式を用いた。 ρ20=ρt /{1+α(t−20)} ρt :温度tで測定された電気抵抗、αは温度補正係数
で実際にレール温度を変えて実測した抵抗値の変化から
求めた。
【0047】表2、3に示したように本発明レール鋼は
比較レール鋼と比べて、Mn、Cr、Mo等の合金元素
の適切な選択およびB、Alの添加量の調整を行い、ベ
イナイト組織とするにより、現行のパーライト組織レー
ル鋼で問題となっていたダークスポット損傷などのころ
がり疲労損傷を防止し、同時に、電気抵抗の増加を抑え
ることができる。
【0048】また、Al添加量を0.0080〜0.0
120%の範囲に制御することにより、固溶Bの効果が
さらに安定化し、本発明レール鋼:Gに示すように、本
発明レール鋼:Fと比べて、より一層ベイナイト変態が
促進され、ベイナイト組織の硬度が向上する。
【0049】さらに、図4に示したように、電気抵抗の
小さいBを添加し、同時に、Alの添加量を制御するこ
とにより、ベイナイト変態が促進されるため、ベイナイ
ト変態の安定化および硬度を確保するために添加されて
いた電気抵抗の高いMn、Cr、Mo等の合金元素の添
加量を低減することが可能となり、同一硬さにおいて、
より一層の低電気抵抗化を図ることができる。
【0050】
【発明の効果】本願発明によって、旅客列車の高速運転
区間に要求される、電気伝導性、耐ころがり疲労損傷性
を兼ね備えたレールの提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】レール頭部断面表面位置の呼称を表示した図。
【図2】ころがり疲労試験機の概略図。
【図3】電気抵抗の実測方法を示した概略図。
【図4】本発明レール鋼と比較レール鋼の頭部の硬さと
電気抵抗実測値の関係を示した図。
【符号の説明】
1:頭頂部 2:頭部コーナー部 3:車輪試験片 4:レール円盤試験片 5:モーター(車輪側) 6:モーター(レール側) 7:水潤滑装置

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.20〜1.80%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 B :0.0001〜0.0050%、 Al:0.0050〜0.0250%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、残部が鉄および不可避不純物よりなり、下記
    式1による電気抵抗値が26.5μΩ・cm以下であ
    り、頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として少な
    くとも深さ15mmの範囲が硬さHv240以上のベイナ
    イト組織であることを特徴とする耐ころがり疲労損傷性
    に優れた低電気抵抗ベイナイト系レール。 *電気抵抗値(μΩ・cm)=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P] +11.2[S]+2.9[Ti]+2.5[Ni]+6.0[Cu]+5.5[V]+3.3[ Mo] ・・・・・・式1 但し、[元素]は重量%。
  2. 【請求項2】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.20〜1.80%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 B :0.0001〜0.0050%、 Al:0.0050〜0.0250%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、さらに、 Nb:0.005〜0.05%、 V :0.01〜0.30%、 Cu:0.05〜0.50%、 Ni:0.05〜1.00%、 Ti:0.005〜0.050% の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避
    不純物よりなり、下記式1による電気抵抗値が26.5
    μΩ・cm以下であり、頭部コーナー部および頭頂部表
    面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲が硬さHv
    240以上のベイナイト組織であることを特徴とする耐
    ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レ
    ール。 *電気抵抗値(μΩ・cm)=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P] +11.2[S]+2.9[Ti]+2.5[Ni]+6.0[Cu]+5.5[V]+3.3[ Mo] ・・・・・・式1 但し、[元素]は重量%。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP1241277A2 (en) * 2001-03-05 2002-09-18 AMSTED Industries Incorporated Railway wheel alloy
KR101931494B1 (ko) * 2017-03-02 2018-12-21 (주)천호케스팅 철도차량 연결기용 합금강

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EP1241277A3 (en) * 2001-03-05 2003-03-19 AMSTED Industries Incorporated Railway wheel alloy
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