JP2000178471A - ガスバリアコート剤、ガスバリアコート剤の製造方法、ガスバリアフィルム、ガスバリアフィルムの製造方法、易裂性ガスバリアフィルムおよび易裂性ガスバリアフィルムの製造方法 - Google Patents

ガスバリアコート剤、ガスバリアコート剤の製造方法、ガスバリアフィルム、ガスバリアフィルムの製造方法、易裂性ガスバリアフィルムおよび易裂性ガスバリアフィルムの製造方法

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JP2000178471A
JP2000178471A JP10354345A JP35434598A JP2000178471A JP 2000178471 A JP2000178471 A JP 2000178471A JP 10354345 A JP10354345 A JP 10354345A JP 35434598 A JP35434598 A JP 35434598A JP 2000178471 A JP2000178471 A JP 2000178471A
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Japan
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gas barrier
polyvinyl alcohol
film
silicate
coating agent
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Seiji Kagawa
清二 加川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 屈曲させてもピンホールやクラックが発生せ
ず、かつ無機化合物や金属の膜状態と略同等の優れたガ
スバリア性を有する透明なガスバリア層の形成に適した
ガスバリアコート剤を提供する。 【解決手段】 水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カ
リウム水溶液にそれぞれ分子レベルで溶解・分散された
ポリビニルアルコールおよび珪酸塩を含み、透明でアル
カリ性であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスバリアコート
剤、ガスバリアコート剤の製造方法、食品、医薬等の各
種の物品の包装材料に用いられるガスバリアフィルム、
その製造方法および易裂性ガスバリアフィルムおよびそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】スナック菓子などの食品、医薬品、酸素
や水蒸気に曝されることを嫌う物品においては、酸素な
どのガスや水蒸気に対してバリア性を有するフィルムに
より包装して外界から長期間保護することがなされてい
る。
【0003】前記ガスバリアフィルムとしては、従来よ
りガスの拡散および浸透が少ないポリ塩化ビニリデン
(PVDC)、エチレン・ビニルアルコール共重合体
(EV OH樹脂)が知られている。しかしながら、P
VDCフィルムは廃棄処分する際の焼却時に有害な塩素
ガスが発生するという問題があった。また、EVOH樹
脂フィルムは湿度の高い雰囲気(湿潤雰囲気)に曝され
ると酸素遮断性が著しく低下する問題があった。
【0004】このようなことから、ガスバリア層を有す
るガスバリアフィルムが開発、実用化されている。具体
的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィル
ムにアルミニウム(Al)からなるガスバリア層を蒸着
したガスバリアフィルム、PETフィルムに酸化ケイ素
のような無機化合物のガスバリア層を真空蒸着等により
被覆したガスバリアフィルムが知られている。
【0005】しかしながら、前記ガスバリア層を有する
ガスバリアフィルムは真空チャンバ内でAlや無機化合
物を蒸発させて前記チャンバ内の上部に移動自在に配置
された長尺PETフィルムの下面にAlや無機化合物か
らなるガスバリア層を形成することにより製造されるた
め、大掛かりな装置を必要とするばかりか、時間当たり
の積層フィルムの製造効率も自ずと限界がある。
【0006】また、酸化ケイ素のような絶縁性無機化合
物からなるガスバリア層を有するガスバリアフィルム
は、樹脂フィルムのように電子レンジに使用可能である
等の特徴を有する。しかしながら、このガスバリアフィ
ルムはガスバリア層が硬い酸化ケイ素のような無機化合
物の蒸着により形成されるため、屈曲させるとガスバリ
ア層にピンホールやクラックが発生して酸素や水蒸気に
対するバリア性が著しく劣化するという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、屈曲させて
もピンホールやクラックが発生せず、かつ無機化合物や
金属の膜状態と略同等の優れたガスバリア性を有する透
明なガスバリア層の形成に適したをガスバリアコート剤
およびその製造方法を提供しようとするものである。
【0008】本発明は、屈曲させてもピンホールやクラ
ックが発生せず、かつ無機化合物や金属の膜状態と略同
等の優れたガスバリア性を有すると共に、UVカットの
ような別の機能が付加されたガスバリア層の形成に適し
たをガスバリアコート剤およびその製造方法を提供しよ
うとするものである。
【0009】本発明は、屈曲させてもピンホールやクラ
ックが発生せず、かつ無機化合物や金属の膜状態と略同
等の優れたガスバリア性を有するガスバリア層を備えた
ガスバリアフィルムを提供しようとするものである。
【0010】本発明は、屈曲させてもピンホールやクラ
ックが発生せず、優れたガスバリア性を有するガスバリ
ア層を備え、かつ基材である有機高分子フィルムと同等
の透明性を有するガスバリアフィルムを提供しようとす
るものである。
【0011】本発明は、真空蒸着のような大掛かりな装
置を使用せずに塗布手段により前述した優れたガスバリ
ア性を有するガスバリア層を形成することが可能なガス
バリアフィルムの製造方法を提供しようとするものであ
る。
【0012】本発明は、屈曲させてもピンホールやクラ
ックが発生せず、かつ無機化合物や金属の膜状態と同等
の優れたガスバリア性を有するガスバリア層を備え、か
つ容易に引裂くことが可能な易裂性ガスバリアフィルム
を提供しようとするものである。
【0013】本発明は、真空蒸着のような大掛かりな装
置を使用せずに塗布手段により前述した優れたガスバリ
ア性を有するガスバリア層を形成することができ、かつ
容易に引裂くことが可能な易裂性ガスバリアフィルムの
製造方法を提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるガスバリ
アコート剤は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カ
リウム水溶液にそれぞれ分子レベルで溶解・分散された
ポリビニルアルコールおよび珪酸塩を含み、透明でアル
カリ性であることを特徴とするものである。
【0015】本発明に係わるガスバリアコート剤の製造
方法は、ポリビニルアルコール水溶液を加圧し、高速度
で互いに衝突破砕する操作を複数回繰り返すことにより
ポリビニルアルコールが分子レベルで溶解・分散された
ポリビニルアルコール溶解・分散水溶液を調製する工
程;水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶
液に酸化ケイ素を反応させて珪酸塩水溶液を調製する工
程;および前記ポリビニルアルコール溶解・分散水溶液
と前記珪酸塩水溶液と水とをアルカリ性になるように混
合し、この混合物を加圧し、高速度で互いに衝突破砕す
る操作を複数回繰り返すことにより水酸化ナトリウム水
溶液または水酸化カリウム水溶液にポリビニルアルコー
ルおよび珪酸塩をそれぞれ分子レベルで溶解・分散させ
る工程;を具備したことを特徴とするものである。
【0016】本発明に係わる別のガスバリアコート剤
は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶
液にポリビニルアルコールおよび珪酸塩がそれぞれ分子
レベルで溶解・分散されるとともに、ポリビニアルコー
ルを除く有機高分子、金属および無機化合物から選ばれ
る少なくとも1つの材料からなる多数の超微粉末が分散
された組成を有し、かつアルカリ性であることを特徴と
するものである。
【0017】本発明に係わる別のガスバリアコート剤の
製造方法は、ポリビニルアルコール水溶液を加圧し、高
速度で互いに衝突破砕する操作を複数回繰り返すことに
よりポリビニルアルコールが分子レベルで溶解・分散さ
れたポリビニルアルコール溶解・分散水溶液を調製する
工程;水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水
溶液に酸化ケイ素を反応させて珪酸塩水溶液を調製する
工程;および前記ポリビニルアルコール溶解・分散水溶
液と前記珪酸塩水溶液とポリビニアルコールを除く有機
高分子、金属および無機化合物から選ばれる少なくとも
1つの材料からなる多数の微粉末と水とをアルカリ性に
なるように混合し、この混合物を加圧し、高速度で互い
に衝突破砕する操作を複数回繰り返すことにより水酸化
ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液にポリビ
ニルアルコールおよび珪酸塩をそれぞれ分子レベルで溶
解・分散させるとともに、前記多数の微粉末を破砕し、
超微粉末化して分散させる工程;を具備したことを特徴
とするものである。
【0018】本発明に係わるガスバリアフィルムは、基
材フィルム;および前記基材フィルムに被覆されたケイ
素架橋ポリビニルアルコールからなる透明なガスバリア
層;を具備したことを特徴とするものである。
【0019】本発明に係わる別のガスバリアフィルム
は、有機高分子フィルム;および前記有機高分子フィル
ムに被覆されたケイ素架橋ポリビニルアルコールからな
る透明なガスバリア層;を具備し、前記有機高分子フィ
ルムと同等の透明性を有することを特徴とするものであ
る。
【0020】本発明に係わるさらに別のガスバリアフィ
ルムは、基材フィルム;および前記基材フィルムに被覆
されたケイ素架橋ポリビニルアルコールからなる透明な
ガスバリア層;を具備し、複数回屈曲後の23℃、90
RH%での酸素透過量が10cc/m2・24hr以下
で、かつ40℃、90RH%での水蒸気透過量が10g
/m2・24hr以下であることを特徴とするものであ
る。
【0021】本発明に係わるガスバリアフィルムの製造
方法は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム
水溶液にそれぞれ分子レベルで溶解・分散されたポリビ
ニルアルコールおよび珪酸塩を含み、かつ透明でアルカ
リ性であるガスバリアコート剤を基材フイルム上に塗布
して塗膜を形成する工程;および前記塗膜付き基材フィ
ルムを加熱乾燥して前記塗膜中の水分を蒸発させると共
に前記分子レベルのポリビニルアルコールおよび珪酸塩
を反応させることにより前記基材フィルム上にケイ素架
橋ポリビニルアルコールからなる透明なガスバリア層を
形成する工程;を具備したことを特徴とするものであ
る。
【0022】本発明に係わる別のガスバリアフィルム
は、基材フィルム;および前記基材フィルムに被覆さ
れ、ケイ素架橋ポリビニルアルコールとこのケイ素架橋
ポリビニルアルコールに分散されたポリビニアルコール
を除く有機高分子、金属および無機化合物から選ばれ少
なくとも1つの材料からなる多数の超微粉末とから構成
されるガスバリア層;を具備したことを特徴とするもの
である。
【0023】本発明に係わるさらに別のガスバリアフィ
ルムは、基材フィルム;および前記基材フィルムに被覆
され、ケイ素架橋ポリビニルアルコールとこのケイ素架
橋ポリビニルアルコールに分散された酸化ケイ素超微粉
末とからなる透明なガスバリア層;を具備し、前記有機
高分子フィルムと同等の透明性を有することを特徴とす
るものである。
【0024】本発明に係わるさらに別のガスバリアフィ
ルムは、基材フィルム;および前記基材フィルムに被覆
され、ケイ素架橋ポリビニルアルコールとこのケイ素架
橋ポリビニルアルコールに分散されたポリビニアルコー
ルを除く有機高分子、金属および無機化合物から選ばれ
少なくとも1つの材料からなる多数の超微粉末とから構
成されるガスバリア層;を具備し、複数回屈曲後の23
℃、90RH%での酸素透過量が10cc/m2・24
hr以下で、かつ40℃、90RH%での水蒸気透過量
が10g/m2・24hr以下であることを特徴とする
ものである。
【0025】本発明に係わる別のガスバリアフィルムの
製造方法は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリ
ウム水溶液にポリビニルアルコールおよび珪酸塩がそれ
ぞれ分子レベルで溶解・分散されるとともに、ポリビニ
アルコールを除く有機高分子、金属および無機化合物か
ら選ばれる少なくとも1つの材料からなる多数の超微粉
末が分散された組成を有し、かつアルカリ性であるガス
バリアコート剤を基材フイルム上に塗布して塗膜を形成
する工程;および前記塗膜付き基材フイルムを加熱乾燥
して前記塗膜中の水分を蒸発させると共に前記分子レベ
ルのポリビニルアルコールおよび珪酸塩を反応させるこ
とにより前記基材フィルム上にケイ素架橋ポリビニルア
ルコールとこのケイ素架橋ポリビニルアルコールに分散
された前記多数の超微粉末とからなるガスバリア層を形
成することを特徴とするものである。
【0026】本発明に係わる易裂性ガスバリアフィルム
は、多数の微細な貫通孔および/または未貫通孔を有す
る多孔質有機高分子フィルム;および前記多孔質有機高
分子フィルムに被覆されたケイ素架橋ポリビニルアルコ
ールからなる透明なガスバリア層;を具備したことを特
徴とするものである。
【0027】本発明に係わる別の易裂性ガスバリアフィ
ルムは、多数の微細な貫通孔および/または未貫通孔を
有する多孔質有機高分子フィルム;および前記多孔質有
機高分子フィルムに被覆されたケイ素架橋ポリビニルア
ルコールとこのケイ素架橋ポリビニルアルコールに分散
されたポリビニアルコールを除く有機高分子、金属およ
び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの材料からな
る多数の超微粉末から構成されたガスバリア層;を具備
したことを特徴とするものである。
【0028】本発明に係わる易裂性ガスバリアフィルム
の製造方法は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カ
リウム水溶液にそれぞれ分子レベルで溶解・分散された
ポリビニルアルコールおよび珪酸塩を含み、かつ透明で
アルカリ性であるガスバリアコート剤を多数の微細な貫
通孔および/または未貫通孔を有する多孔質有機高分子
フィルム上に塗布して塗膜を形成する工程;および前記
塗膜付き多孔質有機高分子フィルムを加熱乾燥して前記
塗膜中の水分を蒸発させると共に前記分子レベルのポリ
ビニルアルコールおよび珪酸塩を反応させることにより
前記多孔質有機高分子フィルム上にケイ素架橋ポリビニ
ルアルコールからなる透明なガスバリア層を形成する工
程;を具備したことを特徴とするものである。
【0029】本発明に係わる別の易裂性ガスバリアフィ
ルムの製造方法は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸
化カリウム水溶液にポリビニルアルコールおよび珪酸塩
がそれぞれ分子レベルで溶解・分散されるとともに、ポ
リビニアルコールを除く有機高分子、金属および無機化
合物から選ばれる少なくとも1つの材料からなる多数の
超微粉末が分散された組成を有し、かつアルカリ性であ
るガスバリアコート剤を多数の微細な貫通孔および/ま
たは未貫通孔を有する多孔質有機高分子フィルム上に塗
布して塗膜を形成する工程;および前記塗膜付き多孔質
有機高分子フィルムを加熱乾燥して前記塗膜中の水分を
蒸発させると共に前記分子レベルのポリビニルアルコー
ルおよび珪酸塩を反応させることにより前記多孔質有機
高分子フィルム上にケイ素架橋ポリビニルアルコールと
このケイ素架橋ポリビニルアルコールに分散された前記
多数の超微粉末とからなるガスバリア層を形成する工
程;を具備したことを特徴とするものである。
【0030】
【発明の実施の形態】(1)以下、本発明に係わるガス
バリアコート剤、その製造方法、ガスバリアフィルム、
その製造方法および易裂性ガスバリアフィルムおよびそ
の製造方法を説明する。
【0031】(1−1)ガスバリアコート剤 このガスバリアコート剤は、水酸化ナトリウム水溶液ま
たは水酸化カリウム水溶液にそれぞれ分子レベルで溶解
・分散されたポリビニルアルコールおよび珪酸塩を含
み、透明でアルカリ性である。
【0032】ここで『分子レベルで溶解・分散された』
とは、前記ポリビニルアルコールにおいてはビニアルコ
ール単量体もしくはこの単量体が2ないし5つ重合した
状態で溶解・分散されていることを意味し、前記珪酸塩
において溶解された珪酸塩が比表面積で1000m2
g以上であることを意味する。
【0033】ここで『珪酸塩』とは、オルト珪酸ナトリ
ウムまたはオルト珪酸カリウムを意味する。
【0034】本発明に係わるバリアコート剤は、pHが
9〜12、より好ましくはpHが9〜10であることが
好ましい。前記バリアコート剤のpHが前記範囲を外れ
ると、酸化ケイ素が析出しては白濁化する恐れがある。
このため、このバリアコート剤を所望の基材フィルムに
塗布し、加熱乾燥した場合、所定のガスバリア性を示
し、かつ透明なガスバリア層を有するガスバリアフィル
ムを得ることが困難になる恐れがある。
【0035】前記ポリビニアルコールおよび前記珪酸塩
の固形分濃度は、6〜12重量%にすることが好まし
い。前記固形分濃度を6重量%未満にすると、このバリ
アコート剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥し
た場合、高いガスバリア性を示すガスバリア層を有する
ガスバリアフィルムを得ることが困難になる恐れがあ
る。一方、前記固形分濃度が12重量%を超えると、酸
化ケイ素が析出しては白濁化する恐れがある。このた
め、このバリアコート剤を所望の基材フィルムに塗布
し、加熱乾燥した場合、所定のガスバリア性を示し、か
つ透明なガスバリア層を有するガスバリアフィルムを得
ることが困難になる恐れがある。
【0036】前記固形分中の前記ポリビニアルコールお
よび前記珪酸塩の配合割合は、前記ポリビニアルコール
60〜90重量%、前記珪酸塩10〜40重量%である
ことが好ましい。前記ポリビニルアルコールの配合割合
を60重量%未満にすると、このバリアコート剤を所望
の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、前記基材
フィルムに対して密着性の優れたガスバリア層を形成す
ることが困難になる。一方、前記ポリビニルアルコール
の配合割合が90重量%を超えると、珪酸塩量が相対的
に低下して高いガスバリア性を示すガスバリア層を有す
るガスバリアフィルムを得ることが困難になる恐れがあ
る。
【0037】また、前記各成分の配合割合が前記範囲を
逸脱すると、このバリアコート剤を所望の基材フィルム
に塗布し、加熱乾燥した場合、分子レベルで分散された
ポリビニルアルコールと珪酸塩との反応バランスが悪化
して高いガスバリア性を示すケイ素架橋ポリビニルアル
コールを生成することが困難になる。しかも、得られた
ガイバリアコート剤は酸化ケイ素が析出しては白濁化す
る恐れがある。このため、このバリアコート剤を所望の
基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、所定のガス
バリア性を示し、かつ透明なガスバリア層を有するガス
バリアフィルムを得ることが困難になる恐れがある。よ
り好ましい前記固形分中の前記ポリビニアルコールおよ
び前記珪酸塩の配合割合は、それぞれ70〜85重量
%、15〜30重量%である。
【0038】(1−2)ガスバリアコート剤の製造方法 (第1工程)まず、ポリビニルアルコール水溶液を加圧
し、高速度で互いに衝突破砕する操作を複数回繰り返す
ことによりポリビニルアルコールが分子レベルで溶解・
分散されたポリビニルアルコール溶解・分散水溶液を調
製する。このようにポリビニルアルコールが分子レベル
で溶解・分散されたポリビニルアルコール溶解・分散水
溶液は、調製後に放置しても固化せず、安定した溶液状
態を維持することが可能になる。
【0039】前記ポリビニルアルコール水溶液の濃度
は、後述する理由から6〜12重量%、より好ましくは
8〜11重量%にすることが望ましい。
【0040】前記衝突破砕は、例えば図1に示す衝突破
砕装置を用いて行なうことができる。すなわち、図1に
おいて本体1は後述する上部、下部のブロックが挿入固
定される矩形状穴2,3が上部および下部にそれぞれ穿
設されている。前記矩形状穴2,3間に位置する前記本
体1には、原料の加速流が互いに衝突される台錐形状の
空洞部4が形成されている。なお、前記台錐形状をなす
空洞部4の上下の開口径は前記上下の矩形状穴2,3よ
り小さくなっている。下方に向けて所望の角度で傾斜さ
れた一対の突起部5a,5bは、前記空洞部4の中間内
面において互いに対向するように前記本体1に形成され
ている。
【0041】一対の加速流路6a,6bは、一端が前記
上部矩形状穴2の対向する内側面にそれぞれ開口され、
かつ他端が前記突起部5a,5bの先端面にそれぞれ開
口するように前記本体1に形成されている。ノズル部7
a,7b は、前記突起部5a,5bの根元に位置する
前記加速流路6a,6b部分にそれぞれ介装されてい
る。
【0042】ねじ切り加工された穴8が穿設された矩形
状の上部ブロック9は、前記本体1の上部矩形状穴2に
挿入固定されている。一対の分岐流路10a,10b
は、前記穴8に逆円錐形の貫通穴11を通して連通され
ている。前記各分岐流路10a,10bは、前記加速流
路6a,6bとそれぞれ連通するように前記上部ブロッ
ク2に対向する外側面に開口されている。なお、前記上
部ブロック2のねじ切り穴8には、図示しない原料供給
管が螺合、連結される。ま た、前記本体1の加速流路
6a,6bと前記上部ブロック9の分岐流路10a,1
0bとの連通部には、Oリング12a,12bがそれぞ
れ介装されている。
【0043】ねじ切り加工された穴13が穿設された矩
形状の下部ブロック14は、前記本体1の下部矩形状穴
3に挿入固定されている。前記穴13は、円柱状穴15
を通して前記本体1の空洞部4と連通している。なお、
前記下部ブロック14のねじ切り穴13には、図示しな
い処理液排出管が螺合、連結される。
【0044】前述した図1に示す衝突破砕装置によりポ
リビニルアルコール溶解・分散水溶液を調製する方法を
説明する。
【0045】まず、ポリビニルアルコールを水で溶解し
たポリビニルアルコール水溶液を図示しない原料供給管
から加圧して上部ブロック9内に供給する。加圧された
ポリビニルアルコール水溶液が前記上部ブロック9内に
供給されると、ポリビニルアルコール水溶液は逆円錐状
の貫通穴11を通して分岐流路10a,10bにそれぞ
れ別れ、さらに加速流路6a,6bに供給される。これ
ら加速流路6a,bに流入されたポリビニルアルコール
水溶液は、ノズル部7a,7bを通過する過程で更に加
速され、突起部5a,5bの開口部から本体1の空洞部
4内に噴射される。この時、前記突起部5a,5bは下
方に傾斜されていると共に、互いに対向されているた
め、突起部5a,5bの開口部から噴射されたポリビニ
ルアルコール水溶液が前記空洞部4の中心付近で互いに
衝突してそれらのポリビニルアルコール水溶液が破砕さ
れる。破砕処理がなされたポリビニルアルコール水溶液
は、前記空洞部4から下部ブロック部14の円柱状穴1
5、ねじ切り加工された穴13を通して処理排出管に排
出される。
【0046】このような衝突破砕装置を用いるポリビニ
ルアルコール水溶液の衝突破砕工程を複数回繰り返すこ
とにより、前記ポリビニルアルコールが分子レベルで溶
解・分散されたポリビニルアルコール溶解・分散水溶液
が調製される。
【0047】前記ポリビニルアルコール水溶液に対する
加圧力は、1000Kg/cm2以上の圧力にすること
が好ましい。
【0048】前記ポリビニルアルコール水溶液を互いに
衝突す破砕する際の速度は、100m/sec以上にす
ることが好ましい。このような高速度でポリビニルアル
コール水溶液を互いに衝突破砕することにより短時間で
ポリビニルアルコールが分子レベルで溶解・分散された
ポリビニルアルコール溶解・分散水溶液を調製すること
が可能になる。
【0049】前記ポリビニルアルコール水溶液は、その
水溶液の調製工程および互いに衝突破砕する工程におい
て前記ポリビニアルコールの分解温度未満、好ましくは
30〜100℃の温度に加熱することを許容する。
【0050】(第2工程)水酸化ナトリウム水溶液また
は水酸化カリウム水溶液に酸化ケイ素を反応させて珪酸
塩水溶液を調製する。
【0051】ここで『珪酸塩』とは、オルト珪酸ナトリ
ウムまたはオルト珪酸カリウムを意味する。
【0052】前記珪酸塩水溶液は、pHが12〜14の
水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液に
一次粒子径が100nm以下、より好ましくは一次粒子
径が10nm以下の親水性の酸化ケイ素微粉末を添加し
て反応させることによりを調製することがより好まし
い。
【0053】前記酸化ケイ素微粉末としては、例えば日
本アエロジル社製商品名;380等を用いることができ
る。
【0054】前記珪酸塩水溶液は、後述する理由により
濃度を10〜25重量%、pHを11〜12にすること
が好ましい。
【0055】(第3工程)前記ポリビニルアルコール溶
解・分散水溶液と前記珪酸塩水溶液と水とをアルカリ性
になるように混合し、この混合物(混合水溶液)を加圧
し、高速度で互いに衝突破砕する操作を複数回繰り返す
ことにより水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウ
ム水溶液にポリビニルアルコールおよび珪酸塩をそれぞ
れ分子レベルで溶解・分散させてガスバリアコート剤を
製造する。
【0056】前記ポリビニルアルコール溶解・分散水溶
液と前記珪酸塩水溶液と水とを混合する際のpHは、9
〜12、より好ましくは9〜10にすることが望まし
い。前記混合水溶液のpHが前記範囲を逸脱すると、製
造されたガスバリアコート剤中に酸化ケイ素が析出して
は白濁化する恐れがある。このため、このバリアコート
剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、
所定のガスバリア性を示し、かつ透明なガスバリア層を
有するガスバリアフィルムを得ることが困難になる恐れ
がある。
【0057】前記ポリビニルアルコール溶解・分散水溶
液と前記珪酸塩水溶液と水とを混合する際、ポリビニア
ルコール水溶液の濃度は6〜12重量%に、前記珪酸塩
水溶液は珪酸塩濃度が10〜25重量%で、かつpHが
11〜12にすることが好ましい。これは、次のような
理由によるものである。
【0058】前記ポリビニアルコール水溶液の濃度を6
重量%未満にすると、製造されたガスバリアコート剤中
にポリビニアルコールが不足し、このガスバリアコート
剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、
前記基材フィルムに対して良好に密着し、かつ高いガス
バリア性を示すガスバリア層を有するガスバリアフィル
ムを得ることが困難になる恐れがある。一方、前記ポリ
ビニアルコール水溶液の濃度を12重量%を超えると、
製造されたガスバリアコート剤中に酸化ケイ素が析出し
ては白濁化する恐れがある。このため、このガスバリア
コート剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した
場合、所定のガスバリア性を示し、かつ透明なガスバリ
ア層を有するガスバリアフィルムを得ることが困難にな
る恐れがある。より好ましい前記ポリビニアルコール水
溶液の濃度は、8〜10重量%である。
【0059】前記珪酸塩水溶液の濃度を10重量%未満
にすると、製造されたガスバリアコート剤中に珪酸塩量
が不足し、このガスバリアコート剤を所望の基材フィル
ムに塗布し、加熱乾燥した場合、高いガスバリア性を示
すガスバリア層を有するガスバリアフィルムを得ること
が困難になる恐れがある。一方、前記珪酸塩水溶液の濃
度が25重量%を超えると、製造されたガスバリアコー
ト剤中に酸化ケイ素が析出しては白濁化する恐れがあ
る。このため、このガスバリアコート剤を所望の基材フ
ィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、所定のガスバリア
性を示し、かつ透明なガスバリア層を有するガスバリア
フィルムを得ることが困難になる恐れがある。より好ま
しい前記珪酸塩水溶液の濃度は、14〜20重量%であ
る。
【0060】前記珪酸塩水溶液のpHが前記範囲を逸脱
すると、ガスバリアコート剤中に酸化ケイ素が析出して
は白濁化する恐れがある。このため、このガスバリアコ
ート剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場
合、所定のガスバリア性を示し、かつ透明なガスバリア
層を有するガスバリアフィルムを得ることが困難になる
恐れがある。
【0061】前記混合水溶液を加圧し、高速度で互いに
衝突破砕するには、例えば前述した図1に示す衝突破砕
装置を用いて行なうことができる。
【0062】前記混合水溶液に対する加圧力は、100
0Kg/cm2以上の圧力にすることが好ましい。
【0063】前記混合水溶液を互いに衝突す破砕する際
の速度は、100m/sec以上にすることが好まし
い。このような高速度で混合水溶液を互いに衝突破砕す
ることにより短時間でポリビニルアルコールおよび珪酸
塩がそれぞれ分子レベルで溶解・分散されたガスバリア
コート剤を製造することが可能になる。
【0064】前記混合水溶液は、その水溶液の衝突破砕
する工程において30〜100℃の温度に加熱すること
が好ましい。
【0065】(1−3)ガスバリアフィルム このガスバリアフィルムは、基材フィルムと、この基材
フィルムに被覆されたケイ素架橋ポリビニルアルコール
からなる透明なガスバリア層とを具備した構造を有す
る。
【0066】前記基材フィルムとしては、例えば包装材
料に適用される各種の有機高分子フィルムまたは紙を使
用することができる。前記有機高分子フィルムとして
は、例えば例えばポリエチレンテレフタレート(PE
T)フィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレンフィ
ルム(特に配向性ポリプロピレンフィルム)、無配向の
ポリエチレンフィルム、エチルビニルアセテート共重合
体(EVA)フィルム、エラストマーフィルム等を用い
ることができる。これらのフィルムは、1層または2層
以上の形態で用いることができる。前記有機高分子フィ
ルムは、10〜30μmの厚さを有することが望まし
い。
【0067】前記ケイ素架橋ポリビニルアルコールは、
分子レベルのポリビニルアルコールをケイ素化合物(特
に、珪酸塩)で均一かつ三次元的にケイ素化して架橋し
たものであることが好ましい。
【0068】前記ガスバリア層は、1μm以上の厚さを
有することが好ましい。前記ガスバリア層の厚さを1μ
m未満にすると、ガスバリアフィルムに高いガスバリア
性を付与することが困難になる。より好ましい前記ガス
バリア層の厚さは、2〜8μm、さらに好ましくは3〜
5μmである。
【0069】なお、前記ガスバリアフィルムから密封袋
を作る場合に前記バリア層上にシーラントフィルムを積
層することを許容する。
【0070】前記シーラントフィルムとしては、例えば
ポリエチレンフィルム、無配向ポリプロピレンフィルム
等を用いることができる。
【0071】前記シーラントフィルムは、30〜40μ
mの厚さを有することが好ましい。
【0072】また、前記ガスバリアフィルムを食品等を
包装するラップ材として用いる場合には、前記バリア層
上にポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレートの
ようなオーバコート材を被覆することを許容する。ま
た、前記ガスバリア層に紙または不織布を被覆してもよ
い。
【0073】(1−4)ガスバリアフィルムの製造方法 まず、基材フィルムに前述したガスバリアコート剤(1
−1)を塗布して塗膜を形成する。つづいて、加熱乾燥
して前記塗膜中の水分を蒸発させると共に前記塗膜中に
それぞれ分子レベルで分散されたポリビニルアルコール
および珪酸塩を反応させてケイ素架橋ポリビニルアルコ
ールからなる透明なガスバリア層を前記基材フィルム上
に形成することによりガスバリアフィルムを製造する。
【0074】前記基材フィルムとしては、前記ガスバリ
アフィルム(1−3)で説明したのと同様なものが用い
られる。
【0075】前記塗布工程においては、加熱乾燥後のガ
スバリア層が1μm以上になるように前記ガスバリアコ
ート剤を前記基材フィルム上に塗布することが好まし
い。
【0076】前記塗布手段としては、例えばロールコー
タ法、スプレー法、圧送式ローラブラシ法等を採用する
ことができる。特に、容器内に前記ガスバリアコート剤
を収容し、このガスバリアコート剤に一部が浸漬された
下部ロールと上部ロールの間に長尺基材フィルムを通し
て前記フィルムの下面にガスバリアコート剤を塗布する
ロールコータ法が量産性の点で好ましい。
【0077】前記加熱処理は、水の沸点以上、前記基材
フィルムの熱変形温度未満で行なうことが好ましい。よ
り好ましい前記加熱処理温度は105〜120℃であ
る。特に、前記加熱処理工程においては徐々に昇温させ
ずに前記水の沸点以上、前記基材フィルムの溶融または
燃焼温度未満の温度雰囲気に塗膜付き基材フィルムを置
いて反応させ、その後徐冷することが望ましい。また、
徐冷後に水の沸点未満、好ましくは35〜45℃でエー
ジングすることが好ましい。
【0078】なお、得られたガスバリアフィルムから密
封袋を作る場合にはバリア層の形成後に前記ガスバリア
フィルム(1−3)で説明したのと同様なシーラントフ
ィルムまたはオーバコート材をさらに積層ないし被覆す
ることを許容する。この他、前記ガスバリア層に紙また
は不織布を被覆してもよい。
【0079】(1−5)易裂性ガスバリアフィルム この易裂性ガスバリアフィルムは、多数の微細な貫通孔
および/または未貫通孔を有する多孔質有機高分子フィ
ルムと、この多孔質有機高分子フィルムに被覆されたケ
イ素架橋ポリビニアルコールからなる透明なガスバリア
層とを具備した構造を有する。
【0080】前記多孔質有機高分子フィルムの基材であ
る有機高分子フィルムとしては、包装材料に適用される
各種の有機樹脂フィルムを使用することができ、例えば
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ナイ
ロンフィルム、ポリプロピレンフィルム(特に配向性ポ
リプロピレンフィルム)、無配向のポリエチレンフィル
ム、エチルビニルアセテート共重合体(EVA)フィル
ム、ポリビニルアルコールフィルム等を用いることがで
きる。これらのフィルムは、1層または2層以上の形態
で用いることができる。この有機高分子フィルムは、1
0〜30μm、より好ましくは12から20μmの厚さ
を有することが望ましい。
【0081】前記多孔質有機高分子フィルムは、少なく
とも引裂かれる領域に多数の微細な貫通孔および/また
は未貫通孔を有することが必要である。特に、前記有機
高分子フィルム全体に多数の貫通孔および/または未貫
通孔を穿設することにより任意の箇所から引裂くことが
可能な易裂性ガスバリアフィルムを得ることが可能であ
る。
【0082】前記多孔質有機高分子フィルムは、平均開
口径0.5〜100μmの微細な多数の貫通孔および/
または未貫通孔が500個/cm2以上の密度で前記有
機高分子フィルムに穿設されていることが望ましい。特
に、多数の貫通孔および/または未貫通孔が断面V字形
もしくはU字形をなす場合には、大きな開口側の平均開
口径を10〜300μm、小さい開口径側の平均開口径
を0.1から50μmにすることが好ましい。
【0083】前記多孔質有機高分子フィルムの貫通孔お
よび/または未貫通孔の平均開口径を規定したのは、次
のような理由によるものである。前記貫通孔および/ま
たは未貫通孔の平均開口径を0.5μm未満にすると、
この多孔質有機高分子フィルムを有する易裂性ガスバリ
アフィルムを目的とする方向に確実かつ容易な引き裂く
ことが困難になる。一方、前記各貫通孔の平均開口径が
100μmを超えると、この多孔質有機高分子フィルム
に前述したガスバリア層を被覆しても良好なガスバリア
性を示すフィルムを得ることが困難になる。より好まし
い前記貫通孔および/または未貫通孔の平均開口径は、
5〜80μmである。
【0084】前記多孔質有機高分子フィルムの多数の貫
通孔および/または未貫通孔の形成密度を規定したの
は、次のような理由によるものである。前記多数の貫通
孔および/または未貫通孔の形成密度を500個/cm
2 未満にすると、この多孔質有機高分子フィルムを有す
る易裂性ガスバリアフィルムを目的とする方向に確実か
つ容易に引き裂くことが困難になる。より好ましい前記
多数の貫通孔および/または未貫通孔の形成密度は、1
000個/cm2以上である。なお、前記貫通孔および
/または未貫通孔の形成密度の上限については、後述す
る多孔質フィルム製造装置を用いる場合、一回の処理で
25000個/cm2 になる。
【0085】前記多孔質有機高分子フィルム、例えば全
体に多数の微細な貫通孔および/または未貫通孔を有す
る多孔質有機高分子フィルムは、本発明者が発明した特
公平6−61859号公報に開示された多孔質フィルム
の製造装置により製造される。
【0086】前記多孔質フィルムの製造装置は、長尺有
機高分子フィルムを供給するための供給手段;鋭い角部
を有する多数のモース硬度5以上の粒子(例えばダイヤ
モンド粒子)が表面に付着された回転可能な第1ロール
と、前記ロールに対して逆方向に回転可能な第2ロール
とを備え、前記第1、第2のロールを互いに対向して配
置してそれらの間に前記長尺フィルムを通過させるよう
にすると共に、前記各ロールの一方を固定し、他方を前
記一方のロールに対してその対向方向に移動自在に配置
した穿孔用ユニット;および前記ユニットの前記移動自
在なロールの両端部付近に設けられ、前記各ロールによ
る前記フィルムへの押圧力を調節するための圧力調節手
段;を具備した構造を有する。
【0087】前記ケイ素架橋ポリビニルアルコールは、
分子レベルのポリビニルアルコールをケイ素化合物(特
に、珪酸塩)で均一かつ三次元的にケイ素化して架橋し
たものであることが好ましい。
【0088】前記ガスバリア層は、前記多孔質有機高分
子フィルムに次のような形態で被覆される。
【0089】(a)ガスバリア層が多孔質有機高分子フ
ィルムにその多数の貫通孔および/または未貫通孔の少
なくとも開口部付近を埋めるように被覆されている。
【0090】(b)多数の未貫通孔を有する多孔質有機
高分子フィルムを用いる場合、ガスバリア層が前記多孔
質有機高分子フィルムの未貫通孔の開口部側と反対の面
に被覆されている。
【0091】前記(a)の形態の場合、前記ガスバリア
層の埋め込み部の厚さは1μm以上にすることが好まし
い。
【0092】前記(a)、(b)の形態において、前記
ガスバリア層は前記多孔質有機高分子フィルムの被覆面
から厚さが1μm以上であることが好ましい。前記ガス
バリア層の厚さを1μm未満にすると、易裂性ガスバリ
アフィルムに高いガスバリア性を付与することが困難に
なる。より好ましい前記ガスバリア層の厚さは、2〜8
μm、さらに好ましくは3〜5μmである。
【0093】前記易裂性ガスバリアフィルムから密封袋
を作る場合には、前記バリア層上にさらにシーラントフ
ィルムを積層することを許容する。
【0094】前記シーラントフィルムとしては、例えば
ポリエチレンフィルム、無配向ポリプロピレンフィルム
等を用いることができる。
【0095】前記シーラントフィルムは、30〜40μ
mの厚さを有することが好ましい。
【0096】前記易裂性ガスバリアフィルムは食品等を
包装するラップ材として用いる場合には、前記バリア層
上にポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレートの
ようなオーバコート材を被覆することを許容する。その
他、前記ガスバリア層に紙または不織布を積層すること
を許容する。
【0097】(1−6)易裂性ガスバリアフィルムの製
造方法 まず、多数の微細な貫通孔および/または未貫通孔を有
する多孔質有機高分子フィルムに前述したガスバリアコ
ート剤(1−1)を塗布して塗膜を形成する。つづい
て、この塗膜付き多孔質有機高分子フィルムを加熱乾燥
して前記塗膜中の水分を蒸発させると共に前記塗膜中に
それぞれ分子レベルで分散されたポリビニルアルコール
および珪酸塩を反応させてケイ素架橋ポリビニルアルコ
ールからなるガスバリア層を前記多孔質有機高分子フィ
ルム上に形成することにより易裂性ガスバリアフィルム
を製造する。
【0098】前記多孔質有機高分子フィルムとしては、
前記易裂性ガスバリアフィルム(1−5)で説明したの
と同様なものが用いられる。
【0099】前記塗布手段としては、例えばロールコー
タ法、スプレー法、圧送式ローラブラシ法等を採用する
ことができる。特に、容器内に前記ガスバリアコート剤
を収容し、このガスバリアコート剤に一部が浸漬された
下部ロールと上部ロールの間に長尺多孔質有機高分子フ
ィルムを通して前記フィルムの下面にガスバリアコート
剤を塗布するロールコータ法が量産性の点で好ましい。
【0100】前記ガスバリアコート剤を前記多孔質有機
高分子フィルムに塗布するにあっては、次のような形態
が採用される。
【0101】(a)多孔質有機高分子フィルムにガスバ
リアコート剤をその多数の貫通孔および/または未貫通
孔の少なくとも開口部付近を埋めるように塗布して塗膜
を形成する。
【0102】(b)多数の未貫通孔を有する多孔質有機
高分子フィルムを用いる場合、ガスバリアコート剤を前
記多孔質有機高分子フィルムの未貫通孔の開口部側と反
対の面に塗布して塗膜を形成する。
【0103】前記(a)の形態の場合、前記ガスバリア
コート剤は形成されたガスバリア層が多孔質有機高分子
フィルムの多数の貫通孔および/または未貫通孔の開口
部付近に厚さは1μm以上の埋め込まれるよう塗布する
ことが好ましい。
【0104】前記(a)、(b)の形態において、前記
ガスバリアコート剤は形成されたガスバリア層が前記多
孔質有機高分子フィルムの被覆面から1μm以上の厚さ
になるように塗布するが好ましい。より好ましい前記ガ
スバリアコート剤の塗布、加熱乾燥により形成されたガ
スバリア層の厚さは、2〜8μm、さらに好ましくは3
〜5μmである。
【0105】前記加熱処理は、水の沸点以上、前記多孔
質有機高分子フィルムの熱変形温度未満で行なうことが
好ましい。より好ましい前記加熱処理温度は、105〜
120℃である。特に、前記加熱処理工程においては徐
々に昇温させずに前記水の沸点以上、前記多孔質有機高
分子フィルムの溶融温度未満の温度雰囲気に塗膜付き多
孔質有機高分子フィルムを置いて反応させ、その後徐冷
することが望ましい。また、徐冷後に水の沸点未満、好
ましくは35〜45℃でエージングすることが好まし
い。
【0106】なお、得られた易裂性ガスバリアフィルム
から密封袋を作る場合にバリア層の形成後に前記易裂性
ガスバリアフィルム(1−5)で説明したのと同様なシ
ーラントフィルムまたはオーバコート材をさらに積層な
いし被覆することを許容する。この他、前記ガスバリア
層に紙または不織布を被覆してもよい。
【0107】以上説明した本発明に係わるバリアコート
剤(1−1)は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化
カリウム水溶液にそれぞれ分子レベルで溶解・分散され
たポリビニルアルコールおよび珪酸塩を含み、透明でア
ルカリ性であり、長期間放置しても酸化ケイ素が析出せ
ずに安定した特性を有する。
【0108】特に、pHが9〜12、溶解・分散された
前記ポリビニアルコールおよび前記珪酸塩の固形分濃度
が6〜12重量で、かつこの固形分中の前記ポリビニア
ルコールおよび前記珪酸塩の配合割合はそれぞれ60〜
90重量%、10〜40重量%であるガスバリアコート
剤は、長期間放置しても酸化ケイ素が析出せず、ポリビ
ニルアルコールおよび珪酸塩がそれぞれ分子レベルで極
めて安定して溶解・分散され、かつ高い透明性を示す特
性を有する。
【0109】前述したガスバリアコート剤は、屈曲させ
てもピンホールやクラックが発生せず、かつ無機化合物
や金属の膜状態と略同等の優れたガスバリア性を有する
透明なガスバリア層の形成に適用することができる。
【0110】また、前記ガスバリアコート剤は後述する
ガスバリアフィルムのガスバリア層の形成に適用できる
のみならず、ガスバリア性を必要とする物品、例えば中
空有機高分子物品へのガスバリア層の形成にも適用でき
る。
【0111】このようなガスバリアコート剤は、前記
(1−2)で説明したようにポリビニルアルコール水溶
液を加圧し、高速度で互いに衝突破砕する操作を複数回
繰り返すことによりポリビニルアルコールが分子レベル
で溶解・分散されたポリビニルアルコール溶解・分散水
溶液を調製する第1工程と、水酸化ナトリウム水溶液ま
たは水酸化カリウム水溶液に酸化ケイ素を反応させて珪
酸塩水溶液を調製する第2工程と、前記ポリビニルアル
コール溶解・分散水溶液と前記珪酸塩水溶液と水とをア
ルカリ性(好ましくはpH9〜12)になるように混合
し、この混合物を加圧し、高速度で互いに衝突破砕する
操作を複数回繰り返す第3工程とにより製造することが
できる。
【0112】すなわち、前記第1工程により、ポリビニ
ルアルコールを水に比較的高濃度(例えば10重量%前
後)に溶解したポリビニルアルコール水溶液を出発原料
として用いても、調製後の放置において固化せず、安定
した溶液状態が維持されたポリビニルアルコールが分子
レベルで溶解・分散されたポリビニルアルコール溶解・
分散水溶液を得ることが可能になる。
【0113】また、前記第2工程により透明な珪酸塩水
溶液を調製することができる。特に、pHが12〜14
の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液
に一次粒子径が100nm以下(好ましくは10μm以
下)の親水性の酸化ケイ素微粉末を添加して反応させる
ことにより従来手法では困難であった15重量%以上の
高濃度の珪酸塩(オルト珪酸ナトリウムまたはオルト珪
酸カリウム)を含み、かつ前記ガスバリアコート剤の製
造に適した安定性の高い透明な珪酸塩水溶液を短時間で
調製することが可能になる。
【0114】さらに、前記第3工程により前記ポリビニ
ルアルコール溶解・分散水溶液と前記珪酸塩水溶液と水
とをアルカリ性になるように混合した混合水溶液を加圧
し、高速度で互いに衝突破砕する操作を複数回繰り返す
ことによって、従来手法では予想し得ない水酸化ナトリ
ウム水溶液または水酸化カリウム水溶液にポリビニルア
ルコールおよび珪酸塩がそれぞれ分子レベルで安定的に
溶解・分散された透明なガスバリアコート剤を製造する
ことができる。
【0115】特に、濃度が6〜12重量%のポリビニル
アルコール溶解・分散水溶液と珪酸塩濃度が10〜25
重量%で、かつpHが11〜12の珪酸塩水溶液と水と
をpHが9〜12(より好ましくはpHが9〜10)に
なるように混合して混合水溶液を調製し、この混合水溶
液を加圧し、高速度で互いに衝突破砕する操作を複数回
繰り返すことによって、従来手法では予想し得ない水酸
化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液にポリ
ビニルアルコールおよび珪酸塩がそれぞれ分子レベルで
極めて安定的に溶解・分散されたポリビニアルコール前
記ポリビニアルコールおよび前記珪酸塩の固形分濃度が
6〜12重量で、かつこの固形分中の前記ポリビニアル
コールおよび前記珪酸塩の配合割合はそれぞれ60〜9
0重量%、10〜40重量%である透明なガスバリアコ
ート剤を製造することが可能になる。
【0116】また、前述したガスバリアフィルム(1−
3)は基材フィルムと、この基材フィルムに被覆された
ケイ素架橋ポリビニルアルコールからなる透明なガスバ
リア層とを具備し構造を有する。
【0117】このようなガスバリアフィルムは、前記
(1−4)で説明したように基材フイルム上に前記(1
−1)で説明したガスバリアコート剤(水酸化ナトリウ
ム水溶液または水酸化カリウム水溶液にそれぞれ分子レ
ベルで溶解・分散されたポリビニルアルコールおよび珪
酸塩を含み、透明でアルカリ性を示す)を塗布した後、
加熱乾燥(好ましくは水の沸点以上で前記基材フィルム
の熱変形温度未満で加熱乾燥)することによって、前記
基材フィルムの塗膜中の水分が蒸発し、それぞれ分子レ
ベルに分散されたポリビニルアルコールと珪酸塩が反応
してケイ素架橋ポリビニルアルコールからなる高いガス
バリア性を有する透明なガスバリア層を前記基材フィル
ム上に形成することにより製造することができる。これ
は、次のような挙動によるものと推定される。
【0118】すなわち、前記ガスバリアコート剤の塗布
により形成された塗膜は、ポリビニルアルコールと珪酸
塩がそれぞれ分子レベルで極めて均一かつ安定的に分散
され、各々の分子レベルのポリビニルアルコールの周辺
に各々の分子レベルの珪酸塩が均一に存在する形態をな
す。このため、前記加熱乾燥処理により水を蒸発させた
後、全てのポリビニルアルコールのOH基が珪酸塩で速
やかにケイ素化されて、ポリビニアルコールがケイ素に
より均一かつ三次元的に架橋されたケイ素架橋ポリビニ
ルアルコールからなる透明なガスバリア層が前記基材フ
ィルム上に形成できるものと推定される。
【0119】なお、単にポリビニルアルコール水溶液と
珪酸塩水溶液を混合すると、直ぐに酸化ケイ素が析出し
て白濁するため、かかる混合溶液を基材フィルムに塗
布、加熱乾燥しても未反応のポリビニアルコールや析出
した酸化ケイ素が島状に散在したガラス質層になる。そ
の結果、この基材フィルムを屈曲すると、前記島状の未
反応部分等で剥離ないしクラック発生を生じるばかり
か、高湿度雰囲気において酸素や水蒸気等のガスバリア
性が著しく低下する。
【0120】したがって、本発明のように水酸化ナトリ
ウム水溶液または水酸化カリウム水溶液にそれぞれ分子
レベルで溶解・分散されたポリビニルアルコールおよび
珪酸塩を含み、透明でアルカリ性を示すガスバリアコー
ト剤(特に、pHが9〜12で、前記ポリビニアルコー
ルおよび前記珪酸塩の固形分濃度が6〜12重量で、か
つこの固形分中の前記ポリビニアルコールおよび前記珪
酸塩の配合割合はそれぞれ60〜90重量%、10〜4
0重量%であるガスバリアコート剤)を用いることによ
って、その塗膜の加熱乾燥時において従来手法では考え
られなかったポリビニルアルコールと珪酸塩の均一な固
−固反応が進行して、既述したポリビニアルコールがケ
イ素により均一かつ三次元的に架橋されたケイ素架橋ポ
リビニルアルコールからなる優れたガスバリア性を示す
透明なガスバリア層が前記基材フィルム上に形成された
ガスバリアフィルムを製造することが可能になる。
【0121】ここで、ガスバリア性とは酸素、水蒸気、
炭酸ガス等の各種ガスを遮断する性質を意味するこのよ
うなガスバリアフィルムは、次のような作用効果を奏す
る。
【0122】(a)前記ガスバリア層は、それ自身優れ
たガスバリア性を有するポリビニアルコールにケイ素を
架橋したケイ素架橋ポリビニルアルコールからなるた
め、酸素や水蒸気等のガスを遮断する作用を有する。
【0123】(b)高湿度(90RH%以上)の雰囲気
に曝した場合、ポリビニルアルコールのみからなる層は
可塑化されてその酸素遮断性および水蒸気遮断性が著し
く低下する。これに対し、本発明のガスバリア層はポリ
ビニアルコールにケイ素を均一に架橋したケイ素架橋ポ
リビニルアルコールからなるため、高湿度(90RH%
以上)の雰囲気に曝されてもポリビニアルコール単独か
らなる場合のような水分劣化が起きないため、優れた酸
素遮断性および水蒸気遮断性、例えば23℃、90RH
%での酸素透過量が10cc/m2・24hr以下、4
0℃、90RH%での水蒸気透過量が10g/m2・2
4hr以下(特に、2g/m2・24hr以下)という
驚異的な特性を示す。
【0124】(c)前記ガスバリア層は、ポリビニアル
コールにケイ素を架橋したケイ素架橋ポリビニルアルコ
ールからなるため、高い透明性を有する。
【0125】(d)前記ガスバリアフィルムは、臭気に
対しても高いバリア性を有する。
【0126】(e)前記ガスバリア層はケイ素架橋ポリ
ビニルアルコールからなり、適度な柔軟性を有するた
め、屈曲させてもピンホールやクラックの発生を防止で
きる。
【0127】(f)前記ガスバリア層の厚さを1μm以
上と従来のAlやセラミックの蒸着膜に比べて厚くすれ
ば、さらに優れた酸素遮断性および水蒸気遮断性を有す
るガスバリア層を備えたガスバリアフィルムを実現でき
る。
【0128】したがって、前記ガスバリア層によるガス
バリア作用と前記ガスバリア層の優れた柔軟性によっ
て、屈曲させてもピンホールやクラックが発生せず、複
数回の屈曲後において通常の湿度雰囲気のみならず、高
湿度においても優れた酸素遮断性(例えば23℃、90
RH%での酸素透過量が10cc/m2・24hr以
下)、水蒸気遮断性(例えば40℃、90RH%での水
蒸気透過量が10g/m2・24hr以下)等のガスバ
リア性、さらに透明性を有するガスバリアフィルムを提
供できる。
【0129】また、前記ガスバリア層は、水に溶解する
ケイ素架橋ポリビニアルコールからなるため、前記基材
フィルムとしてPET,OPPのような塩素を含まない
有機高分子のフィルムや紙を用いた場合、廃棄処理物を
例えば100℃前後の高温水で処理することにより前記
ガスバリア層を前記基材フィルムから容易に除去するこ
とができる。その結果、前記基材フィルムの回収、再利
用が容易で、しかも廃棄処理物を焼却しても人体に有害
な塩素系化合物が排出されることがないため、環境にや
さしいガスバリアフィルムを提供できる。
【0130】このようなガスバリアフィルム(1−3)
は、そのガスバリア層にトップコート処理を施すること
により食品等を仮包装するラップ材に有効に利用でき
る。特に、前記基材フィルムとして耐熱性の優れた有機
高分子フィルムを用いれば、電子レンジ対応のラップ材
を実現できる。
【0131】また、前記ガスバリアフィルムは前記ガス
バリア層にポリエチレンのようなシーラントフィルムを
積層することによって、各種の食品、医薬品等の密封袋
用素材として有効に利用することができる。
【0132】特に、基材フィルムとしてPET,OPP
のような透明な有機高分子フィルムを用いれば、前記ガ
スバリア層の優れた透明性により前記有機高分子フィル
ムと同等の透明性を有するガスバリアフィルムを提供で
きる。
【0133】前述したガスバリアフィルムの製造方法
(1−4)は、次のような作用効果を奏する。
【0134】(a)前記ガスバリアコート剤を基材フィ
ルムに塗布した後、加熱乾燥してケイ素架橋ポリビニル
アルコールからなるガスバリア層を形成することによっ
て、前述した屈曲させてもピンホールやクラックが発生
せず、かつ透明で優れた酸素遮断性、水蒸気遮断性等の
ガスバリア性を有するガスバリア層を備えたガスバリア
フィルムを製造することができる。
【0135】(b)前記ガスバリア層は、前記ガスバリ
アコート剤を基材フィルムに塗布し、加熱乾燥すること
により形成できる。このため、従来の真空蒸着によりア
ルミニウムや無機化合物のガスバリア層を形成する方法
のように大掛かりな装置を使用することなく簡単かつ量
産的にガスバリアフィルムを製造することができる。
【0136】特に、基材フィルムである延伸ポリプロピ
レン(OPP)はポリエチレンテレフタレート(PE
T)フィルムに比べて耐熱性が劣るため従来の真空蒸着
によるアルミニウムや無機化合物のガスバリア層の形成
が不可能であった。これに対し、本発明は塗布、加熱乾
燥によりガスバリア層を形成するため、耐熱性の劣るO
PPフィルムのようなフィルムをも基材フィルムとして
使用でき、ガスバリアフィルムの低価格化、用途の拡大
を図ることができる。
【0137】(c)前記塗膜付き基材フィルムの加熱処
理工程において、徐々に昇温させずに水の沸点以上、基
材フィルムの熱変形温度未満の温度雰囲気に前記塗膜付
き基材フィルムを置くことによって、前記塗膜中の水分
を迅速に蒸発させ、同時にそれぞれ分子レベルで分散さ
れたポリビニルアルコールおよび珪酸塩を速やかに反応
させることができるため、より一層ガスバリア性、透明
性の優れたガスバリア層を基材フィルム上に形成するこ
とが可能になる。また、徐冷後に水の沸点未満、好まし
くは35〜45℃でエージングすることによって、前記
反応がより確実になされるため、さらに一層ガスバリア
性、透明性の優れたガスバリア層を基材フィルム上に形
成することが可能になる。
【0138】前述した(1−5)の易裂性ガスバリアフ
ィルムは、多数の微細な貫通孔および/または未貫通孔
を有する多孔質有機高分子フィルムと、この多孔質有機
高分子フィルムに被覆されたケイ素架橋ポリビニルアル
コールからなるガスバリア層とを具備した構造を有する
ため、以下に説明する良好な引裂き性と優れたガスバリ
ア性を有する。
【0139】(a)引裂き性の作用 (a−1)前記易裂性ガスバリアフィルムにおいて、少
なくとも引裂かれる領域に多数の貫通孔および/または
未貫通孔が穿設された前記多孔質有機高分子フィルムを
有するため、前記領域の箇所を両手の指で引っ張ると、
前記各貫通孔および/または各未貫通孔が引裂きの起点
として作用して引き裂かれる。さらに、前記引裂き方向
には多数の貫通孔および/または未貫通孔が形成されて
いるため、それら貫通孔および/または未貫通孔が順次
引裂き点として作用する。その結果、極めて容易に、つ
まり過大な力を加えずに易裂性ガスバリアフィルムを引
き裂くことができる。
【0140】(a−2)引裂かれる領域に平均開口径
0.5〜100μmの微細な貫通孔および/または未貫
通孔が500個/cm2以上の密度で開口された多孔質
有機高分子フィルムを用いることによって、より一層引
裂き易い易裂性ガスバリアフィルムを得ることができ
る。
【0141】(a−3)ガスバリア層上に縦横いずれに
も裂け難い性質を有するポリエチレンフィルムのような
シーラントフィルムを積層した場合でも、所定の箇所か
ら目的とする方向に容易に引裂くことが可能になる。
【0142】(b)ガスバリア層の作用 (b−1)前記ガスバリア層は、それ自身優れたガスバ
リア性を有するポリビニアルコールにケイ素を架橋した
ケイ素架橋ポリビニルアルコールからなるため、酸素や
水蒸気を遮断する作用を有する。
【0143】(b−2)高湿度(90RH%以上)の雰
囲気に曝した場合、ポリビニルアルコールのみからなる
層は可塑化されてその酸素遮断性および水蒸気遮断性が
著しく低下する。これに対し、本発明のガスバリア層は
ポリビニアルコールにケイ素を均一に架橋したケイ素架
橋ポリビニルアルコールからなるため、高湿度(90R
H%以上)の雰囲気に曝して水分劣化せず、優れた酸素
遮断性および水蒸気遮断性、例えば23℃、90RH%
での酸素透過量が10cc/m2・24hr以下で、か
つ40℃、90RH%での水蒸気透過量が10g/m2
・24hr以下(特に、40℃、90RH%での水蒸気
透過量が2g/m2・24hr以下)という驚異的な特
性を示す。
【0144】(b−3)前記ガスバリア層は、ポリビニ
アルコールにケイ素を架橋したケイ素架橋ポリビニルア
ルコールからなるため、高い透明性を有する。
【0145】(b−4)前記ガスバリア層は、臭気に対
しても高いバリア性を有する。
【0146】(b−5)前記ガスバリア層はケイ素架橋
ポリビニルアルコールからなり、適度な柔軟性を有する
ため、屈曲させてもピンホールやクラックの発生を防止
できる。
【0147】(b−6)前記ガスバリア層の厚さを1μ
m以上と従来のAlやセラミックの蒸着膜に比べて厚く
すれば、さらに優れた酸素遮断性および水蒸気遮断性を
示す。
【0148】したがって、前記多孔質有機高分子フィル
ムによる優れた引裂き性により多大な力を加えることな
く、容易に引裂くことができるとともに、前記ガスバリ
ア層によるガスバリア作用と前記ガスバリア層の優れた
柔軟性によって、屈曲させてもピンホールやクラックが
発生せず、複数回の屈曲後において通常の湿度雰囲気の
みならず、高湿度においても優れた酸素遮断性(例えば
23℃、90RH%での酸素透過量が10cc/m2
24hr以下)、水蒸気遮断性(例えば40℃、90R
H%での水蒸気透過量が10g/m2・24hr以下)
等のガスバリア性、さらに透明性を有する易裂性ガスバ
リアフィルムを提供できる。
【0149】また、前記ガスバリア層は水に溶解するケ
イ素架橋ポリビニアルコールからなるため、前記多孔質
有機高分子フィルムとしてPET,OPPのような塩素
を含まない有機高分子のフィルムや紙を用いた場合、廃
棄処理物を例えば100℃前後の高温水で処理すること
により前記ガスバリア層を前記多孔質有機高分子フィル
ムから容易に除去することができる。その結果、前記多
孔質有機高分子フィルムの回収、再利用が容易で、しか
も廃棄処理物を焼却しても人体に有害な塩素系化合物が
排出されることがないため、環境にやさしい易裂性ガス
バリアフィルムを提供できる。
【0150】このような易裂性ガスバリアフィルムは、
前記ガスバリア層にトップコート処理を施することによ
り食品等を仮包装するラップ材に有効に利用できる。特
に、前記多孔質有機高分子フィルムとして耐熱性の優れ
た有機高分子フィルに多数の貫通孔および/または未貫
通孔を穿設したものを用いれば、電子レンジ対応のラッ
プ材を実現できる。
【0151】また、前記易裂性ガスバリアフィルムは前
記ガスバリア層にポリエチレンのようなシーラントフィ
ルムを積層することによって、各種の食品、医薬品等の
密封袋用素材として有効に利用することができる。
【0152】特に、PET,OPPのような透明な多孔
質有機高分子フィルムを用いれば、前記ガスバリア層の
優れた透明性により前記多孔質有機高分子フィルムと同
等の透明性を有する易裂性ガスバリアフィルムを提供で
きる。
【0153】前述した(1−6)の易裂性ガスバリアフ
ィルムの製造方法は、次のような作用効果を奏する。
【0154】(a)前記ガスバリアコート剤を多数の微
細な貫通孔および/または未貫通孔を有する多孔質有機
高分子フィルムにその多数の貫通孔および/または未貫
通孔の少なくとも開口部付近を埋めるように塗布した
後、加熱乾燥してケイ素架橋ポリビニルアルコールから
なるガスバリア層を形成することによって、前述した多
孔質有機高分子フィルムによる優れた引裂き性により多
大な力を加えることなく、容易に引裂くことができると
ともに、前記ガスバリア層によるガスバリア作用と前記
ガスバリア層の優れた柔軟性により、屈曲させてもピン
ホールやクラックが発生せず、複数回の屈曲後において
通常の湿度雰囲気のみならず、高湿度においても優れた
酸素遮断性(例えば23℃、90RH%での酸素透過量
が10cc/m2・24hr以下)、水蒸気遮断性(例
えば40℃、90RH%での水蒸気透過量が10g/m
2・24hr以下)等のガスバリア性と透明性を有する
ガスバリア層を備えた易裂性ガスバリアフィルムを製造
することができる。
【0155】(b)前記ガスバリア層は、前記ガスバリ
アコート剤を多孔質有機高分子フィルムに塗布し、加熱
乾燥することにより形成できる。このため、従来の真空
蒸着によりアルミニウムや無機化合物のガスバリア層を
形成する方法のように大掛かりな装置を使用することな
く簡単かつ量産的に易裂性ガスバリアフィルムを製造す
ることができる。
【0156】特に、延伸ポリプロピレン(OPP)に多
数の貫通孔および/または未貫通孔を穿設した多孔質有
機高分子フィルムはポリエチレンテレフタレート(PE
T)フィルムに同様な多数の貫通孔等を穿設した多孔質
有機高分子フィルムに比べて耐熱性が劣るため従来の真
空蒸着によるアルミニウムや無機化合物のガスバリア層
の形成が不可能であった。これに対し、本発明は塗布、
加熱乾燥によりガスバリア層を形成するため、耐熱性の
劣るOPPフィルムのような有機高分子フィルムに多数
の貫通孔および/または未貫通孔を穿設した多孔質有機
高分子フィルムをも使用でき、易裂性ガスバリアフィル
ムの低価格化、用途の拡大を図ることができる。
【0157】(c)前記塗膜付き多孔質有機高分子フィ
ルムの加熱処理工程をにおいて、徐々に昇温させずに水
の沸点以上、前記フィルムの熱変形温度未満の雰囲気に
前記塗膜付き多孔質有機高分子フィルムを置くことによ
って、前記塗膜中の水分を迅速に蒸発させ、同時にそれ
ぞれ分子レベルで分散されたポリビニルアルコールおよ
び珪酸塩を速やかに反応させることができるため、極め
てガスバリア性、透明性の優れたガスバリア層を多孔質
有機高分子フィルム上に形成することが可能になる。ま
た、徐冷後に水の沸点未満、好ましくは35〜45℃で
エージングすることによって、前記反応がより確実にな
されるため、さらに一層ガスバリア性、透明性の優れた
ガスバリア層を多孔質有機高分子フィルム上に形成する
ことが可能になる。
【0158】(2)次に、本発明に係わる別のガスバリ
アコート剤、その製造方法、ガスバリアフィルム、その
製造方法および易裂性ガスバリアフィルムおよびその製
造方法を説明する。
【0159】(2−1)ガスバリアコート剤 このガスバリアコート剤は、水酸化ナトリウム水溶液ま
たは水酸化カリウム水溶液にポリビニルアルコールおよ
び珪酸塩がそれぞれ分子レベルで溶解・分散されるとと
もに、ポリビニアルコールを除く有機高分子、金属およ
び無機化合物から選ばれる少なくとも1つの材料からな
る多数の超微粉末が分散された組成を有し、かつアルカ
リ性である。
【0160】ここで『分子レベルで溶解・分散された』
とは、前記ポリビニルアルコールにおいてはビニルアル
コール単量体もしくはこの単量体を2ないし5つ重合さ
れた状態で溶解・分散されていることを意味し、前記珪
酸塩において溶解された珪酸塩が比表面積で1000m
2/g以上であることを意味する。
【0161】ここで『珪酸塩』とは、オルト珪酸ナトリ
ウムまたはオルト珪酸カリウムを意味する。
【0162】本発明に係わるバリアコート剤は、pHが
9〜12、より好ましくはpHが9〜10であることが
好ましい。前記バリアコート剤のpHが前記範囲を外れ
ると、酸化ケイ素が析出しては白濁化する恐れがある。
このため、このバリアコート剤を所望の基材フィルムに
塗布し、加熱乾燥した場合、所定のガスバリア性を示す
ガスバリア層を有するガスバリアフィルムを得ることが
困難になる恐れがある。
【0163】前記超微粉末は、ポリビニルアルコール以
外の有機高分子;酸化ケイ素、酸化ジルコニムウ、酸化
チタン、アルミナ、酸化マグネシウム、インジウム錫酸
化物、酸化錫のような無機化合物;またはアルミウム、
錫、亜鉛のような金属等から作られる。前記超微粉末
は、前記有機高分子、無機化合物、金属から選ばれる1
種または2種以上の混合物の形態で用いることができ
る。
【0164】前記超微粉末は、次のような材料から作ら
れることが好ましい。
【0165】(a)前記超微粉末は、紫外線遮断性を有
する有機高分子から作られる。この有機高分子として
は、例えば反応型紫外線吸収樹脂である大塚化学社製商
品名;RUVA−93、RUVA−30M、RUVA−
30S等を挙げることができる。
【0166】(b)前記超微粉末は、酸化ケイ素、酸化
ジルコニウム、酸化チタン、アルミナまたはインジウム
錫酸化物(ITO)から作られる。特に、酸化ケイ素と
して親水性を示す日本アエロジル社製商品名;R−38
0を用いることが好ましい。
【0167】なお、超微粉末として酸化ケイ素を用いた
場合、前記ガスバリアコート剤のpHを9〜12の範囲
にすることにによって、そのコート剤に溶解されること
なく超微粉末状態で分散させることが可能になる。
【0168】前記(a)の超微粉末を用いた場合、前記
ポリビニアルコール、珪酸塩および超微粉末の固形分濃
度は、6〜12重量で、かつこの固形分中の前記ポリビ
ニアルコール、前記珪酸塩および前記超微粉末の配合割
合はそれぞれ60〜80重量%、10〜30重量%、3
〜15重量%であることが好ましい。これは、次のよう
な理由によるものである。
【0169】前記固形分濃度を6重量%未満にすると、
このバリアコート剤を所望の基材フィルムに塗布し、加
熱乾燥した場合、高いガスバリア性を示すガスバリア層
を有するガスバリアフィルムを得ることが困難になる恐
れがある。一方、前記固形分濃度が12重量%を超える
と、酸化ケイ素が析出したり、配合した超微粉末が凝集
したりして白濁化する恐れがある。このため、このバリ
アコート剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥し
た場合、所定のガスバリア性を示し、かつ透明なガスバ
リア層を有するガスバリアフィルムを得ることが困難に
なる恐れがある。
【0170】前記固形分中の前記ポリビニルアルコール
の配合割合を60重量%未満にすると、このバリアコー
ト剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場
合、前記基材フィルムに対して密着性の優れたガスバリ
ア層を形成することが困難になる。一方、前記ポリビニ
ルアルコールの配合割合が80重量%を超えると、珪酸
塩量および超微粉末量が相対的に低下して高いガスバリ
ア性を示すガスバリア層を有するガスバリアフィルムを
得ることが困難になる恐れがある。
【0171】前記固形分中の超微粉末の配合割合を3重
量%未満にすると、その超微粉末の配合効果であるガス
バリア性およびUVカット性能を十分に発揮することが
困難になる。一方、前記固形分中の超微粉末の配合割合
が15重量%を超えるとその配合量の増大によるガスバ
リア性の向上が図れないばかりか、前記ポリビニアルコ
ール量が相対的に低下する恐れがある。
【0172】また、前記各成分の配合割合が前記範囲を
逸脱すると、このバリアコート剤を所望の基材フィルム
に塗布し、加熱乾燥した場合、分子レベルで分散された
ポリビニルアルコールと珪酸塩との反応バランスが悪化
して高いガスバリア性を示すケイ素架橋ポリビニルアル
コールを生成することが困難になる。しかも、得られた
ガイバリアコート剤は酸化ケイ素が析出しては白濁化す
る恐れがある。このため、このバリアコート剤を所望の
基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、所定のガス
バリア性を示し、かつ透明なガスバリア層を有するガス
バリアフィルムを得ることが困難になる恐れがある。
【0173】前記(b)の超微粉末を用いた場合、前記
ポリビニアルコール、珪酸塩および超微粉末の固形分濃
度は、6〜12重量で、かつこの固形分中の前記ポリビ
ニアルコール、前記珪酸塩および前記超微粉末の配合割
合はそれぞれ60〜80重量%、5〜15重量%、10
〜35重量%であることが好ましい。これは、次のよう
な理由によるものである。
【0174】前記固形分濃度を規定したのは、前述した
超微粉末(a)を用いたのと同様な理由によるものであ
る。
【0175】前記固形分中の前記ポリビニルアルコール
の配合割合を60重量%未満にすると、このバリアコー
ト剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場
合、前記基材フィルムに対して密着性の優れたガスバリ
ア層を形成することが困難になる。一方、前記ポリビニ
ルアルコールの配合割合が80重量%を超えると、珪酸
塩量および超微粉末量が相対的に低下して高いガスバリ
ア性を示すガスバリア層を有するガスバリアフィルムを
得ることが困難になる恐れがある。
【0176】前記固形分中の超微粉末の配合割合を15
重量%未満にすると、その超微粉末の配合効果であるガ
スバリア性を十分に発揮することが困難になる。一方、
前記固形分中の超微粉末の配合割合が30重量%を超え
るとその配合量の増大によるガスバリア性の向上が図れ
ないばかりか、前記ポリビニアルコール量等が相対的に
低下する恐れがある。
【0177】また、前記各成分の配合割合が前記範囲を
逸脱すると、このバリアコート剤を所望の基材フィルム
に塗布し、加熱乾燥した場合、分子レベルで分散された
ポリビニルアルコールと珪酸塩との反応バランスが悪化
して高いガスバリア性を示すケイ素架橋ポリビニルアル
コールを生成することが困難になる。しかも、得られた
ガイバリアコート剤は酸化ケイ素が析出しては白濁化す
る恐れがある。このため、このバリアコート剤を所望の
基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、所定のガス
バリア性を示し、かつ透明なガスバリア層を有するガス
バリアフィルムを得ることが困難になる恐れがある。
【0178】前記超微粉末は、平均粒径が100nm以
下、より好ましくは50nm以下であることが望まし
い。このような平均粒径を有する超微粉末は、それら超
微粉末の材質特有の機能の他に、前記ガスバリア層に優
れた酸素遮断性や水蒸気遮断性等のガスバリア性を付与
することが可能になる。前記超微粉末の平均粒径が10
0nmを超えると、得られたガスバリアコート剤を塗
布、加熱乾燥することにより形成されたガスバリア層に
おける体積当たりの超微粉末の分散量を多くすることが
困難になる恐れがある。このため、前記超微粉末を配合
することによるガスバリア性の向上化を十分に達成する
ことが困難になる。
【0179】(2−2)ガスバリアコート剤の製造方法 (第1工程)まず、ポリビニルアルコール水溶液を加圧
し、高速度で互いに衝突破砕する操作を複数回繰り返す
ことによりポリビニルアルコールが分子レベルで溶解・
分散されたポリビニルアルコール溶解・分散水溶液を調
製する。このようにポリビニルアルコールが分子レベル
で溶解・分散されたポリビニルアルコール溶解・分散水
溶液は、調製後に放置しても固化せず、安定した溶液状
態を維持することが可能になる。
【0180】前記ポリビニルアルコール水溶液の濃度
は、後述する理由から6〜12重量%にすることが好ま
しい。
【0181】前記衝突破砕は、例えば前述した図1に示
す衝突破砕装置を用いて行なうことができる。
【0182】前記ポリビニルアルコール水溶液に対する
加圧力は、1000Kg/cm2以上の圧力にすること
が好ましい。
【0183】前記ポリビニルアルコール水溶液を互いに
衝突す破砕する際の速度は、100m/sec以上にす
ることが好ましい。このような高速度でポリビニルアル
コール水溶液を互いに衝突破砕することにより短時間で
ポリビニルアルコールが分子レベルで溶解・分散された
ポリビニルアルコール溶解・分散水溶液を調製すること
が可能になる。
【0184】前記ポリビニルアルコール水溶液は、その
水溶液の調製工程および互いに衝突破砕する工程におい
て前記ポリビニアルコールの分解温度未満、好ましくは
30〜100℃の温度に加熱することを許容する。
【0185】(第2工程)水酸化ナトリウム水溶液また
は水酸化カリウム水溶液に酸化ケイ素を反応させて珪酸
塩水溶液を調製する。
【0186】ここで『珪酸塩』とは、オルト珪酸ナトリ
ウムまたはオルト珪酸カリウムを意味する。
【0187】前記珪酸塩水溶液は、pHが12〜14の
水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液に
一次粒子径が100nm以下、より好ましくは一次粒子
径が10nm以下の親水性の酸化ケイ素微粉末を添加し
て反応させることによりを調製することがより好まし
い。
【0188】前記酸化ケイ素微粉末としては、例えば日
本アエロジル社製商品名;380等を用いることができ
る。
【0189】前記珪酸塩水溶液は、後述する理由により
濃度を10〜25重量%、pHを11〜12にすること
が好ましい。
【0190】(第3工程)前記ポリビニルアルコール溶
解・分散水溶液と前記珪酸塩水溶液とポリビニアルコー
ルを除く有機高分子、金属および無機化合物から選ばれ
る少なくとも1つの材料からなる多数の微粉末と水とを
アルカリ性になるように混合し、この混合物(スラリ
ー)を加圧し、高速度で互いに衝突破砕する操作を複数
回繰り返すことにより水酸化ナトリウム水溶液または水
酸化カリウム水溶液にポリビニルアルコールおよび珪酸
塩がそれぞれ分子レベルで溶解・分散されるとともに、
前記微粉末が破砕、超微粉末化して分散されたガスバリ
アコート剤を製造する。
【0191】前記微粉末は、ポリビニルアルコール以外
の有機高分子;酸化ケイ素、酸化ジルコニムウ、酸化チ
タン、アルミナ、酸化マグネシウム、インジウム錫酸化
物、酸化錫のような無機化合物;またはアルミウム、
錫、亜鉛のような金属等から作られる。前記微粉末は、
前記有機高分子、無機化合物、金属から選ばれる1種ま
たは2種以上の混合物の形態で用いることができる。
【0192】前記微粉末は、次のような材料から作られ
ることが好ましい。
【0193】(a)前記微粉末は、例えば反応型紫外線
吸収樹脂である大塚化学社製商品名;RUVA−93、
RUVA−30M、RUVA−30S等を挙げることが
できる。
【0194】(b)前記超微粉末は、酸化ケイ素、酸化
ジルコニウム、酸化チタン、アルミナまたはインジウム
錫酸化物(ITO)から作られる。特に、酸化ケイ素と
して親水性を示す日本アエロジル社製商品名;R−38
0を用いることが好ましい。
【0195】なお、微粉末として酸化ケイ素を用いた場
合、前記混合水溶液のpHを9〜12の範囲にすること
にによって、その混合水溶液に溶解されることなく前記
衝突破砕操作により超微粉末状態で分散させることが可
能になる。
【0196】前記ポリビニルアルコール溶解・分散水溶
液と前記珪酸塩水溶液と前記微粉末水とを混合する際の
pHは、9〜12、より好ましくは9〜10にすること
が望ましい。前記混合水溶液のpHが前記範囲を逸脱す
ると、製造されたガスバリアコート剤中に酸化ケイ素が
析出しては白濁化する恐れがある。このため、このバリ
アコート剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥し
た場合、所定のガスバリア性を示すガスバリア層を有す
るガスバリアフィルムを得ることが困難になる恐れがあ
る。
【0197】前記ポリビニルアルコール溶解・分散水溶
液と前記珪酸塩水溶液と前記微粉末(紫外線遮断性を有
する有機高分子)と水とを混合する際、ポリビニアルコ
ール水溶液の濃度は6〜12重量%に、前記珪酸塩水溶
液は珪酸塩濃度が10〜25重量%で、かつpHが11
〜12に、前記微粉末の配合量(スラリーに対する配合
量)は3〜15重量%にすることが好ましい。これは、
次のような理由によるものである。
【0198】前記ポリビニアルコール水溶液の濃度を6
重量%未満にすると、製造されたガスバリアコート剤中
にポリビニアルコールが不足し、このガスバリアコート
剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、
前記基材フィルムに対して良好に密着し、かつ高いガス
バリア性を示すガスバリア層を有するガスバリアフィル
ムを得ることが困難になる恐れがある。一方、前記ポリ
ビニアルコール水溶液の濃度を12重量%を超えると、
製造されたガスバリアコート剤中に酸化ケイ素が析出し
ては白濁化する恐れがある。このため、このガスバリア
コート剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した
場合、所定のガスバリア性を示し、かつ透明なガスバリ
ア層を有するガスバリアフィルムを得ることが困難にな
る恐れがある。より好ましい前記ポリビニアルコール水
溶液の濃度は、8〜10重量%である。
【0199】前記珪酸塩水溶液の濃度を10重量%未満
にすると、製造されたガスバリアコート剤中に珪酸塩量
が不足し、このガスバリアコート剤を所望の基材フィル
ムに塗布し、加熱乾燥した場合、高いガスバリア性を示
すガスバリア層を有するガスバリアフィルムを得ること
が困難になる恐れがある。一方、前記珪酸塩水溶液の濃
度が25重量%を超えると、製造されたガスバリアコー
ト剤中に酸化ケイ素が析出しては白濁化する恐れがあ
る。このため、このガスバリアコート剤を所望の基材フ
ィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、所定のガスバリア
性を示し、かつ透明なガスバリア層を有するガスバリア
フィルムを得ることが困難になる恐れがある。より好ま
しい前記珪酸塩水溶液の濃度は、14〜20重量%であ
る。
【0200】前記珪酸塩水溶液のpHが前記範囲を逸脱
すると、ガスバリアコート剤中に酸化ケイ素が析出して
は白濁化する恐れがある。このため、このガスバリアコ
ート剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場
合、所定のガスバリア性を示し、かつ透明なガスバリア
層を有するガスバリアフィルムを得ることが困難になる
恐れがある。
【0201】前記微粉末の配合量(スラリーに対する配
合量)を3重量%未満すると、このガスバリアコート剤
を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、前
記微粉末の配合による高いガスバリア性およびUVカッ
ト性を示すガスバリア層を有するガスバリアフィルムを
得ることが困難になる恐れがある。一方、前記微粉末の
配合量が15重量%を超えると、製造されたガスバリア
コート剤中に酸化ケイ素が析出しては白濁化する恐れが
ある。このため、このガスバリアコート剤を所望の基材
フィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、所定のガスバリ
ア性を示すガスバリア層を有するガスバリアフィルムを
得ることが困難になる恐れがある。
【0202】前記ポリビニルアルコール溶解・分散水溶
液と前記珪酸塩水溶液と前記微粉末(酸化ケイ素等の無
機化合物)と水とを混合する際、ポリビニアルコール水
溶液の濃度は6〜12重量%に、前記珪酸塩水溶液は珪
酸塩濃度が5〜15重量%で、かつpHが11〜12
に、前記微粉末の配合量(スラリーに対する配合量)は
10〜35重量%にすることが好ましい。これは、前述
した微粉末として紫外線遮断性を有する有機高分子を用
いた場合と同様な理由によるものである。
【0203】無機化合物からなる微粉末の配合量(スラ
リーに対する配合量)を3重量%未満すると、このガス
バリアコート剤を所望の基材フィルムに塗布し、加熱乾
燥した場合、前記微粉末の配合による高いガスバリア性
を示すガスバリア層を有するガスバリアフィルムを得る
ことが困難になる恐れがある。一方、前記微粉末の配合
量が15重量%を超えると、製造されたガスバリアコー
ト剤中に酸化ケイ素が析出しては白濁化する恐れがあ
る。このため、このガスバリアコート剤を所望の基材フ
ィルムに塗布し、加熱乾燥した場合、所定のガスバリア
性を示すガスバリア層を有するガスバリアフィルムを得
ることが困難になる恐れがある。
【0204】前記(a)の微粉末を用いた場合、前記混
合物(スラリー)は前記ポリビニアルコール、珪酸塩お
よび超微粉末の固形分濃度が6〜12重量で、かつこの
固形分中の前記ポリビニアルコール、前記珪酸塩および
前記超微粉末の配合割合がそれぞれ60〜80重量%、
10〜30重量%、3〜15重量%になる組成にするこ
とが好ましい。
【0205】前記(b)の超微粉末を用いた場合、前記
スラリーはポリビニアルコール、珪酸塩および超微粉末
の固形分濃度が6〜12重量で、かつこの固形分中の前
記ポリビニアルコール、前記珪酸塩および前記超微粉末
の配合割合がそれぞれ60〜80重量%、5〜15重量
%、10〜35重量%になる組成にすることが好まし
い。
【0206】前記微粉末は、平均粒径(一次粒子の状
態)が100nm以下、より好ましくは50nm以下で
あることが望ましい。このような平均粒径を有する微粉
末は、それら微粉末の材質特有の機能の他に、前記ガス
バリア層に優れた酸素遮断性や水蒸気遮断性等のガスバ
リア性を付与することが可能になる。前記微粉末の平均
粒径が100nmを超えると、製造されたガスバリアコ
ート剤を塗布、加熱乾燥することにより形成されたガス
バリア層における体積当たりの超微粉末の分散量を多く
することが困難になる恐れがある。このため、前記超微
粉末を配合することによるガスバリア性の向上化を十分
に達成することが困難になる。
【0207】前記スラリーを加圧し、高速度で互いに衝
突破砕するには、例えば前述した図1に示す衝突破砕装
置を用いて行なうことができる。
【0208】前記スラリーに対する加圧力は、1000
Kg/cm2以上の圧力にすることが好ましい。
【0209】前記スラリーを互いに衝突す破砕する際の
速度は、100m/sec以上にすることが好ましい。
このような高速度でスラリーを互いに衝突破砕すること
により短時間でポリビニルアルコールおよび珪酸塩がそ
れぞれ分子レベルで溶解・分散され、かつ前記微粉末が
破砕、超微粉末化されて均一に分散されたガスバリアコ
ート剤を製造することが可能になる。
【0210】前記スラリーは、そのスラリーの衝突破砕
する工程において30〜100℃の温度に加熱すること
が好ましい。
【0211】(2−3)ガスバリアフィルム このガスバリアフィルムは、基材フィルムと、この基材
フィルムに被覆されたガスバリア層とを具備し、前記ガ
スバリア層がケイ素架橋ポリビニルアルコールとこのケ
イ素架橋ポリビニルアルコールに分散されたポリビニア
ルコールを除く有機高分子、金属および無機化合物から
選ばれる少なくとも1つの材料からなる多数の超微粉末
から構成された構造を有する。
【0212】前記基材フィルムとしては、例えば包装材
料に適用される各種の有機高分子フィルムまたは紙を使
用することができる。前記有機高分子フィルムとして
は、例えば例えばポリエチレンテレフタレート(PE
T)フィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレンフィ
ルム(特に配向性ポリプロピレンフィルム)、無配向の
ポリエチレンフィルム、エチルビニルアセテート共重合
体(EVA)フィルム、エラストマーフィルム等を用い
ることができる。これらのフィルムは、1層または2層
以上の形態で用いることができる。前記有機高分子フィ
ルムは、10〜30μmの厚さを有することが望まし
い。
【0213】前記ケイ素架橋ポリビニルアルコールは、
分子レベルのポリビニルアルコールをケイ素化合物(特
に、珪酸塩)で均一かつ三次元的にケイ素化して架橋し
たものであることが好ましい。
【0214】前記超微粉末は、前記ガスバリアコート剤
(2−1)で説明したのと同様なものが用いられる。
【0215】前記超微粉末は、平均粒径が100nm以
下、より好ましく50nm以下であることが望ましい。
このような平均粒径を有する微粉末は、それら微粉末の
材質特有の機能の他に、前記ガスバリア層に優れた酸素
遮断性や水蒸気遮断性等のガスバリア性を付与すること
が可能になる。
【0216】前記超微粉末は、紫外線遮断性を有する有
機高分子から作られる場合、前記ガスバリア層中に3〜
15重量%含有されることが好ましい。
【0217】前記超微粉末は、酸化ケイ素のような無機
化合物から作られる場合、前記ガスバリア層中に10〜
35重量%含有されることが好ましい。
【0218】特に、、酸化ケイ素のような無機化合物か
ら作られる超微粉末においては前記基材フィルム表面に
実質的に平行な面1m2当たりに存在する多数の超微粉
末における比表面積の合計が100〜250m2なるよ
うに前記ガスバリア層に分散して存在することが好まし
い。
【0219】ここで、『前記基材フィルム表面に実質的
に平行な面』とは、前記基材フィルム表面に実質的に平
行な全ての面を意味する。『多数の超微粉末における比
表面積の合計』とは、前記基材フィルム表面に実質的に
平行なガスバリア層の面1m2当たりに存在する超微粉
末の外周面積を全て加算した値を意味する。このため、
前記基材フィルム表面に実質的に平行なガスバリア層の
面1m2当たりに存在する多数の超微粉末の数および粒
径が同じであっても、前記超微粉末の表面性状が異な
る、例えば表面に襞がある場合には、前記多数の超微粉
末の襞のないものに比べて前記比表面積の合計は増大す
る。
【0220】前記超微粉末の比表面積の合計を100m
2未満にすると、ガスバリア層により高い酸素遮断性お
よび水蒸気遮断性等のガスバリア性を付与することが困
難になる。一方、前記超微粉末の比表面積の合計が25
0m2を超えると、ガスバリア層の柔軟性が低下して、
結果的にはガスバリアフィルム自体の可撓性等が低下す
る恐れがある。また、前記ガスバリア層中のケイ素架橋
ポリビニルアルコールの量が相対的に低下して前記基材
フィルムに対する前記ガスバリア層の接着強度が低下す
る恐れがある。
【0221】前記ガスバリア層は、1μm以上の厚さを
有することが好ましい。前記ガスバリア層の厚さを1μ
m未満にすると、ガスバリアフィルムに高いガスバリア
性を付与することが困難になる。より好ましい前記ガス
バリア層の厚さは、2〜8μm、さらに好ましくは3〜
5μmである。
【0222】なお、前記ガスバリアフィルムから密封袋
を作る場合に前記バリア層上にシーラントフィルムを積
層することを許容する。
【0223】前記シーラントフィルムとしては、例えば
ポリエチレンフィルム、無配向ポリプロピレンフィルム
等を用いることができる。
【0224】前記シーラントフィルムは、30〜40μ
mの厚さを有することが好ましい。
【0225】また、前記ガスバリアフィルムを食品等を
包装するラップ材として用いる場合には、前記バリア層
上にポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレートの
ようなオーバコート材を被覆することを許容する。ま
た、前記ガスバリア層に紙または不織布を被覆してもよ
い。
【0226】(2−4)ガスバリアフィルムの製造方法 まず、基材フィルムに前述したガスバリアコート剤(2
−1)を塗布して塗膜を形成する。つづいて、加熱乾燥
して前記塗膜中の水分を蒸発させると共に前記塗膜中に
それぞれ分子レベルで分散されたポリビニルアルコール
および珪酸塩を反応させてケイ素架橋ポリビニルアルコ
ールとこのケイ素架橋ポリビニルアルコールに分散され
たポリビニアルコールを除く有機高分子、金属および無
機化合物から選ばれる少なくとも1つの材料からなる多
数の超微粉末とから構成されるガスバリア層を前記基材
フィルム上に形成することによりガスバリアフィルムを
製造する。
【0227】前記基材フィルムとしては、前記ガスバリ
アフィルム(2−3)で説明したのと同様なものが用い
られる。
【0228】前記塗布工程においては、加熱乾燥後のガ
スバリア層が1μm以上になるように前記ガスバリアコ
ート剤を前記基材フィルム上に塗布することが好まし
い。
【0229】前記塗布手段としては、例えばロールコー
タ法、スプレー法、圧送式ローラブラシ法等を採用する
ことができる。特に、容器内に前記ガスバリアコート剤
を収容し、このガスバリアコート剤に一部が浸漬された
下部ロールと上部ロールの間に長尺基材フィルムを通し
て前記フィルムの下面にガスバリアコート剤を塗布する
ロールコータ法が量産性の点で好ましい。
【0230】前記加熱処理は、水の沸点以上、前記基材
フィルムの熱変形温度未満で行なうことが好ましい。よ
り好ましい前記加熱処理温度は103〜120℃であ
る。特に、前記加熱処理工程においては徐々に昇温させ
ずに前記水の沸点以上、前記基材フィルムの溶融または
燃焼温度未満の温度雰囲気に塗膜付き基材フィルムを置
いて反応させ、その後徐冷することが望ましい。また、
徐冷後に水の沸点未満、好ましくは35〜45℃でエー
ジングすることが好ましい。
【0231】なお、得られたガスバリアフィルムから密
封袋を作る場合にバリア層の形成後に前記ガスバリアフ
ィルム(2−3)で説明したのと同様なシーラントフィ
ルムまたはオーバコート材をさらに積層ないし被覆する
ことを許容する。この他、前記ガスバリア層に紙または
不織布を被覆してもよい。
【0232】(2−5)易裂性ガスバリアフィルム この易裂性ガスバリアフィルムは、多数の微細な貫通孔
および/または未貫通孔を有する多孔質有機高分子フィ
ルムと、この多孔質有機高分子フィルムに被覆されたガ
スバリア層とを具備し、前記ガスバリア層がケイ素架橋
ポリビニアルコールとこのケイ素架橋ポリビニルアルコ
ールに分散されたポリビニアルコールを除く有機高分
子、金属および無機化合物から選ばれる少なくとも1つ
の材料からなる多数の超微粉末から構成された構造を有
する。
【0233】前記多孔質有機高分子フィルムの基材であ
る有機高分子フィルムとしては、包装材料に適用される
各種の有機樹脂フィルムを使用することができ、例えば
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ナイ
ロンフィルム、ポリプロピレンフィルム(特に配向性ポ
リプロピレンフィルム)、無配向のポリエチレンフィル
ム、エチルビニルアセテート共重合体(EVA)フィル
ム、ポリビニルアルコールフィルム等を用いることがで
きる。これらのフィルムは、1層または2層以上の形態
で用いることができる。この有機高分子フィルムは、1
0〜30μm、より好ましくは12から20μmの厚さ
を有することが望ましい。
【0234】前記多孔質有機高分子フィルムは、少なく
とも引裂かれる領域に多数の微細な貫通孔および/また
は未貫通孔を有することが必要である。特に、前記有機
高分子フィルム全体に多数の貫通孔および/または未貫
通孔を穿設することにより任意の箇所から引裂くことが
可能な易裂性ガスバリアフィルムを得ることが可能であ
る。
【0235】前記多孔質有機高分子フィルムは、平均開
口径0.5〜100μmの微細な多数の貫通孔および/
または未貫通孔が500個/cm2以上の密度で前記有
機高分子フィルムに穿設されていることが望ましい。特
に、多数の貫通孔および/または未貫通孔が断面V字形
もしくはU字形をなす場合には、大きな開口側の平均開
口径を10〜300μm、小さい開口径側の平均開口径
を0.1から50μmにすることが好ましい。
【0236】前記多孔質有機高分子フィルムの貫通孔お
よび/または未貫通孔の平均開口径を規定したのは、次
のような理由によるものである。前記貫通孔および/ま
たは未貫通孔の平均開口径を0.5μm未満にすると、
この多孔質有機高分子フィルムを有する易裂性ガスバリ
アフィルムを目的とする方向に確実かつ容易な引き裂く
ことが困難になる。一方、前記各貫通孔の平均開口径が
100μmを超えると、この多孔質有機高分子フィルム
に前述したガスバリア層を積層しても良好なガスバリア
性を示すフィルムを得ることが困難になる。より好まし
い前記貫通孔および/または未貫通孔の平均開口径は、
5〜80μmである。
【0237】前記多孔質有機高分子フィルムの多数の貫
通孔および/または未貫通孔の形成密度を規定したの
は、次のような理由によるものである。前記多数の貫通
孔および/または未貫通孔の形成密度を500個/cm
2 未満にすると、この多孔質有機高分子フィルムを有す
る易裂性ガスバリアフィルムを目的とする方向に確実か
つ容易に引き裂くことが困難になる。より好ましい前記
多数の貫通孔および/または未貫通孔の形成密度は、1
000個/cm2以上である。なお、前記貫通孔および
/または未貫通孔の形成密度の上限については、後述す
る多孔質フィルム製造装置を用いる場合、一回の処理で
25000個/cm2 になる。
【0238】前記多孔質有機高分子フィルム、例えば全
体に多数の微細な貫通孔および/または未貫通孔を有す
る多孔質有機高分子フィルムは、本発明者が発明した特
公平6−61859号公報に開示された多孔質フィルム
の製造装置により製造される。
【0239】前記ケイ素架橋ポリビニルアルコールは、
分子レベルのポリビニルアルコールをケイ素化合物(特
に、珪酸塩)で均一かつ三次元的にケイ素化して架橋し
たものであることが好ましい。
【0240】前記超微粉末の種類および配合割合は、前
記ガスバリアコート剤(2−1)およびガスバリアフィ
ルム(2−3)で説明したのと同様なものが用いられ
る。
【0241】前記超微粉末は、100nm以下、より好
ましく50nm以下の平均粒径を有することが望まし
い。このような平均粒径を有する超微粉末は、前記ガス
バリア層にそれら超微粉末の材質特有の機能の他に、優
れた酸素遮断性や水蒸気遮断性等のガスバリア性を付与
することが可能になる。
【0242】前記ガスバリア層は、前記多孔質有機高分
子フィルムに次のような形態で被覆される。
【0243】(a)ガスバリア層が多孔質有機高分子フ
ィルムにその多数の貫通孔および/または未貫通孔の少
なくとも開口部付近を埋めるように被覆されている。
【0244】(b)多数の未貫通孔を有する多孔質有機
高分子フィルムを用いる場合、ガスバリア層が前記多孔
質有機高分子フィルムの未貫通孔の開口部側と反対の面
に被覆されている。
【0245】前記(a)の形態の場合、前記超微粉末は
前記多孔質有機高分子フィルムにおける多数の貫通孔お
よび/または未貫通孔の平均開口径の1/5以下の径を
有し、かつ前記ガスバリア層の埋め込み部の厚さは1μ
m以上にすることが好ましい。
【0246】前記(a)、(b)の形態において、前記
ガスバリア層は前記多孔質有機高分子フィルムの被覆面
から厚さが1μm以上であることが好ましい。前記ガス
バリア層の厚さを1μm未満にすると、易裂性ガスバリ
アフィルムに高いガスバリア性を付与することが困難に
なる。より好ましい前記ガスバリア層の厚さは、2〜8
μm、さらに好ましくは2〜5μmである。
【0247】前記易裂性ガスバリアフィルムから密封袋
を作る場合には、前記バリア層上にさらにシーラントフ
ィルムを積層することを許容する。
【0248】前記シーラントフィルムとしては、例えば
ポリエチレンフィルム、無配向ポリプロピレンフィルム
等を用いることができる。
【0249】前記シーラントフィルムは、30〜40μ
mの厚さを有することが好ましい。
【0250】また、前記易裂性ガスバリアフィルムは食
品等を包装するラップ材として用いる場合には、前記バ
リア層上にポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレ
ートのようなオーバコート材を被覆することを許容す
る。その他、前記ガスバリア層に紙または不織布を積層
することを許容する。
【0251】(2−6)易裂性ガスバリアフィルムの製
造方法 まず、多数の微細な貫通孔および/または未貫通孔を有
する多孔質有機高分子フィルムに前述したガスバリアコ
ート剤(2−1)を塗布して塗膜を形成する。つづい
て、この塗膜付き多孔質有機高分子フィルムを加熱乾燥
して前記塗膜中の水分を蒸発させると共に前記塗膜中に
それぞれ分子レベルで分散されたポリビニルアルコール
および珪酸塩を反応させてケイ素架橋ポリビニルアルコ
ールとこのケイ素架橋ポリビニルアルコールに分散され
たポリビニアルコールを除く有機高分子、金属および無
機化合物から選ばれる少なくとも1つの材料からなる多
数の超微粉末とから構成されるガスバリア層を前記多孔
質有機高分子フィルム上に形成することにより易裂性ガ
スバリアフィルムを製造する。
【0252】前記多孔質有機高分子フィルムとしては、
前記易裂性ガスバリアフィルム(2−5)で説明したの
と同様なものが用いられる。
【0253】前記塗布手段としては、例えばロールコー
タ法、スプレー法、圧送式ローラブラシ法等を採用する
ことができる。特に、容器内に前記ガスバリアコート剤
を収容し、このガスバリアコート剤に一部が浸漬された
下部ロールと上部ロールの間に長尺多孔質有機高分子フ
ィルムを通して前記フィルムの下面にガスバリアコート
剤を塗布するロールコータ法が量産性の点で好ましい。
【0254】前記ガスバリアコート剤を前記多孔質有機
高分子フィルムに塗布するにあっては、次のような形態
が採用される。
【0255】(a)多孔質有機高分子フィルムにガスバ
リアコート剤をその多数の貫通孔および/または未貫通
孔の少なくとも開口部付近を埋めるように塗布して塗膜
を形成する。
【0256】(b)多数の未貫通孔を有する多孔質有機
高分子フィルムを用いる場合、ガスバリアコート剤を前
記多孔質有機高分子フィルムの未貫通孔の開口部側と反
対の面に塗布して塗膜を形成する。
【0257】前記(a)の形態の場合、前記ガスバリア
コート剤は形成されたガスバリア層が多孔質有機高分子
フィルムの多数の貫通孔および/または未貫通孔の開口
部付近に厚さは1μm以上の埋め込まれるよう塗布する
ことが好ましい。
【0258】前記(a)、(b)の形態において、前記
ガスバリアコート剤は形成されたガスバリア層が前記多
孔質有機高分子フィルムの被覆面から1μm以上の厚さ
になるように塗布するが好ましい。より好ましい前記ガ
スバリアコート剤の塗布、加熱乾燥により形成されたガ
スバリア層の厚さは、2〜8μm、さらに好ましくは2
〜5μmである。
【0259】前記加熱処理は、水の沸点以上、前記多孔
質有機高分子フィルムの熱変形温度未満で行なうことが
好ましい。より好ましい前記加熱処理温度は、103〜
120℃である。特に、前記加熱処理工程においては徐
々に昇温させずに前記水の沸点以上、前記多孔質有機高
分子フィルムの溶融温度未満の温度雰囲気に塗膜付き多
孔質有機高分子フィルムを置いて反応させ、その後徐冷
することが望ましい。また、徐冷後に水の沸点未満、好
ましくは35〜45℃でエージングすることが好まし
い。
【0260】なお、得られた易裂性ガスバリアフィルム
から密封袋を作る場合にバリア層の形成後に前記易裂性
ガスバリアフィルム(2−5)で説明したのと同様なシ
ーラントフィルムまたはオーバコート材をさらに積層な
いし被覆することを許容する。この他、前記ガスバリア
層に紙または不織布を被覆してもよい。
【0261】以上説明した本発明に係わる別のバリアコ
ート剤(2−1)は、水酸化ナトリウム水溶液または水
酸化カリウム水溶液にポリビニルアルコールおよび珪酸
塩がそれぞれ分子レベルで溶解・分散されるとともに、
ポリビニアルコールを除く有機高分子、金属および無機
化合物から選ばれる少なくとも1つの材料からなる多数
の超微粉末が分散された組成を有し、かつアルカリ性で
あり、長期間放置しても酸化ケイ素が析出したり、超微
粉末が凝集せずに安定した特性を有する。
【0262】特に、超微粉末として紫外線遮断性を有す
る有機高分子を用いた場合、pHが9〜12で、前記ポ
リビニアルコール、珪酸塩および超微粉末の固形分濃度
は、6〜12重量で、かつこの固形分中の前記ポリビニ
アルコール、前記珪酸塩および前記超微粉末の配合割合
はそれぞれ60〜80重量%、10〜30重量%、3〜
15重量%であるガスバリアコート剤は、長期間放置し
ても酸化ケイ素が析出したり、超微粉末が凝集せず、ポ
リビニルアルコールおよび珪酸塩がそれぞれ分子レベル
で極めて安定して溶解・分散され、かつ前記超微粉末が
均一に分散された特性を有する。
【0263】また、前記超微粉末として酸化ケイ素のよ
うな無機化合物を用いた場合、前記ポリビニアルコー
ル、珪酸塩および超微粉末の固形分濃度は、6〜12重
量で、かつこの固形分中の前記ポリビニアルコール、前
記珪酸塩および前記超微粉末の配合割合はそれぞれ60
〜80重量%、5〜15重量%、10〜35重量%であ
るガスバリアコート剤は、長期間放置しても酸化ケイ素
が析出したり、超微粉末が凝集せず、ポリビニルアルコ
ールおよび珪酸塩がそれぞれ分子レベルで極めて安定し
て溶解・分散され、かつ前記超微粉末が均一に分散され
た特性を有する。
【0264】前述したガスバリアコート剤は、屈曲させ
てもピンホールやクラックが発生せず、かつ無機化合物
や金属の膜状態と略同等の優れたガスバリア性を示すと
ともに、超微粉末の材料特有の機能(例えば紫外線カッ
ト性)を有するガスバリア層の形成に適用することがで
きる。
【0265】また、前記ガスバリアコート剤は後述する
ガスバリアフィルムのガスバリア層の形成に適用できる
のみならず、ガスバリア性を必要とする物品、例えば中
空有機高分子物品へのガスバリア層の形成にも適用でき
る。
【0266】このようなガスバリアコート剤は、前記
(2−2)で説明したようにポリビニルアルコール水溶
液を加圧し、高速度で互いに衝突破砕する操作を複数回
繰り返すことによりポリビニルアルコールが分子レベル
で溶解・分散されたポリビニルアルコール溶解・分散水
溶液を調製する第1工程と、水酸化ナトリウム水溶液ま
たは水酸化カリウム水溶液に酸化ケイ素を反応させて珪
酸塩水溶液を調製する第2工程と、前記ポリビニルアル
コール溶解・分散水溶液と前記珪酸塩水溶液とポリビニ
アルコールを除く有機高分子、金属および無機化合物か
ら選ばれる少なくとも1つの材料からなる多数の微粉末
と水とをアルカリ性(好ましくはpH9〜12)になる
ように混合し、この混合物(スラリー)を加圧し、高速
度で互いに衝突破砕する操作を複数回繰り返す第3工程
により製造することができる。
【0267】すなわち、前記第1工程により、ポリビニ
ルアルコールを水に比較的高濃度(例えば10重量%前
後)に溶解したポリビニルアルコール水溶液を出発原料
として用いても、調製後の放置において固化せず、安定
した溶液状態が維持されたポリビニルアルコールが分子
レベルで溶解・分散されたポリビニルアルコール溶解・
分散水溶液を得ることが可能になる。
【0268】また、前記第2工程により透明な珪酸塩水
溶液を調製することができる。特に、pHが12〜14
の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液
に一次粒子径が100nm以下(好ましくは10μm以
下)の親水性の酸化ケイ素微粉末を添加して反応させる
ことにより従来手法では困難であった17重量%以上の
高濃度の珪酸塩(オルト珪酸ナトリウムまたはオルト珪
酸カリウム)を含み、かつ前記ガスバリアコート剤の製
造に適した安定性の高い透明な珪酸塩水溶液を短時間で
調製することが可能になる。
【0269】さらに、前記第3工程により前記ポリビニ
ルアルコール溶解・分散水溶液と前記珪酸塩水溶液と前
記微粉末と水とをアルカリ性になるように混合した混合
水溶液を加圧し、高速度で互いに衝突破砕する操作を複
数回繰り返すことによって、従来手法では予想し得ない
水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液に
ポリビニルアルコールおよび珪酸塩がそれぞれ分子レベ
ルで安定的に溶解・分散され、かつ前記微粒子が破砕、
超微粉末化して分散されたガスバリアコート剤を製造す
ることができる。
【0270】特に、濃度が6〜12重量%のポリビニル
アルコール溶解・分散水溶液と珪酸塩濃度が10〜25
重量%で、かつpHが11〜12の珪酸塩水溶液とスラ
リーの固形分に対する配合割合が所定量の微粉末(紫外
線遮断性の有機高分子の微粉末;3〜15重量%、無機
化合物の微粉末10〜35重量%)と水とをpHが9〜
12(より好ましくはpHが9〜10)になるように混
合してスラリーを調製し、このスラリーを加圧し、高速
度で互いに衝突破砕する操作を複数回繰り返すことによ
って、従来手法では予想し得ない水酸化ナトリウム水溶
液または水酸化カリウム水溶液にポリビニルアルコール
および珪酸塩がそれぞれ分子レベルで極めて安定的に溶
解・分散され、かつ多数の超微粉末が均一かつ安定的に
分散された前記ポリビニアルコール、珪酸塩および超微
粉末(紫外線遮断性の有機高分子の超微粉末)の固形分
濃度が6〜12重量で、かつこの固形分中の前記ポリビ
ニアルコール、前記珪酸塩および前記超微粉末の配合割
合がそれぞれ60〜80重量%、10〜30重量%、3
〜15重量%になる組成、または前記ポリビニアルコー
ル、珪酸塩および超微粉末(無機化合物の超微粉末)の
固形分濃度が6〜12重量で、かつこの固形分中の前記
ポリビニアルコール、前記珪酸塩および前記超微粉末の
配合割合がそれぞれ60〜80重量%、5〜15重量
%、10〜35重量%になる組成、を有するガスバリア
コート剤を製造することが可能になる。
【0271】本発明に係わるガスバリアフィルム(2−
3)は、基材フィルムと、この基材フィルムに被覆され
たガスバリア層とを具備し、前記ガスバリア層がケイ素
架橋ポリビニルアルコールとこのケイ素架橋ポリビニル
アルコールに分散されたポリビニアルコールを除く有機
高分子、金属および無機化合物から選ばれる少なくとも
1つの材料からなる多数の超微粉末から構成された構造
を有する。
【0272】このようなガスバリアフィルムは、前記
(2−3)で説明したように基材フイルム上に前記(2
−1)で説明したガスバリアコート剤(水酸化ナトリウ
ム水溶液または水酸化カリウム水溶液にポリビニルアル
コールおよび珪酸塩がそれぞれ分子レベルで溶解・分散
されるとともに、ポリビニアルコールを除く有機高分
子、金属および無機化合物から選ばれ少なくとも1つの
材料からなる多数の超微粉末が分散された組成を有し、
かつアルカリ性を示す)を塗布した後、加熱乾燥(好ま
しくは水の沸点以上で前記基材フィルムの溶融または燃
焼温度未満で加熱乾燥)することによって、前記基材フ
ィルムの塗膜中の水分が蒸発し、それぞれ分子レベルに
分散されたポリビニルアルコールと珪酸塩が反応してケ
イ素架橋ポリビニルアルコールとこのケイ素架橋ポリビ
ニルアルコールに分散された前記多数の超微粉末からな
る高いガスバリア性を有するガスバリア層を前記基材フ
ィルム上に形成することにより製造することができる。
これは、次のような挙動によるものと推定される。
【0273】すなわち、前記ガスバリアコート剤の塗布
により形成された塗膜は、ポリビニルアルコールと珪酸
塩がそれぞれ分子レベルで極めて均一かつ安定的に分散
され、各々の分子レベルのポリビニルアルコールの周辺
に各々の分子レベルの珪酸塩が均一に存在し、かつ前記
超微粉末が均一に分散された形態をなす。このため、前
記加熱乾燥処理により水を蒸発させた後、全てのポリビ
ニルアルコールのOH基が珪酸塩で速やかにケイ素化さ
れて、ポリビニアルコールがケイ素により均一かつ三次
元的に架橋されたケイ素架橋ポリビニルアルコールを生
成するとともに、この生成過程で前記多数の超微粉末を
前記ケイ素架橋ポリビニルアルコールに均一分散して取
り込んだ構造を持つガスバリア層が前記基材フィルム上
に形成できるものと推定される。
【0274】なお、単にポリビニルアルコール水溶液と
珪酸塩水溶液と超微粉末を混合しても直ぐに酸化ケイ素
が析出して白濁したり、超微粉末が互いに凝集したりす
るため、かかる混合溶液を基材フィルムに塗布、加熱乾
燥しても未反応のポリビニアルコール、析出した酸化ケ
イ素や凝集した超微粉末が島状に散在したガラス質層に
なる。その結果、この基材フィルムを屈曲すると、前記
島状の未反応部分等で剥離ないしクラック発生を生じる
ばかりか、高湿度雰囲気において酸素や水蒸気等のガス
バリア性が著しく低下する。
【0275】したがって、本発明のように水酸化ナトリ
ウム水溶液または水酸化カリウム水溶液にポリビニルア
ルコールおよび珪酸塩がそれぞれ分子レベルで溶解・分
散されるとともに、ポリビニアルコールを除く有機高分
子、金属および無機化合物から選ばれ少なくとも1つの
材料からなる多数の超微粉末が分散された組成を有し、
かつアルカリ性を示すガスバリアコート剤(特に、pH
が9〜12で、前記ポリビニアルコール、前記珪酸塩お
よび超微粉末の固形分量とそれら成分の配合割合を前述
した所定範囲に規定したガスバリアコート剤)を用いる
ことによって、その塗膜の加熱乾燥時において従来手法
では考えられなかったポリビニルアルコールと珪酸塩の
均一な固−固反応が進行して、既述したポリビニアルコ
ールがケイ素により均一かつ三次元的に架橋されたケイ
素架橋ポリビニルアルコールとこのケイ素架橋ポリビニ
ルアルコールに均一に分散された超微粉末とからなる優
れたガスバリア性を示すガスバリア層が前記基材フィル
ム上に形成されたガスバリアフィルムを製造することが
可能になる。
【0276】このようなガスバリアフィルムは、次のよ
うな作用効果を奏する。
【0277】(a)前記ガスバリア層は、ケイ素架橋ポ
リビニルアルコールと無機化合物等からなる超微粉末が
分散された構成になっているため、優れた酸素遮断性や
水蒸気遮断性等のガスバリア性を有する。
【0278】すなわち、前記ケイ素架橋ポリビニルアル
コールは優れたガスバリア性を有するポリビニアルコー
ルにケイ素を架橋した構造を有するため、酸素や水蒸気
を遮断する作用を有する。また、前記ケイ素架橋ポリビ
ニルアルコールに分散された多数の超微粉末によりガス
バリア層に酸素や水蒸気などのガスに対する曲がりくね
った通路、いわゆるトーチャス・パス(Tortuous pat
h)が形成される。その結果、前記ケイ素架橋ポリビニ
ルアルコールとこのポリマーに分散された多数の超微粉
末との相互作用により、優れた酸素遮断性および水蒸気
遮断性等のガスバリア性を示すガスバリア層を有するガ
スバリアフィルムを得ることができる。特に、超微粉末
の平均粒径を100nm以下にしたり、前記ガスバリア
層において前記基材フィルム表面に実質的に平行な面1
2当たりに存在する多数の超微粉末(無機化合物から
作られる)における比表面積の合計が100〜250m
2にしたりすることによって、前記トーチャス・パス効
果をより効果的に発揮できる。
【0279】(b)高湿度(90RH%以上)の雰囲気
に曝した場合、ポリビニルアルコールのみからなる層は
可塑化されてその酸素遮断性および水蒸気遮断性が著し
く低下する。これに対し、本発明のガスバリア層は前記
超微粉末が分散されるマトリックス部がポリビニアルコ
ールにケイ素を均一に架橋したケイ素架橋ポリビニルア
ルコールからなり、高湿度(90RH%以上)の雰囲気
に曝されても前記マトリックス部がポリビニアルコール
単独からなる場合のような水分劣化を生じないため、優
れた酸素遮断性および水蒸気遮断性、例えば23℃、9
0RH%での酸素透過量が10cc/m2・24hr以
下で、かつ40℃、90RH%での水蒸気透過量が10
g/m2・24hr以下(特に、40℃、90RH%で
の水蒸気透過量が2g/m2・24hr以下)の驚異的
な特性を示す。
【0280】(c)前記ガスバリアフィルムは、臭気に
対して優れたバリア性を有する。
【0281】(d)前記ガスバリア層はケイ素架橋ポリ
ビニルアルコールと前記超微粉末とからなり、適度な柔
軟性を有するため、屈曲させてもピンホールやクラック
の発生を防止できる。
【0282】(e)前記ガスバリア層の厚さを1μm以
上と従来のAlやセラミックの蒸着膜に比べて厚くすれ
ば、さらに優れた酸素遮断性および水蒸気遮断性等のガ
スバリア性を有するガスバリア層を備えたガスバリアフ
ィルムを実現できる。
【0283】したがって、前記ガスバリア層による優れ
たガスバリア作用と前記ガスバリア層の優れた柔軟性に
よって、屈曲させてもピンホールやクラックが発生せ
ず、複数回の屈曲後において通常の湿度雰囲気のみなら
ず、高湿度においても優れた酸素遮断性(例えば23
℃、90RH%での酸素透過量が10cc/m2・24
hr以下)、水蒸気遮断性(例えば40℃、90RH%
での水蒸気透過量が10g/m2・24hr以下)等の
ガスバリア性を有するガスバリアフィルムを提供でき
る。
【0284】また、前記ガスバリア層は水に溶解するケ
イ素架橋ポリビニアルコールおよび超微粉末からなるた
め、前記基材フィルムとしてPET,OPPのような塩
素を含まない有機高分子のフィルムや紙を用いた場合、
廃棄処理物を例えば100℃前後の高温水で処理するこ
とにより前記ガスバリア層を前記基材フィルムから容易
に除去することができる。その結果、前記基材フィルム
の回収、再利用が容易で、しかも廃棄処理物を焼却して
も人体に有害な塩素系化合物が排出されることがないた
め、環境にやさしいガスバリアフィルムを提供できる。
【0285】このようなガスバリアフィルム(2−3)
は、前記ガスバリア層にトップコート処理を施すること
により食品等を仮包装するラップ材に有効に利用でき
る。特に、前記基材フィルムとして耐熱性の優れた有機
高分子フィルムを用いれば、電子レンジ対応のラップ材
を実現できる。
【0286】また、本発明に係わるガスバリアフィルム
は前記ガスバリア層にポリエチレンのようなシーラント
フィルムを積層することによって、各種の食品、医薬品
等の密封袋用素材として有効に利用することができる。
【0287】さらに、前記超微粉末として種々の素材を
選択することによりガスバリア性の他に、次のような機
能を有するガスバリアフィルムを得ることができる。
【0288】(1)PET,OPPのような有機高分子
フィルムからなる基材フィルムを用い、かつケイ素架橋
ポリビニルアルコールに酸化ケイ素超微粉末が分散され
た透明なガスバリア層を用いることによって、優れた酸
素遮断性、水蒸気遮断性等のガスバリア性を有するとと
もに、基材である有機高分子フィルムと同等の高い透明
度を有するガスバリアフィルムを提供できる。
【0289】(2)大塚化学社製商品名;RUVA−9
3のような紫外線遮断性を持つ有機高分子からなる超微
粉末を用いることによって、優れた酸素遮断性、水蒸気
遮断性等のガスバリア性を有するとともに、UVカット
性を有するガスバリアフィルムを提供できる。
【0290】(3)金属またはインジウム錫酸化物(I
TO)からなる超微粉末を用いることによって、優れた
酸素遮断性、水蒸気遮断性等のガスバリア性を有すると
ともに、導電性を電磁シールと効果を持つガスバリアフ
ィルムを提供できる。特に、ITO超微粉末を用いるこ
とによって、導電性と透明性を兼ね備えたガスバリア層
を有するガスバリアフィルムを提供できる。
【0291】前述したガスバリアフィルムの製造方法
(2−4)は、次のような作用効果を奏する。
【0292】(a)前記ガスバリアコート剤を基材フィ
ルムに塗布した後、加熱乾燥してケイ素架橋ポリビニル
アルコールとこのケイ素架橋ポリビニルアルコールに分
散されたポリビニアルコールを除く有機高分子、金属お
よび無機化合物から選ばれる少なくとも1つの材料から
なる多数の超微粉末から構成されたガスバリア層を形成
することによって、前述したガスバリア層による優れた
ガスバリア作用と前記ガスバリア層の優れた柔軟性によ
って、屈曲させてもピンホールやクラックが発生せず、
複数回の屈曲後において通常の湿度雰囲気のみならず、
高湿度においても優れた酸素遮断性(例えば23℃、9
0RH%での酸素透過量が10cc/m2・24hr以
下)、水蒸気遮断性(例えば40℃、90RH%での水
蒸気透過量が10g/m2・24hr以下)等のガスバ
リア性を有するガスバリア層を備えたガスバリアフィル
ムを製造することができる。
【0293】(b)前記ガスバリア層は、前記ガスバリ
アコート剤を基材フィルムに塗布することにより形成で
きる。このため、従来の真空蒸着によりアルミニウムや
無機化合物のガスバリア層を形成する方法のように大掛
かりな装置を使用することなく簡単かつ量産的にガスバ
リアフィルムを製造することができる。
【0294】特に、基材フィルムである延伸ポリプロピ
レン(OPP)はポリエチレンテレフタレート(PE
T)フィルムに比べて耐熱性が劣るため従来の真空蒸着
によるアルミニウムや無機化合物のガスバリア層の形成
が不可能であった。これに対し、本発明は塗布、加熱乾
燥によりガスバリア層を形成するため、耐熱性の劣るO
PPのようなフィルムをも基材フィルムとして使用で
き、ガスバリアフィルムの低価格化、用途の拡大を図る
ことができる。
【0295】(c)前記塗膜付き基材フィルムの加熱処
理工程において、徐々に昇温させずに水の沸点以上、基
材フィルムの熱変形温度未満の温度雰囲気に前記塗膜付
き基材フィルムを置くことによって、前記塗膜中の水分
を迅速に蒸発させ、同時にそれぞれ分子レベルで分散さ
れたポリビニルアルコールおよび珪酸塩を速やかに反応
させることができるため、より一層ガスバリア性の優れ
たガスバリア層を基材フィルム上に形成することが可能
になる。また、徐冷後に水の沸点未満、好ましくは35
〜45℃でエージングすることによって、前記反応がよ
り確実になされるため、さらに一層ガスバリア性、透明
性の優れたガスバリア層を基材フィルム上に形成するこ
とが可能になる。
【0296】前述した易裂性ガスバリアフィルム(2−
5)は、多数の微細な貫通孔および/または未貫通孔を
有する多孔質有機高分子フィルムと、この多孔質有機高
分子フィルムにに被覆されたガスバリア層とを具備し、
前記ガスバリア層がケイ素架橋ポリビニルアルコールと
このケイ素架橋ポリビニルアルコールに分散されたポリ
ビニアルコールを除く有機高分子、金属および無機化合
物から選ばれる少なくとも1つの材料からなる超微粉末
とから構成された構造を有するため、以下に説明する良
好な引裂き性と優れたガスバリア性を有する。
【0297】(a)引裂き性の作用 (a−1)前記易裂性ガスバリアフィルムにおいて、引
裂かれる領域に多数の貫通孔および/または未貫通孔が
穿設された前記多孔質有機高分子フィルムを有するた
め、前記領域の箇所を両手の指で引っ張ると、前記各貫
通孔および/または各未貫通孔が引裂きの起点として作
用して引き裂かれる。さらに、前記引裂き方向には多数
の貫通孔および/または未貫通孔が形成されているた
め、それら貫通孔および/または未貫通孔が順次引裂き
点として作用する。その結果、極めて容易に、つまり過
大な力を加えずに易裂性ガスバリアフィルムを引き裂く
ことができる。
【0298】(a−2)引裂かれる領域に平均開口径
0.5〜100μmの微細な貫通孔および/または未貫
通孔が500個/cm2以上の密度で開口された多孔質
有機高分子フィルムを用いることによって、より一層引
裂き易い易裂性ガスバリアフィルムを得ることができ
る。
【0299】(a−3)ガスバリア層上に縦横いずれに
も裂け難い性質を有するポリエチレンフィルムのような
シーラントフィルムを積層した場合でも、所定の箇所か
ら目的とする方向に容易に引裂くことが可能になる。
【0300】(b)ガスバリア層の作用 (b−1)ガスバリア層は、ケイ素架橋ポリビニルアル
コールと無機化合物等からなる超微粉末が分散された構
成になっているため、優れた酸素遮断性や水蒸気遮断性
等のガスバリア性を有する。
【0301】すなわち、前記ケイ素架橋ポリビニルアル
コールは優れたガスバリア性を有するポリビニアルコー
ルにケイ素を架橋した構造を有するため、酸素や水蒸気
を遮断する作用を有する。また、前記ケイ素架橋ポリビ
ニルアルコールに分散された多数の超微粉末によりガス
バリア層に酸素や水蒸気などのガスに対する曲がりくね
った通路、いわゆるトーチャス・パス(Tortuous pat
h)が形成される。その結果、前記ケイ素架橋ポリビニ
ルアルコールとこのポリマーに分散された多数の超微粉
末との相互作用により、優れた酸素遮断性および水蒸気
遮断性等のガス遮断性を示すガスバリア層を有するガス
バリアフィルムを得ることができる。特に、超微粉末の
平均粒径を100nm以下にしたり、前記ガスバリア層
において前記多孔質有機高分子フィルム表面に実質的に
平行な面1m2当たりに存在する多数の超微粉末(無機
化合物から作られる)における比表面積の合計が100
〜250m2にしたりすることによって、前記トーチャ
ス・パス効果をより効果的に発揮できる。
【0302】(b−2)高湿度(90RH%以上)の雰
囲気に曝した場合、ポリビニルアルコールのみからなる
層は可塑化されてその酸素遮断性および水蒸気遮断性が
著しく低下する。これに対し、本発明のガスバリア層は
前記超微粉末が分散されるマトリックス部がポリビニア
ルコールにケイ素を均一に架橋したケイ素架橋ポリビニ
ルアルコールからなるため、高湿度(90RH%以上)
の雰囲気に曝されても前記マトリックス部がポリビニア
ルコール単独からなる場合のような水分劣化を生じない
ため、優れた酸素遮断性および水蒸気遮断性、例えば2
3℃、90RH%での酸素透過量が10cc/m2・2
4hr以下で、かつ40℃、90RH%での水蒸気透過
量が10g/m2・24hr以下(特に、90RH%で
の水蒸気透過量が2g/m2・24hr以下)という驚
異的な特性を示す。
【0303】(b−3)前記ガスバリア層はケイ素架橋
ポリビニルアルコールと前記超微粉末からなり、適度な
柔軟性を有するため、屈曲させてもピンホールやクラッ
クの発生を防止できる。
【0304】(b−4)前記ガスバリア層は、臭気に対
しても高いバリア性を有する。
【0305】(b−5)前記ガスバリア層の厚さを1μ
m以上と従来のAlやセラミックの蒸着膜に比べて厚く
すれば、さらに優れた酸素遮断性および水蒸気遮断性等
のガスバリア性を実現できる。
【0306】したがって、前記多孔質有機高分子フィル
ムによる優れた引裂き性により多大な力を加えることな
く、容易に引裂くことができるとともに、前記ガスバリ
ア層によるガスバリア作用と前記ガスバリア層の適度な
柔軟性によって、屈曲させてもピンホールやクラックが
発生せず、複数回の屈曲後において通常の湿度雰囲気の
みならず、高湿度においても優れた酸素遮断性(例えば
23℃、90RH%での酸素透過量が10cc/m2
24hr以下)、水蒸気遮断性(例えば40℃、90R
H%での水蒸気透過量が10g/m2・24hr以下)
等のガスバリア性を有する易裂性ガスバリアフィルムを
提供できる。
【0307】また、前記ガスバリア層は、水に溶解する
ケイ素架橋ポリビニアルコールおよび前記超微粉末から
なるため、前記多孔質有機高分子フィルムとしてPE
T,OPPのような塩素を含まない有機高分子フィルム
や紙を用いた場合、廃棄処理物を例えば100℃前後の
高温水で処理することにより前記ガスバリア層を前記多
孔質有機高分子フィルムから容易に除去することができ
る。その結果、前記多孔質有機高分子フィルムの回収、
再利用が容易で、しかも廃棄処理物を焼却しても人体に
有害な塩素系化合物が排出されることがないため、環境
にやさしいガスバリアフィルムを提供できる。
【0308】このような易裂性ガスバリアフィルムは、
前記ガスバリア層にトップコート処理を施することによ
り食品等を仮包装するラップ材に有効に利用できる。特
に、前記多孔質有機高分子フィルムとして耐熱性の優れ
た有機高分子フィルに多数の貫通孔および/または未貫
通孔を穿設したものを用いれば、電子レンジ対応のラッ
プ材を実現できる。
【0309】また、前記易裂性ガスバリアフィルムは前
記ガスバリア層にポリエチレンのようなシーラントフィ
ルムを積層することによって、各種の食品、医薬品等の
密封袋用素材として有効に利用することができる。
【0310】前述した易裂性ガスバリアフィルムの製造
方法(2−6)は、次のような作用効果を奏する。
【0311】(a)前記ガスバリアコート剤を多数の微
細な貫通孔および/または未貫通孔を有する多孔質有機
高分子フィルムにに塗布した後、加熱乾燥してケイ素架
橋ポリビニルアルコールと酸化ケイ素粉末等からなる超
微粉末とからなるガスバリア層を形成することによっ
て、前述した多孔質有機高分子フィルムによる優れた引
裂き性により多大な力を加えることなく、容易に引裂く
ことができるとともに、前記ガスバリア層によるガスバ
リア作用と前記ガスバリア層の適度な柔軟性によって、
屈曲させてもピンホールやクラックが発生せず、複数回
の屈曲後において通常の湿度雰囲気のみならず、高湿度
においても優れた酸素遮断性(例えば23℃、90RH
%での酸素透過量が10cc/m2・24hr以下)、
水蒸気遮断性(例えば40℃、90RH%での水蒸気透
過量が10g/m2・24hr以下)等のガスバリア性
を有する易裂性ガスバリアフィルムを製造することがで
きる。
【0312】(b)前記ガスバリア層は、前記ガスバリ
アコート剤を多孔質有機高分子フィルムに塗布すること
により形成できる。このため、従来の真空蒸着によりア
ルミニウムや無機化合物のガスバリア層を形成する方法
のように大掛かりな装置を使用することなく簡単かつ量
産的に易裂性ガスバリアフィルムを製造することができ
る。
【0313】特に、延伸ポリプロピレン(OPP)フィ
ルムに多数の貫通孔および/または未貫通孔を穿設した
多孔質有機高分子フィルムはポリエチレンテレフタレー
ト(PET)フィルムに同様な貫通孔等を穿設した多孔
質有機高分子フィルムに比べて耐熱性が劣るため従来の
真空蒸着によるアルミニウムや無機化合物のガスバリア
層の形成が不可能であった。これに対し、本発明は塗
布、加熱乾燥によりガスバリア層を形成するため、耐熱
性の劣る多孔質OPPフィルムのような多数の貫通孔お
よび/または未貫通孔を穿設した多孔質有機高分子フィ
ルムをも使用でき、易裂性ガスバリアフィルムの低価格
化、用途の拡大を図ることができる。
【0314】(c)前記塗膜付き多孔質有機高分子フィ
ルムの加熱処理工程をにおいて、徐々に昇温させずに水
の沸点以上、前記フィルムの熱変形温度未満の温度雰囲
気に前記塗膜付き多孔質有機高分子フィルムを置くこと
によって、前記塗膜中の水分を迅速に蒸発させ、同時に
それぞれ分子レベルで分散されたポリビニルアルコール
および珪酸塩を速やかに反応させることができるため、
より一層ガスバリア性の優れたガスバリア層を多孔質有
機高分子フィルム上に形成することが可能になる。ま
た、徐冷後に水の沸点未満、好ましくは35〜45℃で
エージングすることによって、前記反応がより確実にな
されるため、さらに一層ガスバリア性の優れたガスバリ
ア層を多孔質有機高分子フィルム上に形成することが可
能になる。
【0315】
【実施例】以下、本発明の好ましい実施例を説明する。
【0316】(実施例1)まず、10重量%濃度のポリ
ビニルアルコール水溶液を、前述した図1に示す衝突破
砕装置を用い、下記に示す条件て衝突破砕を2回繰り返
した。この工程によりポリビニルアルコールが分子レベ
ルで溶解・分散されたポリビニルアルコール溶解・分散
水溶液を調製した。
【0317】<衝突破砕条件> ポリビニルアルコール水溶液の温度;50℃ ポリビニルアルコール水溶液の加圧力;約1000Kg
/cm2 ノズル部を通過するポリビニルアルコール水溶液の加速
度;約250m/sec。
【0318】また、pHが13の水酸化ナトリウム水溶
液83gに親水性の酸化ケイ素微粉末の凝集物(日本ア
エロジル社製商品名;380[一次粒子の平均粒径;7
nm])17g添加して反応させることによりpH1
2、オルト珪酸ナトリウム濃度が17重量%の珪酸塩水
溶液を調製した。
【0319】次いで、前記ポリビニルアルコール溶解・
分散水溶液119gと前記珪酸塩水溶液30gと水21
gとをpHが約11になるように混合した後、この混合
水溶液を、前述した図1に示す衝突破砕装置を用い、下
記に示す条件て衝突破砕を4回繰り返すことにより透明
なガスバリアコート剤を製造した。
【0320】<衝突破砕条件> 混合水溶液の温度;100℃ 混合水溶液の加圧力;約2000Kg/cm2 ノズル部を通過する混合水溶液の加速度;約250m/
sec 得られたガスバリアコート剤は、pHが約11で、水酸
化ナトリウム水溶液にポリビニルアルコールおよび珪酸
塩をそれぞれ分子レベルで溶解・分散され、前記ポリビ
ニアルコールおよび前記オルト珪酸ナトリウムはそれぞ
れ8.0重量%、2.0重量%の濃度で、かつ前記ポリ
ビニルアルコールと前記オルト珪酸ナトリウムとが重量
比で8:2の組成を有するものであった。
【0321】また、前記ガスバリアコート剤は常温ない
しそれ以下の温度で1ヶ月間放置しても白濁することな
く、透明な状態が維持され、安定した性状を有するもの
であった。
【0322】次いで、前記ガスバリアコート剤を厚さ2
0μmの長尺延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムの
片面に厚さが3μmになるようにロールコータ法により
連続的に塗布して塗膜を形成した。つづいて、この塗膜
付き長尺OPPフィルムを103℃に加熱されたトンネ
ル炉に連続的に通過させて加熱乾燥し、その後徐冷して
前記長尺OPPフィルムに厚さ3μmのケイ素架橋ポリ
ビニルアルコールからなるガスバリア層を形成した。ひ
きつづき、40℃で48時間エージングすることにより
長尺ガスバリアフィルムを製造した。
【0323】得られた長尺ガスバリアフィルムは、OP
Pフィルムと同等の透明性を有するガスバリア層を有
し、全体的に極めて透明性に優れたものであった。
【0324】(実施例2)まず、実施例1と同様なポリ
ビニルアルコール溶解・分散水溶液119gと実施例1
と同様な珪酸塩水溶液3gと親水性の酸化ケイ素微粉末
の凝集物(日本アエロジル社製商品名;380[一次粒
子の平均粒径;7nm])4.6gと水43.4gとを
pHが約10になるように混合した。得られたスラリー
を、前述した図1に示す衝突破砕装置を用い、下記に示
す条件て衝突破砕を4回繰り返すことにより透明なガス
バリアコート剤を製造した。
【0325】<衝突破砕条件> スラリーの温度;100℃ スラリーの加圧力;約2000Kg/cm2 ノズル部を通過するスラリーの加速度;約250m/s
ec。
【0326】得られたガスバリアコート剤は、pHが約
10で、水酸化ナトリウム水溶液にポリビニルアルコー
ルおよび珪酸塩をそれぞれ分子レベルで溶解・分散さ
れ、かつ平均粒径7nmの多数の酸化ケイ素超微粉末が
均一に分散されていた。前記ポリビニアルコールおよび
前記オルト珪酸ナトリウムは、それぞれ6.0重量%、
1.5重量%の濃度で溶解・分散され、かつ前記ポリビ
ニルアルコールと前記オルト珪酸ナトリウムとが重量比
で約9.4:0.6で、酸化ケイ素超微粉末とオルト珪
酸ナトリウムとが重量比で約9:1であった。
【0327】また、前記ガスバリアコート剤は、常温な
いしそれ以下の温度で1ヶ月間放置しても白濁したり、
酸化ケイ素超微粉末が析出したりすることなく、透明な
状態が維持され、安定した性状を有するものであった。
【0328】次いで、前記ガスバリアコート剤を厚さ2
0μmの長尺OPPフィルムの片面に厚さが3μmにな
るようにロールコータ法により連続的に塗布して塗膜を
形成した。つづいて、この塗膜付き長尺OPPフィルム
を103℃に加熱されたトンネル炉に連続的に通過させ
て加熱乾燥し、その後徐冷して前記長尺OPPフィルム
に厚さ3μmのガスバリア層を形成した。ひきつづき、
40℃で48時間エージングすることによりガスバリア
フィルムを製造した。
【0329】得られた長尺ガスバリアフィルムのガスバ
リア層を電子顕微鏡で観察した。その結果、ケイ素架橋
ポリビニルアルコールに平均粒径7nmの多数の酸化ケ
イ素超微粉末が均一に分散されていることが確認され
た。また、前記ガスバリア層は前記長尺OPPフィルム
表面に実質的に平行な面1m2当たりに存在する多数の
酸化ケイ素超微粉末における比表面積の合計が200m
2であった。
【0330】前記長尺ガスバリアフィルムは、OPPフ
ィルムと同等の透明性を有するガスバリア層を有し、全
体的に極めて透明性に優れたものであった。
【0331】(比較例1)厚さ20μmのOPPフィル
ムにポリ塩化ビニリデン溶液(ガスバリアコート剤)を
厚さが3.0μmになるようにロールコータ法により塗
布し、乾燥することによりガスバリアフィルムを製造し
た。
【0332】(比較例2)厚さ12μmのPETフィル
ムに厚さ50nmのアルミニウム薄膜を真空蒸着するこ
とによりガスバリアフィルムを製造した。
【0333】(比較例3)厚さ60μmのCPPフィル
ムに厚さ50nmの酸化ケイ素薄膜を真空蒸着すること
によりガスバリアフィルムを製造した。
【0334】得られた実施例1、2および比較例1〜3
のガスバリアフィルムについて酸素透過量および水蒸気
透過量を測定した。なお、酸素透過量は日本分光社製商
品名;ガスパームを用いて前記ガスバリアフィルムから
切り出した直径10cmのサンプルを酸素濃度100
%、25℃、65%RHで5kg/cm2に加圧した条
件下で測定した。また、水蒸気透過量はスイスDr.L
yssy社製商品名;L80−4000型を用いて前記
積層フィルムから切り出した直径10cmのサンプルを
JIS K7129Aに準じて40℃、90%RHの条
件下で測定した。その結果を下記表1に示す。
【0335】なお、下記表1には参照例1として、厚さ
30μmのOPPフィルムの酸素透過量および水蒸気透
過量を併記した。
【0336】
【表1】
【0337】前記表1から明らかなように実施例1、2
のガスバリアフィルムは、比較例1のガスバリア性積層
フィルムに比べて優れた酸素遮断性および水蒸気遮断性
を有することがわかる。
【0338】特に、ケイ素架橋ポリビニルアルコールお
よびこのケイ素架橋ポリビニルアルコールに均一に分散
された平均粒径7nmの多数の酸化ケイ素超微粉末から
なるガスバリア層を有する実施例2のガスバリアフィル
ムは、ケイ素架橋ポリビニルアルコールのみからなるガ
スバリア層を有する実施例1のガスバリアフィルムに比
べてさらに優れた酸素遮断性および水蒸気遮断性を有す
ることがわかる。
【0339】なお、酸化ケイ素の蒸着フィルムである比
較例3のガスバリアフィルムは屈曲を繰り返すと酸化ケ
イ素蒸着膜にピンホールやクラックが発生してその酸素
および水蒸気遮断性が極端に低下した。
【0340】これに対し、実施例1、2のガスバリアフ
ィルムは屈曲を繰り返しても前記表1に示す優れた酸素
遮断性および水蒸気遮断性が維持された。
【0341】また、実施例1、2のガスバリアフィルム
を100℃の高温水に浸漬させることにより、それらの
ガスバリア層を簡単に除去でき、OPPフィルムを回収
することができた。
【0342】(実施例3)竜王コート紙に実施例2で得
たガスバリアコート剤を厚さが2μmになるようにロー
ルコータ法により塗布して塗膜を形成した。つづいて、
この塗膜付きOPPフィルムを103℃に加熱されたト
ンネル炉に通過させて加熱乾燥し、その後徐冷して前記
OPPフィルムに厚さ3μmのケイ素架橋ポリビニルア
ルコールからなるガスバリア層を形成した。ひきつづ
き、40℃で48時間エージングすることによりガスバ
リアフィルムを製造した。
【0343】得られた実施例3のガスバリアフィルムに
ついて、実施例1と同様な方法により酸素透過量および
水蒸気透過量を測定した。その結果、25℃、65RH
%での酸素透過量が0.3cc/m2・24hr、40
℃、90RH%での水蒸気透過量が1.0g/m2・2
4hrであった。
【0344】なお、実施例1〜3では基材フィルムとし
て長尺OPPフィルムまたは紙を用いたが、PET,ナ
イロンからなる有機高分子フィルムにを用いても、実施
例1〜3と同様な優れた酸素遮断性および水蒸気遮断性
を有するガスバリアフィルムを得ることができた。
【0345】(実施例4)前述した多孔質フィルムの製
造装置を用いて厚さ20μmの長尺二軸延伸ポリプロピ
レン(OPP)フィルムを多孔化処理することにより断
面がV字形のをなし、大きい開口側の平均開口径15μ
m、小さい開口側の平均開口径5μmの多数の貫通孔が
1500個/cm2 の密度で形成された長尺多孔質OP
Pフィルムを作製した。つづいて、この長尺多孔質OP
Pフィルムの小さい開口部が露出する面に実施例1と同
様な前記ガスバリアコート剤を厚さが5μmになるよう
にロールコータ法により連続的に塗布して塗膜を形成し
た。つづいて、この塗膜付き長尺多孔質OPPフィルム
を103℃に加熱されたトンネル炉に連続的に通過させ
て加熱乾燥し、その後徐冷して前記長尺多孔質OPPフ
ィルムに厚さ3μmのケイ素架橋ポリビニルアルコール
からなるガスバリア層を形成した。ひきつづき、40℃
で48時間エージングすることにより透明な長尺易裂性
ガスバリアフィルムを製造した。
【0346】(実施例5)実施例4と同様な断面がV字
形のをなし、大きい開口側の平均開口径15μm、小さ
い開口側の平均開口径5μmの多数の貫通孔が1500
個/cm2 の密度で形成された長尺多孔質OPPフィル
ムの小さい開口部が露出する面に実施例2と同様なガス
バリアコート剤を厚さが5μmになるようにロールコー
タ法により連続的に塗布して塗膜を形成した。つづい
て、この塗膜付き長尺多孔質OPPフィルムを103℃
に加熱されたトンネル炉に連続的に通過させて加熱乾燥
し、その後徐冷して前記長尺多孔質OPPフィルムに厚
さ3μmのケイ素架橋ポリビニルアルコールおよびこの
ケイ素架橋ポリビニルアルコールに均一に分散された平
均粒径7nmの多数の酸化ケイ素超微粉末からなるガス
バリア層を形成した。ひきつづき、40℃で48時間エ
ージングすることにより透明な長尺易裂性ガスバリアフ
ィルムを製造した。
【0347】得られた実施例4,5の長尺易裂性ガスバ
リアフィルムおよび比較例1〜3のガスバリアフィルム
について、両手の指で引張って易裂性を調べた。その結
果、実施例4,5の長尺易裂性ガスバリアフィルムは外
側に配置された前記多孔質OPPフィルムの多数の貫通
孔が引裂きの起点として作用、さらに前記引裂き方向に
位置する多数の貫通孔が順次引裂き点として作用した。
このため、極めて容易に引き裂くことができるととも
に、優れた直進カット性を示した。これに対して、比較
例1〜3のガスバリアフィルムは相当の力を加えなけれ
ば引裂くことができず、しかも予期しない方向に引裂か
れた。
【0348】また、実施例4,5の長尺易裂性ガスバリ
アフィルムのガスバリア層にシーラントフィルムである
厚さ30μmのポリエチレンフィルムを積層した場合で
も、極めて容易に引き裂くことができるとともに、優れ
た直進カット性を示した。
【0349】さらに、実施例4,5の長尺易裂性ガスバ
リアフィルムについて、実施例1と同様な方法により酸
素透過量および水蒸気透過量を測定した。その結果、実
施例4の長尺易裂性ガスバリアフィルムは25℃、65
RH%での酸素透過量が0.5cc/m2・24hr、
40℃、90RH%での水蒸気透過量が1.5g/m2
・24hrであった。また、実施例5の長尺易裂性ガス
バリアフィルムは25℃、65RH%での酸素透過量が
0.3cc/m2・24hr、40℃、90RH%での
水蒸気透過量が1.0g/m2・24hrであった。
【0350】なお、実施例4.5では長尺多孔質有機高
分子フィルムとして長尺OPPフィルムに多数の貫通孔
を穿設したものを用いたが、PET,ナイロンからなる
フィルムに多数の貫通孔およびまたは未貫通孔を穿設し
た多孔質有機高分子フィルムを用いても、実施例4,5
と同様な優れた引裂き性、酸素遮断性および水蒸気遮断
性を有する易裂性ガスバリアフィルムを得ることができ
た。
【0351】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば屈
曲させてもピンホールやクラックが発生せず、かつ無機
化合物や金属の膜状態と略同等の優れたガスバリア性を
有する透明なガスバリア層の形成に適し、さらに長期間
にわたって安定した透明性を有するガスバリアコート剤
およびその製造方法を提供できる。
【0352】本発明によれば、屈曲させてもピンホール
やクラックが発生せず、かつ無機化合物や金属の膜状態
と略同等の優れたガスバリア性を有すると共に、UVカ
ットのような別の機能が付加されたガスバリア層の形成
に適し、さらに長期間にわたって安定した性状を有する
ガスバリアコート剤およびその製造方法を提供できる。
【0353】本発明によれば、屈曲させてもピンホール
やクラックが発生せず、かつ無機化合物や金属の膜状態
と略同等の優れたガスバリア性を有するガスバリア層を
備え、食品等を包装する取扱いが容易なラップ剤の素
材、または各種の食品、医薬品等の内容物を長期間にわ
たって外界から遮断し得る密封袋用素材として好適なガ
スバリアフィルムを提供できる。
【0354】本発明によれば、屈曲させてもピンホール
やクラックが発生せず、優れたガスバリア性を有するガ
スバリア層を備え、かつ基材である有機高分子フィルム
と同等の透明性を有するガスバリアフィルムを提供でき
る。
【0355】本発明によれば、真空蒸着のような大掛か
りな装置を使用せずに塗布手段により前述した優れたガ
スバリア性を有するガスバリア層を形成することがで
き、食品等を包装する取扱いが容易なラップ剤の素材、
または各種の食品、医薬品等の内容物を長期間にわたっ
て外界から遮断し得る密封袋用素材として好適なガスバ
リアフィルムを量産かつ安価に製造し得る方法を提供で
きる。
【0356】本発明によれば、屈曲させてもピンホール
やクラックが発生せず、かつ無機化合物や金属の膜状態
と同等の優れたガスバリア性を有するガスバリア層を備
え、かつ容易に引裂くことが可能で、食品等を包装する
取扱いが容易なラップ剤の素材、または各種の食品、医
薬品等の内容物を長期間にわたって外界から遮断し得る
密封袋用素材として好適な易裂性ガスバリアフィルムを
提供できる。
【0357】本発明によれば、真空蒸着のような大掛か
りな装置を使用せずに塗布手段により前述した優れたガ
スバリア性を有するガスバリア層を形成することがで
き、容易に引裂くことが可能で、食品等を包装する取扱
いが容易なラップ剤の素材、または各種の食品、医薬品
等の内容物を長期間にわたって外界から遮断し得る密封
袋用素材として好適な易裂性ガスバリアフィルムを量産
かつ安価に製造し得る方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガスバリアコート剤を調製するための
衝突破砕装置を示す断面図。
【符号の説明】
1…装置本体、 2…空洞部、 5…メインブロック、 6…上部ブロック、 7…下部ブロック 8a,8b…ノズル部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09D 129/04 C09D 129/04 Fターム(参考) 4F100 AA01B AA03B AA19B AA20B AA27B AA33B AB01B AK01A AK01B AK07A AK21B AK21K AK42A AK46A AK68A AT00A BA02 BA26 DC11A DE01B DG10A EA061 EH112 EH462 EJ05B EJ862 GB23 JA20A JB16A JD02 JD03B JD04B JD09B JK03 JK14 JN01 YY00A YY00B 4J038 CE021 HA066 HA216 HA446 HA456 KA20 MA14 PC08

Claims (73)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カ
    リウム水溶液にそれぞれ分子レベルで溶解・分散された
    ポリビニルアルコールおよび珪酸塩を含み、透明でアル
    カリ性であることを特徴とするガスバリアコート剤。
  2. 【請求項2】 pHが9〜12であることを特徴とする
    請求項1記載のガスバリアコート剤。
  3. 【請求項3】 前記ポリビニアルコールおよび前記珪酸
    塩の固形分濃度は、6〜12重量で、かつこの固形分中
    の前記ポリビニアルコールおよび前記珪酸塩の配合割合
    はそれぞれ60〜90重量%、10〜40重量%である
    ことを特徴とする請求項1または2記載のガスバリアコ
    ート剤。
  4. 【請求項4】 ポリビニルアルコール水溶液を加圧し、
    高速度で互いに衝突破砕する操作を複数回繰り返すこと
    によりポリビニルアルコールが分子レベルで溶解・分散
    されたポリビニルアルコール溶解・分散水溶液を調製す
    る工程;水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム
    水溶液に酸化ケイ素を反応させて珪酸塩水溶液を調製す
    る工程;および前記ポリビニルアルコール溶解・分散水
    溶液と前記珪酸塩水溶液と水とをアルカリ性になるよう
    に混合し、この混合物を加圧し、高速度で互いに衝突破
    砕する操作を複数回繰り返すことにより水酸化ナトリウ
    ム水溶液または水酸化カリウム水溶液にポリビニルアル
    コールおよび珪酸塩をそれぞれ分子レベルで溶解・分散
    させる工程;を具備したことを特徴とするガスバリアコ
    ート剤の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記ポリビニルアルコール溶解・分散水
    溶液は、ポリビニルアルコール濃度が6〜12重量%で
    あることを特徴とする請求項4記載のガスバリアコート
    剤の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記珪酸塩水溶液は、pHが12〜14
    の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液
    に一次粒子径が100nm以下の親水性の酸化ケイ素微
    粉末を添加して反応させることにより調製されることを
    特徴とする請求項4記載のガスバリアコート剤の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 前記珪酸塩水溶液は、珪酸塩の濃度が1
    0〜25重量%で、かつpHが11〜12であることを
    特徴とする請求項4または6記載のガスバリアコート剤
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記混合物中の前記ポリビニアルコール
    および珪酸塩の固形分濃度は、6〜12重量で、かつこ
    の固形分中の前記ポリビニアルコールおよび前記珪酸塩
    の配合割合はそれぞれ60〜90重量%、10〜40重
    量%であることを特徴とする請求項4記載のガスバリア
    コート剤の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記ポリビニルアルコール溶解・分散水
    溶液と前記珪酸塩水溶液と水とを混合する際のpHは、
    9〜12であることを特徴とする請求項4記載のガスバ
    リアコート剤の製造方法。
  10. 【請求項10】 水酸化ナトリウム水溶液または水酸化
    カリウム水溶液にポリビニルアルコールおよび珪酸塩が
    それぞれ分子レベルで溶解・分散されるとともに、ポリ
    ビニアルコールを除く有機高分子、金属および無機化合
    物から選ばれる少なくとも1つの材料からなる多数の超
    微粉末が分散された組成を有し、かつアルカリ性である
    ことを特徴とするガスバリアコート剤。
  11. 【請求項11】 pHが9〜12であることを特徴とす
    るる請求項10記載のガスバリアコート剤。
  12. 【請求項12】 前記超微粉末は、紫外線遮断性を有す
    る有機高分子から作られることを特徴とする請求項10
    記載のガスバリアコート剤。
  13. 【請求項13】 前記ポリビニアルコール、珪酸塩およ
    び超微粉末の固形分濃度は、6〜12重量で、かつこの
    固形分中の前記ポリビニアルコール、前記珪酸塩および
    前記超微粉末の配合割合はそれぞれ60〜80重量%、
    10〜30重量%、3〜15重量%であることを特徴と
    する請求項12記載のガスバリアコート剤。
  14. 【請求項14】 前記超微粉末は、酸化ケイ素、酸化ジ
    ルコニウム、酸化チタンまたはアルミナから作られるこ
    とを特徴とする請求項10記載のガスバリアコート剤。
  15. 【請求項15】 前記超微粉末は、インジウム錫酸化物
    から作られることを特徴とする請求項10記載のガスバ
    リアコート剤。
  16. 【請求項16】 前記ポリビニアルコール、珪酸塩およ
    び超微粉末の固形分濃度は、6〜12重量で、かつこの
    固形分中の前記ポリビニアルコール、前記珪酸塩および
    前記超微粉末の配合割合はそれぞれ60〜80重量%、
    5〜15重量%、10〜35重量%であることを特徴と
    する請求項14または15記載のガスバリアコート剤。
  17. 【請求項17】 前記超微粉末は、平均粒径が100n
    m以下であることを特徴とする請求項10ないし16い
    ずれか記載のガスバリアコート剤。
  18. 【請求項18】 ポリビニルアルコール水溶液を加圧
    し、高速度で互いに衝突破砕する操作を複数回繰り返す
    ことによりポリビニルアルコールが分子レベルで溶解・
    分散されたポリビニルアルコール溶解・分散水溶液を調
    製する工程;水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリ
    ウム水溶液に酸化ケイ素を反応させて珪酸塩水溶液を調
    製する工程;および前記ポリビニルアルコール溶解・分
    散水溶液と前記珪酸塩水溶液とポリビニアルコールを除
    く有機高分子、金属および無機化合物から選ばれる少な
    くとも1つの材料からなる多数の微粉末と水とをアルカ
    リ性になるように混合し、この混合物を加圧し、高速度
    で互いに衝突破砕する操作を複数回繰り返すことにより
    水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液に
    ポリビニルアルコールおよび珪酸塩をそれぞれ分子レベ
    ルで溶解・分散させるとともに、前記多数の微粉末を破
    砕し、超微粉末化して分散させる工程;を具備したこと
    を特徴とするガスバリアコート剤の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記ポリビニルアルコール溶解・分散
    水溶液は、ポリビニルアルコール濃度が6〜12重量%
    であることを特徴とする請求項18記載のガスバリアコ
    ート剤の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記珪酸塩水溶液は、pHが12〜1
    4の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶
    液に一次粒子径が100nm以下の親水性を持つ多数の
    酸化ケイ素微粉末を添加して反応させることにより調製
    されることを特徴とする請求項18記載のガスバリアコ
    ート剤の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記珪酸塩水溶液は、珪酸塩濃度が1
    0〜25重量%で、かつpHが11〜12であることを
    特徴とする請求項18または20記載のガスバリアコー
    ト剤の製造方法。
  22. 【請求項22】 前記超微粉末は、紫外線遮断性を有す
    る有機高分子から作られることを特徴とする請求項18
    記載のガスバリアコート剤の製造方法。
  23. 【請求項23】 前記混合物中の前記ポリビニアルコー
    ル、珪酸塩および超微粉末の固形分濃度は、6〜12重
    量で、かつこの固形分中の前記ポリビニアルコール、前
    記珪酸塩および前記超微粉末の配合割合はそれぞれ60
    〜80重量%、10〜30重量%、3〜15重量%であ
    ることを特徴とする請求項22記載のガスバリアコート
    剤の製造方法。
  24. 【請求項24】 前記微粉末は、酸化ケイ素、アルミナ
    またはジルコニアから作られることを特徴とする請求項
    18記載のガスバリアコート剤の製造方法。
  25. 【請求項25】 前記微粉末は、インジウム錫酸化物か
    ら作られることを特徴とする請求項18記載のガスバリ
    アコート剤の製造方法。
  26. 【請求項26】 前記混合物中の前記ポリビニアルコー
    ル、珪酸塩および超微粉末の固形分濃度は、6〜12重
    量で、かつこの固形分中の前記ポリビニアルコール、前
    記珪酸塩および前記超微粉末の配合割合はそれぞれ60
    〜80重量%、5〜15重量%、10〜35重量%であ
    ることを特徴とする請求項24または25記載のガスバ
    リアコート剤の製造方法。
  27. 【請求項27】 前記ポリビニルアルコール溶解・分散
    水溶液と前記珪酸塩水溶液とポリビニアルコールを除く
    有機高分子、金属および無機化合物から選ばれる少なく
    とも1つの材料からなる多数の微粉末と水とを混合する
    際のpHは、9〜12であることを特徴とする請求項1
    8記載のガスバリアコート剤の製造方法。
  28. 【請求項28】 前記微粉末は、一次粒子径が100n
    m以下であることを特徴とする請求項18ないし27い
    ずれか記載のガスバリアコート剤の製造方法。
  29. 【請求項29】 基材フィルム;および前記基材フィル
    ムに被覆されたケイ素架橋ポリビニルアルコールからな
    る透明なガスバリア層;を具備したことを特徴とするガ
    スバリアフィルム。
  30. 【請求項30】 前記基材フィルムは、熱可塑性樹脂フ
    ィルムまたは紙であることを特徴とする請求項29記載
    のガスバリアフィルム。
  31. 【請求項31】 前記ガスバリア層は、1μm以上の厚
    さを有することを特徴とする請求項29記載のガスバリ
    アフィルム。
  32. 【請求項32】 前記ガスバリア層は、23℃、90R
    H%での酸素透過量が10cc/m2・24hr以下
    で、かつ40℃、90RH%での水蒸気透過量が10g
    /m2・24hr以下であることを特徴とする請求項2
    9記載のガスバリアフィルム。
  33. 【請求項33】 有機高分子フィルム;および前記有機
    高分子フィルムに被覆されたケイ素架橋ポリビニルアル
    コールからなる透明なガスバリア層;を具備し、前記有
    機高分子フィルムと同等の透明性を有することを特徴と
    するガスバリアフィルム。
  34. 【請求項34】 基材フィルム;および前記基材フィル
    ムに被覆されたケイ素架橋ポリビニルアルコールからな
    る透明なガスバリア層;を具備し、複数回屈曲後の23
    ℃、90RH%での酸素透過量が10cc/m2・24
    hr以下で、かつ40℃、90RH%での水蒸気透過量
    が10g/m2・24hr以下であることを特徴とする
    ガスバリアフィルム。
  35. 【請求項35】 水酸化ナトリウム水溶液または水酸化
    カリウム水溶液にそれぞれ分子レベルで溶解・分散され
    たポリビニルアルコールおよび珪酸塩を含み、かつ透明
    でアルカリ性であるガスバリアコート剤を基材フイルム
    上に塗布して塗膜を形成する工程;および前記塗膜付き
    基材フイルムを加熱乾燥して前記塗膜中の水分を蒸発さ
    せると共に前記分子レベルのポリビニルアルコールおよ
    び珪酸塩を反応させることにより、前記基材フィルム上
    にケイ素架橋ポリビニルアルコールからなる透明なガス
    バリア層を形成する工程;を具備したことを特徴とする
    ガスバリアフィルムの製造方法。
  36. 【請求項36】 前記ガスバリアコート剤は、pHが9
    〜12であることを特徴とする請求項35記載のガスバ
    リアフィルムの製造方法。
  37. 【請求項37】 前記ガスバリアコート剤は、前記ポリ
    ビニアルコールおよび珪酸塩の固形分濃度が6〜12重
    量で、かつこの固形分中の前記ポリビニアルコールおよ
    び前記珪酸塩の配合割合がそれぞれ60〜90重量%、
    10〜40重量%であることを特徴とする請求項35記
    載のガスバリアフィルムの製造方法。
  38. 【請求項38】 前記加熱温度は、水の沸点以上、前記
    基材フィルムの熱変形温度未満であることを特徴とする
    請求項35記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  39. 【請求項39】 基材フィルム;および前記基材フィル
    ムに被覆され、ケイ素架橋ポリビニルアルコールとこの
    ケイ素架橋ポリビニルアルコールに分散されたポリビニ
    アルコールを除く有機高分子、金属および無機化合物か
    ら選ばれ少なくとも1つの材料からなる多数の超微粉末
    とから構成されるガスバリア層;を具備したことを特徴
    とするガスバリアフィルム。
  40. 【請求項40】 前記基材フィルムは、熱可塑性樹脂フ
    ィルムまたは紙であることを特徴とする請求項39記載
    のガスバリアフィルム。
  41. 【請求項41】 前記ガスバリア層は、1μm以上の厚
    さを有することを特徴とする請求項39記載のガスバリ
    アフィルム。
  42. 【請求項42】 前記超微粉末は、紫外線遮断性を有す
    る有機高分子から作られることを特徴とする請求項39
    記載のガスバリアフィルム。
  43. 【請求項43】 前記ガスバリア層は、前記超微粉末が
    3〜15重量%分散されていることを特徴とする請求4
    2記載のガスバリアフィルム。
  44. 【請求項44】 前記超微粉末は、酸化ケイ素、アルミ
    ナまたはジルコニアから作られることを特徴とする請求
    項39記載のガスバリアフィルム。
  45. 【請求項45】 前記超微粉末は、インジウム錫酸化物
    から作られることを特徴とする請求項39記載のガスバ
    リアフィルム。
  46. 【請求項46】 前記ガスバリア層は、前記超微粉末が
    10〜35重量%分散されていることを特徴とする請求
    項44または45記載のガスバリアフィルム。
  47. 【請求項47】 前記超微粉末は、平均粒径が100n
    m以下であることを特徴とする請求項39ないし46い
    ずれか記載のガスバリアフィルム。
  48. 【請求項48】 前記ガスバリア層は、23℃、90R
    H%での酸素透過量が10cc/m2・24hr以下
    で、かつ40℃、90RH%での水蒸気透過量が10g
    /m2・24hr以下であることを特徴とする請求項3
    9記載のガスバリアフィルム。
  49. 【請求項49】 有機高分子フィルム;および前記有機
    高分子フィルムに被覆され、ケイ素架橋ポリビニルアル
    コールおよびこのケイ素架橋ポリビニルアルコールに分
    散された酸化ケイ素超微粉末からなる透明なガスバリア
    層;を具備し、前記有機高分子フィルムと同等の透明性
    を有することを特徴とするガスバリアフィルム。
  50. 【請求項50】 基材フィルム;および前記基材フィル
    ムに被覆され、ケイ素架橋ポリビニルアルコールとこの
    ケイ素架橋ポリビニルアルコールに分散されたポリビニ
    アルコールを除く有機高分子、金属および無機化合物か
    ら選ばれる少なくとも1つの材料からなる多数の超微粉
    末とから構成されるガスバリア層;を具備し、複数回屈
    曲後の23℃、90RH%での酸素透過量が10cc/
    2・24hr以下で、かつ40℃、90RH%での水
    蒸気透過量が10g/m2・24hr以下であることを
    特徴とするガスバリアフィルム。
  51. 【請求項51】 水酸化ナトリウム水溶液または水酸化
    カリウム水溶液にポリビニルアルコールおよび珪酸塩が
    それぞれ分子レベルで溶解・分散されるとともに、ポリ
    ビニアルコールを除く有機高分子、金属および無機化合
    物から選ばれる少なくとも1つの材料からなる多数の超
    微粉末が分散された組成を有し、かつアルカリ性である
    ガスバリアコート剤を基材フイルム上に塗布して塗膜を
    形成する工程;および前記塗膜付き基材フィルムを加熱
    乾燥して前記塗膜中の水分を蒸発させると共に前記分子
    レベルのポリビニルアルコールおよび珪酸塩を反応させ
    ることにより、前記基材フィルム上にケイ素架橋ポリビ
    ニルアルコールおよびこのケイ素架橋ポリビニルアルコ
    ールに分散された前記多数の超微粉末からなるガスバリ
    ア層を形成する工程;を具備したことを特徴とするガス
    バリアフィルムの製造方法。
  52. 【請求項52】 前記ガスバリアコート剤は、pHが9
    〜12であることを特徴とする請求項51記載のガスバ
    リアフィルムの製造方法。
  53. 【請求項53】 前記超微粉末は、紫外線遮断性を有す
    る有機高分子から作られ、かつ前記ガスバリアコート剤
    は前記ポリビニアルコール、珪酸塩および超微粉末の固
    形分濃度が6〜12重量で、この固形分中の前記ポリビ
    ニアルコール、前記珪酸塩および前記超微粉末の配合割
    合はそれぞれ60〜80重量%、10〜30重量%、3
    〜15重量%であることを特徴とする請求項51記載の
    ガスバリアフィルムの製造方法。
  54. 【請求項54】 前記超微粉末は、無機化合物から作ら
    れ、かつ前記ガスバリアコート剤は前記ポリビニアルコ
    ール、珪酸塩および超微粉末の固形分濃度が6〜12重
    量で、この固形分中の前記ポリビニアルコール、前記珪
    酸塩および前記超微粉末の配合割合はそれぞれ60〜8
    0重量%、5〜15重量%、10〜35重量%であるこ
    とを特徴とする請求項51記載のガスバリアフィルムの
    製造方法。
  55. 【請求項55】 前記加熱温度は、水の沸点以上、前記
    基材フィルムの熱変形温度未満であることを特徴とする
    請求項51記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  56. 【請求項56】 多数の微細な貫通孔および/または未
    貫通孔を有する多孔質有機高分子フィルム;および前記
    多孔質有機高分子フィルムに被覆されたケイ素架橋ポリ
    ビニルアルコールからなるガスバリア層;を具備したこ
    とを特徴とする易裂性ガスバリアフィルム。
  57. 【請求項57】 多数の微細な貫通孔および/または未
    貫通孔を有する多孔質有機高分子フィルム;および前記
    多孔質有機高分子フィルムに被覆されたケイ素架橋ポリ
    ビニルアルコールとこのケイ素架橋ポリビニルアルコー
    ルに分散されたポリビニアルコールを除く有機高分子、
    金属および無機化合物から選ばれ少なくとも1つの材料
    からなる多数の超微粉末から構成されるガスバリア層;
    を具備したことを特徴とする易裂性ガスバリアフィル
    ム。
  58. 【請求項58】 前記超微粉末は、紫外線遮断性を有す
    る有機高分子から作られることを特徴とする請求項57
    記載の易裂性ガスバリアフィルム。
  59. 【請求項59】 前記ガスバリア層は、前記超微粉末が
    3〜15重量%分散されていることを特徴とする請求項
    58記載の易裂性ガスバリアフィルム。
  60. 【請求項60】 前記超微粉末は、酸化ケイ素、アルミ
    ナまたはジルコニアから作られることを特徴とする請求
    項57記載の易裂性ガスバリアフィルム。
  61. 【請求項61】 前記超微粉末は、インジウム錫酸化物
    から作られることを特徴とする請求項57記載の易裂性
    ガスバリアフィルム。
  62. 【請求項62】 前記ガスバリア層は、前記超微粉末が
    10〜35重量%分散されていることを特徴とする請求
    項60または61記載の易裂性ガスバリアフィルム。
  63. 【請求項63】 前記ガスバリア層が前記多孔質有機高
    分子フィルムの各貫通孔および/または各未貫通孔の開
    口部側に少なくともそれら開口部付近を埋めるように被
    覆される場合、超微粉末は前記多孔質有機高分子フィル
    ムにおける各貫通孔および/または各未貫通孔の平均開
    口径の1/5以下の平均粒径を有することを特徴とする
    請求項57ないし62いずれか記載の易裂性ガスバリア
    フィルム。
  64. 【請求項64】 前記超微粉末は、平均粒径が100n
    m以下であることを特徴とする請求項57ないし62い
    ずれか記載の易裂性ガスバリアフィルム。
  65. 【請求項65】 前記多孔質有機高分子フィルムは、引
    裂かれる領域に平均開口径0.5〜100μmの微細な
    貫通孔および/または未貫通孔が500個/cm2以上
    の密度で開口されたポリエチレンテレフタレート、ナイ
    ロン、ポリプロピレン、エチルビニルアセテート共重合
    体から選ばれる少なくとも1層のフィルムからなること
    を特徴とする請求項56または57記載の易裂性ガスバ
    リアフィルム。
  66. 【請求項66】 前記多孔質有機高分子フィルムは、全
    面に平均開口径0.5〜100μmの微細な貫通孔およ
    び/または未貫通孔が500個/cm2以上の密度で開
    口されたポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリ
    プロピレン、エチルビニルアセテート共重合体から選ば
    れる少なくとも1層のフィルムかららなることを特徴と
    する請求項56または57記載の易裂性ガスバリアフィ
    ルム。
  67. 【請求項67】 前記ガスバリア層が前記多孔質有機高
    分子フィルムの各貫通孔および/または各未貫通孔の開
    口部側に少なくともそれら開口部付近を埋めるように被
    覆される場合、前記ガスバリア層の埋め込み部の厚さは
    1μm以上であることを特徴とする請求項56または5
    7記載の易裂性ガスバリアフィルム。
  68. 【請求項68】 前記ガスバリア層は、前記多孔質有機
    高分子フィルムの被覆面からの厚さが1μm以上である
    ことを特徴とする請求項56または57記載の易裂性ガ
    スバリアフィルム。
  69. 【請求項69】 前記ガスバリア層は、23℃、90R
    H%での酸素透過量が10cc/m2・24hr以下
    で、かつ40℃、90RH%での水蒸気透過量が10g
    /m2・24hr以下であることを特徴とする請求項5
    6または57記載の易裂性ガスバリアフィルム。
  70. 【請求項70】 水酸化ナトリウム水溶液または水酸化
    カリウム水溶液にそれぞれ分子レベルで溶解・分散され
    たポリビニルアルコールおよび珪酸塩を含み、かつ透明
    でアルカリ性であるガスバリアコート剤を多数の微細な
    貫通孔および/または未貫通孔を有する多孔質有機高分
    子フィルム上に塗布して塗膜を形成する工程;および前
    記塗膜付き多孔質有機高分子フィルムを加熱乾燥して前
    記塗膜中の水分を蒸発させると共に前記分子レベルのポ
    リビニルアルコールおよび珪酸塩を反応させることによ
    り、前記多孔質有機高分子フィルムにケイ素架橋ポリビ
    ニルアルコールからなるガスバリア層を形成する工程;
    を具備したことを特徴とする易裂性ガスバリアフィルム
    の製造方法。
  71. 【請求項71】 水酸化ナトリウム水溶液または水酸化
    カリウム水溶液にポリビニルアルコールおよび珪酸塩が
    それぞれ分子レベルで溶解・分散されるとともに、ポリ
    ビニアルコールを除く有機高分子、金属および無機化合
    物から選ばれる少なくとも1つの超微粉末が分散された
    組成を有し、かつアルカリ性であるガスバリアコート剤
    を多数の微細な貫通孔および/または未貫通孔を有する
    多孔質有機高分子フィルム上に塗布して塗膜を形成する
    工程;および前記塗膜付き多孔質有機高分子フィルムを
    加熱乾燥して前記塗膜中の水分を蒸発させると共に前記
    分子レベルのポリビニルアルコールおよび珪酸塩を反応
    させることにより、前記多孔質有機高分子フィルムにケ
    イ素架橋ポリビニルアルコールとこのケイ素架橋ポリビ
    ニルアルコールに分散された前記多数の超微粉末とから
    なるガスバリア層を形成する工程;具備したことを特徴
    とする易裂性ガスバリアフィルムの製造方法。
  72. 【請求項72】 前記ガスバリアコート剤は、pHが9
    〜12であることを特徴とする請求項70または71記
    載の易裂性ガスバリアフィルムの製造方法。
  73. 【請求項73】 前記加熱温度は、水の沸点以上、前記
    多孔質有機高分子フィルムの熱変形温度未満であること
    を特徴とする請求項70または71記載の易裂性ガスバ
    リアフィルムの製造方法。
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JP2002332054A (ja) * 2001-05-09 2002-11-22 Kureha Chem Ind Co Ltd 注出具、容器及びガスバリア性フィルム
CN104838068A (zh) * 2012-12-11 2015-08-12 惠和株式会社 适合微波炉的片材及适合微波炉的片材的制造方法

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